Menu
 > レビュワー
 > かたゆき さんの口コミ一覧
かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1882
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314
投稿日付順1234567891011121314
変更日付順1234567891011121314
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 
素晴らしい!!何も期待せずに観たのだけど、これが無駄なシーンが一切なく、そればかりか瑞々しいセンスが全編にわたって溢れかえってました!!まあ、おっさんフィルターを通した少女趣味映画と言ってしまえばそれまでなんだけど、ここまで「少女とはこうであってほしい」というおっさんの妄想をこんなにも美しく精緻に造り込まれたらもはや感嘆するしかないですわ。気品があってキュートでかわいくてそれでいて静謐で繊細で、なおかつ少々エロティック…。もう最後までハート鷲摑みでした。主人公花とアリスが好きになる男の子も、いかにも恋に恋する少女が夢見そうなミステリアスな美少年像(性欲の臭い皆無!笑)なのもグッド!ハートのエースやおにぎりサンド(牛乳と味噌汁が両方欲しくなる!笑)、深刻なシーンに挟まれる鉄腕アトムの呑気な表情やオチ研の先輩の落語、妙に飄々としたお父さん、ナメクジの夢、もう好きなシーンを数え上げたらキリがないほどいっぱいあり過ぎてヤバいっす。そして最後にばっちりと決まるバレエシーンの息を吞むほどの美しさ…。文句なしの傑作と呼んでいい作品と久々に出会うことが出来ました。もう一度言います!少女って素晴らしい!!
[DVD(字幕)] 10点(2017-04-30 23:57:36)
2.  アメリ 《ネタバレ》 
大人に成り切れない、どこかに少女のように純粋な心とそして子供特有のある種の残酷な毒を残したまま成長してしまったアメリ。自分が大好きなものは心の底から応援するけれど、許せないものは徹底的に排除しようとする。そんな彼女の唯一の心の支えは、豊かな想像力が織り成す空想の世界――。まぁ簡単に言うとよくいるイタい女性なんだけど、その人物造形が奇跡のように魅力的!!フランスのお洒落な街並みで繰り広げられる、自分の大好きな人を今よりほんの少しだけ幸せにしてあげようというアメリの数々の〝悪戯〟も、その動機があまりにも純粋な心から発せられているから、素直に応援したくなってくる。かなり独り善がりだけど、ね(笑)。そんな彼女を客観視するような、早口で捲くし立てるナレーションもグット。そして現実と極力関わらないように生きてきた彼女自身の不器用な恋の行方……。ふわふわとした荒唐無稽なお話が、ジュネ監督のセンス溢れる演出と映像美によって、奇跡のような美しい世界へと昇華されてしまっている。素晴らしいとしか言いようがない。日々の生活に疲れたとき、人間関係に悩んだときなどに、子供の頃のおもちゃ箱をそっと覗き込むように、何度も観返したい映画の一つ。
[DVD(字幕)] 10点(2012-08-12 17:26:38)
3.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
内戦に揺れる1940年代のスペイン。社会を支配する苛烈で不条理な男たちの暴力に押し潰されようとしている一人の無垢な少女、オフェリア。それでも彼女には、誰にも負けない想像力という素晴らしい武器があった。迷宮の奥深くで牧神パンと出会い、森の枯れかけた巨木の根元で彼女は醜い大蛙と対峙する。そして、魔法のチョークで描かれた扉の向こうでは、世にもグロテスクな怪物と悪夢のような試練を経る。目的は、永遠の世界でお姫様となること。だが、オフェリアを取り巻く現実はあくまでも残酷だった……。この妄想とも現実ともつかない、モダンでグロテスクな美しさに満ちた世界は、観れば観るほど、まるで何処までも続く深い迷宮へと迷い込むような、そんな気持ちに誘ってくれる。男たちがつぐむ歴史の傲慢さに対抗する言葉として、女性は物語という言葉を編み出してきただろう。そんな普遍的な事実がここにはあまりにも美しく、そして退廃的に描かれている。素晴らしいとしか言いようがない。惜しむらくは、第三の試練。ここも素晴らしい幻想世界で描かれていれば、完璧な大傑作映画となり得たのに。でもそんな不完全さも含めて、僕はこの映画が大好きだ。最後、醜い暴力にその儚い命をも奪われながらも、美しい想像力だけは奪われなかったオフェリアのその切ない笑顔がいつまでも忘れられない。
