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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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901.  ミンボーの女
伊丹監督の情報映画というか、手口紹介映画というか、“現場主義”がよく表われた作品。こう複雑になった社会では、背景を分析していってはキリがなくなってしまう。そこで何事かが起こっている現場だけに好奇心を絞り込んでいく。現場のレベルでナマなものだけが、現代では確実な手応えを与えてくれるもので、そこに固執しよう、と割り切った姿勢が感じられる。暴力団と警察と企業、それらの関係を構造として見、解剖していくのではなく、それらが接触する面だけを剥がしてスクリーンに広げていく。暴力団と警察の背後にある政界での癒着などには思いを馳せず、このホテルのロビーだけの限られた中での正義を描く。もちろんこれは大きな弱点で、社会を捉える映画として最も重要である批評性を捨ててしまう訳である。でも、この世の中を大局的に分かったように扱うよりは、まず確実な部分だけでつかんでみたい、という作者の姿勢も尊重してみたいのだ。大局的な論は、突き詰めると抽象性の幕によって時代との間に境が作られてしまっているような感覚が残る。この幕に対するいらだちを監督は強く意識していたのではないか。日本の社会派映画の、とかく大局の論に走りがちな欠点を、もしかすると乗り越える役割りを担うのではないか、とこのころの伊丹監督には期待してたんです。手口の陳列として面白かったし、いつもながらの過剰なサービス精神にはゲンナリさせられるところもあるが、「暴力団は他人に屈辱を与えるから嫌だ」ということはあまり日本の映画ではちゃんと描かれてこなかったことで、そこを買います。仁侠映画好きな私が(フィクションと割り切って楽しんでるんですが)時々思う後ろめたさを贖罪する意も込めて。
[映画館(邦画)] 7点(2009-12-23 12:08:42)(良:1票)
902.  待って居た男 《ネタバレ》 
山田五十鈴がはしゃいで探偵気取り、旦那の長谷川一夫がこっそり解決、って形。全然戦争中の気配がないシャレたタッチ。単純にまだノンキだったのか、意識的に娯楽に徹したのか(翌年の『ハナ子さん』となると、娯楽ではあるが戦時色濃厚)。なかなか主人公たちを登場させず、若奥さんの周囲に起こる不安な出来事で雰囲気を作っていく、材木が倒れたりとか。前作の犯人役の使い方もにくい。前作の駕篭かきにあたるお笑い担当は岡っ引二名、これが山田の手下となって走り回る。一方がもう一方をまね、犯人を捕まえたぞー、って一階と二階の廊下を走り回る場面はワクワクする。さらに金太のエノケンも登場、いろいろ教えてくれてありがとう、を繰り返すが、そう破天荒なトリックスターではなく、おとなしい役どころ。どちらも超主役級でありながらトーンのかなり違う長谷川一夫とエノケンが同一画面内にいると奇妙な感じである。あと言いたいことはいくつかあるが、犯人あてのものなので勘のいい人には分かっちゃうことを言っちゃいそうなので黙ってる。ちゃんと人妻役はお歯黒をつけていた。
[映画館(邦画)] 7点(2009-12-17 12:01:34)
903.  クイック&デッド 《ネタバレ》 
早撃ち大会トーナメントという趣向。つまり決闘シーンが繰り返されるわけだが、そこにいろいろ趣向を凝らすのが見どころ。最初は「立っていられなくなったら負け」だったのが「死ぬまで」にエスカレートしていく。タマが一発しかなくて相手が生き返っちゃったりとか、親子かも知れぬ、とか、その次々の趣向でけっこう見せちゃう。時計台のある広場で、死を刻み続けていた時計台がラストで爆発するのも正しい。そうそう、馬車につないでおいた悪漢が、車を引きずって生きているのもおかしい。ジーン・ハックマンが自分の影を見ると胸のところに光が丸く開いている、といった昔話やホラ話を語っているような調子の演出で、なかでシャロン・ストーンひとりが大マジメに演じていた。
[映画館(字幕)] 7点(2009-12-14 09:07:14)
904.  レニー・ブルース 《ネタバレ》 
編集の妙味、かなり楽しんでやってるんじゃないかな、舞台と実人生を絡ませ、合い間に観客の反応が挟まる。裁判の場の滑稽さ。レニーも最初は別に言論弾圧がどうのこうのといった使命感を持っていたわけじゃない(あるいは最後までなかったかも知れない)。晴れがましい席で、しかしどうしてもそのダーティな言葉を使いたくなった、その言葉以外にはその場に当てはまるものがないと判断した瞬間、彼のコースが決まったのだろう。それはなんらかの反感であり、いらだち、不快感だったのだろう。人生の方向が決まるのなんてこんな感じなんだ。ただし現在からみると彼の芸というのが他愛ないものに見え(本物は違うのかもしれないし、日本人には分かりづらいニュアンスもあるのだろうが)そこんとこがピンとこなかった。裸の写真は死体ばかりだ、というのがラストにつながる伏線だったわけね。
[映画館(字幕)] 7点(2009-12-13 11:58:39)
905.  チョコレート・ファイター 《ネタバレ》 
組んで揉み合う柔道が草書体の格闘技だとすると、カンフーは楷書体。カドカドがきっちり決まってるキビキビ感がいい。この映画、女の子が一生懸命楷書で手本通りに習ってるようなところにジーンとさせられた。彼女のエイッエイッという声もかわいい。前半の起動は遅く、今回はダメかなと思い始めたあたりでヒロインの「ママのお金返して」の集金修行が始まり、ノッてくる。氷屋の青、倉庫のオレンジ、肉屋の赤とトーンを変えていくが、倉庫が上下の動きが生きる分、とりわけ楽しめた。積み上げた段ボールの天辺から向かいへ開脚で飛び移るのが気に入った。一番ワクワクしたのは、『キル・ビル』を思わせる日本料理店の場でトレーナー姿のメガネ男が登場したとき。手をクイックイッと痙攣させたり首をピクピクさせたりして出てくる、するとヒロインもその動きに同期させて向かい合う。アクション映画とミュージカル映画はけっこう脳の近い部位で鑑賞してるんじゃないかと常々思っているのだが、ここなんか、アステアロジャースの動作がシンクロしてきて踊り出す瞬間の興奮に近いものを感じた。限りなくダンスに接近した格闘。両者が空中で互いを巻き込むように旋回し最後の蹴りがはいる。そして飲み屋街(ガードとネオン付き)での壁面の戦い、ここでも上下がたっぷり生かされた。立ち上がりの物足りなさをおぎなう満腹感。
[DVD(吹替)] 7点(2009-12-09 12:07:11)
906.  現代人 《ネタバレ》 
これ山田五十鈴の特集で観たせいか、『浪花悲歌』との類似に思いがいった。転落することによる告発。社会派映画の得意とした型だ。どこかで主人公は割り切って、世の中へタカを括ったはずなのに、ラスト近くで「俺は甘かった」とモノローグしなければならなくなる。この「甘い」ってとこ、その弱さに、渋谷はずっとこだわっていると思う。人間の、徹底できないとこが好きなんだな。純粋な悪も描かないかわりに、健全な庶民も描かない。池部の実家、寿司を買ってくるとみながもそもそと起きてきて、ガード下で電灯は揺れ、寿司の取り合いがあり、ほっぽり出された赤ん坊は泣いている。これだけの描写で主人公の悪への転換を納得させてしまうんだけど、この実家アカホンを売ってるわけで、マットウな庶民と胸を張れるほどのものではない。ここらへんの弱点の配置がうまいし面白い。動きとしての面白さは、この実家の場をはじめ、酔って五十鈴のバーに入り込んでいき、しゃがんで椅子がわりになり五十鈴が酒を取り出すあたり、手切れ金の小切手を池部の顔にペタンと突き返すとこ、池部と多々良が屋上へ出て喧嘩しかけてやめるとこ、などなど。とにかく昭和20年代末の東京、おもに銀座がたっぷりと出てくるのが嬉しい。屋上で食事してたのはどこなんだろう。
[映画館(邦画)] 7点(2009-12-07 12:04:04)
907.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
この人の映画ではしばしば水没願望みたいのが感じられてたが、とうとうたっぷり水没した。後半のおもちゃの船での航海部分が素晴らしい。太古の海に浸された静けさ、道路の上を古代魚が遊泳し、繋留されていた漁船がアドバルーンのように上がっている。過去の海ではあるが、未来の人類が消えた世界の予想図(理想図?)のようにも見えてくる。人々もパニックになってるわけではなく、水没を嬉々として受け入れているようで、祝祭的気分さえうかがえる。ここはホント、うっとりと観た。おもちゃの船の出航のところも、ロウソクに点火しようとし、つかなかったかともう一度マッチを擦ろうとすると小さな火が育っていく、なんて丁寧な演出。水に対抗するその火のかそけさが伝わってくる。あと粘度の高い水のヌルヌル感というかドロドロ感も、この人の繰り返されるモチーフで、それが凝って水の魚になってるあの感触もいい。とにかくたっぷり水を描ききった作品で、その点に関して満足した。噛み砕きづらい話の大枠についてはおいおい考えるとし、波の上を走るポニョに「信貴山縁起絵巻」の護法童子をちょっと思ったことを、取っ掛かりとして記憶しておこう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-12-05 11:53:40)(良:1票)
908.  アルファヴィル
フランスってのは機知の国なんだなあ、とつくづく思う。「コインをどうぞ」で「メルシー」というプラスチック板が出てくるのとか、プールでの処刑、女性がハリウッドミュージカル映画の一場面のように順に飛び込んで死体を引き上げるのが実におかしい。全編スパイ映画のパロディで、車の追っかけやったり、何よりも音楽がおかしい。不安そうなジャーンというのをやたら鳴らす。ストーリーとしては、論理的であることに徹してすべての未来を必然としてしまう社会らしく(安部公房の「第四間氷期」みたい)、反論理的行為の罪というのがあったりする、それに対する自由意志の反抗といったものらしいが、ここはフランスらしい機知とアメリカ映画へのある種の憧れを楽しめばいいのではと割り切って楽しんだ、それでいいんでしょ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-30 12:04:39)
909.  その土曜日、7時58分 《ネタバレ》 
この手の時間シャッフルものの趣向も珍しくなくなったが、でもやっぱり面白い。なんか映画ならではの面白さに根差しているようなのだ。舞台での芝居も映画も、客が座席に座って出来事を眺めるという点では同じなのに、芝居ではまず時間が順に進んでいくのに対し、映画は平気で逆に戻ったりあっちこっちする。不思議じゃないですか。時間を自由にあっちこっち出来るという発見が映画の文法をかなり豊かにしているはずだ。昔は回想は回想らしく画面をゆらゆらさせて入っていくというような決まりがあったが、もうそれも必要なくなり、こうキビキビとシャッフルそのものを楽しめるようになった。一度あったことが主観を替えて再び現われると、どうしてあんなにワクワクするのだろう。映画の秘密と関わっている気がする。それとこの映画のもう一つの手柄はフィリップ・シーモア・ホフマン。鈍感そうな外観とナイーブな内面の取り合わせの魅力なのか。上機嫌に弟に強盗話を持ちかけるあたりは、この人ならでは。このチグハグさがこの人が演じると納得いくんだな。『M:i:Ⅲ』のように完全な悪役になってしまうとあんまり面白くない。今回のように大物ぶりとナーバスさが同居している役だと、その大物ぶりのウツロさがひときわ生きて、いいのだ。この人のことを最初にノートに記録したのは『ブギー・ナイツ』だった。「小デブは『ビッグ・リボウスキ』の秘書か。いいな」となっている。やはり軽く生きているようでいて、自殺してしまう役だったと思う。
[DVD(吹替)] 7点(2009-11-20 12:07:06)
910.  誓い
オーストラリア映画ってのが珍しかったころの作品。映画館がガラガラだったことを覚えている。なるほど、こんな風にして若者は戦場に出てくるんだなあ、というところがよく分かった。悲壮な決意で兵士になるわけでなく、日常となだらかにつながって戦争に向かう。当時の風俗描写(第一次世界大戦時の古風な感じ)がいい。仲間も学者がいたりカタブツがいたり。海岸の場面もいいね、ボンボン砲弾が飛んでくる中の日常といったタッチ。こんなものだったんだろう、というところがある。ラスト、冷酷な司令官と人情ある上官との対比が、やや型にはまってしまい、遠くから批評的に眺めている視線になってしまったが、でもジーンとくるところではある。アルビノーニは、船が上陸する場でひときわ美しい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-19 11:55:38)
911.  デスペラード
かっこいいということがおかしくもある、ってことを知ってしまった者が、開き直って半分コメディとして活劇を仕立てるスタイル、っていうののハシリのころか。撃ち合いの果て、手近の銃を拾っては撃つが、カラ、カラ、カラ、とか。第一、撃って人が飛んじゃうってのがもうユーモアだわな。派手であるってことは、それだけでもうおかしい。ラテン音楽にそもそも似たユーモアがあるのかも知れない、やたらかっこつけ過ぎるおかしさ。タランティーノがいい顔していることに、この映画で初めて気がついた。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-15 11:56:10)
912.  博奕打ち いのち札
やくざの弱さを鶴田浩二が口にしてしまう。女が一緒に逃げましょうと言うのに「俺には、この岩井一家しかない」と言う。やくざというものが、けっきょく家を飛び出して自立できぬ者たちの共同体=偽家であることがよく分かるが、鶴田浩二には女にそんな弱音を吐いてほしくはなかった。それを覚悟して受けとめるから荘重な悲劇になるのであって、『総長賭博』も、家を守ろうとして出す手出す手が次々と家の崩壊を導いていくところに感動があったのだ。でも本作も最終的には運命悲劇の線は守られていて、任侠映画史の到達点シリーズとしての価値はある。海辺を女がフラフラ歩いたりして、ちょっと流れてしまうところもあるが、全体としていい。若山富三郎の役どころが重要で、家の代表でもあり、また世間の噂の代表ということで内在する外界でもある。ラストの血の海の花道は、私はあまり買わない。あくまでリアルな情景で様式美を追求したのが仁侠映画だったはずだ、まあそれだけ仁侠映画がもう熟し切ってそれ以外の表現を必要とするまでになってしまった、ということでもあるのだが。それにしても当時の東映映画俳優陣の厚みは素晴らしいものだった。これ以後彼らは実録路線に合ったもの(文太やピラニア軍団)と合わなかったもの(高倉健や鶴田浩二)にと分離し、他ジャンル映画でも活躍の場を広げていくが、仁侠映画における自在な輝きはもひとつ感じられない。
[映画館(邦画)] 7点(2009-11-13 12:08:29)
913.  嵐ケ丘(1939)
これはもうあちらの『忠臣蔵』というか、いろんな版があり、このほかにブニュエルの、吉田喜重の、J・ビノシュのヒロインで坂本龍一が音楽やったの、を観てるが(リヴェットのは未見)、どれも独自の趣向を凝らして面白いけど、何か物足りないのも事実。これ、映画よりも連続ドラマに向いてる話なんじゃないかなあ。ヒースクリフの帰還までにモッタイをつけたいところが、映画だとそれが出来ず、キャシーとヒースクリフの愛憎のごちゃごちゃをこちらでほぐして味わう時間が足りない。キャシーがただのヒステリーに見えてきてしまう。時間を強制されたくないストーリーってこと。それでも多くの名だたる監督たちを魅了してしまう魔が、この小説にはあるんだ。この戦前白黒のワイラー版が余分な解釈のない分、基本の位置を確保していて見応えがある。私はヒースクリフなのよ、って叫ぶあたりはやはりコワい。ロウソクのゆらぎで盗み聞きしていたヒースクリフの退場を知る、なんて演出。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-05 12:02:27)(良:1票)
914.  マッドマックス2
ちょっと『時計じかけのオレンジ』的な未来予想図で、暴力の方面により“進化”したらしいSF。昔の缶詰だけに食料を頼っているのかな。ガソリンを求めて暴れ回ってる、っていうのが面白い。でも主人公の心意気みたいのは股旅ものに通じていて、未来へ希望をかけるような連帯には目をつぶり、一人荒野を行くの。義理を重んじ、しかし復讐のためには命の危険もかえりみない。かつてのヒッピーコミューンのイメージも重なってるか。追っかけは迫力あり。ローアングルで、時々クレーンの上下も入れて、満足する長さで。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-01 11:53:22)
915.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 
おびえる子どもたちが、おびえながらも何らかの勇気ある行動を取るところがいい。たとえば犯人の側の少年が、荒れ果てた牧場で遺体を埋めた場所を掘るところ。刑事がもういいと言っても掘り続け、泣き崩れる。あるいは被害者のほうの少年が、黙っていたことに自責を感じ、名乗り出る不安におびえて何年も耐えてたと分かるところ。(ふてくされていた犯人も、絞首台の上でおびえ、子どものように「きよしこの夜」をふるえ声で歌い出す。)子どもたちは恐怖と自責に取り巻かれ、しかしそれを何とか乗り越えていく。彼らの世代はやがて『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』の兵士になって、さらなるおびえと戦わなければならなくなる訳だ。この陰惨な世界の中で、どこかでおびえ続けている子どもを探し通す母が映画の芯になる。バスから最後に息子を見送った窓辺の位置が何度も反復され、刑務所の犯人と対決するのも窓辺、ラストの取調室を覗くシーンでは、子どもではなく反射する自分の顔と向かい合っているのが痛ましい。ただ映画としては、サスペンス・社会派・法廷もの・犯罪者の心理ものと間口を広げすぎて焦点が拡散してしまった。精神病院のエピソードなんか、もっとあっさりしてても良かったんじゃないか。マルコヴィッチが意外と面白くない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-30 12:00:08)(良:1票)
916.  日本侠客伝 決斗神田祭り
鶴田浩二の殴り込みがも一つ説得力に欠ける。まあいちおう裁判という筋を通しておいて、さらに健さんに長ドスを持ってもらわなければならないという製作上の要請があるわけだけれども。時代の雰囲気はよく出ていた。滅んでいく火消しの運命と重ね合わせるようにして。新興の工場が見えていたり、一方では深川の遊郭を見せたり。ここらへんのしっとりした風物描写が、仁侠映画のけっこう大事な味わい。気のついたこと。「人生劇場」も3拍子だが、任侠道系の歌ってどうして3拍子になるんだろう? 日本の音楽は基本的に2拍子だ、ってなことを民俗音楽の人が言ってたけど、あるいは朝鮮半島から流れ込んできた系統なのか。任侠道って国粋じゃないのか? 任侠道じゃないけど、日本人好みの世界である「王将」も、堂々と3拍子だ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-10-29 12:06:30)
917.  (ハル)(1996)
