映画『万引き家族』の口コミ・レビュー

万引き家族

[マンビキカゾク]
Shoplifters
2018年上映時間:120分
平均点:6.38 / 10(Review 94人) (点数分布表示)
公開開始日(2018-06-08)
公開終了日(2019-04-03)
ドラマ犯罪もの
新規登録(2018-04-07)【にゃお♪】さん
タイトル情報更新(2024-09-28)【イニシャルK】さん
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監督是枝裕和
キャストリリー・フランキー(男優)柴田治
安藤サクラ(女優)柴田信代
松岡茉優(女優)柴田亜紀
城桧吏(男優)柴田祥太
樹木希林(女優)柴田初枝
池松壮亮(男優)4番さん
緒形直人(男優)柴田譲
森口瑤子(女優)柴田葉子
蒔田彩珠(女優)柴田さやか
山田裕貴(男優)北条保
片山萌美(女優)北条希
柄本明(男優)川戸頼次
高良健吾(男優)前園巧
池脇千鶴(女優)宮部希衣
黒田大輔(男優)JK見学店店長
松岡依都美(女優)根岸三都江
笠井信輔(男優)ニュースキャスター
毎熊克哉(男優)日雇い派遣の管理者
堀春菜(女優)
足立智充(男優)
井上肇(男優)
脚本是枝裕和
音楽細野晴臣
撮影近藤龍人
製作石原隆〔製作〕
ギャガ
フジテレビ
配給ギャガ
美術三ツ松けいこ
衣装黒澤和子
編集是枝裕和
あらすじ
東京の片隅の今にも崩れ落ちそうな古家に住む家族。家主である老女と息子夫婦。夫婦の長男に嫁の妹。一家は老女の年金に息子夫婦の少ない収入で細々と暮らしていた。そして足りないものは専ら父子が万引きをして来るというアウトローな暮らしぶりだった。ある冬の日、万引き帰りの父子が近所の団地の廊下にしゃがみこんでいる幼女に気付き、ほうっておけずに連れ帰ってしまう。その女の子は親の虐待を受けていたことが判り、そのまま長女として育てることに。貧しいながらも一家は家族の絆を深めながら平穏に暮らすのだが、あるきっかけでその生活は一気に崩れ去ってしまう。そして一家の陰の部分が明るみに出されていく。是枝裕和監督によるヒューマンドラマ。カンヌ国際映画祭のパルムドールを始め数々の映画賞を受賞。
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💬口コミ一覧

94.ネタバレ  私が間違っていました。どうもすいませんでした。すばらしい映画です。
 【強烈ネタバレあり】 (中略)
 本来の日本の社会とは、この映画に出てくる柄本明の駄菓子屋さんのように、わかって
いても事情を汲んで見逃す人たちの社会である。逆に飴を与えるなどし、時間をかけて
本人の気付きを待つことらへんに、落とし所を見出していたはずである。
 そう、この映画はじつは祥太という少年の「気づきの映画」でもあるのだ。

 「妹にはさせるなよ。これ」秘密のサインであったはずの、指をくるくる回す行為まで
見抜かれていた。
 そのショックにより、少女の誘拐が世間で騒がれてすらまだ動き出さなかった、映画に
おける「仮家族の物語」が、ようやく静かに動き出すのである。なんといきなり土砂降り
の雨が降り出すのだ。このことは、この映画がじつは、タイトルに反して家族でなく
「少年を主観とする映画」であることの、最初の証左となる(映画とは量子だ!)。
 ほぼ同時に安藤サクラは職場をクビにになり、フランキーとの交合に慰めを求めること
になる。さらにその夜、花火大会の「音」だけを聞いて家族たちは「もう、(この物語
も)終わりだね」とつぶやくことになるのである。
 (中略)

 「最後の思い出」、と思ったかどうかはわからないが、家族は唐突に海へと向かう。
 この場面において、海辺で遊ぶ家族を目で追いながらなにか言いたそうに口を動かす
樹木希林の「最期」のショットは強烈だ。
 彼女は何を言いたかったのだろうか。いや、言おうとしなかったのだろうか。

 希林の死後、少年は両親が犯罪を犯し、その年金やへそくりを搾取する様子をも目の
当たりにする。
 気づきを経た少年は、もうそれらの行為を容認できない。そのことはフランキーから
車上荒らしに誘われても、参加しないことによって示される。少年は迷い始めた、という
より、両親に対する明確な疑問を持った。

 次の展開点のきっかけをもたらしたのは、またしても柄本明である。「忌中」という
字を読めなかったにしろ、駄菓子屋が休みであることを知った二人は、しかたなく二人
だけでスーパーへと向かうのである。
 入店前、「ここで待ってて」と言ったにもかかわらずスーパーに入ってきた妹が、
見よう見まねで指を回し、万引きする素振りを見せる。それを見た少年は、ついに
「仮家族の物語」を自ら破壊することを決断するのである。

 結果的に一家は拘束され、安藤サクラの「おたふく風邪泣き」という名シーンを経て、
仮家族は解散させられる。

 サクラは面会に来た少年に対し、はじめて駐車場で出会った時の状況を伝え、フラン
キーに対し「この子は私達とじゃだめなの」とつぶやく。彼女は少年の変化を見抜いて
いたのだ。
 少年は翌日、ラス前のバスのシーンで、フランキーに「わざとつかまった」と告白する。

 バスの座席に座った少年は、フランキーの呼びかけにすぐには振り返らなかった。その
後しばらくたってから振り返るのである。ということは、少年にはフランキーの声が
じつは聞こえていて、あえて無視したのだ。

 なんというリアル。ごく僅かな動きと表情のみで、もう二度と会わないという決意の
固さを示した!



 このように、この映画はけっして(一部で批判されているように)万引き行為を擁護
するような映画ではない。むしろ逆に、悪事に対する模範的な回答をしている映画だと
言うこともできる映画である。

 少年がスイミーの物語に関して「でもそれじゃあ大きな魚が可愛そうだよね」と言った
ように、現実は物語的明快さでは捉えきれない面が多々ある。映画はその多義性によって、
世の中のそうした面を逐一描写できる。

 「複数の事象」を並行して示すことにより、世の中の複雑さ、価値観の多様性を同時に
示すことが可能な芸術が映画なのだ。観客である自分と、スクリーンの自分(たち)の
複数の視点や価値観や時空間が「同時に存在」していることが「実感」できること。その
ことこそがまさに映画の快楽なのだ。

 忙しいスケジュールの中、こんなにいろんな意味で最高級の映画を作り上げてしまった
実力には感嘆するしかない。
 この監督は我が国の誇りであり、宝である。
 おめでとう、そしてありがとう。
 私も自分のいる意味について多少勇気をもらえました。

