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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2005
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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81.  クリミナル 2人の記憶を持つ男
自意識=人格が取って代わられる、って深淵な哲学を含んでいる命題だと思うのだけど、終始一貫予定調和なB級サスペンスな筆致。誰も悩んでませんでした。まあ娯楽作なんだから、と思いつつもいちいち腑に落ちず引っかかってしまったのは私だけか。まず奥さんさあ、いくら記憶を持っているといってもその人ダンナじゃないでしょ?顔も体型も違いすぎる。本物の夫が気の毒じゃない?あ、そこは「脳」が元夫だから夫的には良いのか?えそしたらコスナーはどうなんの。他人の人格が定着してしまうことに抵抗感はないのか?それって自死でしょ。などと考えちゃって、テロリストとオールドマンらがわあわあドンパチやってても入ってこなかったなあ。 ラストは更に評価を下げるだけの鼻白む大団円だしT・L・ジョーンズの老け具合は衝撃だしで、あまり取るとこない映画でしたが、かつての大怪我から立ち直るべく奮闘中のK・コスナーが良いです。スターの雰囲気は健在ですしもっと上等の脚本を与えてあげてほしい。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-12-25 20:23:45)
82.  パディントン
これは、観る側の心の持ち方で評価の分かれるタイプのやつ。たとえ同一の人物であっても、上司を呪いながらビール片手に暇つぶしに見る環境下と、幼いわが子と一緒に映画館へと出向いたのとでは作品に対しての感想は180度違ってくるでしょう。 お話は極めてオーソドックス。一生懸命に居場所を探すクマさんとお約束のアクシデントの数々。ちょこちょこ挟まる過去作品のパロディーに笑えるかどうかは、あなたの心の幸福度次第。 全編にわたる色彩の濃い画は素敵ですが、パディントンがけっこうリアルなクマなんですよね。剥製が動いているみたいな。日本人としてはもう少し可愛さを要求したくなるな。個人的には見た目も中身も大陸のクマTEDの方が好きです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-12-22 16:55:35)
83.  人生はシネマティック! 《ネタバレ》 
戦時下という国難の時代でも、制作に意欲を燃やした映画人の奮闘ぶりが胸を打ちます。テーマが国威発揚に限られようが、細かい注文が軍関係部署からもたらされようが、良いもの=Finest を作ろうという気概はこちらの背をもしゃんとさせてくれるほどの勢いがありました。 仕事と家庭のバランスに苦労するヒロインの脚本家の抱える課題は、今日にも通じて現代的でリアルです。 ピークを過ぎた老名優の滋味溢れる存在感はビル・ナイ本人そのもの。 戦争の悲愴感をぎりぎりまで抑制しながら、生きることの喜びも哀しみもとつとつと語りきった、品のある作品です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-04 20:16:47)
84.  ベイビー・ドライバー
カー・アクションの見せ方の巧さではここ十数年で観た中で一番の出来と思いました。車内目線と外から俯瞰した画の切り替えがうまくて、こちらもスピードに乗れる感覚。速すぎるうえにカット割りが多すぎて、観てて疲れる割に迫力が伝わらないカースタントのこれまでなんと多かったことか。 というわけで冒頭から掴みはOK、な今作。リリー・ジェイムズは可愛いし(髪をアップにした時のキラキラしいことったら)、ケビン・スペイシーは安定だしジェイミー・フォックスは見るからに怖い人だしで、人物の引きも充分。あ、主人公の彼はちょっと弱いな。要努力。 クルマ映画で日本車が相変わらず活躍しているのを見るのも嬉しいですね。壊されるのはちょっとつらいけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-01 23:20:55)
