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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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21.  しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス 《ネタバレ》 
わたしたちって、履き古した一足の古い靴下みたいね――。カナダの田舎町で親戚の家に暮らす中年女性モードは、幼いころからリウマチを患い手足が若干不自由なため、ずっと親族の間でたらい回しされていた。「住み込みで働ける家政婦、急募」。自身の境遇を少しでも変えたい彼女は、そんな町の雑貨店に貼られていた広告を見て一大決心をする。自分の力で生きてみたい。チラシに書かれた住所を訪ねてみると、そこは町外れで長年独り暮らしをしているエベレットという男の古びた一軒家だった。粗野で偏屈、何かというと物にあたる彼に戸惑いつつも、行く先のなかったモードはそこで働き始める。給料はろくに支払われず、寝る場所もエベレットと同じ部屋で雑魚寝、何かあれば自分は犬以下だと絶えずなじられるような過酷な生活の中でのモードの唯一の慰めは、ただ絵を描くことだった。家の壁や窓、ポストカードや木の板に彼女の絵筆と想像力は、自由で素朴な生き物たちの姿を描き出す。すると彼女の絵は評判を呼ぶようになり、やがてテレビの取材まで訪れることに。数年後、夫婦となった二人の元にニクソン大統領から彼女の絵を買いたいとの知らせが…。障害を持つ孤独な女性と孤児院育ちの偏屈な男、社会のはみ出し者同士のそんな一組の夫婦のとある愛の形を実話を元に描いた大人のラブ・ストーリー。主演を務めるのは最近アカデミー賞に何度かノミネートされた実力派俳優のサリー・ホーキンスとイーサン・ホーク。とにかくこのベテラン二人の熟達の演技の掛け合いが見応え充分でした。社会のどこにも居場所のなかった二人が偶然一緒に暮らすようになり、やがて夫婦となって、最後はお互いの存在をかけがえのないものとして認めあうまでをとても自然に情感を込めて演じていて、観ていてもう切なくて堪らなかったですね。のどかな田舎の風景をバックに、手押し車に乗せられた妻をほんの少し笑顔を見せながら押していく夫。夫婦の深い愛情が伝わってきて思わず涙が出そうになりました。今にも潰れそうな二人のお家のあちこちに描かれたモードの絵も、二人の生活にほのぼのとした輝きを与えてくれている。そりゃみんな彼女の絵を買いたくなりますわ~。内容的にはあまりにも王道過ぎて若干物足りなく感じる部分もありますが、社会の片隅に人知れず咲いた一輪の花のような、そんな味わい深いラブストーリーの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2019-05-14 22:19:45)(良:2票)
22.  シンクロナイズドモンスター 《ネタバレ》 
酒の失敗で職を失い、現在彼氏の部屋に居候中のグロリア。職探しもおざなりに友達と飲み歩くようなどうしようもない毎日を送っていた彼女は、さすがに彼氏に愛想をつかされ部屋を追い出されてしまうことに。行く当てもなく、仕方なしに田舎へと舞い戻ったグロリアは小さな部屋を借りて再出発を誓うのだった。偶然再会した幼馴染でバーのオーナーをしているオスカーの助けもあって、彼の店でウェイトレスとして働き始めたグロリアだったが、相変わらず酒だけは止められない。二日酔いでふらふらと近所の公園へと訪れたグロリア。――同じころ、地球の裏側の韓国では大変な事態に直面していた!突如として現れた謎の怪獣がソウルの市街地で破壊の限りを尽くしていたのだ。ネットでそのニュースを知ったグロリアは、すぐにあり得ないような秘密に気付いてしまう。なんとその巨大怪獣が公園にいた自分と全く同じ動作をしていたのだ。「私、どうしてだかこの怪獣とシンクロしちゃってる!」。大変な事態にもう二度と公園へは行かないと誓ったグロリアだったが、新たに驚きの展開が待ち受けていたのだった……。自堕落な生活を送っているダメウーマンと地球の裏側に現れた巨大怪獣がシンクロするというかなり特異な設定のモンスターパニック・ラブストーリー。アイデア勝負のそんな変な設定の作品なのですが、いやー、なかなか面白いじゃないですか、これ。まあ突っ込みどころは山ほどありますけど、アイデアの奇抜さとリアリティをぎりぎり損なわない最低限のルール設定が巧く機能していて最後まで違和感をそんな感じずに観ることが出来ました。嫉妬深いダメ男と酒にだらしないダメ女のどうしようもない恋愛が、ソウル市民に大災厄をもたらすというのはかなりブラックですが面白いですね。最後、ソウルに自分が行けば逆に故郷の公園に怪獣が現れるかもという展開にはやられたぁって感じですわ。アン・ハサウェイのダメ女っぷりも意外に嵌まってました。もう少しモンスターとロボットのアクションシーンを見たかった気もしなくもないですが、そこは予算の関係なのかな。とはいえ、ワンアイデアながらなかなか面白かったです!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2019-02-12 00:20:00)
