Menu
 > レビュワー
 > S&S さんの口コミ一覧。6ページ目
S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12345678910
投稿日付順12345678910
変更日付順12345678910
>> カレンダー表示
>> 通常表示
101.  二つの世界の男 《ネタバレ》 
東ドイツのスパイとして西側から必要な人物を拉致してくるのが稼業のジェームズ・メイスンが主人公です。舞台となるのはベルリンでロケ撮影されています。この映画の見どころ(?)は、戦後まだ8年しかたっていない当時のベルリンの荒廃した街並みが生々しくフィルムに残されているところです。良く考えたらこの当時はまだベルリンの壁が出来る前で、東西の行き来が比較的緩かったみたいです。 冒頭、ベルリンに着いたクレア・ブルームを自転車に乗った12歳ぐらいの少年が尾行するところはちょっとサスペンス感が有りました。キャロル・リードは『第三の男』のウィーンからベルリンに舞台を移したサスペンスを撮りたかったみたいですが、メロドラマ色を強くしたためにどうも緊迫感が持続しないストーリーになってしまいました。 あと見どころとしてはヒルデガルド・ネフ。ドイツ映画で初めてヌードを見せた女優なんだそうですが、たしかにグラマラスでしたね。もちろん本作では脱いではいませんけど(笑)。
[DVD(字幕)] 5点(2014-05-18 21:48:35)
102.  勝手にしやがれ 《ネタバレ》 
わたくし、はっきり言ってゴダールは嫌いですけど、本作だけは別。50年代にこんな映画を撮るなんて、もう間違いなく映画に革命を起こした様なものだったんでしょうね。映画で出来るなら、って現実世界でも革命を起こせるとと勘違いしちゃったのがゴダールの間違いだったわけです。 ジャンプ・カットを考案したいきさつやら脚本がなくてほとんど即興撮影だったことなどはすっかり知れ渡っていますが、やはりベルモンドとセバーグの即興会話に注目です。意味のない駄ばなしみたいに聞こえますが良く聞くとちゃんと詩的な対話になっていると思うんです、もっともベルモンドの方はただひたすら「やりたい」を繰り返している様にも感じますが(笑)。これはこの二人の俳優としての素質の高さがなせる業だと感じます。 そしてジーン・セバーグ、彼女の顔の整った美しさはオードリー・ヘプバーンをも凌駕してます。セシル・カットの絶妙さといい、現代でも十分通用する美女だと思います。若くしてこの世を去ってしまったのは実に残念です。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2014-05-08 20:42:30)
103.  リリー 《ネタバレ》 
いかにも大作ミュージカルという風情の『巴里のアメリカ人』の後でこんな可愛らしい小品も創っていたなんて、さすが全盛期のMGMだけのことはあります。この映画はミュージカルと呼ばれていますが、使われている楽曲は有名な『ハイ・リリー・ハイ・ロー』だけと言ってしまえるほどのシンプルさ。オスカーを受賞していますが、ミュージカル映画音楽賞ではなく劇・喜劇映画音楽賞だったというのも納得です。 この映画自体がレスリー・キャロンのための企画みたいなもので、その彼女の輝きっぷりはもう胸キュンものです。ラストのバレエ・ダンスも良いんですが、やっぱり人形と『ハイ・リリー・ハイ・ロー』を歌うシーンの可憐さはこれからも語り継がれてゆくことでしょう。 DVD化されたのは良いんですが古いプリントのまんまでカラーが完全に変色してました。どこかデジタル・リマスター版をリリースしてくれませんかね。それだけの価値はある作品ですよ。
[DVD(字幕)] 8点(2014-04-01 21:22:29)
104.  何故彼女等はそうなったか 《ネタバレ》 
エログロ路線に突入する直前の新東宝映画で、こんな良心的な佳作を製作していた会社があんな風になっちゃうなんて何とも皮肉としか言いようがないです。『しいのみ学園』の清水宏が再び香川京子を起用して撮った作品です。もうこの映画はひたすら香川京子を愛でるのが正しい観かたです。ストイックに生徒の少女たちに愛情を注ぐ先生というキャラは、もう彼女以外には考えられない当たり役です。更生施設で彼女の愛情に守られてきた少女たちが出所するやいなや厳しい家庭環境から悲惨な運命に翻弄される、清水宏の脚本はエミール・ゾラの小説を思わせる冷徹さです。いったん世間に戻ってしまった少女たちの現実にはなんの助けも差し伸べられない無力な存在として香川京子を描く視点は、この映画を単なるヒューマニズム賛歌にすることなく余韻を残してくれます。 まだ辞書に“人権”という言葉が載ってなかったかの様な時代ですから、出所した少女たちに対する家族や世間の偏見がひどいことと言ったら無残なものです。昭和30年代は牧歌的な時代だったという幻想をふりまくのが最近の流行りですが、現実にはこういう残酷な世相の貧しい時代だったというのが正しいところでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-03-14 00:00:26)
105.  汚れた肉体聖女 《ネタバレ》 
「この映画に描かれたストーリーは特定の宗教とはなんの関係もありません」というテロップが冒頭でますが、どう見たってキリスト教の修道院だろ!って突っ込みは一応入れておきます。数ある新東宝エロ風味映画の中で、たぶん唯一のレズもので貴重ではあります。 どうも新東宝というか社長大蔵貢の頭の中には「九州島原=邪教(キリスト教)のはびこる秘境の地」という図式があるみたいですね、怪作『女吸血鬼』というのもありましたし。この修道院なのか学校なのか良く判らん舞台設定が、チープながらドロドロした感じでいかにもです。名前が「紅百合(べにゆり)学院」なんですからね。シスター姿の生徒たちがフォークダンスを踊るシーンは、滑稽を通り過ぎて不気味の域に達していてトラウマになりそうでした。高倉みゆきと大空真弓の絡みもちゃんとありまして、不思議なエロっぽさがありました。 修道院なのになぜかプールがあったり敷地内に底なし沼まであるというヘンテコぶりは毎度のことで、中盤以降の電気紙芝居としか言いようがないストーリーの暴走ぶりをお楽しみください。主演の高倉みゆきは“新東宝の皇后女優”と呼ばれたそうですが、明治天皇もの以外の主演作ではいつも犯されたり堕胎したりと新東宝女優の中でも指折りのミゼラブルなキャラばかり演っている様な気がします。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2014-03-12 23:17:41)
106.  ゴジラの逆襲 《ネタバレ》 
『ゴジラ』の続編は早くも怪獣対決路線に突入。『ゴジラ』とはあまりに雰囲気が違うと戸惑う向きもあるでしょう、それもそのはずで本田猪四郎と伊福部昭が関わっていないんですね。大作『ゴジラ』の直後でさすがにお二人ともお疲れだったんでしょうか。 『ゴジラ』での志村喬のラストのセリフがあるので、死んだはずのゴジラを復活させるのはさほど悩まなかったでしょうね、『アウトレイジ』の続編撮るのとはわけが違います(笑)。ゴジラスーツはわずか1年で驚くほど改良されていて、東宝特撮スタッフの技術力は大したものです。前作では山根博士はジュラ紀をなぜか200万年前と間違って説明していましたが、本作では1億2000万年前と正しくなっています(えらい違いです)。アンギラスも造形としてはなかなかセンスが良いんですが、ゴジラともどもアップシーンになるとギニョールになっちゃうのは残念でした。 前作ではゴジラが戦災のメタファーになっていましたが、本作ではどちらかと言うと天災の様な捉え方に変化した脚本です。最初は高知県南部に上陸すると予測されていたゴジラが大阪に現れるところなんか、まるで台風の進路予想みたいですな。特徴的なのは『ゴジラ』で強烈な印象を与えた都市住民の被害描写がほぼ皆無ということで、これはこの後のシリーズに受け継がれてゆきます。小泉博は元海軍航空隊の戦闘機乗りで戦後は民間航空のパイロットという設定ですが、いくらなんでも空自の元戦友たちに頼んでジェット戦闘機でゴジラ攻撃に参加するってのはやり過ぎです。プロペラ機しか操縦したことないのに、ろくに転換訓練も受けないでジェット戦闘機が操縦出来るようになるわけがない。本田猪四郎が監督なら決してこんな雑な撮り方はしなかったでしょう。 ラストのゴジラ攻撃は、飛行侵入経路や雪山の頂上近くを爆撃するところなど、『633爆撃隊』のフィヨルド特攻爆撃のシーンとカット割までそっくりです。これ絶対に『633爆撃隊』が真似していると思いますけど、どう見てもこの円谷特撮の方がレベルが高いというのは笑っちゃいます。こうしてゴジラは『キングコング対ゴジラ』まで6年間の眠りにつくのでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2014-03-06 19:13:49)(笑:1票)
