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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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61.  戦艦ポチョムキン 《ネタバレ》 
実際に起きた反乱を元に描かれる本作。  今でこそ「モンタージュ技法なんて使い古されて新鮮味なんか無いよ」と言うかもしれない。 ただコイツを見たらそんな事は言えなくなる。  この映画のモンタージュは新鮮味ではなく驚きと興奮のモンタージュだからだ。 冒頭数分の単調さが、兵士の怒りの声が挙がるあたりから面白くなる。 ウジが湧いて腐った肉を、これほどまでに生々しく描写する。 腹が減っては戦はできぬ。 飢えた軍隊は勝てない。 軍の底を支える兵士の扱いの不当さ、上層部の傲慢への怒り。 当時のソ連社会への怒りを、食料を通じて描くその生々しさ!  それを巡って反乱が起き、その波は民衆にまで流れていく。 そして血で血を争う戦い・虐殺。 「ストライキ」を超えたカタルシス。 母親に抱きかかえられた子供。 手当をしても何をしても助からない。 命の軽さと重さ。 一体民衆が何をした。 ロシア革命から続く理不尽な市民の虐殺。 その怒りを、惨たらしく死んで行く人々の叫びで訴えかける強烈な映像! それをここまで残酷かつ力強く映していく。 画面に映る男も女も、みんな時代の波にさらされながら、力強く抗い生き残ってきたという鍛えられた表情をしている。 それだけに説得力も段違いだ。 よくもこんな凄い映画を検閲だのなんだのでカットしたり焼き捨てるなんて馬鹿みてえな事が出来たもんだ。 スターリンが悪いんじゃない。 そんな理不尽なやり方を実践できる「人の心」が腐っているのだから。 ふざけやがって・・・。  この映画は「面白さ」を楽しむ映画じゃない。 戦争に対する怒りを感じられるか感じられないか。 それを個々の視点で感じて欲しい映画である。 シベリアの雪の大地を踏み歩くロシア人の力強さを・・・!  そしてこの映画を探し出し、再びこの世の中に蘇らせてくれたスタッフに感謝したい。 音楽的には「マイゼル版」がオススメかな。 あの旗を染めた「赤」の色のように、いつまでも鮮やかに輝く映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-10 07:21:30)
62.  キートンの大列車追跡 《ネタバレ》 
再見。 やはり何度見ても・いつ見てもアクション映画としてまったく色あせない面白さだ。 「将軍」または「大列車追跡」「大列車強盗」の名でも知られる、「トイストーリー」や「怒りのデスロード」をはじめ様々なアクション映画に影響を与え続けるキートンの傑作の一つ。  個人的には冒頭から濃密に展開される「カメラマン」が一番好きだが、南北戦争を描いた作品はコレが一番だろうな。  キートンの映画にしてはかなりゆったりしているが、走りはじめ徐々に加速していき最高潮に盛り上がる展開は「セブン・チャンス」や「蒸気船」に並ぶ後半大爆発型の面白さ。 それに第一次大戦を生き残ったキートンの南北戦争時代の服装や武器へのこだわりも徹底している。   のどかな風景の中を列車が疾走し、キャメラは機関士と列車に刻まれた“General(将軍)”の文字を捉える。キャメラはひたすら横に移動し続け、キートンや列車たちの運動(アクション)をフィルムに刻んでいく。  列車から降りていく人々の賑わいと活気、愛する女性の写真をしまい家へと向かう。 愛しの人が外にいるとも知らずに、家のドアの前まで子供を連れて進み続けるとこからして微笑ましい。 2人っきりになるために子供たちを外に追い出し、自慢の機関車の写真を見せる。 ドアを開けた瞬間に鉢合わせする男たちは、握手を交わして何処かへ消えていく。キートンもまた足元がお留守になるくらい恋人との別れを惜しむ。  