Menu
 > レビュワー
 > ドラえもん さんの口コミ一覧。4ページ目
ドラえもんさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 903
性別
自己紹介

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
414243444546
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
414243444546
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
414243444546
>> カレンダー表示
>> 通常表示
61.  運動靴と赤い金魚
“珠玉の名作”ってこの作品のためにできたような言葉。兄妹愛、子供に対する親の愛情、それぞれの子供たちのけなげさやひたむきさ、そして人が人を思う思いやりの心など、マジッド・マジディ監督が切々と描き謳いあげてゆく。実に学ぶべき点の多い作品です。未見のかたには、なぜ“赤い金魚”なのかはラストで初めて分かる仕掛けになっています。白日夢を見るかのようなその美しいシーンに感動し、心が癒されたかたもきっと多いはず!
10点(2000-10-15 14:06:01)
62.  エクソシスト
今さらコメントするまでもないオカルト映画の最高傑作。この作品の登場人物たちはそれぞれに心身を病んでいて、悪魔はその心の隙間に容赦なく潜りこんでくる。W・フリードキンの演出は無情で冷酷で感情的な説明を極端に排している。中でもリーガンの病院で検査されるシーンの冷酷さを、暗に子供や老人に対しても容赦ない、現代の医療検査を批判しているようにも捉えられるほど執拗に描かれる。無信仰、現代医学の進歩、あるいは科学万能の時代となっても、なお推しはかることが出来ない“なにか”が、この世に存在するということを嫌というほど思い知らされた作品でした。ディレクターズ・カット版で久々にリーガンに会えると思っていたのに、延期になってまことに残念!
10点(2000-10-09 15:00:28)(良:1票)
63.  ミクロの決死圏
敵の攻撃により脳内出血で倒れた重要亡命科学者を救うため、ミクロ化された五人の医師らが潜航艇に乗って治療に向かう。何段階にもわかれた縮小過程の描写や、押された注射の針の中を、ミクロ化された潜航艇が高速で血管に突入し、やがて注入されたとたん大海に出たような緩やかな動きとなるシーンなど、印象に残るシーンには枚挙にいとまが無い。このあと風船のような赤血球や白血球の中を航行するという、まさに原題どうりの“幻想的な航海”を我々観客ともども体験していくのです。視覚的な部分以外にも、縮小のリミットが3600秒という時間との戦いや、彼らの中に敵側のスパイも潜入しているというサスペンスも加わって、大満足のSF映画の傑作です。
10点(2000-10-09 00:39:21)(良:1票)
64.  アンドロメダ・・・
とある村に宇宙から飛来したと思われる謎の細菌。宇宙服のような防護服を着て、死体がころがる村の中を偵察するシーン、その細菌に犯された死体の手首を切ると、血液が凝固して砂のように流れるショットや、のちに研究所での細菌に犯されていく動物実験を段階的に見せていくシーンなど、一種の科学ドキュメンタリーを見ているかのような錯覚におちいる。R・ワイズ監督の長年のリアリズム精神がいかんなく発揮され、又、ほとんど無名にちかい俳優を使ったのも成功の一因だと思う。ストーリはこのあと村民全滅の中、泥酔の老人と赤ん坊だけが生き延びたことが分かり、その原因と細菌の正体をつきとめるべく科学者たちの戦いがはじまる。終盤、このミステリアスな雰囲気ががらりと変わり、謎の解明を急ぐ研究所がついに細菌に犯されて自爆装置が働いてしまう。そのセットを解除にむかうシークエンスが実にスリリングで(途中、動物威嚇用レーザー光線で攻撃されるシーン等)、さすがはワイズ監督、サスペンスフルな娯楽作品としての見せ場もちゃんと用意してくれている。おススメのSF映画です。
10点(2000-10-08 16:02:37)(良:1票)
65.  未知との遭遇
この作品に対するコメントの少なさは、いったいどうしたことだろう?当時「スター・ウォーズ」派か「未知との遭遇」派かって分かれたような事ありましたっけ。僕はもちろん断然この後者のほうで、全編ファンタジックなやさしさに包まれた(母船やUFOすら“女性的”に描かれている)この壮大な“夢”を観せてくれたスピルバーグには感謝しなくてはいけないし、又、この作品をリアルタイムで体験できた自分というものが、実に幸運だったと思います。
10点(2000-09-28 11:49:14)(良:1票)
66.  ベニスに死す
最初に見てからもう30年近くなるんですねぇ。“ベストワン監督”のルキノ・ヴィスコンティの作品群の中でもとりわけ抜きん出た傑作。僕個人としても生涯のベストワンと言い切ってもいい作品です。休暇でベニス(現ベネチア)の島に来た老作曲家が、たまたま遊びに来ていた美少年に心を奪われ、やがて熱病に冒され死んでいくというストーリー。貴族出身でもあるヴィスコンティ監督の絢爛豪華なるセットや衣装の見事さは、決して貴族趣味に陥っていない気品があり、また映像と音楽の融合は見事というしかない。ラスト、夕陽の海の中で戯れる少年(幻のような美の極致)を遠く眺めながら、砂浜の椅子にもたれて苦悶の表情の中、笑みすら浮かべながらやがて息絶える主人公(=ダーク・ボガードが一世一代の熱演)が哀れだ。その顔には“美”と“若さ”に憧れるかのように化粧が施されていて、やがて死熱によりそれが崩れていくさまは強烈な印象を残す。21世紀にも語り継がれていくべき名作です。
10点(2000-09-25 00:05:09)(良:1票)
67.  ダイ・ハード
劇中、主人公がビルの中を逃げまわっている時、部屋に張ってあるヌード美女のピンナップに、「ハーイ」とか「やあ、また会ったネ」と話しかけるシーンがある。激しい銃撃戦や爆発など、殺伐とした内容の中でホッと一息つける瞬間である。J・マクティアナンの“10年に一度の奇跡”とも言えるこの作品での緩急自在の演出は、タイトルが出る前から伏線が張られるという冒頭から、ラストの大団円まで冴えまくります。僕的には生涯のベスト作品の候補の一本です。
10点(2000-09-18 23:28:56)
68.  宇宙戦争(1953)
侵略SF映画の古典。そのUFO(当時はほとんどの呼称が“空飛ぶ円盤”でした)が、まるで重戦車が空中に浮かんで、ほとんど停止しているかのようなゆったりと動く様はいかにも不気味で、そして圧倒的な迫力をもって我々にせまって来ます。しかもその機体の頭から延びている触覚から発射される光線の破壊力のもの凄さ。これらと戦う軍隊や民間人といった図式は、後々、東宝映画「地球防衛軍」に代表されるように、映画や漫画等に多大な影響を与えました。最後、エイリアン(当時は宇宙人)が地球上の“ある物”に滅びてしまうという設定があっけなくて、もう一工夫ほしいところでしたが、全編に恐怖感と緊迫感たっぷりで見ごたえ十分です。SF映画ファンならずとも未見の方は是非!
10点(2000-09-18 11:30:01)(良:1票)
69.  激突!<TVM>
ジョーズや恐竜たちよりも数段怖くて不気味で、なにかこの世の不条理の象徴のようなこのタンクローリーは結局何だったのか!?セールマン(デニス・ウィーバー=マクロード警部)がつぶやきます、「いつものことさ・・・」って。そのまま彼は車の中でしばしの休眠に陥ります。この作品の中で一番印象に残っているシーンで大好きなシーンでもあります。若きスピルバーグの情熱と才能が余すことなく発揮された傑作です。僕個人の意見として、彼は結局この作品以上のものを未だに作りえていないんじゃないかとさえ思っています。
10点(2000-09-10 23:26:40)
70.  2001年宇宙の旅
言わずと知れた、SF映画史上の金字塔。いや世界映画史上の歴代のベスト・ワンに推す方も少なくないほどの名作。初公開から35年近くも経っているのにもかかわらず、今なおその輝きは少しも失われてはいない。そればかりか、その後のSF映画に多大な影響を与え続けていることで、いかにこの作品が優れて時代を超越したものであるかが推し量られる。蛇足ですが昨今の大型パンフレットの元祖でもあるのです。
10点(2000-09-08 23:28:43)
71.  ツォツィ
饒舌で冗長な作品の多い昨今、極めてシンプルなドラマツルギーを保持しながら、観る人の感情に訴えかける奥深さで、心に染み入るように感動が伝わってくる。上手い映画とはこういう作品のことを言うのだろう。アパルトヘイト以来、アフリカを舞台にした映画が次々と公開されているが、同じ黒人居留区のスラム街を描いた「シティ・オブ・ゴッド」の喧騒に対し、本作が意外なほどの静謐さで貫かれているのは、時代や国家を超越した、謂わば人間本来の「優しさ」と「寛容」と言う普遍的なテーマに集約されているからだろう。地を這いつくばり、貧者がより貧者を襲ってでも生き抜いていかなければいけない生々しい現実の中、生まれながらにして薄幸で、無軌道にしか生きられないツォツイは、他の人間を敵視し決して心を開こうとしない、まだあどけさの残る孤独な少年だ。しかし、無抵抗で純真無垢なる者と対峙した時に見せる慈愛と、思春期の少年らしい女性への憧憬は、母なる者へのイメージと重なり、彼の不幸な生い立ちを感じさせる一方で、本来の人間らしさが芽生えた事を印象づける。このツォツイを演じる少年の荒んだ眼差しとナイーブな表情が素晴らしい。終盤、ブルジョワ夫婦も警察側も、やけに物分りが良過ぎるのが気になるところだが、作者自身が、世の中に本当の悪人はいないという、性善説を前提として創られているからかも知れない。
[映画館(字幕)] 9点(2007-10-18 17:54:42)(良:1票)
72.  世界最速のインディアン
これもやはり、ひとつの人生の応援歌と呼べるものではないだろうか。人間、何か一つの事に一生を賭けるという事など、誰にでもその機会はあっても、なかなか実行に移す事は難しいもの。それも世間の常識を覆すようなものであるならば、尚更である。情熱や経験だけでは達成することなど到底不可能な事。しかし、それを自らの人生の生きている証しとし、目的として、ついに夢を実現させた男の生きざまを描いたのが本作。歯を食いしばり、いかにも頑張っている風には見えない主人公。その颯爽とした立ち居振る舞いの清々しさ。それが持病持ちの老人とならば、尚更際立つ。その気概の持ち主を、A・ホプキンスが自身とダブらせ、孤高の人物に成り切って、実に気持ち良さそうに演じている。軽妙洒脱な面を見せながら、人間味を滲ませていくという、彼の引き出しの多さには、今更ながら敬服する。幾つになっても夢を追い翔る少年のような気持ちを抱き続けられるのは、男の特権であろう。それを身をもって証明してくれているのだ。本作でとりわけ優れているのは、年老いてから旅に出て、様々な人々と出合うことで、一種のカルチャーショックを受けながらも、人の意見には素直に耳を傾け、人情の機微を感じていく彼を、単なる頑固一徹な老人といった画一的な人物としては描いていない点や、周囲の多くの暖かい眼差しが、彼の夢を実現させたという視点を巧みに描出できた事だろう。実話をベースにしているからこそ、一見すると奇想天外なストーリーにも、真実味が帯びてくるのであり、ポンコツ・バイクを引っ提げて、世界の名立たる強豪を相手に出し抜く姿には、もはや喝采を挙げるしかない。近年稀に見る、ロードムービー痛快篇の誕生である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-07-29 17:11:52)(良:2票)
73.  ディパーテッド
基本的なプロットは同じでも、描かれる舞台と作り手が違うだけで、こうも印象が変わるものかと、改めてハリウッド映画の底力と魅力を感じさせられた作品だ。ニコルソンのディモンとの親子のような師弟関係は、冒頭部分にさり気なく端的に描かれているのに比べ、ディカプリオへの信頼関係の成立ちへのプロセスには、かなりの時間を割いているのが良く見てとれる。スコセッシが目指したのは、“いつ正体がバレるか”といった、潜入捜査における手に汗握る“ヒヤヒヤ感”を描きたかったからに他ならず、そのあたりが希薄だったオリジナルに対し、難局を次々とかわしていくスリルと、ディカプリオの精神的な苦悩をポイントにしている以上、それなりの時間をかける必然性があったという事なのである。それは、マフィアと警察内部へと互いに潜入しているとは言え、ディモンの置かれた立場に対し、正体がバレることは死を意味するディカプリオを主体にドラマの興趣を盛上げていくのは当然だからだ。この囮捜査モノは、ハリウッドの伝統的な得意分野とも言え、そのあたりはさすがに面白く創られている。また、人間関係で言えば、アジア映画のひとつの特徴とも言える女性を話の中心に添えて物語を膨らませ、男女のエモーショナルで濃密な時間を描出したオリジナルに比べ、ハリウッド版はいかにも乾燥した土地柄の如く、そのあたりの味わいは実に淡白で、ラストへのお膳立ての為だけに存在しているようにすら感じる。むしろ警察内部での対立や、ギャング仲間の疑心暗鬼に興味を繋いでいくあたり、どこまでも男の映画だと言う事である。本作のディカプリオは、頭脳明晰だが経験の浅さからくる恐怖心や焦燥感を、他の捜査官などのヴェテラン組との対比でより際立たせ、病的なほどの熱演で体現している。オリジナルに心酔している人には受け入れ難い作品のようだが、結末はともかく、大筋で同じでありながら、それでも興奮させられる映画など、そうザラにはない。メリハリの効いたストレートなアクション映画が好みの私などは、むしろこちらに軍配を挙げたい。それほど良く出来た作品だと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2007-03-18 18:05:53)(良:2票)
74.  太陽(2005)
日本を照らし続けるものの象徴として、「昭和天皇」を「太陽」として喩え、彼が敗戦という事実を受けとめて終戦を迎える日の一コマを、外国人の視点から描いたもので、静かな中にも終始緊張感の漂う作品となった。敗戦国の風景と天皇ヒロヒトの姿をシンボリックに描いたのが本作のポイントであり、それらは独特の映像で表現された東京の景観であり、イッセー尾形の形態模写的なソックリぶりとして、それぞれ独自の表現方法で画面に定着させていく。一人芝居で培ったイッセー尾形の独壇場ともいえる演技は、天皇ヒロヒトにどこまで迫れたか。それは映画を観た人の多くが納得いくものであろうし、少なくとも彼を起用した意図は十分に感じとれるものである。顔立ちや表情或いは何気ない仕草に加え、口癖のように「あっ、そう~」という言葉の言い回しや、“口モゴモゴ”の癖などをデフォルメして表現してみせるのも、生まれながらにして本当に言いたい事も言えず、言葉を呑み込まなければならない、その置かれた立場と哀しさをより強調したいからに他ならない。しかし、そのボソボソとした言葉は至って明瞭であり、全編に流れる微かな効果音と対を成していて、極めて印象的な演出方法だと思う。また、本編のセリフにもあるように、その容姿から“チャップリンのような”と形容され、事実、モーニング姿のおどけたような仕草に、ジャーナリストから好奇の目で見られるが、自身、意に介さないばかりか、むしろどこか得意気であり、そこに道化師の悲しみに似たものを感じさせる。多くの民を失わせた、その最高責任者としての表情と、一方で、どこにでもいそうな平凡な家族思いの男として、人間味を滲ませるなど、いかにも本物らしく、又は本物に近づいたかの如く、見事なまでに様々な表情を見せてくれる。未だ夜が明けきらぬままの、暗く重苦しい東京が終始映し出される。エンドロールに於ける、その上空から俯瞰で捉えた画面の端に、微かに鳩(だろうか?)が現れては消えるを繰返す様は、平和を願って已まない者の心の現われなのか、或いは、これからの日本の行く末を見守るものの象徴としてなのか。宮中の防空壕の暗い闇の中を、手探りで彷徨う天皇の姿と重なり合う。本作は、皇室の気品に溢れた調度品の様式美に至るまで、統一された色調による映像と演技者たちの表現力で、言葉だけでは伝えきれないものを我々日本人に齎してくれた力作である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-02-18 17:21:05)
75.  硫黄島からの手紙
太平洋戦争の中でも最も過酷な戦いと言い伝えられているのが、本作で描かれている硫黄島での攻防戦である。それは、記録映画やニュース・フィルムでしか知らなかった我々日本人が体感する、恐らく初めてと言ってもいいほどの本格的な映画化であり、しかも日本人が遠く忘れ去ってしまった感のある出来事を、米国人の手による映像化で喚起させられたと言う事には感慨深いものがある。実在した歴史上の人物と無名の兵隊たちとの物語を巧みに綴った原作を基に練り上げられた脚本も然ることながら、これが本当にハリウッド映画なのかと目を疑いたくなる程、日本人の心情を見事に描ききっている。共同制作がS・スピルバーグ、脚本にP・ハギスを擁し、そしてC・イーストウッドが監督に当るという、現ハリウッド最高峰の頭脳が集結して創り上げた本作には、単に日本人が出演していると言うだけでは説明がつかない、伝統的な日本映画の香りがする。これは、代表される2人の知日派により日本あるいは日本映画が研究され、日本人というものを本気で描こうとしている証しであり、今まさにそういう時代に差し掛かってきたのだと感じさせてくれる。企画の貧困によりアジアに目を向け、活路を見出そうとしている多くのハリウッド人とは一線を画するのである。もちろん原作を脚本化する事により、明瞭さを身上とする英語とはまるで違う日本語の微妙なニュアンスが十分に表現できたかは疑問が残るが、しかしその事は些かもこの作品の傷にはなっていないし、むしろ、だからこそ当事者たちの心情が痛いほど良く分り、心にストレートに響くのである。それがアメリカ映画の美点と言うものだろう。また塹壕に向けて火炎放射器で日本兵を焼き殺すという、硫黄島の戦いに於ける象徴的なシーンは、その余りの残虐性から日米双方に配慮し必要最小限に抑えられ、別の視点から戦争の残虐性を訴えたのは賢明な判断だったと思える。本作をさらに魅力的なものにしているのは、事実上の主役と言ってもいい二宮和也を措いて他にない。とりわけ、追いつめられ次々と玉砕していく仲間たちの無残な死に様を目の当たりにした事で、生への執着を見せる行動は、卑怯者としてではなく、人間として生き抜く知恵であり有りのままの素直な感情表現だと言え、この時代に生きた典型的な日本人青年というイメージを打砕く圧倒的な存在感を見せつけて圧巻である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-02-11 17:20:31)(良:1票)
76.  ヒストリー・オブ・バイオレンス 《ネタバレ》 
無表情で淡々と仕事を片付けている男二人。彼らは何者なのか。これからどのように展開していくのか。その余りにもアブノーマルな(まるでタランティーノを彷彿させる)導入部の冷酷で身震いするような思わせぶりは、その後、実に呆気なくカタが着いてしまう。物語の主人公の素性がバレてしまう切欠となる、実に巧い作劇である。生半可ではない無類の強さと凶暴性を秘めた男が、過去をひた隠しにしながら家庭を持つ事の矛盾と難しさがテーマの本作は、演じる役者のイメージだけで、有無を言わさぬ説得力を齎した稀有な例だと言える。彼の名はV・モーテンセン。なるほど、“アラゴルン”だもの。だから、いくらE・ハリスが強面のメイクで凄んでみても、不気味で貫禄十分なW・ハートであろうとも、所詮彼の敵ではないのである。家族の幸せを邪魔する者。男にとって彼らはまさに「許されざる者」であり過去を清算する為に単身乗り込み、何の躊躇もなく一気呵成に一撃を食らわせる姿に、命を賭けて家族を守る事しか男には無いことが雄弁に物語られる。しかし、妻や子供の前では、借りてきた猫のようにしおらしくなってしまう姿には、思わず微笑んでしまう不思議さ。監督はD・クローネンバーグ。いかにも彼らしいグロっぽさが随所に見受けられるが、近年の作品群からは推し量れない程、冒頭から幕切れに至るまで、余りにものストレートなアクションであり、このような通俗的なタイプの作品も撮るのかと、その様変わりは少々意外な気もする。しかしながら、たたみ掛けるようなテンポの良さとカタルシスは、カナダ人でありながら、伝統的なハリウッド作品を十分に熟知し継承している証しだと思う。なかなか現実には有り得ない設定だが、妙に納得してしまう作品だ。
[映画館(字幕)] 9点(2007-01-22 00:07:54)(良:2票)
77.  かもめ食堂
片桐はいりの、目をつり上げドギマギした表情は、もはや彼女の独壇場だが、面子に反し、癖のない素直な性格の演技は貴重である。また、もたいまさこの、細い目を一層細くして軽く頷く、あの独特の仕草は、喜怒哀楽という人間の感情に於ける究極の表現方法であり、瞬時に人間味を滲ませる自身の年季をも感じさせ、彼女にしか出来ない芸当だと言える。そして、マイペースでありながら人生に於いては常に前向きで、異国であろうと何処に居ようと(いや、何処の国に生まれついても)、逞しく生きていく術を知り尽くしているような雰囲気を漂わせる小林聡美の、その明るさと元気よさ。本作の主人公にはまず彼女を措いて他にないと思わせるほどの存在感を発揮していて、今、キッチンが最も良く似合う女優さんである。この三者三様の個性派が揃い、お馴染みのオハコの演技が存分に堪能できる本作は、日本版「バグダット・カフェ」と言ってもいいような雰囲気の作品だ。人とは、外見だけでは推し量れないものだが、いつしか心を開き、打ち解け合った時の新鮮な驚きと感動を、「かもめ食堂」に出入りする人々をスケッチ風に描く事で、人との出会いの楽しさ素晴らしさを謳いあげる。饒舌に語るタイプの作品でない事は、ご覧になればお分かり頂けると思う。 確かに元気を貰いました。それだけで十分だろう。ここに行けば、みんなきっと幸せを感じられる。誰でもが行きたくなる「かもめ食堂」とは、そんな所だ。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-02 17:28:37)(良:1票)
78.  トンマッコルへようこそ
昔から“裸のつき合い”とはよく言ったもので、例えば、語らう事、眠る事、食べる事(ついでに排泄する事)と言った人間本来の在るべき姿を曝け出す事で、人の心は通じ合うとされるものである。いがみ合う兵士たちが心を通わせていく、ひとつの切欠となる象徴として、イノシシを捕獲するシーンが印象的に描かれる。反目しながらも、皆で初めて力を合わせて勝利したという達成感。(この事が終盤に繋がっていくのだが・・。)宮崎アニメを彷彿させる作者の思い入れとリスペクトを感じさせる、本作の最大のポイントとなるシーンである。本来、生きていく事の目的や手段、方向性が違うという事に加え、争い事よりもイノシシに畑を荒される事のほうが重大事な村民にとって、敵対意識丸出しの兵士たちはまるで異星人のように映る。この浮世離れした平和な村には動物の肉を食べる習慣が無いのに対し、その肉を食べる事で兵士たちが雪解けムードになるとは、何とも皮肉な話だ。そもそも、トンマッコルとは一体何なのか?どこか懐かしく人を惹きつけて已まない。何処にでも在りそうで、何処にも存在しない。それはまさに「奇跡の地」と呼ぶに相応しい。“まだ見ぬ汚れを知らない無垢なるもの”の象徴がトンマッコルならば、兵士たちはさしずめ“神の啓示を授かった使者たち”と言えないだろうか。負け戦と知りつつ、彼等を突き動かすもの。それは義務感、使命感、村人たちへの恩義。 そのどれでもなく、またどれでもある。悲惨さや悲壮感から突き抜けた彼等の覚悟を決めた表情の清々しさ爽やかさが、そのまま作品の読後感となって、我々の心に染み入る。落下していく爆弾すら美しく撮られているが、落下しているのではなく彼等が昇天しているように見えたのは私だけだろうか。やがて魂の静まる地へ戻ってきた彼等の見る夢は、果たして何だったのだろうか。戦禍の犠牲となった幾多の魂が蝶となって、そんな彼等を歓迎しているように思える。 至福にも似たこの不思議な味わいと余韻は、他に類を見ない。リアリティ溢れる確かな演出力で、そういったプロセスを描出すればこそファンタジックなシーンも生きてくるわけで、本作は決して優しく美しいだけの夢物語ではないのである。
[映画館(字幕)] 9点(2006-12-03 00:02:01)(良:1票)
79.  ユナイテッド93
「再現ドラマのお手本」あるいは「再現ドラマの極致」。本作をひと言で形容すると、こう言ったところだろうか。秀作の多い今年、そんな中でも本作は特筆すべき作品と言っていいだろう。9・11における無差別テロ攻撃で、標的としてのホワイトハウスへ向けられていたと伝えられているのが、本作に登場するユナイテッド93便。唯一、テロ攻撃が回避されたとされる旅客機であるが、それは単にホワイトハウスへ突っ込まなかったと言うだけの事で、結末は周知の通りである。本作はその顛末を、当時の関係者からの証言などに基づく膨大な資料を微に入り細にわたり分析し、出来得る限りの想像力を働かした結果、“彼ら”しか知り得ない出来事を忠実に再現し、最も真実に近付けたものである。ハイジャックされた機内と管制塔だけの密閉された空間だけのドラマだが、ポリティカル・サスペンスとしての驚くべき迫真性は、映画を観ていると言う事を暫し忘れてしまうほどである。それは純粋な映画でありながら、著名な俳優を一切起用しない事でドキュメンタリー性がより強調され、ノンフィクション・ドラマとしての一貫性を齎せているからに他ならないからである。また、結末云々の映画ではない事は観客の誰しもが認識しているが、それだけに興味を繋いでいく演出力が殊更要求されるものはなく、そういう意味に於いてもP・グリーングラスの緻密な計算に裏打ちされた演出手腕は並外れたものであり、高く評価されるべきである。国家やイデオロギーが違うという理由で、立場を異にする人間たちを描いた本作は、民間人とテロ集団という対立軸の構図をとりながら、どちらに比重を置く事もなく、一つの運命共同体として、そして双方をあくまでも一人一人の人間として描いている点が最大の特徴だと言える。緊張・動揺・躊躇・不安・恐怖・覚悟。行動を起こす方も、被る方も、極限状況で究極の選択を迫られたとき、人間は人間としての当然あるべき感情を露わにする。最悪のシナリオを未然に防ぐ為、勇気を振り絞って闘った人々の白熱のドラマの面白さと、現実の結末とのギャップに虚しさを覚えずにはいられない。何が正義で何が悪であるかは、映画ではついに語られる事はない。それ自体むしろ意味のない事なのかも知れないからだ。しかし、本作は“人間の真価”を問うた秀作である事だけは間違いない。
[映画館(字幕)] 9点(2006-10-28 18:16:51)(良:3票)
80.  バッシング 《ネタバレ》 
自己犠牲というリスクを承知の上で海外とりわけ紛争地域へ赴き、困っている人々に手を差しのべると言う一つの生き方。本人にすればまるで生甲斐であるかのようだが、言い換えると、それは自らの居場所を模索する自分探しの旅でもある。しかし一つ間違えると、自らの意思に反して思いもかけない事態へと変転する危険性をも孕んでいる。実話をベースに、一人の女性の“その後”をドキュメント風に追い綴った本作は、人間社会の歪みから噴出する問題の一断面を抉り取っていく。この物語に登場する主人公は、普通の年頃の女性とは少しズレたところで行動を起こし、その結果として一般社会から見れば異端者いわば爪弾き者と見なされ、社会の規範や周囲の眼というものが彼女の生き方や考え方、或いは人格さえも否定してしまう。人々に救いの手を差しのべようとする者が、あたかも負け犬であるかの如く奇異の眼差しで見られ、そればかりか家族をも巻き込み、やがて崩壊させられていくという理不尽さ、そして真綿で締め付けられるような怖さは筆舌に尽くし難い。考え方に理解を示そうとする者さえも、批判の矢面に立たされるという観点から、かつての仲間は何処でどうしているのかという事までは語られない。映画はあくまでも一人の人間の意志と行動に焦点を充てて描き続けられる。その大人っぽさと子供っぽさとが共存しているかのような、不思議な存在感のある彼女の強固な意志は、ややもすると歪んだ形で表面化する。その典型的な例として、コンビニでの「おでん」に纏わる一連のエピソードで巧みに描写される。海辺にあるアパートの無機質さ。終始見られるどんよりとした空と澱んだ空気。寒々として暖かみというものが全く感じられないのは、単に季節が冬だからという理由だけではない。それら家族を取巻く環境は彼女の心象風景そのものであり、どこまでも虚無的で救いがない。自ら死を選択した父親の姿に、社会に圧殺された者の悲しみと憐れさを滲ませているが、その事が切欠となり、反発していた筈の義理の母親からの真の優しさと思い遣りに触れ、やがて心から向き合えた時、初めて見せる穏やかな表情こそ彼女本来の姿だろう。朝まだき仄暗い中、新たな旅立ちを迎え、遠くを見据える彼女の眼差しと表情は、更なる強い決意をもった大人の女の顔となっていた。本作は人間社会に於ける理解し合う事の大切さと難しさを問い正した秀作である。
[映画館(邦画)] 9点(2006-10-15 16:44:59)(良:2票)
000.00%
100.00%
240.44%
320.22%
4131.44%
5283.10%
610511.63%
719521.59%
832636.10%
916017.72%
10707.75%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS