141. ダブルヘッド・ジョーズ<OV>
《ネタバレ》 双頭の鮫が二人の美女を同時に食い殺すショッキングな導入部で「掴みはOK」といった感じ。 こうして文章にしてみると残酷な印象も受けますが、実際に観てみれば「双頭」という非現実性が程好く作用している為か、あまり血生臭い映画ではありませんでしたね。 勿論、海が血で赤く染まる表現なんかは中々ドキドキさせられましたが、目を背けたくなるような人体破壊の描写は控えめという、程好いバランス。 どこかコミカルな雰囲気が漂っており、笑いに繋がってしまう場面もあったくらいです。 その最たるものが終盤の「ヒロインが双頭の間に挟まっているお蔭で食われずに済んだシーン」で、これにはテンションが上がりましたね。 (あぁ、確かに鮫からすると盲点だなぁ……)という感じで、説得力と意外性、可笑しさと馬鹿々々しさを備え持った展開であったと思います。 この手の映画だと「中々姿を見せようとしない鮫」に苛々させられたりもするのですが、ほぼ全編に亘って出ずっぱりで、その双頭フォルムを見せ付けてくれる辺りも気持ち良い。 籠城する舞台となるのが無人島(=正確には環礁)というのも新鮮でしたね。 何も考えず、画面に映る水着姿のお姉さん達を眺めているだけでも眼福であり、楽しい気分に浸れました。 勿論、ツッコミどころは多いです。 お約束の「俺達の事は良いから先に行け!」展開の際には(いや、確かに道にヒビは入っているけど……普通に通れるのでは?)と困惑しちゃったし「皆とはぐれて二人きりになる」→「二人同時に食い殺されてしまう」という展開を、終盤に立て続けに行ったのは、流石にやり過ぎだったと思います。 でも、そういう部分にツッコむ楽しさも含めて、自分としては満足度は高めでしたね。 ラストに生き残った二人も「一番頭が良く、優しい感じの兄ちゃん」「卑怯者でも見捨てず助けようとするような、気丈な金髪美女」という組み合わせで、ハッピーエンド色を高めてくれます。 あえて言うなら、折角の「ダブルヘッド・ジョーズ」な訳だから、鮫を左右真っ二つに両断するなどの、独特の倒し方で決着を付けても良かったかも。 とはいえ「最後は爆発させて倒す」というのが鮫映画のお約束でもある為、本作もそれに倣ったのは、致し方無いところなんでしょうか。 観賞前のハードルが低めだったからかも知れないけど、とりあえずそれは飛び越えてくれた一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2021-09-22 15:31:03)(良:1票) |
142. ゾンビランド
《ネタバレ》 世にゾンビ映画は数多く存在しますが「その中で一番好きなのは何?」と問われたら、本作を挙げるかも知れません。 そのくらい面白いし、楽しいし、魅力的な一品なんですよね。 文明社会が崩壊した理由を長々と語らず「ゾンビウイルスに汚染されたハンバーガー」がキッカケだとナレーションで軽く説明してしまい、後はひたすら主人公達が「ゾンビランド」で生き抜く様を描くという、そのシンプルさが心地良い。 主人公のオタク青年に、相棒となるタフガイ、ヒロイン枠とマスコット枠となる美少女姉妹という、登場人物のバランスも良かったです。 主人公が「ピエロ恐怖症」なんだと告白すれば、その後にピエロゾンビと戦うシーンが挟まれ、恐怖を乗り越えて成長する姿が描かれたりして、とにかく観客の期待を裏切らない作りになっている辺りも、実に素晴らしい。 そうやって、本筋に関しては王道を守りつつ、要所要所で「意外性のある場面」を挟み、飽きさせないようにしている工夫も上手かったですね。 「姉妹達の裏切り」にせよ「相棒のタラハシーが可愛がっていた仔犬の正体」にせよ、直接本筋と絡むエピソードではないので「初遭遇時から姉妹と仲良くなる」でも「タラハシーは仔犬を失ってしまった男」でも、構わないといえば構わないはずなんです。 でも、そこをあえて「裏切られた後に仲良くなる」「仔犬ではなく息子を失ったのだと知って、一同の絆が強まる」という形にする事によって、観客を驚かせる事にも、劇中の人物達に深みを与える事にも成功している。 この辺りの「お約束な魅力」と「意外性の魅力」との使い分けが絶妙で、本当に上手い脚本だなぁと、観ていて感心する事しきりでした。 恐らくは軍隊が乗り捨てていったのであろう戦車がさりげなく背景に映っている(しかも主人公達はそれを驚きもしない)とか、文明崩壊後の世界の描写に、ちゃんと説得力があった点も良いですね。 土産物屋で暴れて、店内を滅茶苦茶にする場面では「ゾンビ」(1978年)から通じる「文明が崩壊した世界で好き勝手やる楽しさ」が感じられたし、皆で暖炉の前に集まってモノポリーする場面なんかも、凄く好き。 「お金はいくらでもあるけど、もうモノポリーで使う事くらいしか出来ない」っていう皮肉さを、さらりと描く辺りなんて、本当に御洒落だと思います。 ビル・マーレイが呆気無く死んじゃうのは寂しいとか、姉妹はシャワーを渇望していたのだから、それを叶えるシーンがあっても良かったのにとか、遊園地でピンチになるまでの流れが無理矢理過ぎるとか、不満点もあるにはあるんですが…… それらもテンポ良く、ギャグを交えながら描かれているので、あまり気になりませんでしたね。 それよりも、小さな売店に籠城して、四方八方から襲い掛かるゾンビを迎え撃つ場面が、痺れるほど恰好良かった事。 クライマックスの舞台が遊園地だからこその、様々なアトラクションを駆使した「対ゾンビ戦」も丁寧に描かれている事など、長所の方が、ずっと印象深い。 終盤にて、主人公は「女の子の髪を撫でる」という夢を叶える事が出来たし、相棒も念願のトゥインキ―を無事ゲット出来たしで、カタルシスを存分に味わえる作りになっているのも、嬉しかったですね。 「僕達は皆、ゾンビランドで一人ぼっちだ」と呟いていた主人公が、家族を手に入れて、再び旅立っていく。 そんなハッピーエンドで終わる辺りも、文句無し。 遊園地で一日過ごした後のような、心地良い充足感に浸れる映画でありました。 [ブルーレイ(吹替)] 9点(2021-09-09 15:44:18)(良:3票) |
143. パーフェクト・ストレンジャー(2007)