街に響き渡るであろう戦争と志願する男たちの足音、狭い室内で軽々と机に飛び乗り、列の前まで飛んでいってしまう身のこなし。 理由もわからず腕っぷしや身長を見比べたり、帽子を被りなおしたり職業を偽ったり再挑戦したり、一生懸命な姿がコミカルだけど物悲しい。  しょんぼりして機関車の連結棒に座り込んでいると、誰かが乗り込んで列車を突き動かしてしまう追い打ち。戦争にしょんぼりしている時間なんて無いのだ。  野営地、スパイ活動の作戦、地図。  物語が大きく動き出すのは列車が駅に停車する瞬間から。 車両に乗り込む者、引き抜かれる鉄棒、杖の一振りとともに列車に雪崩れ込む部隊、置いていかれたら、奪われたら全力で走って走って走りまくり奪い返しに戻って来る! 家族同然の愛する列車のため、愛する人のために命懸けの追跡劇へ。  断ち切れらる電線、破壊工作、ポイントの切り替え、一人手漕ぎトロッコ、盗んだ自転車ですってんころりん、列車だけ頂戴して追跡続行。こういうジリジリとしたチェイスは最高だね。  休憩する間なんて与えるものか、列車砲を拾い、列車の上を駆けずり回りあの手この手で駆け引きを続ける闘い、タンクの水がかかろうが、砲弾かついで込めて発射準備、勝手にピンチになって材木ブン投げたってどうしようもない、徐々に距離を詰めたり引き離されたりを繰り返し、吹き上げ続ける煙、線路に落とされるもの、線路から弾き出すもの、自力で担ぎ上げ乗り上げる材木との格闘、自らを切り離し破壊され燃料にされていく列車、トンネルだって燃やし、空回りするなら砂利をかけてまた追いかけ、襲い掛かる蒸気と煙、いつの間にか南北戦争の戦場に迷い込んでしまう、無我夢中で気づかず我武者羅に動き続ける、慌てて軍服を脱いで隠したり、橋の上と下、降り注ぐもの、密林への疾走と降り注ぐ雨。  敵地でうっかり情報を掴んでしまうスリル、変装、罠との格闘、雷雨の中で抱き合う恋人たち。  袋に隠すもの、担ぎ上げるもの、引き抜かれるもの、めまいがしそうなほど重いものが詰め込まれ、板切れで殴りつける大列車強盗!  ロープをくくりつけ薙ぎ倒し叩っ切り、踏んだり蹴ったり水責めされて散々、垣根は解体され燃料となり、ロープは一直線に張られ木を根こそぎ引っこ抜き、積み荷は線路にばら撒かれ蹴散らされ、材木は脳天を直撃する。  鎖でくくりつけ、斜面を滑って登って、ランプは火種になって橋を焼き尽くし、撃たれた理由、運ばれてきた情報と出撃、群衆の中を轢かれかけながら突きっきる再会、人馬が駆けだす出陣、狙撃、死に様はブラックユーモアも混ざり、砲弾の行方、押し流すように畳みかけ、引き継がれるものは消耗品としての兵士が描かれる。 敵として・仲間として闘った者への粋な計らい、サーベルをめぐるやり取り、機関銃のように繰り返される敬礼。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-06 15:09:14)
63.  つばさ 《ネタバレ》 
ウィリアム・A・ウェルマンの傑作。  第一次世界大戦を舞台にしたストーリー。  物語は二人の男の友情と青春から始まる。  幼なじみと楽しく過ごすジャック、家族と過ごすデイヴィッド、ジャックに想いを募らせるメアリー、デイヴィッドに惹かれるシルヴィア。  メアリの想いもそっちのけでシルヴィアにのぼせるジャック。同じくシルヴィアに惹かれるデイヴィッド。  登場人物の掘り下げが実に丁寧で良い。  訓練、基地での一時の平穏、コメディタッチのやりとり、そこに突然訪れる仲間の死。  酒場で酒に酔うジャックだが、酒に溺れるよりも戦闘機に乗っている時の方がよっぽど戦争に酔っている。  それでも敵の大型機をコンビプレーで撃墜するジャックとデイヴィッドの友情が頼もしい。その友情の強さが後の悲劇へと繋がる・・・。  「ジャックはもう軍人なのね・・・」死にかけてまでジャックを追ってきたメアリーだが、戦いで疲れた彼の顔と「ペンダントの女性」を見て一時は身を引いていく。  一人の“弾丸”が死ねば次の“弾丸”が送られる。戦闘機乗りは「戦闘機そのもの」となって空を引き裂く弾丸と化す。  