インターネットの匿名世界は、トイレの落書き化したり誹謗中傷が渦巻きスラム化する、ってところに興味があったんだけど、これは本人同士が出会うまでの恋愛もの。映画の大半は字幕を読むことになるわけだが、サイレント映画とは違って、字の部分と映像の部分が拮抗してるわけ。心の部分と社会の部分と。どちらかというと写真や図表入りの小説の裏返しに近い。相手の姿かたちがないということの気安さが、しだいに手応えをほしくなる・見たくなる、って経過。そして『天国と地獄』的シーンを経て、抽象的だった会話の相手が「現実に存在してるんだ」という不思議な気分を味わうことになる。電光掲示の文字もしばしば挿入され、文字情報がしだいに表情を持つことの面白さを映像で見せようとした作品でもある。ラストで白黒になったのは、これから文字だけではすまない生身のヤヤコシイ世界に入っていかなければならないんだよ、ってことを言っているのだろうか。…と、これはまだ私がパソコンに触れてもいないころに観た映画の、当時の感想。こうして自分自身が匿名広場に参加することになるとは思ってもいなかった。
[映画館(邦画)] 7点(2009-10-28 11:59:48)(良:1票)
918.  嵐の孤児
おそらく数年前のロシア革命がダブっているだろうことは否めない。貴族の暴虐がまずあり(腕に鉛・馬車が子どもを轢く・頽廃パーティ)、それを踏まえて人民裁判の恐ろしさがまたある。とどちらにも偏らない姿勢を取っているのが、うまく逃げたな、という印象にもなってしまう。前半では「うん、貴族は悪い」と思い、後半になると「君の気持ちは分かるが、これはやり過ぎだよ」と、観ているほうの気持ちがきれいに切り替われて、何らかの統合、と言うか、暴虐と民衆とのより良い戦い方を目指さそうとはしない。まあそこがアメリカ映画の限界というか、良さでもあるんだけど。ただただすれ違ってしまうことの哀しさを歌う、その語り口だけを洗練させていく。やっと会えると逮捕されたりして、もう悲痛きわまりなく、メロドラマの語り口というものは、グリフィスで(とりわけ『東への道』で)おおかた定まり、あとはほとんど進化する必要がなかったのだなあ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-10-23 11:58:33)
919.  その後の仁義なき戦い
逆光が美しい。賭場のシーン、あれは真ん中に照明を置いてあったのか。新幹線ホームのシーンは、『十三人の刺客』の霧の中から行列の一行が見えてくる名場面を思い出させた。そして東映実録路線では毎度のことながら成田三樹夫が絶品。硬軟使い分ける人物のいやらしさを演じて、この人の右に出るものはいない。話としては転落もので、友情を売ったことをきっかけにズンズン落ちていく。甚八が野球賭博の利権のことで成田のまわりをうろつく惨めさ。ただ2時間を越えるのはズルズルし過ぎで、もっとテンポをよくしてほしかった。
[映画館(邦画)] 7点(2009-10-17 11:50:56)
920.  眠る男
今までの“原作もの”というフタがはずされて、ワーッとイメージが大空の大気のなかへ拡散した感じ。「拡大」ならもっとよかったんだけど、「拡散」。不意に飛び立つ鳥、眠る男の鼻から出てくる虫、魂呼びの音がこだまし、はずされた屋根瓦を越えて、やはり大空へ広がっていく。天井がなく拡散していく感覚に通じていく。常に湯気が沸き立っている感じにも通じ、その中心で眠り続ける男、と男のほうは何となく理解できるんだけど、「南の女」のほうはちょっと分からなかった。一種の桃源郷さがしなのか。あと言葉がときどき固くなるのが気になる。メナムの語の講釈や赤ん坊が進化をなぞってる、なんてとこがややシナリオとしてこなれ不足のような。能が出てくるのも引っかかったが、青空の下ってのが薪能よりはいい、やはり天井がない感じで。ここで田村高広がまた講釈をしてしまうんだ。全体、音が良かった。倒木シーンも映像よりひび割れていく音の予感のほうが美しかった。決してこの地が桃源郷なのではないが、そこへ向かって開かれている、って話なのかな。個人的には、この監督は原作でフタをした映画のほうが圧力が高まっていいんじゃないかと思うけど、こういう自分のイメージを十分に拡散したものを作りたかったという気持ちも大事にしたい。
[映画館(邦画)] 7点(2009-10-12 11:59:08)
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