41. ローマの休日
《ネタバレ》 久しぶりに観ましたけど、やっぱり素敵ですね。ロマンスはもちろん、コミカルな場面も挟みつつ、押さえるとこは押さえて…と展開がテンポよく無駄な冗長場面もないので、キュッと詰まって楽しめます。オードリーは初々しさも然ることながら、演技が私的に発見でした。冒頭の子供っぽい王女から、アーニャとして街に繰り出すときの陽気で溌剌として、生き生きとした感じ、そして最後は王女としての威厳というか覚悟みたいな顔つきの変化に、これが映画初主演なんだろうかと驚いた次第です。対するグレゴリー・ペックのスマートな物腰もいい。難を言えば、借金するようなぐうたらに見えないというところでしょうか。ほとんどいちゃもんですけど。兎に角、ほんと2人とも、上品。気品があるんです。このような品を感じさせる俳優って、現代の同年代ではちょっと思い浮かばないです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-11-25 21:57:30) |
42. ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式
《ネタバレ》 父親のお葬式に集う人々の関係や背景、キャラクターが絶妙なハーモニーを醸し出し、とんでもない方向に絡み合う。お葬式は本来厳粛?なハズ…その一日を舞台に、こうもユーモラスに描くとは。それがあれでこうなるか!と展開に全く飽きず、クスクス笑いが止まりませんでした。上手いですね。特に、ピーターを棺桶に入れる場面に爆笑し、アルフィー叔父さんが、事あるごとにハワードを杖で小突く場面にも大笑い。冒頭&エンディングのアニメーションも好いし、音楽も良かったし、加えて最後の弔辞にはジンワリする仕掛け。笑えるけど、終始温かい。出演者もいい仕事で、いや~これは佳かったです。完璧じゃなくて、いいのだ。 [映画館(字幕)] 8点(2009-11-15 22:08:43)(良:1票) |
43. 昼下りの情事
《ネタバレ》 久しぶりに観たのですが、う~んやっぱりいいかも。一途で健気な嘘を突き通すアリアーヌの涙に、プレイボーイのフラナガンも溜まらず…あのラストシーンは永遠ですな。それを見守る父親もいい。少女でありながらも必死に女を演じようと嘘を重ねるアリアーヌと、弄ぶ側からいつしか振り回される側になるフラナガン。その過程を彩る音楽も心地いい。最初から最後まで上品で可憐。小さくても一級デザートを食べたような感じです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-10-24 19:18:45) |
44. イエロー・サブマリン
《ネタバレ》 何の気なしに観たらば…ひょえ~!前衛的なアニメーションに驚き。ストーリーはシンプル、メッセージはシンプル、でも表現はサイケデリック。非常に楽しかったです。そりゃこんな作品だったら、メンバーも気持ち変わるってば(ポールはそんなにだったようだけど)。“All You Need Is Love”はもちろん“Eleanor Rigby” “Hey Bulldog”…曲とアニメーションのコラボがお見事。“Nowhere Man”の描き方も素晴らしい!リンゴがジェレミーを船に誘うシーンに何だかジンワリしました。流石リンゴ。ジョージとポールの登場の仕方は、やっぱりという感じでニヤニヤ。最後、メンバーが実写で登場するのもご愛嬌です。 [DVD(字幕)] 8点(2009-10-24 18:59:19) |
45. プルートで朝食を
《ネタバレ》 ミュージカルなコミカルな部分を挿入し、まるでファンタジー。そう、ファンタジーに語らなきゃやってられない人生、悲惨でも物語にすれば何とかやってけるかもです。そんなキトゥンの現実逃避法は、キッチュでありながら感じ入るものがある。シリアスを避けながらも、終わらせて欲しい気持ちをふとした瞬間に覗かすキトゥンと、でも残って前を向くキトゥンに、心動かされました。アイルランドの社会的背景なども描写してるのも良い。そしてキリアン・マーフィー、素晴らしいですねえ。制服姿はちと無理な気もしましたが。何気にブライアン・フェリーも出ててビックリです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-09-01 23:24:01) |
