映画『ディア・ドクター』の口コミ・レビュー

ディア・ドクター

[ディアドクター]
Dear Doctor
2009年上映時間:127分
平均点:7.05 / 10(Review 75人) (点数分布表示)
公開開始日(2009-06-27)
ドラマコメディ医学もの
新規登録(2009-06-20)【イニシャルK】さん
タイトル情報更新(2024-03-11)【イニシャルK】さん
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監督西川美和
キャスト笑福亭鶴瓶(男優)伊野治
瑛太(男優)相馬啓介
香川照之(男優)斎門正芳
井川遥(女優)鳥飼りつ子
余貴美子(女優)大竹朱美
松重豊(男優)波多野行成巡査部長
岩松了(男優)岡安嘉文警部補
笹野高史(男優)曽根登喜男
キムラ緑子(女優)迫田圭子
奥野匡(男優)山岡辰夫
高橋昌也〔男優・1930年生〕(男優)高畑弘三
中村勘三郎(十八代目)(男優)勅使河原恭平
八千草薫(女優)鳥飼かづ子
冷泉公裕(男優)
河原さぶ(男優)
安藤玉恵(女優)
星美智子(女優)
五頭岳夫(男優)
原作西川美和原案小説「きのうの神さま」(ポプラ社刊)
脚本西川美和
音楽佐々木次彦(音楽プロデューサー)
撮影柳島克己
製作バンダイビジュアル(「Dear Doctor」製作委員会)
電通(「Dear Doctor」製作委員会)
テレビマンユニオン(「Dear Doctor」製作委員会)
松竹ブロードキャスティング(「Dear Doctor」製作委員会)
配給アスミック・エース
美術三ツ松けいこ
衣装黒澤和子(衣裳デザイン)
編集宮島竜治
録音白取貢
加藤大和
照明尾下栄治
あらすじ
田舎の村の診療所の医師、伊野治の行方が分からなくなった。村人たちは警察に捜索を依頼する。最初は「事件性はない」として、あまり乗り気ではなかった刑事たちだったが・・。
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💬口コミ一覧

75.「人間なんて、そんなモンじゃないですか」と、聞こえてきそうな夢のないリアルな人間描写の上に、一筋縄ではいかない脚本と演出。

笑福亭鶴瓶という稀代の曲者を軸に据え、余貴美子・香川照之・八千草薫・井川遙(そして河原さぶw)という、隙のない布陣で固めた役者陣の妙味。

そして、決して大袈裟ではない、ちょっとした慈愛とファンタジーを隠し味にして、丹念と、訥々と、丁寧に構築された、稀有な人間賛歌でした。

うーむ。監督・西川美和。もはや巨匠の域か。私よりも年下なのだが。

aksweetさん [DVD(邦画)] 10点(2010-10-01 03:43:48)
74.ネタバレ 主人公伊野治、その場に溶け込んでいるが、何を考えているか良く分からない。
中心人物だけど、どこか得体が知れない。
笑福亭鶴瓶さんのふわふわとした持ち味を生かし、そこに西川監督をはじめ芸達者な脇役陣の演技もあいまって、今まで見た事の無い人物を作りだしたと思います。

これだけ印象的なお話しなのに、主人公がぼやけているって、凄いことだと思いませんか?
名優の方をあえて使わず、鶴瓶さんにお願いしたのは大正解だと思いました。

そして、私は(看護士ではありませんが)大竹看護士のような仕事をしているので、余貴美子さんの上手さには舌を巻きました。
良くも悪くもすべてを飲み込んで、ドクターと診療所を回していく。
手際のよさとベテランの雰囲気がこんなに出せるなんて、余さんの演技に敬意を表します。
香川さんの製薬会社の営業さんも実に上手い。
私の知っている営業さんと、雰囲気そっくりなのですもの。

それから、松重豊さんの演じる波多野巡査部長。
ここまで言わなくとも良いのにと思えるほどの、ヒリヒリしたセリフ。
西川監督の突き詰めて、ここまでもさらに突き詰める気持ちが、この役で表されているなと思いました。

実に痛い、いたたまれない、空気がよどんで緊張している。
キム・ギドク監督は針で刺され痛いが、西川監督は「言葉」と「気持ち」が痛い、突き刺さる。
突き刺されると分かっていても、真実を教えてもらえるその深さは、私にとってはかけがえの無いものです。

私は明日からまた仕事ですが、この作品を観たことによって自分の職場での立ち居地について、別の見方が出来たような気がします。

何となく「ある」感覚について、今まではなにかもやもやと分からなかったこと。
それがある時、言葉によって理解でき整理出来た時、私はちょっと前に出られた気がするのです。

この作品によって気づかされました。
どうもありがとうございます。

そして八千草薫さんの存在は救いです。
大事な大事なもの。
聖母マリアのようなお姿に心が洗われました。
たんぽぽさん [映画館(邦画)] 10点(2009-07-05 22:39:04)
👍 1
73.ネタバレ 人間の本音をさり気なく描いている作品だと思います。所詮世の中のルールや法律は人が作ったものですから矛盾もあると思います。作者の思いは知る由もないですが、私には、そのルールに優先するもっと本質的で大事なものがあるのではと問いかけているように思えてきます。八千草薫の田舎のおばあさん役には多少違和感を感じましたが、偽医者鶴瓶と看護師余貴美子はなかなかの好演だと思います。偽医者が経験豊富な看護師のアイコンタクトで診察、治療するシーンは特に印象的でした。とても面白い映画で西川美和の作品をもっと見てみたくなりました。
ProPaceさん [CS・衛星(邦画)] 9点(2014-08-25 20:16:41)
72.ネタバレ とくに衝撃はないけれど、さらっと普通にすべてのクオリティが高い上質な映画。
aimihcimuimさん [DVD(邦画)] 9点(2014-08-05 00:50:06)
71.ネタバレ どうしても必要なものが手に入らなったら、人はどうするのでしょう。絶望する?諦める?いえ、代用品を探します。ハリボテだろうと、紛い物だろうと、無いよりはマシ。伊野という“張子の虎”を本物の医者と信じたのは、張子の出来が良かったからではなく、村人が信じたかったからだと推測します。少なくとも看護師は早々に伊野の正体を見抜いていたでしょう。でもその事実に蓋をしたのです。おそらくは村長も。そして一部の村民も。村ぐるみの知らなかったフリ。村人が優先したのは、医療技術ではなく“医師が在住している安心感”だったのでしょう。しかし、これは幻想でした。当たり前ですが、緊急事態に偽医者では役に立ちません。先にその事に気付いたのは、他ならぬ偽医者自身です。気胸の件はラッキーだっただけ。二度目はありません。伊野の額の脂汗が証拠。そういう意味では、かづ子の娘来訪は伊野にとって渡りに船でした。病気を見過ごすのは許されるのか?本物の医者ならどう判断するか?どんなに考えても、ニセモノに答えが出せるはずがありません。患者との約束を守りぬく覚悟も、嘘をつき通す信念も、彼には無かったのです。責任の重さに耐えきれなくなった伊野は、ついに逃げ出しました。暗闇の中、必死に伊野を探す研修医の姿が印象的です。失くしたものを探す。いや、初めから存在しなかったものを探す。この行為が、偽医者騒動の本質であったと考えます。『蛇イチゴ』でも感じた事ですが、西川監督のアプローチは複眼的です。伊野、研修医、看護師、村長、健康な人、病気を患っている人、そして部外者である警察。それに医師不足に終末医療の問題。視点や立場、角度を変えて事象を照らしてくれます。どれもが正しくて、全てが間違っているように思える妙。監督の主義主張も抜かりなく挿入されており(ラストのかづ子の笑顔こそ監督のメッセージ)、頭と心をフル稼働させて味わい尽くすに相応しい、質の高い映画でありました。最後に鶴瓶について語らせてください。元ぬかる民(←コレが言いたかっただけ)として、鶴瓶にシンパシーを感じている私ですが、それを差し引いても本作の伊野役は完璧でした。演技は上手いとは思いませんが、鶴瓶のキャラクターを100%活かした見事なキャスティングだったと思います。脇を固める俳優陣も非の打ちどころがありません。何度も観たい、大好きな映画に、またひとつ出会えました。
目隠シストさん [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-11-15 18:25:42)
👍 1
70.ネタバレ 鶴瓶がニセ医者の役をする、と聞いてだいたい想像がついたような気になってたモノです。なめててすみませんでした。逃走中に実家に電話するシーンが印象的。もっと謝らなければならないことがあるはずなのに。最初のつまづきがペンライトだったんでしょう。机の上でころがるカナブン、シンクで溶けていくアイスなど。小さなエピソードを塗り重ねて重厚感を作り出す。西川監督作品はこれで全部見てしまいました。次回作が待ち遠しい。【追記】「家族編」に入れられなかった以上、「喜劇編」に入れざるを得なかったのでしょう、山田洋次監督は。確かに、日本の名作100本の一つには違いないと思いますので。
なたねさん [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-06-13 08:31:07)
👍 1
69.ネタバレ 「その嘘は、罪ですか。」が内容を言い表している。過疎地の無医村における偽医者、その嘘を皆で真実にしつつ、土壇場になったら手のひらを返す村人たち。偽物であり、自分とは関わりのないことだと言い張りつつも、全否定はせずにどこかでその意義を皆が認めている。そうしたギリギリの難しい問題をこの映画ではまさに投げかける。

■なぜ釣瓶が偽医者になろうと思ったか。当人は「撃たれたから返し、を繰り返していただけ」と瑛太に語り、香川照之はわざと倒れそうになって警官が手を差し伸べたところに「なぜあなたは手を差し伸べたのか。自分を愛しているからではないですよね。それと同じだ」という。最初の動機は楽な金もうけも多少はあったのかもしれないが、来てみると全く違ったのであろう。そこは最終的には観る者に投げられたままだ。

■八千代薫、井川遥母子の関係は非常にうまい。全体として皆素晴らしい中でこの二人の演技は際立っている。井川が泣くのをこらえるシーンは名演。
θさん [DVD(邦画)] 9点(2012-05-05 00:49:14)
68.深い、深いなぁ、この映画。
ビアンキさん [DVD(邦画)] 9点(2010-07-09 21:30:11)
67.ネタバレ 山里の無医村で偽医者として、医療を生業とする主人公。
唯一の医者を神のように崇拝する村人たち。
“嘘”はいつまでもつづくことはなく、偽医者は遂に逃げ出す。

この映画、この監督の凄いところは、人間を決してキレイには描かないことだ。
たとえば、同じプロットであったとしても、主人公にもっと使命感を持たせ、村人をはじめとする周囲の人間にもっと分かりやすい慈愛を持たせれば、涙溢れるとても感動的な映画になっただろうと思う。

しかし、この映画は、そういう安直な感動を否定する。
それは、人間の持つ本質的な弱さや不安定さを、この監督はよく知っていて、認めているからだ。

主人公は、安易な自己満足のために偽医者を演じはじめ、大金を得て、何となく誤摩化し、偽り続けながら生きている。
村人たちは、決して声には出さないが、実はその“偽り”にも気付いていて、ただ“無医村”という自分たちの状況におけるとてつもない“不安”を覆い隠すために、それを盲目的に認めている。
偽っていたのは、主人公の無免許医だけではない。村全体が、互いの弱さを支え合うように、偽ってきたのだと思う。

だからこそ、主人公が無免許医であるということが具体的な形で判明した後の村人たちの反応は、極めて冷ややかで、彼を擁護する者は無い。ただし、彼のことを全否定できる者も同時に無い。それは、偽っていたのが彼だけではないということを、誰もが知っているからだ。

「その嘘は、罪ですか」とこの映画は問う。
もちろん、罪だとは思う。ただその罪には、加害者も被害者もない。「嘘」に関わったすべての人間が、加害者であり、被害者だったと思う。
そして、嘘をつかなければならなかった「状況」にこそ、本当の罪があると考えさせられる。

正直、観終わった直後は、想像以上に感動が薄かったせいもあり、一寸の物足りなさを感じてしまった。
しかしそうではなく、その物足りなさの中に存在する見えない感情こそ、この映画が伝えようとすることだと思う。