偵察任務、ドッグファイト、爆撃・・・兵士は英雄となる。多くの人間を殺傷して・・・。  ついさっきまで会話して人間が、次の瞬間には死んでいる。それが戦場だ。  メアリー(クララ・ボウ)のシーンだけどう見てもギャグです本当に。ウェイブ姿のクララ可愛いよクララ。  一瞬だけ登場するゲーリー・クーパーが忘れられない。1カットだけなのに。この頃から哀愁が尋常じゃないんだけど。  何この美味しすぎるエキストラ(チョコレートだけに)。  リアルな戦闘描写、ド迫力の空中戦、偶然が重なっておきる悲劇・・・空中戦の空間描写の凄さは「スターウォーズ」でも及ばない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 13:38:47)
64.  サンライズ 《ネタバレ》 
「最後の人」とか「ファウスト」とか傑作揃いのムルナウだが、やはり1本選ぶとするとこの「サンライズ」。 田舎の幸せな夫婦の中を引き裂こうとする小悪魔的な女、その誘惑に男が打ち勝って夫婦の愛を取り戻すという話だ。 ストーリーは至極単純、中身は超ドラマティック。 天使のような嫁さんジャネット・ゲイナー、筋肉的な夫ジョージ・オブライエン、それを唆す都会女のマーガレット・リビングストン。 夫婦には既に赤ん坊がいる。 だが可愛い嫁がいるにも関わらず都会女に惹かれる夫。 どんな美人でも「見飽きた」存在になれば誘惑に惹かれてしまう。男の性という奴か。 何も無い田舎・・・全てが存在するような都会の魅力が男を虜にする。 女は「私の夫になってよ。あんな女殺しちゃってさ。」恐ろしきは女の換言よりも、その言葉に支配されてしまう夫の方だ。 「吸血鬼ノスフェラトゥ」や「ジキル博士とハイド氏」の頃から恐怖演出がズバ抜けたムルナウ。 愛する女性を「邪魔者」として殺そうとする夫の狂気。 魔が差した人間ほど恐ろしいものは無い。 強烈なモンタージュ、湖面の美しさが余計に怖い。 「ミズーリ横断」や「廃墟の群盗」で常軌を逸した映像の美しさを残したウィリアム・A・ウェルマンも、ムルナウの恐ろしさに勝てる気がしない。 湖面に浮かぶボート、二人きりの「密室」・・・犬の乱入や夫自身の葛藤・・・ただこの様子を見るだけなのにまったく飽きない、見入る、見入ってしまう。  うーむ、この先もガンガン書きたい。ただこの続きを書いてしまうと全部ネタバレになってしまう。 いや本当この後の展開が「常軌を逸した」感じになっちゃうんだもの。 取り敢えずリア充爆発しろ。 いろんな意味で夫婦愛に溺れまくりっす。すごく微笑ましい。爆ぜろ。 余りに空気が変わったので笑ってしまうほど別の映画になる。 なのに何の違和感も無かった。 更にラスト20分でまた「突然変異」だ。 何なんだよこの映画・・・ムルナウ万歳。  ラストの夕陽と髪をといた「天使」の寝顔が最高に美しかった。こんなにもキレイな映画があって良いのか・・・。 真相は是非とも本編で堪能してもらいたい。
[DVD(字幕)] 10点(2014-01-25 13:32:44)(良:1票)
65.  メトロポリス(1926) 《ネタバレ》 
フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。   公開当時は「近未来」、今ではゴシック調のSFファンタジー・サスペンスとしての面白さがある。  当時のドイツ美術の粋を結集した美しさ、自らも脚本を手掛けた「カリガリ博士」を思い出す怪しげなロートヴァングの研究所、機械工場の爆発と押し寄せる水、街に放置された車の山の不気味さ、そしてアンドロイドマリアの誘惑によって狂気の渦と化す人の恐怖。   1984年に熱狂的なファンだったジョルジオ・モロダーが尽力して本作が再び注目され、  2002年にマルティン・ケルパーが映像をデジタライズ、  2010年に行方不明だったフィルムが発見され「完全版」として蘇った。   ゴシック調の摩天楼が居並ぶ近未来的な都市。   冒頭から力強い機械の描写、労働者と富裕層が完全に分断された格差社会が拡がっている。   