 最後に、蛇足。先述したようにある立場からすればやむを得ないことかもしれないが、
ヒステリックな荒らし行為によってこのすばらしい映画の価値を少しでも損なうことは、
どうかなるたけ避けていただきたいと思う次第である。
アンギラスさん [映画館(邦画)] 10点(2018-06-20 18:59:55)
👍 2
93.ネタバレ 血のつながりってなんだろうね。6人とも全員が血縁の無かった擬似家族。でも、互いを思いやる気持ちが各々にあって、人間のコロニーとしては理想的だったと思う。
この家族、存続してはダメですか。そりゃオヤジが頼りないとか色々突っ込みどころはあるけれど。昨今の児相の機能不全を考えると虐待されてる子を攫ってきて勝手に保護するのはもうアリなんじゃないのかな。社会全体で認めてしまえばいいのに。そして家庭教育の至らなさがあれば、柄本明のような近所のオヤジがびしっと諭してくれる、そんな社会の方が好きだ。
でも現実は、嘘家族は解体で上の子は施設行き、幼い子は虐待親の元へ戻される。先入観から一歩も出ない意地悪婦警に信代が詰問されてる時、ワタシも信代と一緒に泣いた。悔しくて。「(子供は)あなたのことをお母さんと呼びましたか?」そんなこと言うな。実母なんかより、よっぽど母親だったんだ。
今作は、邦画でも最高峰の演技を見られる作品でもあります。樹木希林の初枝婆ちゃんはアッパレなまでに食えない存在でした。孫娘(擬似)の水着はせっせと試着させたうえ万引き(!)、パチンコ屋で隣のドル箱をつらっとガメて、さらには夫を略奪した家庭(一世代下だけど)へ温厚カツアゲ。まさに年季入り、奥が深い。希林さんを失った喪失感はハンパないけれど、安藤サクラのような若手がいるということは、日本映画界にとってとても幸せだとも思うのです。
tottokoさん [地上波(邦画)] 9点(2019-11-19 17:02:33)
👍 2
92.ネタバレ トウモロコシ
風呂
車上荒らし
安藤サクラの涙
ラストシーンはスクリーン右側を向く少女
no_the_warさん [映画館(邦画)] 9点(2018-12-27 22:48:47)
91.先行公開の初日に観に行く。
三度目の殺人がまったく面白くなかったし、海よりも〜もそれほどだったので
不安だったけど、とてもよかった。いい映画。
aimihcimuimさん [映画館(邦画)] 9点(2018-08-15 15:26:43)
90.土手を歩いていて、下校途中の同い年くらいの男の子たちとすれ違ったときに「学校は勉強できないヤツが行くところだ」と呟く祥太。
家のすぐ隣で楽しげにボール遊びをする父子の声を聞き、空気を溜めたビニール袋をサッカーボールに見立てて祥太と戯れる空想を始める治。
こういう『一般的』とされる人たちと、本作に描かれる『特殊』な主人公たちを対比する演出がさりげなくて自然で好き。
そのときに『一般的』とされる人たちの顔をあまり映さないのがポイントだと思った。一般的な生活を営む人からすると、この家族はあまりに異質で、交流するきっかけもなく、自分たちからは『見えない存在』となっている。もっといえば、異質すぎる故に交流することを拒み、わざと見ないようにしているのかもしれない。
その一方で、この万引き家族のような『特殊』な側に立つ人たちも、他人から知られてはいけない秘密を抱えている故に、社会から目をつけられないように『見えない存在』として生活することとなる。

