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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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821.  母なる証明 《ネタバレ》 
母の周囲は克明に描かれる、それ以外は曖昧渾沌。その曖昧渾沌に対して母は挑戦し、ある種の充実に包まれる。探偵の興奮、忍び込みの冒険、発見と推理、この充実の果てにたどり着いた野が映画の冒頭シーンだ。この映画驚かすところは多々あるが(被害者の奇妙な姿勢、不意の鼻血、話の思わぬ展開…)、この冒頭はかなりびっくりした。普通の実写シーンの背後に音楽が聞こえてきて、それに合わせて踊り出す、ってのは、ミュージカル映画でダンスに入る瞬間のスリルそのもので、日常から非日常へのジャンプするあの興奮がこう使われ得るとは思わなかった。ミュージカルでは平凡な日常から、たとえば恋を歌い上げる非日常へとジャンプするわけだが、ここでは探偵の充実した時間から、非日常へジャンプした空虚を描いていたと後で分かる。母と子と立場が逆転してしまい、あの充実が抜け落ちていく、「しっかりしなきゃ」という心構えが必要なくなってしまう。そして罪の重さだけがのしかかってくる。あのラスト(併走する車から撮影し続けたのか)、本当に達成できるのかどうか定かでない忘却へ向かって、非日常を疾走するダンスで締められると、なんか物語としてはスッキリできなくとも、映画としてはきれいに決まったな、と得心させられてしまった。被害者を街から丸見えの場所に置いたんだよ、と悪友が推理するあたり、そういう方向(社会の悪意)に話が収斂していくのかと思ったのだが、そうでもなかったみたい。あの夜景のカットはかなりゾクゾクしたんだけど。
[DVD(字幕)] 7点(2010-07-30 10:14:41)
822.  つばさ 《ネタバレ》 
とにかく視点が自由に動ける、ってことが映画の獲得した喜びのなかでも重要なものだったということがよくわかる。ブランコといっしょに揺られ、向こうから来る男が上下しながら近づいてくる。テーブルを越えてぐんぐんシャンペンに近づいていくカメラ。そして何と言っても飛行機からの眺め、兵隊がワーッと散っていくところなど、そのまま『地獄の黙示録』へつながっていくノリ。空中戦でちっぽけな飛行機が雲海に沈んでいくのなんかも、なかなか哀切で、当時の観客のショックは大きかっただろう。せいぜい車や列車のスピードを実感するぐらいの生活だったのだろうから。ラストは反戦っぽいけど、どちらかというとアメリカ魂の謳歌のほうに主点があった。隊での上官の雰囲気とか、クララ・ボウの一途さなんかもアメリカの理想像。控え目なようでいて積極的。友情の皮肉な展開、「俺だよ、俺だよ」とパニックになるところが怖い。爆弾投下のシーン、落ちていって家を爆破するところまでワンカット、あれは迫力あった。教会の尖塔の天辺が崩れてきたり。疲れて一服してた兵士が、爆片を浴びてその姿勢のまま死んでしまってるなんてのもあった。第一次世界大戦てのが、まだつい最近の出来事で、それに関するあれこれが、まだまだニュース的に新鮮だったんだな。ちょい役でゲーリー・クーパーが出てきたとき、場内に拍手が起こったのは驚いた。20世紀末の日本で観たんだけど。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-29 10:38:55)
823.  未来は今
時代はフラフープの58年ということになっているが、空気は20~30年代。アールデコ調の美術、それとキャプラタッチのせいだろう。冒頭のリズムなんかなかなかよろしく、運命の求人広告につくカップのワッカが後のフラフープを予告したり。でもストーリーは美術的興味へ奉仕するだけに提供されていて、いやそれでもいいんだけど、やっぱりなにかキャプラの伝統に対する批評もほしいところ。伝統を継ぐってのは、批評精神を持って生かせるものを生かしていく、ってなかにあるんじゃないか。落ちた主人公が助かる展開などパロディとしての批評なのかも知れないが。実際に存在したフラフープを使って、ここまで話を作っちゃうってのは、素直にすごいと思う。でもやっぱりポール・ニューマンの副社長室の秒針の影など、美術のほうがこの映画の命。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-28 10:02:25)
