1421. 紀子の食卓
《ネタバレ》 レンタル家族というモチーフは本作が公開された20年程前に清水有生のデビュー作『正しい御家族』にもあったので、目新しくは感じなかった。 むしろ、いまさら感のある題材だとも感じたが、切り口が面白く、なにかわけのわからない迫力を感じて目が離せない。 同監督の『自殺サークル』を先に見たが、それはまったく受けつけなかったのに、本作はなぜか面白かった。 家族のあり方やアイデンティティの喪失といったテーマに切り込んで、サスペンス性の高いストーリー展開。 哲学的でカオス状態、シュールで理解しにくいところもあるのが残念。 もう少しわかりやすく整理してくれていたら、唸るほどの傑作になっていたような気もする。 あえてモノローグを多用しているようだが、これだけ多いとさすがにうるさく感じられる。 出演者の好演が印象的で、特に吉高とつぐみは役柄にハマっていて迫真の演技。 吉高はこれがほぼ映画デビュー作といってもいい新人だったが、ナチュラルな演技と個性が光り、売れっ子になるのも十分納得の存在感。 [DVD(邦画)] 7点(2013-02-27 11:53:51) |
1422. 北斗の拳(1995)
原作を理解も愛してもいない者が名作を台無しにするのはもうやめてくれ。 それでも『デビルマン』よりはマシか。 ゴキブリとゲジゲジほどの差だけど。 [DVD(吹替)] 1点(2013-02-17 23:01:39)(笑:1票) |
1423. 街の灯(1931)
チャップリンの最高傑作で、チャップリンの才能がいっぱいに詰まった作品。 演技、間合い、ストーリー、すべてが計算尽くされ、オシャレに洗練されている。 セリフなしでこの表現力はまさに芸術品。 酔うと別人格になる金持ちとチャップリンのからみがおかしい。 そして、切なく余韻のあるラスト。 コミカルでハートウォーミングな名作で、後のコントやドラマ、映画にどれだけの影響を与えたかがうかがえる。 パイオニアとしての凄さも加味して満点で。 [DVD(字幕)] 10点(2013-02-16 19:51:06) |
1424. 歓びを歌にのせて
《ネタバレ》 本当の自分らしい生き方を見つける感動系のストーリー。 一流の音楽家の指導でどうしようもない素人合唱団が上達していく過程は、ベタだけれど楽しい。 キャラクターもバラエティに富み、偏狭で不自由な人物が特に小憎たらしくよく描けている。 ただ、傑作というにはちょっと何かが足りない感じ。 DV夫が拘置所で妻に涙を見せるのも、説得力が足りないので感情移入できない。 また、主人公がラストで病気で倒れるのも、あざとすぎたかも。 [DVD(吹替)] 7点(2013-02-14 21:44:05) |
1425. 恋の罪
《ネタバレ》 水野美紀は狂言回し的なポジションで、実質の主演は明らかに神楽坂恵。 体を売る裏の顔を持つ女に、すぐに東電OL殺人事件が思い浮かんだ。 やはりその事件がモチーフになっていたようだが、監督のオナニー臭が強くてわけがわからない。 イカれた登場人物の誰にも共感できず。 同監督の『冷たい熱帯魚』や『愛のむきだし』のほうが面白かった。 ただ、サスペンス性と迫力はあるので、最後まで退屈することはない。 [DVD(邦画)] 5点(2013-02-14 20:24:37) |
1426. キッド(1921)
サイレント映画でもこれほど伝わってくるのはさすがチャップリン。 ただ、ラストがあっけなくてストーリーとしては物足りなかった。 夢のシーンもあまりピンと来ず。 [地上波(字幕)] 6点(2013-02-14 01:44:12) |
1427. ポルノスター
ジャックナイフのイメージがあった頃の千原ジュニアがそのイメージ通りの役どころを演じているが、今みるとコントに見えて仕方がない。 それ以前に、ストーリーがわけわからず、「ヤクザ、いらん」と殺しまくる主人公の背景も描けてないので共感もできない。 ただささくれだったバイオレンスを見せられても、何にも残らなかった。 [DVD(邦画)] 1点(2013-02-11 20:34:36) |
1428. ライフ・イズ・ミラクル
《ネタバレ》 戦時中の設定なのに、悲惨さを前面に出さず、ほんわかとした雰囲気。 捕虜になった息子を取り戻すために、交換要因として捕まえた敵国の女。 ところが、いざ交換というときには男と女は愛し合うようになっていた。 息子が帰ってきても愛する女を手放すことになるという設定がよくできている。 息子との再会と女との別れが同時に訪れるシーンは見もの。 絶望して自殺しようとした男が、線路に立ち止まったロバに助けられるのがオシャレ。 何度か登場していた自殺志願のロバが、ラストに効いてくるとは。 序盤は退屈だが、中盤から終盤にかけて惹きつけられる。 ユーモアにあふれ、一風変わったオシャレなラブコメディ。 ハリウッド映画とはまた違った情緒がある。 [映画館(字幕)] 7点(2013-02-11 20:33:16) |