見えない現実。見たくない現実。
それを優しいトーンで僕たちに見せてくれる是枝さんの変わらぬ意思に感銘を受けるばかりです。
Y-300さん [映画館(邦画)] 9点(2018-08-07 23:55:12)
89.ネタバレ まず演出や編集が抜群に上手い。この登場人物たちはなぜ疑似家族になったのか、ならざるを得なかったそれぞれが抱える問題とは何か、というのを説明的でなく話が進むにつれてじわじわと開示していくやり方や、行間を作りつつ観客の想像に委ねる・観客に想像させるギリギリのラインの編集の仕方が凄く上手い。前作の三度目の殺人よりも少し観客寄りになり研ぎ澄まされた感じがした。
普段よくニュースで見聞きする、万引き、強盗、子供の虐待やネグレクト、痴情の縺れの殺人、年金の不正受給、孤立した老人、身を売る家出少女など、目を背けたくなるような社会の闇を全部まとめて突っ込みましたという感じで、まぁ実際にはあり得そうにないこの映画のこの疑似家族は(細野晴臣の静かで奇妙?な音楽も相まって)どこか戯画的というか寓話的に描かれており、もちろん間違いだらけのことばかりでそのツケが周り最終的に離散する訳だけど、そういった善人でない、間違いだらけの登場人物がメインだからといって「同感できない」「犯罪を美化するな」とか言って批判するのは違うのでは、と個人的に思う。
この疑似家族は全員血縁による「本当の家族」では幸せになれず、疑似家族になることで幸せを感じることができていたが、それを引き裂くのが一般的に正義とされる福祉や警察であり、果たして血縁による戸籍上の、本当の家族というのが正しいのかということや、犯罪の温床は貧困であるということを痛感させられる社会的に底辺の、正当な手段を知らない、とることができない、犯罪行為をしなければ生きていけない人々が存在するという社会の矛盾や問題を提起している。とても暗いし重い。
しかしストーリーの中で主人公のポジションにスライドしていく祥太は歳を重ねていることもあり、万引き行為や初枝の死体遺棄、初枝のヘソクリを貪ったり、ゆりにまで万引きをさせる疑似両親たちに疑問を抱き、わざと万引きに失敗し捕まることで疑似家族と犯罪により生計を立てることから決別し、真っ当に生きることを選択する。また、ゆりは間違いだらけの疑似家族の中で、数少ない「本物の正しい」優しさや愛情を知ることで、実の母親の愛の無さを知る。当初は虐待する両親とベランダだけの狭い世界で生きてきた、ベランダの塀の隙間から外を覗き見ていたゆりだったが、疑似家族と愛情を知ることで、ラストカット、生きる希望を外の世界に見いだすことができたようにゆりはベランダの塀の上から外を眺める。
疑似家族を経て対照的なものを得た子供ふたりが成長した姿に希望を抱かずにいられない。
eurekaさん [映画館(邦画)] 9点(2018-06-22 09:50:17)
👍 2
88.ネタバレ 是枝監督得意のリアルな台詞回しに、超ド級の演技派キャスト(特に安藤・樹木・松岡)が加わり、冒頭の食卓シーンだけでお腹いっぱいになれます。
鍋から直接菜箸で麺をすする安藤サクラ、食べてる横で爪を切る樹木希林。むせ返るような生活感の嵐に飲み込まれ、つかみはOK。
毎度感心させられる子役の演出は今回も冴え渡っています。

「歩いても歩いても」や「海よりもまだ深く」でもリアルな家庭描写は秀でていましたが、今回はさらに安藤サクラが加わったことが大きかったのではないでしょうか。
終盤の取調べシーンはもちろん素晴らしいのですが、それ以外にもパートの同僚への口封じや、婆さんの死後の冷めっぷり等、
ゾッとするような冷淡さを見せながらも愛さずにはいられない複雑なキャラクターを見事に演じきっています。しかも恐ろしく自然に。

また過去の是枝作品では過度にエモーショナルにならない抑制された演出が物足りなさにもつながっていましたが、
今回は淡々と進む中にも、松岡茉優と池松壮亮のやり取りや、安藤サクラとリンちゃんの風呂場と焚き火のシーン、音だけの花火をみんなで見上げるシーン等、
情緒的なシーンも適度に盛り込まれていて、過去作と比べてもより一般大衆に向いた作りになっているのではないでしょうか。

個人的には圧倒的な女優陣に比べて、リリー・フランキーの演技力はワンランク落ちるかなあというのが気になる所でした。
まああて書きしただけあって、たたずまいや雰囲気はこの一家のダメ親父にピッタリですし、本業イラストレーターって考えたらそれでも凄いんですが。
でも純粋な演技力で言ったら専業の役者にはまだ劣っていると思うんですけどねえ。
今の映画界は本当にリリー・フランキーとピエール瀧が好きですね。

ラストについては、救いがないと感じる人も多いかも知れませんが、自分はリンちゃんの視線の先に誰かがいたにせよ、いなかったにせよ、
あの一瞬の表情が、一家で過ごした時間を肯定しているものと感じました。
カンムリワシさん [映画館(邦画)] 9点(2018-06-13 00:30:22)
👍 2
87.ネタバレ 「本当の家族」とは何なのか。
「偽物の家族」に絆はあるのか。
そんなことを考えさせられました。

生活水準はかなり低そうに描かれている万引き家族ですが、悲壮感は漂っていません。
むしろ、昭和の幸せそうな大家族にすら見えます。
しかし、法律や世間は彼らのような結び付きを許さず、冷たく突き放します。
家族崩壊のきっかけが、新たに家族として加わった幼い女の子の万引きというのも、らしいところです。

