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民朗さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1317
性別 男性
ホームページ http://minrou.seesaa.net/
年齢 36歳
メールアドレス baker221b@live.jp
自己紹介 全体的に甘めの評価になりがちです。
当然映画のジャンルによって評価にバラつきがあります。以下参考までに……。

評価が高くなりやすいジャンル:ミュージカル、B級アクション、ロマコメ、バカコメディ
評価が低くなりやすいジャンル:ミステリー、サスペンス、ラブロマンス

基本的に過激な映画が好きです。暴力的な意味でも、性描写的にも、人間性の描き方でも
どれだけ感動的な映画であっても尖った所が無い映画より、過激な表現がある映画の方を評価しています。

13.4.27(追記)……TOHOシネマズが6月1日から高校生料金を1,000円にするとのこと。
今は若い方が映画館に少ない状態なので大変素晴らしいと思います。
(日本の料金はそもそも海外に比べて高すぎる。価格も一律で決められているから劇場間の競合も生まれにくい)
でももうちょっとシネコン自体が上映する映画のラインナップを改めた方が良いのでは。
客が集まる邦画をバンバンかけるのは経営としては正しいけれど、いつか必ずしっぺ返しが来るのは判り切っていることなのに。

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41.  紙の月 《ネタバレ》 
ぶっちゃけ単なる「ヒモ男に入れ込んだバカな中年人妻の不倫話」です。でもこれがお金や欲望、そして善意にまつわる奥深い話になっており、吉田大八監督の演出力に舌を巻きます。 この映画には主人公が本質的に二人いる。一人は勿論、宮沢りえ演じる営業マンの梅澤。そしてもう一人は小林聡美演じるベテラン社員の隅さんです。この二人は恐らく観客の持つ二面性をそれぞれ片面ずつ表しているキャラクターだと思います。それぞれが頭の中の天使と悪魔だと考えれば実に分かり易い。「横領しちゃえばいいじゃない。お金なんて所詮は価値のない偽物よ。唯の札束よ。自由になりましょう」と囁くのが梅澤、「お金じゃ結局自由になれないわよ。人間落ち着く所に落ち着くようになってんの」と囁くのが隅さん。私は観ながら「梅澤みたいには行動できんなぁ……」と思っていましたが(大多数の人はそうでしょう)、梅澤が隅さんに「もっと怒ればいいのに」と言うのも尤もな様に思える。本来唯の紙切れに過ぎないお金に縛られている私達はどうしてもモラルの壁を乗り越えてしまった梅澤にどこか憧憬を禁じ得ない。しかし最後にそんな夢は醒めます。この瞬間の描き方が実に皮肉となっていて素晴らしかった。ヒモ男は若い女を作っていて破局。いやらしいと思っていたお客には枕営業を仕掛けようとしたら「今まで通り真面目にやればいいんじゃないかな」と逆に諭された。隅さんには「お金で買える自由はここが限界」と気付かされる。それでも彼女は窓から飛び出して偽りの自由で生きることを選んだ。ラストシーン、タイで自分が募金した相手の男の子は、別に募金があろうがなかろうが立派に大人に成長していた。彼女の善意はまるっきり無意味なものだった。自由でもなければ、善意にもならず、単に無意味な人生。それが彼女が選んだ偽りの自由の結果なのでしょう。リンゴを無言でほおばる彼女の眼からはそんな人生に対する呪詛すら感じる。 まあ流石にあんな突発的な逃亡の末に、タイまで逃げられるのは無理有り過ぎるとも思ったのですが。もうちょっと上手い見せ方は無かったのかな。
[映画館(邦画)] 8点(2014-11-24 23:15:21)
42.  舞妓はレディ 《ネタバレ》 
この映画には二つの大きな軸があります。一つは京都の芸者、舞妓のジャンル映画としての側面。もう一つは方言ギャップコメディとしての側面。それにミュージカルを加えて、かつ違和感なくどちらの要素も充分に描いている、これは大変凄いことだと思います。丁寧な脚本じゃなきゃ絶対にどちらかがお座なりになるか、どちらも半端な出来になることでしょう。 私は濱田岳演じる大学院生と同じく舞妓さんも所詮は水商売の一つと思っていて、キャバクラや接待など、仕事が介在する酒の席は正直気苦労しか感じたことがないので、所謂芸妓さんの世界には興味も憧れも無かったのですが、舞妓さんのお稽古の大変さ、男衆という芸妓・舞妓の身の回りの世話・着付けをする専門の職業があること、なぜ一見さんは断られるのか、舞妓さんのアルバイトを雇わないといけない状況、等舞妓さんにまつわる薀蓄は初めて知って面白かったです。 またミュージカルでありながら、着物でお遊びをする芸妓さん・舞妓さんの美しさはキチンと描いている点が非常に好印象でした。着物で現代的なダンスをする舞妓さんも面白かったけど、要所要所で入る舞妓さんの舞踊の美しさも忘れていない。特に富司純子さんは素晴らしい立ち回りで、その舞踊の一挙一動の艶やかな動きには惚れ惚れしました。まるで上村松園の美人画を見ている様で眼福でした。歌舞伎もそうですけど、ああいった舞踊ってキメがあって見栄を切るから、独特の美しさがありますよね。現代的なミュージカルシーンに安直に混ぜず大正解。 ちょっと残念だったのは主演に抜擢された上白石萌音さんが大変歌が上手であるのに、その歌の尺がやや物足りないこと。特に長谷川博己演じる言語学者への恋を自覚した時に、花街の真ん中で歌うシーン(照明が実に良かった!ただの街がいきなり舞台に変貌する感じ!)は物語上でも重要な筈で、そのスコアも良かったのに結構あっさり終わってしまう。もう少しじっくり歌を聴かせてほしかった。 後はややストーリーが予定調和に進み過ぎる感もありますが、真っ当な青春映画としてはこれくらいが丁度良いかも知れません。芸に厳しい人はたくさんいるけど、真の悪人が一人もいないというのも良かったですね。舞妓さんの魅力を今に伝える良作だったと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2014-09-14 22:48:21)(良:1票)
43.  ガメラ 大怪獣空中決戦 《ネタバレ》 
95年というとCG技術が徐々に進化を遂げ、それに伴い特撮技術の軽視(衰退ではない)が進んだ時期だと何となく想像できます。そんな中で作られた平成ガメラ三部作のその一作目。まあ兎に角素晴らしい出来の映画だと思います。巨大な生物ガメラとギャオスが街の其処に居るという実在感、ハードな都市破壊描写、政府と鳥類学者との舌戦、等々明らかに「大人の鑑賞に耐え得る重厚な特撮映画」を目指しているのだなと思い、その志には心底感心しました。 とりわけ、終盤の化学工場の上で繰り広げられるガメラとギャオスの最終決戦は素晴らしく、主人公たちと一緒にガメラの戦いをまさに対岸から観ていると錯覚する程の実在感ある名場面でした。
[DVD(邦画)] 8点(2014-08-19 19:48:19)
44.  思い出のマーニー 《ネタバレ》 
美しく素晴らしい映画でした。余り期待値が高くなかったので、観てそのアニメーションとしての技術の高さに驚きました。アニメーションの技術の高さとは、一つ一つのディテールが細かいという話ではなく(勿論それも素晴らしい水準)、主人公の心理やストーリーとしての起伏を映像として呼応させるという意味に於いてです。 オープニングから度胆を抜かされました。主人公・アンナは他者に混じるのが嫌で、でもそういう風に思っている自分も堪らなく嫌という、12歳の心情を非常にリアルに反映したキャラクター。彼女がスケッチブックに鉛筆を押し付け、ボキッと折れる。他愛の無い他人になんにも危害を及ぼさない行為の中に、彼女が抱える鬱屈した思いが込められている。そんな彼女は喘息の療養のために田舎に向かう。どこまでも続く様な平地を進む電車はこの映画が決して激しい起伏に富んだ派手な作品ではないことを印象付ける。画面前面の雲は暗いが、奥の主人公が向かう先の風景は光に満たされている。彼女が進むべき道を見事に映した名シーンだと思う。こういう風景を描かせたらやっぱりジブリは他のスタジオとは一線を画しているなと思います。 ストーリーも主人公が子どもから大人への一歩を踏み出す話と割り切っていて良かったです。近年のジブリは『ハウルの動く城』や『借りぐらしのアリエッティ』や『崖の上のポニョ』などテーマの描き方が散漫(若しくは放棄)になっている作品が多いと思っているので、"主人公の成長"という要素のみに絞った作りは非常に好みです。 所謂ドッペルゲンガーものでありつつも、終盤にはちょっとした捻りがあったりと、中々先を読ませ切らない作品になってますね。米林監督の次回作にも期待したいところです。
[映画館(邦画)] 8点(2014-08-02 12:26:24)
45.  抱きしめたい ―真実の物語― 《ネタバレ》 
白状すると地雷臭がしていたので観るのを躊躇っていた作品でした。塩田明彦監督は優れた作品を沢山撮っていることは存じていましたが、個人的には『どろろ』の監督のイメージがどうしても払拭できず、また主演の北川景子と錦戸亮も取り立てて好きな役者でも無く、止めにストーリーはお涙頂戴映画にお馴染みの「障がい&病死」と来たもんだ。 でもある評論家がベタ褒めしていたのを見て、考えを改め鑑賞してみました。その結果、実に堂々とした恋愛映画だと思いました。万人にお勧めできる上質なラブロマンスです。 この映画、とっても主人公二人が自然体なんですよね。別にアドリブ演技が良いとかでは無くて監督の撮り方が上手なのだと思います。あらゆる場面で頻出するロングテイクはこのカップルが本当に普通に生活している、実在しているカップルだと信じ込ませてくれます。出会いから、二人の距離が縮まっていく過程、愛し合うようになってからの距離感がとても自然に写っていて、本当に只のカップルの生活をのぞき見している様な感じ。 「そんな普通のカップルの生活なんて面白いの?」と思いそうなものですが、要所要所で締めるところは締めている。特に誰もいないメリーゴーランドで初めてキスをする場面、事故後のリハビリに苦しむヒロイン・つかさの地獄の様な日々、は役者の演技を含め素晴らしかった。 どうでもいいですが、私が観た回の観客は私一人だったのですが、本当に良かった。上映後、おっさんになりかけの男が一人で泣いているのは流石に見られたくないぜ。何が言いたいかというと、女性だけでなく男性にもおすすめできる恋愛映画だってことです。こういう恋愛映画を今でもテレビ局が製作できるとはー。やっぱり映画は観るまで分からない。
[映画館(邦画)] 8点(2014-03-12 00:00:33)
46.  ホーホケキョ となりの山田くん 《ネタバレ》 
な……、なんだこの映画は……。スゴ過ぎる。今まで食わず嫌いしていた自分を叱りたい。 デフォルメされた一見"適当"とも思える絵柄。しかしアニメーションとは大人数で作り上げるものです。この絵柄をアニメとして生きているように動かすことがどれだけ無理難題であったのか、素人から観ても思わずには居られません。ほのぼのした画からアニメーターの雄々しい執念をビシビシと感じました。 ストーリーも"特に何もない"ということが物語として成立している。ほぼ同じ家族構成で育ったこともあり数々の家族あるあるに大いに笑わせて貰いました。最後に先生が書く「適当」の二文字。なんと素晴らしい言葉だろう。「適当」という言葉にはご存知の通り二つの意味がある。「いいかげん」という意味と、「ある事柄に相応しく、ピッタリ合っている」という意味です。「人生なんてそこそこ適当でオッケーよ!」という正にこの映画にふさわしい言葉だと思います。これ作ってるアニメーターに掛かった負担は全然適当じゃないと思いますが! 人生の悲哀と優しさに満ちた傑作だと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-13 12:40:06)
47.  共喰い 《ネタバレ》 
私は未読ですが、恐らく第一に原作が素晴らしいのでしょうね。ドブ河、驟雨、風呂場で流れる遠馬の精液、それらがテーマを雄弁に物語っている。話は最低のロクデナシの種子から産まれた主人公がその血筋、呪縛から抜け出せるのかというもの。それらは目では見えないものだから、前述した無形物で表現されている。この表現が美しかった。 原作も素晴らしいのでしょうが、その文芸作品を映画に上手く落とし込めているのは青山監督の力量なのでしょう。下手な監督が撮ると主人公の痛みはあれ程鮮やかに表現できなかったであろうし、田舎(北九州の人には悪いが)の閉じた世界観も出せなかっただろうと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2013-11-23 15:19:19)
48.  気球クラブ、その後 《ネタバレ》 
本作は恐らく意図的にキャラクターに多くを語らせず、ちょっとした役者の仕草やセリフのニュアンスで、心情を描写しているので、本作の私のレビューは"私が思った"ことです。場合によっては監督の意図をまるで理解できていない駄文かも知れない事をお許し下さい。 一つ言えるのは只の若者たちのモラトリアムを描いた青春映画では無いということです。気球バカ一代のような男、村上さんの周りには沢山気球クラブの仲間たちがいる。気球を飛ばした後は打ち上げをして、ある時は屋上にバルーンを広げて飲み会をして、笑い合って……、と全うな青春を謳歌している様に一見は思うのですが、どうもおかしい。 何度か挿入される二郎とみどりが気球クラブの部室(?)を訪れ、村上さんのゴヤの『巨人』の様な気球を飛ばすという夢を聞くシーン、彼らは「なんか、スゴイっすね」「こんなんが飛ぶなんてスゴイですねー!」と答えるが、どう聞いても村上さんの夢に同調しているようには思えない。飲み会シーンでの彼らはあんなにも楽しげなのに。 挙句に社会人になった彼らは、村上さんの死を知った後、追悼と称した飲み会を催し、最後には巨人の目玉になる筈だった気球を燃やそうとする。つまり彼らにとって気球とはモラトリアムの一部に過ぎない。いずれは社会に出る前に卒業していく通過点に過ぎないのだ。 それに対して村上さんは気球しかない男である。彼は「夢の無い人生なんてクソだ、そのクソにへばりついている奴はもっとクソだ」と言います。彼は空で美津子にプロポーズするが、彼女は「地上で渡してほしいな」と応じるが、それに彼は「気球日和で気持ちいいね!」とはぐらかして終わってしまう。美津子からすると、「地上に降りて(気球から降りて夢を捨てて)私を見て欲しい」という気持ちだったのだろうが、気球しか人生にない彼はその決断を選べなかった。この映画はそんな村上さんの生き方に関して明確に良い悪いの分別をしていない。しかし社会人になったクラブのメンバーたちが空に浮かぶ気球を羨ましげに眺めるカットは実に印象的です。やはり監督は何があっても夢を捨てられない人間を理想の存在として見ているのではないかと感じました。
[DVD(邦画)] 8点(2013-10-20 18:16:12)(良:1票)
49.  紀子の食卓 《ネタバレ》 
この映画が嫌いだ。逆光を使った小奇麗な風景、幸せそうに流れるオルゴール、登場人物たちのポエム、言い換えると独り言。それらは虚構の幸せを映す鏡なのだろう。私にはかったるかった。クシャミが出た。こんな「クシャミ」なんていらないのだ。『自殺サークル』の飛び降り自殺の場面もうんざりした。意図は解る、けど何度も映されるとウンザリだ。 でもとっても感動した。何故だかはハッキリと分からない。"家族の血"というモチーフに固執し続ける園子温監督の意識が一番強く感じられたからかも。始まりの家族はどこか変だ。イビツで嘘だ。だから紀子は逃げ出した。紀子は自殺サークルでレンタル家族になった。みんな自分の役割を演じるのだ。みんな幸せそうだ。とっても。でもこんなに幸せそうなのもやっぱり変だ。まるで判を押したような幸福な光景の気味の悪さ。家族は痛みを伴って存在するものなのだ。 「一からやり直そう――」徹三の言葉が心を打った。とっても平凡な言葉。クミコの母親も同じことを言っていた。でもその言葉の重みには数万光年もの差があるのだ。紀子は紀子として生きていく。ユカは真っ新な、白いキャンパスみたいに新たな家族を求めて生きていく。どっちが良いのかは分からない。分かるのは本当の家族であるには痛みを伴うということだけだ。クシャミが出た。この映画は大好きだけど、こんな文章は大嫌いだ。
[DVD(邦画)] 8点(2013-10-15 23:59:52)(良:1票)
50.  そして父になる 《ネタバレ》 
オープニングは私立小学校の面接から始まる。ある一家が面接を受け、可愛らしい子どもが行儀良く質問に答えている。面接後、父親である主人公が「キャンプになんて行ってないよな?」と聞くと、子どもは「塾でそう答えるって教えられたから……」。父親は「お受験塾もよく考えるよなぁ」と単に感心している。この映画はそんな嘘の家族像から始まる。 そんなオープニングとは対照的に、映画のラストで主人公は何もかもをさらけ出して我が子の前に立つ。やっと本音を伝え本当の家族となった父子を観て自然と涙が出てきた。結局映画の始まりと何ら家族構成は変わらなかったのに、これだけ感動させられると言うのは矢張り主人公の描き方が優れているからだろう。 この主人公の嫌な感じの描写がとにかく素晴らしい。単に嫌味なヤツ、最低野郎などではなく、ギュッと絞ると自然に滲み出る様なヤな感じなのだ。例えば、樹木希林演じる義母に「(同じく子どもを取り違えられた夫婦が)どんな人だった?」と聞かれ、主人公は一言「電気屋だった」と答える。相手の人となりを見ず、相手を社会的地位や経済力で判断する主人公の感じの悪さが上手く現れている。また『ガリレオ』シリーズと同じく完璧人間を演じる福山雅治が実に良くその役柄に合っている。 「本当に父親らしいとはどういう事なのか?」というありきたりなテーマで、結論も「しっかりと子ども触れ合い、真剣に愛する」というありきたりな物なのですが、監督の手腕の高さで一級の人間ドラマに昇華されている。名監督に題材の平凡さは関係無いという好例だと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2013-10-10 23:04:18)(良:3票)
51.  仁義なき戦い 広島死闘篇 《ネタバレ》 
他作の誰が死ぬか分からない様なヒリヒリとした雰囲気とは少し異なり、湿っぽい印象を持つ本作。それは誰もが裏切り裏切られ権謀術数が交差する他作とは違い、主人公格の山中正治にスポットを当てたからかも知れません。結構ストレートな恋愛もその印象を強めている。 但し本作には余りに魅力的な奴がいる!千葉真一演じる大友勝利です。彼の演技が特に素晴らしくもう最高。人間的にはクソ以下の様な振る舞いなんですけど、その広島弁の罵倒のリズムの良さ、迸る生命力(お前は何回撃たれたら死ぬんだ)、リアリストとしての人生哲学に惚れ惚れします。勿論、北大路欣也演じる山中正治の寡黙だが仁義を通し続けた生き様にもしびれましたが。 終盤で拳銃の残り一発の弾丸を確認する山中。彼はその一発を自分を裏切った組長に向けるのではなく、自死を選んだ。ある意味一作目と鏡合わせの様な作品であると思います。
[DVD(邦画)] 8点(2013-09-15 19:04:38)
52.  仁義なき戦い 《ネタバレ》 
実録ヤクザ映画の代表シリーズの第一作。かつての任侠映画では考えられない程に薄汚いヤクザばかりの中で仁義を貫く広能が輝く。一作目は他作とは違い抗争劇のテイストが薄めですが、ヤクザ達が共謀し相手をだまくらかして兄弟だろうと容赦なく裏切る展開が続き、ことテーマ性に関しては随一と思われます。ラストの葬式での広能の啖呵が心に迫ります。 そしてこの映画シリーズの成功した要因はドキュメンタリックな撮影方法、リアリティ路線のストーリー、実力派ぞろいの役者陣の名演等、多々あるのでしょうが、個人的に一番好きな要因は広島弁で繰り広げられるヤクザ達の舌戦です。「バカタレ!」「おどりゃア!」「うぬら、調子に乗りよって!」「おどれクソ!舐めよってから!」「なにを言うとるんなら、このクソ!」「ナンとしやがるンな、おどれらは!」……etc。まるで凶暴な歌のよう。
[DVD(邦画)] 8点(2013-09-08 23:11:57)(良:2票)
53.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
堀越二郎は少年時代から海外の飛行機雑誌を読むほどの飛行機マニア。彼は夢で何度もイタリアの飛行機設計者カプローニ伯爵と邂逅する。この夢の内容ですが、恐らくカプローニ伯爵は主人公の憧れであり理想の男だったのだと思います。夢の中でカプローニ伯爵は「発明設計は戦争の道具を作るのではない、夢にかたちを与えるのだ!」と言い、彼の飛行機には爆弾の代わりに客間が乗っている。夢の中でカプローニ伯爵の飛行機に乗っている人は皆にっこり幸せそうに笑っている。彼は本当に純粋に飛行機という乗り物が好きなだけだった。 でもその技術は戦争に使用され、彼の設計した零戦は一機たりとも戻っては来なかった。戦争は根こそぎあらゆるものを奪い去った。それでもなお夢の中で菜穂子に「生きて……!」と言われ生きていく。この世が生き辛いのはどの時代でも当然のこと。それでも私達は生きなければいけないという強いメッセージを感じました。 基本的に零戦の誕生にまつわる話がメインで、菜穂子とのロマンスは短いですが、短い時を懸命に生きた二人はしっかりと描写されていたと思います。何より宮崎駿が主人公と菜穂子の初夜をちゃんと描写したことには驚きつつ感心しました。刹那的に生きた二人を描くには絶対に必要なシーンだったと思うので。 最も心配だった庵野秀明の演技も、まあハッキリ言って周りの役者さんに比べると下手なのですが、劇中の堀越二郎が"好青年だけど変人"と描写されているため、それほど気にはなりませんでした。
[映画館(邦画)] 8点(2013-07-20 15:03:04)(良:1票)
54.  座頭市千両首 《ネタバレ》 
座頭市シリーズを構成する要素と言えば「アクション(殺陣)」「ユーモア」「ロマンス」ですが、本作はロマンスが限りなく薄めとなっており、その代わりにアクションのテンポが他作品に比べて抜群に良いです。 序盤の千両箱を巡る攻防、中盤の忠治親分の逃走劇、クライマックスの仙場十四郎との決闘まで、実にバランスよく配置されていると思いました。残酷描写として拷問部屋が描かれていたり、仙場十四郎のドスの利いた声の脅し文句「俺はミミズを見るとズタズタに引きちぎりたくなっちまう。奴ら中々死なねえが、それを見るのも面白い」といった台詞も実に良い。 ユーモアのセンスも個人的には良かったです。特にオバちゃんの商売女にまんまと金をせびられゲンナリする市の姿には爆笑。普段美人といい仲になるのが基本の市にしては考えられない間抜け振り。
[DVD(邦画)] 8点(2013-07-18 23:43:33)
55.  座頭市物語 《ネタバレ》 
記念すべき座頭市シリーズの第一作。作品としては一作目ながら実に洗練された出来となっており驚かされます。冒頭の丁半賭博で主人公である座頭市のキャラクターを的確に描き、敵側の用心棒との尊敬と友情の交差、ヒロインであるお胤とのそこはかとないロマンス、緊張感あふれる居合抜き、観客を惹きつける要素をこれ程入れて、特に物語に破綻もなく、上映時間もタイトに仕上げるとは恐れ入ります。非常に優れた脚本と演出力と言えると思います。 役者さんも総じて良く、勝新太郎は勿論、本質的には小心のくせに手下には大物に見せている座頭市側の親分を演じた柳永二郎、座頭市との死合に全てを賭けた用心棒を演じた天知茂は実に素晴らしいパフォーマンスでした。
[DVD(邦画)] 8点(2013-07-18 23:39:47)
56.  私の奴隷になりなさい 《ネタバレ》 
ごめんなさい、個人的な好みによりこの高評価です。普通に考えるとどうかな?という映画ではあります。なにせ上映時間の約半分は濡れ場、原作が官能小説なので仕方がないとは言え(官能小説は大抵飽きが来ないように濡れ場が連続する)、一般作品としてはやや過剰な濡れ場の連続だったと言わざるを得ません。 話は良くあるファム・ファタール物。主人公が謎の多い年上の女に魅了され、順調だった人生に狂いが生じていく。しかしこのありふれた話の転がし方が上手いんです。主人公は顔が良くて要領も良く女にも全く不自由していないという見ていて殺したくなる様な調子こいた男、彼は壇蜜演じるエロい人妻の香奈に目を付けちょちょいと食ってやろうと近づきますが、どんどん香奈を取り巻くSMの世界に囚われていきます。その後、映画の冒頭で出てきた緑という女の子とことに及ぼうとしますが、もう彼の頭にはアブノーマルな世界しか広がっていない。以前の世界に馴染むことができない。その世界が全く変わってしまった描写が凄く上手かったと思います。彼の書いていた絵本は謂わば子どもの世界の象徴、板尾演じる先生が勧めたフランシス・ベーコンは欲望を曝け出した香奈の世界の象徴。 忘れてはいけないのが役者さんの熱演。壇蜜さんの全ての欲を解き放ったような演技はとにかく美しかったです。正直『ヘルタースケルター』の沢尻エリカの濡れ場がおママゴトに見えるレベルでした。私は今の女優が全く脱ごうとしない邦画界では脱ぐ人は無条件で偉い!と思っているので、彼女の体の張り方には拍手を送りたいです。本当に次代の杉本彩さんみたいになってくれないかなー。今まで余り注目したことはありませんでしたが、真山明大さんの整いすぎている顔を活かしたチャラ男演技、そしてどんどん香奈に溺れ狂っていく演技も大変良かったです。
[映画館(邦画)] 8点(2013-01-27 22:25:30)(良:1票)
57.  悪の教典 《ネタバレ》 
まず言及したいのがヤッパリ伊藤英明の怪演ですね。どう見ても善人にしか見えない外見を活かした見事なキャスティング、鑑賞後は蓮実役は彼以外に考えられないとまで思いました。三池監督は「十三人の刺客」でも稲垣吾郎に極悪人をやらせたりして観客の度肝を抜きましたが、今回も上手かった。この映画の主人公のキャラクターは共感性が欠落しているという演技が出来なければ成り立ちませんが、生徒が命乞いしても首を傾げて「なに不合理なこと言ってんの?殺さない理由がないだろ」って感じの顔はそれを説明するには十分過ぎる演技だったと思います。 またホラー描写も素晴らしいと思います。先生を信じて屋上前の階段で待っていた生徒を次々に射殺していく場面では、射殺される女子生徒は直接見せず、画面奥で銃声と共に飛び散る血飛沫で殺戮を表現したり、直接見せている場面よりずっと怖い。しかも主人公は"モリタート"を楽しげに口ずさんでいるというおまけ付き。歌を口ずさみながらの残酷描写ってのは『時計じかけのオレンジ』のアレックス以降お馴染みですが、不変しないホラー表現だと思います。 それから脚本もスマートでした。原作の『悪の教典』は「え?あれだけ色々描写されてた生徒が一瞬で殺されちゃうの?」という意外性が面白いのですが、映画化するにあたっては同僚教師や生徒の描写は基本的にカット。原作では釣井先生も蓮実と同様に結構人を殺してる人間なのですが、そういうエピソードは丸ごと切り、蓮実の話だけにしたのも良かったと思います。 ただご丁寧にAEDの録音機能について説明したり、清田梨奈の家の周りにありえないほどペットボトルを並べたりするのは説明過多なんじゃないかなと思います。観客はちゃんと勝手に考えて描写を補完するし、あれだけこれみよがしに見せられると観客をバカと思ってるのかなって気がしてしまいます。
[映画館(邦画)] 8点(2012-11-12 23:43:36)(良:3票)
58.  アウトレイジ ビヨンド 《ネタバレ》 
結論から言うと前作の面白味は失っていると思います。つまり過剰な暴力描写や誰が死ぬか分からない緊張感は確実に減っています。このシリーズのキャッチコピーである"全員悪人"は今作でも同じなのですが、ストーリー上どうしても大友と木村が主人公だと言わざるを得ません。つまり彼らが終盤まで生き残るのは観ていてなんとなく想像がついてしまう。それに話しが前作の様な巨大暴力団の一下部組織である大友組の話ではなく、山王会のトップと花菱会のトップとの対立の話となっているため銃のドンパチが基本的な殺し方なので、あの手この手の暴力描写を見せてくれた前作に比べ面白みに乏しい。それでもこの映画を高く評価したいのは、まず監督がインタビュー等で話している通り前作よりもエンターテイメントに寄ったこと。ヤクザ映画の2作目で組織がビジネスライクになるに従って信用を失っていく展開は「ゴッドファーザー」シリーズに通じるし実に観客が喜ぶ様なヤクザ映画のお約束をしてくれていると考えて良い。しかも前作の様な誰が生き残るかサッパリ予想が付かないことも無いのでハッキリ言って気楽に観れます。よって観客の間口は前作よりかなり広がったのではないでしょうか。確かに前作を超えているとは全く思えないし、多分映画史に残る類の作品では無いでしょう。しかし"純愛"だとか"○万人が涙した"とか"大ヒット○○の映画化"とか宣伝打っている映画がメジャーで、逆に暴力的な映画がオミットされている邦画界において暴力映画が再び勢いを取り戻してほしい希望を込めて高評価としました。こんな役目、今の日本じゃ間違いなく北野武しか出来ないし。
[映画館(邦画)] 8点(2012-10-07 23:21:46)(良:3票)
59.  るろうに剣心 《ネタバレ》 
予告編で佐藤健が「おろ?」と言っているのを見て久しぶりに弩級の珍作が生まれるのではと思っていたのですが、実際に観てみると珍作どころか良作でビックリ。少年漫画の実写化という難しいジャンルの映画化としては無類の出来だったと思います。激しい殺陣の撮り方が(所々何写ってるか分からんシーンもあるが)原作『るろうに剣心』の持つ荒唐無稽ともいえるアクションを上手く再現しています。役者としては男性陣が総じて良く、佐藤健は華奢で女性的だが飛び回るアクションが出来る稀有な俳優でしょうし、江口洋介も出番が少ないとは言え厳格な執行官としての斎藤一そのものだったし、香川照之の武田観柳は完全に和月漫画に出てくるブッ飛んだキャラをトレースできていた。白眉は吉川晃司の鵜堂刃衛で主人公のダークサイド、主人公が人を斬り続けてしまった場合の末路をその怪演で見事に表現出来ていた気がします。逆に女性陣が余り良くない。劇中の説明では色っぽいと言われている恵は全然エロくないし、武井咲の神谷薫は師範代のくせにヒロインとしての弱さが前面に出てしまっている。もう少しコメディリリーフとして二人を動かしても良かったなと思いました。それから原作でも何かと不遇な役回りが多い相楽左之助ですが……、この映画にいるか?このキャラクター。こんな微妙な役ならキャラごと消しても良かった気がします。もちろん原作ファンへのサービスだったのでしょうが。とは言え続編が出れば必ず見に行くでしょうしその気持ちにさせてくれた時点で良作でしょう。
[映画館(邦画)] 8点(2012-09-29 22:17:36)(良:1票)
60.  ドラえもん のび太の恐竜 《ネタバレ》 
もともと1つのエピソードだったものを長編化したためでしょうか、後半の恐竜ハンター絡みの冒険パートはかなり設定が雑に感じる作品です。のび太はドラえもんの力を借りず、独力だけで恐竜の卵を発見し、ピー助を育て、別れる決心をする。この段階までで充分感動的であるし、映画が終わっても問題が無いように感じてしまいました。ただこの映画は劇場版ですので、後半の恐竜ハンターに追われ白亜紀を冒険する羽目になるパートを継ぎ足したといった所でしょうか。短編映画として綺麗に終わってても良かったかなと思える作品です。というか幼少のころ、なぜか好きだったカマキリを家で飼おうとしたら母親から大反対されて泣く泣く逃がした身からするとやっぱり前半が最もグッとくるのである。
[ビデオ(邦画)] 8点(2012-03-22 23:18:04)
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