107.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
白人男性ばっかりで女性はいない陪審員の構成を見ていると時代を感じます。こんな制度なら黒人の被告にとってはもう悪夢ですよね。それが現在では女性や有色人種をどれだけ陪審員に入れるかで検察と弁護側が争い、それが裁判の行方に影響を与えているそうですから皮肉なことです。 さてこの映画を観るたびに感じることなんですが、原作者や監督シドニー・ルメットは陪審員制度について肯定しているんでしょうか? 日本でも裁判員制度が行われていますが、この映画を観たら陪審制みたいなかたちで裁判されるのは勘弁して欲しいと誰もが思うんじゃないでしょうか(日本では多数決で評決が決まることがあるというから恐ろしい)。早く切り上げて遊びに行きたくてしょうがない陪審員がいたりして、さすがシドニー・ルメット、各人の人間性を浮き彫りにする描写は見事です。この物語は誰が犯人であるかを決めて裁きを下すのではなく、被告が何をした(もしくはしなかった)のかだけが重要だと言いたいんじゃないでしょうか。陪審員8番の言葉を借りると「これが民主主義の良いところだ」というわけなんですね、欠点もありますが。 暑苦しい一室で普通の人たちが繰り広げる白熱の議論をリアルタイムで描いた、密室劇ムービーの最高峰です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-10 21:21:15)
108.  熱砂の海 《ネタバレ》 
長距離砂漠挺身隊(L.R.D.G.)とはこれまた英国映画らしい渋い題材です。特殊作戦大好きな英国人ですから、戦争とはいえ冒険を楽しむようなガッツが伝わってきます。この映画もまた女性がまったく登場しないいかにも英国戦争映画らしいストイックさ、北アフリカの砂漠が戦場なのだから当たり前と言えばそれまでですが、女優を使って無理矢理ロマンス要素をねじ込むハリウッド製戦争映画とはえらい違いです。そしてハリウッド製作の北アフリカ戦を扱った映画だとたいてい米国内の砂漠で撮るけど、この映画はちゃんとリビアのトリポリ付近まで行ってロケしてるのは偉いところです。戦闘場面とかもとにかく地味ですが、シボレー・トラックの実物を丁寧に映しているのは貴重です。後半になってドイツ軍のハーフトラックが執拗に追いかけてくるのですが、こういうところ観ると本作が『ラット・パトロール』の元ネタであることが良く判ります。
[DVD(字幕)] 5点(2014-01-16 22:08:15)
109.  潜水戦隊帰投せず 《ネタバレ》 
大英帝国が大好きな特殊コマンド作戦のひとつを描いた作品。第二次世界大戦時、ドイツの戦艦ティルピッツを撃沈しようと英国海軍が躍起になった史実をもとにしています。ノルウェーのフィヨルド奥深くに隠れているティルピッツを仕留めるためにまず考えたのは人間魚雷作戦。人間魚雷と言っても日本の回天みたいな自殺兵器ではなく、魚雷をオートバイみたいに人間がまたがって操縦できるように改造して、目標の船底に時限式弾頭をくっつけて乗員は脱出するという方式です。実はこれはイタリア海軍が開発した兵器で、英国海軍はこいつの攻撃で戦艦2隻を大破着底させられるという痛い目に遭っています。映画ではこのイタリア海軍お得意の戦法をまるでイギリス人が考えたような撮り方をしてますが、まあそこはご愛敬と言うことでしょう。訓練に苦労して作戦は実行されますが、漁船で曳航中につまらないことでこの魚雷がおシャカになってしまい失敗します。次に考えたのは4人乗りの小型潜航艇で近づいて携帯電話のバッテリーみたいな時限爆雷を置いてくるという作戦です。今度は何とか上手くいってティルピッツには大損害を与えることが出来ましたが、参加した隊員は全部戦死するか捕虜になって“潜水戦隊帰投せず”と言うわけです。 捕虜になってティルピッツに上げられても、ドイツ海軍がちゃんと敬意を持って扱うところがちょっと驚きで、ウソ臭いと思うかもしれませんがこれが史実だからまた凄い。こういう英国式特攻作戦は結果的に捕虜になってしまうことを前提としていますので、日本相手の太平洋ではほとんど実行されなかったそうです。後半部での潜水艇内での細かな描写は光っていますが、劇中で女性がまったく登場しないとっても地味な映画でした。