23.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
SF映画のカルト的名作の続編。監督は現在ハリウッドでノリにのっているドニ・ヴェルヌーヴ監督。いやー、なかなか重厚な世界観はこの監督ならでは。少々冗長な面もなきにしもあらずだけど、美麗な映像や哲学的なストーリーは存分に楽しめました。レプリカントたちの心の拠り所となっている記憶を作っているのが、実は…というオチにはしてやられましたわ。
[DVD(字幕)] 7点(2018-12-27 23:46:59)
24.  手紙は憶えている 《ネタバレ》 
ルディ・コランダーを捜しだし、必ず罪を償わせる――。老人ホームで穏やかな余生を送っていたグッドマンは、一週間前に妻を亡くしたことから長年患っていた認知症の症状が酷くなり記憶が曖昧になることもしばしば。昨日何をしていて自分が誰なのかもおぼつかない状態のままその日も目覚めた彼は、自分が一通の手紙を手にしているのを発見する。同じ施設で暮らす老人が書いたというその手紙には、これから自分が何をなすべきかが事細かに書かれていた。「俺たちはアウシュビッツの生き残りでお互いの家族を皆殺しにされた。家族を殺した男の名はルディ・コランダー。奴は今も名を変えアメリカやカナダの何処かで平穏に暮らしているはずだ。いいか、君は奴を見つけるために今から出発しなければならない」。候補となる男は4人。密かに施設を抜け出したグッドマンは、手紙の指示通りに銃を手に入れ、かつての宿敵かもしれない人々の元を訪ねるのだが、認知症から次第に記憶が曖昧になってゆくのだった…。頼りになるのは一通の手紙のみ、果たして彼は無事にルディ・コランダーを捜し出し過去を清算することが出来るのか?人生の終末期を迎えた老人の孤独な復讐の旅を淡々と描いたサスペンス作品。いやはやなかなか魅せるじゃないですか、これ。目覚めるたびに記憶を無くす主人公が一通の手紙だけを頼りに復讐の相手を捜すという、言わば老人版『メメント』とも呼ぶべき作品なのですが、物凄く凝った構成をしていたあちらとは違い本作は非常にストレートに描かれているところがポイント。人生の最後に過去を清算したいという老人ののどかな旅路のように始まりながら、主人公の認知症が徐々に悪化してゆくことによってどんどんとサスペンス色が濃くなってゆくところなどなかなか巧い。主人公を演じたクリストファー・プラマーの熟練の演技の賜物もあって、最後まで緊張感を途切れさせることなく観ることが出来ました。途中に出てくるナチ信望者のおっさんなんか嫌らしさ全開で、彼の家での二人のやり取りなども不穏でいい。最後のオチは想定の範囲内でそこまで驚きもなかったのですが、全体的には充分面白かったと言っていいんじゃないでしょうか。過去の作品からこの監督にはあまりいい印象を持っていなかったのですが、本作でちょっと見直しました。やるじゃん!
[DVD(字幕)] 7点(2018-04-18 00:02:18)
25.  メッセージ 《ネタバレ》 
骨太のSFドラマ。淡々としていましたが、なかなか見応えありました。
[DVD(字幕)] 7点(2018-01-09 19:51:45)
26.  天才スピヴェット 《ネタバレ》 
そう、やっぱり明日ワシントンDCへ行こう。ぼくは研究者で、科学者だ。彼らはぼくを求めている。ここに残ったら、きっとぼくはくるくる廻り続けて一生を終えるだけの人生になるだろう。あのコウモリたちのように――。ウシやヤギしかいないような、のどかな牧草地が拡がるモンタナ州のとある田舎町。1日に3本しか列車が停まらないようなそんな地で、頭の堅いカウボーイの父親と虫のことしか頭にないような昆虫学者の母親、そしていつか有名になってテレビに出ることだけを夢見る姉とともに暮らすT・S・スピヴェットは、何処にでも居るような10歳の少年だ。ところがその小さな頭の中には大人も顔負けの天才的なひらめきと科学的探究心を併せ持った、将来のレオナルド・ダ・ビンチを自任する聡明な少年だった。ある日、彼の元に一本の電話が掛かってくる。なんと、彼が以前発明しこっそりスメソニアン協会に送った、磁力を元にほぼ永久に動き続ける画期的な〝永久機関〟が高名な賞を受賞したというのだ。式典で受賞スピーチをしてほしいという要請を一度は断ったものの、それでも保守的な田舎の雰囲気に違和感を感じていたスピヴェットの心は揺れ動く。何より、双子の弟が事故で死んだことをきっかけに心を閉ざしてしまった彼は、ある決意を胸にたった一人旅立つのだった。必要なものをたくさん詰め込んだボストンバッグだけを手に……。昔から唯一無二の独特の作風で知られるジャン・ピエール・ジュネ監督の最新作は、そんな一人の天才少年の一人旅をアメリカ西部ののどかで雄大な風景の中に描き出すロード・ムービーでした。飛び出し絵本を模したプロローグに始まり、スピヴェット少年の頭の中で考えた数式や分析をいちいち画面に映し出したり、家の電話に出るだけなのに順路を三つも考えて悩んだり、相変わらず遊び心満載の独自の演出手法はもういかにもジュネ監督印。『アメリ』や『ロスト・チルドレン』『ミックマック』をこよなく愛する自分としては、もうそれだけでわくわく感が止まらなかったです。特に、スピヴェット少年が一人ぼっちで列車に乗り込み、雄大な大自然の中をひた走りだしてからは、その軽快な音楽の力もあって凄くのめり込んで見入ってしまいました。うん、さすがジュネ監督!素直に面白かったです。ただ…、最後スメソニアン博物館で演説してから展開される家族との安易な和解劇は正直いらなかったかなぁ。ちょっとあまりに唐突過ぎて、無理やり良い話に纏めようとしたみたいな印象を僕は持ってしまいました。と、そこらへんに若干不満が残ったものの、惚れ惚れするほどの映像の美しさと遊び心満載のそのイノセントな世界観は今回も充分堪能させてもらいました。うん、やっぱりジュネ監督、サイコー!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-03-04 23:47:38)
27.  マップ・トゥ・ザ・スターズ 《ネタバレ》 
学校のノートに、自分の机や木々に、砂の上や雪の上に君の名を書く。肯定する肉体すべてに、我が友すべての額に、差し出された手すべてに、君の名を書く――。女優として行き詰まりを感じ、起死回生を計るために今まで真剣に向き合うことを拒んできた自分の母親の人生を描いた伝記映画に主演しようと目論むハリウッドのセレブ女優、ハバナ。子役として一躍有名になったもののクスリに手を出し謹慎を余儀なくされた13歳の高慢な少年、ベンジー。その姉で、かつて弟を焼き殺そうとしてずっと病院に隔離入院させられていた、生まれつき精神に問題を抱えた少女、アガサ。2人の父親で、神秘的なセラピストとしてハリウッドセレブたちに人気の金に目がない男、スタッフォード。ハリウッドの上流階級で蠢く、そんな醜いセレブたちの嘘と喧騒に満ちた日々を、まるで夜空の星に地図を描くような空虚さでもってシニカルに見つめた群像劇。かつてグロ映画界の巨匠としてその名を馳せたものの、最近はなんだか分かりにくい作品ばかり撮っているクローネンバーグの最新作、そんなに期待せずに今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、比較的分かり易いアプローチで描かれていて、今回は眠気と戦うことなく最後まで観ることが出来ました(笑)。とはいえ、ストーリーは確かに分かりやすかったのですが、この作品が観客に伝えたかったテーマはやっぱり分かり難かったです。たぶん、このどうしようもない人たちの何も有益なものを生み出さない醜悪な人間ドラマを延々と描くことで、人生の空しさを表してると思うんだけど?とはいえ、そんなさっっっぱり分からない感じが、上手く言えないのですが今回はなんだか心地良かったです。例えるなら、デビット・リンチの傑作『マルホランド・ドライブ』を幾分か薄めた感じのシュルレアリスム劇と言ったところ。豪華な役者陣の熱演も光っていたし、シニカルな人間ドラマの中にときたま顔を見せる抒情性も印象的だし、なかなか見応えがありました。それにしても、本作で主役を演じたジュリアン・ムーアのもう何も怖いものナシと言った感じの鬼気迫るような演技は凄いですね。誰も望んでいない?ヌードを惜しげもなく披露し、ヒステリーを起こして泣き喚くわ、おばさんとレズっちゃうわ、ネグリジェ姿で変な踊りを踊りだすわ、挙句の果てには便器にパンツを下ろして座り、「最近、便秘気味なの」とブブブってオナラしちゃうなんて、物凄い女優魂です。そ、そこまでせんでも…と若干ひいちゃうくらいでした(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-07 18:27:47)
28.  フォックスファイア 少女たちの告白 《ネタバレ》 