1429. BLUE ある女子校生たちの物語<OV>
山本直樹の同名漫画が原作だが、かなり忠実に映画化している。 新人の秦由圭がキュートでコケティッシュ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-02-11 00:05:12) |
1430. 遠い空の向こうに
《ネタバレ》 あきらめないでやり続ければ夢は叶う。 なんともベタな話で、展開もだいたい読めてしまう。 ホーマーに協力していた溶接工が死ぬのもバレバレの前フリでわかるし、頑固オヤジがようやく主人公を認めるラストシーンもありがち。 それでも、やっぱり心を動かされるものがあるのは、誰にも思い当たる経験があるからだろう。 親に対して何でわかってくれないのかという葛藤や、自分は他の人とは違う何かができるんじゃないかという思いは、思春期に必ず通りすぎるもの。 登場人物の気持ちがわかりやすく、感情移入しやすい構成が支持される秘訣か。 実話に基づいているというのも夢を感じさせる。 [ビデオ(吹替)] 8点(2013-02-10 21:00:11) |
1431. 或る夜の出来事
《ネタバレ》 『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ監督ということで期待して見た。 毛布一枚をジェリコの壁に見立てたエピソードがオシャレに効いている。 ラッパの音でジェリコの壁が崩れるラストもお見事。 モノクロの古い映画なのに、今見てもおもしろい。 強く反発しながら意地っ張りな二人が最後は結ばれるという極めてオーソドックスなパターン。 今でもこれに倣ったような映画やドラマは数多いので、ラブコメの元祖のような存在。 同じ古典の名作ラブストーリーとして『ローマの休日』が思い浮かぶ。 主人公が新聞記者で、ヒロインが身分違い(王女と大金持ちの娘)というのも共通点。 ただ、ヒロインがまったく違うキャラで、こちらはわがままなジャジャ馬娘。 容姿もオードリー・ヘプバーンとは違って全然かわいいとは思えなくて…。 それでもだんだんそれなりに見えてくるのが不思議。 なんでも金で解決しようとする父親もどうかと思っていたが、娘を思いやる気持ちにはほだされる。 父親もそうだが、嫌な編集長も終盤では粋なところ見せる。 映画も粋そのもので、ユーモアとウィットに富んでいる。 ヒッチハイクの場面もそうで、ここはとても好きなシーン。 クラーク・ゲーブルってレット・バトラーのイメージが強すぎたけど、こういうコミカルな演技もいい。 唯一気の毒すぎるのはヒロインに振り回されて結婚式から逃げ出される花婿かと思えば、金ですんなり解決したことから本当の愛情はなかったことがうかがえる。 すべて丸く収まった感じは予定調和でできすぎともいえるが、後味がよくて温かい気持ちになれる。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-10 14:46:51)(良:1票) |
1432. ヴィデオドローム
クローネンバーグ監督とは『クラッシュ』でも感じたけどどうも相性が悪そう。 歪んだ倒錯的なものを感じて、べたつくような気持ち悪さが受け付けない。 [DVD(字幕)] 3点(2013-02-10 08:47:15) |
1433. バンド・オブ・ブラザース<TVM>
戦争ものとしては今まで見たもの中では最もリアルに感じる。 邦画でも戦争の悲惨さを訴える作品は多いが、どこか微妙な距離を感じていた。 ところが、本作は等身大の痛み、苦悩が伝わってくる。 群像劇で登場人物が多く、しかもほとんど男で全員軍服を着た白人となると、なかなか見分けがつかなくて混同した。 誰が誰だっけ?とわけがわからなくなってくるが、それも見直せばはっきりとしてくる。 戦争という極限状態でこそ現われる人間性が面白くもあり恐ろしくもある。 [DVD(吹替)] 9点(2013-02-08 21:43:48) |
1434. チェンジリング(2008)
《ネタバレ》 腐った警察の隠蔽体質の恐ろしさ。 その警察とグルになった精神病院での追い込み方が、恐ろしさに輪をかける。 有能な弁護士に、責任逃れしようと嘘の証言をする警部がやりこめられる様は溜飲が下がる。 アンジェリーナ・ジョリーもいいし、犯人役も演技がうまい。 偽のウォルターが現われた部分に関してはフィクションだと思っていた。 よくこんなご都合主義のありえないストーリーをと呆れたが、これも実話だったことに驚き。 事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。 実話だという裏づけがなければ、観客を舐めてるのかと酷評が巻き起こっても不思議じゃないくらい。 ラストの逃げ出した子どもが見つかったのはフィクションだが、そこに救いを作ったことはお見事。 どうしようもない事件の陰鬱な印象を打ち消し、作品として完成度が上がった。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-07 21:05:38)(良:1票) |
1435. 発狂する唇
《ネタバレ》 ジャンルでいうなら支離滅裂もの。 序盤はよくあるホラー展開で、少女連続殺人事件の真相を追っていく。 霊能力者の霊的逆探知のあたりで少しおかしいなと思ったが、「怪しい者じゃない」と阿部寛が現われてから一気に怪しくなる。 FBI捜査官(阿部寛)と金髪アメリカ人の設定のルーシー(栗林知美)コンビの胡散臭さが半端ない。 主人公の三輪ひとみが昭和の深夜テレビで流れていた歌謡曲さながら場末感たっぷりに歌いだし、ハチャメチャ度はエスカレート。 終盤には、主人公一家が実は犯行グループだったことが判明し、遺族との殺し合いでカンフーを使った大活劇へと展開。 1999年制作らしくオチは恐怖の大王降臨で、もうわけがわからないカオス状態に口あんぐり。 興奮するほどのエロではなく、気持ち悪いほどのグロではなく、それほど怖くもない。 突っ込みどころが満載のおバカ映画で、それを笑い飛ばせる人だけが楽しめるエログロナンセンスコメディ。 [DVD(邦画)] 2点(2013-02-07 21:03:11)(良:1票) |
1436. 真木栗ノ穴
前半までは面白くなりそうな雰囲気があったのに、終盤まとまりがつかなくなった感じでガッカリ。 怪異譚として完成度がそれほど高くなく、エピソードのリンクが弱くて話が収束しなかったような印象。 [DVD(邦画)] 3点(2013-02-06 22:06:42) |
1437. リング(1995)<TVM>
《ネタバレ》 映画版より前に放送されたテレビ版。 映画版で松嶋菜々子が演じた記者役を高橋克典がやっている。 高山は原田芳雄で、自然体の演技がいい。 テレビ版には松嶋菜々子のような華はないし、貞子が井戸から這い上がりテレビから出てくる有名なシーンもない。 そうした意味では地味ともいえるが、こちらのほうが原作に忠実で、貞子がどういう人物だったのかしっかり描けている。 貞子は両性具有の半陰陽者で、父とは近親相姦というドロドロした設定。 貞子役の三浦綺音が父娘相姦の濡れ場も演じているなど、貞子に関する描写が多くなっている。 怖くはないけど、映画版より生々しさや禍々しさにおいては良かった気がする。 [インターネット(字幕)] 6点(2013-02-06 22:05:10) |
1438. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 若い頃に最初観たときは、ヌルい映画だなという印象で、自分の中での評価は低かった。 世間の評価が自分の印象よりずいぶん高かったので、数年後にもう一度観てみると、最初観たときより面白かった。 ただ、内容はほとんど忘れていたので、その時の自分にとってはそれほど心を動かされるものがなかったということ。 ところが、最近久しぶりに見直してみると、なぜか心に染みた。 映画は観る時期を選ぶということか。 映画しか娯楽がなかった時代の映画館内の熱気が伝わってくるよう。 テレビや他の娯楽が増えて、街のみんなが一箇所で盛り上がるようなことはなくなったが、そういう不便な時代のほうが本当は楽しいのかもしれない。 想い出の映画館が取り壊される様子には、センチメンタリズムとノスタルジーがかきたてられる。 トトに対するアルフレードと母の深い愛情には胸を打たれる。 年を経るほどに味わい深くなる類の映画のようで、またいつか観直すことになるだろう。 [ビデオ(吹替)] 9点(2013-02-05 20:35:12)(良:1票) |
1439. 蒲田行進曲
松坂慶子の全盛期で、そのいい女っぷりにグッとくる。 作品においてヒロインの占める割合は当然ながら大きい。 銀四郎とヤスに愛されるに足る魅力がないと成立しない話だが、松坂慶子には十分その魅力があった。 銀四郎ほど身勝手な男は虫唾が走るが、そんな男に惹かれる小夏にもじれったい思い。 舞台のようなセリフ回しとハイテンションが、あのラストにつながってなんとなくスッキリ。 ちょっと臭いところもあるけれど、作品全体に勢いがあってパワーで押し切られた感じ。 [ビデオ(邦画)] 8点(2013-02-05 20:04:53) |
1440. ふくろう
《ネタバレ》 山奥にある開拓村にただ一つ残っている家が舞台のブラックコメディ風のサスペンス。 やってくる男を毒殺して金を奪うパターンが何度も繰り返される。 少ししつこくて中弛みになっているので、2時間のものを30分ほど短く濃縮しても良さそう。 貧乏を極めた母子が生きるために何の罪の意識もなく淡々と人を殺していく。 そのあっけらかんとした逞しさは、どこか潔く清々しささえ感じるほど。 終盤、急展開でのシリアスな修羅場には引きつけられる。 大竹しのぶはこういう悪女を演じさせたらすごい。 伊藤歩もスレンダーな全裸を晒して好演。 ワンシチュエーションなので、映画より舞台のほうが向いてそう。 [DVD(邦画)] 5点(2013-02-04 21:51:26) |