[DVD(字幕)] 5点(2014-01-14 01:08:21)
110.  牛乳屋フランキー 《ネタバレ》 
天才喜劇俳優・フランキー堺のパフォーマンスを堪能すべし! 日本の映画俳優の中で彼ほどスラップスティックなコメディが上手い人は他にはいないし、今後も現れないでしょう。まあ何と言うか、彼の身体の動き自体がもうコメディのリズムになっているんです。映画自体は他愛のないストーリーですが、二役のフランキーが同時にフレームに映っているところが綺麗に合成されていて、この時代にこんなCG顔負けの技術が有ったとは驚きました。 そしてびっくりしたのが、石原慎太郎をパロった石山金太郎なる大学生の小説家を登場させて徹底的にコケにしているところです。だってこの監督中平康は同時期に『狂った果実』を撮っている人なんですから、ふつうここまで関係者をバカにしますかね。そのおちょくり方もけっこう辛辣で、書いている小説を読まれて「あんた小学校出てるの?」なんて酷評されたりするんです。けっこうこれが中平康の石原慎太郎に対する本音だったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-01-11 23:26:57)
111.  恐怖と欲望 《ネタバレ》 
キューブリックが生前に封印して再上映を許さなかったという商業映画幻の初監督作がついに陽の眼を見ることになりました。製作から今年はちょうど60年、パブリック・ドメインになっているのかは知りませんが、きっと色々な大人の事情があるんでしょう。 一応プロを使っているけどセリフのある俳優はたったの6人(この中には後に監督として活躍することになるポール・マザースキーもいます)、キューブリックは撮影やら録音までひとり五役をこなしていますが、この映画のスタッフは総勢たったの13人だったそうです。 架空の世界の戦争で戦場は森の中、低予算で戦争映画を撮るには最適のプロットでしょう。敵勢力範囲に降下したパイロットと三人の歩兵が敵の軽飛行機を奪って脱出すると言う単純なお話しなんですが、キューブリックの高校時代の親友が書いたという脚本が韜晦すぎてヘンな映画になってしまった感じです。登場人物たちの心象をモノローグで引っ切り無しに流す、クローズ・アップを多用しているところなど後のキューブリックからは想像つかない演出スタイルでもあります。良く言えば詩的なんだけど、正直言って登場人物たちの行動が理解できないのは難点でしょう。でもキューブリックのカメラさばきはさすがにシャープで、とくに室内の映像は陰影が濃密でもう完全にキューブリック印になっていました。飛行機を奪うために敵の将軍と将校を殺すシーンがありますが、襲う側の二人と同じ俳優を使っているというのは意味が判らないけど印象には残りました。 というわけで当然のように興行的には惨敗したわけですが、NYタイムズの取材に「痛みとは良き教師だ」と答えている当時のキューブリックの言葉がこの映画のすべてを語っています。
[DVD(字幕)] 3点(2013-12-16 18:36:46)
112.  雨に唄えば
これぞまさしく“ザッツ・エンターテイメント”、やっぱ本作が史上最高のミュージカル映画と言うことになるんでしょうかね(個人的には『キャバレー』がトップなんですが)。“Singin’in the Rain”という曲は、『ザッツ・エンターテイメント』のオープニングを観ればMGMのミュージカルで何度も使われてきたことが判ります。でももちろんジーン・ケリーの躍動感あふれるダンスに勝るものはないし、本作以降のミュージカル映画でも彼のパフォーマンスは越え難い壁となって挑戦を跳ね返している気がします。コメディとしても秀逸ですし、「ミュージカル映画は苦手だ」とおっしゃるあなたも一度は観ておくべきですよ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-12-01 21:44:22)
113.  波止場の王者 《ネタバレ》 
新東宝が大蔵貢体制になる直前に撮られた一本です。なのでまだエログロ路線じゃないのですが、本来から新東宝という映画会社が持っていた弱点が良く見えるのです。新東宝は設立当初は文芸映画などに秀作が多いのですが、とにかくアクション映画が苦手だったみたいでろくなものがない。アクション映画にはヒーローが欠かせませんが、このヒーロー役者に魅力的なスターがいなかったこともアクション路線の出来の悪さに拍車をかけてしまったみたいです。 本作でも、宇津井健と中山昭二という新東宝が誇る二大へなちょこアクション・スターが共演です。中小企業の造船会社が密輸組織の妨害を受けながらも新型ジェット・エンジン船の開発に奮闘するという『プロジェクトX』チックなお話しです。石川島みたいな総合企業じゃないのに、一介のボロ企業がなんでジェット・エンジンの開発なんか出来るのかという突っ込みはまあ良しとしましょう。縮尺模型に花火みたいなエンジンを付けて実験、それが上手くいったからと言って「ジェット・エンジン船の開発に成功した!」と言い張るのも、まあ低予算なんだからしょうがないでしょう。 でも私が許せないのは、宇津井健が密輸組織のボス(中国人)と対決するクライマックスで、「そのへっぴり腰のアクションは映画を舐めとらんか!」と正座させて半日は説教してやりたいぐらいです。敵役のボスも変なカンフー技を使うし、ぴょーんと岩にジャンプするのには呆気にとられてしまいました(フィルムの逆回し撮りでした)。 そういや丹波哲朗も出てましたね、まあそれはどうでも良いとして、前田通子を使いながらなんでもっと露出シーンを撮らないんじゃ!これは致命的でした。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-11-23 22:49:49)
114.  女の防波堤 《ネタバレ》 
新東宝の映画の中では、『九十九本目の生娘』ほどではないけどかなりカルト的な存在なんだそうです、この映画。 太平洋戦争終戦直後、空襲で家族を失い焼け出された小畑絹子と親友の荒川さつきは、進駐軍相手の慰安所である特殊慰安施設協会(RAA)に採用されて慰安婦になります。同僚には戦争未亡人もいましたがほとんどはもともとその道のプロの女ばかりで、米兵相手に慰安所は大賑わいです。小畑絹子はNO.1の売れっ子になりますが上司の課長の愛人になったおかげで福生の進駐軍クラブの歌手になり、これはちょっと楽な仕事でした。ここで空軍将校と知り合いめでたく結婚、ところがここから波乱万丈の転落人生に拍車がかかってゆくのです。 お約束通り夫は生後間もない娘を残して戦死、次はギャングの情婦になってヤク中になり、中毒を治療するために入院したら主治医に惚れられて結婚、慰安婦の過去がばれて離婚され自棄になって有楽町のガード下にたむろする街娼にまで落ちぶれる、映画の後半40分はもうジェット・コースター状態です。 小畑絹子は新東宝にはもったいないほどの美人なんですが、裏社会でぐれているときの演技と時折おとずれる平穏な生活の時の淑女ぶりとの落差があまりに大きくて、笑ってしまいました。この映画の呼び物は三原葉子がリンチされる『肉体の門』に出てくるようなシーンだと思いますが、別にヌードを見せるわけじゃないけどなかなか迫力がある肢体です。もっとびっくりしたのは荒川さつきが脳梅毒で文字通り狂死するシーンで、あのリアルな死にざまは子供が観たらトラウマになること間違いなしです。あと特筆すべきはあの古賀政男が音楽を担当していることで、劇中流れるギターのメロディーも古賀政男がつま弾いています。 製作年代はちょうど売春防止法が施行された頃で、こういったことは大きな社会問題だった時代だったことを考えると、新東宝らしい題材であることは確かです。正統派の監督が取り組めばとてつもなく重くなりそうなテーマなのに、新東宝らしくエロを強調したおかげで単なるジェット・コースター・メロドラマに仕上がったという感じでしょうか。 ラストで「もう二度と戦争をしてはいけない」という小畑絹子のセリフがあるんですが、とってつけた様な白々しさが漂い偽善の極みでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-11 21:30:03)