[DVD(字幕)] 10点(2012-06-03 22:30:44)
4.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 
近未来。最新の脳外科手術と催眠療法によって、失恋の辛い記憶を綺麗さっぱり消してくれるベンチャー企業が現れる。心の傷を癒してほしい人々がそのサービスに殺到するなか、酷い別れ方をした元カノとの思い出を引きずる主人公もその一人。こんなにも辛い思いをするくらいなら初めから付き合わなければよかった――。そんな思いから、彼は元カノとの出会いから初デート、告白の日や初めてのお泊り、諍いが絶えなくなった倦怠期、そして辛く切ない別れの日までをきれいさっぱり忘れてしまうことを決意する。そうして迎えた施術当日。物語は、そこから彼の次第に消されてゆく記憶の中を遡るように展開してゆく。消されて当然と思える酷い記憶が続く中、やがて彼は忘れていた彼女との素晴らしい思い出を発見するのだった。「待ってくれ!この記憶だけは残しておいてほしい!」。全身麻酔を掛けられた彼の訴えなど当然、スタッフに伝わるはずもない。どんどんとデリートされてゆく記憶の迷路の中で、彼と恋人との素敵な思い出を守るための冒険が始まる……。こんな突拍子もない設定を思いついただけでも凄いと思うのに、この映画はその設定を最大限活かし、とてもシュールで前衛的で、そしてとても切なく美しい映画に仕上がっている。素晴らしいとしか言いようがない。良い思い出だろうと悪い思い出だろうと、今の自分を形作るものはやっぱり積み重ねてきた記憶なんだ。というありがちなテーマから始まって、やがて世界を認識するのは自分の自意識であり自らの認識さえ変われば、この世界自体も変わってしまうという深淵な主題さえ捉えている。まさに「われ思うゆえにわれあり」。なんと言う才能。でも、ちゃんと恋愛映画としての軸は1ミリもぶれてない。これは失恋を経験した全ての人に捧げられた、才気溢れるラブストーリーの傑作だ。ちなみに自分、歴代の元カノの写真は全部残している。だってすべて素晴らしい思い出だから(笑)。
[DVD(字幕)] 10点(2012-06-02 22:01:01)
5.  嫌われ松子の一生 《ネタバレ》 
原作も、小説の神様が降臨してしまったかのような傑作だったけど、この映画もそれにまったく見劣りすることない傑作だった。そもそも山田宗樹の原作って、「夫も子供たちも送り出して掃除も洗濯も済ませた昼下がり、安心安全な私の家のリビングで美味しいお紅茶でも飲みながら、ロクでもない男に騙されてひたすら堕ちていく女の人生を追体験してみたいわぁ」という、多くの日本の主婦たちの願望を叶えるために書き始めたのだろうお話。けど、狙ったのか筆がどんどん滑ってしまったのか、あまりにもその堕ち方が凄まじくて、そんな主婦たちの健全な願望を返り討ちにした挙句、多くの人の心をとらえて離さない傑作に仕上がっていた。中島哲也監督はそんな原作の持ち味をものの見事に捉えて、ファンキーでトリッキーで猥雑でしかもとてつもなくエネルギッシュな映像で原作に負けず劣らず凄い作品に仕上げてしまった。素晴らしい。こんな狂った世界で、ちっぽけで愚かかもしれないけれど、松子は必死に足掻きながら幸せになろうとした。そんな彼女の強さも弱さもすべてひっくるめた圧倒的な情熱が深く胸を打つ。
[DVD(字幕)] 10点(2012-05-17 02:14:11)
6.  ダンサー・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