「私たちの物語が始まったのは、そう、1955年3月16日の夜、レッグスと私が新しいグループを結成してからだ。名前はまだなかった。でもすぐにレッグスが思いついた。“フォックスファイア(キツネ火)”。夢の中で聞いた言葉だとか…。そう、フォックスファイアこそ、まさに忠誠と信頼と愛で成り立つ血の団結。男どもに対抗しうる、少女たちのギャング集団」――。東西冷戦が激化し始めていた50年代。アメリカ南部のとある地方都市に生きる男勝りな少女レッグスは、女をまるで頑張った自分へのご褒美のようにしか見ない男たちに対抗するため、少女の少女による少女のための秘密結社「フォックスファイア」を結成するのだった。最初は悪戯程度で収まっていた彼女たちの活動だったが、レッグスが警察に捕まり刑務所に収監されてからは次第にエスカレートしていく。そして、強烈なカリスマ性でそんな少女たちを惹き付けるレッグスが保釈されると、フォックスファイアは本格的に過激な反体制派活動を活発化させてゆくのだった……。特筆すべきなのは、本作で主役を演じたレッグス役の女の子のその類稀なるカリスマ性だろう。キラキラと輝くような笑顔を見せていた前半での大人しい彼女から、中盤、刑務所に収監されてからの中性的な魅力を振りまく、今にも壊れてしまいそうなまるでガラス細工のナイフのような圧倒的な存在感には最後まで目が釘付けになってしまった。彼女が、本作のためのオーディションで選ばれたそれまではずぶの素人だったなんて到底信じられない。そんな彼女以外の女の子たちも皆、それぞれに個性豊かな魅力を放っていて素晴らしい(特にグループの用心棒的なあの太った女の子!)。お話の方も、男の論理で形成される資本主義社会に徹底的に少女の視線で〝ファックユー!〟を突きつけるそのパワフルなメッセージに、僕は爽快さすら感じてしまった。ただ残念だったのは、映画として全体的に少々冗長な印象を受けてしまったところ。2時間弱ぐらいに纏めてくれれば、もっと格好良いガールズ映画の傑作になっていただろうに。とはいえ、少女たちの生きるエネルギーに満ち溢れた、シスターフッド映画の秀作であったことは間違いない。
[DVD(字幕)] 7点(2015-04-10 23:55:29)
29.  スーサイド・ショップ 《ネタバレ》 
皆さん、「自殺うさぎ」って絵本をご存知ですか?ただひたすら、可愛い小さなうさぎたちがありとあらゆる方法で自ら命を絶つ姿を延々と描いた絵本で、たとえばアイロンを身体の上に載せて今まさにスイッチを入れようとするうさぎや、ジャンボジェット機のエンジンに果敢に突っ込んでいくうさぎや、切腹する日本兵の背中に隠れておんぶするうさぎたち……、どうして死ぬのかは一切説明されぬまま、彼らはただ淡々と自殺してゆきます(興味を持たれた方は、「自殺うさぎ」でレッツ検索♪)。さて、そんなシュールでブラックなのに何故か癖になるユーモアがある絵本を髣髴とさせる本作、冒頭からかなりクオリティの高いアニメーションで、ただひたすら人生に絶望した人々がありとあらゆる方法で自殺する様をコミカルに描き出してゆきます。ほぼモノトーンで描かれる人々は、皆一様に虚ろな目で下を向き、道端に自殺死体が転がっていようが見てみぬふり、警察ももうウンザリって感じでそんな死体の口に違反切符を突っ込んで終わり……。そんなシニカルな世界で盛況なのは、主人公〝ミシマ(もちろん、ウン十年前に自衛隊に立て篭もってハラキリしちゃったあの人を茶化しているのは明白ですよね笑)〟が経営する自殺グッズ専門店。「死ぬことはなんて素晴らしい!」と高らかに歌い上げるミシマ一家の、この現代に凝り固まった倫理観を徹底的に笑い飛ばすようなぶっ飛んだ歌詞に、生来のひねくれ者である僕としてはかなりテンション上がっちゃいました。「もしかしてこれは、反道徳の極北を行く伝説のアニメとして傑作になるのでは?!」とワクワクしながら観進めたのですが、残念ながらそんなアイデアのみが先行してしまったのか、後半は少々尻すぼみになっちゃいましたね、これ。とにかく常にポジティヴな次男が一家に生まれたことから巻き起こる騒動という設定がいまいち巧く活かされてないような印象を持ってしまいました。もっと既存のちっぽけな倫理観やモラルなんかを飄々と笑い飛ばすぶっ飛んだ怪作を期待していた僕としてはちょっぴり肩透かし。とはいえ、この全編を彩るセンス溢れるシニカルな世界観は充分堪能させてもらいました。あの太った長女が窓際でストリップを踊るシーンもエロティックで大変良かったです。総じて欠点は目立つものの、愛すべき小品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-02-10 01:21:20)(良:1票)
30.  MAMA(2013) 《ネタバレ》 
「ヴィクトリア、来て、窓の外でママが呼んでいるわ。きっと寂しがってる。ねえ、早く一緒に行こう」――。株式投資の失敗により気が違って妻を殺害してしまった父親に無理やり連れ去られてしまった幼い姉妹、ヴィクトリアとリリー。以来5年もの間、ずっと行方の分からなかった彼女たち。だが、叔父であるルーカスの懸命な捜索によって一軒の寂れた山小屋で野生児として暮らしていたところを発見されるのだった。ルーカスと彼の恋人であるミュージシャンの元に引き取られることになった彼女たち。だが、その誰もいないはずの山小屋で、ずっと彼女たちの世話をしてきた忌まわしき存在である〝ママ〟も、そんなヴィクトリアとリリーのあとを追ってくるのだった……。僕のこよなく愛する、理不尽で残酷な現実に押し潰されそうになりながらもその美しい想像力でもって立ち向かう一人の少女をダークに描いた傑作『パンズ・ラビリンス』を撮った鬼才ギレルモ・デル・トロ監督。彼が製作を務めたという今作もいかにも彼らしい禍々しい雰囲気が濃厚に漂うダークホラーの逸品へと仕上がっておりました。いやー、正直中盤まではあまりにも思わせ振りな演出が延々と続くうえに誰が主人公なのかいまいちピンとこないせいで、「デルトロ、久し振りにハズしちゃったかな~」と思いながら観ていました。なのだけど、ママの正体が明かされてからの畳み掛けるように続く後半の怒涛の展開は見応え充分でした。とにかく何が良いかって、やっぱりクライマックスのあの崖でのママと姉妹たちのそれぞれの切実な想いが交錯する美しいシーンでしょう。グロテスクな雰囲気が濃厚なのにどこか美しさをも感じさせる映像でもって描かれた、そんなママと姉妹との別れのシーンは出色の出来でした。もう、僕の好みと見事に合致していて鳥肌立ちまくり!!まあ、よくよく考えたら脚本上の粗が目立つし、中盤の展開が幾分か冗長という面もなきにしもあらずだけど、母と子の絆を妖艶に描いた、いかにもデルトロらしい切ないホラーとして素直に良かったと思います。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2014-10-16 00:37:48)★《更新》★
31.  魔女と呼ばれた少女 《ネタバレ》 
これから産まれてくるあたしの赤ちゃん、あなたには全てを知っておいて欲しいの。あたしがこの地で何をしてきたかを――。いつ果てるとも知れない泥沼の内戦が続くアフリカの何処かの貧しい国。両親と共に平凡に生きていた11歳の少女コモナもそんな現実の荒波へと巻き込まれてしまう。突如として現れた残虐な反政府ゲリラに捕まり、自ら両親を殺すことを強要されると、無理やり少年(女)兵として戦争へと駆り出されることに。そんななか、ジャングルの奥深くで出会った自分にだけ見える死者の精霊たちの導きにより、激しい戦闘から彼女一人だけが生き残るのだった。以来、ゲリラのリーダーによって魔女として崇められるコモナ。しかし、そこで知り合った同じく少年兵のマジシャンの無垢な性格に心惹かれていくという、彼女もまた普通の年頃の少女に過ぎなかった。だが、そんなコモナの初恋も過酷な現実によって容赦なく押し潰されてゆく。内戦に揺れるアフリカ最貧国を舞台に、少年兵たちの過酷なドラマを、ときに幻想的に、ときに青春ラブストーリーとして描く意欲作。一時、やたらと多作されたアフリカ内戦ものですが、今作は主人公が元はあくまで普通の少女というところがポイントですね。先行作品の例に漏れず、こちらも思わず目を覆いたくなるようなかなりショッキングなシーンが随処に出てきますが(冒頭から、いきなり11歳の少女に両親を殺させます)、途中で差し挟まれるコモナとマジシャンとの初々しい恋愛描写が良い対比となっていてとても胸に迫ります。そして、後半で妊娠してしまい(その父親が誰かもかなり悲惨です)母の顔を見せ始めるコモナの、残酷な現実に押し潰されそうになりながら、それでもここで必死に生きていこうとする力強い姿に感動を覚えざるをえません。若干、森の精霊描写がチープでいまいち意図が読み取りにくいところが残念ではありましたけれど、画面の端々に生きるエネルギーが横溢するなかなかの良作だと思います。コモナに、いつか平穏な日々をと祈らずにはいられません。
[DVD(字幕)] 7点(2014-04-05 19:21:36)
32.  エスター 《ネタバレ》 
三度目の妊娠で子供を死産してしまったショックから、アルコール依存症となってしまったケイト。だが、愛する二人の子供たちと夫の支えによりなんとか立ち直れた彼女は、生きて産まれることが出来なかった子供へと罪滅ぼしするかの如く、孤児院からエスターという名の9歳の女の子を引き取ることに。家族も増え、更なる幸せへと向かうかと思われたケイトだったが、徐々にそんなエスターの奇行が目立ち始めるのだった。彼女のことをイジメていた女の子が滑り台から転落し、怪しんでいた孤児院のシスターが謎の死を遂げ、そして耳に障害のあるケイトの娘マックスにまで…。謎の少女エスターに追い詰められ、どんどんと崩壊していくケイトの幸せな生活をねちっこく描いた異色のスリラー作品。いやー、胸糞悪かったっすね~。観ながら、こんな理不尽なことが許されていいのか!