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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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81.  ガンジー 《ネタバレ》 
ベン・キングスレーの神が降臨した様な演技には圧倒されました。ガンジーを演じるために運命が彼を役者に導いたとしか思えない名演です。レーニン・スターリン・毛沢東などと比べれば、ガンジーという人物は20世紀が生んだ最良の革命家だったと言えるのでは。ただ撮影にインド政府の協力も得ているのでやむを得ないのでしょうが、生身の人間ガンジーが再現されたかと言うと疑問です(実際のガンジーは、結構女好きだったとか)。ジンナーとの対立などにもっと焦点を当ててみたらもっと深みのある物語になったでしょうに。それにしてもガンジーの葬儀シーンは、いったいエキストラ何万人使っているのじゃという壮大なものでした。
[DVD(字幕)] 8点(2010-01-27 21:59:31)
82.  ミシシッピー・バーニング 《ネタバレ》 
やや冗長気味のところはありますが、社会派映画としてはサスペンスの盛り上げかたは上手い。ラストはカタルシスがあるようでないような微妙な終わり方です。米国ディープ・サウスの価値観が大嫌いな自分ですが、それにしても地元住民の卑しく醜いこと、これが実態なのかそれとも誇張されているのか。ジーン・ハックマンは『フレンチ・コネクション』のポパイ刑事を彷彿させるキャラだが、より人間味をました深みのある演技でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2009-11-19 21:23:06)
83.  ハンナとその姉妹 《ネタバレ》 
ハンナの亭主は利己的で優柔不断な男なんだけど、マイケル・ケインの名演が人間味あふれるキャラにしてくれました。男なら誰もがわが身を振り返ってしまうのでは。面白いことにマイケル・ケインとウディ・アレンは劇中全く接触がないのですが、三姉妹と二男優の人間模様を巧みに描いた脚本なのであまり意識させられませんでした。そして、この映画ほどNYの街を美しく描いた映画は他にないでしょう。個人的にはウディ・アレンがカトリックに改宗しようとするエピソードが好きで、宗教というものについて考えさせられました。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-11 02:51:35)
84.  ダウン・バイ・ロー 《ネタバレ》 
こんなに渋くてカッコ良いオープニングは初めてです。全編に漂うゆるーい雰囲気がいいですね。舞台がニュー・オリンズなのも一役買っているのでしょう。強面のトム・ウェイツとジョン・ルーリーの二人にロベルト・ベニーニを投げ込んでこんなに絶妙なハーモニーを生み出せるとは。ラスト・シーンは、「第三の男」を彷彿させる忘れなれない名シーンでした。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-03 21:40:58)
85.  レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ 《ネタバレ》 
とんがりリーゼントとブーツ、あのレニングラードカウボーイを画面に出すだけで反則技です。そしてあの独特の間、なんでおかしいのか自分なりに分析してみましたが、カウリスマキ以外には使えない技術であるという結論でした。レニングラードカウボーイの演奏レパートリーが、どんどん広がっていくのが楽しいです。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-23 22:48:34)
86.  キング・オブ・コメディ(1982) 《ネタバレ》 
こ、怖かったよ~。本当にこんなに怖い映画とは夢にも思いませんでした。みなさんのコメント通り、デ・ニーロとサンドラ・バーンハードの基地外演技は必見ですが、特にサンドラ・バーンハードの顔つきはちょっと演技とは思えないほどのすごさ。ところで放送させたネタの中で、「おふくろは死んだ」とデ・ニーロは言っています。ということは、劇中聞こえてくるお母さんの声は(この声の主は、スコセッシの実の母親だそうです)彼の妄想の産物では…。なんかそれもあり得るのでは、と感じてしまいました。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-17 23:01:45)(良:1票)