《ネタバレ》 「お金は諸悪の根源よ」 「諸悪の根源は、金を愛する事。愛だ」 という男女の会話が印象的。 最終的に、男の方は「愛」ゆえに彼女に無防備に近付いて、その結果殺された形にも思えるし、中々皮肉が効いているように思えます。 この映画の是非に関しては「主人公が犯人だった」というお約束オチを受け入れられるかどうかに掛かっているのでしょうが、自分としては「ギリギリOKなんじゃないの」という感じでしたね。 女友達との駅でのやり取りが、とても仲良しには見えなかった事や「お母さんによろしく」という台詞が伏線であった事には、素直に感心。 父親の話題を出された際に、意味深に話を逸らしてみせたのも「性的虐待を受けていたから」と思わせておいて、実は「父親の死の真相を知られたくないから」だったと分かる形になっているのも、上手かったと思います。 勿論「やり方が回りくどすぎる」「主人公が犯人というオチありきで無理やりストーリーを組み立てている」など、ツッコミどころもあるにはありますが、何とか許容範囲内でした。 予備知識は殆ど仕入れず、先入観を持たないで観賞したのも幸いしたのかも知れません。 「マイルズはセクシー」の場面における、ストーカー的な気持ち悪さも良く出来ていたと思いますし、最後の最後、ようやく秘密を知る人間を全て始末したと思っていたのに、それさえも元上司に見られていたという「そこまでやるか!」なオチも結構好み。 映画の大半を占める「会社への潜入行為」「ブルース・ウィリス演じるハリソン・ヒルとの駆け引き」などには魅力を感じず、退屈な時間も長かったのですが、最初と最後が綺麗に繋がった感覚を味わえたし、満足度は高めでしたね。 期待して観ていたら「期待外れ」だったかも知れないけど、期待せずに見たせいか「意外とイケるじゃん」と思えたというか、そんな感じの一品でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2021-08-25 08:53:53) |
144. グラスハウス
《ネタバレ》 舞台となる「グラスハウス」は雰囲気満点。 ジムにホームシアターまで揃っているし(良いなぁ……住んでみたいな)って思えましたね。 海に面したレストランや、海辺の道路など、美しい場面が多い点も良い。 ヒロインのルビーが夜中にプールで泳ぐ場面なんかは、神秘的でエロティックな魅力がありましたし、ラストのカーアクションも中々迫力あったしで、ビジュアル面の満足度は高かったです。 では、シナリオ面についてはどうかと考えてみると……ちょっと微妙でした。 上述の通り、ビジュアル面には拘りが感じられたんだけど、それが裏目に出てる部分もあるんですよね。 夜のグラスハウス内での場面はともかく、まだ昼間のはずの校舎ですら薄暗い場面ばかりとか、流石に「やり過ぎだよ」って呆れちゃいます。 どうしても薄暗い場面ばかりにしたかったのであれば、そこは脚本でフォローして、不自然さを消すべきだったんじゃないかと。 主人公姉弟にはジャック叔父さんがいるはずなのに「グラス夫妻と一緒に暮らすのが嫌なら、施設に入るしかない」って言われるのも不思議だったし(その後、ジャック叔父さんに引き取られて幸せに暮らしてるとしか思えないエンディングとも矛盾してる)脚本の詰めが甘かった気がします。 それと、主人公姉弟があんまり「良い子」とは思えなくて、応援する気持ちになれなかったのも残念ですね。 例えば、麻薬中毒のエリンがルビーに寄り添うように死んでしまう場面なんかでも、観客は事前に「幼いルビーと仲良しだった頃のビデオを観て、感傷に浸る場面」を知ってる訳だから、ついエリンに同情しちゃう展開なんだけど、ルビーはエリンの死体を気味悪がってるだけなんです。 ルビーは観客と違ってエリンの悲しい一面なんか知らないから当然の反応ではあるんだけど、こういう描き方は、どうしても「感情移入出来ないヒロイン」って印象になっちゃいます。 この映画では最も重要だろう「良い人かと思われたグラス夫妻が、実は悪人だったと判明する場面」あるいは「主犯であるテリーに止めを刺す場面」にカタルシスが欠けているのも、如何なものかと。 特に後者に関しては、テリーが発砲する前に轢き殺してるので正当防衛って感じもしなかったし、もうちょい上手くやって欲しかったです。 「絵を描くのが趣味なヒロインが、防犯装置のパスワードをスケッチブックにメモする」とか、良い場面も色々あっただけに勿体無い。 何より悲しかったのは、せっかくグラスハウスが素敵だったのに、結局そこから飛び出して普通の道路でクライマックスを迎えちゃう事ですね。 せめて最後はタイトル通り「グラスハウス」で決着を付けてくれてたら、もっと良い形に仕上がったんじゃないかなって思います。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2021-08-16 16:47:55) |
145. ファイブヘッド・ジョーズ<TVM>
《ネタバレ》 (夏が来たから、サメ映画観なきゃ……)という謎の衝動に駆られて鑑賞。 シリーズの過去作二本は鑑賞済みで、今回「3」と「4」をセットで観る形になったのですが、良くも悪くも期待通りの内容であり、なんか妙に安心しちゃいましたね。 これが「予想に反し、意外な傑作だった」というパターンなら、逆にガッカリしちゃってたかも。 なんていうか「面白過ぎず、退屈過ぎず」っていう絶妙なバランスが、観ていて心地良かったです。 そもそもタイトルが「ファイブヘッド・ジョーズ」って時点で(あれ? フォーヘッドは? なんで順番飛ばしたの?)と気になっちゃう訳だけど、それに対する答え合わせが、劇中でキチンと行われている辺りも良いですね。 登場する怪物は「四つ首のサメと思わせておいて、実は尻尾の部分に五つ目の頭があった」という形であり(……なるほど、これはファイブヘッドにしておかないとマズいな)と納得出来ちゃうんです。 「三つ首のサメに思わせておいて、実は四つ首」という形だと、途中まで(前作と同じ数じゃん)という物足りなさが付き纏っちゃう訳だし、鑑賞前の違和感を承知の上で「ファイブヘッド」というタイトルにしておいたのは、英断だったと思います。 過去作に倣って、冒頭で「水着美女の姿を撮影しているパート」を挟んだり「ゴミを捨てて海を汚す人間への批判」も、堅苦しくない程度に盛り込んだりと、このシリーズのお約束が踏襲された作りなのも、安心感がありましたね。 特に前者に関しては、それ以外にも「女優さんが梯子を下りる際に、胸の谷間が良く見えるアングルで撮る」「水中カメラで胸やお尻をアップで撮る」というサービスシーンがあり、嬉しかったです。 性的に興奮するっていうよりは(ちゃんと観客を喜ばせようとしてるんだな)って思えて、安心する感じですね。 こういうのって、ある意味とても誠実な姿勢なんじゃないかって思います。 「ヘリに噛みついて墜落させるサメ」とか、低予算なりに見せ場も用意してくれてるし、前二作同様に、最後がハッピーエンドって辺りも良い。 この「ヘッド・ジョーズ」シリーズって、格別に出来が良いって訳じゃないんだけど、なんとなく憎めないのは、この「後味の良さ」が大きいんでしょうね。 主人公も含め、ちゃんと複数の人物が生き残るし、観た後スッキリした気分になれるんです。 「実は生きていたモンスターが、主人公達を襲って終わり」みたいなオチをやらないってだけでも、自分としてはポイントが高い。 