121. 天国は待ってくれる(1943)
《ネタバレ》 女性遍歴の多いヘンリーを、天国と地獄のどちらへ送るべきか迷った閻魔大王が、直接本人に会って話を聞くという設定がすばらしい。愛の物語をこういう形で映画にするなど通常の感覚では思いもつかないことだと思う。 最初私は、このヘンリーという男がどうしても好きになれなかった。駆け落ちしてまで手に入れた美しきマーサをどうして裏切るのか。10年経ってマーサも愛想がつき実家へ、しかしそれでも再びマーサの元へ行き2度目の駆け落ち・・・・。愛すべきは彼の祖父の存在、「一度わしも駆け落ちしてみたかった」と粋な計らい、何ともほほえましい。 息子ジャックとペギーの一件からマーサとヘンリーの結婚25周年にかけ、ふたりの愛は次第に深まっていく。しかしそのとき踊るダンスが最後の別れになるとは・・・。 初めは「何だこの映画は」で見始めた私であったが、どんどんと映画に引き込まれていき、最後は私も閻魔様ではないが、彼をマーサや祖父の待つ天国へと送り届けたくなった。 噛めば噛むほど味の出てくる映画ではないかと今は思っている。 ところで閻魔大王の元に来た主人公と成人したヘンリーは同じ配役だったとは。まんまと騙されてしまった。 [DVD(字幕)] 8点(2011-06-07 04:25:22) |
122. 心の旅路
今回のDVD鑑賞で3回目だが、何も知らずに見たときの大感動(10点)や、忘れていた部分が鮮やかに蘇った2回目(8点)に較べると、今回はとても感動が薄かった。(6点) それどころか昔感動した同じシーンが、今回は何か作られすぎという感じが強くした。記憶喪失になったり、終盤で記憶を回復する過程がいかにも都合良すぎはしないだろうか。 しかし原作も名作だし、映画もそれ以上の名作だとは思う。細部まで覚えてしまった記憶がじゃまをして評価がむずかしいが、とりあえず3回の平均点に・・・。 今回ひとつだけ違ったことは、前回までグリア・ガーソンの陰にかくれてしまっていたスーザン・ピーターズが、健気に見えたこと。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-30 23:56:20) |
123. 荒野の決闘
やたらと銃をぶっ放し殺し合う映画は、私は大変嫌いだ。この映画もある程度西部開拓時代の情緒を描いているとはいえ、西部決闘劇で終わったのは非常に残念である。またこの映画では、ワイアット・アープもドク・ホリデイも正義の味方として描かれているが、実在の人物とはかけ離れすぎである。 またたとえ実在から離れた理想の人物を作ったとしても、血なまぐさい解決方法はどうだろうか。 「愛しのクレメンタイン」の主題歌とリンダ・ダーネルの美しさだけが印象に残っただけの映画だったと思う。 [DVD(字幕)] 4点(2011-05-29 09:57:29) |
124. 緑園の天使
まったくありそうもない話を、ここまで堂々と作り上げたクラレンス・ブラウンに脱帽! それと何と言ってもエリザベス・テイラー、前年の「家路」同年の「ジェーン・エア」と較べられないほどの演技の上達、馬好きの少女ヴェルヴェットを見事にまで演じている。恐るべき12歳である。これでは年歳が倍のミッキー・ルーニーも形無しであろう。 そのヴェルヴェットを陰になり日向になり支え続けたのが、母親ブラウン夫人。ドーバーを泳いで渡ったという自信に満ちた態度と存在感、それをアン・リヴェールが堂々と演じているのも光る。 [地上波(字幕)] 6点(2011-05-27 23:07:42) |
125. 仔鹿物語(1946)
原作は児童文学として佳作に入るのかもしれないが、自分たちに不都合なものは容赦なく撃ち殺すという米国の銃社会を肯定した作品に思えて好きになれない。 映画に映し出されている自然はとてもきれいだ。いや自然だけでなく、グレゴリー・ペックを初めとする家族三人も、開拓民にはまるで見えないほど垢抜けている。そういう美しさと開拓民の荒くれだったたくましさとがどうも溶け合わない。 また登場する子鹿も、我々現代人の目からすればペットととしか見えず、畑を荒らす獣とかけ離れすぎている。だからなぜ鹿を殺さねばならなかったのかが、頭では理解できても心情的に理解しにくくなるのでは・・・。 [DVD(字幕)] 4点(2011-05-27 07:18:21) |
126. 名犬ラッシー 家路