115.  第七の封印 《ネタバレ》 
世評高いこの映画を恥ずかしながらこの歳になって初めて観ましたが、何と言っても衝撃を受けたのが冒頭の死神の登場シーンでした。黒ずくめの装束に能面のように白い異相、そして空には雲が渦巻き背景は海で波が打ち寄せている。これほど完璧に硬質なショットは滅多に拝めるものじゃありません、もう身震いしちゃいました。観るまではこの映画は死神と騎士がチェスをしながら神学論争をするお話しだと勝手に想像してましたが、予想外にも2・3手指すたびにチェスは中断してしまい、その間は騎士と従者が旅芸人たちと居城を目指すロード・ムービーのような展開で有ります。この旅芸人夫婦たちのエピソードがけっこう面白くて、中でも座長はウディ・アレンに演じさせたらピッタリだろうなという可笑しさでした。そう言えばアレンは、『愛と死』で本作のラストの“死の舞踏”をきっちりパロって再現していますが、オリジナルの方だってシュールではあるがなんか笑いを誘うところもあり、改めてアレンのベルイマン解釈の深さに感心しました。 難解で暗い映画だという評判もありますが、私には思った以上にユーモアと生への希望が感じられました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-22 21:18:54)(良:1票)
116.  バイキング 《ネタバレ》 
カーク・ダグラスとトニー・カーチスが組んだ歴史もの映画なんですが、この顔触れとなるとどうしても『スパルカタス』を思い出してしまいます。まあ映画としての完成度は雲泥の差で比べるのは可哀そうなんですが、『スパルカタス』は監督キューブリック、脚本がドルトン・トランボで脇を固めるのがローレンス・オリビエとピーター・ユスチノフなのでそりゃしょうがないでしょ。 あまり役作りをしないダグラスにしちゃ珍しく片目がつぶれた迫力のあるメイク、けっこうバイキングらしさは出てましたね。でも彼だけがヒゲを生やしてないというのはちょっと不自然な感じが否めませんでした。ダグラスの父親のアーネスト・ボーグナインにレイプされたウェールズの王妃が生んだ子がトニー・カーチスという設定なんですけど、彼がなぜかバイキングの里に流れてくるという脚本はあまりにご都合主義というか適当すぎます。この映画を要約すると、カーチスとダグラスの腹違いの兄弟がジャネット・リーを奪い合うということになるのですが、この兄弟の葛藤という要素がこの映画には全然ないので盛り上がらないんでしょうね。ラストの城攻めやバイキング船のオールの上で見せる軽やかな身のこなしなど、ダグラスの身体能力には感心させられます。 思えばこの映画や『スパルカタス』の共演俳優やスタッフはすでにみな物故したのに、カーク・ダグラスだけはまだ存命というのは凄いことです(もうすぐ100歳ですよ!)。まさに彼こそ“ハリウッド・レジェンド”と呼ぶにふさわしいんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 5点(2013-09-22 23:01:44)(良:1票)
117.  亡霊怪猫屋敷 《ネタバレ》 
医師が結核を患う妻の療養のため、九州の片田舎へ引っ越してくる。地元では幽霊が出ると噂されている江戸時代に建てられた古い屋敷を改装して医院を開業するが、妻は不気味な老婆を何度も目撃し首を絞められて殺されかける始末。困った医師は近所の住職に相談したら、彼から江戸時代に屋敷でおきた恐ろしい事件の話を聞かされる… 事件が解決した6年後東京の大学病院に戻った医師の回想という形式で映画は進行するのですが、冒頭のこの大学病院の描写が薄気味悪くてゾッとします。停電で真っ暗な廊下を懐中電灯の灯りを頼りに歩いていると、死んだ患者が看護婦に担架で運ばれているところに遭遇するんですが、ただ通り過ぎるだけなのに実に怖い。しかもこれはストーリーには全然関係ないカットで、さすが中川信夫、恐怖のマエストロです。 現代編はモノクロ、住職の語る時代編はカラーという使い分けもなかなかいいアイデアだったと思います。