961. 海角七号/君想う、国境の南
《ネタバレ》 確かに、田中千絵は前半あまりに怒り過ぎで見ていて笑ってしまうくらいのキャラと演技だし、手紙と現在での出来事に、それほどの関連性を見いだせないし、若干意味不明な小話もあったりして、よく言えば自由奔放、悪く言えばまとまりに欠けるシナリオだとは思う。だけど、夕陽に輝く船上で手紙を書いた彼がその美しい詩を朗読し、切ない音楽が流れてくると、なぜかもうそれだけで胸がキュンとしてしまう。現在が舞台の台湾は、みんな俗世的で喧々諤々とした雰囲気なのに対して、手紙のシーンのなんたる幻想的で美しいことか。このギャップが僕としては、ぐっくときてしまう要因であった。そして音楽の力。気ままに書き連ねたシナリオのようでいて実はとても緻密に考えられてポイントを押さえてる。それ故に、台湾で大ヒットしたのもうなずける作品だと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-22 01:21:20) |
962. ラブリーボーン
《ネタバレ》 こういう作品、確かに描き方が難しい。それは文化的な差異という側面もあるし、なによりどうしようもなく重苦しい現実に対しての軽やかな空想のギャップに違和感を覚える人も少なくないだろうから。個人的には、死んでからの世界が天国などではなく、スージーの内面が作り出す世界であるという点を評価したい。そしてなにより、殺されてしまった子供達がその世界で皆笑顔で仲良く遊び合う、その光景になんともいえない慰めを感じずにはいられない。最初と最後にスージーが観る者に語り始める「私は14歳で殺された~」の下りにあるように、独特な雰囲気漂う作りではあるが、それは失敗や違和感というよりむしろ作り手の意欲を感じるものとして好意的に受け止めたい。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-22 00:38:38) |
963. 母なる証明
《ネタバレ》 ポン・ジュノ監督の作品は本当にシナリオが素晴らしいといつも感心させられる。毎度のことながら、彼の作品に出てくる周辺の人物はやたらひどいのばかり。非協力的だったり、アホみたいな連中だったり、不条理極まりなかったりする。そういう連中はさておき、僕がいつも感心するのはストーリーの作り方、持っていき方が凄く上手いということ。たとえば息子がついに記憶を蘇らせ、母が犯人の男を見つけ対峙しようとする緊迫のシーンで、実は息子が~という見事なまでの裏切り展開が用意される。そして男を殺し、家で仕事をしている母のところに刑事が近づいてきたとき、観客は必ず「母がついに逮捕されるのか~」と思うわけだが、その刑事の口から出た言葉は「真犯人が見つかった」という意外なもの。ハリウッド映画と違って、なぜかポン・ジュノ作品のこういった二転三転は、観客にあらかじめ予測させることが出来ない、気持ちのよい裏切りである。これは僕の予想だけど、おそらく彼の作品は、彼が監督だけではなくて脚本も手がけているからこそ、こういう見事な裏切りが可能なのではないかと思う。シナリオの文章だけ読むと、おそらくは唐突にも思えるその筋書きを、うまいこと人間の心理的な描写で捉えた映像として表現することでその唐突さを回避し、観客に予測出来ない見事な裏切りを作り出しているんだと思う。 この辺の真骨頂ぶりには、素直に賞賛せざるをえない。 [DVD(字幕)] 7点(2010-06-30 14:32:23) |
964. カールじいさんの空飛ぶ家
《ネタバレ》 さすがはピクサーなだけあって、ツボをきちんと押さえた良質なアニメに仕上がってはいる。ただ、ピクサーのアニメがあまりに傑作揃いのせいか、本作はそれらに比べるとやや見劣りするような印象。それはつまり、新しい友人や幸せを手に入れたのと引き換えに、エリーとの思い出や夢を捨て去っているような印象を持ってしまうから。カールとエリーの出会いから結婚、年老いるまでの仲睦まじい光景は見ていてとても感動的ではあるが、あまりにも「つみきのいえ」に似過ぎてる感が否めない。劇場では3Dで公開されたそうだが、こういう内容ならばむしろ2Dでやったほうがいいのではないか、と思う。映像が立体化すればそれだけ感動が増えるというわけではなく、むしろかえって感動の邪魔になることが多いのでは。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-06-29 21:19:45) |
965. パブリック・エネミーズ
《ネタバレ》 ギャング映画には、ある種お決まりのスタンスというか測定路線のスタイルがあるが、本作はそういう従来の枠にはまる事なく、巨匠マイケル・マンの円熟したスタイルが貫徹されていると言えよう。それはステディカムを多用し、リアリズムとクールさを融合させた、彼独自のトーンであり、人によって好き嫌いはあるだろうが、本作ではそれが最後まで貫かれている。また、ライティングの美しさ、そして、特に銀行強盗でのショットの格好良さには目を見張るものがある。無論、ジョニー・デップもクリスチャン・ベイルも最高に格好いいわけであるが、ただシナリオの出来には少々不満がある。愛するたった一人の女。彼女との関係が描写不足に感じたので、例えば彼女が警察に捕まって連れて行かれる様子を見て一人男泣きするデリンジャーを見ても、それほど心揺さぶられるものがないし、ラストにしてもやはりそう。格好よさ、クールさを貫いてるのはわかるが、私としてはもう少し、情感を加味してほしかった。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-06-26 23:51:36)(良:1票) |
966. 宇宙(そら)へ。
《ネタバレ》 いろいろと初見の映像が多かったので、そう言う意味では見ていて飽きる事はなかったのだが、確かにドラマツルギーの観点から言えば少々物足りなさを感じるかもしれない。NASAの有人宇宙開発に特化した内容であり、もしドラマツルギーを考えるのであれば、例えば米ソの競争という点に重きを置く事も可能だろう。しかしながら本作は、あくまでも客観的視点から、「人類が行う宇宙開発の意義」を模索する。宇宙船や宇宙飛行士の映像だけでなく、それを見守る一般市民の映像も多く投入されているのはその為である。宇宙開発とは、我々人間一人一人が内に秘める、挑戦する心、見た事のないものを見たいという好奇心、未知のものを知りたいという探究心が突き動かしている。その、人間だけが持つ素晴らしき特性が枯渇しない限り、宇宙への挑戦は続いていくし、人類の挑戦に終わりはないのである。 [DVD(字幕)] 7点(2010-06-24 22:08:41) |
967. 居酒屋ゆうれい
《ネタバレ》 山口智子の胸チラが気になって仕方がない。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-05-23 10:49:33)(良:1票) |
968. 2012(2009)
《ネタバレ》 ある意味、ローランド・エメリッヒの集大成と言えるんじゃないだろうか。彼もこの作品で、自分のやりたいことを全部出し切ったんじゃないかな。街が崩壊する中、マイカーで疾走するシーンや飛行機でギリギリ逃げ切るシーンなど、本当に素晴らしい勢いがあって目を見張る映像だったと思う。でも、どんな凄いCG映像群よりも、見ていて一番スカッとしたのは、小娘が大富豪に中指おっ立てるシーンだったのは言うまでもあるまい。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-02 23:46:05) |
969. 劔岳 点の記
《ネタバレ》 皆さんおっしゃる通り、CGのない実写にこだわった美しい自然の風景は見応えたっぷりなのだが、それに対して人間ドラマの部分でぐっとくるものが弱いなと感じる。これはやはり、主人公である柴崎芳太郎の内面が読みにくい点と、その主人公より宇治長次郎や生田信のほうがより魅力あるキャラになっており、そちらのほうに食われてる感が強いという点にあるのではないか。とても真面目に、律儀に、誠実に作ろうとしているのはわかるが、その清潔さがそのまま脚本にも現れていて、泥臭いものが足らないように感じた。ただ、メッセージそのものはよく伝わってきた。それはつまり、日本地図作製のために、名も無き男達が血のにじむ様な苦労を重ねて測量を行い、その努力の賜物として地図が作られたんだという事実。そして、人は自分が何者であるのかを知る為に、地図を作るのだという、いわばロマンチシズムな説明も僕としては心に残るものであった。肩書きを外して「なかまたち」で全てをまとめたエンドロールに、いうならばその意図と理念が備わっていると個人的には感じた。 [DVD(邦画)] 7点(2010-04-01 00:38:37)(良:1票) |
970. しんぼる
《ネタバレ》 僕は割と好きですね、こういうの(笑)。確かに、冷静に考えれば、ただのワンアイデアだけで、ストーリーの巧みさみたいなものとはほど遠いし、「CUBE」やら「ナッシング」などの二番煎じ感は否めない。ただ、やっぱり芸人として培ってきた間合いやテンポといったものが、そのまま映画の間合いやテンポに活かされていて、それが幸運にも監督松本人志の持ち味として醸し出されている点は評価出来ると思う。終盤のチ○コスイッチを押しながら上へ上へと登っていき、だんだんと神になっていくような展開、空間をアクロバティックに回転しながら気持ち良さそうに昇天していく様が、あまりにくだらないというかアホらしすぎて、僕は逆に清々しさすら感じてしまった。 [DVD(邦画)] 7点(2010-03-26 00:35:12) |
971. スター・トレック(2009)
《ネタバレ》 スタートレックに何の縁もない、何の知識のない人たちでも、すんなりと見る事が出来る。この新生スタートレックは、間違いなく新しい層のファンを獲得出来たことだろう。アクションの凄さもさることながら、なによりも人間?ドラマが秀逸で、それぞれのキャラの個性が光ってる。いろんな性格の人たちが、それぞれの得意分野を発揮して、力を合わせて悪者と対峙する。遠い宇宙を舞台にしながら、その内訳は真に我々の等身大であり、だからこそすんなりと感情移入が出来てしまう。近年稀に見る良作SFである。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-30 21:45:38) |
972. 王になろうとした男
《ネタバレ》 もう少し全体的にストーリーとしての膨らみを持たせるともっといいかなとも思いましたが、そもそものアイデアが素晴らしいですからね。イギリスのただのおっさんが現地人を騙して王になろうとするという。↓の方も書いてらっしゃるけど、フリーメイソンの知識が多少でもないと少々わかりずらい部分もあるかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-12-16 18:56:49) |
973. ターミネーター4
《ネタバレ》 個人的には3よりは良かったように思います。新たな三部作構想の始めとしてこの4を作ったらしいですが、これまでの3作とはまずストーリー運びが全然違う。特定の敵から逃げ続けるという定番のスタイルを脱皮し、未来世界を舞台にしたより複雑で絡み合ったストーリーを提示している。この点で、従来のスタイルの方が良かったという人と、本作みたいな作りのほうがより世界観を楽しめるんだという人とで評価が別れるんじゃないかしら。でも、新しいスタイルを提示しつつも、これまでのターミネーターシリーズの名場面をオマージュしているシーンもちらほら。若かりし頃のシュワちゃんが登場するシーンなんて、ちょっと怖いぐらいのリアリティがありました。アクションシーンも、主観ショットで見せる長回しのCGシーンを何度か見せる等、なかなか意欲的だと感じました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-08 18:39:13) |
974. 隠し剣 鬼の爪
《ネタバレ》 なかなかよかったです。情緒ある笑いを織り交ぜることで、作品自体が重くならない。山田洋次の熟練っぷりが遺憾無く発揮されているなと感じました。それと、役者さんたちのズーズー弁がとっても上手だなと思いました。皆さんかなり練習されたんじゃないかしら。 [地上波(邦画)] 7点(2009-11-23 22:58:27) |
975. あかね空
《ネタバレ》 ときどき、はっとするほど風景画が美しかったりして、画作りにこだわりを持っているなぁというのが見て取れました。お豆腐屋さんを舞台にした映画って初めて観たので、なかなか新鮮で面白かったですね。ストーリーの面白さ自体より、東京と関西の豆腐の違いを研究したり、上方や下りもんの話とか、そういう部分がとても興味深かったです。一人二役も、見事なカメレオンっぷりだったのでよかったですね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-11-23 18:32:27) |
976. マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと
《ネタバレ》 コメディ映画だと思って観たのに、、、最後には号泣してしまった、、、(´;ω;`)ブワッ。ふぅ、、、犬ものは弱いんですよ~。ついつい自分の飼ってた愛犬を思い出しては、涙を拭っておりました。オーウェン・ウィルソンのラストの台詞はなかなかいいですよね。ご主人様がどんなご身分だろうと、犬は気にせず愛情をちゃんと返してくれる。はぁ~、犬好きでほんとよかった(´∀`) [DVD(字幕)] 7点(2009-10-06 21:13:44) |
977. フロスト×ニクソン
《ネタバレ》 こりゃまた新しいタイプのエンターテイメントですなぁ。単なるインタビューがこんなにも面白いなんて。全体的にドラマドキュメンタリーな作りで、勿論創作も入ってはいるんだろうけど、そのインタビューの裏側が多大なるリアリティーを持ってして描かれるのでついつい引き込まれますね。フロスト&ニクソン役を演じたお二方の堂々たる演技。下の方もおっしゃってる通り、殴り合いの無いボクシングですよこれは。俗物的なものに最近は流れていってるロン・ハワードが、オスカー監督としての力量を見せつけた渾身の一本ですな。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-03 20:30:51) |
978. バッテリー
《ネタバレ》 なかなかよかったと思います。主人公の巧にしろ、家族にしろ、友達にしろ、みんなそれぞれ葛藤があるけど、その蟠りが最後には解決される、その流れがとても自然できちんと飲み込めましたね。特に、巧と母親との蟠りには共感を覚えるし、それが解決されるラストにはそれなりの感動がありました。何人か中学生には見えない連中もいましたが、それ意外の子役たちは、みんなとってもハマり役で、配役のうまさも光ってたと思います。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-08-16 16:29:41) |
979. HACHI/約束の犬
《ネタバレ》 ストーリーは最初からわかっていても、やっぱり犬好きの一人としては涙腺が緩まずにはいられませんでした。秋田犬の表情がとても素晴らしく、犬目線の映像が時折挿入されるので、ハチになんなく感情移入してしまいます。一人の人を一途に思い続ける心。それに比べて、人の心の移り変わりの早さ。目まぐるしく動き回る人間社会の中、ただひたすら待ち続ける一匹のハチの姿は、その実話から70年以上経った今でも色あせる事なく、愛の強さと大切さを我々に伝えてくれるのであります。 [試写会(吹替)] 7点(2009-08-05 20:34:20) |
980. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
《ネタバレ》 凄く上質なラブストーリーだと思いました。ベンジャミンと、デイジーとの間で、度々起きるすれ違いが共感を持ってみれたので、とても感情移入してしまいしまた。生まれながらにして老体で、年を取るごとに若返っていくという、ありえない設定なわけですが、これは男女のわかり得ない感覚というか、誰しもが経験するすれ違いというものを、設定として具現化したものなんだろうと思います。しかし、そのような性差による運命を持ってしても、やはり男と女はひかれ合い、そして互いに永遠を信じる。だからこそ愛ははかなく、はかないからこそ美しいんだと。年を重ねられた方々が見るとまた違ったものを感じるのだろうと思うけど、僕には、恋愛がうまくいかない自分へのある種の鎮痛剤のような作品でありました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-22 19:38:58) |