そんな「お約束の遵守」「安心感を与える内容」な一方で、サメ退治のエキスパートであるレッドが、きちんと活躍して生き残る展開なのも、程好いサプライズ感があって、良かったです。 何せ「2」のダニー・トレホの死に様があった訳だから(どうせコイツも、途中でアッサリやられる役なんでしょ?)って穿った目で見ていたもので、これには驚かされました。 こういう「気持ち良い裏切り方」が出来るのって、続編映画の数少ない利点ですし、それを見事に活かしてたと思います。 勿論、短所も沢山あって…… 1:イルカの声が弱点って設定が、全然活かされてない。 2:嫌な奴ポジションの重役さんが、改心したかと思ったらやっぱり嫌な奴のまま殺されて終わりとか、人物描写がチグハグ。 3:そもそも「五つ目の頭」に存在意義が薄い。 といった感じに、不満を述べ始めたらキリが無いです。 特に3に関しては、折角の良いデザインが勿体無かったですね。 「後ろに回り込んだら、そこにも頭があって喰われちゃう」とか、そういう場面があっても良かったと思います。 でもまぁ、最初に述べた通り「傑作」ではなく「サメ映画」を求めて選んだ一本なので、満足度は高めでしたね。 期待に応えてくれたという意味では、満点に近い品だったかも。 また来年の夏、こういう映画が観られたら良いなと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2021-08-13 15:29:09)(良:2票) |
146. いとこのビニー
《ネタバレ》 記念すべき500本目のレビューだから、明るく楽しい気分になれる映画が良いなと思い、本作をチョイス。 良く考えたら作中で死者も出ているし、何もかも全てハッピーエンドって訳ではない品なのですが…… 久々の鑑賞後には(やっぱり、これを選んで良かった)と、しみじみ感じる事が出来ましたね。 そのくらい、終盤の逆転劇が痛快。 「被告人の無罪を証明する」という、裁判物ならではのカタルシスを、存分に味わう事が出来ました。 「ツナ缶の万引き」「アメリカ南部への偏見」などの要素によって、無実のはずの若者二人が殺人容疑を掛けられてしまう流れを、丁寧に描いている点も良いですね。 (そりゃあ犯人と誤解されるよ)(嫌な印象を持たれて当然だよ)って感じで説得力があるし、それでいて若者二人を嫌いにはなれないという、そのバランスが絶妙だったと思います。 他にも「ヒロインのリサは車に詳しい」「ビニーは裁判に不慣れなだけで、本当は賢い」という伏線が、序盤から張られている事にも感心しちゃうしで、作りが丁寧なんですよね。 裁判で無罪を証明する事が、そのまま真犯人の逮捕に繋がる形になってる点も、とても好み。 裁判物では「無罪は証明出来たけど、真犯人は不明のまま」ってオチの品もあったりして、モヤモヤさせられた経験があるだけに、本作は後味スッキリで気持ち良かったです。 食堂のメニューが「朝食」「昼食」「夕食」の三つしかない、という場面なんかも、妙に好きですね。 こういうさり気ないユーモアって、御洒落だなって思えます。 それと、自分が一番お気に入りなのは、煉瓦とトランプの喩え話の件。 ここって「ビニーは頭の良い人間である」と示すだけでなく「ビニーは本当に、ビルの無実を信じてる」事を描いた場面でもあるんですよね。 「お前は、無実なんだから」という一言が、凄く恰好良い。 作中において、一瞬たりとも「ビルが犯人かも知れない」と疑う場面が無い事も含め、この「被告の無実を心から信じてる弁護士」という描き方は、本当に良かったです。 弁護士にとって一番大切な事は、何よりもそこなんじゃないかと思えました。 そんな本作の難点を挙げるとすれば…… 最後の最後、マロイ判事に助けてもらう形になったのは恰好悪かったとか、精々そのくらいかな? いずれにせよ、数ある裁判映画の中でも、特にお気に入りと呼べそうな一本ですね。 何時か、1000本目のレビューを書く時が訪れた際には、この映画に負けないくらいの傑作をチョイスしたいものです。 [DVD(吹替)] 8点(2021-07-11 17:06:56)(良:3票) |
147. テイキング・ライブス
《ネタバレ》 これは困った一品。 イーサン・ホーク演じるコスタの存在意義が「好青年と見せかけて実は犯人」という以外には思い付かないようなキャラクターの為、観ていて早々に犯人に気付いてしまうのですよね。 キーファー・サザーランドという大物を起用し、彼が犯人かと勘違いさせるべくミスリードを行っているのは分かるのですが「それで騙そうとするのは、ちょっと無理があるよ」という感じ。 最後の「実は妊娠していなかった」オチに関しても、事前に医者に告知されるシーンなどがなく、いきなり主人公のお腹が膨らんでいる展開なので、その瞬間からもう「本当に妊娠しているの?」と疑ってしまうんです。 だから、その後に真相が明かされても「あぁ、やっぱり」と嘆息するしかない訳で……本当に困っちゃいます。 そんな具合に、どうにも脚本が肌に合わなかったのですが、それでも何だかんだ退屈せず観られたのは、役者さんの力が大きいのでしょうね。 アンジェリーナ・ジョリーは前半の「出来る女」っぷりと、中盤以降の騙された「弱い女」っぷりの演じ分けが見事でしたし、彼女とイーサン・ホークの演技合戦を眺めているだけでも、何だか得した気分。 演出に関しても「相手を突き飛ばして車に跳ねさせる場面」や「エレベーターの中で犯人が母親の首を捥ぎ取る場面」などは中々ショッキングであり、良かったと思います。 低予算な映画が脚本によって救われて、傑作に仕上がる事がありますが、本作の場合は逆に、脚本の不備を役者さんの力によって補ってみせたというパターンではないかな……と感じられました。 [DVD(吹替)] 5点(2021-07-09 18:11:03)(良:1票) |
148. ペリカン文書
《ネタバレ》 タイトルは知っていたけれど、ストーリーに関しては全く知らないという状態で観賞。 「仮説を唱えた論文程度を恐れて殺人を犯す訳が無い。きっと何かもっと深い理由があるはずだ」と思っていたのですが、中盤以降で「そんな深い真相なんてない」と気が付いてしまい、何だか大いに落胆させられましたね。 勝手に深読みし、期待しちゃっていた自分が愚かというだけなのですが、それにしても終盤において「どんでん返し」が無いのは寂しいし「真実を明らかにしてみせたカタルシス」も薄かったように感じられます。 理由を分析してみるに、こういった映画の場合は視点を「論文を書いた法学生」に定め、巻き込まれ方のサスペンスとして描く事が多いのですが、本作はその視点を意図的に分散させているのですよね。 それによって、法学生が明確な主人公ではなくなり「彼女も殺されるかも知れない」と緊迫感を抱かせる効果があったのかも知れませんが、自分としては「彼女に感情移入出来ない」「敵方も何を考えて、どんな行動をしているのか丸分かりなので、不気味さに欠ける」という結果に終わってしまった気がします。 若き日のジュリア・ロバーツとデンゼル・ワシントンの組み合わせは新鮮で、ただ立って話しているだけでも好感を抱いてしまう雰囲気が漂っているのは、流石という感じ。 総じて真面目に作られており、クオリティも決して低くはないのですが…… 何だか、その優等生っぷりが「面白みに欠ける」と思えてしまうような、物足りない映画でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2021-07-09 17:20:15)(良:1票) |
