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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  帰ってきたヒトラー
このヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優は、わかる人にはわかるんだけど生前のヒトラーの所作をよく研究していると感心しました。『最期の12日間』のブルーノ・ガンツよりもはるかにリアルだと思います。でもこれほど可笑しいけどだんだん笑えなくなってくる風刺映画には久しぶりに出会った気がします。『博士の異常な愛情』を初めて観たとき以来の衝撃かもしれません。あの女性局長は、ゲッベルスとレニ・リーフェンシュタールを合体させたようなキャラですね。こういうわき役たちもけっこう面白いけど、実はこの映画で最もキャラが立っているのは、ドキュメンタリー風に画面に登場してくる現代ドイツの大衆たちなんですよ。ヒトラーの「私を選んだのはお前たちだ」というセリフがこの映画の究極のテーマを判りやすく説明しているんじゃないでしょうか。この史実こそがドイツ人には耳が痛く、そして都合よく忘れようとしてきたことなんです。そういう視点で観ると、ヒトラー後のドイツ人の偽善をこれほど赤裸々に揶揄した映画はなかったんじゃないでしょうか。そう考えると、冷戦があったとはいえ戦後のドイツは狡猾に国際社会で立ち回ってきたものだと思います。組織の末端だったとは言っても東独の共産党政府の一員だった女性が、今や宰相として君臨して欧州の女帝とまで言われているんですからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-13 23:15:44)(良:2票)
42.  ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 
なんで“エイト”なの?はっきり言っちゃうと、登場人物は全部で10人じゃないですか。御者のО.Bはあまりにも無関係なので“ヘイトフル”に含めてないのかもしれないけど、後の一人はねえ… まあそんなことはどうでも良くて、タランティーノ版の密室サスペンスを愛でてみようじゃないですか。前半のストーリーテリングは何というかタランティーノ版人狼ゲームという感じでちょっとゾクゾクさせてくれます。というよりも、これはサミュエル・L・ジャクソンの独壇場という感じでしょうね。あの目玉をギョロギョロさせてめぐらす推理の冴えは、黒いシャーロック・ホームズと呼びたいぐらいです。サミュエルと言えばこれ、と有名な決め台詞“マザー・ファッカー!”がまったく無かった(たぶん)のは珍事です。そしてサミュエルがタマをぶち抜かれてからの後半は血しぶき吹き上げる阿鼻叫喚、やっぱりタラは我慢しきれなかったって感じですかね。ちょっと不満だったのはチャニング・テイタムで、あれは普通に凍死しちゃってますよ。凄かったのはジェニファー・ジェイソン・リーの死にっぷりで、もうここまでくるとほとんどホラーです。そしてタラ映画にしては珍しく余韻を残す終わり方、きっとサミュエルとウォルトン・ゴギンズの二人は死んじゃうんだろうな、と思ってしまいます。そこで気が付きました、この映画は『遊星からの物体X』を西部劇に再構築してたんですね。カート・ラッセルも出てるし(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-02-22 23:12:24)
43.  リンカーン 《ネタバレ》 
この演技を観たら、アカデミー会員なら誰もがダニエル・デイ=ルイスに一票を投じざるを得なかったんじゃないでしょうか。もちろんデータは公表されるわけないですけど、この三度目のオスカー主演男優賞を獲ったときのデイ=ルイスの得票率はさぞや高かったのでは。彼に歴史上の人物を演じることを禁止するルールを制定することを、今後ハリウッドは真剣に考えないといけないでしょう、そうしないと今後何個オスカーをかっさらわれるか想像もできません(笑)。 彼の演じるエイブラハム・リンカーンは、自分がタイムスリップして生のリンカーンを観ている様な錯覚さえ覚えるほどの説得力があります。そして特に自分が感じたのは、信念を持った政治家というのはこれほどカッコ良いものなのか、ということです。彼も決して聖人君子ではなくて、憲法修正13条を下院で通すためにはほとんど買収すれすれの裏工作まで行うし、国務長官など身内にも平然とウソをつきます。双方の兵士たちに犠牲が増えることも構わず、その為には南北戦争の終結を遅らせようとまで画策します。そう言ったある意味汚い政治家としての一面も含めて、スピルバーグは極めて冷徹なタッチでこの映画を撮っています。ラストの劇場もてっきり有名なリンカーンの暗殺を見せるのかと思いきや、観る方の緊迫感が十分に高まったところで「フォード劇場で大統領が撃たれた!」という叫びがあがりここは違う場所なのだと判らせるくだり、スピルバーグの円熟の技巧が冴えわたっていました。 急進派の共和党重鎮議員を演じたトミー・リーもデイ=ルイスに決して引けを取らない好演だったと思います。ラストで修正案が成立して家に帰りズラを外して黒人メイドとベッドをともにする、「あんたは最高の男だよ!」と思わず声をかけたくなるほどでした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-16 23:31:28)
44.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
スパイというか対テロ活動がテーマなのに劇中で銃の発砲は一回もない、登場人物が誰も死なないし殺されないというある意味変わった作品です。それでいて緊張感が溢れるストーリーテリングは、監督は無名ながらけっこういい腕してるとお見受けいたします。最近ジョン・ル・カレ原作小説の映画化で秀作が続いていますが、あの超地味なル・カレのスパイ小説が欧米では再評価されてきているのでしょうか、いまやすっかり忘れられた存在となったハッタリ屋フレデリック・フォーサイスとは好対照です。とくに映画の前半はこの先どういう展開になるんだろうとハラハラさせられどおしで、これもフィリップ・シーモア・ホフマンの好演のなせる業でしょう。これが彼の遺作とは、ハリウッド映画界にとっても実に痛い損失です。ラストの彼がタクシーの運ちゃんに化けるシークエンスでは、彼の見せる怒りと憔悴が入り交じった表情は70年代のマーロン・ブランドを思い起こさせてくれました。もし長生きしていたら、きっとマーロン・ブランドを超える名優にまで進化していたんじゃないかと思うと、残念でなりません。 最後まで判らなかったのは、“誰よりも狙われた男”とは誰のことだったのかということで、シーモア・ホフマンが演じるギュンターのことなんでしょうか?なんか違う気がしますけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-02 21:29:54)
45.  百円の恋 《ネタバレ》 
予備知識なくこの映画を観たら、最初はこのヒロインらしき女がボクサーになるなんておそらく想像だにできなかったでしょう。この映画ではとても感情移入できないどうしようもない登場人物ばかり出てきて、見続けるのがイヤになりそうなぐらい。そしてあの100円ショップの店、とても商売が成り立つとは到底思えないけど、店内に引っ切り無しに流れているお店のテーマソングだけは妙に頭に残ります。前半は安藤サクラのぶよぶよの肉体に合わせた様なグダグダな人間模様を、音楽も使わないでダラダラと見せられている様な感じが強烈。ところが男に逃げられボクシングに打ち込みだしてどんどん身体がスリムになってくると、それに合わせるように撮り方も引き締まって来て効果的に音楽も使われてきます。これはなかなかの手腕を持っている監督だと思います。もちろん安藤サクラあってのこの映画なわけですけど、それにしてもデ・ニーロばりの肉体改造と機敏なボクサーぶりは凄いの一言しかありません。会場に向かって通路を進むときの彼女のあの表情、こんな演技が出来るのは邦画界では彼女しかいません。「安藤サクラの顔つきは、ほんとに人を殺しかねない表情だ」という本作の映画評を見た記憶がありますが、まさにその通りです。 唯一残念だったのは、新井浩文は良いとしても両親や妹まで試合を観に来させたところで、これで一気にこの映画が持っているクールさが減じられてしまった気がします。そこは1点マイナスとさせていただきます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-26 23:41:37)
46.  ジャッジ! 《ネタバレ》 
あのキツネうどんのCMの破壊力、もう半端じゃないです(笑)コンコン、コシコシ♪っていうあのメロディが、まだ強烈に頭の中で共鳴してます。冒頭からの脱力系の展開は、なんか私にとってどストライクの剛速球でした。クライアント訪問するときまで膝小僧出した半ズボン姿のトヨエツが大傑作で、「無茶と書いてチャンスと読む」は私も使わせて頂きたい名セリフです。そう言えばかつて代理店のサラリーマンだった筒井康隆の小説に出てくる「士農工商・代理店」というフレーズを思い出してしまいました。それにしてもトヨタ・エースコック・丸井と実在企業の名を出してのパロディとは日本映画らしからぬ大胆さ、エースコックの宣伝室長なんて完全にコケにしている様な気がしますけど、怒られなかったんでしょうかね。でも鈴木京香が創ったトヨタのCMに関してはディスってる様な気がして、これがグランプリを獲るのは一種の皮肉なんでしょうかね。 監督も脚本家もCM業界の人たちなので、業界の内情はきっとリアルなんでしょう。パロっているけど広告祭の審査の内情も、実際あんなもんなんでしょうね。後半からラストに至るベタな展開はクサいんですが、コメディとしてはなかなか愉しめると思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-23 00:20:46)
47.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
ブラッドリー・クーパーの役作りのレベルが凄いですね。肩幅や胸板なんて今までの倍ぐらいの様な気がするぐらいです。しかもそれが脂肪太りじゃなくてしっかり筋肉つけているわけで、まさかCG使ってるわけじゃないんでしょうけど骨格まで変えてしまったかのように見える凄まじい肉体改造です。 『許されざる者』ですっかり悟りの境地に達したイーストウッド、この映画で訴えたかったのはただひとつ「人殺しは地獄だ」ということです。どう考えてみてもアメリカには「殺人には善い人殺しと悪い人殺しがある」という深層心理的な価値観が西部開拓時代から存在している様に思えてなりません。国の為だろうが正当防衛だろうが人の生命を奪うことには変わりはなく、人はその現実と折り合いをつけないとやっていけないものなんだと思います。戦争の勝者や強者に属する軍人は得てしてその折り合いに無頓着なことが多く、とくにアメリカにはその傾向が強い様な気がします。その辺りにも本作ではイーストウッドは鋭く切り込んでいて、スクリーン上で数え切れないほど人を殺めてきた彼らしい感じがします。 いくら伝説の男と言っても実在のクリス・カイルという人は娑婆にいたときはごく平凡な人間だったわけで、戦場以外では大したエピソードもない淡々とした描かれ方です。彼が軍に志願するに至る経緯も日本人にはピンと来ないところがありますが、まあアメリカ人には理解できるんでしょうね、あまりに単純すぎると自分は感じてしまいますけど。しかし子供にまで武器を持たせて戦わせて死に追いやってしまうという現実、世界は決して平和じゃないし綺麗ごとが通用しないということは思い知らされました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-22 23:41:12)
48.  プリデスティネーション 《ネタバレ》 
いやー、自分が今まで観てきた中でも「?」がトップクラスで多かった映画でしたね。でもこの「?」は良い意味での「?」であるのも確かです。タイムパラドックスを扱った作品としてはかなりのハイレベルで、間違いなく『バタフライ・エフェクト』を超えていると思います。自分の中では「タイムトリップでその当時の自分と出逢ったらどうなるのか」という疑問がずうっとあって、これはある意味哲学的な思考実験でもありますが過去のタイムトラベル映画では「そのような邂逅はしてはいけない、もしくは起こり得ない」というスタンスで撮られていて、自分としてはまあ納得していたわけです。ところがこの映画にいたっては出逢うどころか過去の自分とアレまでしちゃうし、いやさすがにネタばれありとしてもこれ以上書けませんけど、自分の常識をぶっとばしてくれる衝撃的なプロットです。ここではいわゆるパラレル・ワールド理論はまったく無視されていて、この映画の世界は時間が完全にループしているだけで完結している宇宙だと考えるしかないんでしょうね。 イーサン・ホークはSF映画ではほんとに輝く役者で、素晴らしい演技だったと思います。でも衆人の一致するところだと思いますけど、サラ・スヌークの高度な演技も驚愕ものです。何と言いますか、“オーストラリアのジョディ・フォスター”と呼んであげるのが相応しいんじゃないですか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-13 23:19:54)
49.  オール・ユー・ニード・イズ・キル 《ネタバレ》 
ループ! ループ! ループ! 果たしてトム・クルーズはこの映画の中で何回タイムループしたんでしょうか?誰か数えた人いませんかね。言ってみればセーブできないRPGを何回もリプレイしている様なもんで、劇中のトムさんの身になったらこりゃ堪りませんよね。輸血されるとループ能力が失われるとのことですが、リタが強制的にリセット(つまりトムさんを殺すということ)しようとしてケイジ少佐が「待ってくれ、もうループ出来ないんだ!」と焦るシーンは、なんか可笑しくて堪りませんでした。最後のループからラストまでのシーンも、最初はちょっと理解できなかったけど良く考えられた結末ですね。 まあこれは究極の「主人公キャラが劇中で成長する」パターンの映画なわけで、やはりトム・クルーズぐらいのスターじゃないとこの映画の主役は務まりません。だいたい冒頭だけとは言え、ケイジ少佐のような腰ぬけキャラを彼が演じること自体が珍しいことですが、今後こういうダメキャラをもっと演じてみればトム・クルーズの新しい魅力が開拓できるかもしれません。 日本のライトノヴェルが原作なんだそうですが、良くここまで再構成したものです、ハリウッドの脚本家の能力はほんと侮り難いです。こういう題材を見つけてくる目利き力には感服ですけど、この宝の山に全然気がつかないというか無関心な日本映画界のダメさ加減にも呆れてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-02 19:36:06)(良:1票)
50.  サイド・エフェクト 《ネタバレ》 
導入部からストーリーにぐいぐい引き込まれてゆく感じで、さすがソダーバーグ、熟練の技が冴えわたってます。ストーリーはちょうど中ほどから急展開を見せることになるのですが、そこはもうソダーバーグ版『ゴーン・ガール』という感じです(すいません、ネタばれが過ぎました)。ジュード・ロウの精神科医もなんかちっとも感情移入できない様な嫌らしさのあるキャラですが、後半で反撃に出てくるところの巧みな心理戦はなかなか爽快でした。最近はソダーバーグさんもインディペンデント系映画ばかり撮っているんですけど、これだけの才能を持っているんだからまたハリウッドのメジャーで映画を撮ってほしいものですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-12-22 19:39:39)
51.  REDリターンズ 《ネタバレ》 
同じアメコミ原作物でも『キックアス』の続編が妙に真面目になっていて正直つまらなかったので全然期待しないで観たんですが、どうして、このキレキレぶりは自分としては前作を凌ぐ面白さだったと思います。劇中にいろいろな過去作のセンスの良いパロディが盛り込まれているところもツボで、カーチェイスのシーンでのジェイソン・ボーン・シリーズのパロディにはニヤリとしてしまいました。嬉しいのは前作を凌ぐヘレン・ミレンのはっちゃけぶりで、彼女この映画の中でまったく笑顔を見せないポーカーフェイスで押し通しているのに痛烈なコメディ演技が成立しているところがまた凄い。まるでバスター・キートンみたい、さすが英国が誇る大女優です。またそれに負けないのがマルコビッチの怪演ぶりで、もうこうなるとブルース・ウィリスの影が薄いですね。アンソニー・ホプキンスも、あの当たり役をの高度にパロった様なキャラを嬉々として演じているのがまた愉しいところです。 こうなると次作も期待してしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-12-13 22:09:46)(良:1票)
52.  凶悪 《ネタバレ》 
あの「上申書殺人事件」を、原作ノン・フィクションがあるとはいえここまで真正面から映像化した努力には敬意を表したいところです。ちょっと不謹慎ですけど、映画化されていない興味深い事件が日本にはいっぱいあるんです。無難な題材や原作しかチョイスしない委員会方式の映画製作が幅を利かしている腐った日本映画界では無理もないですけど、そこはえげつないハリウッドを少しは見習ってほしいものです。もう団塊世代しか覚えていない連合赤軍事件なんかを映画化する前に、オウム真理教事件を映像化するべきじゃないでしょうか。 本作はと言うと、誰もが身震いする様な凶悪をエンタテイメントにまで高めた傑作だと思います。よく『冷たい熱帯魚』と比較されていますが、趣味の悪いデフォルメが無い分本作の方が優れてるんじゃないでしょうか。リリー・フランキーの不気味な演技には身震いさせられましたね。どの登場人物にも感情移入させない演出も秀逸です。でも主人公・山田孝之の家庭生活までストーリーに組み込んだのはちょっとどうかなと思います。母親の世話を妻に押し付ける彼の内面の闇としたいみたいですが、はっきり言ってせっかくの緊張感を削ぐだけだし、だいいちあんなことで悪人扱いされたらたまらんぞ、と感じる人が多いんでは。でもラストの面会シーンは真逆の演出ですけど『天国と地獄』のラストを彷彿させてくれました、これは監督のオマージュかもしれませんね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-11-13 23:17:16)(良:2票)
53.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
妻帯者そしてかつて妻帯者だった人にも、ひとしく衝撃を与えることはもう私保証いたします。また嫁の立場から観ても日常生活の自分のトラウマを激しくかき立てることは間違いないでしょう。あくまで実際におこったスコット・ピーターソン事件をモチーフにしたフィクションですけど、これをデヴィッド・フィンチャーに監督させたというのが最良(観る人によっては最悪かも)のパフォーマンスを生んだと思います。 まずベン・アフレックですが、この映画の様な頼りない男を演じさせたらイーサン・ホークかベン公かというぐらいのハマり役です。でも実在のスコット・ピーターソンという人があまりに彼にそっくりなので、これ以外の選択はあり得ななかったでしょう。そしてロザムンド・パイク、映画の折り返し地点ぐらいでネタばれしちゃうんですけどあえて一言だけ言います。私の中で今まで映画史上最悪の悪女だった『蜘蛛女』のレナ・オリンを超えるキャラがついに現れた! けっきょく物語では警察や弁護士の捜査や調査は振り回されるだけでなんの効果もあげずカタルシスは皆無のエンディングとなるのですが、後味の悪さはフィンチャー作品のお約束なのでそこはまあ期待通りでした。それにしても東洋の某国の宰相は夫婦そろってこの映画を観に行ったそうですが、これもまた凄い話です(もっともあの二人は見た目は仲良さそうですけどね)。残念ながら二人の感想は公にされていません(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-11-02 19:49:45)(笑:1票)
54.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
冒頭から俳優がいきなり画面に語りかけ、「うわぁ、イーストウッドが大林宣彦をパクってる!」と驚愕しましたが、これは原作のミュージカル舞台に忠実な撮り方みたいですね。イーストウッドにしては肩の力が抜けた様な軽い撮り方も珍しいところです。随所に彼の遊び心が感じられ、TVで流れるのは『ローハイド』の若き日の御大の登場シーンというのは笑うツボです。だいたいからして、クリストファー・ウォーケンを起用していること自体が、“Can't Take My Eyes Off You”をフューチャーした名シーンがある『ディア・ハンター』を想起させてくれて面白いところです。ラストのカーテン・コールよろしく登場人物総出で繰り広げられるミュージカル・シーンには、もう鳥肌が立ちました。 フォー・シーズンズとなるとビートルズ世代の自分よりひとつ前の時代の音楽という認識でしたが、さすがに使われている楽曲はほとんど全て聞いたことがあるものばかりというのにはちょっと驚きました。なんせ『タモリ倶楽部』のあの有名なオープニング・テーマまで出てくるんですからね。 それにしてもオリジナル舞台と同じジョン・ロイド・ヤングの歌唱力は驚愕ものです。てっきりフランキー・ヴァリのオリジナル音源を使っていると思ってましたから、わたくし。また知られざるフォー・シーズンズの秘話も知ることが出来て面白かったです。ボブ・ゴーディオをメンバーに紹介したのが若き日のジョー・ペシだったというのはびっくりです。そう言えばペシは歌手としてアルバムをリリースしているほどですから、音楽の世界との関わりは深かったみたいです。 ここまで来るとイーストウッドには、ぜひ本格的なミュージカル映画を撮って欲しいものです。でも監督したわけじゃないけどその昔『ペンチャー・ワゴン』で痛い目に遭っているから、ちょっと無理かな(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-10-29 22:09:44)
55.  インターステラー 《ネタバレ》 
これはまさしくクリストファー・ノーラン版『2001年宇宙の旅』そのものという感じですね。その世界観というか滅びゆく地球環境の描写は、アメリカのド田舎の描写だけに簡略化して見せ、後はひたすら時空を超える宇宙の探検にシフトしています。相対性理論やらワームホールは名称は知っているけど正直あまり理解していない自分ですが、まあこの様な観せかたならば初心者でも大丈夫でしょう。「もしブラック・ホールに吸い込まれたらどんな光景が観れるのだろうか?」ということに昔から興味がありましたので後半の展開ではちょっと期待していましたが、そこはちょっと期待外れだったかなと感じました。四次元を通り越して五次元まで登場してくる展開には驚きましたけど、私なりの解釈ですとノーランは「五次元は愛だ」と言いたいのかなと思います。ここまで引っ張って来て結論はそこかい!と突っ込みたくなる衝動も有りましたけど、マシュー・マコノヒーが見せる絶妙な父性愛が良かったので気にしないことにします。またこの映画は小さな役にいたるまで豪華なキャストで、あの卑劣な(というか至極人間的な)キャラまでマット・デイモンをあてるというのも、かなり贅沢なことです。 まあそれでも突っ込みたくなるところも有り、あんだけ離れた地球とのデータ通信が速すぎないかといううこと、宇宙飛行しているのにアン・ハサウェイがきちんと化粧している(様に見える)ところです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-10-20 23:36:45)
56.  女子ーズ 《ネタバレ》 
なんも期待せずに観始めましたけど、実は思わぬ掘り出し物でした。もう最初の30分のチャールズ司令官や怪人たちとのグダグダなガールズ・トークはもう爆笑です。考えてみれば、この映画は日本版『デス・プルーフ』みたいなもんなんですよね。ガールズ・トークと女子アクション(もっとも日本の方は迫力負けですけど)は共通じゃないですか、ちょっとムリありますけど(笑)。それにしてもこの監督の“戦隊もの愛”には頭が下がります。地球制服を企む怪人たちが、埼玉かどっかの砂利採掘場をいつも通って都心を目指していたとは不覚にも今まで気が付きませんでした(笑)。もう一つ伝わってくるのが、監督の強烈な韓流憎悪じゃないでしょうか。レッドの恋愛シークエンスはモロに韓流のパロディで、メチャクチャ韓流ドラマをコケにしてるような気がするんですけど。女子―ズに居酒屋で群がってくるチャラい男たち、もう雰囲気が韓流男優そのものって感じでした。 それにしても桐谷美玲や藤井美菜が「ウ●コ~ウ●コ~」なんて連呼する映像を眼にするとは、世の中何が起こるか判らないもんです。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-19 20:49:02)(良:2票)
57.  ジャッジ・ドレッド(2012) 《ネタバレ》 
スタローン版のせいでどうしてもイメージが悪くて可哀想なんだけど、最近のマーヴェル・コミック映画とは一線を画したダークな世界観が素晴らしい。主演のカール・アーバンはメットを被りっぱなしでとうとう最後まで素顔を見せずじまいでしたけど、これもある意味いい役者根性と言えるでしょう。ルーキー・ジャッジのオリヴィア・サールビーは 反対に被らないで通したけど、“ヘルメットの装着すると超能力が使えない”というのは実に上手い説明です。たしかにアーバンはどうでもいいけど、彼女のルックスを堪能できるのは眼福ですよね(笑)。 それにしても、ここまで顔面破壊に拘った映画には初めて出会った気がします。これはかなりエグくて痛そう。展開が気のせいか『ザ・レイド』にそっくりになっちゃってるのは、まあご愛敬と言うことで。でも8万人が居住している200階建てのビル、そして8億人がうごめくアメリカ東部全体ぐらいの規模を持つメガシティなんて、もうそのセンス・オブ・ワンダーには痺れてしまいますね。バルカン砲で撃ちまくられても無事だったり銃弾が命中してもまるでプレデターみたいに応急処置が出来たり、などご都合主義なところはありますがシンプルながらも見応えは十分でした。 カール・アーバン自身が署名活動しているそうですが、続編製作は難航しているみたいですね。私もドレッドとアンダーソンのコンビをもう一度観てみたいので、署名してみようかな。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-13 23:08:49)
58.  ザ・パシフィック<TVM> 《ネタバレ》 
スピルバーグとトム・ハンクスが製作総指揮をとったいわば『バンド・オブ・ブラザーズ』の太平洋戦争・海兵隊版と呼べるTVミニ・シリーズです。“ミニ”と言いましても全篇通してみれば8時間半あまりもあり、製作費も200億円(!)かけているぐらいですから凄いもんです。原作はドラマにも登場するユージン・スレッジとロバート・レッキーがそれぞれ書いた従軍回想記で、それに海兵隊の伝説的な英雄ジョン・バジロンの物語を加味した脚本構成となっていますが、この脚本は『バンド・オブ・ブラザーズ』よりも優れているんじゃないかと思います。この三人は所属する連隊も実戦参加時期も違っていて物語の中では絡むところはないのですが、観終わってみるとこの三人が同じ中隊で肩を並べて戦っていた様な錯覚に陥るほど秀逸なストーリーテリングでした。 ●ガダルカナル まず彼ら第一海兵師団はガダルカナル島に投入されるのですが(スレッジはまだ入隊していない)、米軍側から見たガダルカナル戦がまた興味深いところです。夜に海上で砲火が瞬き砲声が聞こえてくるのを見物して「海軍が日本艦隊を追っ払ってくれてるな」と歓声をあげてるんですが、実は米艦隊が惨敗した第一次ソロモン海戦を陸から見ていたわけで、夜が明ければ艦隊も輸送船もいなくなっていて孤立無援になっていることに気がついて愕然としまう。これはもう『遠すぎた橋』の英空挺部隊と同じ様な状況で、この状態から日本軍を撃退したんですから決して楽な闘いじゃなかったことが判ります。この戦いでバジロンは名誉勲章を授与されて本国帰還し戦時公債ツアーのスターになります。●ペリュリュー 三話も使って繰り広げられるのがぺリュリュー島の死闘で、ここから実戦経験したスレッジの視点で描かれます。さきに両陛下が訪れたことで少し知名度は上がりましたけど、あまり現代日本人には馴染みがないこの島で海兵隊がいかに苦戦したかが判ります。ガダルカナルでは輸送船から縄梯子を伝って上陸用舟艇に乗りこんでいたのに、この作戦では水陸両用戦車を使う様になってきて、海兵隊の戦術の進歩がよく判ります。日本軍も九五式戦車(もちろんレプリカですけど良く出来ています)を繰り出して反撃するけどあっけなくやられちゃいます。このシリーズでは武器考証はハイレベルですが、全篇を通じても代表的な分隊火器であるブローニング自動小銃が使われていないのは解せないところでした。●沖縄 それまでは民間人のほとんどいない孤島が戦場でしたが、沖縄戦になってくると日本人としては観るのが辛くなってきます。米軍にも苛酷な自然環境は平等ですし、ずぶぬれの泥だらけで野宿しなければいけないというのは、歩兵のつらいところです。育ちの良いスレッジまでもが日本兵の死体から金歯を集める様になってきて、戦争が人間性を狂わせる恐怖をひしひしと感じました。 このシリーズでは一話をまるまる使ってスレッジとレッキーが復員する姿を描いているのが、物語に深みを与えてくれたと思います。狩りに行ったけど「もう死ぬまで銃を撃ちたくない」と父親の胸で泣くスレッジの姿で物語は終わります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-29 20:52:55)
59.  最後のマイ・ウェイ 《ネタバレ》 
この映画を観るまではクロード・フランソワという人の事は正直知りませんでした。60年代から70年代にかけてフランスで大人気だったアイドル歌手で、いわばフランスの郷ひろみか西条秀樹という感じでしょうか。またあの名曲『マイ・ウェイ』も実はこの人が歌ったシャンソンがオリジナルだというけっこう凄い人だったんです。 あまりにダサい邦題のせいもあり世間によくある歌謡もの映画と思っていたら、これがどうしてグイグイと引きつけられるパワーを持った作品で、最後にはホロリとさせられてしまいました。物語はスエズ運河会社の偉いさんの息子として生まれたフランソワが、歌手として成功してゆきこれから全米に進出だというところで信じられない様な事故で他界するまでを追ってゆきます。主演のジェレミー・レニエはメイクもあるでしょうが実際のクロード・フランソワにそっくりで、歌も上手いなと感心したけど良く調べると実際のフランソワの音源を使っているみたいです。この映画の巧みなところは、フランソワに決して感情移入させない様な距離を置いた撮り方をしていることでしょう。たしかにかなり自分勝手な男だし、若いころから整形して顔をいじっても平気だし、落ち目のときには仮病を使ってステージで倒れて同情を買うなんてことまでやってのけます。女性関係も男の眼からも勝手邦題で、フランス・ギャルとのエピソードでは“なんなんだ、こいつは!”って観てて腹が立つこと請け合いです。でもこれもジェレミー・レニエの名演のなせる業なのは間違いないでしょう。母親もまたろくでもなく、ギャンブル狂で借金の山を築くんだから困ったもんです。 成功した中盤以降はこの種の映画ではふつうだれるもんですが、変幻自在な映像を駆使してそのパターンに陥らないように工夫されていてそれが成功しています。朝起きてからファンが群がる自宅を出て始まるある日のフランソワを、長回しを多用して見せてくれたのにはこの監督の才気が良く出ていました。各所で見せてくれるフランソワのド派手なステージ・パフォーマンスも観ていて愉しかったですね。 スターと言うのは頂点に立った瞬間から落ち目になって忘れられてゆく恐怖が始まるものなんですね、そういうスターの強迫観念がとても切実に伝わってくる映画です。ちょっと長尺でしたが、時間を感じさせない濃い一篇でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-27 00:27:05)
60.  清須会議 《ネタバレ》 
昔から「お市の方はなんで柴田勝家の嫁になったんだろう?」と疑問だったんですが、この映画を観てそれはすっきり解決いたしました、あくまで三谷幸喜の視点なのは判っていますが実に説得力がありました。 清州会議をテーマにしてコメディを撮るとはそのアイデアには思わず脱帽、と言うよりも日本史には映画化したら面白い題材がまだまだ沢山ありそうですね。戦国武将がべらんめえ口調で喋るところは眼を剥く方もおられましょうが、価値観は現代人とは多少違っていても“人間はきほん損得で動くもの”という本質を描くには申し分なかったかと思います。その点で大泉洋の秀吉は好演で、正直こんなに上手い役者だったのかと驚きました。もっと怖かったのはお市の方をはじめとする女性陣で、中でも剛力彩芽の松姫の最後の笑い顔は凄かったです。お寧役の中谷美紀が見せる踊りも、なんか卑猥な動きですごい振り付けでした。 この映画の最大の欠点は評定の決着がついてからラストまでがだらだらと冗長なことで、忍者が秀吉を暗殺しようとするシークエンスなんか必要ないでしょ。最近の邦画には良くみられる傾向なのですが、せっかくテンポ良い脚本なので残念です。 明智光秀が仕留められるカットなど拘った映像も随所に観られ、思いがけなく良く出来た映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-19 20:12:40)(良:1票)
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