この映画がどうしてこんなにも人の心を掻き乱し、賛否両論分かれるのか。何度も何度も繰り返し観て(よく自殺しなかったな笑)なんとか自分なりに結論を得ました。この映画は踏み越えてしまっているんです。つまり、主人公セルマは頭のおかしい気の狂ってしまった人間なんです。だから、間違った選択を繰り返し、誰の助けも借りず、最後は息子のためにと幸せに死んでいく。この主人公に「やっぱりお前は馬鹿だ、不幸だ」と誰が言える権利があるでしょうか。そう、この映画のテーマはそこです。人間の幸せは主観的なものであるなら、自分を幸せだと強固に信じる人間を誰も非難できない。つまり、もしかしたら全ての人間の幸せに意味などないのでは、ということです。とても恐ろしい踏み越えてしまったテーマです。この映画が、敢えてその恐ろしい問いに挑戦する武器として、想像力の美しさを選んだことに敬服せざるを得ません。ただ、勝利できたかどうかは観る人の判断ですが。そして、この映画を徹底的に非難するレビューにこそ、僕は感動を覚えます。そこには、全ての人間の幸せには意味があると信じようとする力強さを感じるからです。それこそが人間の想像力の持つ美しさだと思います。敢えて踏み越えてまで、この映画を撮った監督に改めて敬意を表したい。
[DVD(字幕)] 10点(2012-05-14 02:27:21)(良:2票)
7.  チャーリーとチョコレート工場 《ネタバレ》 
過去の辛い出来事が原因で人を信じることが出来なくなってしまった天才チョコ職人、ウィリー・ウォンカ。彼の造りあげたカラフルでポップでユーモラスだけど、その裏側に恐ろしい狂気を感じさせる工場で日々作られるのは世界的な人気を誇るウィリー・ウォンカのチョコレートだ。そんな魅惑的なチョコを作る工場の作業員たちは、無表情でみな同じ顔をした小人族であるウンパ・ルンパ。彼らが用意した〝特別賞〟を求めてある日、一癖も二癖もある5組の親子たちがこの謎めいた工場へと足を踏み入れる。だが、賞品を手にすることが出来るのは1組のみ。脱落した親子には、どこか歪んだモラルによって次々と酷い制裁が加えられていく……。ともすると、とても陰鬱な映画になりそうなのに、天才ティム・バートンにかかると、まるでウィリー・ウォンカの魔法のチョコのように、どこまでも明るく楽しいメルヘンに仕上がってしまうのだから凄い。この映画の優れている点は、あくまで子供の目から見た鋭い社会批判となっているところだろう。通常大人が子供に聞かせるおとぎ話には、多くの場合、子供への教訓が含まれている。例えば、赤ずきんちゃんには「子供だけで森に行くと狼をはじめとする危険がいっぱいなので絶対にダメだぞ」。アリとキリギリスには「今が楽だからと仕事を怠けていると後でしっぺ返しを食らうぞ」。浦島太郎には「酒や女にかまけていると気づいたときにはもう老人で一人ぼっちになるぞ」……。でも、大人社会にはどうしても子供に説明できないような理不尽や不条理がまかり通っている。豚のように意地汚い子供は砕いて食べてしまうよ、いつも喧嘩ばかりの子供は大きなブルーベリーにするぞ、我が儘ばかりの子供はゴミ捨て場行き、屁理屈ばかりの子供はちっさくして指チョンだ。そうやって子供に教訓ばかり垂れるあなたたち大人はそんなに立派なのですか。良い子にしていれば僕たちは立派な大人になれるのですか。でも結局、あなたたち大人も僕たち子供と大して変わらないんじゃないですか。だってこの世界には今でも戦争や犯罪や貧困がまかり通っているじゃん――。子供たちからのそんな痛烈な社会批判が最後まで一貫しているからこそ、この作品は傑作となりえている。一時期低迷していたティム・バートンが見事なまでの復活を遂げた歴史的名作と言っていい。盟友ジョニー・デップの類稀なる怪演も本作の成功に多大な貢献を果たしてることも忘れてはならない。
[DVD(字幕)] 10点(2012-05-01 12:36:16)
8.  ラブ・アクチュアリー 《ネタバレ》 
普段ほとんど恋愛映画は観ないのだけど、なんか色んな所で高評価を聞くので今さらながら今回鑑賞してみました。いやー、ものの見事にやられちゃいました。べたな内容ながら完成度は無茶苦茶高いですわ、これ。魅力的なキャラクターたちが織りなす、物語性豊かなエピソードの数々に最後までハート鷲摑み!音楽も素晴らしいし、構成も見事だし、適度に散りばめられたユーモアもセンス抜群だし、文句なしに面白かったです。クリスマスまでもうすぐのこの時期に特にお薦めの作品ではないでしょうか。うん、確かに恋したくなりますね。年甲斐もなく(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2017-11-03 23:31:51)
9.  永遠のこどもたち 《ネタバレ》 
