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アンギラスさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1.  万引き家族 《ネタバレ》 
 私が間違っていました。どうもすいませんでした。すばらしい映画です。  【強烈ネタバレあり】 (中略)  本来の日本の社会とは、この映画に出てくる柄本明の駄菓子屋さんのように、わかって いても事情を汲んで見逃す人たちの社会である。逆に飴を与えるなどし、時間をかけて 本人の気付きを待つことらへんに、落とし所を見出していたはずである。  そう、この映画はじつは祥太という少年の「気づきの映画」でもあるのだ。   「妹にはさせるなよ。これ」秘密のサインであったはずの、指をくるくる回す行為まで 見抜かれていた。  そのショックにより、少女の誘拐が世間で騒がれてすらまだ動き出さなかった、映画に おける「仮家族の物語」が、ようやく静かに動き出すのである。なんといきなり土砂降り の雨が降り出すのだ。このことは、この映画がじつは、タイトルに反して家族でなく 「少年を主観とする映画」であることの、最初の証左となる(映画とは量子だ!)。  ほぼ同時に安藤サクラは職場をクビにになり、フランキーとの交合に慰めを求めること になる。さらにその夜、花火大会の「音」だけを聞いて家族たちは「もう、(この物語 も)終わりだね」とつぶやくことになるのである。  (中略)   「最後の思い出」、と思ったかどうかはわからないが、家族は唐突に海へと向かう。  この場面において、海辺で遊ぶ家族を目で追いながらなにか言いたそうに口を動かす 樹木希林の「最期」のショットは強烈だ。  彼女は何を言いたかったのだろうか。いや、言おうとしなかったのだろうか。   希林の死後、少年は両親が犯罪を犯し、その年金やへそくりを搾取する様子をも目の 当たりにする。  気づきを経た少年は、もうそれらの行為を容認できない。そのことはフランキーから 車上荒らしに誘われても、参加しないことによって示される。少年は迷い始めた、という より、両親に対する明確な疑問を持った。   次の展開点のきっかけをもたらしたのは、またしても柄本明である。「忌中」という 字を読めなかったにしろ、駄菓子屋が休みであることを知った二人は、しかたなく二人 だけでスーパーへと向かうのである。  入店前、「ここで待ってて」と言ったにもかかわらずスーパーに入ってきた妹が、 見よう見まねで指を回し、万引きする素振りを見せる。それを見た少年は、ついに 「仮家族の物語」を自ら破壊することを決断するのである。   結果的に一家は拘束され、安藤サクラの「おたふく風邪泣き」という名シーンを経て、 仮家族は解散させられる。   サクラは面会に来た少年に対し、はじめて駐車場で出会った時の状況を伝え、フラン キーに対し「この子は私達とじゃだめなの」とつぶやく。彼女は少年の変化を見抜いて いたのだ。  少年は翌日、ラス前のバスのシーンで、フランキーに「わざとつかまった」と告白する。   バスの座席に座った少年は、フランキーの呼びかけにすぐには振り返らなかった。その 後しばらくたってから振り返るのである。ということは、少年にはフランキーの声が じつは聞こえていて、あえて無視したのだ。   なんというリアル。ごく僅かな動きと表情のみで、もう二度と会わないという決意の 固さを示した!     このように、この映画はけっして(一部で批判されているように)万引き行為を擁護 するような映画ではない。むしろ逆に、悪事に対する模範的な回答をしている映画だと 言うこともできる映画である。   少年がスイミーの物語に関して「でもそれじゃあ大きな魚が可愛そうだよね」と言った ように、現実は物語的明快さでは捉えきれない面が多々ある。映画はその多義性によって、 世の中のそうした面を逐一描写できる。   「複数の事象」を並行して示すことにより、世の中の複雑さ、価値観の多様性を同時に 示すことが可能な芸術が映画なのだ。観客である自分と、スクリーンの自分(たち)の 複数の視点や価値観や時空間が「同時に存在」していることが「実感」できること。その ことこそがまさに映画の快楽なのだ。   忙しいスケジュールの中、こんなにいろんな意味で最高級の映画を作り上げてしまった 実力には感嘆するしかない。  この監督は我が国の誇りであり、宝である。  おめでとう、そしてありがとう。  私も自分のいる意味について多少勇気をもらえました。   最後に、蛇足。先述したようにある立場からすればやむを得ないことかもしれないが、 ヒステリックな荒らし行為によってこのすばらしい映画の価値を少しでも損なうことは、 どうかなるたけ避けていただきたいと思う次第である。
[映画館(邦画)] 10点(2018-06-20 18:59:55)(良:2票)
2.  ディア・ドクター 《ネタバレ》 
間違いなく今年のベスト邦画のひとつとなる映画。ことに台詞演出がすばらしく、あくまで外部の人間による感想だが、邦画の現状を鑑みるとこれ以上のものは望めないのではないかとさえ思える域に到達している。それだけしびれるような台詞が随所にあるのだが、だけでなく冒頭から失踪前後の出来事を効果的に配置する脚本もすばらしいし、鶴瓶や香川照之のような一見反映画的と思える顔ですら何とか映像世界に押し込めてしまう撮影手腕も、まさしくプロであるとしかいいようがない。ちょっと褒めすぎかもしれないが、しかし邦画を褒める機会などめったにないと思うのでこの際思いきり褒めておこう。 鶴瓶が××であることは、毎日顔を付き合わせているベテラン看護婦は当然気づいている。出入りの業者も勘付いている。それどころか本当は、患者を含む村人たちだって気づいているのかもしれない。しかし彼らはそのことに触れようとしない。共同体にとって重要なのは彼がいることであり、本物かどうかは瑣末事項だからだ。しかし正体がばれた後、ここがひとつの見せ場であるのだが、村人たちは口々に彼を非難するし、八千草薫など刑事の質問に「何もしてくれませんでした」ときっぱり言ってのける。コーエン兄弟のそれなどとはレベルの違う反物語性が芸術としてこの世に現出する瞬間であり、もしかしてものすごい瞬間なのかもしれない。おそらくは共同体の保身をはかるためのそれらの台詞は一見本意を無視している。だが関係者を詰問していくうち、刑事たちは逆に村の強固な意志を感じ取り、恐れをなすまでに至る。それがラス2のシーンへとつながる。私はこのシーンは映画が丁寧に撮り続けてきたものの最終解であると思う。つまり、共同体とは恐ろしいものであり、鶴瓶はだましたつもりが実は利用された被害者だったのであり、警察は彼を裁こうにも裁けない立場なのだという。 ラストシーン、食事係に化けて現れた鶴瓶に対し、八千草薫はいったん顔を引きつらせてから微笑む。理由はどうあれ遁走した瞬間村は彼を見放したのであり、そういう人間に対して彼女は素直に微笑むべきかどうか迷ったのである。日本人の表情の多義性をここまで捉えた映画を、私はひさしく見なかった。 慌てて付け加えておくが、だからといってこの映画が冷たい映画だといっているわけではない。むしろ全編優しさにあふれた映画であるのでよろしく。
[映画館(邦画)] 9点(2009-07-15 18:24:55)(良:1票)
3.  天気の子 《ネタバレ》 
ぎゃははははっ。  《ネタバレ》  気色が悪いとしか言いようがない音楽とか絵柄のセンスだが、ラストの「もっと自分を肯定しなさいっ」メッセージがすべてを吹き飛ばす。こんな物語はこれまで日本になかった。あらゆるエピソードもわざと大雑把に描いておいて、骨太の論理構築力によってすべてをぶっ飛ばす! ええどええど新海誠。これからも悲しみなんぞ描かんといてくれ。このまま行けるとこまで突っ走れ!
[映画館(邦画)] 8点(2019-10-06 22:38:00)
4.  シン・ゴジラ
 評判どおりの面白さ。シン・階級社会へ。
[映画館(邦画)] 8点(2016-09-21 00:47:04)
5.  奇跡(2011) 《ネタバレ》 
(略) ごく大雑把に言えば、この映画はこの一人の少年の成長譚だ。序盤、「意味わからんわ」と彼は繰り返しつぶやく。なぜすぐにでも噴火するかもしれない火山の麓に住まなければならないのか。なぜわざわざ坂の上に学校を作るのか。父親や弟と離れ離れに暮らすという非日常的な状況に置かれた彼は、それでも長男らしく現実主義者である。目の前にある問題をまず解決することが「生きる」ということだと心得ており、少しでも矛盾を感じればそれを口に出さずにいられない。 (略) いっぽうこの映画は、人に対する思いやりの場面を多く映しだす。教室で、家で、図書館で、保健室で。それらは大人から子供たちへの気遣いという形だけではなく、博多ステージにおいては子供同士のそれとして見られる。あくまで日常的な行為として、ごく自然にやり取りされるそれらの振る舞いは、結局この映画のほぼ全編において描かれることになるのだが、監督はなぜそのことにこだわったのだろうか。 (略) トンネルの上に並び、いよいよ彼らがすれ違いの瞬間を迎えようとした時、兄の心の内に去来したのは過去に見た様々な情景だ。木の芽や、火山灰や、自販機の下で 100円玉を発見した時の感動や、肩に触れた先生の手の力強さや、きれいなコスモスの花や、犬っころの死だ。もし火山が大噴火すれば、それらすべてが灰になり消え去ってしまうかもしれない。そう悟った時、彼は「家族より世界を選んだ」のである。この地球上で、あらゆるものが生きて動いていることじたいが奇跡なのであり、いろんな場所で、それらと自分とたまたま邂逅することが、もうすでに奇跡なのだ。むろん自分もそのような奇跡の一員であり、自分と同じように他者も、地球上のいろんな出来事も消してしまってはならないのではなかろうか。兄はそう気づいたのである。  この映画、はっきり言ってたいしたショットはひとつもない映画だが、このフラッシュバックだけで千年生き永らえる価値を得た。そのくらい素晴らしいシーンである。 (略) ラスト、兄は風に指をかざして「今日は積もらへんな」とつぶやく。彼はもう境遇に文句をいうことはない。「意味わからん」の意味を理解しかけ、なんとか自然と共存していくことを選んだのである。実にきれいな終わり方であり、例の震災さえなければみごとな良作として心に残ったことだろう。 (略)
[映画館(邦画)] 8点(2011-09-12 22:30:20)(良:3票)
6.  ヒーローショー 《ネタバレ》 
私は非常に好きだ。この映画。 【以下バレ】 登場する若者たちの顔がすべていい。その役柄にどんぴしゃりという顔立ちをしている。だが彼らを撮る撮り方は、なんというか徹頭徹尾イナタい。ギャグはメチャ寒いし司会の女はペチャパイだし、後藤の連れの恋人が登場して30秒で「うぃ」と言って去るのもショベルカーのパットンさんもラストのピンクレディーもなんか空虚だ。意味合いがありそうでない。リアリズムといえばその通りだが、しかしまるでギャグが空振りするような、「的を射なさ」という点で共通している。  (中略)  私の解釈はこうだ。まるで蜜のようなリンチの時間のように、濃密な時間というものはたしかにある。だが結局は、遊園地で家族と過ごすささやかな時間などと同じように流れ去るものなのである。なので一時的な、まるで自分が主人公になったような、映画的な時間のために何かをしでかしてしまえば、その後にずっと長く続く非映画的な時間に影響を及ぼすことになる。というか、辛い時間は死ぬまでずっと続く。「生き直させてくれよ」と福徳は後藤に懇願するが、それはじつは後藤の叫びでもあり、突っ走ってしまった登場人物全員の、またなにか取り返しのつかないことをしでかしてしまった者すべての叫びである。時間はいつも等しく流れるが、けっして巻き戻せない。だから若者よ、軽々しくヒーローになろうとするな、この監督はそう言いたいのだ。  たかが映画じゃないか。人生は映画的じゃない時間のほうがずっと長いのだ、気をつけろというメッセージ性。乱暴な若者言葉や、後藤によるたどたどしい恋人への独白などに見られるリアリズムの追求。ピンクレディーの曲に代表される「意味」の希薄さ。これらから見て、この映画は徹底して反映画を指向していると言っていい。しかしだからと言って、たとえばテレビや凡百の映画のようにつまらないということは絶対にない。むしろ私は、ダラダラと続く後半にこそどういうわけか映画を見ているという至福を多く感じた。かっこよさとは対局にある、イナタい事象をあくまでイナタく撮ることにこだわった監督が、ついにたどりついた結論的作品、と言ってしまっていいぐらいの出来栄えに、十分到達していると思うのである。
[映画館(邦画)] 8点(2010-06-25 11:16:17)(良:2票)
7.  バケモノの子 《ネタバレ》 
なんかジブリに似てきてね? 【激バレ注意】 前は輪郭線がもっと太かったような。あと絵柄とかなんとなく。気のせいかな? 真似してほしくねーんだが。 だって今回で話作りのセンスがパヤオよりも数段劣ることがはっきりしたし。  この話で出てくる「人間のみが作る心の闇」というのがよくわからない。バケモノやバケモノの世界がどういうものかもよくわからない。結果、胸にストンと落ちないので面白いだけで終わる。感動には程遠い。当然観客の心の内に化学変化なぞ起きようがない。そんなの後継者とは呼べない。  闇とは何か。私が無理くり解釈すると、「親族内の関係性だの「こうであるべき」といった同調圧力に屈することでその人独自の好奇心だの攻撃的センスだのを自ら抑圧してしまい、内側に爆発の種を作ってしまうこと」を言ってるんじゃねーかと思う。対してバケモノの世界とは、そうした抑圧が薄い、本当の自分を素直にさらけ出してもいいかもしんない(だって周囲もそうだから)世界のことね。昔の下町にはあったかもしんない場所。  完全性を目指すことは才能を持つ中でも一部の者にしかできないんで、たとえ自分を抑制できても全的な才能がなければやがて闇を暴発させてしまうことになるんだけれども、できない同士で互いに補い合えばもっと高みに行けるかもしんないよ、とかいうことを言ってるわけだ結論としては。違うかな?  でも私に言わせりゃ、それじゃあ凡庸なんだ凡庸。宗教に入って「ともだち代」さえ払えば幸せになれますよと言ってるのとほぼ同じじゃねーか。そんなのダメだ。  確かに現実の日本じゃ欲望を抑圧してマネキンと化すゲームがいたるところで行われているが、それによってできた「心の闇」は、絶対的不利な立場の者に対する「イジメ」によって発散されているのだ。実行の中心にいるのは間違いなく宗教である。そこに問題意識がなければ本当に優れた創作者とはいえない(肯定してはならない)。  パヤオが偉いのは、そうした陥穽に陥ることを(おそらく意識的に)回避して、別の次元へと昇華させるという力技(?)ができたからだ。社会、自分、他者(集団意識)によって作られるどうしようもないトリレンマを、ブレイク・スルーできるような気にさせてくれたわけね。んで、多くの観客の心の闇を解放したと。  前作から続いている、作品を貫く鬱のトーンは、突き抜けられない作者の鬱と同期してるんじゃねーかという気がする。ムチャクチャやって宗教や集団意識なんぞ蹴飛ばしてしまえばいいと思う。才能あるんだから、着地点は自分の身勝手すぎる欲望の果てに置けばよいのだ。判断するのは観客に任せておけ。おれが読み取っちゃる。  ちょっと書きすぎたかな。ま、一緒に見たハリウッドの大作より10倍おもしろかったことは事実だけどね。
[映画館(邦画)] 7点(2015-07-30 08:21:30)(笑:1票)
8.  私の優しくない先輩 《ネタバレ》 
女子高生の気持ちを十全に表現してみたいとかいうような趣味は私にはない。『カリオストロ』はある意味少女の純真さに触れた悪党ルパンが改心する物語だったが、少女性とはあの作品のように聖域扱いすべきであり外からただ眺めているだけでいいのである。ずかずか踏み込むべきではない。もし変なものが出てきたらどうすんだ。 【以下バレ】  この監督はそのような偏見含みの垣根を、実に丁寧な日本語モノローグによって取り払ってみせた。むろんどこまで意図したのかは測りかねるし、映画のやり方としてはやや反則気味かもしれないが、結果的に少女の気持ちを私のようなおじさんにまで知らしめ、感動できる物語の主人公として優しく表現してみせたのである。  むろんだからといって女子高生に興味を抱くようになることなどないが、ただまあ私ら以降の世代が、なんでああまでアニメっ娘に執心するのかという気持ちはほんの少しわかったような気がする。他人に自分の言いたいことを伝えることができれば方法などどうでもいいので、映画としてどうかという意見に対しては、たかが映画じゃねーかと言い返せばすむ話である。  もっとも、笑ってしまうほど長く大袈裟な終わり方が、この監督のいびつに肥大化した自我しか表現していないというのもまあ事実かもしんないが。
[映画館(邦画)] 7点(2010-08-31 23:47:37)
9.  パレード 《ネタバレ》 
今の日本に、映画的な普通の映画が撮れる監督がいたなんて。すごいぞ行定! 【以下激バレ】 その部屋には一見人生に接点のなさげな4人がなぜか共同生活している。親密といえる距離感を共有する一方で厄介を避けるための曖昧なルールがあり彼らはクールなふりをしつづけなければならない。例えば良介は友人が死んだと聞かされてもその部屋では泣かない。外部の女の部屋で泣く。互いに弱みを見せない(非難されない)生活はそこそこに楽しい。だがそこにはおのずと非現実感が生じる。通り魔のニュースを淡々と流し続けるテレビ。その画面の「こちら側」にいるということのみが唯一、この部屋での出来事が現実に他ならないということを示しているかのようだ。 …といったようなことを描出した前半は誠に雰囲気よく進み、私は目茶苦茶興奮して満点をつけてやろうかと思ったほどだった。しかしパチンコシーンあたりからやや失速。未来はベタなトラウマ告白よりイラストレーターとしてのヘタレぶりを描いたほうがよかったと思うし、尾行シーンは背後で覗き見する藤原の顔が端正すぎてまるでギャグ漫画だ。隣室の占い師を訪れた政治家による応援演説など、現実と虚構の錯綜による浮遊感を出そうとする試みはあるが成功してないと思う。 一番惜しいと思うのはラスト。ちょっと唐突すぎ。まず通り魔というのは何かに不適合な人物が行うというイメージが個人的にはあり、英語を話せるような会社員がやることとは思えない。「何でも自分に頼ってくるのがウザかった」ってのが動機というのではあまりに弱い。また「もうみんな知ってる」というサトルの台詞も唐突で説得力を欠く。なんでこの辺りの伏線を入れなかったのか。 オーラス、帰らないと言っていた筈の良助や未来や中絶直後の琴美までが部屋にいて何事もなかったように彼を出迎える。直樹は泣き崩れる。ここで4人が浴びせた冷たい視線は、「ルール守れよ」という意味である。それはわかる。わかって慄然とする人も中にはいるだろうが、しかし彼は殺人者なのであって、まかり間違えば殺される可能性もあるのであって、無問題に付すというのはいくらなんでも無理があると思う。ああ惜しい。もうひとひねりあれば。 「部屋はネット上のつきあいの暗喩であり、あなたが何気なくチャットなどしている相手は実は殺人者なのかも」といったところへ何とか結論持っていけなかったかな。また字数超過だ
[映画館(邦画)] 7点(2010-03-06 22:07:30)(良:1票)
10.  パンドラの匣 《ネタバレ》 
途中でその手の会話・接触がないにもかかわらず、主人公の竹さんに対する気持ちが十分に感じ取れる。それだけで成功ではないかと思うのだ。 【以下バレ】 しっかりものの年上女性に惚れる、男なら誰でもするだろう経験が映像のみでよく描けてる。川上の好演が大きいのか。ただ逆に、なんで竹さんが主人公のことを好きなのかはさっぱりわからなかったが、まあ女性の意見は違うのかも。 物語的にはそれ以上盛り上がることなくあっさり終わるが、ドロドロの展開になるよりはその方がよかったかも。一応佳品として名を残す出来に、結果的にはなったと思う。 細かい演出は拙い。鬘を脱ぐシーンもラストのバスもぜんぜん感動的じゃない。とくにまあ坊と布団部屋で二人きりになり、電気をつけたり消したりするシーンはまったく駄目。もっとはっきり描けと憤りすら感じた。 
[映画館(邦画)] 7点(2009-12-04 07:44:11)
11.  サマーウォーズ 《ネタバレ》 
面白いアニメ。話を無理くり盛り上げる手腕はすごいし、感動できるメッセージ性もある。 家系の尊重(リアル)と人類愛(ヴァーチャル)ははたして両立するのかという気はするが、細かいことは気にしないでおこう(あとで考えよう)。 【以下バレ】 ナツキが泣く場面や、衛星が落下してくるというのに「遺言だからしょうがない」と皆で食卓を囲む場面など、とてもいいと思えるシーンもいくつかある。一方でスパコンがしょうもない原因で止まるシーンにはガックリきたし、ヴァーチャルな戦闘も伏線なさすぎてわけわかめである。 それに鑑賞中ずっと感じていたことだが、何か紙一重で足らない部分が多い。つまり夏休みであり田舎であり大家族であり、かつオズの世界やワビスケの帰郷や婆ちゃんの威厳やその他いろいろたくさん映像が出てきて、ひとつひとつの見せ方はいいのだが各々に相互性や深みが感じられず、何だか腑に落ちきらない残尿感あり。もう少しだけ深く描写したり説明したりすればいいのに。子供向けだからこれでもいいという意見もあるだろうが、そもそも子供向けじゃないアニメなんてあるとは思えないし、断片記憶をまんま断片で提示することが、はたして子供のためになるのかどうか。 つーかね、花札で決着つけるような映画をあの奇跡的な完成度を得たラピュタやカリオストロと同列に扱うことはとてもじゃないができない。天井を越えようという気概に満ちた作品を、いつか望みたいもんだとは思う。 
[映画館(邦画)] 7点(2009-08-16 19:42:24)(良:1票)
12.  ウルトラミラクルラブストーリー 《ネタバレ》 
相米や村川透の長回しですら大好物であった私なので、この映画に悪い点数が付けられるわけがない。デート時の男女の微妙な距離感をあらわすのに、そのシーンはとりあえず成功している。その他にもマツケン臨終やらトラックから飛びかう野菜やら、いまだ瞼に浮かぶ映像がいくつもあった。 願わくば、麻生久美子が絡み出した後も、すべて津軽弁で押し通してほしかった。どちらかといえば感化されるのは彼女の方であろうから。 どうせたいしたこと考えていないだろうから筋を云々するのはやめておく。ただし、私の減点は後半の筋とラストが対象であることははっきり書いておく。まあとりあえず、次回作は必ず見させていただきます。 
[映画館(邦画)] 7点(2009-06-22 22:49:23)
13.  海街diary 《ネタバレ》 
数年前より絵面はずいぶん凝ってるなあ。  【ネタバレ】 この人が売れてるんなら、それは喜ばしいことだ。  こう言っちゃなんだが私は相当に育ちの悪い人間なので、こういう親族内での気の遣いあいみたいな話はよくわからない。わからないがしかし、桜のトンネルも花火も、「自分や妹みたいな不幸な子供を作るのが嫌で自分を犠牲にして」幸せになりそこねたお姉ちゃんも、なんかどこかで見たことあるような(ないような)。あれは現実だったか、それとも映画だったか。 全体がそうした「見かけほあほあ」した幸せのトーンにあふれていて、これが日本のまったりだみたいな。どうせ50年たったらばあさんなんだから、そう力みなさんな、みたいな。  感情の起伏なし(そもそも健康な四人娘の話じゃ暗くなったりしようがないが)。 決してとんがった映像は撮らないけど、うまくなった是枝の、一周回ってワンみたいな話(なんじゃそれは)。  一番印象に残ったのは広瀬すずのサッカーテクかな。
[映画館(邦画)] 6点(2015-07-10 20:33:24)(良:1票)
14.  コクリコ坂から 《ネタバレ》 
つまらなくはないんじゃないの。感動もせんが。  1 食事をおいしそうに描くこと 2 「禁じられた~ 」類いの恋愛を少し持ち込むこと 3 声優については意外性のある人選をすること  みたいにマニュアル化して宮崎印の金太郎飴にする気かな(特に2は重要だなこれやっとけばエセ文化人が幼稚な評論書けるから)、とか感じるのはこれらがいかにも取ってつけたようでストーリーに有機的に咬み合ってねーからだわな。カルチェラタンの話と、海と俊の話もどっちがメインかわかんねーし。  監督はお飾りで、特に言いたいこともないけどノウハウあるしまー今年も映画作りますみたいな。僕らこれで食ってるんだから多めに見てよ、みたいな。  べつにそれでもいいけど、もし才能ある人が現れたらサクッと息子クビにしてね(無理だろうけどね)。 才能よりも血筋を選んでしまうのが日本人の限界というか、「民度」だよね。エイブラムスを選んだ向こうとの差だわな。 なんでそうなるのかを考えだすと、また深いことになるんだけどね。 
[映画館(邦画)] 6点(2011-09-12 22:29:20)
15.  借りぐらしのアリエッティ 《ネタバレ》 
昔ミクロマンという玩具があり、よく家の中を冒険させたりして遊んだものだった。この映画はあの懐かしい日々の感覚をひさしぶりに思い出させてくれた。 【以下バレ】  …映画の感想はそんだけ。  私は日本のアニメ事情に詳しくない人間なので不思議に思うのだが、絵柄までそっくり継承することに作り手は違和感を抱かないのだろうか。師匠以上のものは決して作れませんよというメッセージなのかな。  もっと言うと、日本のCG事情というのはいったいどうなっているのだろうか。というのも従来のアニメ画では『デビルマン』を映画化することはまず不可能だからだ。一方、『ヒックとドラゴン』を作った連中に依頼すれば、すぐにでもあの『デビルマン』が、満足できる形で映像化できるのではないかと思う。この現実を現場の人や広告会社やファンはどう捉えているのか。  意地を張っていつまでもアメリカに追随しない、ということだけはどうか避けてくれますように。  
[映画館(邦画)] 6点(2010-08-31 23:49:53)(良:1票)
16.  アマルフィ 女神の報酬 《ネタバレ》 
なるほど、ヤル気見せてるわけね。いや混ぜっかえすつもりは毛頭ないけれども、でも何で今更なの? ひょっとして政権変わるから? でもまあこのくらい映画っぽい映像でこれからエンタテインメントしていこうってんなら、確かに少しうれしいかも。もう二度と観るかと思わせるような感動の押し付けシーンはないし、幼稚な台詞回しによるラブシーンもない。くどくど台詞で説明することをせず、なるべく映像からの情報のみで観客を引っ張ろうとする。特に冒頭シーン、観客はいま何が起きているかを知るためにスクリーンの隅々まで目を凝らし、耳を澄ますことを強いられる。テンポがいい。こちらが一つのことを理解するや否や、ぱっと画面が切り替わる、そんな感じだ。 が、むろん頭痛の種はストーリーだ。 【以下モロバレ】 天海祐希が鉄砲向けたときは思わずうつむいてしまったぞ。ド素人の女が警察相手にあんなことできるわけねーだろう。こんな映画とてもじゃないがガイジンには見せられない。失笑を通り越して激怒されるんじゃないか。 それにあの大臣、たとえ意図して悪党に政治資金を横流ししたのだとしても、佐藤浩市が復讐すべきなのは直接手を下した軍事政権の方であって大臣ではなかろう(仲間の外人たちにとってはなおさらだろう)。しかもその大臣を殺さない(結局誰一人死ななかったと思う)。大臣が失職したという記事を写してシャンシャンとしたいようだが、上の人間の首をすげかえても結局組織の本質は変わらずという現実世界の経験が想起されるので、逆にストレスは高まるばかり。つーか、そういう現実が嫌だからこそわれわれは映画館に行くのだ。向こうの脚本家ならおそらく小野寺昭か佐野史郎あたりを黒幕一味に仕立て、銃撃戦の末スカッと殺してみせるのではないか。それがエンタテインメントじゃねーか。悪者をやっつけずにカッコだけつけたってちっともスカッとしない。 …などと、日頃ハリウッドに馴致されている人間の一人である私などは思ってしまうが、しかし今の時代、そうほいほい人を殺す映画を作るわけにいかんのかも。もし2作目が作られるのなら絶対見るから、何らかの工夫を期待したいもんだと思う。いっそシリーズ化して、観客を教育しつつ徐々にステップアップしていくというのはどうでしょうか。 PS.他の人のレビューで気付いたが、ラスト近くのフィルムブチ切れは意図的なものだったのね。なるほど。 
[映画館(邦画)] 6点(2009-08-25 23:46:38)(良:2票)
17.  劔岳 点の記 《ネタバレ》 
大自然を過不足なくフレームに収めてこれこそ映画だという、いかにも大監督がしそうな勘違いを無批判に継承したような映画。雲の絨毯を眼下に見渡しながらの会話シーンなど確かに声を失う美しさではあるが、一方で映画が一番撮らなければいけない「人と何かとの間」を撮ることには、興味がないのか自信がないのかあまり優れたものを感じない。人が自然と絡む雪崩や転落シーンなどちゃちくてまるでテレビみたいだし、浅野忠信は謙虚だがたまに口を開けば大根だし、香川照之は有能だが顔が決定的にダメで(宮崎あおいはすごくいいけど)、人と人とが緊密に絡む映像とはほど遠い。彼らももし一流の監督にかかればなんとかなったかもしれない。ちうことで所詮半端な2流の映画だが、実際に登山したという収録時の苦労話に同情してまあ6点。CGが発達した今の時代、そんなもの映画の出来に全然関係なくなってきているのだが。 
[映画館(邦画)] 6点(2009-07-04 22:28:12)
18.  少女たちの羅針盤 《ネタバレ》 
4人の名前に「東西南北」が一字ずつ入っているからといって、なぜそれが『羅針盤』という劇団名の由来となるのか(誰か案内するの?)、イマイチ腑に落ちないにもかかわらずなぜそれがハシャいで噴水に飛び込むという「映画みたいな」行為につながるのか、我々としては、画面の向こう側の人がそう思ってるんだからそうなんだろうと思うしかないわけで、この出来事がこの映画のだいたいを象徴している。  蘭が3人に合流するという、皆が期待するシーンをなぜ飛ばしたのか、意味不明の素人漫才のようなストリート演劇が、なぜ評判となり黒山の人だかりとなるのか、そして肝心要の劇中劇(メインとラストの両方)は、どうストーリーと絡み合いどんな「映画的」効果をもたらすのか、これらは映像による説得力が大きな意味を持つわけで、「原作がそうなんだからしょーがねー」ですましていられる話ではなかろう。それでもなにか諦めたように淡々と撮り続けてしまうのは、「観客」という存在に対してあまりに無責任、もしくは馬鹿にしすぎているというものではないのか。映画は評論家に見せるもんじゃねーぞ。  ただし、廃墟の映画撮影シーンの数々の光のコントラストはたしかに魅力的だし、これからも私の脳に残り続けるだろう。こんなチラ裏に書き散らしたようなアホ脚本ではなくもっと本格的な、濃いい脚本で一度撮らせてあげたらという気も、少しするこた確かである。 
[映画館(邦画)] 5点(2011-06-12 13:03:25)
19.  悪人 《ネタバレ》 
結局変な人たちの映画だったの? 【以下バレ】  映像的には飽きもこないしなかなかいい線いっていると思わなくもないのだが、いかんせん殺人の動機が弱い。あのくらいの台詞でいちいち切れてたら社会人なんぞやってられんだろう。差別や格差を無理くり作り出して物語を捏造するという意味でなら、時代を写実しているといえなくもないが(皮肉だよ)。  物語の転換点となる重要なアクション描写(妻夫木と深津との最初の出会いや、殺してから橋の下へ落としたはずの行為)がどういうわけか端折られている。おかげで逃避行にも説得力がない(まるで「おかしな二人の旅日記」)。さらにどうしようもなく皮相的な大学生の会話や態度など気に入らない点はいくらもある。最後の灯台シーンも、人生崖っぷちの象徴のつもりならなんで崖そのものを映さんのかと思う。青い空に広い海じゃ心象風景と真逆じゃねーか。  妻夫木はその変態性を出すのが遅すぎるし、深津はまるで普通のおばさんで田舎の嫁き遅れの暗さをちっとも出せていない。ただ光る点もあり、とても丁寧なカメラマンの仕事もさることながら、満島ひかりの演技。方言を駆使しての快活なOL役は見事にどハマりだったし、何より死後橋の上で柄本の呼びかけに応じて出現した際の、(これは撮影の妙もあるのだろうが)筆舌に尽くせないほど多義的な表情。まさに映画でしか表現できないものであった。もし賞に価するとしたら、満島の方だったであろう。
[映画館(邦画)] 5点(2010-10-01 00:51:52)(良:3票)
20.  空気人形
こりゃポルノだな。昭和時代、場末のポルノ小屋に入場するとよくこんな映画をやっていた。どっ暗い、人が普段眼にしたくない現実の一面を撮って何か意味のあることをやっている気になるというあのエッセンス。人によるだろうが、私は共感しない。生理的にダメ。途中から「もうわかったから早く終わってくれ」と願うばかりであった。 エンドロールを見て原作があの自虐の人だと知り納得。やだよ。 こんな話にはもったいないほどの映像の質の高さには唸りっぱなしだったけどね。 
[映画館(邦画)] 5点(2009-10-01 19:55:19)(良:2票)
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