そう、本編の主軸は鮮烈な映像だけではない。  中世の貴族趣味に興じる富裕層、  近未来のはずの都市に「複葉機」が飛んでいる事自体、富裕層の道楽ぶりを表している。  近代的な都市を闊歩する富裕層の下で、自らの力で機械を動かす労働者たちが蠢いているのだ。   どんなに機械が発達しようと、それを作るのは人間だ。  手塚治虫が本作に影響を受けた事からも解るように、機械を創れるのは結局「人間」なのだ。  人がいなければ機械は目覚める事も無い。   当然、人間も機械ではない。  超過勤務や過重労働で肉体は疲れ、精根尽きるまで死ぬまで働かされる。  これでは「奴隷」と同じでは無いか。   だが、奴隷になりつつある労働者たちも黙ってはいない。  「頑張ればきっと神様が助けてくれる」と神を心の支えにして必死に生きているのだ。  労働者を励ます少女の「マリア」は、天使聖母マリアの如く人々の拠り所である。   様々な人物模様がメトロポリスをきしませていく。   壮麗な未来都市、  丁寧な作り込みの美術、  魅力的な登場人物、  起伏に富んだストーリーなどなど、我々を飽きさせない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 12:54:42)(良:2票)
66.  ベン・ハー(1925)
シドニー・オルコットの15分の短編映画に続く映画化。 冒頭のイエス=キリストの誕生から静かに始まり、メッサーラとの確執、壮絶な海戦、どん底からの脱出、ジュダへの復讐、そして母と妹との再会・・・。 徐々に盛り上がり山場を突破し、静かに幕を下ろしていく物語。 山場となる海戦と戦車戦の迫力は凄い。 船底の奴隷生活から脱出するジュダ。 オールの穴から覗く残された者たちとの対比・・・。 ワイラーの海戦は合成がショボくて残念だったが、本作は生の人間同士の斬り合いで迫力満点だ。音のない世界から轟音が聞こえてきそうな破壊力。 流石に戦車戦はワイラーが最強だが、本作の戦車戦の迫力もワイラーの破壊力に引けを取らない。  復讐に染まりそうになるジュダだが、命の恩人である「イエス=キリスト」との再開は彼の心をなだめ、母と妹、ジュダの体と心から苦しみを洗い流していく。 それはイエスが起こした奇跡か。 それともジュダが呼び込んだ奇跡か。 とにかくジュダはユダヤ人の誇りを貫いて戦い抜いた。 それがこの映画。  
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-21 23:46:56)
67.  忠次旅日記 《ネタバレ》 
「長恨(断片フィルム有り)」で力演した大河内傳次郎と伊藤大輔がコンビを組んだ最高傑作の1本とされる作品。  現在は多くのフィルムが散逸してしまい、その真髄の一部を拝めるのが第2部「信州血笑篇」の一部と第3部「御用篇」の大部分。 拝めるとはいえ細かい箇所が欠損しており、ストーリーの繋がりがやや分り難くなってしまっている。それでも、大河内傅次郎の鬼気迫る演技を含め一見の価値しかない。  例えば、編み笠を被り道を駆け抜ける忠次、それを猛然と追いかける御用提灯の津波津波津波。 敵を流し目で睨みつけ、橋の上で捕り手たちに一太刀を浴びせ、骨太の腕で刃を突き付けて周囲を睨みつける。取り囲む捕り手たちをくるりと回って瞬く間に3人を薙ぎ払う上空からの視点。 この上空からの視点は「決闘高田馬場」の断片で猛然と決闘場に向かうシーンでも拝む事が出来る。  また街中で複数の男たちと高速で斬り結び、信頼を寄せる忠次を裏切った者たちへの絶望を叫ぶ老人、斬られたのか力なく壁に寄りかかり倒れる仲間、それを見やりながら敵中を突破しようとして太刀をゆっくりと傾け構える男。 忠次もまた子供を抱えて密室で複数の男たちと斬り結び、睨み付ける視線の強烈さ。  そんな剣客としても強者だった忠次が、病によって徐々に立ち上がる事もできないほど衰弱していく様子。 彼を慕って最後の最後まで付き従ってくれる仲間たち。