子供時代を過ごした孤児院に家族と共に移り住み、自分も素敵な孤児院を開設しようとするラウラ。しかし引っ越してから、自分の息子・シモンが目に見えない子供たちと遊ぶようになり、次第に不可思議な出来事がこの洋館で起こるようになる。戸惑うラウラにさらに追い討ちをかけるようにシモンが謎の失踪を遂げ、そして彼女の現実が徐々に狂い始めてゆく。もう、いかにもギレルモ・デル・トロといった、現実と妄想と幻想が絶妙のバランスで絡み合った重厚なダーク・ファンタジー作品。「パンズ・ラビリンス」をこよなく愛する自分としては、あの傑作映画の母親版といった趣きのこの作品も、見事に僕の心を射抜いてくれました。いかにも暗闇に何かが潜んでいそうな巨大な洋館で繰り広げられる、過去に起こった悲劇的な出来事と現代の親子の確執が複雑に交錯する暗鬱なストーリー。ラウラが人智を越えた存在と宝探しゲームやだるまさんが転んだをするところなんか、心の底からゾクゾクさせられてしまいました。そして、最後に明かされる自分の息子の悲劇的な真実……。相変わらず、徹底的に救いがないラストなのに、想像力という人間の持つもっとも強い力のおかげで、微かだけど、今にも消え入りそうなのだけど、非情な現実に決して負けない、美しい希望を感じることが出来ました。ギレルモ・デル・トロが映画を作り続ける理由って、恐らくそんな人間の想像力の美しさを信じたいからなのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2013-09-14 22:43:12)(良:1票)
10.  レクイエム・フォー・ドリーム 《ネタバレ》 
『ブラックスワン』で僕の心をすっかり鷲掴みにした監督の初期の代表作。ずっと観たかったのだけど、何故か近所のビデオ屋さんには全然なくて、この前、遠出した先のツタヤでようやく発見してこのたび無事に鑑賞。って、なにこれ!かなり凄い映画だったんですけど。いままで観てこなかったことを激しく後悔。ひたすら麻薬によって破滅へと向かっていく4人の姿を、まるで重厚なカルテットのように疾走感溢れる映像で見せきる手腕は本当に鳥肌がたった。特に、畳み掛けるように展開する後半の怒涛の展開は圧巻の一言。そして、孤独を埋めるために覚醒剤に手を出したあのお母さんの哀れな末路が観ていて本当に切ない。ここまで人間の弱さや人生の負の側面を徹底的に描き出すこの情熱、やっぱりダーレン・アロノフスキーって(人間的には問題があるかもしれないけれど笑)天才だ!
[DVD(字幕)] 9点(2013-05-15 18:28:03)
11.  シカゴ(2002) 《ネタバレ》 
もうゴージャスでエネルギッシュで猥雑で胡散臭くて下品で、そして最高に面白いミュージカル映画の傑作。もともとミュージカルがあんまり好きじゃないのだけど、これだけは別格です。もう女の武器をこれでもかと最大限に駆使して成り上がっていく二人の女の姿はそれだけで魅力的!下品な弁護士を演じたリチャード・ギアもそれっぽくて最高だ。最後まで、徹底的にアンモラルを貫いた、その製作姿勢にも素直に拍手!理屈抜きの生きるエネルギーに満ち溢れていて、本当に大好きな作品。
[DVD(字幕)] 9点(2013-05-13 18:25:14)
12.  ドッグヴィル 《ネタバレ》 
アメリカ、ロッキー山脈の寂れた高山地帯にある小さな村、ドッグヴィル。15人の住民と7人の子供たちが暮らすこの質素な村にある日、ギャングに追われた美しい女性グレースが逃げ込んでくる。村のリーダーを自認する倫理観の強い青年トムは、行き場がないという彼女を匿い、しばらく村に滞在してもいいと提案するのだった。次の日、村の集会場でトムは、集まった住民たちに多数決をとる。どこの馬の骨か分からない女に当初は難色を示した住民たちも渋々トムの提案を受け入れ、満場一致でグレースを受け入れることに――。そうして始まったグレースと村人たちの共同生活。戸惑いつつも次第にお互いのいいところを見つけ、少しずつ心を許してゆく彼ら。和気藹々と平和的に暮らしていた住民たちだったが、ちょっとした些細な出来事をきっかけにそんな平和な日々が歪み始める。村人たちは自らも自覚していないような悪意の目をグレースに向け始め、やがて村は悪夢のような世界へと変貌を遂げるのだった……。数々の問題作を撮り続けるデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーがニコール・キッドマンをはじめとする実力派の役者陣をそろえて描き出すそんな地獄のような寓話劇。体育館のような閉鎖的な空間に白線を引いただけのセットに役者たちを閉じ込めて描き出された3時間を超える物語は、その長さを全く感じさせない濃密なものでした。