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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2388
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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81.  once ダブリンの街角で 《ネタバレ》 
どっかで観た顔だなと思ったら、おお、“男”は『ザ・コミットメンツ』のギタリストだった人じゃないですか。この人は元来プロミュージシャンなんで音楽性が高いのは当たり前ですけど、本来はこの役はキリアン・マーフィが予定されていたそうです。実はキリアンももとはロックシンガーだったそうなので、この世界線もちょっと観てみたいです。“女”はチェコのアナ・ケンドリックスという感じの容姿ですが、この時はまだ18歳だったみたいです。でも夫と別居している子持ち主婦という設定にはぴったりで、やっぱちょっと老けてるんだよな。 低予算が丸判りのオール手持ちカメラとロケ撮影の映像には、まるでドキュメンタリーかノン・フィクションの様な雰囲気があります。この映画に登場するキャラは冒頭で“男”のチップをかっぱらおうとする若い男も含めて、男女を問わずイイ人ばかりなんです。“男”の創る曲はフラレ男の元カノへの愚痴とぼやきと未練たらたらの歌詞ですが、確かに曲はイイですね。対する“女”はモーションをかけてくる“男”を頑なに拒むし、最後は“男”はロンドンにいる元カノとよりを戻せそうし、“女”は夫をチェコから呼んで新生活を始めることになる結末。まあこの結末だけじゃ“男”がロンドンでアーティストとして成功するかどうかは未知数って感じだけど、ベタなサクセスストーリーじゃないところに好感が持てます。こういう何の進展もなかった男女の出会いって、自分も含めて経験したことがある人は多いんじゃないかな、人生ってそういうもんよ。因みにこの“男”と“女”を演じた二人は撮影後にほんとに恋人になって同棲したんだとか、もっとももうとっくに別れたみたいですけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-02-20 22:51:54)
82.  スパイダー パニック! 《ネタバレ》 
ノリはもう『トレマーズ』という感じのB級モンスター映画の王道です。細かい理屈はともかくとして、巨大化した蜘蛛たちが田舎の町を群れとなって襲撃!というシンプルな構成ながらもスピーディな展開で飽きさせない面白さがあります。アサイラムあたりのZ級とは違って人物設定などもきちんと造りこまれているのも良し。巨大化したと言ってもタランチュラ以外はせいぜいセントバーナード犬ぐらいで、蜘蛛としての分別は守ってすぐ殺せるのも好感(?)がもてます。でも群れとなって追っかけてくるところなんかは蜘蛛嫌いには卒倒ものだろうし、集合体恐怖症の方も要注意です。オスがメスに贈り物をして気を引くというコガネグモの習性を上手くストーリーに取り入れたりして、この監督きっと蜘蛛好きなんだろうな(笑)。ティーンのころのスカヨハが出ているところも得点が高い、今じゃ彼女がB級やインデペンデント映画に出演するなんてとうてい考えられなくなりました。所々に仕掛けている映画ネタや陰謀論ネタも、センスの良さが感じられます。けっこう死人が出ているのになんか笑えちゃう、ってところも『トレマーズ』風味がありました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-18 23:32:17)
83.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
ナチ・ドイツが実行した史上最大の通貨偽造事件と言われるベルンハルト作戦、第二次大戦中に英国の外貨準備高の四倍ものポンド紙幣を偽造したというから呆れます。戦後に真贋を問わずすべての5ポンド紙幣を回収して破棄しなければならなかったそうですから、英国財政は相当なダメージを喰らったのは間違いないです。この偽札づくりは強制収容所のユダヤ人使ったので成功したわけで、ユダヤ人をただ虐殺するだけでなくとことん利用しつくすドイツ人気質には肌寒くなるものがあります。偽造に成功したのが敗戦の一年前とかなり煮詰まってからだったのが、英国には不幸中の幸いでしたね。トルコの英国大使館でスパイとして活躍したコードネーム・キケロに支払われた三十万ポンドは実はすべてこの偽札だったそうで、ドイツ人のセコさには失笑するしかないです。 ある意味で、数あるナチスのユダヤ人強制収容所を題材にした映画の中でも、かなり珍しい部類になるんじゃないでしょうか。なんせ作業につくユダヤ人たちは特別待遇、白衣すら着用するような清潔な服装、そしてちゃんとマットレスつきのベッドで寝れて、仕事に成功すればご褒美として卓球台までプレゼントされる。敗戦時に囚人たちが蜂起したときに偽造に従事していた者たちが親衛隊員と疑われて射殺されそうになるエピソードには納得です。収容所の中でも完全に隔離されたエリアで作業していたわけで、痩せこけてボロボロの囚人たちには清潔な服装で栄養状態が良好な彼らが同じユダヤ人囚人だとは見えるはずないですね。また主人公のソロヴィッチが善良な市民ではなく、暗黒街でもブイブイ言わせていたアウトレイジだというのも珍しいパターンです。ソロヴィッチはもと犯罪者らしく生き残ることが正義で、共産主義者で大義のためにサボタージュして成功を遅らせようとするブルガーとは対立しますけど、ブルガーを含めて仲間を裏切らず守ろうとする姿勢はまさにアウトレイジの仁義です。実はこのブルガーは実在の人物で、しかも自らの体験を基にした原作著書の作者なんですよ。つまりこのブルガー視点の物語であっても不思議ではないのに、あえてアウトレイジのソロヴィッチが主人公だというのは面白いところです。そんなしぶとい男であるソロヴィッチですけど、終戦直後にモンテカルロで持ち出したドル札で豪遊しますが、収容所の体験がフラッシュ・バックして全部カジノでわざと溶かしてしまうところには、彼の心中の善が噴き出してきたのを見せられたように感じました。そしてラストの「カネはまた造ればいいさ」というソロヴィッチの呟き、カッコいいじゃありませんか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-30 23:03:28)
84.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
職人監督トニー・スコットが撮った唯一のSFもの、原点がSFといえる兄貴のリドリーとは対照的。「ほんとはこの映画はSFにしたくなかったんだ」とコメンタリーで語っているそうなので、ある意味でSF嫌いだったんじゃないかな。でもジェリー・ブラッカイマーが関わっているにしてはしっかりと観れる佳作に仕上がっている、これはやはりトニー・スコットの力量の成せる業でしょう。そして“トニー・スコットとデンゼル・ワシントンのコンビに外れなし”という定理を実証してくれている一編でもあります。 冒頭から暫くはテロが絡むポリス・アクションかというストーリーテリングなんですが、FBIが運営する秘密の監視システムが登場してからは俄然SF風味が濃厚になってきます。あの“4日前の過去から監視できるシステム”、まるでグーグルアースのストリートビューを観ているみたいで、製作時期を考えると斬新な映像かなと思います。しかし壁は透視できるしアングルやアップも自由自在で音声まで聞けるって都合よすぎ、まあSFだからいいか。「なんで4日前?」という疑問もとうぜんありますが、現在人類が観測している一億光年離れた星の光は一億光年前に発せられたものであるように、量子力学的には過去を見るだけならタイムマシンを造るより実現性があるそうです。 この映画のタイムトラベルでユニークなところは、送られる先で人間が心肺停止状態で出現することで、なんかあり得そうな感じがします。問題はタイムスリップした先で同一人物が同時間に存在してしまうということで、“一つの原子内で二個以上の電子が同じ状態で存在できない”といういわゆるパウリの排他律に反するというパラドックスをいかにクリアするかというのがタイムトラベル映画脚本の腕の見せどころとなるわけです。本作は『12モンキーズ』ほど巧みではないですが、なんかフワッとすり抜けた感はありますね。死体置き場で携帯が鳴る場面、鳴っているのは死体袋に入っているダグの携帯ではないかと思わせるシーンがあります。でもタイムスリップのときには下着だけ何も持っていかなかったはずで、思わせぶりな演出ですがダグの携帯ではないということに理論的にはなるでしょう。気になるのはダグがクレアの部屋で見る「君は彼女を救う」というメッセージで、テロが失敗した時空でダグがこのメッセージを作成しているので、テロが起こる世界でダグが見るはずはありません。やはりこれは、映画では描かれていないけどタイムスリップは一回ではなく二回以上行われたという解釈が正しいのでは。それはタイムスリップをするときにダグが発する、「これが二度目だとしたら?」というセリフの謎を解くカギになるのではないでしょうか。 ということで『TENET テネット』ほどではないにしろ回収されない伏線もあるけっこう複雑なお話しで、時間をおいてもう一回観てみたいと思っています。しかし本作の15年後にデンゼルの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが『TENET テネット』でより難解なタイムトラベルもので主演するとは、この親子のタイムスリップ映画との不思議な縁を感じてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-03-31 23:20:10)
85.  マシニスト 《ネタバレ》 
暗~いこの独特な雰囲気、やはりというか地味なハリウッドの俳優と監督を起用しているがプロデューサー以下の製作陣とロケ地はスペインで、どうりでスパニッシュ・ホラーのような雰囲気が漂っていたわけですね。良心の痛みがドッペルゲンガーを通して具現化されちゃうというのは、古くは20年代の『プラーグの大学生』を筆頭に良く使われてきたプロットですが、そこに不眠症を絡ませてきたのが新しいところですかな。一年間も眠れないというのは現実にはあり得ないし(速攻で死んじゃうでしょう)、実際の不眠症状だって多少なりともレム睡眠的な状態になって人体を維持しているものです。なので『地獄の黙示録』のカーツ大佐みたいなアイヴァンが妄想的な存在であることは、観てればすぐ判る。でもオチを知って感心させられるのは現実と妄想のシームレスな見せ方で、このストーリーテリングは素直に上手いなと感心しました。 そして何と言っても壮絶なのは、まるでアウシュビッツの囚人みたいなクリスチャン・ベールの激やせっぷりです。ストーリー上でも不眠症になる前のベール=トレヴァーの姿をちょっと見せますから、この対比は凄いの一言です。きっとこのシーンは、ベールが役作りに入る前にいの一番に撮ったんじゃないかな。思えばこれがいまやクリスチャン・ベールの代名詞ともなった肉体改造の始まりなんですが、劇中で肉体改造のビフォーアフターを見せたのは本作だけだったんじゃないでしょうか。でもあれだけ骨川筋衛門になっても体重が55キロっていうのも、ある意味凄い。やっぱこの人は骨が太いんでしょうね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-10 23:08:30)
86.  アレキサンダー 《ネタバレ》 
人類史上で最大の偉業を成し遂げたアレキサンダー大王、子どもの頃にこの話を知った時にはあまりに凄くて神話のお話しかと思ったぐらいです。実は他の歴史上の英雄たちと違って、本作の前に彼の生涯が映画化されたのは、リチャード・バートンがアレキサンダーを演じた56年製作の『アレキサンダー大王』しかないんですね。そんな難易度の高い題材にチャレンジしたのが、21世紀に入って誇大妄想気味になってきたオリヴァー・ストーンです。 物語はアレキサンダーの死から40年後、プトレマイオス朝のファラオに収まっているかつての部下プトレマイオスの回想という形式で進行します。家庭教師アリストテレスとのエピソードなど順当なストーリーテリングで始まったと思いきや、プトレマイオス=アンソニー・ホプキンスのいわゆる“ナレ死”だけで父王フィリッポスからアレキサンダーに代替わり、アジア遠征に乗り出しエジプトを征服しペルシャに攻め入りガウガメラの決戦までナレーションだけで進行するので、これは総集編かよ、ってツッコんでしまいました。でも中盤以降になってフラッシュ・バックしてフィリッポス暗殺とアレキサンダー即位をシークエンスとしてきっちり見せてくれ、けっこう巧みな脚本なのかなと感じます。ガウガメラの決戦・バビロン入城・インド侵入と象軍団との死闘、というところが大きな見せ場・スペクタクルとなりますが、やはりガウガメラは力の入った入魂のシークエンスで凄いスペクタクルです。個人的にはインドでの戦象との闘いには強烈な印象を受け、象がこんなに恐ろしい兵器になるとは驚きしかありません。初めて英軍のタンクに攻め込まれたWW1のドイツ兵もこんな感じだったんでしょうね。あとアレキサンダーたちが初めて猿と遭遇して(ギリシャには猿はいなかったみたいですね)、人間の言葉を喋らない小人の軍団だと驚くところが面白かったです。書物を読んだだけでは到底実感できないアレキサンダーの偉業も、こうやって映像で見せられるとイメージし易くなるもんですね。 ストーリー展開の背景では、妖しい母親アンジェリーナ・ジョリーの野望が隠し味となっています。まるでフランス革命の理想を語っているようなアレキサンダー=コリン・ファレルはいかにも現代的なのキャラクターですけど、マザコン的・BL的なキャラとしては最適な彼が大王らしいかというと首を捻るところです。あと驚かされたのは、アレキサンダーの死が側近将軍たちの毒殺という解釈が採られているところで、さすが『JFK』でケネディ大統領暗殺陰謀説の教祖となったオリヴァー・ストーンらしいですね。ということは、彼が主張したかったのはアレキサンダーが古代のJFKだったということか?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-25 22:54:00)
87.  第9地区 《ネタバレ》 
まさに“アイデア一発勝負”で製作された映画、エイリアンを難民と捉えて大量に増えたエイリアンがスラム化した難民キャンプに押し込められるという設定は斬新でしょう。でもよく考えると、地球に来たエイリアンと人類の共存というテーマは、過去にも『エイリアン・ネイション』なんかで使われているしそう独創的でもない。このストーリーを思いついた監督が南アフリカ共和国人なんで、南アフリカ共和国や周辺アフリカ諸国の現状を織り込んだ脚本はSFながらも普遍的な社会性を持つことに成功しています。だいいち、『第9地区』というタイトルは南アフリカ共和国にかつて存在した黒人隔離施設“第6地区”のもじりなんですから。しかしながら長編映画を初めて監督したというニール・プロムカンプの力量はまだまだの水準で、オスカー作品賞にノミネートされたけど監督賞にはノミネートなしというのは止むを得ないでしょう。 プロットの秀逸さは誰しも認めるところでしょうが、私には映像やアイテムは過去のSF映画の寄せ集め的な印象が拭えないんですけどね。ヨハネスブルク上空で静止する円盤は『インデペンデンス・デイ』、ヴィカスがエイリアン化してゆく描写は『ザ・フライ』、後半に大暴れするモビルスーツは『ロボコップ2』という風に既視感が強いんですよ。まず、本来宇宙船を稼働させるための燃料を身に浴びることでヴィカスがエイリアン化するのが理屈というか説得力がまるで感じられない。エイリアンの姿形や習性のグロさは観ていて拒否反応を起こす人が多そうなレベルですけど、スラム内で活動するギャング団のナイジェリア人の描かれ方も相当なもんです。まあそれを言ったら主人公ヴィカスも感情移入できない奴で、エイリアンの卵を焼き払って「中絶だ」とはしゃぐところなんか、ほんとサイテーです。こういったポリティカル・コレクトに引っかかりそうな描写は、欧米の映画では見られないものですね。面白いのはエイリアンと人類ではお互いの言語を聞き取って理解することができるのに、決して相手の言葉を喋らない(喋れない?)ところです。この変則的なコミュニケーションは、人種や宗教の違いで起こる国際社会での摩擦の一つのメタファーなのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-22 22:12:57)
88.  パラサイト・バイティング 食人草 《ネタバレ》 
典型的な低予算B級ホラーと舐めてかかってはいけません。製作はドリーム・ワークスでエグゼクティブプロデューサーはベン・スティラー、音楽グレーム・レヴェル・撮影監督ダリウス・コンジとスタッフも一流です。『シンプル・プラン』のスコット・スミス書いた小説が原作ですけど、ピラミッドの頂上というほぼ限定された空間は、独創的な映像アイデアだと思います、予算も節約できますしね。この映画の上手いところは、必要最小限の情報しか観客に与えないことでしょうね。ピラミッド自体はマヤ文明の遺跡らしいけどなぜその周囲にだけ食人草が生えているのか、原住民たちは若者たちをすぐに殺さずにピラミッドの頂上に追い詰めたのか、そもそも連中は何者なのか?こういう不条理とも言うべきストーリーテリングは自分の好物です。モンスター・ホラーと言っても食人草自体は積極的に攻撃してくるわけでもないのですが、着信音を音声模写(?)して獲物をおびき寄せるところなんか、はっきり言って荒唐無稽ですけど昆虫が使う擬態が連想されてゾッとします。けっきょく本作で怖いところは食人草よりもドツボにはまって自滅してゆく五人の運命で、これはほんと文字通り痛々しい。“石で骨を粉砕してナイフを使って両脚を切断”なんて、良くこんなこと考えつくなと感心してしまいます。この映画は、食人草よりも極限に追い詰められた人間がとる痛々しい行動に恐怖する種類のホラーなんです。B級ではありますが、掘り出し物と言えるホラーなんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-21 19:41:10)
89.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
これはもう、皆さんおっしゃる通りで、『ターミネーター』らしさは希薄でなんか『トランスフォーマー』か『パシフィック・リム』系統の映画を見せられている感じが濃厚でした。特に前半はスカイネット側のメカが出すぎ、対する抵抗軍もA-10 サンダーボルトⅡや潜水艦など妙に旧世界の兵器を豊富に揃えているところもなんだかなあです。この映画ではやがて指導者となるジョン・コナーがまだ中堅の部隊指揮官という位置づけ、やがて父親になるカイル・リースに至ってはまだ未熟なガキでしかありません。つまりT-800型が開発中でコナーがリースをタイム・スリップさせる以前のお話しというわけです。 実はわたくし、以前からこのシリーズに何となく感じていた違和感がこの映画を観ていて明確になってきました。スカイネットはサラ・コナーを殺して厄介なジョン・コナーを抹殺するためにシュワちゃんを過去に送るわけですけど、仮にシュワちゃんがサラ殺しに成功しても果たして送り込んだ時代の現実は変わるんでしょうか?パラレル・ワールドが一つできるだけで、スカイネットと人間の闘争が続く世界とは関係ないのでは。つまり目標である手強い人間たちの抹殺に繋がらないことに、スカイネットはどうして血道をあげるんでしょうか?ほかにもっとできることがあるんじゃない。まあこの映画の時点ではカイルを抹殺リストの筆頭に挙げているわけで、彼がジョンの父親であることは知っているはず、まずこいつを始末しようと判断したのは妥当でしょう。でもそれを知っているということは、カイルが過去に送られる(その時点では)未来の出来事をスカイネットが知っているという大矛盾が発生することになりませんかね(ああ、ややこしい)。やはりこれは、『2』で終わりにせず無理くりシリーズ化してしまったのが根本的な原因なんでしょうね。 我々は『2』の悪ガキから三世代のジョン・コナーを見せられたわけですが、当たり前ですけどクリスチャン・ベールがやはり指導者らしい迫力があって頼もしい存在です。奥さん(?)にあたるケイトが『3』ではたしか獣医だったような気がしますが、いつのまにかバリバリの外科医みたいになっているのはご愛敬です。サム・ワーシントンも存在感があって、本作だけでリタイアさせちゃうのはなんか勿体ない。特出のCGシュワちゃん、あれはきっとジョークですよね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-12-24 23:11:51)
90.  SURVIVE STYLE5+ 《ネタバレ》 
アコムの『無人くん』などを手掛けたCMクリエイター・コンビが手掛けた初劇場映画にしては出演俳優陣が豪華絢爛、さすが電通が絡むと違いますねえ。なんせあのヴィニ―・ジョーンズまで引っ張て来てますからね、彼が演じたキャラは『スナッチ』とほぼ一緒でしたけど、荒川良々とコンビを組ませる発想が素晴らしい。ぶっちゃけてしまうと、出演俳優がほぼほぼ全員が怪演という壮絶さです。中でも阿部寛と岸部一徳は強烈過ぎです。両者とも今後どんだけ映画出演を重ねても、本作を凌ぐ怪演は見せてくれないだろうと確信いたします。ストーリーラインは五つのエピソード、と言ってもどれもぶっ飛び過ぎですが、交互に進行して最後に一応つながるという構成。下ネタも随所にちりばめられていて、初っ端が阿部寛と小泉今日子のラブホ・シーンからですからね。まあ意味不明なシークエンスも多々あった気もしますが、この手のスタイリッシュ系の映画は自分の趣味に合ったシークエンスやカットがどれだけ見つかるかが鑑賞のポイントでしょう。特筆すべきは浅野忠信と橋本麗華のシークエンスでの屋敷内部の造りこみが日本映画にしては珍しいぐらい高度で、生き返るたびに変わってゆく橋本の衣装とメイクには目を奪われました。 惜しむらくはどお贔屓目に見ても中盤でダレて来たことで、20分ぐらいは尺が短い方が良かったんじゃないかな。
[DVD(邦画)] 7点(2020-08-13 20:49:45)
91.  ショーン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
ゾンビ・コメディの草分けにしてこのジャンルの金字塔です。劇中でゾンビという単語が発せられるたびに「Zワードを使うな!」とショーンとエドが向きになって怒るのがなんか可笑しい。ゾンビが蔓延し始めているのに、まったく気づかずに恋人との別れ話やエドとのしょうもないやり取りを続ける前半がとくに秀逸です。ゾンビの存在を認識してからパブへの逃避行を経てのクライマックスになだれ込む展開ではどんどんシリアスに傾きますが、デヴィッドの最期などグロ要素もしっかり盛り込んでいるのでちゃんとゾンビ映画のツボは押さえています。クライマックスの銃で自殺をとまで追い詰められてからの急転直下の解決は、まるで『ミスト』のパクりというかパロディみたいな感じすらしました。ラストのオチはこれしかないというところですが、笑ってしまいます。できればビル・ナイにもっと活躍して暴れて欲しかったところですが、フィリップがゾンビ化したときのバーバラとの車内でのやり取りは傑作です。 ロンドン上空で人工衛星が爆発して散布されたゾンビ・ウィルスがゾンビを生んだという設定みたいですが、ウィルスに感染してゾンビになった人たちが街をさ迷っている光景は、コロナ・ウイルスにロック・アウトされた時のロンドンを見せられているような感じで、ちょっとゾッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-15 19:43:47)
92.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 
少子化どころか人類すべてが妊娠できなくなってしまった世界、なぜそうなったのかは全然解明されていないが、そこは説明過多に陥らないのでストーリーテリングとしてはアリでしょう。それよりも、英国以外の国家システムが崩壊して難民が押し寄せる世界という設定がイマイチ「?」なのです。秩序が崩壊した原因は子供が生まれなくなったのが遠因とこの映画では仄めかす様な表現で終わっていますが、人間ってそこまで自暴自棄になりますかね?はっきり言って子供が欲しいと切望する若者は別としても、新しい生命が誕生しないだけで今生きている生命には疫病のような危機は発生していないように見受けられるし、そんなに焦りまくる事態ではないようにも思えるんですけど。でも地球上のすべての生命体の共通の本能は自己の子孫を残すという進化論的な命題に収束するわけで、人類といえども今の世代で種が絶えてしまうと認識してしまったら理性が失われて文明崩壊が起こるかもしれません。そういう哲学的な思弁の行き着く果てが、この映画と言うか原作の世界観なのかもしれません。 メキシコ人であるアルフォンソ・キュアロンにとっては、不法入国・難民問題は他人事と涼しい顔はできない現実でもあるでしょう。全体主義国家になってしまった英国での難民取り締まりの描写は、イラクやシリアでの現実を踏まえた恐ろしい描写ですが、まさかキュアロンも、難民こそ殺到しませんが10年後に英国がブレグジットで大陸から孤立する道を選ぶとは、夢にも思わなかったでしょう。政府も蜂起を狙う抵抗勢力も血も涙もない集団で、ヒューマン・プロジェクトなる団体だけが善玉というか信頼できる組織、でもこの三者はキーが産む子供を巡って争っているわけではない。この人類の救世主になるかもしれない赤ん坊と騒乱に満ちた実世界との係わりを上手くつなげられなかったところが、本作の弱さかもしれません。もっともそこは監督のあえて意図した撮り方だったかもしれません、突然出現した赤ん坊に兵士も難民も畏敬に打たれたように道を空けるシーン、これこそがキュアロンがこの映画でもっとも見せたかったところなのかもしれません。この映画を語られるときに長回しばかりが取り上げられるのは、ちょっと不本意なのかもね。 出演者ではやはりマイケル・ケインが光っていました。この役作りは、もうジョン・レノンにしか見えません。レノンも長生きできたら、きっとこんな感じの老人になってたんだろうな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-27 22:37:34)
93.  マリー・アントワネット(2006) 《ネタバレ》 
いやー、正直言って自分にはなんでこんなに酷評されるのか理解できません。とくにフランスでは評判が悪かったそうですが、これはフランス革命を否定的なニュアンスで描いたように捉えられたのだろうか?皆さんはソフィア・コッポラに何を期待していたんでしょうかね。贅沢三昧の生活と愚行のあげくに革命に囚われてギロチンの露と消えた生涯を、ストレートにソフィアが映画化するわけないじゃないですか。マリー・アントワネットをガーリーなセレブとして表現する、やはり彼女にしかできない発想だと自分は感心しました。 この映画は、実は『ロスト・イン・トランスレーション』と同じ視点でマリー・アントワネットの宮廷生活をガーリー・ムーヴィーとして撮っているんです。異邦人としてフランス宮廷に嫁いできたアントワネットの孤独は、『ロスト…』のスカヨハの抱えていた疎外感と同じです。アントワネット役にスカヨハじゃなくキルスティン・ダンストを持ってきたのは、個人的には彼女の顔は好みじゃないけど、正解だったのかなと思います。もっとも実際のアントワネットはバストサイズが100センチを超える巨乳だったそうで、そういう面では実像からはかけ離れているんですけどね(笑)。そしてソフィア・コッポラと言えば欠かすことのできない音楽選びの感性、仮面舞踏会のシーンなんてまるでNYのクラブみたいでほんとセンスいいですよね。やはりコッポラのファミリーネームがものを言ったのかヴェルサイユ宮殿で撮影を許されるという快挙、これはもう眼福としか言いようがないです。ソフィアはセレブライフを撮らせたら、やはり右に出るものはいませんよ。 “19世紀はフランス革命に始まって第一次世界大戦で終わる”と解釈する風潮が広まってきましたが、ルイ16世とマリー・アントワネットの処刑で始まりニコライ二世一家の惨殺で終わったヨーロッパは、まさに“王殺し”の世紀だったと言えるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-25 23:36:27)(良:1票)
94.  13デイズ 《ネタバレ》 
1962年のキューバ危機を、ジョン・F・ケネディ大統領の側近でいわゆる“アイリッシュ・マフィア”の一員だったケネス・オドネル特別補佐官の視点で見せるのがストーリーです。この人はロバート・ケネディとは大学時代からの友人でJFKの選挙参謀を経てホワイトハウス入りしたわけですが、調べてみるとこの時代がキャリアの頂点みたいなもので、ケネディ兄弟の死とその後の知事選での敗北から立ち直れずアル中になり、50代半ばで失意の中で死去した悲劇的な人物だったみたいです。この役をケヴィン・コスナーが好演しているわけですが、私には『JFK』のギャリソン検事のイメージが被り過ぎてヘンな感じでした。オドネル補佐官は判りませんが、ケネディ兄弟はじめ当時の閣僚たちはかなり似た容貌の役者を揃えていて良かったんじゃないですか。すでに歴史的な出来事なので結果は誰も知っているわけですけど、ホワイトハウス内だけの視点というか情報だけで語るストーリーテリングはソ連・フルシチョフの考えていることが全く判らないわけで、そこがサスペンスを引き締める役割を果たしています。どこまで真実に近いのかはわかりませんけど、ほとんどクーデターでも起こすつもりかと言いたくなる高級軍人たちの反抗的な態度、この13日間にJFKが知らないところで演習や核実験をしていたとは恐ろしいことです。実際に戦闘が起こったわけではないので派手な絵面は見せれませんが、それでも米国連大使がソ連大使を論破するところとU2偵察機が撃墜されるシークエンスがこの映画の見せ場だったのかなと思います。まあ言ってみれば頗る真面目な映画と総括できるわけですが、同じアイルランド系ながら出身階級が違い過ぎるケネディ兄弟と補佐官とのそこから生じるうっすらとした確執を見せたりする脚本はけっこう良い出来だと思います。それにしてもなんでフルシチョフはキューバにミサイルを配備する気になったんでしょうかね、こういう結果に終わることは自明だったと思うんですが、私は昔から不思議でならないんです。 あと気が付いたことが一つ、この危機の間ジョンソン副大統領がまったく登場しないんですよ。別にハブったわけではなくこれが史実なんでしょうけど、合衆国の副大統領職がここまで盲腸的な存在なのかと驚かされます。ルーズベルト大統領から原爆開発のことを全く知らされてなかった副大統領トルーマンのことが思い出されますが、ブッシュ政権のチェイニーみたいな副大統領は例外的な存在だったみたいです。セリフでは一か所だけジョンソンが出てきますが、仲間内で暗に彼をディスっているだけです。JFKのホワイトハウスもどこかの国と変わらない“お友達政権”だったんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-22 22:47:20)
95.  メメント 《ネタバレ》 
その奇抜なアイデアで映画史に名を残したクリストファー・ノーランの出世作。10分経つと記憶が消えてしまうガイ・ピアースの記憶を遡って行くストーリーテリングはあまりにも有名になっています。この記憶を遡って行くストーリーが、なんというかまるで後ろ向きにどんどん歩いているときに感じるような居心地の悪さに通じるところがあります。ラストからリヴァースしてみると実は単純な物語だという指摘もありますが、それでも未熟者のわたくしには理解しきれないところが多々あります。以下、激しくネタバレいたしますので、悪しからず。 最初に観たときには、妻を殺したのは実はガイ・ピアース自身だったという解釈だったのですが、観直してみるとなんか違うように感じました。これはサミーの話がレナードの作り話だと土壇場でテディに明かされてからのすっ飛ばすようなストーリーテリングに影響されていることは間違いないです。正直な感想このあたりの展開は非常に判りにくい。最後まで(つまりこの物語の始まり)観ればテディ=ジョン・ギャメル=刑事だということが理解できるが、その前の記憶をたどってゆく(つまり冒頭で刑事と名乗ったテディが写真を撮られた以降、ああ、ややこしい)シークエンスでは彼は自分が刑事であることをほのめかすことすらしないのはなぜなんだろうか。こうなってくると、レナードが保険調査員だったという過去も果たして真実なのかアヤしくなってきます。テディやナタリーなどのレナード周囲の登場人物が、10分しか記憶が続かないレナードを自分たちの利益のために利用していたということだけはかろうじて理解できましたけど。とは言ってもレナードがテディを殺す動機はイマイチ理解できてませんけど。 近年の研究では人間の記憶というものは、本人が自己防衛のために改変しているということが定説となってきています。自分の記憶さえそんないい加減なものならば、アイデンティティとはいったい何なんだろうか、という疑問すら湧いてきます。この哲学的な命題を巧みに織り込んだのがこの映画だと言えるでしょう、観終わって決してスッキリした気分にはしてくれませんが。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-10-24 17:36:33)
96.  パーフェクト ストーム 《ネタバレ》 
なんせ監督は『Uボート』のウォルフガング・ペーターゼンでっせ、ハリウッドに進出して職人監督としての評価を得た彼がまたやりたかったのは、まさにこういう「海・波・男」の三拍子がそろった企画だったに相違ありません。そう考えると、ジョージ・クルーニーが船長の漁船はUボートそのものだし、操業中に起こるエピソードや悲劇的な結末は『Uボート』のストーリーの焼き直しというか進化版だと思うのは考えすぎでしょうか。今風に言えば、欲の皮突っ張らせた男たちが自滅したのは自己責任、それが職務だったとはいえ犠牲になったレスキュー隊員が可哀そう、なんて感想もあるんでしょうね。まあそんなこと言ってたら映画やエンタテインメントは成り立たなくなってしまいますけど。 まあとにかくCGの進化によりここまで凄いハリケーン描写ができるようになったというのは、素直に拍手したいです。この映画なんかは全編の四分の三はロケを含めての海上シーンなんですから、とくにハリケーン遭遇中のシーンは映画館で観ていたらマジで船酔いしたんじゃないかと思います。ラストのマーク・ウォールバーグが一人で大荒れの海上に浮かび上がってくるところ、この映像からは人間という存在の自然の前でのちっぽけさとウォールバーグの絶望感がダイレクトに伝わって怖くなりました。 日本では平成以降に台風に遭遇して漁船が遭難したというニュースを聞くことが稀になってきました。太平洋は広いうえ台風が発生して北上始める海域は日本からはかなり距離がありますからね。それに比べてハリケーンはカリブ海や大西洋の北米大陸近海といった遥かに狭い海域で発生するので、この映画の様に逃げ切れずに遭難する漁船が多いのかもしれません。冒頭とラストで映るグロースターで追悼碑に刻まれた海難死した漁師の多さには驚かされます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-10-18 23:29:49)
97.  戦場のピアニスト 《ネタバレ》 
ユダヤ人移民の子孫であるスピルバーグは「ユダヤ系の僕がホロコーストを撮らないで誰が撮る?」と宣言して『シンドラーのリスト』を製作しました。その約10年後に生粋のアメリカ人でベビーブーマーのスピルバーグと違って実際にゲットーで生活したポランスキーが、ヨーロッパ人的かつ彼独特の粘っこさを持った視点でホロコーストの一面を描いたということになります。 本作にはある意味で個人のドラマというものは存在しないとも言えます。シュピルマンとその家族そして周囲のポーランド人にしろ、ヒトラーという独裁者が起こした歴史の渦に飲み込まれて、ある者は絶滅収容所である者はワルシャワの市街戦で死に、またある者はシュピルマンの様に生き延びることができたという、ポランスキーの冷徹な視線を感じてしまうのです。43年のワルシャワ・ゲットーの蜂起、44年のポーランド国内軍の蜂起がともに描かれていますが、それはビルの上階からシュピルマンが見た視点だけで描かれていて決してカメラが戦場に寄って行かないところも、まるで神の視点みたいで意味深です。 そして『シンドラーのリスト』との最大の相違は、両作とも多少の良心を持ったドイツ人がユダヤ人を助けるけど、本作のドイツ人将校は報われることもなく捕虜収容所で死に、そのことに対して少しも同情していないようなポランスキーの視線を感じてしまうことです。『シンドラーのリスト』のようなカタルシスとあざとい涙腺崩壊効果がない点がまた大きな違いでもあり、彼の過酷な人生体験がもたらした結果なのかもしれないけど、ポランスキーは実はヒューマニズムを信じていないのかもしれません。この映画ではシュピルマンの行動や周囲の出来事に関してちょっとブラックなユーモアを感じさせるシーンもありますが、そこに監督の底意地の悪さを感じてしまうのは私だけでしょうか?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-01 23:26:25)
98.  エグザム 《ネタバレ》 
ソリッド・シチュエーソンもの映画としてはその低予算とシンプルなプロットはかなりハイレベルでございました。題材を採用試験にしたことはアイデアとしては抜群だと思いますが、現実に企業の人員採用に携わったことのある人なら、ちょっと違和感を覚えることもあるでしょう。実際に日本の企業でも、さすがに「白紙の問題用紙」なんて極端なケースはなかったですけど、それに近い意表を突く課題で入社試験を行った会社を知っています。でもどちらかというと日本の場合は企業より学生の方が突飛なことをしたという話が多く、面接でマヨネーズを一本丸ごと飲み干すという芸(?)を披露してソニーに採用されたという都市伝説まがいの話がバブル期にはありましたよね。 まあそういう実体験もあり、この映画での試験問題の出し方とその答えというかオチに関してはさほどサプライズはなかったですね。そもそも途中で退室させられるフランス語を話す試験番号1番が怪しすぎ、絶対に後半でまた絡んでくるということは、誰でも読めるでしょう。候補者のうち六人が警戒しながらも協力というか共同作業してゆくという展開は。この手の映画のお約束ですけど映画自体の出来・不出来を左右する大事なところです。その点では本作は緊迫感を持続させる巧みな脚本です。だって他のソリッド・シチュエーソン映画と違って命がかかっているわけではなく、失格したら何事もなく退室できるというかなり緩い状況でこれだけ緊迫感を出せたんだから、大したものです。そしてラストがなんか明るく希望を感じさせてくれるのが同ジャンルの映画とは決定的に違うところでしょう。 観て損はないと私は思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-16 23:37:27)(良:1票)
99.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
古より “アイデア一発勝負”映画は数多く存在してますが、本作はその中でもかなり出来が良い部類でしょう。日記帳がタイムマシンの機能を持っているというのも、低予算をカヴァーする安上がりなアイデアだけど悪くないです。この映画でエヴァンはタイムリープする能力を持っているわけですが、やはり一番引っかかるのはその能力を発揮するために必要な日記帳(それも最初の人生で書き綴った13年分)が一緒にくっついてくる(としか思えない)ところでしょう。これは脚本家も判っているけどどうしようもなかったように見受けられ、ラストでは苦し紛れかホーム・ムーヴィーを持ち出してくるところなんか苦心の跡が感じられます。このターンのタイムリープでは「日記帳なんて存在しない、それは君の妄想だ」という医者の言葉まであり(かつてのレニーの様にケイリーを爆死させてからずっと病院で拘束されていれば日記なんて書けるはずないですけど)、何とか辻褄を合わせた感があります。 でも、最初に観た時にはそんな矛盾には頓着せず、素直に感動したのはたしかでした。たしかにどのタイムリープでも誰かが命を亡くしたり不幸のどん底に落ちたりで、凡人の私なんか自分がいちばん順調なキャリアを積んでいる最初の人生をそのまま続けていくのを選択します。そういう普通の結論を選ばず、ケイリーが自分に恋心を抱いたのが実は全員の不幸の大本だったと気づいてしまうラストは、この映画の宣伝コピーじゃないけど最高に切ないところです。映画のストーリーには、観客の心をつかむ騙しのテクニックみたいなものがやはり必要なんです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-24 23:16:16)
100.  ボーン・スプレマシー 《ネタバレ》 
本作ではジェイソン・ボーンを“追われる者”から徐々に逆の立場に変貌してゆく脚本で、ストーリーのつなぎ目としてどうしても印象が薄くなりがちな三部作の二作目としてのウィークポイントを克服することができました。第一作のミステリー風味は薄れてしまったのは止むを得ないところですが、その分アクション要素が強化されています。前作のクリス・クーパー、本作のブライアン・コックスと一作ごとに組織内のラスボスが倒されてゆくのがこのシリーズの特徴ですが(最もクリス・クーパーはCIAに消されてます)、どちらもボーンが手を下したわけではないことに注目です。前作では組織の殺し屋を何人も返り討ちにしたボーンですが、本作では彼が明らかに殺したのはミュンヘンの男(元同僚?)だけで、これも正当防衛といえる感じでした。派手なカーチェイスを繰り広げたカール・アーバンはこれまでで最強の殺し屋でしたが、壁に激突して瀕死となっても止めはささず。愛するマリーの仇なのになんで?と訝しくなりますが、「マリーに言われたから(殺しは止めた)」というセリフもありますので納得しなければいけませんが、そんな会話のシーンありましたっけ? この映画を見て得た教訓:モスクワのタクシーは世界最強!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-08-03 22:58:59)
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