149. ナイス・ガイ
《ネタバレ》 美女が生き埋めにされるという、陰鬱な導入部に吃驚。 ラストも「巨大な車で、敵のボス宅を滅茶苦茶にして終わり」という形であり、どうも「レッド・ブロンクス」(1995年)の二番煎じというか…… (こういうのが、ハリウッド映画らしさなんだ)という打算のようなものが感じられて、ノリ切れませんでしたね。 自分としては「ハリウッド映画」よりも「ジャッキー映画」が観たいんだよって、つい思っちゃいます。 主人公に感情移入する前に、悪党達との追いかけっこが始まってしまう(しかも、それがやたら長い)ってのも如何かと思うし、三人いるヒロインとイチャつく場面が随所にあるのも、何か妙な感じ。 この手の「ヒロインが複数いるハーレム映画」としては「プロジェクト・イーグル」(1991年)という前例もあるし、個々の要素は「ジャッキー映画らしさ」を備えているんだけど、何かそれがチグハグなんですよね。 そもそも主人公の恋人はミキであると結論が出てる訳だから「主人公は誰と結ばれるのか」とドキドキしたり、完結後の恋愛模様を想像したりする楽しみも無い訳で、ヒロインが三人いる必然性が薄かったように思えます。 必然性といえば、主人公が料理人であるって設定も、途中から有耶無耶になっちゃうんですよね。 唯一、序盤の「客の口に料理を放り投げるショー」は面白かったし、料理人設定も活かされていたけど、本当にそれくらいですし。 ジャッキーの自伝などを読んで、彼の経歴を知っていれば「若い頃、オーストラリアのレストランや建築現場で働いてた」って事で、料理人設定や、終盤の建築現場での乱闘シーンにもニヤリと出来ちゃうけど…… 知らなかった場合、鑑賞後には(で、どうして料理人設定にしたの?)って、疑問符しか残らない気がします。 そんな具合に「完成度」や「構成力」といった点で考えると、とても褒められない代物なんですが…… 「面白いか、面白くないか」で考えた場合、答えは「面白い」になっちゃうんですよね、これ。 「馬車とタクシーの衝突」とか「コーラの缶が路上に散乱し、あちこちで噴水のように中身が噴き出てる」とか、印象的な場面が随所にあって、それだけでも観る価値はあったと思います。 終盤における、無数のドアを活かしたコントも面白かったし、色んな大工道具を駆使したアクションも、流石といった感じ。 監督のサモ・ハンがチョイ役で出てくるのも嬉しいし、ジャッキー映画ではお馴染み(?)のリチャード・ノートンも、ラスボスとして良い味出してましたね。 本作のMVPには、この二人を推したいくらいです。 ……以下、映画の内容とは直接関係無い余談なのですが、そもそも「ジャッキー」という名前自体、オーストラリアの建築現場やレストランで働いてる際に、同僚から「ジャッキー」と呼ばれてたのが由来だったりするんですよね。 つまり、本作における「建築現場でのアクション」「料理人という設定」って、ジャッキー映画としては凄くオイシイはずなんです。 それだけに、前者はともかく、後者の設定を活かせてないのが勿体無い。 素材は良かったのに、味付けが拙かったという……そんな印象が残る一本でした。 [DVD(吹替)] 6点(2021-05-21 08:28:56)(良:2票) |
150. ブラックホーク・ダウン
これは評価するのが難しい一本です。 リドリー・スコット監督の手腕は大いに信頼しているし、ジョシュ・ハートネットもユアン・マクレガーもウィリアム・フィクトナーも大好きな身としては、史実がどうこうは忘れてしまって、戦争映画というフィクションと割り切って楽しみたかったのですが、決してそれを許してくれない内容。 さながら「命は平等である」という価値観を真っ向から否定するように描かれているアメリカ人とソマリア人。 観賞中ずっと、この映画から「アメリカ軍の兵士十九人分の命は、ソマリア民兵の千人分の命よりも尊いのだ」と囁かれているような気がして、その声に耳を塞ぎたい思いに駆られました。 とはいえ、戦争映画という性質上、観客に色々考えさせてくれるのは有益な事だと思いますし、本当に自分が戦場にいるかのような臨場感は、凄いものがあります。 映画では英雄的に描かれているアメリカ兵だけど、彼らのモデルになった実際の兵士達には、六歳の娘に性的暴行を加え逮捕された人物もいたりする訳で、そんな「現実とのギャップ」も味わい深いですね。 恐ろしい映画でした。 [DVD(字幕)] 3点(2021-05-19 16:16:43) |
151. 憧れのウェディング・ベル
《ネタバレ》 「そうそう、こういうのが観たかったんだよなぁ……」と、ニンマリさせられる一品。 期待通りのラブコメといった感じで、安心して楽しむ事が出来ましたね。 音楽の使い方も良いし、出てくる料理も美味しそうだし、観ていて気持ち良い。 指を斬る、膝を射られるなどの「痛い場面」もありましたが、それも残酷になり過ぎない程度の撮り方をしている為、気にならない範疇。 「大丈夫。死にやしない」「誰か死んだ訳じゃあるまいし」という台詞の後に、葬式のシーンに移るというネタを天丼でやっちゃうのも、不謹慎ながら笑っちゃいました。 ラブコメお約束の「互いに浮気してしまう」というネタにしたって、女性側は酔ってキスした程度、それを知って自暴自棄になった男性側も本番直前までしか行ってないという形にしており、非常に配慮して作られているんですよね。 観客目線での「何も考えずに楽しめる映画」って、作り手側からすると、凄く気を使わなきゃいけないから大変だなって、改めて感じました。 「ドーナツ実験」の件も中々興味深く、面白い。 目先の利益に飛びつくタイプは、駄目人間が多いという実験結果に対し、それなりの説得力を感じていただけに、主人公がそれを否定し「出来たてのドーナツが貰えるという保証が無い」と指摘してみせる流れには、ハッとさせられるものがありました。 恋の当て馬となる男女についても、教授は最低男だったけど、オードリーの方は「口が悪いだけで、根は良い子」ってバランスだったのも好みですね。 両方とも「嫌な男」と「嫌な女」として描かれていたら、流石にゲンナリさせられたでしょうし、上手い着地だなと思います。 終盤にて、プロポーズのプランを再び台無しにするという、冒頭に繋がる脚本も鮮やかだったし、その後のスピーディーな結婚式も最高。 物凄い傑作という訳じゃないし、映画史に残る一品でもないでしょうけど…… こういうタイプの、観賞後に幸せな気持ちに浸れる映画って、好きです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-05-09 05:58:57)(良:1票) |
