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エスねこさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
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ホームページ http://kine.matrix.jp/
自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

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61.  神童 《ネタバレ》 
原作知らない、って以前にもう、何がなんだかわからない意味不明世界に翻弄され、気がつけば終わっていた。心の中で評価がどう変化していったかというと、3点→0点→マイナス5点→0点→5点。とにかく、音楽映画としてはまるで「なってない」。本作をドイツとオーストリアへ持っていけば、間違いなく嘲笑・黙殺・非難・悪魔祓いの憂き目に会うだろう。予言する。 カメラが演奏中のピアノをナメる。白と黒の鍵盤の上を踊る指が画面の下側に、そして中央にはフタの裏側に刻印された「YAMAHA」の文字が映り込むよう、何度も、何度も…その時点で「もうダメだ」と思ったんだが、それを遥かに下回る知能の低さなのだ。凄いのだ。仮にもヤマハの名が出る以上はキープしているであろう音楽的な演出がゼロで、ピアノのBGMであるべきトコロが弦で、縦糸はあっても横糸は無く、頑張っても四重奏がせいぜいで、従ってテクスチュアなんぞあろうはずもなく、テーマが力強く現れる事もなく、最後の演奏会にもつれ込み、そこで、そこで椅子の高さのエピソードが出てきてやっと気がつくという始末。 彼女はグレン・グールドだったのだ。当然というかオイラはミカラ・ペトリやアンネ・ゾフィー・ムターを想像していた。だがそうでもあり、やっぱりそうじゃなかった。グールドだったのだ。 だったらそこはバッハでなければならない、と当然のようにオイラの中の音楽が囁く。だがそうではない。ここはモーツアルトが正しい。これは音楽の話ではなく、ピアニストの話ではなく、夭折したグールドの物語なんだ。音楽を切り取って外側から描いた、例えばそう、「エッシャーの絵」がそこにあるんだろう。 これは日本の演奏界の袋小路を描いているかもしれないし、単にノーセンスでヤマハを糞まみれにして葬る映画かもしれない。そんな事は、どうでもいい。音楽になっていない映像の中に、確かに音楽を聞いた。監督の意図なんてどうでもいい。屑の塊が音楽になっている。それを聴いた。幻聴と言うなら言え。  それにしても、ホント村治佳織に似てるわ…。
[映画館(邦画)] 7点(2007-05-14 20:31:46)
62.  ウェイキング・ライフ 《ネタバレ》 
『スキャナー・ダークリー』を観逃しちゃってガッカリしてた矢先、中古ショップで720円の『ウェイキング・ライフ』を発見! ウハウハしながらレジに駆けたという…ちなみに、一緒に買った『ツイスター』は580円でした。世の中って素晴らしい。 本作は実験作だし、失敗してるシーンも多いので点は上げられないですが、好き・嫌いの別で言うと猛烈に好き。言葉で埋め尽くされた世界が、何ともエキサイティングだ。 技法的には単純に映画へデジタルペイントしただけ、と思ってたのに、様々な技法を使って手の込んだ絵を見せてくれる。絵のレイヤを全部揺らしながら進行する場面なんかは、普通動かないモノが動くのでかなーりクラクラ。 だが大ざっぱなアメリカのアニメだから、こういう状況下で平気でカメラをパンさせたりしてスムーズなアニメーションを壊してしまう。コマの繋ぎがわかってしまったら、こういうアニメは醒めてしまう。動画をスムーズに動かすノウハウに関してはまだ日本が先を行ってるだろうな(『スキャダー』観るまで結論出すのを保留しますが)。 ストーリー的にはコレでいいんじゃないすかね。一般人狙ってないし。キルケゴールやサルトルが何者か知ってる人限定、『わが涙流れよ、と警官は言った』の名が出てパッとキャラクターが思い出せる人限定。  つまり…よく日本でDVD出せたなコレ。日本語吹き替えまで付けちゃって。こういうバカも尊敬に値します。
[DVD(吹替)] 6点(2007-05-12 12:41:09)
63.  麦の穂をゆらす風 《ネタバレ》 
イギリスのジョークで「英国人は座って考える。フランス人は立って、アメリカ人は歩きながら、アイルランド人は後から」というのがある。そういうアイルランドの国民性は随所にあったと思う。  んが、ほぼ終わりの方まで「こりゃ4点だね4点」と思いながら観てた。 歴史のお勉強に近いし、このあたりはとりあえず高校の授業でもやってる内容。むしろ第一次大戦に勝ったのに敗戦に近いダメージを被った英軍の兵士とか、そういう「敵」の顔が見えないのが嫌だったかな。 石壁を背に若者を立たせ、見せしめでその中の数人を殺しておく「間引き」なんかは小説にはよく出てくる光景。街区でのお隣さん同士の銃撃戦も、アイルランドのトレードマーク。これに黒ビールと長い議論が加わればほら! IRA歴史映画の出来上がりじゃん! …そんな感じがするんですよね。後の北アイルランド解放テロに結びついていく「頑固なアイリッシュ魂」は感じた。  ところが、終わり近くでダミアンを説得する兄の言葉から、それまでの思考の流れが見えてきて、ビデオを巻き戻すみたいにガーッと兄テディの主要シーンが蘇ってきた。弟がロンドンに行く時、一人止めなかったテディ。弟がレジスタンスに加わった時、一人黙って臍を噛み続けたテディ。拷問の痛みに耐え、それから言動が変化していくテディ。 痛みを知った者と、知らない者の差がこれほどまで大きいのは…当然かな。オイラは兄貴に感情移入せざるを得ない。嫌な奴だが、それが人間だ。 「兄弟の相克」という内容から、『ケス』のテーマの発展形だとも言える。そういう観方でも、充実した面白いものがあったと思う。歴史映画としては平凡だと思うけどね。  ●追記: ウィキペディアで調べて、テディの顔がマイケル・コリンズにソックリだったのを知る。なるほどね! 他のキャラもモデルがいるんだろうな…。
[映画館(字幕)] 7点(2007-05-11 17:45:00)(良:1票)
64.  硫黄島からの手紙
こりゃわかんねーなあ。本当に。 米国の観客に、イラクと重ねて観る事を強要してるとしか思えなかった。とりあえずは『星条旗』と同じ点数。でも、DVDで見直してもっと下がるかもしれない。 ナチ側だけから見た『パリは燃えているか?』みたいな感じもするし、何度も広瀬正の『マイナス・ゼロ』を思い浮かべた。戦前文化の最後のともし火というか、そんなものは感じる。 でもこれ、イラクと重ねる以外にどういう観方があるの? …と問いたくなる。
[映画館(字幕)] 3点(2007-05-10 22:33:36)(良:1票)
65.  ゲゲゲの鬼太郎(2007)
蛇口故障。自分でも呆れるほど泣いて、終わりの方では嗚咽も漏らしちゃって…子供がいっぱい観に来てた中で、猛烈に恥ずかしかったというか。  予告で「泣くかもなあ」という予感はあった。 ちゃんとした鬼太郎の物語としてこなれてはいるんだが、今回の鬼太郎は、舞台がちょっと違うのだ。作中で明示はされないしロケ地は全国あちこちに散らばっているんだが、間違いなく東京の霊山・高尾の話。 森・霊園・土地開発・団地・列車の車庫・天狗と狐と烏・トンネル・そしてあの土地独特の霊気に満ちた空気(要するに湿度が高くて霧が出やすいだけなんだが)、そんな高尾周辺のアイテムで覆い尽くされていた。冒頭の森の、あの空気を観ただけで泣くやつは泣くだろう。オイラは1カット目で既に涙が出ていた。 あの特殊な空間と土地の精神を、よくここまで統合して映画に放り込めたモンだと思う。あそこに住んでない人は、映画を観てから一度訪ねてみて頂きたい。本作の空気からすると、桜の咲く頃から梅雨明けの時期までがいいだろう。多分、風景は全く似てないのに、空気だけが激似で驚くと思う。あと、ゲゲゲの森は黒部湖のあたりと見た。ちょっと東京からは離れた感じだ。  小雪はもう少し頑張れないものか。田中麗奈は芸達者に囲まれ、緊張しまくりなのが見えて、逆に楽しい。中村獅童はヤケクソな腹の据わり方がムチャおかしい(ま、いつも通りなんだが)。「獅童さん、大テング役をオネガイしますよ! これができるのは日本中で獅童さんしかいませんよ!」と言われた瞬間の顔を見てみたくなった(笑)。妖狐たちのマトリックスぶりは、CG使ってないんで本家より燃えたかも。西田敏行・谷啓は完璧な出オチですね。 できれば高尾在住の楳図かずお先生にもカメオで御登場頂きたかったが…水木しげる作品に出てもらうのは厳しいだろうからなあ…惜しい!
[映画館(邦画)] 9点(2007-05-10 00:51:19)(良:1票)
66.  KUROMAME ~ the magic wand
いやあ登録申請から半年近く過ぎたなあ…危うく『コンプリート・サンダーバード』の二の舞になるところでした(って、向こうもまだ諦めてませんが…)。 この作品は自主製作映画のため、まだDVD等が出ている状態ではありません。TOKYO MX テレビで5月3〜4日に放映されるようなので無理を言ってネジ込ませてもらった感じっす。  本作に出会ったのは昨年のアニメ自主上映会での事。去年は短編映画の魅力にドップリはまってしまったおかげで、タイミング的に『KUROMAME』に出会うのは不可避だったと言えます。 3年かかって撮り上げたという25分フィルムは、デジタルベースなのでシネコン以上の大スクリーンにかければ確実に荒れるし、映画的にもマニアックに凝ったところはない(断言)。ただ、このクレイアニメは、今までオイラが観て来た作品で換える事のできない価値が二つ、ありました。  ひとつは北海道の田舎町の風景が、街区ごとミニチュアセットで造られていたコト。別に写実的でも何でもないミニチュアですが、ありもしないその街へ、行った事があるかのような錯覚が起こるほど、北海道してた。クレイと言えば背景には凝らないのが相場ですから、これは盲点を突かれました。  もうひとつは、登場人物たちが服を着ていた事。ちゃんとした布地の服です。クレイアニメはハダカか粘土でおおざっぱな服を着せるか、ピングーみたいに動物にするか、くらいの選択ししかないですが、ちゃんとした服を着せた事でクレイがクレイではなくなり、別の新しいジャンルがスクリーンで繰り広げられていました。  粘土の大味な造形に、パジャマの生地なんかが違和感なくマッチして、オイラ的にはちょっとありえないほど可愛い。まあキャラ・街ごと「北海道3D版へなちょこムーミン谷」と言えば、近いかな。 人気が出て、2作目を撮れるだけの予算が確保できたら、しっかりとハイビジョンで製作して欲しいですとも。大画面でも楽しめる器とコンセプトを感じたクレイアニメは今のところ本作以外に知りません(えー、ここで「ヤン・シュワンクマイエルは?」とか突っ込まないように)。  …うーん。眠いのでレビューも大味…また書き直します。
[映画館(邦画)] 8点(2007-05-03 15:19:25)
67.  秒速5センチメートル
いい。 絵のセンスは素晴らしい(あの空の描き方は、世界のアニメ監督の誰も、一人たりと気付いていないんじゃないか?)。モンタージュの乱舞するエンディングには拳を握った。そこまでは心をうごかされたという事だ。 何はともあれ、一度きりの、空の表情の映画。日本は広い。『エル・スール』じゃないが、人は自分の住む土地の風景によって、空と雲によって、「思考させられている」と感じる瞬間がある。本作では南島独特の多層で多彩な雲、北関東特有のノッペリした無辺の青、東京ならではの息苦しい明るさが、人物なんかそっちのけで力を込めて描出されている。故に、これは「空の話」だったと断言したい。 だから極端に言えば人物が描かれなくてもいいんだが、そこはそれ、監督はまだ若い。話を進めるためにも人間は必要だ。 監督。10年後にもうひとつ、20年後にまたもうひとつエピソードを作りたくなるだろうよ。心にそのスペースを用意して、しっかり待ってるぞ(挑戦状)。  他方、ストーリーテラーとしては新人にありがちな背伸びが目立つのが致命的な欠点。点描によって大きなモノをスケッチするのは、緻密に描かれる部分があってこそ対比の力で受け手に迫るもの。1話目の電車・2話目のサーフィンを、あの程度の描写で終らせたのは罪が深い。というかインパクトが成立する以前に、映像が網膜から逃げて行った。せいいっぱいの限界点でやってる青い部分がたまらない芳香を漂わせているのも確かだが、一箇所でもいい、描きたい絵をとことんまでゴリゴリ描く事から逃げている現状は、決してアートとして成立しているわけじゃない。 ここは冷淡に突き放し4点にする。「悪い」「駄作」という意味ではない。物語世界に大化けする可能性を見出せないが故の低得点だ。このアニメはおそらく、もともとが5点満点の作品世界なのだ。バラバラの点描ゆえ、そこも突き抜けはしなかったが、素晴らしいモノがいっぱい詰まっている。それは間違いない。 DVDが出たら誰にも言わずにコッソリ買ってきて、毎夜コソッと一話づつ観ては泣き濡れる…オイラ案外そんな事をしそうな感じで、今から不安だすよ(笑)。  ●追記: いやしっかし、2話目のあそこで『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の「アレ」登場シーンをパクるとは思わなかったけどな(客席で声を上げて密かにのけぞった (^^;)。その記号的な意味や、使い方まで「アレ」だし。
[DVD(字幕)] 4点(2007-04-23 10:14:33)(良:2票)
68.  ブラックブック
さーて正式レビュー行きまっかー!  この映画、ホントに不思議な造りだよねえ。 (冒頭と最後に置かれた戦後シーンを除くと)いきなり途中から始まって、中間をすっとばし、「その後」をカットして進んでいる。主人公が平和に過ごしていた時期は、観客が違和感を持とうがどうだろうが「5ヵ月後」などのテロップひとつでジャンプしやがる。「平和」が全て削除されているじゃんよ(ついでに言えばバーホーベン映画だってのにベッドシーンもない!)。人物・伏線的には緻密な物語構成だけど、この「間隙」は相当クセモノだと思う。 本作はラヘル・シュタインという一人のユダヤ人の回想形式を取る。回想形式なのに「幸せ」がカットされているのはどういう事か。そこで何となく、一人称映画独特の「主観が物語までもねじ曲げる」という大トリックが仕掛けられている…てなコトに気付くのだ。 確かにラヘル・シュタインは、ナチス統治下で地獄のような目に遭った。だが多少とも幸福な時期はあったし、安全な時期もあった。彼女はそれを思い出せないのに相違ない。転じて、それが現代のイスラエルの駆動原理であり、もっと言えば旧約聖書で展開される出エジプト記の原理にもなっている(そこで聖書のエピソードがまた大量の間隙で構成されている事に留意すべきかもな)。 劇場で2回観たんだけど、この、怪しい奴だらけの人情迷路で、端役のクセに超重要である人間が2人ほどいた。全体構成を理解して、各キャラの腹の中を想像しつつ観ないと、その人物は浮かび上がって来ないので、最低2回は観る必要がある(断言)。 その人物たちが本作では端役になっちゃってるのは、主人公の心がそれを認めたくないから、だろう。彼女は戦争の被害者であって、あの戦争で、彼女と同じ虐げられた側にいながら彼女より幸福に生きた奴らがいるなんて、認めたくないわけだ。  物語の始まりが削除されているように、本作では物語の終りも削除されている(処理し残した伏線から考え、オイラはそう見ている)。 この嫌らしいトリックを、バーホーベン監督はわざとやっているはずだ。 なぜなら、現実のイスラエルの物語はまだ終っていないんだから。
[映画館(字幕)] 9点(2007-04-20 23:29:10)(良:4票)
69.  父親たちの星条旗
『ハンバーガーヒル』+『ランボー』の品格高い版。 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』以上だと噂に聞いていた時間ジャンピングは、ジョイス文学やヴォネガット文学みたいなモンだと思って観てれば違和感はない。というか論理がよくわかる。個人的には『ラグタイム』の原作のような視点ジャンピングを使った方が効果的だったんじゃないかと思う(まあ読まないとわかんないでしょうが…『Xメン』のプロフェッサーⅩが書いた歴史小説みたいな感じで凄いんですよ)。 指摘しておきたい点として、砲撃のさなかの空撮シーンは、記録フィルムよりは圧倒的に宮崎駿アニメの方に近いね。画面に出るたび『未来少年コナン』を思い浮かべちゃって困りましたよ。おそらく硫黄島の地形が、ギガントを思い起こさせる形状になってるからなんだろうな。 観終わって、まず「マンハッタン計画がもう少し早く始まって、ここに原爆が落ちてりゃなあ…」と嘆息しました。エンリコ・フェルミが日本の都市で爆発実験したがってたのは事実だけど。平時には何の価値もないこの島に落ちてたら、戦後がどれだけ変わっていたことか…。  プログラム的に『蟹工船』と続けて観てしまうという結果となったので、残念ながらインパクトの弱さが致命的になっちゃいました(船から人が落ちるシーン、向こうはカメラマンが命張って撮ってるからなァ)。が、後日DVDで見直す事があればもっと正当な評価を下します。あー来月は『硫黄島からの手紙』対『麦の穂を揺らす風』なんだよなあ…これもクリント・イーストウッドが割りを食いそうなカードだぜ…。
[映画館(字幕)] 3点(2007-04-18 20:14:07)
70.  酔っぱらった馬の時間 《ネタバレ》 
古来から南米の山岳民族は、土地の生産性が低い割にピラミッドなんか作ったりしちゃって重労働を課せられて来た民族だ。重い荷物を背負って山を越えるシェルパは、出発の前にコカの葉を一枚、口に含むんだそうだ。麻痺した肉体は、耐えられないような辛い仕事にも耐えてくれる。そうして麻薬大国コロンビアは誕生した…以上は枕でした。  本作では、イラクに向けて出発する密輸キャラバンが、厳寒の山越えに耐えられるようロバに酒を飲ませる。キャラバンが進み始めると、そこで映画開始後30分にして始めての劇伴が入る。このルールは全編に渡って適用され、馬が酔っ払っている時間にしか音楽はかからない。まさに南米を舞台にした『アギーレ/神の怒り』の冒頭と同じ音楽原理。 長い人類の歴史で、とても耐えられないような辛い仕事を耐えられるようにしてきたのが音楽の力だから。音楽は人間の営みのエッセンスだから。無限の繰り返しによる「麻痺」という快楽が、音楽の原理であり、オシゴトの原理でもあり、そもそも人生の原理でもあるだろう。BGMではないけれど、序盤に子供たちが唱う歌が、それを率直に表している。 人生は辛い。人生は酷い。人生に希望はない…それを言い続けて、言い続けて、みんな麻痺して行く。感じなくなって行く。 そんな中で、決して良心を捨てようとしない主人公たち兄弟。弱者を見捨てようとせず、その態度に疑問すら持っていない、偉い事とか良い事とかも感じていない、とてもストレートな主人公たち。劇中、彼らだけは麻痺を拒絶して醒めて続けている。彼らだけが現実を直視している。ポスターを買ってくる兄の姿に、麻痺の兆候が見えてはいるが。まだ彼らは大事な何かを失わずにいる。  …もしこれがテーマだとすると、エンディングのカットタイミング、そこへエンドロールと共に流れてくる音楽は絶妙で、恐ろしい。音楽は、人の中の何かを奮い立たせ、同時に何かを失わせる。本作の劇伴ルールの厳密さから考えて、エンディングに流れる音楽は悲劇の暗示だと推測した。 地雷にやられたのかもしれない。兄を見捨てたのかもしれない。ロバが売れなかったのかもしれない。手術が失敗したのかもしれない…その全ての可能性と、結果として訪れる心の境地を、あの音楽が癒してくれている。 この映画自体も、観客の心へ失った何かを取り戻させてくれて、また奪い去って行く。映画もある種の麻薬だと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2007-04-14 09:20:09)(良:1票)
71.  京鹿子娘二人道成寺(2006)
ここの登録ルールに反するとは知りながら、敢えて登録申請させてもらいました。  実はこの作品は、本当にただ歌舞伎の舞台をビデオ撮影しただけなのです。そして、それこそが本作を端倪すべからざる理由でもあるのですな。ハイビジョン撮影のメリットを生かし、一切の照明なしで、固定したマルチカメラ数台で客席から舞台を撮影。カメラはレフ版やらスポットやらで甘やかされる事なく観客と同じ環境下で映像を記録し、舞台と同じサイズの巨大スクリーンへ投影できる画質を確保できる時代になったのを実感します。 特に、本作はいわゆる『娘道成寺』ですから、女形が着替えに着替え、着物の色・傘の色が乱舞する。この色が滲まず美しく出ていたのは、驚嘆。なんかスポーツ中継でファインプレーを目撃した瞬間みたいな、手に汗握るモノがあります。これはHDビデオの最先端技術のお披露目映画でもあるワケです。 冒頭、本作のそういう役割を自認したシーンがありまして、安珍の鐘を横に4人の僧侶が横並びでかけ合う場面を、アングルは固定、4人の爪先から頭頂までを余さずカメラに収めながら、かけ合う様をじっくりと見せる。歌舞伎座の観客の目の前にオペラグラスを置いたような、そんなアングルです。これで表情の微細な変化、僧侶のカツラの継目までがハッキリ見えてしまうんだから凄いですよ。 実は上映中2度ほど、あまりの臨場感で、本当に歌舞伎座に来たと錯覚して拍手しかけました。  それだけのパワーを持ったカメラで、画面いっぱい精細に詳細に微細に映し出される玉三郎・菊之介の顔のクローズアップ…猛烈に萌えねえ(泣)。 松竹の旦那、歌舞伎の客が見る以上のモノを映しちゃーいけやせんぜ!
[映画館(邦画)] 7点(2007-04-06 10:11:27)
72.  うつせみ
面白い映画でしたが、困った。 最初から最後までオイラ、ほとんど人間を見てませんでした。ミヒャエル・ハネケの『セブンス コンチネント』と、そしてヤン・シュワンクマイエルの『ワイズマンとの休暇』と同系にある、家具と日用品の群像劇でした。オイラがタイトルつけるとすると『第七大陸から来た男』ですな(笑)。 …という風に解釈しながら観ていたので、後半から結末にかけては「前半でオイラの脳が観ていた絵」をご丁寧に繰り返してくれてるだけで、すっかり飽きてしまったという…嬉しいようで全然嬉しくない体験でした。しっかりした土台を作って、その上にまた丁寧な土台を築いたような感じ。入居しようと思ってたビルがない。 キム・ギドク監督、この程度で観客を煙に巻いたと思ったんなら甘い甘い。その先をお願いします。
[映画館(字幕)] 5点(2007-04-04 12:56:16)
73.  ユア・マイ・サンシャイン 《ネタバレ》 
なんすかこれは〜! ジャンルは分類不能、物語も解析不能。ただただグレードアップして行くファム・ファタール対、妙にウゴ・チャベス似の顔した主人公の直情さ全開。後半、なんか常識レベルを越えて怪獣映画なみの障害物にまで成長し、ハンニバル・レクターばりの状況に追い込まれるヒロイン。それに対してただただ等身大の愛を捧げ続ける主人公。こんな無茶苦茶ができるんだ、映画で! 身を削り、村八分になり、家族も親戚も捨て、それでも「愛してる」と言い続ける。こんな中身のない、それなのに凄い映画は観た事がないっす。 同じ状況設定から始まっても、日本の映画なら『恋するトマト』であるワケですが、あれと違って落ち着きの悪さがパワーに転化していました。日本はお行儀が良すぎるのか…? 誉めるとかけなすとか、そういう次元をすっかり越えた奇作。打ちのめされた感じっす。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-03 23:13:29)
74.  岸辺のふたり 《ネタバレ》 
意味不明記念レビュー。 「三つ子の魂百まで」という作品。でも、やはり悲しいかなヒトは三つ子の魂を忘れて行く。強烈な想い出があっても、そこへ足を向けるのが間遠になっていく。それが人生。次第に周囲のコントラストは弱くなり、目の前に広がる風景はイリュージョンをなくしていく。 だが、その全てが寓意だったとしたらどうだろう? コントラストが弱くなった代わりに世界のいろいろなモノが見えるようになり、印象的な、不思議な光景が見られなくなっても、やっぱりそこは三つ子の魂で構成されているんじゃないのか。 自分の一生のうち、この主人公のように自らの原風景に立ち帰れる瞬間はいったい何度あるだろう。すぐそこにあるはずなんだが。見ようと思えば見えるはずなんだが。 幼少期の光景が、漆黒のボタ山や、煤けた裏路地や、身を切るような雪や、どこに行っても坂道の街路や、遥か遠方の深い色の海や、そんな色々な光景が画面とは関係なく心に浮かんでは消えて行った作品。 残念ながら鉄の街・室蘭で過ごした光景の中には、晴れた空の記憶がひとつもない。原風景というのは人格にも影響を与えているのかもしれないが、やはり運に支配されているんじゃないかな。叶うならばこんな、クルクル表情を変える空と、キラキラ光る河が見える街に生まれて、というか連れて行ってもらって、それを一生持ち歩いて行けるよう心の中に刻みたかったものです。
[インターネット(字幕)] 9点(2007-04-03 00:38:12)
75.  パフューム/ある人殺しの物語
こりゃオイラにゃ書きようがないよ(泣)! まいりました。 一応、原作持ってます。出版された時は大評判でしたからねー。途中でやめちゃった(まだ、なめし皮職人にもなってない時点でやめた)のが悔やまれます。家に帰ったら探して読もうっと!
[映画館(字幕)] 10点(2007-03-27 22:09:55)
76.  ハッピー フィート 《ネタバレ》 
これこそはネタバレできん作品。 魂を抜かれました。本当です。  でもま、完全に意味不明なネタバレは書いとくか。 社会生物学というジャンルがありまして、この中ではオイラはウィルソンは信奉するけど、リチャード・ドーキンスは嫌いです。そして科学的におかしい部分があったとしても、コンラート・ローレンツの生き方は凄いと思ってる。顕微鏡を生涯の恋人に決めたような、スティーブン・グールドもステキだ。 ああ、なんていう詩的なディスプレイ。詩的な歌。利己的な遺伝子が生き方を決めるんじゃないよ。誰かが発見した新しい生き方が社会に受け入れられる時、社会全体が変わるんだ。有機化学的にも、行動・文化の上でもね。 その意味では、新しい行動生物学の枠組みの中にありながら、既に葬り去られた今西説的な側面も持つ映画でした。これは生命の本質を描いた恐ろしく詩的なSF作品です。 大半の人は、そうは観ないだろうけど…。
[映画館(吹替)] 10点(2007-03-26 20:10:17)
77.  シン・シティ
うーむ。 デヴォン青木は、この時点で既に《デヴォン青木》というキャラなのか。  ●追記:いや、やっぱちゃんと書く(笑)。 あれれ…? いろいろレビュー読んでみたけど、そんなストレートな話じゃないっしょ? 「愛」も「バイオレンス」もテーマじゃなくて、そういうモノで駆動する「男らしさ」が生む危険な狂気を描こうとしているんだけど、作り手側も既にその狂気に呑まれているんで公平にジャッジできる場所へ脱出できない、その身近な狂気とのナレアイ振りを正直に告白した「自分美学」なんじゃないの? そうであればこそ3人の主人公が全員、自分の正気を疑うシーンが出て来るわけでしょ(薬の切れたマーヴ、死体と会話するドワイト、メフィストフェレスもどきのイエロー・バスタードに出会うハーディガン)。これが3度繰り返されると、さすがに表面的には解釈できなくなります。もう、『深夜プラス1』のラストみたいな「若者に教訓を垂れる」という逃げ場もないので、泣きたくなるほどの惨めさですよ。 そして、最終話の(一番現実的な)決着のつけ方によって、「男らしさ」の美学が完成すると同時に、その「狂気」はどう扱われるべきかも描かれているんじゃないすかね。そういう、世間に対してへりくだる態度までが、現実には男らしい狂気の一部なんで救いようないと言えばないんですが。 きっと、中年になったらわかるよ。その頃にはある意味で、もう遅いんだけどね。『男』という社会的鋳型の内にある狂気は、『男』が完成してからでないとわからないモンですわ。  余談ながら、このテーマを「内側から」スタイリッシュに拡張したのがキューブリックの諸作(特に『博士の異常な愛情』)、「外側から」ジャッジできる地点まで引いて撮ったのがヤン・シュワンクマイエルの『男のゲーム』(まあ他の諸作もそうだ)。本作と観比べてごらんあれい。
[インターネット(字幕)] 5点(2007-03-23 23:21:27)(良:1票)
78.  かもめ食堂
鮭の切り身に塩をふって、焼き網の上に乗せる。熱源はガスのようだ。当然、油がポタポタ落ちてキッチンはベトベト、換気扇のないらしいキッチンは食堂内と仕切られてないので、店内は場末のホルモン屋のように煤と油が染みついて、そこにはマジックで書かれた「ホッピー」という張り紙が黄ばんで…ないんだな、コレが。 映画のマジックなワケだけど、何となくそこんとこのリアリティのなさだけが気になり、そして悲しかった。言ってみればこの店内、サチエの内面みたいなもんだ。スッキリと美しく、塵ひとつない空間。そこで魚を焼く事は、絶対できない場所。 じゃあキッチンは別の部屋になってた方がよかったのか…? もちろん画面的にはそんな事はないワケで、キッチン・食堂・表通りが素通しで見渡せる店の構造は、(ガラスへの映り込みも含めて)映画中でいろいろな画面の遊びに使用されていて、観飽きる事がない。オイラ的な結論としては、この店はコーヒーとオニギリ以外は出しちゃいけないんじゃないかって気がした。 あと、だれ一人困らずにワリバシを使いこなしてるフィンランド人たちってどうよ。  ま、ゴチャゴチャ突っ込む割に、きっとまた観に行くだろうけど…。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-21 19:07:37)(良:1票)
79.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
思いのほか、というか相当に考えさせられる映画だった。 なんで世間一般的に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が度外れに評価高いのか? オイラは「半ば神格化された《アメリカ黄金期の50年代》という古き良き時代を、無条件にバカにできるから」だという考えでいるんだけど、当のアメリカ人にしてみればアレは相当に苦い映画だった…という当然のコトに、『バブルへGO!!』を観ながらようやく気付く。BTTFは80年代、アメリカ第二の低迷期の作品だからね。あの映画を笑って観てる日本の観客は、ある意味で卑劣なのかも知れない。そこに気付かされたのは大きい。 舞台挨拶のニュースで阿部寛が「中身が何にもない映画ですから」と言っていた。役者としては確かにつまらないだろう。深みを一切要求されない人物像だから。これは役者の映画じゃなく、モノの映画だ。繁華街にある森永LOVE、ディスコで踊る女性の太い眉、壁面がガラス張りのマンション…とにかくモノ。過剰な小道具たちが、さして変わらない17年前を意識させ、異空間にしてしまう(特に広末の髪の染め具合は本当に絶妙!)。他方、財務省=大蔵省の中は変わってないが、それも意図的なものだろう。人間はどうあれ、役所は17年ごときでは変わらない。この、モノが語り綴っていくモノガタリは、薄味になったヤン・シュワンクマイエルのソレに通じている。 エンディングのバカらしさも一考に価する。ほとんど埋め立てられた東京湾はバブル期のアホな未来像そのままだし、誰かさんにとっては「あるべき現在」だ。ここで、主演が広末涼子ではなく阿部寛になっているのに改めて気付く。これは「官の映画」だったワケだ。製作がフジテレビと電通であるコトにも気付く。政府の太鼓持ちたちじゃねーか。案外、いやかなり、あのラストはマジだぞ。やりすぎて嫌味とかそういうんじゃなくて、大マジで大団円のつもりで作ってるぞ。「映画の観客はバカだからさー」という、救いようのない慢心があの絵に見えて来るような気がした(あ、でもマシン発明したのは三菱じゃなくて日立だぞ…考えすぎかもしれないネ~)。 そういう意味では、本作は映画の本質に極めて肉薄している。「みんなが観たい夢を観せる」という意味での「すっげー映画らしい映画」だ。でもいろいろ考える所があったのは事実なので、この点数で。もう一度劇場に足を運んで考えてみる価値はあるなあ。
[映画館(邦画)] 8点(2007-03-12 16:56:58)(良:2票)
80.  東京ゾンビ
素晴らしい…! パーフェクト…! ゾンビ映画の一番星だ…! 「…」の余韻に、いろいろな含みがある事をご理解頂きたい(笑)。 最初から最後まで、けっこうマジメに観ちゃいました。
[インターネット(字幕)] 9点(2007-03-09 04:58:04)
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