化け猫女優と言えば入江たか子が有名ですが、この五月藤江の老婆化け猫と言うのもなかなか味があっていいです。入江化け猫と違ってお歳ですから派手なアクションは見せませんが、化け猫映画お約束の念力女中操縦はバッチリやってくれました。ただあの髪の毛が猫耳になるのはちょっと、でしたね(笑)。障子に映る影を上手に使った映像は、ドイツ表現主義の影響を感じさせてくれて見事でした。 中川信夫の怪談映画は、絶望の中にも希望の光が射して終わるのが特徴で、本作もそんな彼らしく、可愛いオチがありハッピーエンドでした。 いやー、やっぱり中川信夫の怪談映画はいいですね~ 
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-20 22:07:43)
118.  俺たちは天使じゃない(1955) 《ネタバレ》 
だってクリスマス映画ですもん、ゆる~くたっていいじゃないですか。でも緩いながらも、ボギー、ピーター・ユスチノフ、アルド・レイ、この三人の曲者を観てるだけでなんか幸せな気分になっちゃいます。三人の中でもいちばん良く喋るのがやはり我らがボギーで、彼は寡黙なヒーローよりもこういう肩の力を抜いたしゃべくり芝居の方が似合っている感じがします。 展開は原作の舞台をそんまんま映像化しちゃった様な撮り方なので視覚的な面白さはないですね。後半の殺人劇(?)も、英国のイーリング・コメディの様なブラックな笑いにつながってないのが残念と言えるでしょう。この分野のコメディは、やはり英国映画の方が上手いですね。でもラストは蛇のアドルフくんにも天使の輪っかがついたので、一点プラスさせていただきます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-13 23:01:55)
119.  ケイン号の叛乱 《ネタバレ》 
H・ボガートは、ヒーローよりもクイーグ艦長の様な器が小さい小心者の悪党を演らせた方がはるかに存在感あります。不安感が強くなると眼が泳いできて、無意識に手の中ででかいパチンコ玉みたいな金属球をカチカチこすり合わせる演技、実に上手いですよね。あの音が彼の精神状態を象徴する演出でもあります。 映画化に際して原作をどこまで改変したかは判りませんが、海軍が協力してくれたってことは結末あたりをかなりいじったんじゃないでしょうか。でもF・マクマレイやH・ファーラーは彼らの個性にあった巧みな使い方だと思います。ラスト、H・ファーラーがおいしいところをみんな持って行ったと思ったら、実は意外な人が登場して締めてくれるところなんか一種のどんでん返しでした。 けっこう有名な映画の割には地味な印象でしたが、観てみるとなかなか楽しめる良作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-13 23:00:53)
120.  戦場にかける橋 《ネタバレ》 
ニコルスンと斎藤、両大佐の意地を賭けた文明の衝突はなかなか見応えがあります。斎藤や日本軍を描く東洋趣味は、ちょっと変だがまあ許容範囲でしょう。ただ昔から自分が理解できないのは、「将校は何で労役させてはいけないの?兵士はOKなのに」というジュネーブ協定の捕虜規定なんです。もちろん十分な食料を与えずにこき使うなんてのは論外ですけどね。たぶんこれには階級社会だったヨーロッパのモラルが色濃く反映していると思います。だからあんなにボロボロになっても秩序正しい英国捕虜たちの姿は、鉄壁の階級社会である大英帝国の皮肉な隠喩でもあるわけです。 面白いことに、太平洋戦争では日本軍捕虜は収容所に入れられると、将校と兵士の絆が綺麗にバラバラになってしまったそうです。捕虜教育ということを全くしてなかった旧日本軍の体質も一因でしょうが、日本人の国民性を考えるには良い材料かもしれません。 だからラストでクリプトン軍医が呻く“Madness!”という言葉には、単純に戦争の狂気だけを指しているわけじゃないと私は感じます。
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-12 21:46:20)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS