映画『裏切りのサーカス』の口コミ・レビュー

裏切りのサーカス

[ウラギリノサーカス]
Tinker Tailor Soldier Spy
2011年上映時間:128分
平均点:6.21 / 10(Review 56人) (点数分布表示)
公開開始日(2012-04-21)
ドラマサスペンスミステリー小説の映画化スパイもの
新規登録(2012-04-03)【+】さん
タイトル情報更新(2023-03-28)【TOSHI】さん
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監督トーマス・アルフレッドソン
キャストゲイリー・オールドマン(男優)ジョージ・スマイリー
コリン・ファース(男優)ビル・ヘイドン(テイラー)
トム・ハーディ〔男優〕(男優)リッキー・ター
トビー・ジョーンズ(男優)パーシー・アレリン(ティンカー)
マーク・ストロング〔男優・1963年生〕(男優)ジム・プリドー
ベネディクト・カンバーバッチ(男優)ピーター・ギラム
キアラン・ハインズ(男優)ロイ・ブランド(ソルジャー)
キャシー・バーク(女優)コニー・サックス
スティーヴン・グレアム(男優)ジェリー・ウェスタービー
ジョン・ハート(男優)コントロール
サイモン・マクバーニー(男優)オリヴァー・レイコン次官
スヴェトラーナ・コドチェンコワ(女優)イリーナ
ジョン・ル・カレ(男優)クリスマス・パーティの客
デヴィッド・デンシック(男優)トビー・エスタヘイス
辻親八ジョージ・スマイリー(日本語吹き替え版)
森田順平ビル・ヘイドン(テイラー)(日本語吹き替え版)
鶴岡聡リッキー・ター(日本語吹き替え版)
佐々木睦パーシー・アレリン(ティンカー)(日本語吹き替え版)
加藤亮夫ジム・プリドー(日本語吹き替え版)
水野龍司ロイ・ブランド(ソルジャー)(日本語吹き替え版)
大塚周夫コントロール(日本語吹き替え版)
原作ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(日本語翻訳版・ハヤカワ文庫)
脚本ピーター・ストローハン
ブリジット・オコナー
音楽アルベルト・イグレシアス
撮影ホイテ・ヴァン・ホイテマ
製作ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
製作総指揮リザ・チェイシン
デブラ・ヘイワード
ジョン・ル・カレ
ピーター・モーガン〔脚本〕
配給ギャガ
特撮フレームストアCFC(視覚効果)
美術マリア・ジャーコヴィク(プロダクション・デザイン)
衣装ジャクリーン・デュラン
字幕翻訳松浦美奈
その他ブリジット・オコナー(献辞)
あらすじ
東西冷戦下、MI6(通称サーカス)とKGBは情報戦を繰り広げていた。サーカスのリーダー・コントロールはKGBの二重スパイ「もぐら」の存在を確信、ジム・プリドーをハンガリーに送り込むも作戦は失敗する。一方、実働部隊のリッキー・ターはKGBのイリーナと出会い、恋仲になる。彼は彼女を亡命させようとするが、翌日KGBが彼女を連れ去る。「もぐら」の存在を思い知ったターは帰国し、政府の情報機関監視役であるオリバー・レイコン次官に連絡、コントロール失脚で引退していたジョージ・スマイリーが「もぐら」探しを命じられる。
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💬口コミ一覧

56.ネタバレ 過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。
わいえすさん [映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22)
55.原作未読で臨んだところ、やはり一度目の観賞では全体像を掴むことは無理だった。でも、二度三度と観直して、一つ一つの場面の意味が分かるにつれて緻密に織られた脚本の見事さに仰天する。2時間という限られた時間の中に隙間なく美しく整えられたプロット、意味深い場面の連続に集中力は必要とするけれど、とても面白い。
諜報部員を演じる俳優陣の、職業柄、顔の皮膚の一番上っかわだけ動かしているかのような曲者演技が素晴らしい。特に主人公のG・オールドマン。表情筋をほぼ動かさずして、暗い淵を覗いているような瞳の演技だけで老獪なスパイの孤独を滲ませる。
スパイが生身の身体を張って、国家の誇りをも代弁していた時代。冷戦下に行き交う謀略と、個人の愛情や屈折した思い。非常にとっつきにくい印象を受けるけれども、話の流れさえ分かればこんなに深くて味わい深いスパイ映画はそう無いだろう。
数多の名画と同じく、年月が経っても複数回の観賞に耐えうる名作だと思う。
tottokoさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2014-01-22 00:09:50)
👍 1
54.ネタバレ 予めあらすじ把握してからの鑑賞推奨。凝ったストーリーは映画だけでは無理だ。映画は映像と音のためだと割り切れ。
映画では「イギリス人らしさ」を強調する小道具としてのロンドン文化が端々に登場する。
しかしフィッシュアンドチップスとかいう下賤な食物は登場しない。薄切りでカリッと焼いたトーストを「親ロンドン」を強調するロシアスパイがブダペストで食べ、イギリスのスパイ部門トップがロンドンで食べる。
ロンドン市内にある自然池でMI6の面々は水泳を日常的に楽しむ。
まあそういったロンドンらしさを散りばめた描写を楽しむべきか。

しかしラストシーンは「ラメール」というフランス懐メロが飾る。しかもフリオイグレシアスのライブ録音を使っている。
ラメールというのは海を描写した歌だが、時の流れにより朽ちる海小屋(スパイとの闘いで散った人々かな)や永遠に変わらない海の美しさや偉大さを(イギリス、MI6)を敬う哲学的な内容を含む歌であり、監督がこの物語をどう捉えて描いたかが伝わってくる選曲である。
小鮒さん [インターネット(字幕)] 9点(2022-02-28 07:29:55)
👍 1
53.ネタバレ 人物の分かり辛さ、テンポの悪さ、抑え過ぎる演出にしんどくなりながらも「もぐら」の正体知りたさに最後まで鑑賞。鑑賞後はしんどいと思った点が本作の味わいに思えました。原作があるそうで、もぐらになった動機やもぐらと同性愛者の関係、一度も顔を見せなかったカーラとアンなど掘り下げて欲しかった点を確かめたくなりました。

【2018.2.14追記】
原作を読みました。500㌻超、映画同様解り辛い内容で心踊らされる事のない文章を行きつ戻りつしながらで3日かかるも、先に映画を観ていたおかげで読み切れた。
内容が把握出来た状態で再度鑑賞。
エンドロール冒頭で撮影開始直前に他界したという脚本家ブリジット・オコナーに捧ぐとあるのが頷ける極限まで削ぎ落とし、新たに肉付けした脚本が実に見事。
諜報機関に身を置く者の生き様を見せられる。
全編を覆う忠誠心と裏切り
プリドーが愛するヘイドンに落とし前をつける姿は前回鑑賞時で最も印章深かったが、状況が呑み込めた今回はプリドーの胸中がこの上なく切ない。
この二人を上回るのがスマイリーとカーラであって、スマイリーがギラムに語るカーラを西側へ寝返るよう説得した昔話が圧巻。
愛する人に「行かないで」と懇願するようでもあり、一言も発せずに「裏切るくらいなら死を選ぶ」と帰国したのを狂信者呼ばわりするものの己の浅はかさ小賢しさを恥じているようでもある大写しの表情に息を呑む。
いぶし銀英国男優ここにあり。ゲイリー・オールドマン、ジョン・ハート、マーク・ストロング、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、トビー・ジョーンズ・トム・ハーディ。
私が一番惹かれたのは顔を見せなかったカーラ。演じられるのはポール・スコフィールドあたりなのだろうか。

クリスマス・パーティを回想する女々しさ溢れるスマイリーがラ・メールをバックに気骨ある亡きコントロールの席に就いたラストに拍手を送りたい。

一度の鑑賞で解らなかったので10点とは言えないが、手間暇かけて素晴らしさが解った稀有な作品に敬意を表して前回より3点を上積み。
The Grey Heronさん [DVD(字幕)] 9点(2013-01-19 23:27:24)
👍 1
52.大人の映画。
フライボーイさん [DVD(字幕)] 9点(2012-11-05 13:59:05)
51.ネタバレ あの重苦しい雰囲気漂うあの部屋の壁。凹凸が影を作り出し、薄らと碁盤目状に見えてくる。誰が“もぐら”なのかが浮き彫りになるまでのドラマには、男たち(スパイたち)の潰し合いの葛藤がある。相手の手の内を想像し、裏をかくように悟られまいと忍ぶ姿。そこは恐ろしく濁っていた。顔を着けて泳ぐのが憚れるのと等しく、そこは信用ならない奴らのいるところであることを暗示している。モノトーンのグレーを基調としたように、そこは憶測と不明解な状況が蠢いている。スマイリーとそこにいる人間たちの特徴無き特徴が、彼らの物悲しさすらも表現している。というなんだか、馬鹿みたいな評論家の文章になってしまうのもこういう表現方法がこの作品のテイストを分かりやすく説明できるような気がしたからです。また、原作は未見ですが、確実に映画ならではの表現が散りばめられているような気がしてならないのです。まずは上記にも述べた色調、そして最も面白いのは「チェス」を彼らに見立てて表現しているその構造がお見事です。あの部屋を碁盤とした場合、彼らは駒でしかなく、国家によって操られ、消えて行くのです。敵と見なした仲間を消し去り、トップの座に付くスマイリーのあのラストの表情。無表情ではあるけれど、あの朗らかにも取れるスマイリーの表情は唯一のスマイルと言っても過言ではないように思えました。果たして正義とは?悪とは?仲間とは?多くのことを観客に投げかけつつ、そして最後に描かれるのは、真に信じていた友による裏切りの淵に沈んだプリドーが、最終的に少年ビルに投げかける言葉が「哀しき駒になるな」という切なる願いにも見えました。それはとてと普遍的で、今日のぼくらにも届きうる強い想いを感じ、またこの映画がこの一点に向かい集約されていたことがわかったあの瞬間、鳥肌が立ちました。お見事です、素晴らしい!!※鑑賞前に事前に大まかなストーリーと登場人物の情報を入れておくのもありだと思います。本国では過去にテレビドラマ化されていたり、根本的に大変有名な原作であるため、多くの人にこの作品の大前提の理解があったことが評価される要因の一つにあるのは間違いないだろうと思いますので、鑑賞前にパンフレットをご購入されるのをオススメします。ちなみにぼくはそうしました。
ボビーさん [映画館(字幕)] 9点(2012-05-27 23:15:12)
50.ネタバレ 誰もが知る「007シリーズ」、第二次世界大戦時に実際にスパイ活動を行っていたイアン・フレミングが自分の体験を基にした小説の映画は市井の人々の人気を集めました。男性的なシンボルとも取れる完璧超人ジェームズ・ボンドが最新の秘密兵器を駆使して悪の組織を壊滅させていくシンプルな構造が人々の心を掴んだのでしょう。本作「裏切りのサーカス」の原作者ジョン・ル・カレもかつてイギリス諜報部に籍を置いており、本物のスパイでした。この点ではイアン・フレミングと同じです。しかしこの原作・映画で描かれるスパイの姿はジェームズ・ボンドとはかけ離れているといっていいでしょう。基本的なストーリーは、数々の権謀術数が交差する英国情報局"サーカス"の中に潜む二重スパイを見つけ出すことのみ。派手なスパイ物に良くある世界征服を企む組織やトンデモ秘密兵器なんて無いし、カクテルが似合うお洒落な登場人物なんて一人もいない。それでもこの映画は非常に面白い。この映画は先述している「007シリーズ」の様な華やかに見えるスパイ映画の世界を(恐らく意図的に)茶化している。近年では「ジェイソン・ボーンシリーズ」がリアルに拘ったスパイ映画として挙げられることが多いですが、本当に徹底的にスパイの世界をリアルに描いたらこの映画の様になるのでしょう。しかしアクションが無い、派手な見場が無い、だから面白くないかというと全くそんなことはありません。3人の二重スパイの容疑者は全員がある種の切れ者で誰の言うことも観客は信用できない。信用できるのは主人公スマイリーの視点とある種神の視点から撮られた過去のパーティーでの場面のみ。観客にどれだけの情報を与えて、どれだけを隠しておけばいいのかという脚本の出来が、ミステリ作品で重要な点ですが、この映画に関してはその部分が素晴らしく、ミステリーとしても非常に上手くできていると思います。というか話は一見難解そうに見えますが、全くそんなことは無い。最初から最後まで怪しかった奴が犯人だし、それまでの伏線も実に分かりやすく張っている。トーマス・アルフレッドソン監督お得意の静状を使った演出も緊張感が張り詰めるスパイの世界に非常に相性が良く、本当にスパイの世界を体験した気分でした。勿論、英国役者の種々様々な孤独を内包した演技も素晴らしく、脚本・演出・演技の三つが見事に融合した作品だったと思いました。
民朗さん [映画館(字幕)] 9点(2012-05-06 00:00:29)
49.難解と評判の本作、覚悟して見た結果、たしかに難解でした。全シーンの意味を理解できたかどうか、いささか怪しいところ。しかし、一貫して流れる不気味な緊張感と、少しずつ核心に迫っていく静かな高揚感を堪能できれば十分なのかなと。〝敵将〟が最後まで姿を現さないのも、見終わった後から思えば「さすが」という感じです。それにしても、恐ろしい世界ですね。ただし一番理解できなかったのは、主人公が川を泳ぐシーン。何かの訓練なのか、ジョークなのか、例によって何の説明もないため、唖然とするばかりです。
眉山さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-23 01:01:16)
48.二回観させる感じがすごい。
Balrogさん [DVD(字幕)] 8点(2013-07-14 22:46:13)
47.ル・カレ原作なので複雑なストーリーとは予想したが正直理解しづらいストーリーに置いてきぼり。ただそれを補ってあまりある全体のトーンには心底引き込まれた。
kaaazさん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-14 01:15:44)
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46.う~ん、秀作ですね..脚本をよく創り込んでいます..物語が複雑に絡み合っている分、続けて2回観るハメになりました..(より細かく理解するために) 玄人好みというか、シリアスさが際立っているというか..娯楽的要素を排除した..商業主義とは “無縁" の、作品です...

コナンが一番さん [DVD(字幕)] 8点(2012-12-28 20:03:44)
45.ネタバレ 思ったよりも二重スパイが意外な人物じゃなかったのですが、考えてみれば、これは映画だから、良かったんだと思いました。2時間枠の映画であまりにも意外な人物にしてしまうと、映画が破たんしてしまうからなんですね。(破たんを笑ったのが喜劇映画「殺人ゲームへの招待」でしたが・・)だからいかに映画としての品位を保ちながら、なおかつ面白くするか、それがこういう映画のポイントだと思います。その意味では、これはカッコいいし、雰囲気もいいし、音楽も映像もセンスあるし、最高です。細かいとこまで理解したとは言えませんが、十分楽しめました。最後、まるで二人の間には何もないかのように、ゲイリーオールドマンと、若い職員が会社の中ですれ違うとこがまた粋ですねぇ。いいじゃないですか。スパイ映画としては、一級品だと思います。アクションに頼らないで、演出過多にもならないで、ちょっと欲言えば、魅力的な女性が出てきたらなぁとも思いましたが・・(これはおじさんの趣味でしたか・・?)ただちょっと疲れました。難解らしいと、このレビューで知っていたので、緊張した2時間でした。ふ~。コーヒーでも飲んで、一服するか・・。そういえば最近、このような渋い男の映画に、喫煙シーンがなくなりましたね?
トントさん [DVD(字幕)] 8点(2012-11-19 05:52:18)
44.原作既読。こいつら、なんてかっこいいんだ。
枕流さん [映画館(字幕)] 8点(2012-07-02 20:36:08)
👍 1
43.ネタバレ 観る前からかなり期待してしまう要素が多いんですよ、この映画。
「ザ・英国俳優」といった感じのキャストですし、スパイですし。
結局2回観ることになりました。1回じゃワケがわからないという理由で。

セリフでの説明が無さすぎでして、小道具で語っている部分があるってことが2回目で気付くんです。
観てるこっちもスパイのごとく細部に目を光らせてないといけないんでしょうか?
スパイの正体を薄々わかっていたなんて言うんですけど、彼らはどこらへんでそう思ったんでしょう。
その根拠の部分も特に見せ場として描かれているわけじゃないのよ、
どこと言われればサーカスメンバーのファッションかな、キャラにあったスーツや小物使いが粋でした。
難解な映画だけど疲れるってことはないんです。
何度も観て確かめたくなる映画、それに応えてくれる映画であるということが評価できると思います。
「ダウントン・アビー」のレディ・イーディスが受付事務員役なんです、1回目はココがいちばんの発見になってしまいました。
envyさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-03-06 18:33:13)
42.ネタバレ ちょっと採点が甘いが7点評価で。

原作を読んだ上での評価だが、複雑極まりない原作をよく咀嚼した映画作品だと思う。
原作は曖昧な表現の文章が連続する上に、この映画以上に時系列がいじられていて、読者は頭を抱えながら読み進めなければならない。
たとえば、ジョンハート演ずるコントロールが退職前に何を企んでいたのかも、原作では伏せられている。登場人物の人柄も、映画ではやや単純化されているが、原作はそうはいかない。時系列は入り乱れ、人間関係も錯綜。誰が敵なのかさえわからぬまま、霧の中を歩かされるような、そういう苦しさの中で、主人公は過去の記録を読み漁り、丹念に記憶を再生しながら、その記憶の不審点を洗い出し、二重スパイを追い詰めていく、というのが原作の素晴らしさだった。

映画版では、原作の展開をある程度省略し、簡素化しながらも、そのエッセンスは抽出する事が出来ている。特にゲイリー・オールドマンの抑制された演技は秀逸。原作では主人公スマイリーは背が低く小太りの中年という設定だが、長身のゲイリーを見ても、普通にスマイリーっぽく見えてしまう。

ただ残念なのは、原作最大の魅力である、「過去の記録を徹底的に再調査し、記憶を蘇らせながら、不審点を洗い出す」過程が、この映画ではあまり描けていなかった。こんな地味な場面を映像化して面白くなるか実に怪しいのだが、ここが原作最大の魅力だから、映画版も何としても追及してほしかった。
本作を見て、難し過ぎるといっている方は、原作を読むともっと頭を抱えそう。でも、その迷宮のような世界をどうにかこうにか読み通すことで得られる、スパイの世界の寂寞感や荒涼感、その読後感はなかなかに味わい深い。ぜひ原作にも挑戦してほしい。
nakashiさん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-01-12 11:32:08)
👍 1
41.ネタバレ よく言えば重厚、悪く言えば退屈。「陰謀」や「真相」が鍵の映画ではなく、イギリス諜報局(サーカス)のなかの人間関係の機微を楽しむ映画だということがわかってくると、楽しくなってくる。そこで描かれるのは、、カーチェイスも銃撃戦もなく、黒いスーツを着てなかなか本音を見せないイギリスのおっさんたちの人間関係なので、そんなのに興味がない人にとっては退屈でしかないのだろうけれど、1回目に「退屈」に見えたシーンも、2回目を見れば、そこにさまざまな意味が込められていることがわかり、全く別物に見えるのが面白い。罠にかかっているのに気づかずドヤ顔してしまう人、「同性愛」だと思った瞬間に全く意味が変わってしまう台詞、そしてどんな哲学的なことを考えているのかと思いきや実は奥さんのことしか考えてなかったという顔など、背景が分かると英国紳士たちの「演技」の奥深さを楽しめる。そして、ラストに人間関係がつながったところで再生されるパーティ・シーン(これは音楽も含めて本当に名シーン!)。このカタルシスは、結局この映画がスパイ陰謀モノではなく、組織のなかの人間関係モノだったことを如実に表しています。ただ。そう考えると、キャストのバランスの悪さは気になる。基本的には、主人公スマイリーと、ボスのコントロール、主要な幹部4人(ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン)に加えて、その部下2人(ギラムとブリドー)のあいだの人間関係を描くのだけれど、やっぱりコリン・ファースのオーラというか存在感ありすぎなので、ほかがかすんでしまう(ブリドー役はとてもがんばっていたけど)。そのアンバランスがけっこう、そのまま本編のストーリーにも絡んできてしまうので、それがよかったのか、悪かったのか。「難解」というよりは、ほとんどの台詞やシーンが多義的なので、それを楽しむための映画といったところでしょうか。
ころりさんさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-08-06 09:42:09)
40.ネタバレ ゲイリー・オールドマンがまさかジョージ・スマイリー役に抜擢されるとは夢にも思っていなっかったんですけど、これが実際に演らせてみると実に素晴らしい演技です。ル‣カレのいわゆる“スマイリー五部作”で本格的に映画化されたのは本作が初めてで、そう言えば『寒い国から帰ってきたスパイ』にはチラッとスマイリーが登場していた記憶があります。TV版のアレック・ギネスが今まで最高評価だったみたいですけど、これは残念ながら観たことがありません。 確かに難解とまでは言わなくても非常に判りづらいストーリーであることは確かです。でもこれがル‣カレの原作が持つ雰囲気を見事に再現しているんじゃないでしょうか。彼のスパイ小説は、英国情報部のメンバーたちのバックボーンであるオックス・ブリッジとパブリック・スクールの狭い世界を理解していないと、読み通すのはしんどい作業になります。また派手なアクションはほぼ皆無と言って良く、スマイリーたちも拳銃を手にするシーンはありますが、発砲するわけでもない。ソ連側のスパイ・マスターであるカーラも最後まで画面に姿を見せることもなく、下手にラスボスみたいに暴れさせる安易なストーリーじゃないことにしびれますね。また70年代が時代設定とは言っても、まるで倉庫の中にオフィスがあるようなサーカス(英国情報部)の質素ぶりが英国の落ちぶれぶりが感じられていい雰囲気です。そして観てて判ってくるのがサーカスというか英国エスタブリッシュメント層のホモ率の高さじゃないでしょうか。さすがにスマイリーにはそういう趣味がないみたいな描き方ですけど、彼以外のメンバーはみんな“お友達”なんじゃないかと疑いたくなります。本作では真逆な性癖みたいなキャラになっていますけど、べネディクト・カンバーバッチが演じるピーター・ギラムも原作ではゲイだったと思います。 とても万人にはお薦めできませんが、ル‣カレのファンには必見の映画だと思います。そして世界はゲイリー・オールドマンの価値に気づいていなさ過ぎる!
S&Sさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-20 22:18:17)
39.年齢制限あるも過激描写はほぼ遠景なので、家族でも案外鑑賞できるかも?ただ子どもには理解不可能な世界。大人向けとしてももう少し分かりやすくできたのでは?と思う。いたづらに難解にしてるのかもという疑念から、本来8点クラスのところ、1点マイナスにしました。あと、英国人の無口さをみて、自分もありのままでいいんだと安心しました。これがこの映画を観てのいちばんの収穫かな?
えぴおうさん [DVD(字幕)] 7点(2014-09-12 11:30:54)
38.ストーリーがわかりづらいのはとりあえずいいとしても(いや、困るんだけど、まあ「物語がワカル」ことが映画を楽しむ必須条件でもないので)、本作、物語がなかなか「動かない」ってのが、もうちょっと何とかならんもんでしょうか。推進力の乏しさ。一方でそれを補うのは、ひとつには入念に描写された各シーンの印象深さであり、またひとつには、抑制されつつもそれぞれの存在を主張する俳優たちの表情であり。大のオトナたちが繰り広げる命がけのスパイごっこ、それを静かにかつ残酷に描きだした作品です。その点では大いに見ごたえあります。しかし、ゲイリー・オールドマン、抑制した演技とは言え、それが何だか“抑えたフリを演技した演技”とでも言いますか、いかにも「実はワタクシ曲者なんです」とアピールしている感じがして、うーむこれでいいんだろうか、とやや違和感が。そうそう、あと、冒頭タイトルが出るタイミングの悪さも違和感ありました(この「いまさらタイトル出すなよ」という間の悪さも、推進力を損なってる一因じゃなかろうか)。
鱗歌さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-06-24 00:02:31)
37.ネタバレ これは渋い。難解だけど、2回3回と見ても特に変わりないです。1回目を注意深く見ればだいたい分かります。登場人物の顔と名前を一致させるのは大変だけど、特徴あるキャラクターと言うか俳優人は有名どころばっかり出てるしね。スパイと言うか諜報人の実情をリアルに描いた「銃撃戦もカーチェイスもないスパイ映画」として後世に語り継がれる作品でしょう。これでもうちょっと娯楽性も入れてくれたらと思うけど、それを言ったら007を見ろと言われるだけだしね。評価は難しい。
ぴのづかさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-04-30 17:23:42)
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【点数情報】

Review人数 56人
平均点数 6.21点
011.79%
100.00%
235.36%
323.57%
447.14%
5712.50%
61017.86%
71628.57%
8610.71%
958.93%
1023.57%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 Review0人
2 ストーリー評価 6.00点 Review1人
3 鑑賞後の後味 8.00点 Review2人
4 音楽評価 10.00点 Review1人
5 感泣評価 Review0人

【アカデミー賞 情報】

2011年 84回
主演男優賞ゲイリー・オールドマン候補(ノミネート) 
作曲賞(ドラマ)アルベルト・イグレシアス候補(ノミネート) 
脚色賞ブリジット・オコナー候補(ノミネート) 
脚色賞ピーター・ストローハン候補(ノミネート) 

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