46. 扉をたたく人
《ネタバレ》 静かな、だけどジャンベ(アフリカン・ドラム)の音のように、力強い作品。観終わった後、何だか胸が熱くなりました。扉を閉ざした老教授の毎日に、偶然の一つの出会いが訪れ、そしてゆっくりと扉を開けていく。その過程を丁寧に穏やかに、前半は綴っていく。そして暗転した後半、何もかもがフリだったと告白し、9.11以後扉を閉ざしたアメリカと、無力な自分自身に怒る。ラストの、地下鉄の駅のジャンベの音は、地下鉄の音に紛れようとも、決して消されはしない。静かな、でも強い抗議の音。秀逸なエンディングも然ることながら、原題と邦題も素晴らしい。役者も全員素晴らしいの一言。主演のリチャード・ジェンキンスはもちろん、ヒアム・アッバスも佳かったです。パンフレット見たら、この2人を念頭に脚本は書かれたんですね。ダレクとその彼女も佳かったです。秀作。 [映画館(字幕)] 8点(2009-08-19 23:41:07)(良:3票) |
47. ダーウィン・アワード
《ネタバレ》 学生カメラマンがドキュメンタリー制作のため随行するという設定が、何とも独特でおもしろかったです。主人公らも含め、対象者の行動を笑うと同時に、愛すべきお馬鹿さんにも思えて、いや~奇妙な人間賛歌(というのは言い過ぎかもしれませんが)という感じです。駄目な奴ほど可愛いっていうのかしら。歯科に突っ込んだ車の事件で、まさに突っ込むマネで説明するシリに大笑いし、シャワールームに用意周到のあまりのマイケルに爆笑です。バロウズやケルアックと、ビートニクスなスパイスも効いてて思わず刺激が。あと出演者が地味に豪華ですね。皆さんおっしゃるように、アルファベット順のエンドロールも嬉しいところ。Metallicaはご本人さん達が出演しとりましたが、Wilcoは曲も流れないのかと思ってたら、台詞を加味したシーンでの使用でニヤリとしちゃいました。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-14 19:58:04) |
48. バック・トゥ・ザ・フューチャー
その昔、マイケル・J・フォックスは、私と姉のアイドルでした。10年以上振りに観ましたが、やっぱりキュート♪嬉しくなりました。話もさくさくテンポよく、すさんだとこなんてちいっともない、ドキドキワクワクなエンターテイメントの楽しさ溢れる一作。ロレインとジョージなど各キャラが分かりやすく、おかげで冒頭と最後の逆転へのスパイスを、より効かせてくれてました。舞台背景で描かれる、エアロビだのスケボーだのレーガン大統領だのヴァン・ヘイレンだのヒューイ・ルイスだのと、ザッツ・'80s!に懐かしくもなり、チャックベリーでギターをかまし、終盤のプレイでメタルになる先取りなマーティにも釘付け。マーティとドクの友情は、何だか観てて暖かくなりますね。見終わった後、マイケルの病気が悪くならないで欲しいと、ひっそり思いました。 [DVD(吹替)] 8点(2009-07-24 01:36:30) |
49. グラン・トリノ
堅物で偏屈なウォルトが隣家のスーやタオと出会い触れ合ううちに、生きる場所を再び取り戻し、死に場所を見つける。そんな一人の男の生き様・死に様を見た気がして、胸を揺さぶられたし、涙が出た。いや、佳かったです。話の流れや展開に無駄がなく、すぐに映画に入り込めたし、シリアスになりすぎず、時にユーモアを交え、とても佳い映画を観たという感じ。あと、様々な人種が反目し生活する描写に、ウォルトの玄関先の星条旗よろしく“アメリカ”な作品でもありました。しかし、ウォルト=クリント・イーストウッドはカッコ良すぎだなあ(苦笑)。監督も役者も音楽も素敵だなんて、多才すぎでしょ。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-16 14:48:14) |
50. 12人の怒れる男(2007)