捕り手たちから忠次を守ろうと奮戦し、血まみれになりながら次々と捕縛されていく。開けられそうになる扉を何度も何度も閉じる仲間の散り様、それを助けられず黙って見守る事しか出来ない悔しさ、己の無力さを嘆く悲痛な表情。手に持つ刀すら抜きたいのに抜く力すら残っていない。 その腕を掴む忠次を慕う女の耐え忍ぶような表情。 扉をこじ開けて雪崩れ込む捕り手たち、それを睨みつけ、懐の鉄砲をぬうっと突き付けて最後の抵抗を示す女の眼差し。忠次は最後の力を振り絞って抜刀して戦うのか、戦かはないのか・・・とクライマックスまで息もつかせぬ怒涛のシーンの連続なのです。それをサイレント映画の早回しを逆手にとった超高速戦闘で存分に味わえる。
[映画館(邦画)] 9点(2014-01-10 21:01:03)
68.  雄呂血 《ネタバレ》 
脱歌舞伎の剣戟映画の開祖の一つである「雄呂血」。 「日本のグリフィス」こと牧野省三の総指揮、 監督に二川文太郎、 そして阪妻こと阪東妻三郎の驚異的な殺陣! 坂東妻三郎を始めとする俳優陣の演技と殺陣には歌舞伎には無い躍動感が溢れ「歌舞伎なんざブッ壊してやる」というエネルギーが伝わって来る。 バンツマの盟友と言われる「まぼろしの殺陣師」市川桃栗。 彼の破壊的で斬新な殺陣はいかにして生まれたのか。 その真髄に少しでも迫れるのが本作だ。 ジョセフ・フォン・スタンバーグが斬られる人数を数えるのに夢中になったと言われるぐらいとにかく斬りまくる。 オマケにサイレント特有の超早回し映像で、まるで機関銃で一人ずつ狙い打つように斬り倒していく。 坂東妻三郎が松ノ木を背に刀をかまえる場面もほんの一瞬。 その時のバンツマ(坂東妻三郎)が最高にカッコイイ。 絵になる一枚だね。  だが、本当の醍醐味は27分にも及ぶ大立ち回りではない。  一途な恋心が理解されず、誤解を重ねて追い込まれていく平三郎。 人間の本性を目の当たりにする度に、無頼漢に染まっていく平三郎の描写が良い。 奈美江に思いを寄せた後に運命に翻弄されて諸国を彷徨う平三郎。 眼がすわり、ヒゲを生やし、ボロボロになった服を着ながらも歩き続ける力強い姿が素晴らしい。  「世に無頼漢と称する者、そは天地に愧じぬ正義を理想とする若者にその汚名を着せ、明日を知れぬ流転の人生へと突き落とす、支配勢力・制度の悪ならずや」という字幕が語るように、悪党が本当に悪党なのか? 悪党と言われる者が、本当は真面目に生きる人間だったりするのだ。 そして正義と言われる者が、偽善を振舞い悪事を働くような者も世の中には溢れている。 人妻になろうと、平三郎の一途な想いは変わらない。 愛する女を守るため、己の身を犠牲にする覚悟で悪漢を叩っ斬る。 これで平三郎の覚悟は決まった。 散々に斬りまわった挙句、捕縛されて連行されていく平三郎。 民衆には平三郎は悪にしか映らず、奈美江たちには命の恩人なのだ。 その恩人を助けられない奈美江たちの悔しさと哀しみ、平三郎の無念。 解る奴は解ってくれるが、解らない奴は一生理解できない。 それがこの世の中だ。  これほどの作品を発掘し守った人々には、感謝しきれない。
[DVD(邦画)] 9点(2014-01-10 19:31:46)(良:2票)
69.  チャップリンの黄金狂時代 《ネタバレ》 
もう密度が半端ないですね。 最初30分だけの短編にしても面白いですし、ラスト1時間も最後まで飽きずに見てしまいました。 雪山で出会った男が伏線だったり、二段構えとも言うべき傑作です。 また単なるコメディで終わらない所がいいですね。 実はこの作品は「偽牧師」と共に西部劇としての一面があるんですよ(まあ作品を見た方なら既にご存知だと思いますが)。 ゴールドラッシュで沸き立つ街、一山当てようと死に物狂いで山に挑む人間たち。 ある者は富を築きますが、その多くが飢えや殺し合いの中で消えていきます・・・事に本作は飢えの恐怖。 チャップリンなんか靴まで食べてしまうし、隣の大男は腹が減りすぎてチャップリンが巨大なターキーに見えてしまう・・・ちょっとオーバーかなとも思いましたが、飢えた人間たちが略奪や殺し合いに発展する様は恐ろしいです。 山での死闘、そして下山した街で巻き起こる騒動・・・クリスマスのシーンは笑いを通り越して涙が出てしまいます。 それでも最後まで彼女のために奮闘する健気さ。山小屋が雪山を滑り落ちるシーンなんか口あんぐりでした。 貧乏を経験したチャップリンだからこそ描ける凄い映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-29 15:19:16)(良:2票)
70.  ロイドの要心無用 《ネタバレ》 
キートンがアクション、チャップリンがストーリーならハロルド・ロイドは勇気です。 普通の人間が「やったらやれるんだ」と勇気を振り絞って奇跡を起こす・・・そんな様子に私は惹かれます。 終盤のあの有名なシーン。 実際にビルを自力で登ってしまうんですもの。分かっていてもハラハラします。 だって登った時計台から3回も落ちたジャッキー・チェンとかいう人がいましたからねー。「プロジェクトA」で人間卒業しちゃった。 ロイドもいつ落ちてしまうのかとドキドキでした。 ロイドの勇気に拍手です。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-29 14:41:17)
71.  キッド(1921) 《ネタバレ》 
「犬の生活」の進化版とも言うべき傑作。 病院から出てくる赤ん坊を抱いた母親。彼女は頼るはずの子供の父親に“忘れられて”しまい、子供を育てる余裕もないほど追い詰められていた。腹を痛めて産んだ子供を育てたい母性、それを守るために愛する我が子を手放し他人に託さなければならない自分の無責任さ、不甲斐なさ、無力さへの葛藤。 いや、一番の原因はテメえでタネを蒔いた事も焼き捨てちまうようなクソ野郎の方だ。 母親も後悔先に立たず、イスで彼女が祈る間にも運命は赤ん坊を車から引き摺り下ろしてしまうのだ。普通の映画ならあの強盗2人が情が移り赤ん坊を引き取るなんて展開も面白いだろう。だが、さらに一難を経る事で赤ん坊は運命的な出会いを果たす。 上空からゴミが捨てられる日常、まさか赤ん坊まで上から捨てられたのかと勘違いしても無理は無い。 チャップリンも面倒くさいからではなく情が反応する故に赤ん坊を他人に任せようとしてしまう。だが預けられる母親も赤ん坊一人に手一杯、押し付けんじゃねえやと傘でメッタ打ち。オマケに警官が睨み付ける。この作品の警官は結果的にチャップリンと赤ん坊の絆が深まるような事しかしない。それを知らない警官は幸か不幸か解らない。 チャップリンはいっそ下水にでも捨てちまおうか、なんて一瞬思うがやっぱり赤ちゃんは可愛いくてしょうがない。情が移り「ジョン」という名前を付けて大切に育てる覚悟を決める。 月日が経ち成長したジョンと共に行う窓をめぐる“仕事”の日々。悪いと解っていても食わせるためだ背に腹は変えられない、後は父ちゃんに任せろと言った具合にせっせと治しては一緒にジョンの面倒見てくれそうな嫁探し。でも警官の人妻には手を出すなよ。 生活は貧しくても、寒くたって良い。一緒に食事をして過ごせる小さな幸せさえあればいいのだから。 一方で成功を収めた母親の捜索や街の住民との親子喧嘩、迫り来る保健所の恐怖と二重三重に絡んでくるドラマ。 愛するわが子のために警察を振り払い屋根の上を駆け抜けるシーンは熱い!ジョンも悲しそうな顔で“父親”を叫び続ける。 宿での別れ、深い哀しみが見せる“天国”の夢、悪魔のささやきと夢の中まで追ってくる警官の悪夢。いや、彼は悪夢からチャップリンを救い出すキューピッドだったのかも知れない。昨日の敵が今日の友となる瞬間の感動。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-29 14:26:00)
72.  荒武者キートン 《ネタバレ》 
バスター・キートンの最高傑作というと「将軍」や「セブン・チャンス」も挙がりますが、ストーリーの随所でアクションが炸裂する「荒武者」を私は推します。  単なるコメディ映画として片付けるにはもったいないほど練られたストーリーとアクション。 首が折れても撮影を続行するようなクレージーな俳優はキートンとジャッキー・チェンぐらいです。  昔から争い続ける二つの家。 同士討ちから始まるファーストシーン、時が立ち家の再興をかけて故郷に戻る主人公。 キートンというと無表情が売りですが、笑わずとも表情豊かなしぐさはとても魅力的な存在です。 犬と戯れるキートンは可愛いです。  しかし故郷に戻ってみれば爆破される家、電車で中を深めた娘も、実は父親が争っていた家の娘だった。 争う宿命にある男を愛してしまった娘・・・キートン映画はコメディである事を忘れるような設定のオンパレードです。  主人公は負けずに暗殺の危機をのらりくらりとかわして行きます。 爆走、馬、汽車泥棒、断ダイブに滝における「救出劇」! キートン渾身のアクション、今見ても思わず思わず拍手してしまうほど凄味があります。 「セブン・チャンス」の鬼神の如き爆走といい、キートンは本当に凄い人です。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-29 00:30:22)
73.  愚なる妻 《ネタバレ》 
「グリード」に並ぶシュトロハイムの傑作。 「今時サイレント映画すら見ていないなんて話にすらならない」と言われて鑑賞。私がサイレント映画に魅せられた最初の映画でした。今の時代に無いエネルギーと狂気。 最初は淡々としたストーリー展開ですが、終盤にかけての追い込みは素晴らしいです。 カラムジン伯は様々な女性に手を出し騙くらかすような男で「騙される女が悪い」という筋金入りの悪党。他の登場人物たちが善悪で片づけられない人物像を見せるのに対し、このカラムジンだけは最後まで悪党として生をまっとうしました。「嘘泣き」の場面なんかそれを極めてます。鏡を使ってまで着替えを覗くなどド変態です。サイレント時代からこんな映画があるとは・・・。散々悪事を重ねていくカラムジン。しかし騙された事を知った女のしっぺ返しが凄いこと。火を付けられたり、挙句には襲おうとした娘の父親に返り討ちに遭う・・・因果応報という奴でしょうか。カラムジン伯の恍惚の表情で私の腹筋は破壊されました。恐らく今正に襲いかかる・・・というところでガツーンと殺られたのでしょう。或る意味幸せな最期です。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-24 12:48:11)
74.  メトロポリス 完全復元版(1926)
フリッツ・ラングは「M(エム)」、それにアメリカ時代の「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」や「激怒」「スカーレット・ストリート」いった作品の方が完成度が高いが、今回「メトロポリス」の完全版を見た上で大満足な出来だったのでレビューしたい。 フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。 完全版ではヨシワラにおける人間達の欲望が弾ける様子、フレーダーセンの部下がヨザフォートに迫るサスペンス、アンドロイドマリアのダンスシーンの一部などなど重要な部分が修復されている。修復部分の痛みは激しいが、今まで欠けていた部分が補われた事でより、いや本来の魅力を存分に愉しめるようになったのである。 今日では散逸したフィルムも補完されて「完全版」として楽しむ事が出来るようになったが、それまでの80年を生きてきた人にとってはどれほど長い道のりだったか・・・。 そしてそのフィルムを含めて、今日まで作品を守ってきた人々は、もっともっと評価されなければならない。 ここに感謝の意を評したい。 ありがとう・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-15 11:41:50)
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