とにかく脚本が素晴らしい。最初はみな純朴で優しくて善良な人のように見える人たちが、後半、その心の奥底に隠していただろう嫉妬や憎しみ、欲望といった醜い悪意を弱い立場のグレースに向け始める。この展開に少しも無理がなく、人間なんてこんなもの、そればかりか同じような立場に立たされたら自分すらこうなってしまうかもと思わせるところが見事としか言いようがない。トリアーさんはやはり人間が嫌いなんでしょうね(笑)。ニコール・キッドマン演じるグレースが村の人たちにいいように利用され、男たちは暇さえあればレイプするようになり、女たちは嫉妬心から蔑みの対象にする。大人たちに感化された子供たちまでグレースを物のように扱い始める。逃げ出そうとしたグレースを連れ戻した住民たちは、2度と逃亡しないように首輪を嵌め村に縛り付ける。もはやグレースは犬と変わらない。それを誰もが正しいことをしていると信じて疑わないところが怖い。まさに、地獄。そんな悪夢のような世界を唐突に終わらせるラストのカタストロフ。「どうだい、スカッとしただろう。クソみたいな人間は殺して当然なんて思っている君たちも結局、他人から見ればこのドッグヴィルの住民と大して変わらないんだぜ」とまるで画面の裏側でほくそ笑んでいるような監督の悪意……。人間の愚かさをこれでもかと見せつけてくるラース・フォン・トリアーの傑作でした。
[DVD(字幕)] 9点(2013-05-03 15:33:06)
13.  トーク・トゥ・ハー 《ネタバレ》 
まさに変態純愛映画というジャンルを確立した(?)、ワンアンドオンリーな快作。事故により、意識不明の植物人間と化してしまった若く美しい女性を献身的に介護する孤独な看護師の男が、彼女を愛するがあまり一線を越えてしまう……。女性の人間性を徹底的に排除し、ただひたすら女の肉体のみを愛でるという、この川端康成晩年の傑作「眠れる美女」をも髣髴とさせるこの究極のフェティッシュな愛は、恐らく男にしか理解できない世界(いや理解できる男も少ないかもね)。そんな淫靡な世界を妖艶に美しく描き出している。そして、劇中劇として展開される、これまたまさに究極の変態サイレント映画も強烈だわ~。これは円熟期を迎えたころの、スペインが生んだ天才変態映画作家アルモドバルが創出した傑作だろう。もし、日本が世界に誇る変態大作家・谷崎潤一郎が生きていてこの映画を観たとしたら、是非ともその感想が聞いてみたい(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-26 15:33:39)(良:2票)
14.  マルホランド・ドライブ 《ネタバレ》 
ずっと自分とは合わないと思っていたデビット・リンチ監督。でも、この作品だけはかなり嵌まった。それまで雰囲気ごり押しの思わせ振り映像だと思っていたものが、この作品では見事に全てが意味を得ている。当然、1回観終わったときは意味も分からず「なんだか知らんが凄いものを観たかも」と興奮で胸が震えたことを今でも覚えている。そして2回目いろいろと予備知識を仕入れて観れば、ナオミ・ワッツの体当たりの熱演も相俟って、とても切ない少女の願望と挫折が難解な映像とストーリーの間に垣間見えてまた胸が打ち震えた。そして、いつかもし3回目観たとき、今度はどんな発見をさせてくれるのだろうと思えるリンチ監督の奇跡の傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-21 18:57:29)
15.  モンスターズ・インク 《ネタバレ》 
この作品、何度観てもワクワクさせられてしまう。特に、この設定とストーリーを考え付いたスタッフに拍手。子供たちの悲鳴を集めるためにモンスターたちが大企業にサラリーマンしてるって!いったいどうやったらそんな発想が湧いてくるんだ!?(笑)それだけでも素晴らしいのに、見てるだけで心が浮き浮きしてくるようなユーモラスなモンスターたちの造形の素晴らしさといったらない。一つ目お化けのマイクがコンタクトを着けていたり、モンスターたちがアフターファイブにお寿司屋さんで食事したり、そんな細かい演出もツボ。そして後半にかけて一気に盛り上がり、最後はちゃんとほろりとさせられるストーリーも最高!子供のころに観たかったなー。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-03 12:43:25)(良:1票)
16.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
この映画、確かに中身がない。史実を基にしたと言いながら、はなからリアリティとは無縁のストーリー展開に、あり得ないような漫画みたいなアクションシーンの数々(アメコミが原作だから当然かもだが)。それでも、この超が幾つも付くぐらいのスーパーマッチョな男たちが、その煮え滾るような男汁を無尽蔵に周囲に撒き散らしながら、スクリーン狭しと暴れまくる姿を暑苦しいまでに映像化してみせた、監督のその中2病的情熱に意味を見出さずにはいられない。やっぱり、どんなくだらないことでも、信念を持ってとことんまで極めれば、もしかしたら素晴らしいものが仕上がるかもしれないという、奇跡のようなお馬鹿映画の傑作だろう、これは。 普通の映画監督が撮っていれば、目も当てられないくらい酷いものになっていたであろう。ザック・スナイダー、大した奴だ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-06 19:27:25)
17.  コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 
ティム・バートンが大好きな自分としては、この映画かなりツボです。夢見がちな少女が迷い込む、悪夢のようなそれでいてどこか懐かしいメルヘン描写が素晴らしい。実際、これ子供が観たらトラウマになりそうな描写がてんこ盛りだけど、それでも目がボタンになった両親の、現実とは違ってすごく優しいのになぜかぞくぞくするような不気味さがあるところなど、良い意味で僕の感覚を刺激してくれました。またいつか観てみたい。あと、太った双子のおばさんのブサ可愛いところもなかなか魅力的。
[DVD(字幕)] 9点(2012-08-27 20:25:10)
18.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 
世界の片隅で皆から忘れ去られたようにひっそりと存在する小さな国・シレラレオネ。そこに住む人間以外、ほとんど誰も知らないまま、ダイアモンドを巡る内戦が激化していた。ディカプリオ演じる主人公のアーチャーは、とある希少なダイアモンドを求めて子供をさらわれた黒人と共に内戦下の危険な世界を疾走していく。とても重たい社会的テーマを扱いながら、エンタメ映画として充分な面白さをも兼ね備えた稀有な作品。リアリティ溢れる世界に展開される、徐々に疾走感を増していくストーリー、ダイアモンドを巡る国際的な血生臭い真実。「ダイアで済んで良かった。石油だともっと人が死んでいた」という老人の言葉が重い。俳優としてどんどんと実績を積み、確実にキャリアアップしていくディカプリオの男臭い演技も見応え充分。私たちが知らない間にいったい世界で何が起こっているのかを知らせてくれる、良質のエンタメ映画だ。余談だけど、映画館で一緒に観た人の一人がたまたま結婚を控えた若い女性だった。もちろん、彼女の左手の薬指には彼氏から貰った婚約指輪が…。見事に立ち直れないくらいへこんでました(笑)。ごめんね、こんな内容だとは知らなかったんだ。
[映画館(字幕)] 9点(2012-05-20 21:14:23)(良:1票)
19.  ヒルズ・ハブ・アイズ 《ネタバレ》 
ここはかつて政府による極秘の核実験が行われ、放射能によって汚染されてしまったアメリカの砂漠地帯。一帯は強固なバリケードによって封鎖され、中に入るには完全密閉された防護服を着ないと危険は免れない。そんな見捨てられた地にある日、キャンピングカーに乗った何も知らない一組の家族が通りかかる。定年退職を機にカリフォルニアまで旅する元刑事とその子供たち、長女とその娘婿の間にはまだ生まれたばかりの赤ん坊もいる。だが、そんな平凡な家族を丘の上から虎視眈々と見つめる謎の目が――。何もない砂利道で急にパンクするキャンピングカー。携帯も通じず、見渡す限り何もないこの不毛の地で途方に暮れる家族たち。そんな彼らに突如として異形の者どもが襲い掛かってくるのだった。銃を手にしたとても人間とは思えない恐ろしき怪物たちは、家族を一人、また一人と血祭りにあげてゆく。訳も分からずパニックへと陥る平凡な家族たち。果たして奴らは何者なのか?核実験による放射能で突然変異をおこした異形の者どもによって、恐怖のどん底へと叩き落される家族をノンストップで描いたスプラッター・スリラー。監督は、その容赦のないゴア描写で一世を風靡したアレクサンドル・アジャ。彼が悪名高い『ピラニア3D』で一気にメジャーになる前に撮ったという本作を今回鑑賞してみました。率直な感想としては、いやー、相変わらず中身がないです(笑)。でもその分、やり過ぎ残虐描写には相当気合が入ってます。斧で脳天直撃から始まり、散弾銃で顔バボーンやら、犬のハラワタくり抜いたりやら、挙句の果ては家族の目の前でお爺ちゃんを火あぶりにしたりしちゃいます。そして、この家族を襲う悪役たちの造形!放射能で奇形を患ったという設定なのですが、とにかく気持ち悪い!特に中盤に出てくる、頭が異常に膨れ上がって起き上がることが出来ずずっと寝たきりのミュータント。これ、夢に出てきそうなくらいエグかった……。もう最後まで、ポリコレ?何それ?って感じです(笑)。ストーリーの方も中身がない分、そんな異常者に追い詰められる描写はかなりキレッキレで最後まで楽しんで観ることが出来ました。犬のビューティー&ビーストも何気にいい仕事してます。最後のオチもシニカルで大変グッド。うん、なかなか面白かった。ただ、不謹慎極まりないですけどね(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2022-03-07 06:33:53)
20.  ゆれる 《ネタバレ》 
新進気鋭の若手カメラマンとして東京で充実した日々を送る早川猛。彼の兄で、田舎で父が経営するガソリンスタンドを継いだ早川稔。才能に溢れ都会で洗練された生活を過ごし女にもモテる弟と、田舎で地味な生活を送り真面目で大人しく女にも縁がない兄。そんな対照的な早川兄弟は、ある日、実家で行われた法事で久しぶりの再会を果たす。子供のころからずっと仲の良かった二人は、長い月日など感じさせないほど自然に話せるようになるのだった。だが、そんな二人の関係は、ガソリンスタンドで働く幼馴染の女性川端智恵子を巡り、揺れ始める。易々と彼女の好意を手に入れる弟と、彼女に恋心を抱きながらもただ見つめることしか出来ない兄。危うい関係で繋がった三人は、かつての思い出の地である山の中の渓流へと出かけることに。そして、そこで事件が起きてしまう――。古いつり橋の上から智恵子が転落し呆気なく亡くなってしまったのだ。しかも、その場には兄の稔がいた。当初はバランスを崩した彼女が一人で転落した事故として扱われていたが、その後驚きの展開を見せるのだった。なんと兄の稔が自ら突き落としたと自白し、そのまま殺人容疑で逮捕されたのだ。果たしてそのつり橋の上で何があったのか?やがて始まった裁判で、仲の良かったはずの兄弟が抱えていた闇が明らかとなる……。一人の女性を巡り、徐々に崩れてゆくそんな兄と弟を終始淡々と見つめた法廷劇。この監督の映画は今回初めて観ましたが、これがなかなか見応えのあるヒューマン・ドラマの良品でありました。とにかく、この監督の心理描写のきめ細やかさには舌を巻く。価値観の全く違う対照的な兄弟のそれぞれの思いが次第にすれ違ってゆく過程などなんとも繊細で、この二人の揺れ動く微妙な関係性に最後まで目が離せませんでした。特に殺人容疑で捕まる兄の人物造形は非常にリアル。監督は女性ということですが、こんなにもモテない男の心理が分かるなんて凄いですね。ほんのちょい役の登場人物までちゃんと血の通った人間として感じさせるところなどもホント巧い。そして「ゆれる」というシンプルで印象的なタイトルが示す通り、彼らは皆、最後までずっと揺れ動く。あの時ああしていれば、この時こうしとけば…。きっと何処にも正解などないのだろうけれど、人間は誰しもその時々の決断によって人生が決まってしまう。その現実の切なさに翻弄される二人の兄弟には、観ていて心揺さぶられずにはいられない。二人を熱演したオダギリジョーも香川照之も非常に嵌まり役で素晴らしかった。三島由紀夫賞の候補にもなった、監督自身による原作本も今回購入済みなのでまた楽しみに読もうと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2021-07-31 03:00:24)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS