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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  CURE キュア 《ネタバレ》 
時期的には被っていたかもしれないけど、こりゃ『セブン』に匹敵するような不快感というかおぞましさを観る者に与えてくれる映画ですな。萩原聖人のキャラの異様さは特筆ものですが、とくに劇中何度も繰り返される萩原=間宮の“質問に対して質問で返す”問答が不快感を増幅させてくれます。これは対人関係でやってはいけない相手を不愉快にさせるコミュニケーション上の悪手で、それをここまで計算づくで織り込んだ脚本は秀逸。いろいろとまぶされているメタファーも伏線でもなく、観客に色んな解釈をさせようとするストーリーテリングは、一から十まで説明する凡庸な邦画が目立つ中では光っています。ただ残念なのは間宮がだんだんと単に記憶障害を装っているだけの詐欺師的な人物に見えてくることで、せっかく確立した日本映画史に残るような不気味なキャラ像が薄れてしまった感がありました。ラストの一見何の違和感もないファミレスでの食事風景で閉めるなんかは、凡庸な映画監督にはできない勇気ある撮り方だったと思いました。今まで何本かは黒沢清の監督作を観ていますが、初めてこの人の才気を感じることができました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-12-28 12:53:38)(良:1票)
2.  鬼談百景 《ネタバレ》 
『残穢 -住んではいけない部屋-』のことは全然知らずに観ましたが、まったく独立したホラー・アンソロジーとして予備知識が無くても愉しめるんじゃないでしょうか。十話も盛り込んだオムニバスだけど、一話あたり十分もない尺なのでサクサクと観れます。学校ネタ・JKネタが目立っているような気もしますが、なんと言っても怖いのはナレーターがあの竹内結子だということでしょうか。このナレーションは、彼女の演技力もさることながら五年後に訪れる悲劇が予感されてしまいます。 不条理怪談噺が好物な自分としては、ラスト三話がとくにツボでした。何かに憑りつかれたように墓場を駆けまわる子供たちが強烈な印象の『続きをしよう』、何も語らせないような幕の閉じ方が良かったです。そしてある意味で何も起こらなかったのにとてつもなくぶっ飛んでいる『どろぼう』、つぶされる路上に転がっている果実や水が流れる側溝、これらが何を暗喩しているのか、考えてみたけど腑に落ちる答えは得られませんでした。まあ第十話はオチからすれば完全にブラックジョークでしたけどね、あの元カレじゃ粗大ごみとして処理するのは正解でしょ(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-12-06 22:11:13)
3.  キングコングの逆襲 《ネタバレ》 
東宝創立35周年記念大作!五年前の30周年は『キングコング対ゴジラ』、東宝特撮どんだけキングコングが好きなんでしょうか。 どうも本作は同年に放送されたアニメ版『キングコング』シリーズとコラボレーションなのか共通点が多く、アニメ版も実は日米合作で東映動画が製作しています。設定はもちろん違うけど、悪役はドクター・フーでヒロインはスーザンが名前というのも被ってます。そして今までのキングコングのイメージを一新するような人間の味方的なキャラ付けになっているのも両者の特徴。 コングの造形は、『キンゴジ』に比べれば体型がオリジナル・コングに近くなっているけど、よく見れば顔は相変わらず不細工です。特に眼つきがヘンで、視線がどこに向いているのか判りにくいのがなんかおかしい。でも敵役のメカニコングは東宝特撮に登場するロボット怪獣ではピカイチの造形美、コングの特徴を巧みにメタル化させた秀逸なデザインじゃないでしょうか。メカニコングは『地球防衛軍』のモゲラと同様の土木作業用ロボットという設定、本格的な敵役ロボット怪獣はメカゴジラまでいなかったんですね。モンド島のやられ役は、大ウミヘビは別にして、ゴロザウルスはCG登場以前の恐竜造形としては出色の出来栄え、ハリウッドのストップモーション恐竜も負けてるんじゃないかな。「怪獣の流血を見せたくない」という円谷英二の拘りで泡を吹くゴロザウルスの断末魔になったのは割と有名なエピソードですが、同時期のガメラ・シリーズが“怪獣スプラッター映画”化しているのと比べてみると東宝と大映の製作カラーの違いを感じさせられます。体長20メートルのコングに合わせた縮尺のミニチュアセットは東宝特撮の絶頂期だけあって完成度は高いですけど、一部に過去作の特撮カットが挿入されていたのはちょっと残念でした。 本編はこれまたユニークな脚本で、“南海の王者”のはずのコングを北極に連れてくるという発想には驚き。そしてドクター・フーの組織が巨額の資金を投じてメカニコングまで製作してシャカリキになっているのが鉱物採掘と言うのが、なんかぶっ飛んでますね。メカニが役立たないから本家コングを拉致してくるという発想ですが、これじゃブラック企業でこき使われる社員じゃないですか。だいいち、なんで北極に大地があるの?(アラスカかシベリアの北極圏というなら判らんでもないが) 本編での見せ場はやはり浜美枝のマダム・ピラニアということでしょうね。彼女は『キンゴジ』でもヒロインだったし、東宝には“浜美枝=キングコング”という方程式でもあるんでしょうかね(笑)。登場シーンの衣装はすべて違うし、北極アジトの中にラウンジ風自室を作らせてカクテルドレスを纏って色仕掛け、『二度死ぬ』なんかよりずっとボンド・ガールぽかったです。それにしても彼女、どこの国の工作員だったのでしょうか。「中国・タイ・ヴェトナム・ビルマ、そのどこの国でもないね」というドクター・フーのセリフがありましたが、まさか北朝鮮?
[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-11-07 21:58:28)
4.  キサラギ 《ネタバレ》 
自分の中では“期待も予備知識もなく観始めたけど実は傑作だった大賞”ノミネート作です。五人が集まってくるところから幕開けですが、いかにも舞台劇的な展開はちょっと鬱陶しい感じが確かにあります。でも三十分過ぎたあたりからは怒涛の展開、まさに会話劇の真髄といった感じでしょうか。後半で会話に散りばめられた伏線が綺麗に回収されるわけですが、その伏線の置き方も洗練されています。さすがにスネークのキャラがうるさ過ぎてイラっと来ますけど、これはあの小出恵介が演じているのだから我慢我慢です。デブッチャーが実はヤセッチャーだったという展開はちょっと意表を突かれましたが、写真のデブッチャーは本人画像を加工したんでしょうけど、それにしても凄まじい変貌ぶりでしたね(笑)。最後に家元にお話しを収斂させるのが良くて、不覚にもホロっとさせられました。五人の中にユースケ・サンタマリアと塚地武雅という芸能界きってのドルオタがいるところもなんか嬉しいところです。でもやっぱラストだけはねえ…なんで宍戸錠なのかは意味不明ですけど、彼がこの映画に登場すること自体がシュールの極みです。 そりゃあ売れて世間に認知されて欲しいというのがドルオタの共通の望みですが、夢破れて推しが卒業・引退しても残りの人生は幸せであって欲しいと願うものです。そういう観点からはとても悲しくなるお話しではありました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-12-30 21:54:17)(良:1票)
5.  君も出世ができる 《ネタバレ》 
自分は戦後日本映画界の最高峰ミュージカルは『狸御殿』シリーズだと思っていましたが、どうしてどうして、この東宝が放ったカルト・ミュージカルもななかのいい勝負してます。 まず、アニメーションのタイトルデザインがソウル・バスが関わったかと思わせるほど洒落て秀逸。舞台となる東和観光のオフィスは確かにシャレまくったセットで、色彩と言いデザインといいカネかけたなというのが良くわかる豪華さ。フランキー堺や高島忠夫を始めとして芸達者な役者と中尾ミエと雪村いづみといった本職歌手の女優をそろえた豪華キャスト、皆さんほんとスキルが高いですね。中でもフランキー堺のダンスというか身のこなしの華麗さ、ほんと天才的としか言いようがないです。でも浜美枝みたいにそっちの方の芸が劣る女優は歌わせないというのは賢明な選択、そういや有島一郎もほとんど歌ってなかったですね。しかし本作の浜美枝はキュートさが爆発状態、ピンクで統一された彼女の部屋のオシャレさは現代でもなかなか観れないセンスです(愛犬のプードルまでピンクなのは笑ってしまいました)。 この映画はアメリカ帰りの雪村いづみが登場してからの展開が本番です。二言目には「アメリカでは」と社員に説教する“アメリカ出羽守”ぶりが笑えます。この「アメリカでは」はメインスコアにもなっていて、なんと40年近く経ってピチカート・ファイブが雪村いづみを使ってカヴァーしているんですよ。どうりでなんか聞いたことある曲だなと思ったわけです。こういうバタ臭いコメディになると東宝の独壇場なんですけど、アメリカ出羽守・雪村いづみと対峙する高島忠夫のテーマソングは「あこがれのタクラマカン」、でもなんでタクラマカン砂漠なのかは理解不能でした(笑)。そしてワン・シーンだけですが植木等がノン・クレジット登場でフランキー堺と絶妙な掛け合いを見せてくれます。この二人の共演はたぶんこれだけなんじゃないでしょうか、貴重です。 しかし何といっても「凄いもの見せられたな~」とため息が出るのは、やはりクライマックスのサラリーマン軍団のモブ・ダンスで、邦画でここまでのミュージカル・シーンがあったとは、これはぜひとも大スクリーンで観てみたいものです。これがヒットしなくてカルトになってしまうという現実、やっぱ日本じゃミュージカル映画は根付かないのかなあ…
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-06-05 10:24:00)(良:1票)
6.  教祖誕生 《ネタバレ》 
監督は北野組の助監督だった人だから、絵面というかストーリーテリングはほぼ北野武映画風味で、たけしが監督していると言っても通るぐらいです。原作小説も書いているたけしは脇に回っていますが、これがまた飄々としたいい演技なんだな。萩原聖人に接するときの肩の力が抜けた温和な男と、玉置浩二とやりあってボコボコにしちゃうヤクザ風味がアンビバレントであるけど頗るリアルです。でもあのたけしお得意のヤクザ・キックって、畳の上で靴を履かないでやったら足の指が折れちゃうんじゃないかな(笑)。このストーリーの今から考えると凄いところは、製作されたのがオウム真理教事件の起こる前、やたらマスコミが宗教団体をアンタッチャブル視というかビビっていた時代だったということでしょう。宗教ビジネスの基本というか本質を判りやすい視点で説くたけしの視点はさすがです。この映画を観て考えさせられたのは、神がいるかいないかは別にして(たぶんいないでしょう)、神と教祖だけでは単なる危ない奴の妄想でしかなく、信者がいてその人たちが団体を形成した時点ではじめて宗教が成立するんだなということです。その団体の運営者が有能であればその宗教は広まるわけで、教祖の手腕は関係ないというわけです。キリスト教がまさにこのパターンの宗教で、この映画の宗教団体に当てはめると萩原聖人はイエスでたけしはパウロという感じですかね。イスラム教は教祖が有能で、自分で教団まで作っちゃったというパターンですね。 映画は五年後たけしがクビにした初代教祖とふたりでまたインチキ宗教を始めているというのがオチですが、萩原聖人が教祖になった方の教団の五年後も見てみたい、岸部一徳が牛耳っているのか覚醒した萩原聖人がヤバい存在になっているのか、どっちなんでしょうかね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-03-31 22:16:33)
7.  気球クラブ、その後 《ネタバレ》 
こうやって観ると、園子温って作風が偉く今では変わってしまいましたね、本作あたりのころはまるっきり岩井俊二の模倣者という感じですから。 登場人物たちはキャンパスライフがオミットされているけど、二十歳前後の大学生みたいですな。村上君が起ち上げた気球クラブのメンバーだけど彼以外はさして気球には興味がなさそうで、いわゆるナンパ・サークルといった感じです。その村上君は10年たっても中二病を拗らせているという感じで、その言動はいちいちウザいのは観ていて苦痛でした。逆に周りの連中はいかにも軽そうなリア充の若者たちという対比が面白い。彼らの愛唱するのがユーミンの『翳りゆく部屋』というわけですが、正直2000年代初頭の若者がユーミンじゃなくて荒井由実の曲を知っているというのはなんか違和感を感じました。まあ園子温にはどストライクなのは判りますけどね。村上君とカップルなのは永作博美ですが、村上君役の役者とは演技力の差があり過ぎてバランスの悪さを感じました(言うまでもなく上手いのは永作ですけどね)。村上君の音頭で気球クラブは解散、その儀式としてお互いが携帯の個人データを消しあうところはいかにもデジタル世代って感じです。でもその5年後に村上君が事故死したら旧メンバーたちが携帯で連絡取りあっているというのはどういうわけ?解散時のスピーチで「気球クラブはこれで解散、俺たちはもう二度と会わない」と宣言したのに、それを実践したのは彼だけだったみたいですね、みんなはその後も繋がっていたみたいです(肉体的にもね)。この青臭いところはほんと他に比べて浮いたキャラなんですけど、時々こういう人とは人生の中で出会いますよ。 この映画のテーマはずばり “青春の終わった瞬間”というわけですが、この数年後には園子温は『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』といった作風にチェンジしてゆくわけで、それを考えるとちょっと意味深かもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-03-27 23:29:14)
8.  九十九本目の生娘 《ネタバレ》 
新東宝カルト映画は数あれどもっとも有名(?)な作品で、新東宝の歴史を紹介する書籍などでは必ず取り上げられます。 「日本のチベット」「部落」なんてセリフが頻繁に出てくるのがソフト化しにくいカルト映画になってしまった理由かとも思いますが、実際は十年に一度の祭りで処女の生き血で焼き入れした刀を打って神に奉納する一族が、被差別民だったサンカを連想させるというのが関係者をビビらせたのかもしれません。原作小説は『九十九本目の妖刀』で『妖刀』を『生娘』に変更したのはもちろん新東宝のワンマン社長である大蔵貢のアイデアですが、あえて『九十九本目』を残したおかげで日本語としてはおかしいけど奇妙な語感が出ています。九十九本の刀が揃うと一族の願いが成就するというのが触れ込みですが、990年も同じことしてきたのかと、あきれるばかりです。そんな大事な処女が必要なのに、よりによって三原葉子を誘拐してくるとは、もうコメディです。この処女調達役の婆さんが実はこの映画で一番キャラがたっていて、化け猫映画で有名な五月藤江が演じています。もうこれは彼女フィルモグラフィ中最高の怪演といって差し支えなく、若い娘を見てにやりと笑う不気味な表情は下手すりゃ夢に出てきそうです。 新東宝のプログラム・ピクチャーは大抵ストーリーが途中で(始めからというケースも多い)破綻してしまうのですが、この映画は予想を裏切り最後までしっかり撮られていました。ラストでは弓矢で攻撃してくる住民と警官隊の銃撃戦という奇妙な光景を見せられたりしますが、西部劇を観ているようで不思議と違和感がありません。主役クレジットの警官役である菅原文太はあまり目立たないキャラでしたが、新東宝時代の文太は壮絶な大根役者なのでこれが正解です。エロとグロが売り物だった新東宝でしたが、本作はその中でも希少なエロと伝奇をくっつけた路線だったと思います、でも正直エロはほとんど無いに等しかったですがね(有名な三原葉子が下着姿で水車に括り付けられているシーンはありませんでした、どうもスチール写真だけみたいです)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-01-11 22:38:51)
9.  逆噴射家族 《ネタバレ》 
内容だけじゃなくセリフの面からこれはもう地上波じゃ絶対に放送できないし、昨今ではBSやCSでもお目にかかることがないですね。小林克也はこれが映画初主演で、もしこの映画をリメイクするならお父さんは本田博太郎というイメージですが、本田と違って小林には狂気を微塵も感じさせない平凡さが濃厚で、かえってこの方が面白いキャスティングだと思います。低予算を逆手にとって登場人物はほぼ5人だけ、また浦安の新興住宅街にセットを組んで撮影してますが、この住宅街が映るカットには他の住人や車がまったく存在せず、製作者が意図する疎外感が肌で感じられるような仕組みになっています。中盤以降は本当に家族で殺しあうんじゃないかとハラハラするような展開、もしそうしていたらスプラッター・ホラーという全然別のジャンルになっちゃうんで観ていてそれはないだろうと察しは付きますが、そういう感じのホラーは最近のフランス・スプラッターにはありそうですね。もしそうするなら、倍賞美津子ほかの家族が精神病を患っていると思い込んでいた小林克也だけが本当に狂っていたとする脚本が王道ですが、どう見ても女房子供もやはりおかしいというのがこの映画の独特のテイストなんでしょう。ラストの平穏もハッピーエンドというよりも悪夢ファンタジーと呼ぶほうがふさわしいのでは。 こんな超オフビートなお話し、原作が小林よしりんだったとは驚くところでしょう。いまや政治の世界に中途半端に首を突っ込んでいる人ですが、かつては『東大一直線』とか『おぼっちゃまくん』といったシュールでパンクな作品の人だったことが懐かしい。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-02-19 23:58:35)
10.  吸血鬼ゴケミドロ 《ネタバレ》 
小津映画や寅さんの松竹は、SF・怪奇系のジャンルに関しては圧倒的に製作本数は少ないけどどれも珍作・怪作ぞろいです。その中でもとびっきりの破壊力を持っているのが、この『ゴケミドロ』でございます。私の同世代でこれを観てトラウマにならなかったのは圧倒的に少数派で、怖くて最後まで観れなかった派の方が多かったんじゃないでしょうか。 でもこの歳で見直すと愉しく突っ込めるところがてんこ盛りなのが嬉しいです。①「9人しか生き残れなかった」って言うけど、その旅客機始めっからそれしか乗客おらんやないかい!②劇中二回も都合よく起こる大落石、こりゃ一体なんなんだ③全然役立たずの吉田輝雄、だいたいお前が高英男を旅客機の中に入れちゃったのが面倒の始まりじゃないかい!④まるで中学生の学芸会の劇みたいに幼稚なセリフ、まあこれぐらいで勘弁しておきましょう(笑)。とはいっても高英男のあの怪演だけは今観ても強烈すぎますよ。 タランティーノが『キル・ビル』で使ってオマージュを捧げたという冒頭のシーンは有名です。でもラストの円盤群が地球に押し寄せてくるシーンを観て気が付きました。ティム・バートンの『マーズ・アタック!』のオープニングがよく似ているんですよ。それにしてもタラといいバートンといい、よくこんな極東のゲテモノ映画を見つけてくるものです。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2018-09-09 03:00:22)
11.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 
ウダウダ・グジグジの男陣とカースト意識むき出しで火花を散らしあう女陣、これぞゆとり世代の高校生活という感じだが、よく考えると自分のはるか昔の高校生活と大して変わらないことに気づかされました。現在は高校全入の時代で大学も選り好みしなければどこでも入れる状況なので高校生たちも個人の趣味や男女交際に没頭してる感もありますが、偏差値万能の自分らのころは入った(合格した)高校によって学生生活が変わってしまうといういわば高校カーストの要素が強かった気がします。そのころでも部活は学校体制から離れて個性を発揮できる場だったから楽しかったわけで、そう考えるとこの映画のキャラたちが持っているような部活カースト意識はなかったなあ。 確かに観る人によって評価の振幅が大きい類の映画だと思いますが、凝った構成の脚本と出演陣の最近の日本映画ではピカイチの自然な演技は秀逸の極みです。ただ唯一、神木隆之介の映画部部長だけはキャラ設定が臭すぎた感が否めなかったですね。今どきロメロ愛を熱く語り8ミリで映画を撮る高校生なんているかよ(いや、いるかもしれないけど)!30年前の映画青年みたいな語り口はちょっと不自然でしょ。思い返せば自分の高校時代にもこの部長を彷彿させる同級生の演劇部がいました、彼は今やこのサイトにも登録されている有名な声優になっています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-07-12 00:56:46)
12.  恐喝こそわが人生 《ネタバレ》 
題名からして凄いけど、これが東映じゃなくて松竹配給の映画だってことがまたすごい。このころは城戸四郎がまだ松竹に君臨していたはずなのに、ほんと血迷っていたとしか言いようがない状況だったみたいですね。監督が深作欣二で松方弘樹や室田日出男がメインとなるとまるっきり東映ヤクザ路線でございます。 当時としてはスタイリッシュな撮り方をしていますが、内容的にはピカレスクな青春映画という趣きも無きにしも非ずです。特に中盤までの雰囲気は、野郎が一匹多いけどアラン・ドロンの『冒険者たち』の様な雰囲気もあります。中盤で政界の念書を巡るゴタゴタに関わるようになってからはガラリと感じが変わってきますが、まるでアメリカン・ニューシネマの様なすべてが徒労に終わってしまう結末は悪くないです。あの血をだらだら流す松方弘樹の暗殺シーンが本当のゲリラ撮影だったとは、やっぱ60年代はとんでもない時代だったんですね。三原葉子・丹波哲郎・天知茂など新東宝の残党組が大挙してして出演しているところも、特筆すべきでしょう。と言っても、丹波のほかはいずれもワン・シーンだけというただのちょい役という可哀想な扱い。丹波だって映像になっているのは合わせて1分ぐらいですかねえ。新東宝が倒産してからずいぶん経っている頃なのに、ちょっとひどい扱いです。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-01-27 22:29:00)
13.  恐竜・怪鳥の伝説 《ネタバレ》 
いやもう何と言いますか、スッゲーものを観てしまったとしか感想はございません。「突っ込んだるぞー!」と気合い入れて観始めましたが、まさかこれほど愉しませていただけるとは感激です(笑)。でもこれだけは皆さんにぜひ広めたいポイントを挙げておきます。①プレシオサウルスや翼竜よりはるかにカネと手間をかけている人体破壊シーン、東映はほんとに子供向けを狙っていたのか?併映が『ドカベン』と『世界のスーパーカー』ですからねえ…②TVニュースで大々的に報道している割には恐竜対策にあたるのが自衛隊はおろか警察ですらなく、なんと村の消防団!なぜか爆雷なんて物騒なものを持っている不思議な村です。山と積んだ爆雷に慌てた警官が拳銃弾を撃ち込み大爆発で消防団は全滅、思わず「ウソだろ!」と画面に突っ込んでしまいました。③西湖の湖底がなぜか樹海につながっていて渡瀬恒彦たちはラストはウエットスーツを着て森の中を彷徨うという不思議な光景を見せられます。そして富士山が大噴火、二人は地面が割れて火が噴き出す中を逃げまどいます。でもどう見ても渡瀬恒彦の方が常に恋人より先を進んでいて、彼女を捨てて逃げてる風にしか見えません。そして恋人は割れて火を噴く地面に落ちそうになりますが、それを救い上げようとするシーンがもう引っ張ること引っ張ること、でもあれじゃあ溶岩に飲み込まれて二人とも死んだとしか解釈のしようがないラストです。どっと疲れました。④そして絶望するほどチープかつダサい音楽、だいたい諸口あきらって、誰よ? でもこの映画ってけっこう各国に売れて、海外でもカルト映画になっているそうです。ちょっと恥ずかしい気分です。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-01-30 23:51:06)(良:1票)
14.  凶悪 《ネタバレ》 
あの「上申書殺人事件」を、原作ノン・フィクションがあるとはいえここまで真正面から映像化した努力には敬意を表したいところです。ちょっと不謹慎ですけど、映画化されていない興味深い事件が日本にはいっぱいあるんです。無難な題材や原作しかチョイスしない委員会方式の映画製作が幅を利かしている腐った日本映画界では無理もないですけど、そこはえげつないハリウッドを少しは見習ってほしいものです。もう団塊世代しか覚えていない連合赤軍事件なんかを映画化する前に、オウム真理教事件を映像化するべきじゃないでしょうか。 本作はと言うと、誰もが身震いする様な凶悪をエンタテイメントにまで高めた傑作だと思います。よく『冷たい熱帯魚』と比較されていますが、趣味の悪いデフォルメが無い分本作の方が優れてるんじゃないでしょうか。リリー・フランキーの不気味な演技には身震いさせられましたね。どの登場人物にも感情移入させない演出も秀逸です。でも主人公・山田孝之の家庭生活までストーリーに組み込んだのはちょっとどうかなと思います。母親の世話を妻に押し付ける彼の内面の闇としたいみたいですが、はっきり言ってせっかくの緊張感を削ぐだけだし、だいいちあんなことで悪人扱いされたらたまらんぞ、と感じる人が多いんでは。でもラストの面会シーンは真逆の演出ですけど『天国と地獄』のラストを彷彿させてくれました、これは監督のオマージュかもしれませんね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-11-13 23:17:16)(良:2票)
15.  祇園囃子 《ネタバレ》 
みんな若尾さまを目当てに観始めるでしょうけど、すぐ判りますけどこの映画は小暮実千代を愛でるのが正解です。もう何と言いますか、彼女をギュッと絞ったら色気の汁が滴り落ちそうな感じなんです。彼女が冒頭でなじみ客にぶつける捨てゼリフが、現代のキャバクラ嬢の言う本音と大して変わらないところはとても面白い、時代に関係なくこの世界は変わらないものなんだなとしみじみ思いました。若尾文子も時代にあった自我を持った舞妓を好演していて、初めてお座敷に上がる時の初々しさは胸キュンものです。 80分余りと尺は短い映画ですが、実に濃厚な80分間の溝口ワールドです。「女を撮らせたら溝口」と言われただけあって、小暮実千代の演技を観てると、どうしてここまで繊細な演出が出来るんだろうと感嘆してしまいました。また出てくる男と言う男が、だらしなく狡猾で卑怯で女優陣を引きたててくれます。状況が変わる場面になると必ず電話が鳴るという作劇術もなかなか興味深かったです。そして忘れてはならないのが置屋の女将の浪花千栄子で、男も女も操る手腕はまるで老練な政治家みたいで怖くなってきます。 こうなると同じ溝口の『祇園の姉妹』もぜひ観たくなってきました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-06-25 21:54:37)(良:1票)
16.  清須会議 《ネタバレ》 
昔から「お市の方はなんで柴田勝家の嫁になったんだろう?」と疑問だったんですが、この映画を観てそれはすっきり解決いたしました、あくまで三谷幸喜の視点なのは判っていますが実に説得力がありました。 清州会議をテーマにしてコメディを撮るとはそのアイデアには思わず脱帽、と言うよりも日本史には映画化したら面白い題材がまだまだ沢山ありそうですね。戦国武将がべらんめえ口調で喋るところは眼を剥く方もおられましょうが、価値観は現代人とは多少違っていても“人間はきほん損得で動くもの”という本質を描くには申し分なかったかと思います。その点で大泉洋の秀吉は好演で、正直こんなに上手い役者だったのかと驚きました。もっと怖かったのはお市の方をはじめとする女性陣で、中でも剛力彩芽の松姫の最後の笑い顔は凄かったです。お寧役の中谷美紀が見せる踊りも、なんか卑猥な動きですごい振り付けでした。 この映画の最大の欠点は評定の決着がついてからラストまでがだらだらと冗長なことで、忍者が秀吉を暗殺しようとするシークエンスなんか必要ないでしょ。最近の邦画には良くみられる傾向なのですが、せっかくテンポ良い脚本なので残念です。 明智光秀が仕留められるカットなど拘った映像も随所に観られ、思いがけなく良く出来た映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-19 20:12:40)(良:1票)
17.  巨人と玩具 《ネタバレ》 
主人公たちの会社が必死になって売っているのが、自動車でも半導体でもなくキャラメルだと言うのが今の眼で見るととても奇異に感じることでしょう。1950年代とはいえ大手製菓メーカーが単品販売のわけがなく、これは高度なカリカチュアだと思った方が良いのでは。とは言え何とかして子供たちにキャラメルを買わせようとする涙ぐましいまでの景品商法を見ていると、“ヴァレンタイン・デーにチョコレートを送りましょう”なんて言うのは誰が考えついたか知りませんが天才的な販促キャンペーンですよね。 増村保造らしいモダニズムに溢れた映像で、21世紀の私たちからは判りにくいところですが、街並みや風俗は5年から10年は先取りした雰囲気になっています。日本初のグラビア・ガールが実際に登場したのはこの映画の10年あとだったそうですから。 強烈な印象を残すのは高松英郎の宣伝課長で、彼がまくしたてる宣伝理論は的を射ているけど恐ろしいまでの大衆蔑視に満ちていて、高松英郎の姿がナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッべルスとオーヴァーラップしてしまうほどです。どの登場人物にも感情移入出来ない様な撮り方は上手いなと思いますが、安易なストーリー・テリングに走った部分も観られ、とくに川口浩の親友がいつの間にか野添ひとみのマネージャーになっているなんてちょっとクサ過ぎました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-06-01 17:10:36)
18.  斬る(1962) 《ネタバレ》 
三年や二十年があっという間に経過する驚くべきスピーディーな映画。上映時間71分ではまあ致し方ないでしょうが、その分様式美に凝りまくった映像に集中出来て良かったかと思います。「人間が縦に真っ二つ」という衝撃シーンがあります、といううたい文句ですが、遠景でしかも一瞬のカットですからなんてことはない。流麗な雷蔵の殺陣が見どころなのに、このシーンだけは妙に浮いてしまっているので監督の意図はちょっと?ではあります。三隅研次は後年に『子連れ狼』シリーズで人体破壊殺陣をさんざんやっているので、もうこれは彼の趣味の問題としか言いようがないでしょう。この当時はすでに黒澤明が殺陣に斬撃音をとりいれていましたが、こういう斬撃音のないチャンバラはかえって新鮮な感じがするのが不思議です。どっちがリアルなんでしょうかね。
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-12 19:33:39)
19.  キングコング対ゴジラ 《ネタバレ》 
東宝創立30周年記念映画として7年の眠りについていたゴジラを引っ張り出し、なんとキングコングをぶつけるという高度成長期に入った世相に相応しい作品で、いまで言うと『エイリアンvsプレデター』『ジェイソンvsフレディー』といった感じでしょうか。ユニヴァーサルからキングコングの版権をとるのに苦労したそうですが、この映画のキングコングの不細工さは東宝特撮の中でも最悪の部類です、ユニヴァーサルから文句が来なかったんですかね? 対するゴジラは逆三角形の体型であるコングと対照する意図もあって頭が小さく下半身がどっしりしたスタイルで、ファンからは“キンゴジ”と呼ばれ数あるゴジラ・スーツの中でも人気NO.1を誇っています。また本作からゴジラ映画もカラー化されてこの映画の色合いが後の作品にも引き継がれてゆきます。■実は本作は「怪獣ブラック・コメディ」というジャンルを開拓した偉大な功績があるんです。軽い作風の関沢新一の脚本の中でも屈指の面白さで、それが重厚な本田猪四郎の撮り方と見事にマッチングしています。まだTV放送が始まったばかりの時代に、TVとその本質であるコマーシャリズムのえげつなさをブラックな笑いに昇華させてるからもう脱帽するしかありません。有島一郎の宣伝部長の抱腹絶倒ぶりは、同じ東宝の『社長シリーズ』なんか目じゃありません。ゴジラもコングも彼の商魂に乗せられてプロレスしてる様なもので、ラストで観光施設として建てられた熱海城を仲良くぶっ壊すところなんか痛烈な皮肉になってます。■コングが東京に侵入するシークエンスは、オリジナルへのオマージュが感じられます。浜美枝のスクリーミング・クィーンぶりも堂々たるもので、彼女の悲鳴はほとんど泣き声に近く真に迫ってました(吹き替えじゃないと思いますが)。ただエンパイア・ステート・ビルのオマージュとして国会議事堂に登らせるとは、ちょっとみみっち過ぎました。なんで東京タワーにしなかったんでしょうかね、前年に『モスラ』でぶっ壊しちゃったからかな(笑)。
[映画館(邦画)] 8点(2014-03-22 20:07:06)(良:3票)
20.  牛乳屋フランキー 《ネタバレ》 
天才喜劇俳優・フランキー堺のパフォーマンスを堪能すべし! 日本の映画俳優の中で彼ほどスラップスティックなコメディが上手い人は他にはいないし、今後も現れないでしょう。まあ何と言うか、彼の身体の動き自体がもうコメディのリズムになっているんです。映画自体は他愛のないストーリーですが、二役のフランキーが同時にフレームに映っているところが綺麗に合成されていて、この時代にこんなCG顔負けの技術が有ったとは驚きました。 そしてびっくりしたのが、石原慎太郎をパロった石山金太郎なる大学生の小説家を登場させて徹底的にコケにしているところです。だってこの監督中平康は同時期に『狂った果実』を撮っている人なんですから、ふつうここまで関係者をバカにしますかね。そのおちょくり方もけっこう辛辣で、書いている小説を読まれて「あんた小学校出てるの?」なんて酷評されたりするんです。けっこうこれが中平康の石原慎太郎に対する本音だったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-01-11 23:26:57)
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