85.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
おお、暗い。湿度も高い。いいですね。これぞブレードランナーの世界観。続編を作るのなら、この雰囲気は絶対に死守してくれないと。もちろんヴィルヌーヴ監督はちゃんと心得ているうえ、彼の暗いけれど粒子の細かい画のセンスはブレードランナーと相性が良かった。僥倖なことであります。 力の入りまくった隙の無いSF世界は初めて見る光景。現代の映像技術の最高峰を堪能できます。 美術は満点ですがやはり偉大な前作を越えるのは難しい。「自己とは何か」という問いを美しいレプリカント達の苦悩に変換した前作にあふれていた情緒が、なんだかとても薄い。ライアン・ゴズリングも悪くはないけれど、彼のつるっとした顔はどことなく無痛気味。”記憶は他者のもの”という事実を前に落胆して机を殴るライアンより、静かにうつむき写真を破り捨てたショーン・ヤングの後姿の方がより強く悲哀が伝わる気がする。事実40年経った今でも忘れられない場面の一つであります。 あとはねえ、細かい諸々への不満。ハリソンが死ぬわけないと分かっている海面不時着時の戦闘が長い。レプリカントレジスタンス達の登場もとってつけた感。口頭説明が長いのも辟易しました。一作目のファンてウルサイなあ我ながら。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-11-10 16:49:11)
86.  オン・ザ・ミルキー・ロード 《ネタバレ》 
これは・・、珍しいというか唯一無二というかジャンルでいえば「反戦寓話」とでもいうんでしょうかね。これまで観てきたどんな映画よりもこの世界観はとびぬけて独特で、初めての手触りでした。 画は明るく牧歌的、そんな中、弾よけ(!)の傘をさして牛乳を仕入れに来る主人公や砲弾降り注ぐなかギリギリまで卵を割る作業の手を止めない人々とか、戦争が日常になっちゃってる村人たちがシュールです。何の意味があるのか、でっかい壁時計に手を挟まれる家人やら豚の血に飛び込んで真っ赤に染まるアヒルやら描写の一つ一つがのっけからこんな風に「?」の連続で、きっと東欧というなじみの無い土地柄の風土だからぴんと来ないのだろうと無理やり納得して観続ける序盤であります。 ところが描写は落ち着くどころかどんどんシュールさを増してゆく。危機を寸前で救ってくれる動物多数。こんなんだからコレはおとぎ話的に上手く行くようになってんのかな、と思ったら崖から飛び降りたらちゃんと脚を骨折するのだった。そこは数日前みたく宙に浮かないんかい! 銃弾の連射も火炎放射も惨たらしい所業であるのに、この監督が描くと何故だかファンタジック。炎を纏って空を飛ぶアヒルは目に焼きつきました。美しくて。 ところで、美しく不可思議な画の中を逃げる二人がおっさんとおばさんというのどんなもんだろう。モニカ・ベルッチも絶世の美女と言うにはピークを過ぎているし、ここは是非とも16才くらいのボーイ&ガールであってほしかった。未熟さと必死さが反戦のテーマを訴えるにもより効果的だったと思うのだけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-11-06 17:24:46)
87.  わたしは、ダニエル・ブレイク 《ネタバレ》 
ケン・ローチが引退を撤回してまで撮りあげた、渾身の作品と思います。 かつて「ゆりかごから墓場まで」と言われた英国の福祉が機能不全となって久しいと聞いてましたが、もはや人間の尊厳をも削り取るシステムになってしまっているとは。 ダニエルが振り回される所定手続きの複雑怪奇なことったら、喜劇さながら。見ているこちらも電話が先なのか書類提出が先なのか、どっちなんだよ、と思います。60過ぎて受ける「履歴書の書き方講座」や形だけの求職活動といった茶番。40年も大工一筋だった男にウェブで手続きしろと言い放つ。煩雑な手続きに疲弊しているのは職員も同じで、彼らも余裕が無くて辛そう。ちょっとでも温情をかけて処理したら上司に「前例を作らないで」と叱責されます。この女性職員はダニエルに手続きをあきらめないよう励ましてくれてたんですけどね。ラストには葬儀に出席している姿も見えました。 ダニエル・ブレイクは本当に良い奴なのです。他者を労わる心を持ち合わせ、まっとうな権利を行使するために他人のために声を上げることのできる隣人なのですよ。 そして、こんな苦境にあってもキレの良いユーモアを忘れないのが英国人の偉いところで、私が傑作と思うのは「保留音のBGMをマシなものに変えろ」でした。 格差とか移民問題とか、山ほどの問題を抱える現状はかの国の政治家だって百も承知なのでしょうが、一市民として思うことはダニエルのような善良な市民がこんな目に遭う社会は嫌だ、この一点に尽きます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-10-09 18:52:06)(良:2票)
88.  セブン・シスターズ 《ネタバレ》 
設定の斬新なこと、展開の速さと意外性、全てにハイスコアがつく見事な脚本です。人口増(あるいは減)に悩む近未来SFという発想は出尽くした感があるのですが、題材を巧く生かしています。降りかかる危機をさばくのは、一人のような七人のようなヒロイン。まるで分身の術を使っているかのようにも見えるこの設定が、観る者に月~日までの彼女らを等しく応援する気持ちにさせ、だからこそ月曜の行動の意外なことに驚かされるのでした。 ノオミ・ラバスの卓越した演技力が無くては成立しない話でもあります。七人分の人格をきっちり演じ分け、○曜と○曜がかぶるじゃん、と一切思わせなかったのはほんとにあっぱれです。厚化粧なメイクも現実離れした未来感がありました。 これといった伏線を張っていないのもポイント。思わせぶりが無いのですんなりと話に入れるし、瞬く間に疾走しだすストーリーに乗るのは快感です。伏線を回収せずとも(そもそも張ってないので)、深まる謎を明かしてゆく筋立ての妙味。脚本家はかなりのスキルとみました。脇を固める大ベテラン、W・デフォーとG・クローズのハンパない安定感も作品をきりっと締めています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-09-24 00:04:17)
89.  ハットンガーデン・ジョブ
じーさん達が”昔取った杵柄”で大暴れ的なコンセプト、近年やたら多くてモーガン・フリーマンあたりはそんな仕事ばっかり。年をとっても元気なのは良いことだ。が本作はひねたイギリス人によるイギリス映画なので、マッチョで超人的なじいさんはおらず、皆御老体に鞭打って出動してるのがリアリティ満載である。ただそこは英国人、年齢を重ねた味わい深さがハッキリ顔に出てて、人生刻んだ良い顔の役者ばかりでこれには唸った。 「仕事」である金庫破りの本番においては、これといったトラブルが用意されていない脚本である。裏切り者が出たり防犯装置がけたたましく響いて銃撃戦、とかそういう映画ではないのだった。 スリルは味わえないけど、老境に入ってのメンタルの持ちようが多いに参考になる、まあ滋味溢るる好ましい一本でした。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-08-06 00:08:24)
90.  アナザー・カントリー
美麗な英国男子総動員ということで当時の腐女子の間で大騒ぎになってたもんです。ブリティッシュな様式美は感じ入るばかりで、わーキレイ、美しいーといったミーハー目線でしか捉えられず、舞台となる英国のその時代背景や貴族社会の特性を浅いながらも学んだのはずっと後のことでした。 時は1930年代、大陸ではファシズムが台頭し、英国では政治はまだまだ貴族が仕切るものであり、一方でケンブリッジ・ファイブと呼ばれるスパイの存在も不穏に影を落とす。特権階級の主人公らにとっては価値観が大きく揺らぐ時代だったのは間違いありません。 狭い貴族社会の中でパブリックスクールの十代ですら出世競争に神経をすり減らす美しきボーイズ。繊細で悩み多い季節をきらきらと演じた若き俳優陣の瑞々しさは普遍の青春群像と言えましょう。 ああそしてやっぱり特筆すべきはコリン・ファースの美貌。キングスマンも好きだけど、この映画に出て若い輝きを永久に残してくれたことに誰にか分からないけどとても感謝したくなるのでした。
[DVD(字幕)] 6点(2019-07-15 23:57:43)
91.  ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
ハリーポッターのスピンオフ的なイメージを抱いてましたが、新作としてとても楽しかったです。 魔法世界を描くCG技術には今さら驚嘆すべきものはないけれど、舞台となる1920年代のニューヨークは落ち着いた色彩で纏められており、この雰囲気がまず良かった。 主人公と逃げた魔法動物の追いかけっこを本筋として、街で連続する不可解かつ物騒な事件を横糸に絡ませたストーリーはきちんと謎解きになっていて面白く出来ていると思います。もっとも、真相から目を逸らせるミスリードのプロットはハリーポッターシリーズと同じじゃん、という指摘もありましょうが。 そしてこの映画の一番の功労者はエディ・レッド・メインでしょうな。彼が与えたニュートの造形すなわち動物オタクの優男キャラは100%完璧で、彼以外の配役はもはや考えられない。ハリポタシリーズ後半ではおじさんぽくなってしまって高校生に見えづらかったダニエル・ラドクリフよりも物語の主人公への理解度が高いと思われます。 エディの繊細なことと、魔法動物の奇想天外なことに心掴まれたワタシはそういえばかつてポッタリアンだったのでした。魔法の世界観にノレるタイプには楽しみなシリーズができました。ニフラーにプラス1点。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-07-04 17:10:22)
92.  ジェーン・ドウの解剖 《ネタバレ》 
ストーリーは特にヒネリの無い密室ホラーでした。いわくつきの魔力を帯びた死体(元魔女?)が原因で皆死んじゃう、となかなか凡庸であります。ほぼわーとかぎゃーとか叫んで逃げてるシーンばかりに感じられ、ちょっとあくびも出ました。 けれども評価できる点もちゃんとありまして、雰囲気先行型の映画だけあって「死体」がとにかく怖い。やけに白い肌とか何も見てない青い目とか。これは女優さんの演技力?の賜物というわけじゃないんだろうが、彼女が横たわる解剖室の怖さはただならぬモノがありました。信じられないことに、解剖医親子は何度か解剖室に戻るんです。えっ、よく戻れるなああとワタシは本気でイヤでした。 あとラストにラジオがさらっと「これで4日連続の晴天です」って言ってたのも、オマケ的に不気味ではありました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-07-01 23:57:01)
93.  袋小路(1965) 《ネタバレ》 
初めのうちは仕事に失敗したらしいおっさんギャング二人組の「これから」が話の中心になるんだと思ったのよ。そしたらどんどん斜め上の方へ進むから驚いたなあ。 若妻にぞっこんの絵描きが全財産はたいて購入して暮らす古城。そこに突然の闖入者が冒頭のギャング。他者が入ることで磁場が乱れて崩れる絵描きの人生・・・、にみえる。でももともと危うかったのですよこの夫婦は。若い妻は貞淑じゃないしそれを夫は薄々気付いているし。急に訪問してきた親戚の様子から、絵描きの前妻も何やら大きく彼の人生に影響を及ぼしていることが分かる。でも具体的な説明は無い。こういう曖昧な感じがこの話多くて、夫婦二人はさほど積極的にギャングおやじを警察に突き出そうとしないし、嫁はガキっぽくふざけていたりで。微妙にシュールな全体構図のなか、一人ギャングおやじがいい味を出します。図々しいし荒っぽいけど、最初に嫁の浮気現場を目撃したことは黙っているし、「庭師」の役回りを突然ふられてもちゃんとこなすのには笑った。絵描きもつい胸中を吐露しそうになっちゃってたりね。 ポランスキー節が光る独特の人間ドラマだけど、中心軸がどっちつかずでね。ぱっと見ギャングにありそうで、でも絵描きの人生についてもっと語ってほしくもあり。うーん惜しい。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-06-29 23:42:04)
94.  普通じゃない 《ネタバレ》 
この設定、すなわち天上界から人間の営みに介入しようというコンセプトならば、あの天使二人がもっと活躍しないとバランス悪くてしょうがないよね。キャメロンとマクレガーの二人の人生が交錯していることが人外の手によるものだよ、という感じが全然しないうえ、天使がいつ絡んでくるのかと思ってたら殺し屋役を買って出るやら、斧振り上げてボンネットに仁王立ちで襲ってくるとか、およそキューピッド役とは思えない破天荒な仕事っぷり。何か違わないかい。 なぜ心臓を撃ちぬいたらハッピーエンドなの?そこがクライマックスとばかりの描き方だったけど。作り手が勝手にどたばたしてる感が否めない。 ダニー・ボイル、ちょっと肩に力入りすぎだったんじゃないですかね。ハリウッド進出第一作だから、度肝を抜くようなセンスで皆を感嘆させよう、とアクセル全開で突っ走っていったら誰もついて来なくて気付けば一人、そんな作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2019-06-16 12:03:14)
95.  柔らかい殻 《ネタバレ》 
神々しいほどに美しい映像と構図、でも気が遠くなるほどに救いの無いストーリー。画と話の両軸がかけ離れているが故に強烈に記憶に残る一本。 大人側の世界、まあ見事なまでに陰気な材料ばかりだ。荒んだ母親、焼身自殺の父親、兵役から帰還した兄は原爆症の疑いが濃く、そのうえ子供が被害者の連続殺人が発生するときたもんだ。 大人が全員暗い目をしている。なんで誰も彼もがどうかしちゃってるんだろう。ぶつぶつ言いながら道を往く二人組のおばさんは勘弁してほしいくらい怖かった。 病んでる大人の世界は子供の無垢なフィルターを通すと様子は違ってくる。ヤバイ未亡人は吸血鬼で、白蝋化した誰かの中絶胎児は天使なのだ。セスにとってはそうなのだ。自分の世界が優先するから大人の浮き世の騒ぎはピンと来ないんだ。警察に目撃した車のことを言うことなんかより、兄を吸血鬼から守ることの方が断然大事なことなのだ。 だけどラストにフィルターは崩壊し、現実のその意味が降りかかる。8歳の子が悟るその残酷なこと。 シュールで苛烈なまでの不条理が金色の小麦畑に展開する。美しくて怖い白昼夢のようだ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-26 16:55:22)
96.  わたしを離さないで 《ネタバレ》 
たしかに原作と大きく話はずれていないし、順を追って映像化すればこうなるのでしょうが・・。残念なことに人間の持つ感情のひだ、逡巡や葛藤といった情感を収め切れなかったせいでカズオ・イシグロの精緻な描写はざっくり削られ、「あらすじで知る名作」になってしまっています。 やはり三人の関係の核になっているヘールシャム時代を描き足りていないことが大きい。キャシー・ルース・トミーが青年期の入り口まで過ごしたヘールシャムでの日々は原作ではそれは瑞々しく、青春期の学園小説として読んでも一級品の「十代あるある」なのです。だから読者は彼らの友人となり得るし、彼らの人生を大きなクエスチョンを抱きつつ見守ることになるのでした。映画ではこの疑問の回答も早々とばらしてしまうんだもんなあ。ああそれにテープのエピソードもざっくりカットされたのにもがっかり。あのテープは本作のタイトルであり、ヘールシャムではルースの性格の多面性に気付かせ、ロスト・コーナーでのトミーとの思い出に繋がる、キャシーの人生にとって非常に大きなアイテムであるのに。 というわけで鑑賞後の感想は芳しくないのだけれど、キャスティングは三人を含め校長もマダムもルーシー先生も原作の世界観を損なわない理想的なものでした。舞台となるヘールシャムやコテージ、ルースのポシブルを探しに行った街角や船が打ち上がった海岸等、映像は原作のイメージそのままに哀しい美しさです。脚本はともかく、キャストと美術スタッフさんには満点を差し上げます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-04-13 23:51:18)
97.  マドモアゼル 《ネタバレ》 
自分の情欲や憤懣やらを周囲に撒き散らかしておいてお天道様からも成敗されない妖女のお話。うへえー、となりました。 男を破滅させてしまう女の話とくれば、日本製の人情話なら女側にもそれなりの事情なり、汲んでやりたくもなるいきさつを抱えてそうなものですが、フランス女にはそんなもの無いんだねえ。ただただ悪い。冒頭からいきなり水門開けて村の民家水浸し。理由は特に無し(!)。 顔が仏頂面のJ・モロー。教師として生徒にアカハラする場面などはただのおっかない中年女なのですがイタリア人の林業労働者の男と情交にふける終盤は色欲全開。艶っぽいというレベルを超えてもはや禍々しさすら感じましたね。いやオソロシイ話でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-04-10 16:02:13)
98.  エクス・マキナ(2015) 《ネタバレ》 
天才頭脳が二つ。その中に放り込まれて破滅してしまった男。無理もないですよね。迎える天才側はあらかじめ準備万端なんだもの。それにやっぱり生身の人間はAIに勝てっこないですよ。これ観るとつくづく思う。だって”感情”があるんだもの人間には。AIには情操てものが無い。でも”あるフリ”はできる。蓄積された膨大なデータをもとに。おそらくネイサンはそれを知っているから支配下にあるキョウコには声を与えなかったのでしょう。心をぐらつかせるような言葉を言われるのが怖いから。 だからねえ、せめてケイレブがいみじくも言ったようにAIが「四角い箱」だったら、視覚に惑わされることが無くなる分、互角に戦えたのかもよ?美女なんかにしたらあかんよ。AIじゃなくたって、男性は現実の女にだって騙されちゃうんだから。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-01 14:37:35)
99.  レディバード・レディバード 《ネタバレ》 
英国の話だけど、我が国にとっても全く他人事でない案件。子どもへの虐待を防ごうと行政が家庭に介入することの限界もほんとに良く似ている。すごく考えさせられた。 いや本作のケースはどうしたらいいですかね?日々報道で子どもの虐待事件を耳にするたび、震えるほどの怒りを覚える身としては英国社会福祉局の言い分も良くわかる。たしかにこの母親は子どもに安全な環境を用意できていない。暴力男の元に舞い戻るなどその最たるもので、典型的なDV被害者の行為なのですね。母親本人も情緒不安定で、嘘も多い。強制的に子を保護しないと死なせてしまうと、世論の高まりでできた法律を遵守するのは役人として当然の職責でありましょう。 でもなあ。この母親の不幸な成育歴や地域社会の荒れっぷりを見てると、この人一人のせいばかりでもないと思っちゃうんですよね。隣人が悪意で証言したりと、運も無い。なにより役人が産院にまで赤ん坊を奪いに来るなど、これはちょっと機械的、暴力的に感じる。母親は子どもに愛情を抱いているけれど、彼女の環境がうまく健康的に働いていないのです。さて、一体どうすれば。 行政と個人と、どちらかの主張に偏ることなく問題を開陳してみせたケン・ローチ監督のバランス感覚の良さが光ります。大人は必見の、社会の課題です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-02-15 00:18:46)
100.  われらが背きし者 《ネタバレ》 
一市民がマフィア内の抗争沙汰に関わらざるを得なくなる「巻き込まれ型」サスペンス。なにしろ原作がル・カレだからか、ディテールも骨組みもやたらと説得力があるので、MI6まで絡んできても「そりゃないでしょ」とは思わずに観ることができました。気持ちはがんばれユアン・マクレガー教授、です。 冒頭からとても怖い思いをさせられ、つかみは満点。一体何が起きたのか分からぬままの突然の殺戮シーンは画の美しさも相まって強烈です。 古参幹部であるディマのキャラクター設定がまた良いです。カードの番号を瞬時に記憶してみせる場面で「只者ではない」とわかります。愚直なまでに正義を通すマクレガーに肩入れすることで、「まっとうなモラルを持っているのだな」とも。ここらのキャラ紹介がテンポ良く鮮やかです。一人で抜け駆けしようとしているMI6のメガネくんの苦悩も憎めません。 マフィアと冷や飯幹部とMI6と民間人、四者の駆け引きがスリリングな序盤、サスペンスとしてのヤマ場、切り札を明かすラスト、それぞれをキレイに決める脚本は巧いですし、台詞も気が利いています。地味ですが逸品ですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-01-27 15:56:30)
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