152. リトルデビル
《ネタバレ》 明らかに「オーメン」(1976年)の亜流作なのですが、単なる模倣で終わらず「たとえ悪魔であろうと、我が子である以上は守ろうとする主人公」という物語に昇華してみせたのが、お見事でしたね。 中盤までは「義子のルーカスが悪魔であると知り、殺そうとする主人公」という「オーメン」そのまんまな展開であっただけに、途中で主人公が思い直し、全く違った方向性へと舵取りするのが、実に痛快。 監督は前作の「タッカーとデイル」でも、王道スプラッター映画をパロった上でハッピーエンドな着地を迎えてみせ(そう来たか!)と唸らせてくれたものでしたが、本作もそれに近しい魅力を備えており(やっぱりイーライ・クレイグ監督の映画は良いなぁ……)って、しみじみ感じさせてくれました。 2019年現在、僅か二本の映画しか発表していない寡作の人というのが、非常に惜しまれます。 配役も絶妙であり、特に子役のオーウェン・アトラスは「無表情だと不気味なのに、笑うと可愛い」というルーカス役を、見事に演じ切っていましたね。 この映画のストーリー上、主人公だけでなく観客にも「ルーカスは不気味に思えたけど、実は可愛くて良い子なんだ」と感じさせる必要がある訳なのですが、その点に関しては、文句無しでクリアしていたと思います。 プールで父子が仲良くなる件も微笑ましかったし、笑顔を見せる場面では、主人公同様に観ているこっちまで(笑うと、こんなに可愛かったのか……)と、ドキッとしちゃう。 アイスを舐めながら、主人公の事を初めて「パパ」と呼ぶ姿なんて、もう抱きしめたくなるくらいに愛らしかったです。 レズビアン(?)な同僚のアルも良い味出してるし、出番は少なめながら、主人公の妻に女性としての魅力が感じられた辺りも嬉しかったですね。 モンスタートラックや、最優秀パパのボールなど、伏線の張り方や、回収の仕方も鮮やかだったと思います。 主人公自身が「父親に捨てられた」という過去を持っている為、ルーカスに幼少期の自分の姿を重ね合わせ、自然と心を開いていく流れにしたのも上手い。 「お前の本当の父親が誰でも関係無い」 「お前はお前だ。何時だってなりたい自分になれる」 という台詞は、ルーカスに語り聞かせる以上に、自分に言い聞かせる効果もあったんだろうなと、自然と納得する事が出来ました。 主人公が「息子殺し」な自分ではなく「息子を守ってみせる」自分になる事を選ぶ展開にも繋がっている訳で、この辺りの脚本は、本当に巧みだったと思います。 「義理の父親です」という、ルーカスの父親である事を間接的に否定する台詞を何度も繰り返しておいた上で、クライマックスにて「絶対に離さない、お前の父親だから」と主人公に言わせる構成にも、グッと来ちゃいました。 難点としては、意味ありげな双子の少女が、本筋に絡まず終わってしまうのは寂しい事。 ルーカスの言葉で飛び降り自殺を図った理科教師が、どう見ても死んでるので、入院くらいで済ませた方が良かったんじゃないかと思えた事。 終盤に集結したパパ友が全く活躍しておらず、存在意義が感じられなかった事とか、その辺りが挙げられそう。 それと、プールでルーカスを救う場面では、出来れば「神の啓示」ではなく、完全に自分の意思で助けに飛び込んで欲しかったなと思えたのですが…… これに関しては、何度も観賞している内に(たとえ神様から「見殺しにしろ」と命じられても、主人公なら助けたはずだ)と、次第に考え方が変わってきましたね。 上述の「なりたい自分になれる」という台詞もありますし「神様のお蔭で、息子を殺さずに済んだ」という訳ではなく「神様は、悩める主人公に助言をしてあげただけ」って事なんだと思います。 父子で出場した丘下りレースにて「スピードを出し過ぎるな」と言われても聞き入れず、笑顔ではしゃぐルーカスの姿を映し出し(やっぱりこの子、悪魔だな……)って感じさせて終わるのも、非常に御洒落。 期待値の高い中で観賞したのですが、そんな高いハードルすらも飛び越えてくれた、気持ちの良い一品でした。 [インターネット(吹替)] 8点(2021-05-06 09:25:12) |
153. 80デイズ
《ネタバレ》 「八十日間世界一周」をジャッキー主演で映画化したという、正に夢のような映画。 その分、ちょっとファンタジー色が強過ぎるというか、映画版「八十日間世界一周」(1956年)のリメイクと考えたら違和感が大きいけど、自分としては満足でしたね。 あくまでも、ジュール・ヴェルヌの小説を翻案した「ジャッキー映画」として楽しむべきなんだと思います(エンディングのNG集は無いけど) 物語の大オチ「日付変更線を越えたから期限に間に合った」は変えてないし、世界一周の旅を通して「金や名誉よりも大切な人を得る事が出来た」という、原作で一番大切な部分を、きちんと踏襲しているのも嬉しい。 随所にアクションも盛り込まれているし、急造飛行機以外にも「色んな機能を備えたステッキ」「車輪を付けた靴」など、ワクワクさせられるアイテムが揃ってるのも良かったです。 主人公格のフォッグを発明家キャラにした事に、ちゃんと意味があったと思います。 ゴッホやライト兄弟にウォン・フェイフォンなど、史実におけるビッグネームが登場する事と「俳優としてのビッグネーム」が登場する事をシンクロさせている作りも面白い。 この辺りは「さりげなくスターを出演させる」という1956年版の遊び心に通じるものがあるし、ただ真似をするだけでなく、一歩先に進んでみせた感もありますよね。 特に「ジャッキー・チェンとシュワルツェネッガーの共演」には胸躍るものがあって、本作が「夢の映画」である事を実感させてくれました。 万里の長城を徒歩で移動する場面なんかも、旅映画らしい切なさを感じられて好きだし、パスパルトゥーの故郷の描写も「懐かしき我が家に帰ってきた……」って感じがして、良かったですね。 敵と戦っている内に、自然とキャンパスに絵が完成しちゃう場面も可笑しくって、コメディ部分としては、ここが一番お気に入りかも。 そんな具合に、様々な長所が備わっている映画なんですが…… ・船を材料として提供した船長達が、その後どうなったかについて描かれていない。 ・「また腕が取れた」と笑いを取って終わるのは、ちょっと微妙。 といった具合に、終盤において短所が目立つのが残念ですね。 最後の最後で、テンションが下がって終わっちゃう形。 これって「終わり良ければ全て良し」の逆の現象であり、作品全体の印象も微妙なまま終わっちゃう訳だから、凄く勿体無い。 せっかく旅の途中までは楽しかったのだから、その勢いのままハッピーエンドまで駆け抜けて欲しかったものです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-04-16 14:58:23) |
154. 幸せになるための27のドレス
《ネタバレ》 オチの良さありきというか、それがやりたい一心で映画撮ったんじゃないかと思えるような品なんですが…… 自分としては、過程も含めて楽しめましたね。 例えば、話の流れとしては冒頭の「タクシー運転手とのやり取り」が面白くて、もしや彼が恋人候補かとも思える感じなのですが、ちゃんと配役や演出でケビンこそが「ヒロインと結ばれる王子様」だと分かるよう作ってあるんです。 上司のジョージを(良い人だけど、何か違う……)と観客に思わせる辺りも絶妙で、たとえヒロインが彼に恋い焦がれていても、最終的に結ばれるのはケビンの方なんだろうなと、予想も出来るし、納得も出来ちゃう。 「先が読める展開」「安易な脚本」ではあるんだけど、ちゃんと丁寧に作られていたと思います。 主人公カップルに「結婚式が大好きな女性」と「結婚式が嫌いな男性」を据えて「相性最悪かと思われた相手が、実は運命の相手だった」というラブコメ王道の魅力を描いている点も良い。 それと「ドレスを着たままおしっこする際は、誰かの補助が必要」とか、男性からすると(そうなんだ)と思える場面があるのも良いですね。 女性向けのラブコメ映画だからこその、意外な魅力って感じです。 「要領が良くて、周りに愛される妹」「それに対する、姉としての複雑な感情」を描いている点も、女性主人公ならではって感じがして、これまた楽しめちゃいました。 終盤、主人公が妹の結婚をぶち壊して憎まれ役になる訳だけど、そこで親友がキチンと「こんなの間違ってる」と諭してくれるのも良いですね。 観客が主人公から心を離してしまうのを繋ぎ止める効果があり、ラブコメの親友キャラとして、良い仕事したなって思えました。 アン・フレッチャー監督は「あなたは私の婿になる」(2009年)も良作でしたし、こういう細かい部分の作り込みが自分好みなんでしょうね、きっと。 そんな本作の欠点は…… 「姉妹が仲直りする場面に、無理がある」って事でしょうか。 ここに関しては、些細な部分ではなく、映画の中で重要な部分だと思うので、ちょっと看過出来ないです。 妹のベスは、彼女なりに色々考えて「ジョージに相応しい女性になろうとした」と告白するんだけど、具体的に何か努力したという訳じゃないので、説得力に欠けるんですよね。 その辺に関しては、作り手側も気になったのか「実は仕事をクビになったばかりだし、元カレに振られていたりで、妹も挫折を経験していた」「妹は妹で、姉にコンプレックスを抱いていた」と、様々な要素を用意してはいるんですが、どれも和解に至る決定的な材料とは思えず、残念でした。 せめて「喧嘩の切っ掛けになった母親のドレスについて、妹が謝る」って場面があれば、印象も変わったかも。 とはいえ、冒頭にて述べた通り「ブライズメイドを務めてあげた友達27人が、ドレスを着て結婚式に来てくれた」というオチが凄く良かったもので、鑑賞後の満足度は高め。 (これまでの主人公の行いは、無駄じゃなかったんだ……)って感慨を抱けるし、映画のクライマックスと共に完結する構成が美しかったです。 新聞記事に擬したエンドロールも御洒落だし、ラスト数分で一気に評価を高めてくれた一本でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2021-03-16 22:55:50)(良:2票) |
155. あなたは私の婿になる
《ネタバレ》 これ、好きですね。 「偽りの恋が、いつしか真実の愛へと変わっていく」という既視感満載なラブコメ物なのですが、適度なサプライズがあり、ちゃんと新鮮な魅力を味わえるんです。 その最たる例が「心臓発作で倒れる祖母」であり(これは彼女を死なせて盛り上げる展開か)と、観ていてまんまと騙されちゃいました。 それが「家族を仲直りさせる為の演技でした」と判明する訳だけど、全く嫌味が無いし「悲劇を回避出来た」「お陰で皆が仲良くなれた」という形の嘘なんだから、不快感が無いんですよね。 「観客を騙す映画」って沢山あるけれど、ここまで気持ち良い騙され方をした例は、ちょっと他に思いつかないくらい。 アンドリューの元カレが復縁を迫るのかと思いきや「このままマーガレットと別れても良いの?」と言い出す場面も、凄く良かったですね。 本当に脇役が良い人達ばかりだから、彼らに支えられる形で主人公二人が結ばれる流れが、観ていて心地良い。 そんな「サプライズ」が巧みな一方、序盤でヒロインのマーガレットが「泳げない」と言う伏線があったら、ちゃんと後に溺れそうになる場面を用意したりとか、観客の予想や期待を裏切らない構成になっているのも、お見事でした。 あとは、男性目線で観ると「美人な女上司の弱みを握り、言いなりにする」という邪な願望を満たす内容になっているし、女性目線で観ると「実家が金持ちの彼と結ばれる玉の輿展開」になっているしで、その辺の「男女どちらが観ても楽しめる」というバランスの良さも、絶妙でしたね。 孤独だったマーガレットが「家族の温もり」に触れ、アンドリューの家族を騙す事に耐えられなくなり、結婚式での告白に至る流れも丁寧に描かれており、説得力がありました。 そんな本作の不満点を述べるとしたら…… 冒頭にて登場する「毎朝ラテを用意してくれる店員」が可愛くて、メインキャラかと思ったら違ってたのが残念とか、男性ストリッパーの場面は観ていてキツかったとか、精々そのくらいかな? サンドラ・ブロック主演のラブコメ映画は色々ありますが、自分としては本作が一番好きですね。 エンドロールの質問にて「婚約者は誰?」と問われ、嬉しそうに「アンドリュー」と答える姿も可愛らしいし、彼女の魅力が存分に味わえる一本でした。 [DVD(吹替)] 7点(2021-03-07 07:56:32)(良:2票) |
156. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
《ネタバレ》 映画を観始めた直後に「あっ、シャーロックが主演だ!」と驚き、中盤にて「戦争映画じゃなかったのか……」と再び驚かされましたね。 確かに戦争を描いた映画でもあるのですが、それ以上に『同性愛』という業を背負った天才にスポットの当てられた映画だったと思います。 自分は数学音痴なもので、そんな観客にもストーリーを分かりやすく構成してくれた事は、本当に嬉しい限り。 「真っ当な方法でエニグマを解析しようとしたら、二千万年も掛かってしまう」など、その任務の困難さが明確に伝わってくる辺りは、凄く良かったですね。 途中、ヒロインが唐突なプロポーズを受け入れてくれたり、犬猿の仲であったはずの同僚が庇ってくれたりする流れには(ちょっと主人公に都合が良過ぎない? もっと仲が親密になるまでの描写が必要だったのでは?)なんて思ったりもしたのですが、後にキチンとそれらに対する答え合わせも用意されているのだから、お見事です。 ヒロインは自分も「普通じゃない」という引け目を感じているがゆえに、同じく「特別」な存在である主人公に惹かれていたと明かされるし、同僚はソ連のスパイだったというオチ。 後者に関しては察知する事も出来ましたが、前者に関しては、良い意味での驚きを味わえましたね。 自分は同性愛者である、という秘密を告げられて「それが何?」と返す姿には、惚れ惚れとさせられました。 それにしてもまぁ、主演のカンバーバッチさんは「SHERLOCK」でワトソンとの同性愛疑惑を掛けられたと思いきや、今度は本当の同性愛者を演じる事になるとはなぁ……なんて、微笑ましく思っていたのも束の間。 まさか、こんな悲劇的な結末を迎えるとは予見出来ず、終盤には何とも重苦しい気分を味わう事となりました。 夭逝した初恋の少年と同じ名前を機械に付け、それを偏愛する主人公の姿は、どこか滑稽でありながら、とても哀しいものを感じさせます。 観客としては(あんなに素敵な女性が愛してくれているのだから、その愛に応えてやれば良いじゃないか)と、もどかしい気持ちになったりもするのですが「クリストファ」を再び失う事を恐れる彼の姿を目にすれば、何も言えなくなってしまいますね。 慰めるヒロインの手を取った瞬間、その指に既婚者の証のリングがはまっている事に気が付き「おめでとう」と告げて、微かに笑うシーンの演技なども、素晴らしい。 作中、ヒロインが「貴方の行いによって命を救われた人が沢山いる」と慰める場面では(でも、それによって殺された人々も沢山いるのでは?)と思えてしまい、全面的に彼を「正義の人」と感じる事は出来ませんでした。 けれど、そんな事は彼女も承知の上で、彼を全肯定してあげる言葉が必要だからこそ口にしたのだろうなと、自然と納得させられる作りになっていたのも、上手かったですね。 「誰を助けて、誰を殺すのか」を決める立場に置かれた過去を持つ彼の苦悩を、ほんの一時でも癒してあげる、優しい言葉だったと思います。 それと、ストーリーの序盤にてチラッと語られた「主人公は林檎が好物である」という情報が、現実の彼の死と直接リンクしていると知った時には、大いに衝撃を受けました。 (この映画でも、もっと林檎にスポットを当てても良かったのでは?)とも思えるのですが、それをやると寓意性が高まり過ぎると考えて、故意にオミットしたのでしょうか。 判断の難しいところです。 ラストシーンの「チューリング・マシーン。今それは、コンピュータと呼ばれている」のナレーションには、本当に鳥肌が立つのを、はっきりと実感。 今、自分はノートパソコンを使って、この映画の感想を書かせてもらっている訳で、それを考えるだけでも、非常に感慨深いものがあります。 この映画を「後味が悪い」と感じなかった理由は色々とあるのですが、一番の理由は「彼を愛してくれた女性がいた」と、丁寧に描いてくれた事。 そして、少なくとも今現在の我々の世界においては、主人公の業績は正当に評価され、偉人として称えられているのだと、ハッキリ伝えてくれた事にあるのでしょうね。 本人がそれを喜ぶかどうかは、もう決して分からない事ですが、映画の観客としては救われるような思いがしました。 [DVD(吹替)] 8点(2021-02-26 03:44:20) |
157. 9デイズ
《ネタバレ》 主人公が双子の兄弟に成り済ます為、チェコ語を習得したり、葉巻の吸い方やワインの飲み方を学んだりするパートが面白かったですね。 黒人男性版の「マイ・フェア・レディ」「プリティ・ウーマン」といった趣があるし、実際に劇中で後者の曲が流れたりするのだから、作り手としても意図した演出であったように思えます。 観賞前の期待通り、安心して楽しめる娯楽作品なのですが、ちょっと細かい点が気になったりもして、そこは残念。 例えば、高層ホテルにて刺客に襲われた主人公が、咄嗟に窓の外に逃げるというシーンがあるのですが、ここの件って、どう考えても窓の外の方が室内より危なかったりするんです。 何せ、足場が自分の靴ほどしかない訳で、実際に主人公は落ちそうになりながら、おっかなびっくり移動しているんですからね。 対するに、室内にいる刺客なんて全く強そうじゃなくて、主人公もガラス瓶で殴って撃退したはずなのに、わざわざ危険な窓の外に逃げたのだから、どうにも不自然。 恐らくは、その後の屋外での追いかけっこに繋げる為の脚本なのでしょうが、それならもっと自然にやって欲しかったなぁ……と、つい思ってしまいました。 「別人に成り済まして危険な取引を行う」という王道ネタを扱っているわりに「正体がバレそうになってドキドキさせられる」展開が無かった辺りも、不満ですね。 そういったベタな面白さを避けた以上は、他に何か目新しい面白さを提供してくれるのかなと思ったけれど、それも無し。 結果的に、映画の後半においては「主人公が別人に成り済ましている」という設定が忘れられてしまったかのようで、観ていて居心地が悪かったです。 そんな本作の白眉としては、主人公の母親の存在を挙げる事が出来そう。 最初は厳しい人なのかなと思ったら、実は息子に無償の愛を注いでいるのだと分かり、グッと来ちゃいましたね。 自分は、どうもこういうギャップのある描写に弱いみたいです。 息子の為に都合してあげたお金が「ビンゴの賞金250ドル」という辺りも、絶妙な塩梅。 「この母ちゃんの為にも頑張ってくれよ」と、主人公を応援する気持ちにさせられました。 それだけに、報酬の一部を母親に渡すラストシーンでは「一万ドルじゃなくて、九万ドルの方を母親にあげれば良いのに」と思わされたのですが…… 実際にそうしようとしたら「私は一万で良い。九万は結婚資金に使いなさい」と叱られちゃう気もしますね。 最初は仲が悪かった堅物の相棒が、慣れないジョークを口にして祝福してくれたという、結婚式での風景も素敵。 後味が良い結末のお蔭で、なんだかんだ言っても満足出来た一品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2020-12-07 09:01:16)(良:2票) |
158. スパイダー パニック!
《ネタバレ》 これは好きな映画ですね。 手に汗握る緊迫感とか、物凄いセンスの良さがあるとか、そういう訳じゃないんだけど、定期的に観返したくなるような魅力がある。 分析してみるに、やはりモンスターである蜘蛛の描き方が良かったんじゃないでしょうか。 見た目も怖過ぎず、気持ち悪過ぎずで、そこはかとなく愛嬌があるし、殺し方もそこまで残酷じゃない。 銃を持った人間と一対一なら負けちゃうけど、数の力を活かせば圧倒出来る。 移動速度も素早く、徒歩の相手なら楽勝で追い付き、バイク相手なら逃がしてしまう事もある。 知能は道具を扱える程ではないが、原始的な狩りの術は習得済み。 そしてオスの三倍も大きいメスという、視覚的にも分かり易いボス格の存在…… 様々な点でバランスの良い、名敵役といった感じでした。 主人公側の戦力も程好いバランスでまとまっているし、何と言っても主武装がショットガンというのが自分好み。 モールに立て籠り、襲い来る蜘蛛の大群をショットガンで迎え撃つ場面とか、もう本当に大好きなんですよね~ こういうゲームがあったらプレイしてみたいなぁ、なんて思っちゃいます。 人物設定も良くって、男性主人公と、子持ちのヒロイン、幼い息子、年頃の娘と、もう完璧な布陣。 何でなのか分からないけど、こういう組み合わせって琴線に触れるものがあるんですよね。 「君も子供達も、纏めて幸せにしてみせるよ」という、男としての自尊心みたいな物が満たされるからかな? 息子くんの背伸びしている感じや、娘ちゃんの思春期な感じも、実に好ましかったです。 ・バイクに乗ったままジャンプし、空中で蜘蛛に蹴りを食らわせる。 ・金網越しに突き出た蜘蛛の足を、チェーンソーで一気に斬り落とす。 ・武装しろと言われた男が、ホッケーマスクにチェーンソーという「ジェイソンのようでいて、実は武器のチョイスがジェイソンじゃない」恰好をしてみせる。 等々、印象的な場面が色々と配されていて、観ている間ずっと飽きさせないのも良い。 客が少ないモールに、蜘蛛から逃げてきた人々が大挙して押し寄せるのを見て(ようやくモールに客が来たか)と喜ぶ町長のシーンなんかも、惚けたBGMと併せて、味わい深いものがありました。 誰も本気にしていないと思っていた「エイリアン襲来を警告するラジオ」のリスナー達が、終盤に駆け付けてくれるのも良いし「巨大蜘蛛に立ち向かうよりも勇気が必要な告白」をヒロインに対して行ったら、アッサリ受け入れてもらえて拍子抜けしつつ死地に赴く主人公って展開も、これまた素晴らしい。 無事に敵を一掃し、お約束のハッピーエンドを迎える結末まで、とても楽しい時間を過ごせました。 [DVD(吹替)] 8点(2020-11-27 11:39:09)(良:1票) |
159. ベイウォッチ
《ネタバレ》 ライフガード物……というよりは、刑事物って感じの映画ですね。 作中でも散々「それは刑事の仕事」とツッコまれていますし、海での人命救助がメインの話と思って観ると、ガッカリしちゃうかも。 海ではなく、スタジオで撮影しているなって丸分かりな場面もあったりするし、色々とハードルを低くして観る必要があると思います。 それと「よぉ、ハイスクールミュージカル」「有り得ないTVドラマのパクリみたい」などのメタな台詞を挟んでいるのは、ちょっとオタク映画っぽくて、この題材とは不釣り合いにも思えましたね。 内気なロニー青年を「第三の主人公」枠にしたりして、マッチョ賛美な体育会系の映画ではない、幅広い客層が楽しめる映画にする意図があったのかも知れませんが、それが成功していたとは言い難いかと。 でもまぁ、自分としては「ザック・エフロンとドウェイン・ジョンソン主演のアクション映画」が拝めただけでも満足というか…… 至らないところも多々あるけど、充分に合格点に達してる映画だと思うんですよね、これ。 怖いもの知らずな若者と、経験豊富なベテラン主人公のコンビって時点で、バディ物としては王道な魅力があるし、二人が衝突しつつも互いを認め合い「仲間」「相棒」になっていく流れも、微笑ましくて良かったです。 観ていて安心させられるというか、新鮮な驚きは無い代わりに、落胆させられる事も少ないって感じ。 音楽もノリの良いのを揃えてあるし、水着美女のサービスシーンも豊富。 海が舞台なんだから、これは外せないとばかりに、ジェットスキーでのアクションがある辺りも嬉しいですね。 先程は「スタジオ撮影なのが丸分かりな場面がある」と減点個所を述べてしまいましたが、それ以外では「海の美しさ、解放感」を感じさせる場面も多かったし…… 結果的にはプラマイゼロどころか、プラスの方が大きいくらいなんじゃないかと。 元ネタのTVドラマ版で主人公ミッチを演じたデビッド・ハッセルホフが「ミッチの師匠」というポジションで登場したりと、ファンサービスをしっかり行っている点も良かったですね。 エンドロールのNG集も和気藹々としてるし、撮影現場の楽しい雰囲気が伝わってきました。 それでも、最後に「これだけは、どうにかして欲しかった」という希望を述べさせてもらうなら…… クライマックスは「敵のボスを撃つ」ではなく「人命救助」って形にして欲しかったですね。 一応、ボスを倒す直前に「ミッチがブロディを助ける場面」もある為、ライフガード要素が必要無かったって訳じゃないんですが、最後の最後で(……これ、やっぱり刑事物でも成立したよなぁ)って気持ちにさせられて、興醒めしちゃいましたし。 そこのところを上手くやってくれていたら、もっと自信を持ってオススメ出来る品になってたと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2020-11-23 02:40:30) |
160. ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える
《ネタバレ》 三部作の真ん中に位置する品なのですが、初代の焼き直し感の強い内容なのが残念でしたね。 逆に考えると「1を好きだった人なら問題無く楽しめる続編」なのですが、どうもマンネリっぷりを強く感じてしまいました。 理由の一端としては、主人公グループが「フィル、スチュ、アラン」の三人組で、前作と全く同じ顔触れだったのが痛いんじゃないかと。 ここは三人の中の誰かが行方不明になって、新キャラの天才少年テディが捜索側に回るか、あるいはダグも一緒に行動する形にしても良かったんじゃないかと思いますね。 作り手側としては「イケメン主人公のフィル」「頼りないけど知性派で、真相を解く探偵役のスチュ」「トラブルメーカーのアラン」の三人組が、バランスとして完璧という自負ゆえに、前作と全く同じ布陣にしたのでしょうが、流石に変化が無さ過ぎた気がします。 そもそも、スチュが結婚する相手がジェイドじゃなく、新顔のローレンって時点で(えっ、何で?)と思えてしまって、物語に入りきれなかったんですよね。 舞台をタイにする以上、仕方無かったのかも知れませんが、自分としては「タイが舞台である事」に必然性を感じなかったし、アメリカの田舎町かどこかでも良かったんじゃないかと思えたくらい。 スチュとローレンパパとの和解も無理矢理感があったので、もう少し自然な感じに仕上げて欲しかったです。 あとは、アランの嫌な奴っぷりが明らかにアップしている点もキツい。 両親に対して嫌味な態度を取る場面とか「俺は専業ニートなんだ」と偉そうにしている場面とか、本当ゲンナリしちゃったんですよね。 そんな描写が序盤にあった以上、改心して「これからは両親を大事にする」「ちゃんと働き出す」って結末になるんだろうなと思ったのに、それも無し。 前作の時点では、ここまで酷い奴じゃなかったと思いますし、アランが好きだった自分としては、かなり寂しかったです。 何だか欠点ばかりを書いちゃいましたが、それというのも、本作の良い部分って「答え合わせが、盲点を突かれた感じで気持ち良い」とか「エンドロールで明かされるパーティーの光景が楽しそう」とか、前作にあったのと同じ良さだったりするので、改めて本作の感想として書くのが、ちょっと難しいんですよね。 それでも、あえて本作独自の長所を挙げるなら…… 「マイク・タイソンやチャウの再登場が嬉しい」「テディが指を失ったのは可哀想だけど、実は自業自得だったと分かり、思わず笑っちゃった」とか、そのくらいになりそう。 総合すると「それなりに楽しめた」「続編としては、そこまで悪くない」って感じになりますし、点数を付けるなら、決して低くはならないんですが…… 自分としては、物足りない印象が残る一本でした。 [DVD(吹替)] 6点(2020-11-20 16:29:36)(良:1票) |