私の子どもの頃テレビで放送されていた「名犬ラッシー」のドラマ、映画版はエリザベス・テーラーの記念すべき映画デビューとなった。 我が家でも犬を飼っていたが、犬という動物はかわいがればかわいがるほど飼い主になつき忠犬となる。散歩にでかければ必ず着いてくるし、道に迷っても必ず家に戻ってくる、本当に賢い動物だ。 この映画でもコリー犬ラッシーの賢さは随所に見ることができる。少々できすぎという感もないが、心温まる物語である。 ところで蛇足だが、この映画の少年と少女は後に「クレオパトラ」という映画で再び共演することになるのだが、当時はどちらも名子役であった。 [地上波(字幕)] 6点(2011-05-26 18:57:46) |
127. わが谷は緑なりき
《ネタバレ》 イギリスの中でもウェールズは合唱が盛んで「歌の国」とも呼ばれるほどだ。飲料水の衛生面から、ビールが水の替わりをしたらしいが、その飲酒癖を直すために、教会で賛美歌合唱が始まったらしく、メソジスト運動が後押しをしていたようだ。 また炭坑の街、ストライキ、音楽と言えば、「ブラス」という映画が思い出され、ボクシングと言えば「リトルダンサー」が思い出されるのも妙なものである。 この映画はモーガン家の末っ子ヒューの回想として描かれているが、街の渓谷は、かつては深い緑で覆われていたのだろう。それが炭坑の歴史と共に色がくすんでしまったに違いない。しかし、年老いたヒュー・モーガンの眼には、懐かしき良き時代の深い緑色にいつまでも見えたことだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2011-04-23 13:01:25)(良:1票) |
128. らせん階段(1945)
《ネタバレ》 期待して見たのにがっかりだった。おもしろくもないし、怖くもない。第一犯行の動機がきわめて弱い。 スティーブは嵐の中をなぜ散歩したのか、パリー医師は言葉が出ない患者になぜ電話番号を教えたのかなどわからないことだらけ。ああ、なるほどと思わせる伏線もなし。 [DVD(字幕)] 4点(2011-04-18 20:53:25) |
129. オペラの怪人(1943)
《ネタバレ》 1925年のロン・チェイニー版と較べて見ればわかるが、これほどまで設定とストーリーを変更したのでは、まったく別の「オペラの怪人」であり不自然きわまる。 他の方も指摘されているように、エリックがクリスティーヌの父親、ラウルが警官であることはもちろんのこと、エリックがどうして怪人になったのか理解できそうもない。また、凶悪な怪人が出没しているのに、片方では平然と舞台が進んでいることなど・・・。 巨大シャンデリアをはじめカラーの映像がきれいで、舞台の中のオペラも素晴らしいのに残念である。 [DVD(字幕)] 3点(2011-04-12 18:01:21) |
130. 無防備都市
《ネタバレ》 これが、大女優イングリット・バーグマンをロッセリーニのもとへ走らせたという、噂高き映画なのか。たしかに第2次大戦下の映画としては、驚異的なものだったろう。 主人公ともいうべきアンナ・マニャーニが映画半ばにして射殺される。またレジスタンスのリーダーは体中をバーナーで焼かれて拷問死、不屈の神父は聖職者をも恐れぬゲシュタポによって処刑、何という非情であろうか、言葉もない。 ネオレアリズモとしての第一声をあげたとされるこの映画を見るべき価値は高い。第2次世界大戦末期のイタリア、そこにはこのような歴史のドラマがあったのかと思うと感慨深い。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-20 07:16:09) |
131. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 「お金は貯め込むものでなく、人の幸せに使うものだ」ということを、まざまざと教えてくれる映画だ。もう最後のシーンは涙で画面が見えなかった。 「お世話になった、こんな時だから、使ってくれ」とお金が集まってくる、「情けは人のためならず・・・」ということわざの意味がしみじみとわかる。 天使が見せてくれた「自分という人間がいなかったら・・・」というシチュエーション、立派な人物となった弟は、子どもの時、湖の事故で死んでいたのだ。そうか僕が、弟の命を救ったのだった・・・。 実は私も映画の中だるみで、初めの氷のシーンを忘れていた。弟の墓を見た時私も主人公と同じ衝撃を受けた。 