鶴瓶師匠の決して目の奥が笑っていない恵比寿顔は、まさにベストキャスティングで、その表現力は最高だったと思う。

そして、前作「ゆれる」に続き、またもや一筋縄ではない人間ドラマを創り上げてみせた、西川美和。その若き女流監督の懐の深さに感嘆する。
鉄腕麗人さん [DVD(字幕)] 9点(2010-03-14 14:12:19)
👍 1
66.ネタバレ 間違いなく今年のベスト邦画のひとつとなる映画。ことに台詞演出がすばらしく、あくまで外部の人間による感想だが、邦画の現状を鑑みるとこれ以上のものは望めないのではないかとさえ思える域に到達している。それだけしびれるような台詞が随所にあるのだが、だけでなく冒頭から失踪前後の出来事を効果的に配置する脚本もすばらしいし、鶴瓶や香川照之のような一見反映画的と思える顔ですら何とか映像世界に押し込めてしまう撮影手腕も、まさしくプロであるとしかいいようがない。ちょっと褒めすぎかもしれないが、しかし邦画を褒める機会などめったにないと思うのでこの際思いきり褒めておこう。
鶴瓶が××であることは、毎日顔を付き合わせているベテラン看護婦は当然気づいている。出入りの業者も勘付いている。それどころか本当は、患者を含む村人たちだって気づいているのかもしれない。しかし彼らはそのことに触れようとしない。共同体にとって重要なのは彼がいることであり、本物かどうかは瑣末事項だからだ。しかし正体がばれた後、ここがひとつの見せ場であるのだが、村人たちは口々に彼を非難するし、八千草薫など刑事の質問に「何もしてくれませんでした」ときっぱり言ってのける。コーエン兄弟のそれなどとはレベルの違う反物語性が芸術としてこの世に現出する瞬間であり、もしかしてものすごい瞬間なのかもしれない。おそらくは共同体の保身をはかるためのそれらの台詞は一見本意を無視している。だが関係者を詰問していくうち、刑事たちは逆に村の強固な意志を感じ取り、恐れをなすまでに至る。それがラス2のシーンへとつながる。私はこのシーンは映画が丁寧に撮り続けてきたものの最終解であると思う。つまり、共同体とは恐ろしいものであり、鶴瓶はだましたつもりが実は利用された被害者だったのであり、警察は彼を裁こうにも裁けない立場なのだという。
ラストシーン、食事係に化けて現れた鶴瓶に対し、八千草薫はいったん顔を引きつらせてから微笑む。理由はどうあれ遁走した瞬間村は彼を見放したのであり、そういう人間に対して彼女は素直に微笑むべきかどうか迷ったのである。日本人の表情の多義性をここまで捉えた映画を、私はひさしく見なかった。
慌てて付け加えておくが、だからといってこの映画が冷たい映画だといっているわけではない。むしろ全編優しさにあふれた映画であるのでよろしく。
アンギラスさん [映画館(邦画)] 9点(2009-07-15 18:24:55)
👍 1
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65.誰がいいもんで誰がわるもんかわかんねえし、誰に感情移入したらいいかわかんねえし、結局それでいいのかよっていう終わり方だし、意味わかんねーよ鶴瓶はまあまあ面白くて瑛太がかっけえからいいけど……と、ただ泣けたーとか感動したーとかの低俗な邦画に慣れさせられた観客は言いそうだが、ほんとに人間を見つめたレベルの高いこういう映画を見ると、ああまだまだ邦画は大丈夫だなあとほっと胸をなでおろすことができる。
ととさん [映画館(邦画)] 9点(2009-07-10 14:25:42)
64.ネタバレ これは鶴瓶と八千草の、ラブストーリーである。
no_the_warさん [映画館(邦画)] 9点(2009-06-28 23:53:53)
63.ネタバレ 西川監督さすが。
とっても楽しめた。
人を肩書きや資格で区分けする事の意味を、世間に問う内容。
人を助ける非医師とろくに助けない医師と、どっちが患者にとって助けとなるのか。

ただし途中、デコルテの露出はげしい井川遥に目を奪われ、若干、内容への集中力が落ちたことを白状しておきます。
にじばぶさん [インターネット(邦画)] 8点(2021-02-21 19:24:48)
😂 1
62.ネタバレ 真っ暗闇を駆ける自転車のヘッドライトから始まる『ディア・ドクター』
暗いし白衣着てるからこの人が主要キャストなのかと思い込んでいたらただの名もなき脇役の人。事件が起きたその後でした。

まず驚いたのは医者の給料。無医村の過疎地域で好条件が出されたにしてもすごいですね。実際もあんなもんなんでしょうか??だとすれば、けっこうなり手は多そうだけどなあ、と思うのは医者の仕事やあそこまでの田舎暮らしを知らない人間としての意見ですが。でもそこまで悪くないように思える。まあそれはこの映画の見せ方のせいもあるでしょうが。

偽医者はあまり聞きませんが、無免許教師とかは実際時々ニュースでも見ますよね。あれも似たようなもんなんでしょうね。けっこう長い間その職の人として働いて、「人当たりも良くて良い先生でした」とか新聞にコメント載ってますもんね。最初にそう言う人として認識してしまったら後からそれを疑うって相当難しいと思う。最後の方で村長さんが刑事に吐いた言葉「あんたらもほんとに警察?手帳なんかあったって信用できねーよ」というセリフは、そのまま詐欺防止のキャンペーンポスターに使ってもいいセリフだと思う。実際水道局やらなんやらが家に来ても、わざわざその事務所にその人が実在してるか電話する人なんかいませんもんね。

とまあなんか詐欺の話になってしまったが、ストーリーは好きです。柔和だけど怪しい村の診療所の医者役に鶴瓶さんって、似合いすぎてる(笑)でも村の人たちとの掛け合いはとても自然で、なんというかただの平和な田舎のワンシーンを見せられているよう。警察の場面以外は、そこに「偽医者」とかそういうダークなものをほとんど感じさせずにストーリーは流れます。いっそただのジャパニーズカントリームービーでも面白かったかもしれない(笑)と思うくらい癒される自然がたくさんでした。

最後の喫煙所から消えるシーンと、病院に現れるシーンだけはいらないなぁ。そんなんは求めてなかったんだが。騙されたと知ったお婆さんの心の葛藤なんかをむしろもっと見たかったけど。

個人的には、田舎暮らし少し憧れるなぁってことと、人の嘘に気づくのって難しいなってことを思った作品でした。
TANTOさん [インターネット(邦画)] 8点(2021-01-24 02:35:13)
61.ネタバレ 伊野を偽者と知っていながら告発しなかった、あるいは疑問を持ちながらも無意識に真相から目をそらせた者がいた。
それはなぜか?
偽医者が村を支えていたという事実。
本物だと信じたかった、思い込みたかったのだろう。
看護師、製薬会社の営業マン、研修医。
そして、村人も自分たちの望む医師像を伊野に重ねていた。
伊野もそれに応えて御輿に乗って神様を演じていたといえる。

伊野は患者や家族の本心に寄り添うことができる。
死にかけた老人の救命処置をしようとした研修医に、このまま逝かせてあげたいと望んでいる家族は困惑する。
伊野はそうした本音を察しながら、老人の死を悲しむ小芝居に付き合ってあげる。
嘘の世界をうまく演じることで、誰も損をせずに幸せになることもある。

ただ、偽者では治療にも限界がある。
伊野もそれを実感して重圧を感じ、途中で抜け出したくなることが何度もあったのではないか。
緊急性気胸の施術では経験豊富な看護師の協力で何とかしのいだものの、一歩間違えば患者を死なせていた。
僻地の診療所なので今まで問題が表面化しなかったが、専門家としての知識や技術が足りないために患者を死なせるリスクは常につきまとう。
それでも、伊野は危ういながらも成立している擬似世界を壊すことができず、土壇場まで居残るはめになったのだろう。

かづ子の娘りつ子は、すぐに訴えることはしなかった。
それよりも、助からないであろう母とどう向き合えばいいかを悩み、伊野なら母にどうしてあげただろうかと医師としても知りたいと思っている。
そこには伊野をある意味認めるような心情が汲み取れる。

ラスト、素っ気ない病院のベッドで横たわるかづ子の前に、偽給仕として現われる伊野。
二人の交わす笑顔に妙に感動してしまい、不覚にも涙が出そうになった。
伊野は本気でかづ子と向き合っていた。
医師免許を持つ医者でもなかなか成しえないことをしたのだ。
鶴瓶と八千草薫がたまらなく良い。
その二人を含め絶妙のキャスティングが作品の完成度を高めた。
飛鳥さん [DVD(邦画)] 8点(2014-08-10 12:19:37)
👍 2
60.ネタバレ 鶴瓶のあのいかにも善人そうな顔の奥に見え隠れする得体のしれなさ。それが何なのか完全に明かされないまま物語は終わるので、妙な居心地の悪さを抱えたままモヤモヤ感が残る。あの医者の目的は何なんだろう。村人達はきっと知っていたんだろうか。等々、色々想像力を掻き立ててくれるので、観た後もしばらくこの映画を引きずってしまう。この感じ、西川監督の前作「ゆれる」を見終わった時に似ている。
ヴレアさん [DVD(邦画)] 8点(2013-11-05 15:29:44)
59.ネタバレ 失踪した 医者・鶴瓶を巡って、

     【 現在という時制 】 においては、第3者による評価を元にして

            【 間接的人物像 】  を。
  
     【 少し前の時制 】 では、医療に従事する姿を直接目撃することで                 

             【 主観的人物像 】  を。


それぞれ、2つの時制 によって提示される、この 2つの人物像 を
足掛かりにして、今作に発生していく

            【 失踪の謎 】 と 【 診断の謎 】 。

      この 2つの 「謎」 を 推理する楽しさに満ちた鑑賞となりました。

また、

「問題提起」 は、する。
           ↓  
           でも、「暗い」 まま終わらせない。
                          ↓
                          しかし、「問題解決」 は、しない。


       というユルイ立ち居地が、何故かしら心地良く感じた。
                           

                そんな不思議な映画でした。


制限文字数では語り切れず、完成版はこちら
     ↓
http://ouiaojg8.blog56.fc2.com/blog-entry-96.html
マーク・レスターさん [DVD(邦画)] 8点(2013-07-27 07:58:39)
58.よかったです! 西川監督の映画は「蛇イチゴ」「ゆれる」と見てきましたが、本作が一番好きです。なんといっても鶴瓶が演じた伊野治のキャラクターに、心を奪われます。そしてこの映画は「人が生きる」「人が働く」ということの意味を、的確に、それでいて暖かい目線で表現しています。たまたま医者の話だけど、別に医療ドラマではありません。どんな人の、どんな生き方にも照らし合わせて見ることができるでしょう。くどくないラストシーンにもとっても好感が持てます。
コウモリさん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-03-14 00:19:14)
57.ネタバレ 人間ドラマの最高傑作です。半分は高齢者という過疎化が進んだ地に住む伊野という医者の優しさや苦悩を描いています。笑福亭鶴瓶はだだのエロおじさん(なんと失礼な…)とばかり思っていた私ですが、まさかこんな素晴らしい役者だとは思いませんでした。それを引き出した西川美和監督の手腕恐るべしです。ただ個人的には井川遥さんの涙をこらえる演技が一番素晴らしかったです。
nyarameroさん [DVD(字幕)] 8点(2012-05-01 12:06:14)
56.高齢化が進む村にとある一人の医者が居た。笑福亭鶴瓶演ずる村唯一の医者は村の中でも心の寄り処とされ、周囲の人たちからは全幅の信頼を置かれている。ただそんな彼がある日を境に突然村から失踪してしまう。鶴瓶演ずる医者の人となりを振り返りながら、失踪事件の真相を追っていくという内容で、サスペンス映画としてはかなり良質な仕上がり。僻地医療というテーマも社会性があって見応えは十分。
カイル・枕クランさん [映画館(邦画)] 8点(2011-03-13 23:15:29)
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マーク説明
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★《更新》★:2日以内に更新
《更新》:7日以内に更新

【点数情報】

Review人数 75人
平均点数 7.05点
000.00%
100.00%
200.00%
311.33%
434.00%
579.33%
61114.67%
72533.33%
81621.33%
91013.33%
1022.67%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 7.00点 Review2人
2 ストーリー評価 7.00点 Review4人
3 鑑賞後の後味 7.33点 Review3人
4 音楽評価 5.00点 Review1人
5 感泣評価 6.00点 Review2人

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