41. パーフェクト・ワールド
純真な少年と犯罪者の逃避行。その間に、お互いの心を補完し合う。シチュエーション的にはよくあるパターンだし、犯罪者を美化したり、感動させることを前提に作ってあるあざとい演出は鼻につくものの、感動しちゃったからしょうがない。フィリップ役の男の子の可愛さと演技力によるものが大きい。一方、刑事や女性心理分析官の中途半端なキャラ設定と、ブッチが撃たれてからのダラダラ感がマイナス。しかし、いい人であろとしながら、既に形作られてしまった人格の暗黒面から逃れられない犯罪者の心理描写はなかなか秀逸。それにしても、なんて脱出しやすい刑務所なんだ(w。 7点(2004-03-30 01:44:43) |
42. 処刑人
かなりストレートで重厚なメッセージ性を含んだ内容。誤解している人もいるみたいですが、別に「報復殺人」を美化したり正当化している訳ではなく、現行法の甘さに対する警鐘と再考を促すために、あえて「敵討ち」という行為を極端化して見せているだけです。実際、日本でも少年法の甘さを指摘する声は多いですし、複数の人を殺してもなかなか死刑にならず、「加害者の人権を優先する」現行法の甘さゆえに、安易な殺人が横行する側面があるという点を失念してはならないでしょう。それを強烈に訴えかけているだけでも、この作品には価値があると思います。 7点(2004-03-27 03:32:51)(良:1票) |
43. アパートメント(1996)
《ネタバレ》 「何故、愛する女性が何も言わず自分のもとを去っていったのか」、という謎をメインに据えながら、徐々に新たな謎や伏線が浮上して来る作りは見事。またその過程において、人間のエゴイズムのみならず、男女の「恋愛感の性差」をも明瞭に描き出している。 友情よりも男を選ぶ女、愛する女よりも目の前の肉欲に溺れる男、人間性の闇の部分を見通すことが出来ず、裏切られていく友人たち。単にサスペンスや恋愛ドラマという枠組みを超えて、「自己本位」という、人間関係を語る上での本質をズバリ突いている。この脚本構成は見事。 とは言え、テーマ性は深いが後味が良いわけではないし、娯楽性も薄いので、見ていて素直に楽しめる作品とは言い難いのも事実。厳しい評価かも知れないが、この辺の両立が出来ていない限り、やはり9点、10点までは行かないかな~。 [ビデオ(字幕)] 7点(2004-01-19 21:49:27)(良:1票) |
44. ナチュラル・ボーン・キラーズ
意外と低評価ですね。なかなか良いと思いますよ。結局、人間も本能に従えば、他者との生存競争の果てには殺人という行為もあるわけで。問題は、その破壊衝動を正当化するのではなく、また見ないように誤魔化すのでもなく、誰しもが自分の精神の内部にセットされている本能だと認識しておく必要があるということでしょう。それぞれの映像が、現実と非現実をひとつの場面に共存させるかのような酩酊感を誘い、同時に主観と客観の曖昧さや、現実世界の脆弱さを際立たせている。 7点(2004-01-09 14:43:11) |
45. カリートの道
一般人にとっては簡単に手に入る当たり前の生活も、一度、裏の社会に足を踏み入れてしまった人間にとっては叶え難い夢になってしまう。もう少しで手に出来たはずが、男として義理と人情を重んじるがゆえに、その平穏な生活を永遠に失ってしまう。しかし、男子としてその選択は決して間違ってはいないはずだ。裏切られたことは問題ではない。自分の生き方に背中を向けなかったかどうかが問題なのだから。 7点(2003-11-28 19:58:19) |
46. バートン・フィンク
何とも不可思議な作品。ジャンル的にはサスペンスになるのかな?日常と非日常、現実と幻覚が混沌としていく。序盤と中盤で作品の雰囲気がかなり変わったりと、見ている方も何とも言いようのない不安感や幻惑感に捕らわれる。結局、ラストがいまいち意味不明のまま終わってしまうのが、この手の作品としてはありがちな「逃げ」に思えた。まあ、その微妙なところを楽しむべき映画なのでしょう。 7点(2003-11-21 15:40:29) |
47. タイタニック(1997)
感動の演出法としてはあざといやり方ですね。誰でも最後にタイタニックが沈んでしまうことは知っているわけですから、その間における恋愛ドラマの儚さや最後の別れが際立つのも、ある意味当然ですよね。でも別にそういう演出が嫌いなわけではありませんし、全体的に丁寧な作りには好感が持てます。ただ、これもちょっと長いですね。 7点(2003-11-11 11:24:10) |
48. ジャンヌ・ダルク(1999)
監督はジャンヌ・ダルクの生き様を通して、人間の心のあり方や宗教に対する姿勢、といった現代にも続く普遍的な問題を描きたかったんじゃないでしょうか。 7点(2003-11-03 03:52:29) |
49. 酔拳2
ジャッキー映画の中では一番完成されている。登場人物全員が生き生きとしていて魅力的。特にお母さんは最高。ボスの足技もカッコいい!アクションシーンの迫力は、最近のワイヤーアクションやCGを多用する映画とは比べものにならない完成度。ただ、ジャッキー映画に共通している欠点は「終わり方がぞんざい」という点と、「ストーリー性が弱い」という二点(口からシャボン玉を吐き出したところでいきなり終わったのには唖然)。 そのため見所がアクションシーンにしかなく、何度も見られる内容ではないのが残念。作品として「娯楽映画」以上でも以下でもないため、どうしても点数的には7点以上にはならない。 7点(2003-10-22 19:08:26)(良:1票) |
50. タイム・リープ
原作を読んでから見ました。おかげで、いまいち分かりにくかったシーンが理解できて助かったんですが、やっぱり何故かすっきりしないんですよね~。バラバラになった時間を飛び越えつつ、パズルのように情報を整理していく過程は面白いんですが、どこか矛盾があるような気がしてしまいます(私の理解力の無さが悪いと思うんですが)。この設定だと、タイムパラドックスとかの心配は無いんでしょうか?また、バラバラになっているのは彼女の主観的な時間なんですから、それを外側から見ているとどうなっているのかなーとか、余計なことを考えてしまいます(笑)。でも、面白いことは確かです。 7点(2003-09-23 14:21:34) |
51. CUBE
《ネタバレ》 「閉鎖空間における人間性の露呈」というテーマを描く上で、ここまで大胆な舞台を用意した作品にはめったにお目にかかれない。 キューブ内をいくら移動しても変化の無い部屋が延々と続くというのは、それだけでもかなりの恐怖。ただ、息が詰まりそうな閉塞感は感じるものの、各登場人物の「言動の変化」や「関係の破綻」は予想の範囲内だし、特にこれと言って意外性のある展開も無かったのは、ちょっと拍子抜け。 結局ラストまで行っても何も分からず、解決らしい解決も無いまま。こういう「不可知論的結末」って、「解釈まかせの手抜き」と背中合わせで、どうとでも取れるからあまり好きではない。 同じ「閉鎖空間におけるサスペンス」ということなら、個人的には「嵐の山荘系ミステリー」の方が、きちんとした「謎の論理的解決」もあるので性に合っている。 [ビデオ(字幕)] 7点(2003-09-18 22:17:13) |
52. 耳をすませば(1995)
《ネタバレ》 この作品は「スタンド・バイ・ミー」同様、見た時の年齢によってかなり評価に差が出るタイプの作品。登場人物と同世代の子共達から見るとちょっと恥ずかしく、「こんなヤツいねーよ」と反感を持たれてしまうかも知れないが、私のように汚れた大人から見るとw、逆に「あ~、こんな絵に描いたような青春時代を過ごしたかったな~」という郷愁混じりの気持ちで、ほんわかと見れる。 「ありそうでない、でもどこかにありそうな」理想と現実のまさに中間に位置する世界の物語。その描き方が上手いと思う。ただ、さすがに私もラストの「結婚しよう」というセリフにはシラケた。あのシーンがマイナス。物語の中くらい、最後まで少年少女らしく爽やかに終わって欲しかった。 [映画館(字幕)] 7点(2003-09-18 21:54:17) |
53. 黒い家(1999)
《ネタバレ》 かなり低評価だけど、邦画の中では珍しいサイコサスペンスをやってくれた事は評価したいし、恐怖演出に関しても比格的質の高い部類に入ると思う。 ストーリー自体がかなりリアル路線の割りに、出演者のキャラクターや演技が突飛なので引いている人もいるみたいだけど、幽霊や怪物よりも「人間の狂気」こそがもっとも怖いという部分はよく描けている。 特に大竹しのぶの女優根性には脱帽。彼女のガンバリに+1点。 [ビデオ(邦画)] 7点(2003-09-16 09:32:43) |
54. スクリーム(1996)
《ネタバレ》 最後の最後まで犯人が分からないスピード感のある作り。とにかくストーリー性よりも、娯楽サスペンス映画として見ている人にハラハラドキドキしてもらおうという製作サイドの意気込みを評価したい。 確かに突っ込みどころは多々あるが、ここまで「フーダニット」という一点に徹底してくれれば、特に言う事はない。 ただ、この手のやり方は初回だけだから許されるという側面もあると思う。事実、シリーズ化するごとにワンパターンになるし、見ている側にも耐性がついてしまう。見るならこの1作目だけで十分。 [ビデオ(吹替)] 7点(2003-07-02 16:35:11) |
55. ゴースト/ニューヨークの幻
《ネタバレ》 これって恋愛映画として真面目に見るよりも、恋愛、サスペンス、コメディ、ホラーの要素をバランス良く取り入れた娯楽作品として見るべきでしょ。 普通、色々と盛り込むと中途半端な結果になりがちだけど、この作品は設定のおかげもあって、各要素が足を引っ張り合うことなく、それぞれが上手く溶け合っている。 幽霊になった主人公が自分の境遇を嘆く間もなく事件の真相を知り、霊媒師を通して会話したり、色々と制限のある中で、何とか恋人を守ろうと奮闘する様は、確かに感動もするけれど、むしろ「死後の非日常」にドキドキワクワクしつつ楽しく見れた。 さすがに突っ込み所は多いから、これを大真面目な恋愛感動ドラマとして評価できるかどうかは微妙だけど、娯楽映画としてなら全体的にテンポも良いし、普通に楽しめる作品だと思う。 PS.テーマソングのライチャス・ブラザーズの曲を知ったのは、この作品よりダウンタウンの「ガキの使い」が先で、ゆっくり回転しながらテーブルの穴から変装した顔を出すシーンであの曲がかかるので、どうしても思い出して笑ってしまう(笑)。 [地上波(吹替)] 6点(2006-11-14 08:23:11) |
56. スターリン主義の死
もともとチェコとスロバキアが別々の国だった事すら最近まで知らなかった、私のように世界史に疎い者では、簡単に発言できるような内容ではないと思いますが、「共産主義が齎したものは何か」という事を、強烈なビジュアルとして訴えかける事は、やはりプロパガンダとして効果的でインパクトがありますね。この作品を契機に、東欧諸国の歴史などを勉強してみるのもいいかと思います。 たださすがに、この作品はあまりにもプロパガンダとしての表現が露骨すぎて、はっきり言って、いつものようなシュールレアリズムアニメーションとしての魅力はほとんどありません。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-19 18:38:14) |
57. ラスト・アクション・ヒーロー
《ネタバレ》 シュワちゃんの魅力ありきの映画。彼じゃないと、映画と現実世界のギャップに説得力が出せないと思う。 始めは安易なアクションコメディかと思っていたが、後半にかけて意外とシリアスなテーマも垣間見えて来る。 現実世界に来たヒーローは「ただの人」になり、架空の存在であった事に苦悩しながらもヒーローであろうとし、そして悪役は現実世界の俗悪さに衝撃を受けつつも、悪役である事を貫く。その対比は彼らが現実世界の存在ではないからこそ際立つ。 惜しいのは、映画と現実を行き来する事で、「自己存在証明」というテーマを、エンターテイメント性を保ちつつ、もっと深く追求できたはずなのに、その辺の突っ込みがちょっと中途半端な点。 [地上波(吹替)] 6点(2006-01-10 16:51:13) |
58. いとこのビニー
《ネタバレ》 コメディと言うよりは、意外と真面目な法廷劇。最後まで飽きずに楽しめるものの、個人的には傑作とまでは思えなかった。コメディとしても法廷劇としても、全体的に中途半端で、どっちつかずな内容になってしまっているのが残念。 登場人物には個性があり、魅力的ではあるものの、その反面、いかにも「この映画のために用意されたキャラクター」と言った印象が強い。主人公がなぜ弁護士になったのかという背景も語られずじまいなので、人間的に掴み所が無く、余計にそう感じる。 肝心の容疑に対する反証も平凡なもので、この手の映画にあるべき意外性や工夫に欠けている(最後のタイヤ痕以外は素人でも思いつく程度の反論しかしていない)。 結局、最終的に婚約者の「豊富な車の知識」のおかげで勝てるというのも、えらくご都合主義的。主役のその半人前なキャラが憎めないけど、やはり法廷劇として見ると物足りない内容と言わざるを得ない。 また、コメディ要素も微妙で、笑わせられるようなシーンも少なく、中盤までのテンポが悪い事も大きなマイナス。もっと証拠の蒐集や分析、証人の確保など、コメディとして笑わせるためにこそ、リアルな弁護内容が見たかった。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-03-23 20:43:55) |
59. ゴールデンボーイ(1998)
《ネタバレ》 <原作未見・映画版のみの評価> 原作を知らないので、それなりに楽しめた。ナチズムへの傾倒の危険性を通して、狭義の意味から、人種、年齢を問わず、人間全般に普遍的に当てはまる、「他者より優れていたい」という本能の危うさを説いている作品だろう。 トッドの罪が表沙汰にならず、「選民意識」のみが継承されていくというラストこそが、永続的に受け継がれていく人間の業の深さを強調している。 ただどうせなら、もう少し突っ込んで、戦争犯罪やホロコーストを糾弾していくうちに、はまり込みやすい「他者を糾弾する事の目的化」という危険性を追求して欲しかった。 6点(2004-09-14 23:55:47)(良:1票) |
60. 秘密(1999)
《ネタバレ》 <原作未読。映画のみの評価です> 「人格入れ替わりネタ」は、よくある設定だし、陳腐になりがちではあるものの、さすがは熟練の東野圭吾氏。そこに垣間見られる人間ドラマの描き方が手馴れてる。 男女付き合いだけに限らず、人間関係の構築が難しいのは、人間というものが常に「変わっていく」存在だからだろう。自分では変わっていないつもりでも、時と共に少しづつ内面が変化していくのは、誰でもむしろ自然なことかも知れないが、そこに生じた小さな「齟齬」が、相手に大きな違和感を植え付けてしまい、それが元で関係そのものが崩れてしまうことはよくあること。そして、その時になって始めて、人は自分の信じていた人間関係の脆弱さを思い知る。 変わっていく妻を見て苦悩する夫の姿は、そんな人生における普遍的な人間関係の難しさをよく表していると共に、円滑な関係構築には、相互理解という、相手に対する思いやりと感謝が不可欠であるという、これまた普遍的な教訓を見る者に訴えかけてくる。 とは言うものの、あのラストでのちょっとした「どんでん返し」は微妙なところ。結局、夫からの束縛を逃れるために、ひと芝居打ってまで、自分の人格を消したということなのかなあ?それ以前に、夫は変わっていく自分の生き方を認めてくれた訳だから、そんなことをする必要性があったのか甚だ疑問。夫に対する罪悪感や、傷つけないための芝居だとしたら、それこそ自分の変化を認めてくれた夫に対する裏切りだと思う。このラストが無ければ、もっと素直に感動できたのになあ。あえて女性の持つリアリズムに徹するという精神性を強調したかったとも取れるが…。 6点(2004-07-03 20:51:42) |