自分が生まれていなかったら、多くの人が不幸になっていたかもしれない。しかしこの世の中ではまったく逆に、不幸にならなくてよかった人もいるはずだ。 しかしそれを、見た人すべてに良い方向に思わせるのが、フランク・キャプラの映画であり、私はそういう映画が大好きである。 蛇足ながら、この映画では悪役ポッターを演じるライオネル・バリモアだが、同じキャプラの映画「我が家の楽園」では、まったく逆の役割を演じている。その意味では主人公を演じるジェームズ・スチュワートよりも、素晴らしい俳優なのかもしれない。 素晴らしき哉、人生! 素晴らしき哉、キャプラ! 素晴らしき哉、映画! [地上波(字幕)] 9点(2011-03-14 23:10:19) |
132. 愛の調べ
《ネタバレ》 クラシック音楽の作曲家ロベルト・シューマンの生誕200年に合わせて、近年「クララ・シューマン/愛の協奏曲」という映画が作られました。もちろんその映画も見ましたが、こちらの方はあのキャサリン・ヘプバーンが妻であるピアニスト、クララを演じた映画です。 若きブラームス、同年代のリストらも登場し、シューマン夫妻の物語としては良くできていて、クラシックファンでなくても十分楽しめる映画だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-04 20:00:07) |
133. 三十四丁目の奇蹟(1947)
《ネタバレ》 昨年暮れに、女房から「何かクリスマスっぽい映画はない?」と聞かれ、どれにしようか迷ったあげく、この映画を二人で見た。正解であった。最後の方で、判事の子どもを証言させるなんて憎い。 この映画に出てくるサンタクロースは、本当にサンタさんらしい人だ。見ているだけで「子供たちのために、本当にご苦労様です」と言いたくなるくらい。 また「このこましゃくれた子は、何年か後にTonightを歌うんだよ」と言うと、妻はびっくりしていた。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-28 15:25:16) |
134. 若草物語(1949)
《ネタバレ》 映画館で見た最初の若草物語、この映画は原作と姉妹の順番が違う。3女がエミー、4女がベスとなっている。エミーがエリザベス・テーラー、ベスがマーガレット・オブライエンという配役だったからだろうか。 4人姉妹の仲の良さは1933年版以上だが、逆に性格の違いはさほどなくなっているように思う。ストーリーの展開はほぼ同じで、カラー映像になった分だけきれいだ。 ところで、ロッサノ・ブラッツィが歌った曲は、字幕ではベートーヴェンの「あこがれ」となっているが、チャイコフスキーの「ただ憧れを知る者だけが」の間違いである。 [映画館(字幕)] 7点(2011-02-27 22:43:24) |
135. 教授と美女
《ネタバレ》 初めて見たバーバラ・スタンウィック、映画に出るまではブロードウェイのダンサーだったらしく、この映画でも初めの方で「ドラム・ブギ」を歌い踊っている。登場シーンからして実に魅力的である。 さてこの映画はシンデレラと7人こびとたちならぬ、美女と8人の教授たちである。脚本もビリー・ワイルダー、おもしろいはずである。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-25 12:36:56) |
136. キューリー夫人
《ネタバレ》 キュリー夫人が、ラジウムの発見者でノーベル賞をもらった科学者として日本ではよく知られていますが、それ以上のことは知らない人が多いと思います。私もその一人でしたが、この映画を見て少しだけ垣間見ることができました。 自転車で新婚旅行をしたことや、夫を交通事故(馬車に轢かれる)で亡くしたことなど・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-19 15:03:06) |
137. ブルックリン横丁
アメリカって、お金持ちばかりじゃない、庭のある大きな家ばかりじゃない、ブルックリンに住む貧乏な人だっている。 原作者ベティ・スミスの自伝の長編小説を元に、エリア・カザンが映画にした最初に作品で、アイルランド移民一家の生活の様が巧みに描かれ、涙をさそう。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-30 09:45:40) |