と叫びだしそうになっちゃったし。でも、そんな胸糞悪い感じもけっこう嫌いじゃない僕としては、この全編を覆う常に何かいや~なことが起こりそうな雰囲気、なかなか楽しめました。とにかくエスター怖すぎっす!単純なサイコキラーとしてだけじゃなく、ちゃんと女の子らしい心理描写も随所に差し挟んでくるところとかも、いや~な感じをますます増幅させてましたね。それにエスターの描く、蛍光色を多用したグロテスクな絵の描写とかにもけっこうセンスを感じました。うん、なかなか面白かったっす(後味めっちゃ悪いですけどね笑)。あと、自他共に認めるロリコンの僕ですが父親を誘惑しようとするエスターの妖艶なドレス姿には何故か全然グッときませんでした。その後に明かされる、エスターの驚愕の真実を知って、僕のロリコンレーダーはやっぱり間違っていなかったんだと納得(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2014-03-13 00:22:24)(笑:1票)
33.  テイク・ディス・ワルツ 《ネタバレ》 
本当は小説家になりたかった、今はライターとして生活しているマーゴは、結婚して5年になる夫と共にアメリカの片田舎で平凡な日々を過ごしている。料理研究家の夫は物静かでとっても優しいのだけれど、彼女はそんな毎日に何か物足りなさを感じているのも事実だった。そんなおり、マーゴは近所に住む貧しいながらも画家志望の青年ダニエルと運命的な出会いを果たす。「駄目、夫のことを裏切ったりなんか出来るわけないわ…」と必死に感情を押さえ込むマーゴだったが、情熱的な青年ダニエルによって彼女の心のドアは徐々に開かれてゆくのだった。という前半のあまりにもな、一昔まえのレディースコミックのようなベタな展開に、「どうせ、この人妻が速攻でこのダンディな男と一線を越えて快楽に溺れてすぐに夫にもそれがバレてこの後ドロドロな展開が続くんだろー、あーあ、失敗したぁ」と辟易しながら観てたのだけど、意外にも主人公マーゴが全然そんな一線を越えないばかりかかなり切実に悩んでいくという展開(それに女たらしのジゴロ風だったダニエルもけっこう真面目な奴だったし)にだんだんと惹き込まれていきました。決して綺麗なわけじゃないしスタイルだってなかなかのぽっちゃり具合(かなりリアルなタイプの笑)なのに、中盤辺りからいつの間にか彼女のことを好きになっていく自分が居ました。確かに、あの何も悪いことしてないかなり善い人な〝夫〟側の視点で見れば、むちゃくちゃやり切れないストーリーではありましたけれど、まさにワルツを踊るようなセンス溢れる綺麗な映像で描き出された登場人物各々の繊細な心理描写とかなかなか良かったですね。特に、マーゴが苦悶の末に発した「デートの約束をしましょう。ただし、今から30年後の2040年8月5日午後2時に。場所はあなたと初めて出逢った場所。きっと来てね、ダニエル。35年も夫に尽くしたら、きっとあなたとのキスくらい許される…」という言葉にはラストシーンの余韻とともにかなりジーンときちゃいました。うーん、切ない!ただ、決して夫婦で観てはいけません。気まずくなります(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2014-02-08 23:12:19)
34.  サイレントヒル 《ネタバレ》 
夜な夜な何かに引き寄せられるかのようにベッドから抜け出す少女シャロン。「サイレントヒル…」そう呟く娘の謎の言葉を手がかりに、母ローズは過去に起きた炭鉱事故によって廃墟と化した街へと辿り着く。だが、そこは人智を越えた存在が支配する恐ろしい街だった。すぐに姿を消してしまったシャロンを捜して、ローズは男勝りの婦人警官と共に灰燼渦巻くサイレントヒルのそんな怪しい世界へと踏み込んでゆく――。すみません、元ネタとなったゲームのことはほとんど知りません。確かにゲームを原作にしただけあって、このダークでおどろおどろしい世界観はなかなか秀逸でした。プレイヤーとしてこんなゾクゾクするような気持ち悪~い世界へと入っていったら楽しいだろーなー。ただ、映画としてみたらどうなんですかね。後半になるにしたがって、見事なまでに破綻する設定の数々にはさすがに苦笑しちゃいました。謎の宗教集団もいったい何がしたいのか意味不明だし。そして「で、結局、どういうこっちゃねん!」という観客の疑問に一切応えないまま、かなり投げやりなラストを迎えてしまいました。うーん、なんという薄っぺらいストーリー(笑)。それでも、常に白い灰が雪のように舞う幻想的で美しい街サイレントヒルに、突然重厚なサイレンが鳴り響いたかと思うと瞬く間に悪夢のような世界へと変貌を遂げ、そうして現れた淫靡でグロテスクな怪物たちが容赦なく襲ってくるという、「ひえぇぇ~」な映像はなかなか見応えがありました。こりゃ、こえーよ!!
[DVD(字幕)] 7点(2013-12-19 08:53:05)(良:1票)
35.  ディヴァイド 《ネタバレ》 
なんの説明もなされないまま、いきなり冒頭から核戦争(らしき?)カタストロフィが巻き起こり、マンションの地下室へと追い込まれてしまった種々雑多な人々。地上に出るべきか、このままここで救助を待つべきか、各々に葛藤を重ねていたら、突然に現れた防護服姿の男たちによって唯一の扉が溶接されてしまう。「どうせ、低予算で作られた、よくあるB級SFじゃろう」くらいの心持ちで鑑賞してみたら、これが意外や意外、なかなか良く出来た密室劇で良い意味で僕の期待を裏切ってくれました。追い詰められて次第に獣性を剥き出しにする男たち、心の弱さからそんな男に引き摺られる婚約者、子供をさらわれ次第に狂気に捉われる母親、そしてそんな極限状況の中で必死に理性を保とうとする主人公エヴァ。確かに脚本上の瑕疵が目立つ作品ではあるけれど、それを補って余りあるセンス溢れる映像(ビニールで包装された無機質な通路や、銃を手に入れようとする時の変幻自在なカメラワーク、何より自らはなった業火に身を焼かれる狂った男の最期等)と、過剰なまでの暴力描写によって人間心理の深い闇を垣間見たような気がします。お金がかかっていそうなのは冒頭と最後のCG描写だけで、あとはずっと薄汚れた地下室だけで物語が進むという明らかな低予算映画なのだけど、監督の映像センスと役者陣の熱演、そして何より人の心を打つような映画を創ろうという情熱さえあれば、いくらでも面白い映画が創れるという見本のような作品でした。この監督の次回作にも期待したい。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-17 22:37:33)
36.  ゴーストバスターズ/アフターライフ 《ネタバレ》 
あのゴーストバスターズが帰ってきた!1980年代に大ヒットを飛ばしたエンタメ・コメディの約30年ぶりとなる続編(と思ったら2、3年前にも続編が制作されてたみたいですけど、そちらは未見)。しかも監督は、初代監督のアイバン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマン。親父の映画の続編を作るってどういう気持ちなんでしょうね。とは言え、軽いタッチのコメディ映画で一世を風靡した親父と違い、息子はデビュー以来一貫してヒューマン・ドラマでならした監督さん。確かに悪くはないんですけど、肝心の幽霊退治のシーンよりもなんだか人間ドラマの方が分厚くなり過ぎな印象を受けてしまいました。金銭的にも精神的にも追い詰められて田舎のボロ屋へと越してきたシングルマザー、それでも前向きに頑張ろうとする2人の子供たち、彼らと偶然出会う人付き合いの苦手な中学教師……。もうこれだけで別のお話になりそうな(笑)。しかもそこに現在落ちぶれてしまったバスターズたちの過去の仲違いや主人公の母親と祖父との確執なんかも絡んできて、けっこう深刻。この主人公たちの幾分か重いドラマと軽いノリのアクションシーンが巧く噛み合っておらず、全体的に纏まりに欠けているような感想を抱いてしまう。ゴーストバスターズはもっと軽~いノリで楽しみたかったです。全体的な完成度は高いとは思うんですけど、自分が求めていたものとはちょっと違う内容でございました。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-10 09:39:52)
37.  モンタナの目撃者 《ネタバレ》 
山岳地帯で発生した火事を担当するベテラン消防隊員、ハンナ。だが、彼女は最近発生した山火事の消火活動中、風の方向を見誤り、目の前で幼い少年たちを死なせてしまうのだった。過失はなかったとされたものの、それでもハンナは事件の生々しい記憶に苦しめられていた。忌まわしき出来事から逃れるかのように、森の監視塔で業務に没頭するハンナはある日、森の中を彷徨うある少年を発見する。全身が泥で覆われ服には血の跡が生々しく残り、何かから逃れるようにひたすら森の中へと向かう少年。明らかな異常事態にハンナは持ち場を離れ彼の後を追うのだった――。少年を無事保護したハンナは、とにかく彼から事情を聴いてみる。すると、彼の口から驚きの事実を聞かされるのだった。なんと、公認会計士だった彼の父親は、大物政治家や大企業が絡む大規模な不正を追及していたのがばれ、暗殺者に殺されてしまったというのだ。警察も誰も信用できない。父が託したという不正の事実を記したメモを手にテレビ局へと向かう少年をとてもほっておくことが出来ず、ハンナは独自に彼と行動を共にする。だが、そんな二人を執拗に追う暗殺者は彼らを追い詰めるため山へと火を放つのだった……。人気女優アンジェリーナ・ジョリーがそんなトラウマに苦しむ消防隊員を熱演しているということで今回鑑賞してみました。監督は、社会に潜む闇を背景にした硬派なサスペンスを幾つも手掛けてきたテイラー・シェリダン。孤立無援となった消防隊員と無力な少年、そんな彼らを追い詰める殺し屋たちの冷酷っぷりが凄まじく、ただ顔を見られただけの通行人を無慈悲にも殺すばかりか、なんと捜査の手を遅らせるためだけに山へと火を放つのです。なんという地球環境に優しくない奴ら(笑)。そんな彼らといかにも熱そうな山火事の炎にダブルで追い詰められる主人公たちの逃避行は、常にハラハラドキドキの連続で目が離せません。特に、燃え盛る炎がすぐそこまで迫ってくるシーンは、こちらも思わず汗ばんでしまいそうなほどリアルでした。ただ、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。特に目につくのは、主人公を追い詰める殺し屋たちがあまりにも無計画すぎるところでしょう。遠く離れた地に住む標的を順番に殺そうという冒頭のシーンからしてまず不自然。依頼主が予算をケチったからだと言い訳がましく言ってましたが、何とも腑に落ちない。極めつけは、監視塔の上にいる少年たちを確認させるために、人質だけで昇らせるシーン。自分らは地面で見てるだけって、そりゃ逃げられて当然ですわ。と、そこら辺をもう少し考えてほしかった。これまで完成度の高い脚本を幾つも手掛けてきた監督だけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-11 14:30:35)(良:1票)
38.  ストックホルム・ケース 《ネタバレ》 
1970年代、ストックホルムの大手銀行で起きた人質立てこもり事件。銃と爆弾で武装した二人組の犯人は、銀行員の女性二人を人質にすると警察に無理難題を要求する。その様子は全国にテレビ中継され、当時の首相を巻き込んだ一大事件へと発展するのだった――。だが、時間の経過とともに双方のやり取りが膠着状態に陥ると、事件はおかしな展開を見せ始める。なんと本来は人質であったはずの女性行員二人が犯人に協力姿勢を見せ始め、さらには愛情に近い感情を吐露するようになったのだ。果たして彼らの間には何があったのか――。これはのちにストックホルム・シンドロームとして有名になる、そんな実際の事件を基に描かれた犯罪劇。荒くれ者で粗野な言動を繰り返す犯人を演じるのはまさに嵌まり役のイーサン・ホーク、そんな犯人に何故か心惹かれてゆく人質役には実力派女優のノオミ・ラパス。他にも主人公の相棒役でマーク・ストロングらも出ております。とにかく彼らの真に迫った熱演には圧倒されました。何をするかわからない危険な匂いをビンビン感じさせながら時に繊細で優しい一面を見せるイーサン・ホーク、子供のことを第一に考えながらもそんな彼に何故か惹かれてゆく人質ノオミ・ラパス。どちらも熟練の技を感じさせる素晴らしいもの。ただ、肝心のお話に関しては、僕は若干踏み込みが甘いような印象を持ってしまいました。ストックホルム症候群の語源となった、被害者と加害者の間に生じる不可解な連帯感。自分を殺すかもしれない犯人に人質であるこの平凡な女性がどうして協力姿勢を示し、さらには犯人が捕まると涙さえ見せたのか。その過程にいまいち説得力が感じられない。そこにはもっと観る者の魂を深く揺さぶるような真実があったはずなのでは。事実をただ忠実に再現しただけではやはり、上っ面をなぞっただけという批判をまぬかれないではないだろうか。題材や役者陣の熱演は良かっただけに、僕はどうしてもそこのところに物足りないものを感じてしまいました。惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-01-27 06:01:38)
39.  パワー・オブ・ザ・ドッグ 《ネタバレ》 
1920年代のアメリカ南部を舞台に、牧場主の兄弟とこの家に嫁ぐことになったとある未亡人、そして彼女の息子のそれぞれ複雑に絡み合う思惑を濃密に描いた心理サスペンス。主演を務めるのは、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチとベテラン女優キルスティン・ダンスト。監督は、カンヌでパルムドールを受賞した名匠ジェーン・カンピオン。というわけで、観ながら思い出されるのはやはり同監督の名作『ピアノ・レッスン』でしょう。許されぬ愛に身を焦がす男女をこってり濃厚に演じたホリー・ハンター&ハーベイ・カイテルに負けず劣らずの熱演を見せてくれます。特に、ほとんど風呂にも入らず悪臭を放つ荒くれ者でありながら実は繊細な心の持ち主である牧場主を演じたB・ガンバ―バッチは見事でした。愛のない結婚生活から次第に酒に溺れてゆくK・ダンストの切なげな表情もなかなか良かったです。そして、最初は頼りない若者に過ぎなかった彼女の息子が次第に何考えているのか分からない得体のしれない存在へと変貌してゆくのも不気味でいい。ただ、『ピアノ・レッスン』と比べるとどうしても地味な印象を持ってしまったのも事実。何が足りないのかと考えてみると、それはやはり音楽なんじゃないでしょうか。あちらでは世界的なピアノ奏者マイケル・ナイマンの繊細で美しい旋律を持ったピアノ曲が全編に流れていて、非常に気品溢れる芸術作品へと昇華されておりました。対して本作、最後までほとんど音楽が使われず、終盤まで何とも地味な展開で気持ちが離れてしまうこともしばしば。最後に各々の思惑が明らかにされ、人間の底知れぬ怖さが浮き彫りになるというのは良かったのですが、いかんせんそこまでが長すぎます。いろいろと興味深い部分も多かったのですが、それと同じくらい欠点も目につく作品でありました。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-14 02:42:12)
40.  私というパズル 《ネタバレ》 
赤ん坊を自宅出産した女性が、助産師のミスからか、産まれたばかりのその子供を死なせてしまい、以来激しい喪失感と罪悪感に苛まれる日々を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。見どころとなるのは、やはりなんといっても冒頭30分にも及ぶワンカットで撮られたリアルな出産シーンでしょう。不安や痛みがダイレクトに伝わってきて、まるで自分もその場で立ち会っているかのような緊張感が感じられました。このシーンは率直に見事というしかない。ただ、それ以降、映画はずっとこの子供を亡くした夫婦の苦悩の日々をひたすら淡々と描いてゆきます。アカデミー賞にノミネートされただけあって、主役を演じたヴァネッサ・カービーの熱演も真に迫っております。ただ、とにかく暗い!!正直自分はこういう後ろ向きな人々の激しい口論がひたすら続くような内容がかなり苦手です。いや、彼女たちの気持ちは分かるんですけどもう少し明るい内容というか、もっと希望を持てるような展開がないとちょっときついですね。もう気が滅入って仕方ありませんでした。病んだ妻に嫌気がさして浮気しちゃう夫も、余計なお世話を焼いてますます事態を拗らせちゃう身内も、誰も彼も全く好きになれませんし。きっと完成度は高いんでしょうけれど、自分はこういう内容は好きじゃないです。すんません。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-11-08 07:01:04)
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