1141. 阪急電車 片道15分の奇跡
《ネタバレ》 脚本も演出も、説明的で事務的で機械的でどうしようもないんだけど、電車内に世界が限定されているとか、いろんな登場人物の多重交錯という設定とかは好みなので、それなりに見入ってしまったのも事実。とはいえ、結局は設定に寄りかかっただけということにはなってしまうのですが。表現として目を引いたのは、前半の電車内で白ドレスというシュールな光景と、ラスト近くの中谷美紀と少女のやりとりくらい。この少女は、「私、実はいじめられてるんです」とかいうことをいちいち言わないからこそ、すべての登場人物の中で存在が最も光っているわけで、何でほかの人たちにも同じ扱いをしてあげなかったのか、不思議でならない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-26 02:19:02) |
1142. 細雪(1983)
この四姉妹の目眩くような豪華なぶつかり合いを見ているだけで十分楽しめる一方、逆にそのキャスティングによりかかって人物描写の中身は不足していないかという気もするのだが、まあいいか。吉永小百合の出番をきちんと切り詰めているのが、かえって作品のバランスに安定感をもたらしている。その意味でも、岸恵子と佐久間良子の存在のこの作品における意義は大きい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-25 02:56:36) |
1143. リンカーン
結局、デイ=ルイスの個人技と、美術や衣装関係の職人芸に寄りかかった内容になってしまったんだなあ。スピルバーグの場合、自己主張があればあるほど良い出来になっていて、何かを立てようとしたり、何かに忠実になったりすると、消化不良気味になってしまう気がします。サリー・フィールドやデヴィッド・ストラザーンの見せ場が思ったほどなかったのも意外。特にサリーは、久々の話題作登場で期待したんだけど。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-11-06 21:33:31) |
1144. オールド・ボーイ(2003)
《ネタバレ》 無意味なシーンとか、勢い余っただけのシーンとか、失笑するような演出とかはあちこちにあるんだけど、第1に、「15年経ってから解放したのはなぜか」という魅力的すぎる謎と、その期間に対する必然性。第2に、例のHシーンで、その後の(合い鍵での?)出入りやプレゼント箱、その中の手首なんかが本題と見せかけておいて、実はHシーンそのものが本題だったという、手品のような手口。この2つのインパクトで、作品としては十分成り立っています。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-21 02:57:26) |
1145. 群盗荒野を裂く
《ネタバレ》 何も知らずに見れば、そもそも誰が主人公なのかも想像がつきにくいオープニング。いや、それはそこだけではなく、話が進行してからも、誰が主導権を握るのかはなかなか予測がつかず、ひねりにひねりを加えて展開していく。ウエスタンの皮を被ってはいますが、骨子は現代型サスペンスですね。画面の左右と前後を存分に駆使した馬集団の疾走の撮り方も楽しい。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-18 22:36:11) |
1146. 十戒(1956)
《ネタバレ》 導入部は単調なやりとりでかったるいと感じていたのですが、モーゼが宮廷を追放されてからがやっとこさ始まり始まりですね。とりあえず、出エジプト記の内容が整理して理解できたのは、ためになりました。あと、セフォラとかリリアは、結構魅力的なキャラクターだと思っていたのですが、最後の方はほったらかされ気味だったのがちょっと残念でした。 [DVD(字幕)] 6点(2013-08-05 02:11:02) |
1147. アルゴ
《ネタバレ》 まるで当時に作られた映画であるかのように70's後半のファッションを再現してみせた職人芸には唸ってしまったが、肝心の展開は、ニセ映画という設定ありきで突っ走ってしまっている気配があり、作戦の背景やディテールまでは突っ込みきれていない。それでも、最後の空港の脱出場面、当たり前のような出国審査や最終搭乗手続だけで引っ張る奥床しさが、かえってスリルを増している(だからこそ、滑走路への乱入は要らなかったのだが。あそこは、強化ガラスではね返されておしまい、の方がずっとよかった)。あと、挿入曲がダイアー・ストレイツにヴァン・ヘイレンにツェッペリンというのは、作品の雰囲気に全然合ってなくないか?年代だけで選んじゃった? [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-08-02 01:03:13) |
1148. 男はつらいよ 純情篇
《ネタバレ》 最初に見たときは、若尾文子のマドンナの存在がどうも浅くて物足りなかったのですが、再見してもそれは変わりませんでした(笑)。よって、寅さんの恋の病というのも、あまり説得力はありません。ただ、若尾さんが問題というよりも、この作品はサブエピソード部分の出来が良すぎて、マドンナの出る幕が狭められてるのですよね。冒頭の宮本&森繁の強力なドラマとか、博の退職騒動の盛り上がりとか(もしかして、「寅さん相手に服を脱ごうとした女性」というのは、シリーズ中絹代が唯一なのでは?そして、宮本さんの驚きの視線を受けた切り返しの寅さんの「険しい悲しみ」の表情も凄い)。●シリーズの歴史という観点から見ると、(1)源ちゃんが本作から帝釈天に居着いている、(2)柴又駅での見送りシーンが初登場、という点でも重要な作品です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-07-27 13:01:22) |
1149. あなたになら言える秘密のこと
《ネタバレ》 ゆらゆら揺れるカメラ、単調なシーンの積み重ね、失明状態についての描写不足など、マイナス点は多々ある。しかし、大洋上に忽然と浮かぶ採油施設の風景は、それだけで爆発的なほどのインパクトがあるし、ドラマが展開されるべき閉塞的な空間としてその場所を設定したのは実に秀逸。だからこそ、主人公の告白シーンが重みをもって迫ってくる。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-07-26 21:41:04) |
1150. 三人の名付親
《ネタバレ》 終盤入口までの迫力は凄かったのです。ごく単純な銀行強盗が、いつしか苛酷な荒野の逃避行に変わっていく過程を、1つ1つのシーンを落とさずに積み重ねて、説得力を溢れさせています。起こりうる困難のベースを水・水・水で統一しているところも、作品の筋を通していますし、大事な持ち物を次々に捨て去ってひたすら歩き続ける描写にも、鬼気迫るものがあります。しかし、最後に街にたどり着いた後のあの一連のシークエンス・・・あの脳天気な雰囲気は何なのでしょうか。それまで丁寧に築き上げたものを残らず自分でぶち壊すような、逆の意味でインパクト絶大でした。酒場到着シーンまでの部分の余韻で6点。というか、本来あそこでエンドマークですよ、ほんと。 [DVD(字幕)] 6点(2013-07-03 01:05:53) |
1151. ブーリン家の姉妹
《ネタバレ》 ヘンリー8世とアン・ブーリンという人物を採り上げているのはなかなか興味深いが、この2人だけでも歴史上の十分なドラマはあるんだから、あえて妹にスポットを当てる必要はなかったのではないか?焦点が、姉妹間や家族間のことなのか、宮廷内のことなのか、どっちつかずになっているので、非常にもったいない印象を受ける。結局、筋を追うことで手一杯になっているのですが、それでも、キャサリンの追放シーンや、ラストの容赦ない処刑シーンなど、もっと引っ張ってほしかったと思えるパートは多々存在する。あと、ナタリー・ポートマンは、頑張ってクイーンズ・イングリッシュの発音にも取り組んでいるんですけど、やっぱり当時のイギリスの女王様という感じはあまりしないね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-07-01 22:12:52) |
1152. キャスト・アウェイ
《ネタバレ》 無人島到着後からいきなり、ハンクスの無言芝居と独り言だけで1時間以上押し通し、その間人間はおろか動物すら登場させない(獲物の魚以外)という潔い構成は見事。ハンクスの演技は、ちょっと綺麗すぎるというか、絶望感や焦燥感が思ったほど感じとれないのだが、そこはまあいい。問題は、帰還した後の順応があまりにも早すぎることで、例えば飛行機に乗って平然と氷を口に含むって、ありえないんじゃないか?(そもそも、高速で動く物体にすら、4年間乗っていなかったわけでしょ?)あるいは、不時着経験の恐怖なんかは、彼の中には存在しないのか?さらには、誰とも喋ってなかったはずなのに、他人とのコミュニケート能力もあっさり復活してないか?とか、いろいろ気になってしまいました。サバイバルの苛酷性自体が感じられなくなってしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-19 02:16:58) |
1153. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草
《ネタバレ》 そんなに恋愛方面にのめり込んだ作りにはなっていなくて、むしろ放浪者同士の心のふれ合いや交錯というのがテーマだったんですね。だから、あっさりリリーが消えてしまう展開の切れ味が光っています。もっとも、だからこそ、鮨屋での再会のシーンはいらなかったんですが。●内容的には、この時点では「異形のキャラ」とさえいえるリリーを、制作側がまだ使いこなせていない印象も受けますが、だからこそ、後の寅のある意味生涯の支えとすらなるリリーを発掘した意義は大きいといえますし、この作品があったからこそさらにシリーズの長期化が決定づけられたともいえます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-06-16 00:47:43)(良:1票) |
1154. キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~
《ネタバレ》 マディ・ウォーターズだのチャック・ベリーだのハウリン・ウルフだのという大御所が一登場人物としてひょこひょこ登場してくるので、それだけである種の緊張感が漂っている。肝心のブロディ演じる主人公は、経営の理念も見えなければ手法も描かれておらず、影が薄い気もするが、まあ仕方ないか。ただ、演奏シーンを格好良く撮っているのは好印象としても、音楽がどうだったこうだったというだけではなくて、それが社会や世相にどのような影響を与えたのかという点まで踏み込んでほしかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-14 01:31:54) |
1155. この愛のために撃て
《ネタバレ》 ハリウッド・テイストな分かりやすいサービス満載のアクションながら、警察内部の対立であるとか、決戦の場所が警察署内であるとか、それを導くためのさまざまな道筋であるとか、あまり見ないネタもちりばめてあってなかなか美味しい。ただ、臨月の妊婦の人質という設定は、よく考えると反則ではないかと思う。もうすぐ産まれるかもしれないという一事だけで自動的に状況を設定できてしまうし、最後に無事産まれたらめでたしめでたし、というのも、ほかの展開と関係なく成立できてしまうから。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-05-29 03:25:11) |
1156. キッズ・オールライト
《ネタバレ》 アネット・ベニングにジュリアン・ムーアにマーク・ラファロとなると、やっぱり見る前の期待値とハードルが上がってしまうなー。導入部分で、このレズビアン・カップルはどういうカップルなのかとか、この家族を構築するためにどういう生活を経てきたのかというところをかなりすっ飛ばして精子ドナーが登場しているため、レズビアン云々よりも、精子提供の方にテーマがスライドしてしまっている。しかも途中からは、ジュリアンの浮気についてのみテーマが収束してしまっているので、さらに設定の意味がなくなっている(子供たちは親の浮気の被害者としてのみ描かれ、精子提供による親子関係というものに対する洞察は何もなくなっている)。そんなわけで、主演の3人も、その表現力を駆使する場面があまりありませんでした。前半の食事の場面などは、ぎこちない心理の衝突がなかなかスリリングで、あの辺がもっと発展していくことを期待したのですが。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-10 02:06:49) |
1157. スパイダーマン3
《ネタバレ》 後から回収できるかとかそんなことは考えずに、大風呂敷を広げるだけ広げて、あとは愚直に誠実にそれをまとめにかかる。これは、かつて日本でも、主として大映テレビが連ドラで行っていたことと同じである。あれを楽しめた人は、こちらも楽しめるだろう。●途中のブラックスパイダーマンのときに、ハリーに殴り込みに行く、MJに恥をかかせる、エディの細工を暴露して蹴落とす、といった、それまでの弱点を覆すかのごとき行動が、割と心地よく快調に描かれていて、「いいぞもっとやれ」と思ってしまう仕掛けになっている。しかし、その見る側の黒い邪な心を否定するのがもちろんこの作品のテーマであって、その一線を守り通しているからこそ、大風呂敷にもかかわらずそれをハリボテに感じさせない強靱さを持ち合わせている。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-05-05 01:55:04) |
1158. 幻影師アイゼンハイム
《ネタバレ》 マジシャンを描いた映画はいろいろあっても、その奇術能力を権力闘争的に用いて、皇帝の力と対決する・・・というのはあまりないように思ったので、終盤までは割と見所があると思っていたのです。ノートンとジアマッティの演技合戦もなかなかだったしね。ところが、あのオチはそれまでの全否定に等しいので、やっぱり減点。何でそんなことをする必要があるんだろう。あ、照明と色彩感覚は、いい感じでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-29 02:21:21) |
1159. ハンサム★スーツ
《ネタバレ》 昔のドラマは、「不細工であっても心の良さが花開いて最後にはいい目を見る」というのが、1つの定番であった。しかし、ある時期から、「そんなこと言ったって、実際には、見た目で全部決まっちゃうだろ。ありもしない話をするな」と見る側が変にスレてしまって、その王道パターンはいつしか廃れていった。この作品は、その失われた美徳を、おそらくは批判も嘲笑も覚悟の上で、見事なほどになぞっている。その制作姿勢そのものが、不細工の根性を最後には見せてくれる主人公の歩みそのものである。だから私はこの作品を支持する。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-04-18 00:52:11) |
1160. まほろ駅前多田便利軒
《ネタバレ》 導入部分では、このまま焦点がはっきりせず雰囲気だけで流れていくのかな・・・と危惧していたのですが、登場人物が実際に動き出してからは、ぎりぎりのところで破綻せずにきちんとまとまっていました。主人公が便利屋という自分の基盤についてぶれていないところが、作品に線を通しています。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-04-08 03:30:02) |