「捨てたんじゃない、拾ったんです。」
「普通のおじさんに戻るわ。」

夫婦役の2人の名演っぷりと、この印象的なセリフが頭に残っています。
結局、バラバラとなった家族の末路は詳細には描かれず幕を閉じますが、きっとみんなそれほど幸せではないだろうと想像します。
アーウーマンデさん [映画館(邦画)] 9点(2018-06-12 02:35:12)
👍 1
86.ネタバレ  現代の貧困社会を描いた作品という先入観で見てきましたが、象徴的に「スイミー」が引用されているように限界な人たちのコロニーへの逃避の話でした。黒い魚がいなかったからでしょうか、彼らは現実に勝てず現実的な、終盤の警察のシーケンスに入っていきます。気のきくオヤジ(柄本明)の店が忌中だったところが映画的なサインなのでしょうか。
 全体を通して演技は自然に行われ、序盤の食卓のシーンから高い品質が伺えます。各人の労働の設定も現代的で、ダメそうなオヤジが「日雇いだけど労災出るって」とぬか喜びして帰ってくるところや、クリーニング工場のパートというリアル感。また若い女が性風俗で働いているという設定も、他作ではありがちな安易にキャバ嬢にせず「見学JKリフレ」という2010年代のガチ性風俗トレンドをぶっこんでいます。
 審査員が一新されたカンヌで大賞を取った要因は、信代(安藤サクラ)のシーンのほとんどがカンヌ女性審査員長の好みに適合した、これに尽きるでしょう。特にゆり(じゅり・りん)ちゃんの持ってきた服を庭でたき火して「好きだからたたくなんてのは嘘。好きだったらこうするの」と抱きしめるシーン。「このシーンでカンヌを取った」といっても差し支えないところです。ほかにも祥太にゲップ指南するところも秀逸です。4人の女性はそれぞれの年代の危機を乗り越える人でありながら、彼女たちの強さや誇りは一様に弱者に対する共感です。是枝監督のエゴの表出でもあるわけです。
 お互いのことを皆まで話しているわけではないこの家族もどきたちは、例えば男関係で今日いいことがあった信代と亜紀(松岡茉優)は出来事のヒントだけで楽しく盛り上がれます。亜紀は意地の悪い女性警官(池脇千鶴)に吹き込まれ、おばあちゃんは金のために私と生活していたのかと疑うことになりますが、ときおり亜紀の体温を感じては「良いことがあったの、嫌なことがあったの」と見破る態度は彼女のことを親身に心配していることがわかります。警察は都合を優先し共感を後回しにしているのでこの作品では悪者ということになるでしょう。
 しかしこの人たちがそれこそ「偽物だからこそ、選んだからこそ絆が深い」とは言えないと思います。これはあくまで友情です。ラストシーンでは、乳歯が抜け、海へ行った思い出を持ち、アホな数え歌を覚えたゆりちゃんが、あの人たちを探すようにします。きっと彼女はそれなりに成長を果たしたといえるのでしょう「洋服を買ってあげる」にきちんと拒絶の意思を示せました。2月のあの日、コロッケを3つ食べていなければ死んでいた彼女は、それまでの人生、天国にいったおばあちゃんに優しくされて育ちました。そのあとの人生の危機に訪れた家族のようなふりをしたがるあの人たちはきっと、のび太にとってのドラえもんのような存在に違いありません。
hiroshikasugaさん [映画館(邦画)] 9点(2018-06-09 01:10:04)
👍 2
85.ネタバレ 犯罪を美化していると言う声もあるが、私にはそんなふうに感じられなかったなぁ。悪いものは悪いと描いているし、ちゃんと悪は裁かれているし。

最初は万引きをしなければ生活して行けない程困窮した一家なのかと思ったが、どうもそうではないらしい。
皆健康そのものだし、働いている大人が3人も居るし、おばあさんは年金貰ってるし、別に万引きしなくても生活できるのである。

ではこの家族は何故万引きをしたがるのか?
単に悪い事だと思っていないというのもあるが、主に万引きを行っている父親が息子に万引きさせている理由がヤバかった。

「他に教えられる事がなかったんですよ」

ええ?そんな理由で?(驚き)
即ち"万引き"という行為はこの映画において父親が子供に示す単なる特技であって、本気で万引きが必要な訳ではないのである。言ってみれば趣味みたいなもんなので、その辺は全然共感できなかったし、こんな父親嫌だと思った。

この父親が単なる犯罪野郎の上に、息子にはよく思われたいというだけの、ただの寂しいおやじである。
最後バスの中で子供に手を振って欲しかったなぁとか甘ったれた事を言っている人も居ましたが、そんな事をしては駄目。このおっさんを甘やかしてはいけない。また同じ事をする。そういう意味では突き放して終わるので、評価できる。

あと良かったのは、樹木希林の存在。一挙手一投足全て、出てくるだけでなんか面白い。あと、リリー・フランキーの情けなさ全般。特筆すべきは安藤サクラの色気。誘いに乗らない奥手な夫に対して自分から襲いかかるシーンが最高だった。有無を言わさずソーメンを口移しで流し込んで行くスタイル!
ただ、松岡茉優と4番さんとのシーンは何が感動的なのかサッパリわからなかったが…。
ヴレアさん [映画館(邦画)] 9点(2018-06-08 18:48:13)
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84.ネタバレ 主役の男はクズでどうしようもなく、底辺のような暮らしをしつつもどこか豊かさがある。
同じ傷を持ったもの同士が寄り添い、スイミーがまぐろの形を作るかのように家族の形態を作る。
この映画はやはり安藤サクラだろう。警察での彼女の演技とセリフにすべてがある気がした。
人が捨てたものを拾っただけ。
おそらく虐待やイジメやどんな迫害を受け孤立した人物にもこの家族は居場所を作るだろう。
そして彼らにはそれが普通であって、社会のルールなどは平気で踏みにじる反面、
人として失ってはいけない何かを登場人物は皆共通して持っている。
樹木希林の声にならない「ありがとうございました」
バスで去っていく少年の声にならない「父ちゃん」
そして最後バルコニーで台に乗り外をのぞく少女もおそらく、声にならない声で誰かを呼んでいる気がした。
jetter3さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2020-07-26 16:48:32)
83.万引きは絶対いけないことなんだけど、それに、ビールとか旅行とかしてるんだからきちんと暮らせばそれなりに生活できているはずなんだけど、でも、そういう価値観とか善悪の判断だけでは計れない世界があって、普段は観ないふりをしているって事なんですな。
万引きなんかしていたあの父親?は少なくとも、2人の子供たちを、一時的にも救うことが出来たわけで、私にはそれが出来たかどうか。
あの男の子と女の子、あの後どうなるんだろう。
木村一号さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2020-01-26 14:51:50)
82.ネタバレ 樹木希林があんな風に完成するとは。見事だった。
音楽も少なめで良い。細野晴臣に依頼したのは大正解だったのだと思う。
日常の会話のトーンそのままで会話を収録しているところが非常に良い。
安藤さくら、リリーフランキーについては、確立した評価に異論がなく、本作でも遺憾無く発揮されていた。
「誰も知らない」でその監督力を見せつけられて以降の是枝裕和の作品にはやや期待外れのところがあったが、
「いつもうまくはいかねぇよ」と言うことなのだろう。
誰かが、本質を追求していってくれなければ邦画は終わると危機感があったが、
こうやって力のある監督が牽引して行ってくれることが分かって安心した。
よこやまゆうきさん [インターネット(邦画)] 8点(2019-11-12 14:56:45)
81.昔見た「誰も知らない」より、ずっと良かった。
「誰も知らない」は、話が進まず退屈だったし、ウソくさかったけど、こっちはいかにもありえそうな生活だし、楽しい。
やってることは万引きなんだけど(笑)。
虐待家族と万引き家族だったら、そりゃあ万引き家族の方が楽しいよね。
後から考えたら、どっちもダメだろって思うけど(笑)、映画見てる最中は気にならなかった。
まあ、風俗店での客との交流とか、おばあちゃんの死後の扱いとか、「そりゃ違うだろ」と思うシーンもあったけど、ギリギリ状態の仲良し家族をうまーく描いてる。
クライマックスからラストにかけてのまとめもうまいなあ。
最初からの「どうみても長続きしない感」からの伏線をうまーく回収して、キチンと決着をつけてる。
この家族は、自分の目標とした家族とは全然違うけど、すごくうらやましい。
まかださん [ブルーレイ(邦画)] 8点(2019-10-23 00:25:04)
80.私たち家族を結びつけているのは、お金、血、それとも心なのか。家族の在り方を考えさせられる作品。是枝監督が「誰も知らない」や「そして父になる」で描いてきたテーマを、引き続き題材にしている。
安藤サクラと松岡茉優の演技もまた素晴らしい。
アクアマリンさん [映画館(邦画)] 8点(2019-07-27 18:53:33)
79.ネタバレ 本物より偽物の方が勝っているなんてことはいくらでもあるし、このような疑似家族の絆も分からなくもないですが・・・もう一度見直したくなるような物語でもないと思いつつ二度見。
刑務所での接見シーンが印象的、
♂「悪いな俺の分までよ」
♀「あんた前あんだから・・5年じゃきかないよ」
♂「でもよ」
♀「私楽しかったからさあ・・こんなんじゃお釣りがくるくらいだよ」。
理不尽な過去を引きずっていてもこの感性、それ以外の場面も含めてこのヒロインの言動にとても心が動かされます。
ProPaceさん [地上波(邦画)] 8点(2019-07-22 21:51:39)
👍 3
78.ネタバレ 似通った題材の「誰も知らない」の方が若干良かったかな。
大人が全員「悪いところもあるけど、良いところもある」ってところを見せたいって意図からかは分からないが、風俗嬢を入れたのが ちょっとブレる原因になっていた気もする。お婆さんの悪いところは、「ゆすりをやっていたこと」ではなくて、「夫婦に利用されているように見えて、利用していた」とかでも良かったかも。
子役を含め、配役・演技は見事。
くろゆりさん [地上波(邦画)] 8点(2019-07-22 08:02:48)
77.ネタバレ いい映画の条件、その一つが余韻だと思うけど、是枝監督はこの部分においてとても長けているね。あえて明確な答えを出さないスタイルを逃げだとか表現する人もいるみたいだけど、簡単に答えが出ないテーマをあえて選んでる訳だから当然っちゃ当然かな。いじめと同じでみんなが良くないことだと分かりきっているのに、一向になくならないわが子への虐待。その一方で、確かに存在する親になりたくてもなれない人たち。保護という名の誘拐で作られた血の繋がらない家族。懲役を喰らっても、お釣りが来るくらい楽しかったと振り返った日々と、同時に進行した犯罪行為… そして別れ。数々印象的なシーンがあり、いろんなことを考えさせられて、心に残るこの感じはさすがパルムドールといったところか。安藤サクラ、リリー・フランキー、樹木希林などの素晴らしさは語り尽くされてるだろうし、自分も同意見なので、あえてここはちょい役を称えてみるけど、柄本明や池脇千鶴など実力者が細部をガチっと固めてるのも大きかったなー。
リーム555さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-05-21 19:30:12)
76.ネタバレ ケン・ロ―チ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』同様、見えない貧困を初めとする社会問題に対する無関心への静かな怒りを発した作品だと解釈した。劇中で声を張り上げたり、暴力をふるうことを一切せず、グレーゾーンでひっそり生きる"家族"が皮肉にも血が繋がった家族よりも家族らしくて、ひたひたと心に沁み入ってくる。万引きといった犯罪行為が許されるわけでもない、だが盗みによって救われた命があり、正論だけでは何も解決できない。それでも犯罪で作られた家族の幸せは末長く続かない、終わらせなければならない。