《ネタバレ》 リメイクであると同時に、ロシアの映画としても成立。都市部と地方との軋轢、格差、宗教、民族、賄賂問題など、現代ロシアをギュッと凝縮し、織り込む技量に驚嘆。各キャラクターとも興味深かったですが、特にタクシー運転手の息子の話は、前が頑固で偏屈だっただけに、思わず泣いてしまった。また、話が長い・(一旦親しくなると)情に厚いといったロシア人の特徴を巧く描いていて、非常にロシアな映画でした。最後はアメリカ版とは異なり、判決後の責任について考える重要性を提示し、かなりズシンとくる作り。終始ぐいぐい話に引き込まれました。秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2009-04-18 20:42:16) |
51. アフター・ウェディング
《ネタバレ》 一瞬ヤコブがヴィゴ・モーテンセンに見えた…というのはさておき、とてもドラマティックな巧い作品でした。冒頭こそ全員の関係があんまり見えないものの、アナのスピーチを契機に、ストーリーが緊迫したものへとパチンと切り替わる。最初の結婚式と終盤の葬式と、それらライフイベントがもたらす意味や各々の気持ちの変化など、全員が一堂に会する場所を舞台として改めて描くとともに、それからどうなるのかという含みも持たせる。そして何より、心情を語り、話の展開を担う眼のショットの役割は大きかった。しかしドグマ映画っぽいなあと思ってたら、昔撮ってたんですね。Sigur Rosの曲はやっぱり佳かったです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-08 16:49:52)(良:1票) |
52. わが谷は緑なりき
私を映画好きにさせてくれた作品の1つ。決して派手な内容ではなかったし(確か)、小さい頃観たきりですが、なぜか心に残ってます。 [地上波(字幕)] 8点(2009-01-11 14:47:49) |
53. 誓いの休暇(1959)
《ネタバレ》 決して褪せることないであろう反戦映画、地味に秀作。 戦争がなければ真っ当に育めたであろう友情、夫婦愛、勇気、そして愛情を道中に描き、通して反戦を訴えていました。 アリョーシャがまた好い青年なんですよね。青年然としているというか。列車で偶然に出会うシューラとの淡い恋愛は、青春を感じると同時に切なかった。「待っていて」と言うアリョーシャの列車を、何度も振り返りながら駅を後にする、シューラの小さな背中が印象的。 同じく印象に残ったのは、母親がアリョーシャとの束の間の再会へと駆ける、広大な麦畑の場面。果てしなく広がる一面の麦畑、ロシアの大きな自然と母の愛を感じました。再び戦地へと帰る息子を見送る母親の背中と、延々と続くような道のラストシーンが胸に残りました。 [地上波(字幕)] 8点(2009-01-11 14:27:24)(良:1票) |
54. イエスマン "YES"は人生のパスワード
《ネタバレ》 カールは私か?と思ってしまったが最後、この映画にまんまと嵌まってしまったようです。少々強引な展開があったり、ジム・キャリーの演技のしつこさが鼻についた部分があったりするものの、自己啓発集会の流れではなく、自分の意志で“No”と伝える最後にホッとしました。「自分も怖い」と告白する場面にはちょっとグッときました。笑えもするけどホロッともする。Eelsの音楽もすごくハマってるし、Superchunkなども使用され、且つZooeyの歌声も聴けて結構お得でした。しかしカールも然ることながら、上司のテンションも高くて素晴らしい(笑)。エクスペリアームス! [DVD(字幕)] 7点(2010-09-12 21:49:03) |
55. ある愛の風景
《ネタバレ》 喪失と再生がテーマのスザンヌ・ピネ監督、本作も目や口、手のショットを多用して、孤独感や想いを綴っていてやっぱりドキリとさせられました。子供の台詞にあるように、ミカエルの「二度目の死」の悲劇も、彼の不在中の弟のヤニックと兄嫁の(安っぽい表現で恐縮だけど)触れるか触れないのメロドラマな部分も、よくある素材といえばそうなんだけど、決して下品な印象ではないのは、端がボヤッとして明るすぎない画面のせいか落ち着いた演者のせいなんでしょか。それにしてもスザンヌ監督、不倫とか横恋慕とか好きだなあ。正直、中東云々の辺りは余計か?と思ったけど、本作のテーマはそこではないし、ミカエルの崩壊ポイントなので気にしないことにします。(しかしこの作品ハリウッドリメイクされるそうで、あの俳優陣にこの大人な雰囲気が伝えられるのかと、非常に全く余計ながらも心配です。ブルブル。) [DVD(字幕)] 7点(2009-12-20 01:00:15)(良:1票) |
56. その土曜日、7時58分
時間を遡り巻き戻すシーンの多用と凝っていて、そこはおもしろかったのですが、話が如何せん暗く重くズッシリとくる内容。兄弟の破滅ぶりも然ることながら、父親が事件の発端に気付いた瞬間の形相に、恐ろしい悲劇を感じました。あの闇屋がそう効くのかという…。家族間にあった、屈折した積み重なった思いが、さらに事件を複雑にさせる。女達は蚊帳の外。身内の男に滅ぼされ、自らも堕ちていく様に、何ともいえない気持ちになりました。巧い作品ではあるし、出演者も流石の演技とは思うけど、もう一度観たいか?と言われればちょっと考えるかな…。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-24 19:30:30) |
57. フル・モンティ
《ネタバレ》 冒頭のシェフィールドの過去と今を紹介する下りといい、メンバーの状況をさりげなく語る部分といい、展開に無駄が無く、話が分かりやすくて、コンパクトに楽しめました。ガズの状況もだらしないけど、ジェラルドの状況は身につまされたなあ。すっかり自信をなくしたデイブにかける妻の一言(「私が見たいのよ、おデブちゃん」だっけ)にちょっとキュンとしてしまいました。失業風吹くけど、悲喜こもごも、文字通り裸一貫で一夜を彩る、その姿に笑いもしポジティブになる作品でありました。でもあのステージの後、彼らどうなったんでしょ?ちと気になったりもします。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-14 20:19:21) |
58. フロスト×ニクソン
互いの舌戦が堪能できると思ってただけに、えっこれだけ?という感じ。インタビュー場面は、もう少し長くでもよかった(実際の対談は知りませんが)。しかし両者のギラギラした野心、それを取り巻く参謀達の描写が非常に丁寧で、見応え十分。知的でスリリング。役者らは当たり前に巧かった、での余計に楽しめました。 [映画館(字幕)] 7点(2009-04-18 21:22:57) |
59. 僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ
あまり何も知らずに観たのですが、最後実話と知ってビックリ。事実は小説よりも奇なり、でした。割礼は言葉しか知らなかったのですが、そういうことにより、戦時中窮地にも陥りリスクを追うということがよく分かりました。またドイツとソ連と、ナチスとコミュニスト両方の教育の描写も興味深かかったです。途中、ヒトラーとスターリンがダンスするシーンにあるように、何か戦争やイデオロギーなるものが、一種馬鹿馬鹿しくも感じました。しかしヒトラー・ユーゲントの学校生活は、主人公にとって一瞬たりとも気が抜けず、観ていて一番厳しかったですね。話の展開もテンポよくてダルくならないし、シリアスだけどホッとする場面もある。地味に秀作でした。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-03-08 19:40:31) |
60. 明日へのチケット
《ネタバレ》 結構贅沢なオムニバス。3つともそれぞれに佳かったし、3つとも苦み(淡い恋心と見て見ぬ振り、傍若無人な言動の果て、偏見と疑い)がリアルに描かれていて、う~ん流石だなあという感じです。でもどこかユーモアもある。例えば、最初の教授がミルクを持っていく時の、向いの軍兵がカーテンで顔をソッと隠して寝てるふりするところなど。個人的にはサッカーとケン・ローチ好きなので、最後の話がやっぱり好き。半分自ら招いたどうしようもない状況にどうするどうなるとハラハラして終着駅に着き…そうなるか!と爽快でした。ASローマサポのお出迎えは頼もしいですね。ベッカムユニを着ていたアルバニア系移民家族といい、軍隊、格差、サッカーと、全編何だかとてもヨーロッパな作品でした。 [地上波(字幕)] 7点(2009-03-08 17:27:25) |