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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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721.  怒り 《ネタバレ》 
殺人事件から一年後、容疑者に特徴の似た三人の男がそれぞれ東京、千葉、沖縄に現れ、周囲の人々と関わっていく様を描いた群像劇だが、この中に犯人はいるのか、それは誰なのかというよりも、三人と関わる人々の人間模様を中心に描いていて、豪華なメインキャストの熱演もあってドラマとしてはそれぞれに見ごたえのあるものになっていると思う。それに犯人は誰という観客がもっとも興味を引くであろう部分にもミスリードを多くして最後までその興味を持続させるのもよく考えたらありがちに感じるもののそこそこうまく、そのおかげで引き込まれた部分もある。犯人のモンタージュ写真は三人の特徴をよく捕らえたものになっているが、モデルとなった実際の事件の犯人にも似ているあたりは細かい。ただ、脚本としては主題のほかにいろんな要素を入れているためにやや散漫な印象が残るものになってしまった感があるのも事実で、とくに沖縄パートの米兵によるレイプ事件はデリケートな問題ゆえに群像劇のエピソードの一つとして描くには無理があり、これをやるならこのテーマだけで社会派映画を別に一本作ったほうがいいような気がする。殺人事件の犯人は最後に判明するが、犯人の突然豹変するその姿はそれまでのふるまいからするとどうしても違和感を感じさせるものであり、なにかやや強引に犯人を定めてしまった感がある。またその犯人が殺されるという結末も強引に後味の悪い方向に持っていこうとしてる感じで好きになれない。ほかの二つのエピソードが後味もそんなに悪くなく終わっただけに、このパートの後味の悪さが際立ってしまい、見た後はなにか微妙な気持ちになってしまった。せめて、群像劇ではなくオムニバスだったら印象は違っていたかもしれない。それにいっそこの三人の中に犯人はいなかった結末でも良かった気はする。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-07 00:03:01)(良:2票)
722.  ウホッホ探険隊 《ネタバレ》 
森田芳光監督が脚本を担当した離婚がテーマのホームドラマ。コミカルな雰囲気のタイトルとは裏腹にネタとしてはシリアス。でも、見ていてそこまで深刻な感じはなく、どこかコミカルでからっとした印象が残るのはやはり森田監督の脚本によるものなのだろう。しかし、森田監督と根岸吉太郎監督の作風の違いか同じく家族を描いた森田監督の「家族ゲーム」と比べてしまうと、あくまで正統派な感じで毒気がなく、そこが物足りなく感じてしまい、本作への森田監督の脚本での参加は根岸監督からの依頼だったそうなんだけど、もしも森田監督が自ら監督も手掛けていたらまったく違う映画になっていたかもと思わずにはいられない。でも、根岸監督の演出は丁寧で、傑作・名作とまではいかないもののドラマとしてはそこそこよく出来ていて、森田監督の脚本に多くを求めなければ普通に見られる映画ではある。十朱幸代演じる妻が悩んで疲れていくくだりはなかなかにリアルだし、彼女が小学生の息子たちに向かって「私はあなたたちの悩みを聞いて解決することができるのは自分も経験したことだから。あなたたちが私の悩みを聞いても解決できないのはまだ経験がないから。だから一人で悩んで一人で解決するしかないの。」という言葉を放つのは一見八つ当たりのようにも聞こえるが、思わず同情してしまう部分もあり、印象に残る。それにすべてを描くのではなく、離婚後に愛人と別れたことを夫が「元」家族に告げるところでパッと終わらせるのはそのあとのことを見る側がいろいろ想像できる余地を残しているのがいい。(今どきの映画であればたぶんこうはいかないだろう。)しかし、藤真利子演じる愛人の人物設定はよく分からず、相手の妻に嫌がらせもしておきながら、いざ離婚したとなると途端に別れてしまう神経は意味不明だった。ここをもうちょっと何とかしてほしかったな。夫役の田中邦衛は「北の国から」の五郎とはキャラ的にまったく違う役柄なのだが、「北の国から」とは逆に自らの不倫が原因で離婚をする役柄というのが面白い。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-17 00:09:36)(良:1票)
723.  五人の突撃隊 《ネタバレ》 
1944年のビルマ戦線を舞台にした井上梅次監督による大映の戦争映画。大映の特撮は東宝のそれに比べて一歩劣るという印象があるのだが、本作は本物の戦車が出てきたりしてかなりリアリティと迫力のある映画になっていて、音楽のまったくない終盤の戦闘シーンもリアル。主要人物の五人も故障した敵の戦車を修理・操作するために集められるのだが、この五人それぞれの背景のドラマが回想形式で語られていて、これが本作に深みを与えている。ピンチに陥った部隊に旅団長の少将(山村聰)とともに派遣された野上上等兵(本郷功次郎)。その部隊の隊長が野上との関係がうまくいっていない父親(大坂志郎)である。この親子のドラマをはじめ、出産を控えた妻がいる青年や、結婚式の真っ最中に招集令状を受け取った青年、なかなか上達しない落語家といった様々な人生模様が描かれているが、やはり夢も希望もある登場人物たちが後半、戦場で命を散らしていくのは見ていてつらいし、とくに妻とのこれからの平和な生活を戦争によって破壊された二人はいたたまれない。五人の中で唯一生き残るのが不良あがりの橋本(川口浩)というのも、戦争の矛盾と皮肉を感じさせていて印象的だ。ラスト、その橋本の悲痛な叫びが心にいつまでも残る。また、ドラマ部分だけでなく、娯楽活劇としても見ごたえのある作品になっていて主要人物五人の背景のドラマをきっちり描きつつ、そのドラマと並行して活劇としてもしっかりと見せ、その両者をバランスよく両立させることに成功している井上監督の手腕は確かなもので、素直に面白いといえる戦争映画で、あまり知られていないのは残念だが、じゅうぶんに傑作だと思う。ついでにもう一言つけ加えさせてもらえれば、チョイ役だが野上上等兵の兄役でブレイク直前と思われる田宮二郎が出演しているのはけっこう貴重かもしれない。
[DVD(邦画)] 8点(2017-12-15 20:32:59)
724.  CURE キュア 《ネタバレ》 
当時ちょっと話題になっていた記憶がある映画だが、あまり期待しないで今さらながら初めて見た。(黒沢清監督の映画を見るのもほとんどこれが初めて。)サイコキラーのマインドコントロールによる連続殺人事件を題材にしているが、このテーマがいかにも90年代の終わりごろのスリラー映画らしさがあるし、また同時に当時とてもタイムリーなネタでもある。前半は間宮(萩原聖人)の登場後から彼が出会う人々を次々に暗示にかけていく様が描かれるのだが、あまりに簡単に暗示にかかりすぎと思えてしまい、これはちょっとと思いながら見ていた。それに間宮の「あんた誰」で始まる暗示方法も最初はインパクトがあるのだが、2、3回繰り返されるとイライラしてフラストレーションがたまってしまう。(病み上がりで見てたからよけいに。)でも、後者は観客に対しても間宮への憎悪を募らせるという黒沢監督の意図があったのかもしれないと感じた。後半はこの事件を捜査する刑事 高部(役所広司)と間宮の対峙が描かれているが、ここからは引き込まれた。精神を患っている妻(中川安奈)を持つ高部は間宮と対峙していくうちに彼に影響されていく(「妻が人生のお荷物」と言い切るあたり、いつ間宮の暗示にかかってもおかしくない。)わけだが、最終的には間宮の伝道師としての役割を高部が継いだともとれるラストのレストランのシーンはいやでも印象に残るし、はじめから終わりまで説明的な部分がほとんどなく、いろいろ考察できるのがいい。でも、本作ではそれが作り手が映画を見る人を信頼しているというよりは、なんか挑戦的な感じがして少し鼻についた。「犯罪者の心理なんてたとえ本人であっても分からない。」という言葉にはいろいろ考えさせられるものがある。とても完成度の高い映画だと思うけど、やっぱり個人的な好みでいえば苦手な映画かもしれない。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-10 22:13:10)(良:1票)
725.  大空港2013<TVM> 《ネタバレ》 
三谷幸喜監督が「shortcut」に続いて手掛けたWOWOWの単発ドラマ。今回も一度もカットを割らずにすべてワンカットで撮影しているが、山の中が舞台で基本的に二人芝居だった前作に対し、今回は空港が舞台で10人以上の人物が登場する。これだけで前作以上の撮影の大変さが伝わってくるのだが、同時に前作同様に舞台人である三谷監督ならではの作品とも思う。ストーリーは天候不順のため松本空港に緊急着陸した羽田便の乗客たちを出発までの間、竹内結子扮するグランドスタッフが対応するというもので、「THE 有頂天ホテル」のような群像劇にしようと思えばできたところを、主人公が対応する乗客を一組の家族に限定したことで、逆にシンプルになっているのが良かった。(ワンカット撮影で本格的に群像劇をやろうとしたら撮影はもっと大変かも。)その家族はそれぞれ事情を抱えているのだが、ひとりひとりの描き方が強烈で個性的なのも三谷監督らしく、安心して見ていられるし、楽しい。そんな家族に振り回される主人公を演じる竹内結子もハマリ役で、とくにラストのヘリを見送るシーンの笑顔がなんとも言えず、印象的だった。それともう一つ、本作はワンカット撮影に加えて、劇中の時間を実際の時間と一致させているみたいなのだが、それもなかなか効果的だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2017-12-03 17:28:52)
726.  short cut<TVM> 《ネタバレ》 
溝口健二監督や相米慎二監督など長回しを多用することで有名な監督はたくさんいるが、なんと三谷幸喜監督によるこの作品は始めから終わりまでの112分間一切カメラが止まることなくすべてをワンカットで撮影するという実験的なもので、その発想に舞台演出家である三谷監督らしさを感じずにはいられないし、またそれを映画ではなく、テレビドラマでやっていることにもすごさを感じる。内容はというと山道で迷った夫婦(中井貴一、鈴木京香)の会話劇であるが、それを飽きさせずに最後まで見せきる脚本と、主演ふたりの演技が巧妙で、すごく面白かった。とくに山に入って野生化したようになってしまう妻とそれに対する夫のリアクションが最高で、それ以降この二人のやりとりを見ているだけでもうずっと笑いっぱなしだった。(三谷監督の作品の中でも本作はとくにかなり笑える部類だ。)でも、この夫婦の仲は円満ではなく、冷めている設定。それを思うと、ひょっとしたらこの夫婦の設定は自分と小林聡美を参考に書いたのではと思えてくる。(下の方も仰られているように本作は三谷監督が離婚をした年に出した作品。)エンドロールをバックにしたラストの河原のシーンからの幸せそうな二人を見て、三谷監督なりの夫婦に対する理想のようなものを感じることができた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-11-23 22:36:52)
727.  三大怪獣地球最大の決戦
このキングギドラが一番好きだ。「怪獣総進撃」のところでも書いたようにキングギドラの第一印象は僕にとって最悪のものだったが、本作では初登場だけあってさすがにカッコイイ。特に隕石がだんだん怪獣の形になっていく登場シーンは印象深い。ゴジラとラドンをモスラが説得するシーンは怪獣の言葉を小美人が訳すというのが笑える。ゴジラはこれ以降、人類の味方になってしまったのが今にして思えば残念だが、それでもこの映画は好き。
[ビデオ(邦画)] 8点(2017-11-21 23:09:56)(良:1票)
728.  ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS 《ネタバレ》 
この映画の前作である「ゴジラ×メカゴジラ」を見てから5年ほど経っていたため、前作をよく覚えていないとつらいのではないかと思っていたが、前作をそれほど意識しなくても見られる内容だった。「モスラ」の続編でもあり、小学校の校庭に机を並べて作られた紋章とか、インファント島の写真とかもう無条件で懐かしい。でも、展開はモスラの成虫が最初にゴジラに挑むとか、卵から産まれる幼虫が双子だったりしてなんか「モスラ対ゴジラ」の焼き直しっぽく、最後のほうの機龍もジェットジャガーと芹沢博士を思わせていてちょっとやりすぎのような感じがした。「モスラ」の登場人物である中條信一を演じる小泉博の登場もマキノ雅弘監督の東宝「次郎長三国志」シリーズをここ最近ずっと見ていたせいか、三五郎やたら老けたなあという印象。でもどうせなら「モスラ」でヒロイン・花村ミチ役だった香川京子にも出てほしかったなあという気がしないでもない。まあそれはさすがに無理っぽいけれども。
[DVD(邦画)] 4点(2017-11-20 23:09:04)
729.  TRICK トリック 新作スペシャル3<TVM> 《ネタバレ》 
スペシャル版第3作。ドラマシリーズはこれで一応完結なのだが、この後に劇場版が一本あるため、そういう雰囲気は一切なくいつも通り。今回も山田(仲間由紀恵)と上田(阿部寛)のコンビのやりとりは相変わらず安心感があって楽しい。今回は「犬神家の一族」を元ネタに話が展開するのだが、もうここまでくるとネタ切れ云々ではなく、それもこのシリーズらしさだと思えてきてあまり気にはならなかった。見始めてすぐは前回のスペシャル版のパターンから犯人は三姉妹の中の誰かかと思っていたのだが、三姉妹は殺しの標的であるという点で、完全に「犬神家の一族」の模倣にはなっておらず、そのおかげか前回のスペシャル版よりは面白かった。(誰が犯人かは分かりやすすぎる気もするけど。)でも、このシリーズは単なる犯人当てよりも超常現象の解明や、自称霊能力者との対決の話のほうが面白いかな。「スケキヨ」というセリフが出るなどのこのシリーズらしい小ネタも相変わらず楽しいのだが、毎回思うけどやはり細かすぎる。舞台となる水神家の顧問弁護士を上條恒彦が演じている(しゃべる時に時折自分の持ち歌の一節を歌う小ネタあり。)が、そういえばリメイクの「犬神家の一族」(2006年)で古舘弁護士を演じていたのは中村敦夫だったなと思い出した。これもやっぱり「木枯し紋次郎」つながりのキャスティングなのだろうなぁ。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-11 23:14:05)
730.  人斬り 《ネタバレ》 
かなり以前から見たいと思っていたが、DVD等が出ておらず、なかなか見る機会に恵まれなかった映画の一つなのでようやく見れたことがまず嬉しい。幕末の「人斬り以蔵」として有名な岡田以蔵を主人公に、彼と武市半平太や、坂本竜馬、田中新兵衛らの関係を描いているが、橋本忍の脚本はやはりしっかりとしていて、武市の命令で次々に暗殺を遂行した以蔵が、結局は使い捨てにされてしまうという悲劇性がよく描かれていて見ごたえがある映画で、素直に面白かった。(見たいと思いながらも五社英雄監督ということで不安にも思っていたが、今まで見た五社監督の映画の中ではいちばん面白い映画だと思う。)勝新主演映画を見るのが久しぶりなのだが、演じる以蔵は豪快な存在感があり、座頭市とはまた違う勝新の魅力を感じることができる。仕事に参加させてもらえなかった以蔵が一日かけて長距離を走るシーンは映像的にとても美しく、異様な迫力があり、印象に残るし、勝新は「薄桜記」の冒頭とかでも走っているが、どこか「決闘高田馬場」のバンツマをほうふつとさせるものがある。武市役の仲代達矢はギラギラした存在感で、武市のこれでもかというような非情さをうまく演じていて、メインキャストの役では久しぶりに見る気がするのだが、あらためて名優だと感じた。この二人に対して竜馬を演じる裕次郎は勝新との共演がみどころとなるが、やはりというかなんというか違和感があり、裕次郎には時代劇は似合わないなあと思う。そして忘れてはいけない三島由紀夫演じる田中新兵衛。三島由紀夫を俳優として見るのは「からっ風野郎」以来、二度目なのだが、本作でも演技はかたい。しかし、独特の存在感とオーラを放っていて、その演技のかたさも新兵衛に不思議とマッチしているし、なかなか味があり、良かった。本業が俳優ではないながら、この役は三島由紀夫の俳優としての代表作になるのではないだろうか。本作は三島事件の一年数か月前に公開されているが、濡れ衣を着せられた新兵衛が切腹するシーンはその後の三島由紀夫の運命を予言しているかのようで驚かされた。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-11-05 22:59:03)
731.  山椒大夫 《ネタバレ》 
「安寿と厨子王」はタイトルだけ知ってたけど、どんなストーリーかは全く知らなかったので悲惨なストーリー展開にはかなり驚いた。安寿と厨子王が連れて来られる山椒大夫の荘園が現在からすればモロに北朝鮮みたいな感じなのも恐ろしい。全体としては「雨月物語」や「近松物語」と並んで世界的評価の高い作品というのが頷ける素晴らしい映画で、安寿が入水自殺する湖のシーンや親子が引き裂かれるシーンなど映像がとにかく美しく、溝口映画にはやっぱり宮川一夫のカメラだなあと感じる。母親を演じる田中絹代も冒頭とラストでは本当に別人のようになっていて女優魂を感じた。まさに完璧な映画だと思う。それにしてもこの時代の溝口健二ってとても晩年とは思えないくらい傑作を連発していてほんとにすごい。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2017-11-03 20:50:17)(良:1票)
732.  薄桜記 《ネタバレ》 
雷蔵と勝新が共演する忠臣蔵の番外編的映画。大映オールスターキャストの「忠臣蔵」をひと月半ほど前に見ていたので勢いで本作も見た。あまり期待はしていなかったのだが、当時既に人気スターだった雷蔵とまだ売り出し中の頃だった勝新がほぼ同格の扱いで共演しているのが最大のみどころ。物語は赤穂浪士の討ち入りを背景に、丹下左膳がモチーフと思われる雷蔵演じる丹下典膳と、勝新演じる赤穂浪士の一人である中山(堀部)安兵衛を中心に展開していくが、重くシリアスでドラマとしてはまずまずといったところでそんなに悪くないし、思ったよりは楽しめた。中でもクライマックスの片手片足の丹下が寝たまま複数の敵と斬り合うというシーンは今まで見たことのないような立ち回りシーンで、インパクトはあるし、印象にも残る。しかし、美術セットが大映にしてはなんだかしょぼく、比べてはいけないが「忠臣蔵」とは差がありすぎるし、回想形式で主要人物三人のモノローグが多く、一部ダイジェスト的に感じる部分があるのは話の性質上、仕方ないが、ちょっと残念に感じた。森一生監督の作品で、その手堅い演出自体には不満はないのだが、脚本を書いた伊藤大輔監督の演出でも見てみたかった気がする。
[DVD(邦画)] 6点(2017-10-29 10:15:04)
733.  春を背負って
木村大作監督の前作「剱岳 点の記」よりも万人請けしやすい感じで見やすいのだが、山や自然の美しさだけが印象に残り、木村監督は本当に山が好きというのはよく伝わってくる。しかし、人間ドラマとしてのみどころが薄く、ありきたりな感じで深みも感じられず山好きが作った山の映画という、それ以上でもそれ以下でもない感じなのは前作と同じ印象でハッキリ言って凡作。ただ前作で感じた木村監督以下本作の関係者たちの自己満足感は感じなかったのでそこは良かったかなと。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-17 17:48:15)
734.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 
この砕けたタイトルと、ポスターやDVDパッケージの印象からはっちゃけたコメディー映画を想像してしまうのだが、これが実話がベースのけっこうシリアスな話。でも、語り口は先週見た同じ中村義洋監督、阿部サダヲ主演コンビの「奇跡のリンゴ」とは対照的にそこまで深刻ぶることなく軽妙で明るい雰囲気で描いていて、それだけで個人的には「奇跡のリンゴ」より好み。それにこのタイトルは非常に映画の雰囲気とマッチしていて、それでいて話としてもなかなか面白く、そのバランス感覚も絶妙。磯田道史原作で「武士の家計簿」同様にお金がテーマになっているが、そこは千両を三億円など現代の円でナレーター(濱田岳)や劇中テロップで随時解説しているので見ているほうとしては実感がわきやすく、分かりやすかった。ドラマとしては親子や兄弟の確執という人情ものではありがちなストーリーが展開するが、このドラマも丁寧に描かれていて、また、映画の軽妙な雰囲気を壊すようなものではないのがうまく、思わずほろりとさせられた。それに「どこを見て仕事をしているのか」という劇中のセリフも考えさせられるものがあり印象に残り、前向きな気持ちにさせてくれたのは嬉しい。ちょい役でラスト近くに登場する殿様役をフィギアスケート選手の羽生結弦が演じているのがかなりのサプライズだったが、俳優としての演技にとくに違和感はなく、むしろ堂々としていてなかなか良かったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2017-10-08 12:49:52)(良:1票)
735.  奇跡のリンゴ 《ネタバレ》 
NHKの「プロジェクトX」あたりでいかにも取り上げられていそうな実話の映画化作品だが、中村義洋監督の演出も丁寧でオーソドックスに作られていて無難な感動作といったところ。主演の阿部サダヲはどうしてもコミカルなイメージの強い俳優だが、何年もかけて当時誰もやったことがない無農薬リンゴの栽培に挑戦する主人公を熱演していて意外と言っては失礼かもしれないが、良かった。中盤あたりの無農薬リンゴに取りつかれてしまったような姿はちょっと怖いものがあり、何もそこまでと思ってしまい、少しひいてしまったのだが、最初は病弱な妻を思ってはじめたことから諦められなくなり当初の目的を忘れて熱中してしまうというのは分からなくもない気もする。そしてついに離婚や自殺まで考えてしまうようになるに至るのは生々しいほどリアルで重く、見ているこちらまでどんよりと暗い気持ちになってしまった。しかし、自殺しようとした主人公がそれに失敗した直後に偶然無農薬リンゴ栽培の答えにたどり着くというのは脚色があるにせよ実話としては少々できすぎた話に思えてしまったのはちょっと残念で、さらにそこからの終盤30分ほどが少し長い気がした。良い映画なのは間違いなくて、さっきも書いたように作りも丁寧なんだけど、映画としてはせめて答えにたどりついた段階で終わっていても良かったんじゃないかなとも思う。それとあともう一つ。妻役の菅野美穂は悪くはないんだけど、朝ドラでいつも見てるのが原因でその役のイメージが強くなっているせいか、比べてしまうと朝ドラのほうがしっくりきている気がする。
[DVD(邦画)] 6点(2017-09-16 19:49:08)
736.  ルドルフとイッパイアッテナ 《ネタバレ》 
原作は20年以上前の小学生の頃に学校の図書室かなにかで読んでいたし、NHKで放送されたテレビ絵本も見ていたので、本作はそのストーリーを丁寧に映像化していてこんな話だったなあと懐かしさがありながら、うる覚えの部分がかなり多かったので新鮮な気持ちで見ることができた。間違って岐阜から東京にやってきたルドルフがイッパイアッテナやブッチーと出会うことによって広い世界を知っていく過程がよく描かれていて、ルドルフの成長物語としてはもちろんのこと、イッパイアッテナとの師弟関係も見ごたえのあるものになっていて、原作の良さは出ていると思う。イッパイアッテナがルドルフにかける言葉はどれも重みがあって深く、考えさせられるものがあるし、ルドルフとイッパイアッテナのそれぞれの飼い主への思いもしっかりと描かれ、それがきちんとドラマになっているのも良かった。ルドルフがたった一人(一匹)で岐阜を目指し、飼い主の家にたどり着いてからの展開は予想がついてしまうものの、やはり切なくついルドルフに感情移入してしまった。でも、そこから一人(一匹)で生きていくことを決意して東京に戻るルドルフの姿には勇気づけられた気がした。欲を言えばルドルフが東京から岐阜に帰るヒッチハイクの部分をもう少し見たかった気がしたくらい(この部分をロードムービー的に描いても面白いかもしれない。)であとは特に大きな不満はなく、最後まで楽しく見ることができたので、見て良かったと思う。そうそう、ヒッチハイク中のルドルフを乗せるトラック運転手の声をNHKのテレビ絵本で語りを担当していた毒蝮三太夫が演じていたのがなんだか嬉しかった。また機会があれば原作を読んでみたいなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2017-08-24 01:11:48)
737.  血と骨 《ネタバレ》 
崔洋一監督が「御法度」で俳優として共演したたけしを主演に起用して手掛けた映画。大阪へ渡ってきたたけし演じる在日朝鮮人の男の一代記を描いているが、とにかくこの男 金俊平の横暴で狂暴なキャラが終始際立っていて、演出やストーリー云々言う前にこのパワフルな主人公の存在に圧倒されっぱなしの2時間半で最後まで目が離せなかった。たけしは自身の監督作以外では久しぶりの主演だったそうだが、まさしくこの役はたけししか考えられないと思うほどにハマっていて、たけしなしにはこの映画は成り立たなかったのではと思う。ただ、やはり全体としては長い原作(未読)をがんばって映画にまとめているといった印象で、重厚で見ごたえある内容にも関わらずダイジェスト感が強くなってしまっているのは仕方がないと分かっていてもちょっと残念。とはいえ、連作でこの物語を見たいかと言われてもなにか微妙な感じ。絶対に感情移入できないような主人公なのだが、彼に振り回されるほかの登場人物たちには思わず同情に近い感情を抱いた。とくに、父親である俊平の暴行から逃れるために結婚し、その夫からも暴行を受け、自殺してしまう花子(田畑智子)が哀れすぎる。その通夜にふらりと現れた俊平が娘を出せと暴れるシーンは唯一、この映画の中で主人公の子供に対する愛情を感じさせていて良かった。(ちょっと笑ってしまったシーンでもあるけど。)ほかの出演者に目をやるとのちに「アウトレイジ」シリーズに出演する國村準や塩見三省が出演しているのが今になって見るとなんだかにやにやしてしまった。
[DVD(邦画)] 6点(2017-08-17 18:34:10)(良:1票)
738.  白昼の通り魔 《ネタバレ》 
大島渚監督の創造社時代の代表作の一本。連続通り魔が犯行を重ねていく「復讐するは我にあり」的な話だと思っていたのだが、それよりも男(佐藤慶)がなぜ通り魔になるに至ったかがよく描かれていて、この部分はなかなかに興味深く見ることができたし、男の心理の描き方もリアルで、演じる佐藤慶もはまっている。男とかかわりを持つ二人の女(川口小枝、小山明子)との関係も描かれていて、人間ドラマとしても抜かりはない作り。でも、後半は通り魔の男よりもこの男をめぐる女二人の愛憎劇のようになっていて、この部分も見ごたえがあるものの、通り魔の男の話として見ていると蛇足感があり、終盤の新幹線のシーンはけっこう退屈してしまった。ラストシーンを見ると実は主人公は通り魔の男ではなく、川口小枝演じるシノだったのではと思える(このミスリード自体は上手いと思う。)が、やはり最後まで通り魔の男の話で終わってほしかったような気もする。
[DVD(邦画)] 6点(2017-08-11 14:28:57)
739.  アシュラ(2012) 《ネタバレ》 
東映アニメーションが原点回帰を掲げて製作した作品で、社会的に物議を醸し、発禁本となった漫画が原作となっている。こう書くと話題性だけの映画かと思ってしまいそうなのだが、まったくそうではなくきちんとしたメッセージ性のある社会派映画になっていてとても見ごたえがあった。けだもの同然の主人公 アシュラが生きるために人を食う描写はかなりリアルなのだが、同時にアシュラの悲しさもうまく表現されていて、ここに手抜きがないからこそ本作の重いテーマがぐいぐいとこちらに伝わってきて、東映アニメーションといえば子供向けの企画ものアニメというイメージを覆すにじゅうぶん。切ないシーンも多いが、アシュラが初めて心を許した存在である若狭の恋人を傷つけたことで彼女から遠ざけられるシーンは思わずアシュラに感情移入して見ていた。若狭たちに飢餓がきてアシュラと立場が逆になるという展開もうまく、普通の人間であってもひとたび極限状態に陥ればアシュラと同じようなけだものになるという人間の本質をリアルに描いている。アシュラが馬の肉だから食べてと差し出した肉を人肉と疑い、食べようとしない若狭に対してアシュラが必死に説得するシーンは胸が痛くなるほどの切なさで、このシーンが本作の中でいちばん重く感じた。アシュラの声を担当する野沢雅子はまさに名演技で、どうしても自分の世代だと悟空のイメージが強いのだが、あらためて名優の一人だと思うし、また本作は彼女の晩年の代表作になると言っていいほどだ。75分と短い(ところどころ端折られている感があったのでもう少し長くても良かった気はするのだが。)映画だが、見る価値はじゅうぶんにある映画だと感じた。
[DVD(邦画)] 7点(2017-08-04 22:12:59)
740.  座頭市関所破り 《ネタバレ》 
シリーズ第9作。今回は市が父親の面影を見る老人との絡みなど人間ドラマに重点が置かれていてシリアスな話なんだけど、登場人物それぞれのエピソードが丁寧に描かれていて見ごたえのある作品に仕上がっていて面白かった。特に市と老人とのエピソードが良く、老人が実は敵の仲間だった事が分かっても彼を斬らない市には思わず感情移入してしまった。それに今回の市は倒した用心棒(平幹二朗)にそっと上着をかけてやるなど優しさがいつもより強調されてる感じがする。余談だがこのシーンを見て「ドラゴンへの道」でブルース・リーがチャック・ノリスを倒した後、彼に胴着をかけるシーンを思い出した。ブルース・リーはこのシリーズのファンだったようなのでこの映画の影響なのかも。市を演じる勝新の殺陣は今回もすごくてカッコイイが、今回はそれ以上に人間としての市の魅力を存分に感じられる話だったと思う。そうそう、シリアスな話の中にあって中田ダイマル・ラケットによる漫才のような会話や市のモノマネなどちゃんとシリアスになりすぎないよう工夫されているのも好感が持てる。市のモノマネに関しては次の回でも三木のり平がやっていて、人気シリーズとしての安定した余裕が感じられる。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-30 11:04:27)
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