824.  パルプ・フィクション
三すくみの好きな監督だが、これにもあり、またこの映画そのものも、支え合っている三つのストーリーの三すくみ状態と言えなくもない。人間の面白さへの興味よりも、人の世の面白さへの興味が、こういう形式を作らせるのだろうか。面白いことはとても面白いが、材料を十分に見せられて、チャッチャツと料理を簡単に済ませられた気分もある。話の突発性はやはり楽しく、こうなるとこれからの展開はどうなるんだ、ってなスリルがしばしば訪れる。ユマ・サーマンにカウ・ガールと言い、トラボルタに踊らせた。あとクリストファー・ウォーケンをベトナム帰りにしてたっけ。旧作への挨拶を忘れない律儀さというよりも、単にユーモアと取るべきだろう。フェイド・アウトにもとぼけた味がある。そういった笑いのなかに、負け犬の最後の復讐というか、男意気のドラマがあって芯になっている。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-26 10:05:22)
825.  ラウンド・ミッドナイト 《ネタバレ》 
親切とか友情とかいうよりも、もうこれは献身ですな。身を滅ぼして創造していく芸術家、それにインスピレーションを受ける生活人。この男がイラストレイターってのが、うまい設定。芸術家と生活人の境界にいる。彼の親たちのような「調和のある暮らし」をしてるわけじゃないし、また奏者のように確固とした自分の芸術世界を持っているわけでもない。その両者の間で宙ぶらりんになってるんだけど、ひたすら献身と保護で、芸術家と調和のある関係を生み出してしまう。彼が献身する主人公のサックス奏者のオッサンがいいんだ。デクスター・ゴードン。ボーッと立っててゆっくりゆっくり歩くの。表情はほとんど変化なしで、でもその分、酒をやめると決意するあたりはジーンとしてしまう。あと誕生会のとことか。ただボウゼンと座ってるだけなんだけど、味わいがある(演技の素人を使って味のある芝居を引き出すってのは、イタリアのネオ・リアリズムやら、清水宏やら、ブレッソンやら、映画史で繰り返されてるんだけど、これは映画ってものが「演劇」の発展したものでなく、あくまで「記録」の精神から出発してることと関係があるんだろうな)。日が射す海辺を少女と遊ぶ場面以外は、ほとんど夜か曇天の世界で空気がこもってる感じ。人と人が理想的な組み合わせで出会う、ってのにしみじみ感動させられてしまうのは、そういうことが現実には滅多にないからなんだろう。後を追いかけていったらオレンジジュースを注文していてほっとするところ、などジンワリ。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-24 10:06:12)
826.  盗まれた飛行船
レトロ感覚の人。ときどき挿入される大衆読み物の挿絵ふうの画像に対する愛着。子どもたちが猛獣に襲われているかも知れない、という場面で何枚かパラパラと綴られるやつ。そして銅版画ふうの線描世界。きっとこの人は、こういう時代に暮らしたかったという憧れを持ってたんだろうなあ。なんか寺山修司と共通した嗜好があるみたい。過去へ引きずられがちな傾向。プラハのほうの話でのいちいちのセット・建造物もいいし、少年たちのほうでは洞窟の中の入り江ね(これ『悪魔の発明』のときにも使った図柄じゃないか?)。とにかくとても面倒なことやって、自分の世界にしちゃってる。その特別なシーンだけが浮いてしまうことなく、一編の映画そのものがトリップしてしまう。新聞記者に発砲する家族がおかしかった。ただ筋立てが二つに分かれたぶん、『悪魔の発明』よりはいくぶん物足りない。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-23 10:04:50)
827.  平成狸合戦ぽんぽこ 《ネタバレ》 
ちょっと話を複雑にしすぎたか。ワンダーランド社長や狐が絡んでも尻すぼみで、いっそプロパガンダならプロパガンダに徹したほうがスッキリした。そして戦う相手が茫漠としている。作業員三人を殺してどうなるものでもない。この相手のはっきりしないところが、現代のポイントなのではあるけれど。だからこれと対になるように玉砕したわけか。絵としては、狸が三段階になる、リアルな狸・マンガ狸・デッサン狸で、この簡略化されたデッサン狸になるのが、よく意味は分からないが、なんか面白い(群衆だとなる、ってんでもないんだよな)。妖怪パレードのシーンが楽しい。市民社会と幻想とが混在し、市民が楽しんでしまうの。懐かしむというか。屋台の背後での行進、小さな阿波踊りなど、この小ささに味わいがある。消え去った後、ガードレールなどに腰掛けて、あたかも花火大会が終わった後のような気分のカットがいい。その点、ラストの田舎の幻想は、あくまで現在のニュータウンと画面の中で混在させなければならなかったんじゃないか。ナレーションを語らせ続けるのは、そう悪い試みではなかったと思うけど、ときに自然保護運動のチラシの中にあるような固い言葉になる。
[映画館(邦画)] 7点(2010-07-18 10:53:21)
828.  忠臣蔵外伝 四谷怪談
風に吹き散る桜で始まる。はらはらと散る情緒に対抗するように。また琵琶の響きを入れたことで、話に一歩退いた地点を作れた。少し離れることが出来た。とにかく一つの解釈にはなっている。忠臣蔵と女の争いを対比し、後者のほうにマットウなものを見ようとしている。ドラマを動かすのはお梅、彼女がここまで重要に扱われた四谷怪談はほかにないだろう。荻野目慶子の痴呆ぶり、ちょっとやりすぎかとも思うが、まあ見てて楽しい。この一家をほとんど魔物として描いたわけだけど、ラストで、でも彼らのほうが浪士らよりはマシと見えてくる。本当なら岩は武士のすべて、赤穂がたにも悪さをするべきなのだが、そこまでの裁き手にするとカレンさがなくなってしまうか。前半の伊右衛門のケダモノぶりは、ふと『仁義の墓場』などを思い出させた。決起の宴と結婚の宴とをヤマに持ってきたのは正しい、男の狂乱と女の狂乱、琵琶の響きが二つをつなげる。ラスト、実像となった伊右衛門と岩が、透き通る虚像の浪士たちを眺める場になるのではないか、とちょっと想像してしまった。忠義の世界のウツロさを映像で駄目押ししてもらいたかった。
[映画館(邦画)] 7点(2010-07-14 12:03:58)
829.  水玉の幻想
おっとこんな映画も登録されていたのか。これ『盗まれた飛行船』の併映で公開された短編。ガラス製のアニメーション。すごく面倒なことやってるんじゃないか。油絵のアニメってのもあったけど、こっちのほうがさらに手間がかかってるだろう。タンポポの男がパッとガラス=氷の壁にさえぎられるとこ、それが割れて流氷のように流れ出す、なんてのがよかった。一滴の水玉の中にも小宇宙、という発想。いまはCGの全盛、たしかにどんどん進歩していて、布の質感や肌の質感もかなりきめ細かく表わせるようになった。しかしそれはいいことなんだろうか。CGは、そのノッペリした質感が必要とされるときに一番生きている。変わった素材を十分生かしてそれぞれに合った新たな作品を作るという試みが、CG万能になるとすたれてしまいそう。シンセサイザーが生まれても、オーケストラはなくならなかった。こういう「ガラスでアニメ」なんていう無茶な試みをする人も、アニメ全体の表現を維持確保するためには、必要なんだと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-13 11:58:56)
830.  オリーブの林をぬけて
これは何て言うんだ、恋愛映画じゃなくて求愛映画ってのか。映画内映画という枠組みで、演じることと本心とが曖昧にされ、つまり娘の無関心が本心か演技かというスリルがあって、その限りなくややこしい状況の中で、ストレートにひたすら求愛する。その求愛の「ややこしくなさ」、「ストレートさ」が気持ちいい。やたらしゃべるのに、ほれぼれと聞きほれる。車からの視点が前作に続いて光る。バスを追いかける冒頭のとことか、サイドミラーも構図に入れたシーンとか。二つの動きが一つの画面に混在するめまいのような気分。随所にペルシャンブルー。物分りの悪いおばあさん、この人の映画では年寄りはあまりいい役を振られない。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-11 11:53:19)
831.  シリアル・ママ 《ネタバレ》 
模範的家庭をパロディにする、ってのもアメリカ映画の重要なジャンルか。しかもだいたい朝食シーンから始まるんだ。模範的にパチリとハマリすぎていることの気味悪さに敏感ってことか。中流アメリカは市民社会として安定してるがゆえに、その「市民」が成り立っている「きわどさ」にも敏感。市民であることの面倒くささ、シートベルトを締め、ゴミを分別し、借りたビデオはちゃんと巻き戻し、そういうあれこれの些細な厄介さの上に、市民社会は存立している。殺人が徹底してないのが不満、やはりこれは「公共的正義」のみにおいて狂うべきで、個人的なもの(学校の先生とか)が入ってくるのは不純。もっと分別をしっかりしてほしい。シートベルトを締めない男を追いかけるときには、ちゃんとシートベルトを締める。「あなたはリサイクルしてましたか?」ってのが裁判の決め手になるのが、当時のアメリカ社会の皮肉になってるよう。「正義」という保証を与えられた狂人が一番怖いという話。火掻き棒で刺すと肝臓がついてくる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-08 11:54:47)
832.  哀戀花火
ちょっとの火も危険と靴を履き替えさせられる花火工場、なるほど、ここぐらいメロドラマの舞台にふさわしいスリリングなところはあるまい。女主人は視線をそらして絵描きに話しかける。愛の火花が散っては危険だからだ。でも番頭との間には摩擦熱も生まれつつ、あぶないあぶない。恋愛映画はスリリングなのである。恋の発生の危険が現実の発火の危険と重ねられる舞台設定が秀逸。しばしばメロドラマが戦争を舞台にするのも、危険が満ちているからだろう。でも無粋な爆弾工場より花火工場のほうがロマンチックである。ちょっと役者(とりわけ男のほう)が物足りなかったか。黄河の両岸からの花火合戦よりも、そのあとの煙のたゆたいが美しかった。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-30 11:57:25)
833.  愛しのタチアナ
少年や青年にもっともふさわしかるべき心情を、あえて中年に移して楽しむのが、この監督の趣味。そこから生まれる「照れ」とか、それを隠そうとする「ブッキラボー」が味わいになる。人と視線を合わせられない照れくさがりの純愛を、中年が演じる。侘しいことは侘しいんだけど(だって中年だもん)、でもそういう人生を肯定している。ミシンを踏む中年男の、こうでありたかった自分の妄想かもしれないけど。ホテルやカフェの入口・受付のあたりになると、この監督らしい雰囲気が立ち込めてくるのは何なのか。ブッキラボーだからか。客との応対のように人々のドラマが進行して、そのなかで不意にタチアナが寄り添うからいいのか。やや俯きながら画面に入ってくるとことか。フィンランドの「フィン」て、ハンガリーの「ハン」と同じく、フン族の「フン」から来てるそうで、こちら東洋の流れを汲んでるらしい。こういう「侘しさ」にこだわるとこなんか、同根を感じる。原題は「タチアナ、スカーフに気をつけて」か、そっちのほうがいいじゃないか。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-29 11:57:26)
834.  ピクニックatハンギング・ロック 《ネタバレ》 
前半が特にいい。ピクニックのまどろみの感じ、いつもと違う朝の空気。バレンタインデーは南半球では夏なわけ。バッハの平均率に乗って馬車が走り、町を抜けると手袋を外し、虫のさえずり、羽ばたく音。食べ残しのパンにたかる蟻。12時に止まる時計。このしだいに山の神秘に呑み込まれていく感じ、「美しい良い子」の少女たちは消えていかねばならないことを、映像で納得させてしまったのはすごい。消えていった少女たちにはほとんど個性が与えられていないのも正しく、少女の「普遍」なんだろう。これ少女期の終わりだけでなく、19世紀の終わりも重なっている。19世紀的な少女は消えていき、淘汰され、20世紀的な少女の時代になっていく。しばしば流れるベートーベンの「皇帝」の美しい第2楽章、これの初演が19世紀初頭、たぶんこれからはがさつな不協和音の時代になっていくのだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-27 11:57:29)(良:1票)
835.  ひとりで生きる 《ネタバレ》 
むごい目にあう動物たちが遍在している。前作でも子猫が殺されてたが、本作では豚、犬、ネズミ、鳩など。少年は、人間ではなく動物の側の存在なんだろう。少女が顔をジーッと見つめてくればキスするかとロマンチックな気分が満ちてくるが、つばをかける。そういう恋人のような友だちのような微妙なお年ごろ。船の上での縄跳び、水たまりに倒れている男。やがて鳩が飛ぶ船室、赤ん坊を抱く裸の女、と幻想味が増してくる。火だるまのネズミ。棺の中のワルカ。陸橋の火花。裸の男女がレーニン像を這い回る。前作でもそうだったな、気が狂うということよりも、裸になるということのほうが重要なのかも知れない。裸のみじめさが聖なる裸に転化していく。時間の定かでない夕刻のような薄明かりが印象深い。汽車の荷物から女が出てくるときのや、ラスト近くのネズミのとこみたいな。いかにもロシアの光。そういえば少年の顔もたとえばタルコフスキーの『ストーカー』の系譜で、いかにもロシアの表情なんだ。かってにこちらがそう思ってるだけかもしれないけど。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-26 11:57:02)
836.  ミッション 《ネタバレ》 
音楽がエンニオ・モリコーネ。『1900年』的なオーボエの歌から始まって、スタッカートのコーラスで盛り上げていく。歴史や政治など硬めの題材を背景にした映画ではとりわけこの人の曲が似合う。『死刑台のメロディ』の歌も好き。『ソドムの市』の、あたかも上品なサロンで流れているような音楽も大好きなんだけど、これは硬めの歴史ものってのとはちょっと違うか。またこの映画では音楽ってのが、そもそも一つのモチーフになっている。宣教師の布教の手段としての音楽が、けっきょく歴史を見ると、布教が音楽文化を伝播するための手段になってしまった、っていう皮肉のようなこと。「慈しみあふれる愛」がどうのこうのと言われると反発を持ってしまうが、異文化の接触という点に重点をおけば、歴史の普遍を描いている。異文化がぶつかりあうことによって、たしかに一方では今までサーベルなど持ったことのなかった楽園に悲惨がもたらされたが、また一方ではヴァイオリンが伝わった(なにもインディオの音楽と西洋音楽との間に優劣をつけてるわけじゃなく、あくまでこうして文化は多様化していくってことで)。もっともその後にはキリスト教文化由来の和声が世界を覆い尽くしていったわけだが、ともかく宗教より芸術が上位、って考えは嬉しい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-23 12:02:22)
837.  エイリアン2 《ネタバレ》 
エイリアンを先住民インディアンなり共産主義者なりに見立てると、ハナモチならないアメリカ映画の伝統につながるんだけど、己れの悪夢を克服するために再び現実と戦う勇気の物語と見ると、アメリカ映画の最良の伝統を受け継いでいることになる。だからいいのはヒロイン像。重火器の構えがいい。今までだと武器を持つ人物は、もっぱら前屈みになったもんだけど、重さで後ろに身を反らす感じになる。前屈みのほうが戦闘的な気分は出るが、身を反らすと堂々として頼もしい。それが女性ってことで、新しい味わいが出た(2012年再見。ここらへん記憶の中でリプリーと海兵隊のオネエチャンとが混ざってたな。あのオネエチャンの構えが本作で一番印象に残っている)。活劇としては、天井からエイリアンが近づいてくるあたりドキドキさせたが、考えてみればちょっと対策が不備すぎる気もする。エレベーターで追いかけてくるってのも、なんだかなあ。細かいところはけっこう気をつかってるんだよね、冬眠から覚めたあとの床の冷たさとか。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-20 12:12:59)