87.  薔薇の名前
ウンベルト・エーコのあの衒学的な大著を、正統派サスペンスとして要領よくまとめています。原作はそのまま映像化したらとても娯楽映画にならない「言葉と実在」という哲学的な思考を背景としていますが、ジャン・ジャック・アノーは中世の時代背景と雰囲気を忠実に再現し、また登場人物の造形を異形の人間集団のように描くことで私たちのような異教徒にも観て楽しめる映画に仕上げています。ショーン・コネリーの「バスカヴィルのウィリアム」は、彼以外の配役は考えられないほどの好演でした。しかし、この映画で描かれているヨーロッパは、「暗黒の中世」という呼び名にふさわしい状況ですね。同時代の日本はもう室町時代が始まるころですから、文化や政治の面でヨーロッパは世界的にも遅れた場所だったのです。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-06-21 16:50:03)(良:1票)
88.  赤ちゃん泥棒 《ネタバレ》 
本作は、「ブラッド・シンプル」に続く2作目ですが、実におバカなストーリーとテンポの良い展開はいいですね。今まで観たコーエン兄弟で一番いいかもしれません。ラストがハートウォーミングで終わるところは予想してませんでしたが、コーエン兄弟にしては珍しく後味が良かったです。しかし、コーエン兄弟は「誘拐」というプロットが好きですねえ。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-02 21:23:43)
89.  セーラー服と機関銃 《ネタバレ》 
およそアイドル映画とは思えない撮り方の映画、まさに相米慎二らしいと言えるでしょう。薬師丸ひろ子の登場シーンではブリッジしているうえにセーラー服のリボンがかかって顔が見えないし、やたらに望遠レンズや魚眼レンズまで使って薬師丸の顔が小さくしか見えない、アイドル的な女優が主演していてこれほどアップが少ない映画ってのも珍しいんじゃないでしょうか。それまでの角川映画の配給先だった東宝と揉めて東映に変えたという事情もあって、角川春樹がほとんど口を出さなかったというのも大きかったのかも。ストーリー自体はかなり荒唐無稽なんだけど、思った以上にヤクザ映画的なシリアスな撮り方だったと思います。やはり当時を知るものとして思い出に残るのは、この映画が公開された時の薬師丸ひろ子フィーバーの凄さで、まさに社会現象でしたね。そして彼女が歌った主題歌の大ヒット、作者来生たかおのデモテープを聴いた角川春樹は「こんな曲はクソだ!」と言ったそうで、ほんとこの人はセンスがない(笑)。いまやアイドルソングとして80年代を代表する名曲と評価が定まっているのにねえ。有名な「カ・イ・カ・ン」のシーンも、改めて観ると官能的ですらあります。薬師丸ひろ子は御存じのように今や大女優ですが、私の中では青春真っ只中の彼女が映像に焼き付いている本作が一番です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-01-28 23:26:21)
90.  殺し屋たちの挽歌 《ネタバレ》 
まるでチョウ・ユンファ主演の香港ノワールのごとき邦題には騙されますけど、純然たる英国ノワールでユニークな視点のロードムービーでした。監督はスティーヴン・フリアーズで、『マイ・ビューティフル・ランドレット』で注目される前年に撮った彼の長編第二作目であります。タイトルバックに流れるギターソロがえらく渋いなと感心したら、なんとエリック・クラプトンの演奏でした。 強盗仲間を裏切って証言をして司法取引でスペインで隠遁生活をしていたテレンス・スタンプ、10年経って出所した仲間に居場所をかぎつけられて拉致されてしまう。このテレンス・スタンプが演じるのが実に不思議なキャラで、捕まるときこそ抵抗したけどボスが待つパリにまで護送される間は悟りきったように穏やかで、派遣されてきた殺し屋には協力的。この殺し屋二人組がジョン・ハートとティム・ロスで、途中で行きがかりで女を一人誘拐することになり、ほとんどこの四人で進行するスペインからパリを目指す奇妙なロードムービーとなるわけです。このジョン・ハートが演じる寡黙な殺し屋は印象深いキャラで、有能なのかはともかくとして非常に冷酷な男で、警察に通報しそうに思える目撃者を躊躇なく殺してゆくのです。コンビを組む若造がティム・ロスですが、当然ですけど若々しくて金髪なので始めは彼とは気づきませんでした。面白いのは処刑台へ歩かされている死刑囚のような立場のスタンプが、逃げるチャンスは何度もあるのにまるでガイドの様にハートたちを導く理解しがたい言動で、それに二人が翻弄されてゆくところでしょう。若いロスの方は女に情が移り気味でスタンプの影響が顕著になりますが、けっきょくハートには通じずに悲劇が訪れます。 「お前は運が良い」と女だけは殺さなかったハートが、その為についに国境を越えられなかったラストは予想通りの展開ですけど、まだ駆け出しの頃のスティーヴン・フリアーズの才気は十分に堪能できました。この映画のジョン・ハートを観ていると、『ジャッカルの日』でジャッカル役でも良かったんじゃないかと思うほどでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-06 23:02:13)
91.  炎の少女チャーリー(1984) 《ネタバレ》 
この時のドリュー・バリモアはなんと9歳!10歳にもならない子役がこれほどの演技を見せるとはまさに驚異です。彼女はこの後に酒とドラッグに溺れるローティーン時代に突入するので、まだギリで無垢なころだったのかな。10歳未満で主演した代表作がある女優というと彼女かテータム・オニールぐらいのもんですが、その後の芸歴からするとやはりドリューがチャンピオンでしょう。 プロット自体は同じスティーヴン・キング原作の『キャリー』と通じるところがありますけど、ちょっとジュブナイル寄りかなと感じます。ラストの火炎玉大攻撃ではきちんとカタルシスを観客に与えてくれますが、このド派手な爆発炎上シーンのおかげで、マーク・L・レスターは『コブラ』の監督に起用されたんじゃないかな。タンジェリン・ドリームの音楽もなかなかいい雰囲気を出しています。意外と豪華な出演者の中でも、異彩を放っていたのはやはりジョージ・C・スコットでしょう。この人はB級クラスの作品でも手抜きなしの演技を見せてくれるから好きです。なにを考えているのかさっぱり判らん不気味な男、でもあの演技なら幼いチャーリーが騙されて慕ってしまうのはムリもないという説得力でした。気になったのはスコット演じるレインバードが途中からアイパッチを着けるところ、これはチャーリーに親近感を持たせるためのキャラづくりなのかと思ったが、子供はかえって怖がるんじゃないでしょうか。なんとこれはスコットが撮影前半にコンタクトが合わなかったので左眼が炎症を起こしたための苦肉の策だったそうですけど、その割には左につけてたのが後半では右につけたりでわけ判らん。こういう雑なところは、やはりこの映画はB級テイストなんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-03-19 21:57:26)
92.  狼の血族 《ネタバレ》 
「眉毛が繋がっている男は狼男」、このセリフはまさにパワーワードですね、おかげで我修院達也が人狼にしか見えなくて困ってしまいます(笑)。 『赤ずきん』がモチーフになっていることはすぐ判りますが、現在と過去の時空を超越したストーリーテリングには思わず引き込まれてしまいますね。幻想的というか理解不能なところも多々あるのも一つの魅力、例えば鳥の巣で孵った卵から超ミニサイズの人間の赤子が生まれたり、過去の時代なはずなのに唐突にロールスロイス・ファントムに乗ってテレンス・スタンプが出現したりなどです。スティーヴン・レイが変身するシーンは現在の眼で観てもかなりのグロさ、こういうのはCGが存在していなかった時代の方がリアリティがありますね。過去のシークエンスはほとんどセット撮影ですけど、造りこまれた森のセットを美しい映像で見せてくれます。ヒロインのロザリンを演じたサラ・パターソンのロリ・エロ指数は特筆すべき高さ、彼女はこの時なんと12歳、その後ほとんど映画出演がなく引退しちゃったみたいで惜しまれます。知名度は決して高くはないけど、ダーク・ファンタジーの名品です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-02-19 22:35:07)
93.  ハスラー2 《ネタバレ》 
雇われ監督だったせいなのか、スコセッシ特有のコテコテ感がほとんどありません。たしかインタヴューに「ほんとはやりたくなかった仕事だった」と彼が語っているのを読んだ記憶もあります。とは言っても、スコセッシ&ポール・ニューマンという一回こっきりの夢の顔合わせが実現しただけでも価値があるというもんです。ニューマンは本作で念願のオスカーをゲットしたわけですが、じっくり観てみるとそれまでノミネートされてきた演技と比べても納得がゆく名演だったと思います。この『ハスラー』二部作はどちらもビリヤード自体の競技の綾にはほとんど触れずに、ひたすらエディ・フェルソンというこのゲームに人生を支配されてしまった男の生きざまを追うのがテーマです。ミネソタ・ファッツとの大勝負から25年後経ち酒の卸売商として優雅な生活をおくっていたエディが、若い才能と出会って情熱が再び蘇ってくる。端的に言っちゃうと前作でジョージ・C・スコットが演じたバート・ゴードンと同じような役回りになるんだけど、老いた老師が弟子を導く『ベスト・キッド』の様な単純なお話しにならないのが特徴。若いヴィンセントをコントロールすることはとうとう出来ず、二人の意地の張り合いのままラストを迎えるわけですが、一歩間違えば『セッション』の様な修羅場になるところを、精一杯前向きな展開で閉めてくるのは良かったかなと思います。ヴィンセント役のトム・クルーズのイライラさせられるほどのガキっぽさもなかなかでした。でも最後には多少なりとも人間的に成長したように感じさせられたのは確かです。思えば本作と『トップガン』は同年の製作、このヴィンセントがマーヴェリックと同じ俳優が演じていたとは信じ難いぐらいです。この若さでこれだけきっちりキャラを分ける演技ができたとは、やっぱトム・クルーズは只ものじゃないですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-15 22:52:24)
94.  ジンジャーとフレッド 《ネタバレ》 
大抵の映画作家がそうであるように、巨匠フェリーニも晩年にはノスタルジーに惹かれてゆくようになる。そのノスタルジーがアナクロニズムの一形態に過ぎないと理解しているのもフェリーニなのです。 クリスマスのTVバラエティー特番に出演することになった、かつて“ジンジャーとフレッド”というアステア&ロジャースのコピー・ダンスで一世を風靡したアメリアとピッポ。コンビを解消して三十年ぶりに再会を果たしたふたり、ともにとっくに芸能界から足を洗っているのに人生初のTV出演、果たして往年のような息の合ったダンスを披露することは出来たのか?クリスマス特売セールの派手なポップやサイン・ボードがローマ駅周辺を埋め尽くしている冒頭シーン、やっぱフェリーニ映画はこうでなくっちゃいけません。彼は心底ローマという魔都を愛していたので、これは彼独特のローマに対する愛情表現だと思います。彼が嫌っていたのは当時すでに映画産業を衰退させていたTV業界で、アメリアとピッポが出演する俗悪なバラエティー番組をつうじてTVカルチャーをコケにしています。出演者は“ジンジャーとフレッド”も含めたそっくりさん芸人と世間を騒がせたゴシップ当事者たち、でもド派手で騒々しい演出はまるでサーカスの公演を見せられているような感じ。そう、フェリーニは「TVなんてしょせん電波サーカスだよ」と喝破しているんです。 マストロヤンニとジュリエッタ・マッシーナはこれが最初で最後の共演ですが、どちらも実年齢に相応しいふけ演技、でも年老いた色男と可愛いおばあちゃんが絶妙でさすが名優同士です。二人の駅での別れのシーン、「アメリア悪いが送らないよ、出てゆく汽車は苦手だ」というマストロヤンニのセリフ、なんか『ひまわり』の有名なシーンの楽屋オチみたいで洒落ていました。
[ビデオ(字幕)] 7点(2022-10-28 22:36:52)
95.  デストラップ/死の罠 《ネタバレ》 
「世の中でもっとも殺人を犯す可能性が高いのはミステリー作家である」という警句(?)を昔なんかの本で読んだ記憶があるが、じっさいフィクションの中では殺人に手を染めるミステリー作家は後を絶たずという感じ。ミステリー作家が主人公でほぼ密室劇だしマイケル・ケインが主演となればどうしても『探偵[スルース]』が思い出されてしまいますが、本作の方がブラック風味は濃厚。ダイアン・キャノンの死からは何となく展開が予想された通りになるけど、お約束通りのどんでん返しの連続とマイケル・ケインの芸達者ぶりが光っていてさほど飽きさせられることはなかったです。そして監督が名匠シドニー・ルメットなのでそつなくまとまっているけど、こういう題材は凡庸な監督だと大惨事になってしまうので注意が必要。まあ監督が全盛期のビリー・ワイルダーだったら、そりゃ傑作と呼ばれる映画になっていたかもしれないけどね。あとケインが主役のせいだけでなく、全体の雰囲気が英国が舞台のようになっているのが面白い。最後に美味しいところを全部霊媒のおばさんが持っていっちゃうオチは、ブラックで個人的には好みです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-26 23:06:17)
96.  東京裁判 《ネタバレ》 
最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-12 22:55:13)(良:1票)
97.  ザ・バニシング-消失- 《ネタバレ》 
なるほど、サイコパス気質のキューブリックが怖がるぐらいですから、やはりこの映画の禍々しさはタダもんじゃないという証左になるでしょう。しかしこの真綿で首を絞めてくるような恐怖の盛り上げ方は、たしかにトラウマ級です。オランダの映画にはこういったヤバさや不快感といった嫌な後味が残る作品が見受けられますが、ヴァーホーベンなんて可愛く感じてしまうレベルでした。 反社会性サイコパスの犯人像がリアル過ぎて恐ろしい。二人の娘を持つ理科教師、夫婦仲はごく普通で性格は几帳面で高血圧を気にする一見平凡な中年男。この男の恐ろしいところは、何度も失敗しながらもなんで女性を狙うのかが理解不能なこと。ナンパが目的なら判るけど、失敗から教訓を得てひたすら犯行手口を改善させてゆく執念には、淡々と見せられるだけにゾッとするしかないです。“キーホルダー”や“閉所恐怖症”といった伏線が戦慄のラストで回収されるところも見事です。また失踪したサスキアを探し回るレックスを執拗に狙う心理も、常人には理解しがたい。でも彼なりのレックスを追い詰める作戦は理にかなっており、5回も匿名手紙の呼び出しに応じるレックスから彼の心理を深く理解するまでに至る知性は驚異的ですらあります。レックスはこうなると蛇に睨まれたカエルも同然、理性は激しく警告しているのに催眠術にかけられたように睡眠薬入りコーヒーを飲んでしまうのは人間心理の闇を見せられたような気分です。これはオーウェルの『1984』的な現在の権威主義国家が、民衆を操る手法に通じるものがあるかと思います。 やはりあの絶望のラストは、『キル・ビルvol.2』のユマ・サーマンに影響を与えたんでしょうか、タランティーノなら本作を観ている可能性は十分ありますね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-05 22:56:22)
98.  インドへの道 《ネタバレ》 
ああ、これがデヴィッド・リーンの遺作なんですね。実はリーンの妻はインド人で、インドにはいろいろな思いがあったんじゃないかと思います。結果的に最後の作品でインドをテーマにしたわけですが、本当は『ガンジー』みたいな映画を撮りたかったんじゃないかな。 鑑賞してつくづく感じたのは、このインド統治こそが英国人および大英帝国の本性を理解させてくれるものだということでした。前半で散々見せられるアジズ医師を始めとするインド人たちの卑屈さよ、逆に言うと彼らをここまで飼いならす英国人の植民地支配の手腕こそが凄いんでしょうね。朝鮮・台湾が植民地統治だったのかは疑問のあるところですが、大日本帝国なんて帝国主義の世界ではアマチュアだったんじゃないでしょうか。そんな坩堝のような地に旅してくるいわば意識の高い系の二人の女性が、インドの持つ魔力に運命を狂わされる物語でもあります。ジュディ・デイビスは美形なんだけどその眼力というか眼つきの悪さは他の追随を許さないものがあります。この後はウディ・アレンの映画によく出ていましたね。彼女は洞窟に入ったところでそれまでインドの風物からの影響で燻っていた官能に火がついてどうしようもなくなったという感じなんでしょうね。音楽はモーリス・ジャールですけど、アデラが官能的な気分になると流れるメロディーは、どう聞いても『ライアンの娘』のメインテーマの変奏としか思えない。ジャールは本作でオスカー受賞しましたが、どうせなら『ライアンの娘』で評価してオスカーを与えて欲しかったな。同じく洞穴に入ってこだまに恐れおののいて結局死期を早めることになったペギー・アシュクロフト、この人のことは良く知らなかったけどキャリアを感じさせる手練れの演技を見せてくれてオスカー助演女優賞ゲットは納得です。やはり面白いのは、ちょっとKYなんじゃないかと思わせる浮世離れした哲学教授を演じたアレック・ギネスです。狂言回し的なキャラでしたが見事にインド人に化けていました、さすが百面相俳優の異名を持つだけのことはあります。一緒に狂言回しキャラを演じていたのがジェームズ・フォックス、最後に美味しいところを持って行った感はありました。それにしても、『ジャッカルの日』のエドワード・フォックスは弟ですけど、この当時になるとこの二人は見分けがつかないほどそっくりさんになってます。 14年も映画を撮らなかった(撮れなかった?)とは思えないほど、お得意の自然描写やストーリーテリングはしっかりしていたと思います。高齢の大監督の晩年作はメロメロになってしまうことが良くありますが、そんなところは微塵も感じさせられませんでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-31 23:10:38)
99.  セックスと嘘とビデオテープ 《ネタバレ》 
これを撮ったときソダーバーグ26歳ですか、26歳の若造が撮る映画じゃないですね、いろんな意味でね。このまま舞台劇にできそうな登場人物ほぼ四人だけの濃密な演技合戦。“セックス”“嘘”“ビデオテープ”とはこの映画の主旋律を構成する三要素だけど、ひとつ大事なモチーフが抜けていますね。それを加えればこの映画は『セックスと嘘とビデオテープと精神分析』というのが題名としては相応しいんじゃないかな、ちょっと字余り的な心地悪さは否めませんけどね(笑)。ファーストシーンからしてセラピーを受けるアンディ・マクダウェルだし、まるでキンゼイ博士みたいに女性が性について語るビデオ映像を集めるのが趣味のジェームズ・スペイダーだって、そのインタビュー自体がセラピーみたいなもんでしょ。ラストで攻守逆転、マクダウェルがセラピスト・インタビュアーみたいになってスペイダーに挑んでくると、それまで超越的でクールだったスペイダーも悪戯がばれたガキみたいにしどろもどろになるところが面白い。考えてみると、おカネを払ってまで他人に自分のことをペラペラ喋ってすっきりするって、アメリカ人ってほんと変わってます。登場人物四人にはしょうじき誰にも感情移入できませんけど、こういういかにもカンヌ映画祭が好きそうな前衛的なテーマを、ギリギリな線でエンタティメントに仕立て上げたソダーバーグの力量は大したものです。一言いえば、本作で絶賛されたジェームズ・スペイダーのキャリアが伸び悩んでしまったことは残念です。イイ役者なんだけどなあ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-07 22:33:16)
100.  48時間 《ネタバレ》 
これがエディ・マーフィーの銀幕デビューなので感慨深いところがあります。TVの『サタデー・ナイト・ライブ』でのし上がってきたマーフィーにしては、このデビュー作はその片鱗は見せるがコメディ調はほとんどなく、その後すぐにトレードマークになるマシンガントークが皆無なのでまるで別人みたい。いわば『ひょうきん族』でブレイクしたビートたけしが『その男凶暴につき』で観客を驚かせたのに通じるところがあるんじゃないかな、アメリカ人には。もっと重要なのは、エディ・マーフィーがバディムーヴィーに関しては天才的な才能を持っていることにハリウッドが気づかされたことでしょうね。重苦しい作風のウォルター・ヒル作品でもここまで弾けられるのは、マーフィーの強みなのかもしれません。対するニック・ノルティはいかにもウォルター・ヒル映画に登場するにはうってつけのキャラ。さして有能なデカではなく、やることはムチャクチャでただ馬力だけで押し切るタイプ、これこそが彼の個性が最大限に活かされたキャラです。殴りあうときや銃を撃つときに見せる殺気に満ちた表情は、もう怖いぐらいです。ウォルター・ヒルも本格的な刑事アクションを撮るのはこれが初めて、まるで西部劇のガンファイトみたいに悪漢が銃で殺しまくるのも彼らしい脚本です。彼が刑事アクションでやりたかった事の集大成が『レッドブル』で実現し、バスを使ったカーチェイス・アクションがスケールアップして再現されたわけです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-08 20:54:43)
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