多様な視点で善悪の垣根を揺り動かす。仮に超監視社会になって、劇的に犯罪が減っても、都合の悪いもの、汚いものを切り捨てるだけの"美しい日本"を炎上に加わった人たちはその未来を望んでいるのだろうか。自分を含めどこかしら誰かを見下して、他人事のように見ているのかもしれない。"息子"がバスから見たのは最後まで走り続ける"父親"なのか、エンドロール後に"娘"は助けられたのか、本作は世の中を変える力があるのか。"母親"の安藤サクラの涙が印象に残る。格差による断絶が進むだろう令和の時代において、虐待死のニュースを見ても当たり前すぎて何も感じない時代が到来する無情さを感じてしまう。面倒臭いから蓋をする。
Cinecdockeさん [DVD(邦画)] 8点(2019-05-17 00:34:07)
75.ネタバレ 疑似家族は「家族とは何か」を問うには格好の題材だし、個人的にもこの手の作品にはとにかく弱い。その設定だけで傑作認定したくなる本作でしたが、出来は期待以上でした。社会の見えない隅っこで、ギリギリのバランスで成立している疑似家族。この家族を成り立たせているのは嘘と打算とカネ。一見ノスタルジックな家族関係を描いているようで、実は互いを利用し合う疑似家族の怖い側面。でも、そのなかに一片だけれども存在する人間らしさ。だからこそ、一つ一つの場面で交わされる気持ちの交流が美しく心地よい。孫につい「慰謝料」と言ってしまう樹木希林とか、年金を持って帰ってきたおばあちゃんに嘘くさい優しい言葉を投げかけるリリー・フランキーとか、水着を買うシーンから安藤サクラの顔が変わるところとか、フランキーと安藤の情事のシーンとか、一つ一つのシーンに多義的で複雑なメッセージが込められていて見ていて全く飽きることがない(・・・というか、最近の是枝作品は情報過多で少し疲れるくらい)。工事現場でのリリーの大ケガやクリーニング店の「ワークシェア」など、この家族が生きていく基盤がいかに弱く脆いかが丁寧に描かれ、おばあちゃんの死(そして駄菓子やの店主の死)によって、そんなギリギリのバランスは脆く崩れ去る。それは、このような家族が生きることができる社会の「隙間」が、どんどん失われていることの象徴でもあり、終盤の警察官たちが繰り返す「正論」は、社会が完全に「余裕」を失ってしまったことを示しているのだ。でも、父親や母親はともかく、ショータやユリはその社会を生きていかなくてはいけない。そんな彼らの成長と危うさと強さとほんのちいさな希望を、この物語はきっちりと描いて幕を閉じた。そんな映画が、「余裕」のない人たちによって、わけのわからない論争に巻き込まれてしまったのは、本当に皮肉としか言いようがない。唯一、ちょっと残念だったのが、米国上映版を英語字幕付きで見たため、登場人物たちの言ってるか言ってないかわからないような台詞(浜辺のおばあちゃんとか、バスでのショータ君とか・・)にタイミング悪く「字幕」が出てしまって趣を台無しにしてしまったこと。両方とも名場面だっただけに・・・。
ころりさんさん [映画館(字幕)] 8点(2019-03-20 09:35:46)
👍 2
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《更新》:7日以内に更新

【点数情報】

Review人数 94人
平均点数 6.38点
033.19%
100.00%
222.13%
344.26%
466.38%
51010.64%
61313.83%
72728.72%
81920.21%
999.57%
1011.06%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 Review0人
2 ストーリー評価 8.50点 Review2人
3 鑑賞後の後味 7.00点 Review2人
4 音楽評価 5.00点 Review1人
5 感泣評価 Review0人

【アカデミー賞 情報】

2018年 91回
外国語映画賞 候補(ノミネート) 

【ゴールデングローブ賞 情報】

2018年 76回
外国語映画賞 候補(ノミネート) 

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