838.  サクリファイス 《ネタバレ》 
『ソラリス』から『ノスタルジア』まではもう完全に酔いしれたもんだけど、これは違和感が残ったなあ。いままでの作品と比べてセリフの比率が多かった気がする。いままでの復習的な面もちゃんとあって、唖の少年は『鏡』の冒頭の吃音を思い出させ、自転車ってのは『ノスタルジア』で重要だった。ドアがギィーッと開くってのも。揺れてガラスが鳴り出すってのは『ストーカー』、空中浮遊は『ソラリス』に『鏡』と、なんか過去のモチーフを総ざらいしている感じがあった。遺作となると意識していたのか。そういう意味では、もちろんタルコフスキーの世界以外のなにものでもない(でも犬がいなかったなあ。途中で鳴き声が入ってきた気もするが)。素材はそうなんだけど、なんか本作はそれに浸り切ってない感じがある。それが衰えから来るものなのか、作者の切迫から来るものなのか。話の骨組みは黒澤の『生きものの記録』と似てて、でもまったく別種の道を通り、まったく異なる質感の世界を提示した、って感じ。でもまだ黒澤のほうが論理的だった、こちらはもう完全に「祈り」だもんね。あの「日本」をどう考えていいかが分からない。未来都市をわざわざ日本で撮った監督が、あの老教授と同じ考えだとは思えない。案外単純にヒロシマの国ってことかなあ、その場合非キリスト教国ってことはどうなるのだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-16 12:06:40)
839.  絞死刑
前半の面白さだけだったら、ためらわず大島最高作と断定してしまうんだけど、後半抽象論になって浮いてしまうのが不満。外に出ての妄想シーンまではいいと思うんだけど、「姉」が見える見えない以後の展開は、映画よりも剥き出しのシナリオ文学って感じで。いかにも60年代末という時代を反映はしている。これ音の効果もいいんだ。ぶるぶる震えるときの手錠のカチャカチャやら、生きているということの鼓動、朝鮮人部落の声、など。あの姉の演説にRが、どうもしっくりこない、と不同意を示すとこに誠実さがある。ドアの外の国家がまぶしく輝いているところは、やはり迫力がある。特定の代表者があるわけでなく、国家とは一つの状況だということか、けっきょくRも妄想の世界へ消えてしまったという意味なのか、あるいはこちら側がひとつの妄想の体系だと言っているのか。など理屈をいろいろこねる楽しみはあるが、前半のブラックユーモアで押し通してもらいたかったなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2010-06-15 11:58:42)
840.  プラトーン
こうまで爽快感のない戦争映画も珍しい。おどおどした気持ちと倦怠感が交錯し、それにヒステリーが重なる。オバサンを射殺するあたり説得力があった。恐怖があり、仲間を殺された恨みがあり、分からない言葉で何やらこちらを非難している、倦怠感からヒステリーへ一足飛びにエイッと行ってしまう。ラストの大混戦、敵味方の区別もつかない渾沌に友軍の爆撃が重なって、ヒステリーは頂点に達する。けっきょくすべての兵士の死は犬死にである、というやりきれなさがビンビン伝わってきた。ヘリコプターの風でカバーがめくれ死体が出てくるとこ。冒頭の除隊組とすれ違うところも印象深い。最後の兵士の意味ありげな笑い。ザマアミロが80%、憐れみ10%、頑張れよ10%、ってとこか。バーンズも単なる悪役じゃなくて、この戦場で生き残り続けてきた経歴を持っている、生き残ることは殺すことだってことを身をもって証明してきて、クリスがラストでなぞるわけ。そしてすべてを包み込むジャングルの怖さ。ここでは敵はまったく純粋な「敵」として存在する。懲らしめるべきものでも、人倫を踏み外した憐れむべきものでもなく、ほっておくとこちらを殺しに来るただ純粋な敵。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-07 12:03:29)
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