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61.  幸福(1981)
黒澤明監督の「天国と地獄」の原作者として、またアルフレッド・ヒッチコック監督の「鳥」の脚本家としても知られるエド・マクベインの「クレアが死んでいる」を原作に市川崑監督が手がけた刑事映画。公開後、一度テレビ放送されただけで長らく幻となっていた映画で、市川監督の80年代のもう一本の幻の作品「鹿鳴館」と並んで見る機会は永遠にないかもなんて思ってたが、今回、DVDで見た。市川監督のサスペンスといえば金田一耕助シリーズをつい連想してしまうが、この映画でも冒頭の本屋での殺人事件の凄惨さなどは思わず金田一的なものを思い浮かべてしまい、まさか「天河伝説殺人事件」のような原作を勘違いしたかのような駄作だったらどうしようと一瞬思ってしまったが、映画は事件をきっかけとして浮かび上がってくる人々の悲しい人間模様や親子の絆、人間の温かさをじっくりと描いていて人間ドラマとしてなかなか見応えのある映画に仕上がっていて面白かった。最初はカラーでなく白黒で撮りたかったが、「カラーで」という要望があってやむなく「銀残し=シルバーカラー」で撮ったというのは「おとうと」でも聞いたことがあったが、やはり「おとうと」や「かあちゃん」と同じく本作でも効果的に使われ、その2本と違って公開当時の現代を舞台にしているにも関わらず、映し出される東京の雰囲気がノスタルジックで、この映画の公開された頃に生まれた僕ですら、不思議とある種の懐かしさを覚えてしまうほど。主演の水谷豊、永島敏行、中原理恵という市川作品には珍しい顔ぶれもなかなか新鮮な感じで、とくに水谷豊演じる妻に逃げられた刑事と、その二人の子供たちの絡むシーンがどれもよく、病院で子供たちを抱きしめるシーンや、ラスト近くのやりとりがとても感動的だった。中原理恵も「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」のマドンナ役で見た時と違ってとても印象的。(寅さんのマドンナよりこういう映画での薄幸な役柄のほうが合ってる気がする。)市原悦子の存在感も凄いものがある。草笛光子や加藤武、三條美紀といった金田一シリーズに出演していた役者が出ているのがやはり嬉しい。(そういえば市原悦子も松竹の「八つ墓村」出てたなあ。)ともあれこの映画が長年日の目を見なかったのが惜しいくらいの出来で、80年代の市川作品の中でも最も市川監督の実験精神というか、映像作家としての個性が際立った傑作だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2010-06-08 18:38:14)(良:2票)
62.  北の国から '84夏<TVM>
「北の国から」スペシャル版で一番好きな作品。ビデオも再放送で録画したものを持っている。そんなに何回も見るわけではないのだが、純と正吉の友情に感動したし、ラーメン屋での五郎と純の親子の会話も良かった。閉店時間だからとラーメンを下げようとする女店員(伊佐山ひろ子)に対して五郎が怒鳴るシーンに親の愛情を感じた。シリーズでも名作中の名作だろう。
[ビデオ(邦画)] 10点(2005-03-25 10:31:16)(良:2票)
63.  盲獣 《ネタバレ》 
最初の船越英二が女性の彫刻を撫で回すシーンから既に異様な雰囲気が漂いまくっていたが、とにかく凄い、凄すぎる作品だ。人間の裸体を模した悪趣味としかいいようのないアトリエやそこで繰り広げられる緑魔子と船越英二の変態プレイが何とも強烈で怖く、こんな映画を撮れるのはまさしく増村保造監督しかいないであろう。何かに取り付かれたような変態男を演じる船越英二の演技や、彼に協力する母親役の千石規子、船越英二との関係を続けていくうちに盲目になり、自身も狂っていくヒロインを演じる緑魔子と、登場人物が三人とも怖く、中でも千石規子が死んでからのあの展開は見たのが夜中だったこともあってか、眠れなくなってしまうのではないかとか、夢に出てはこないだろうかと心配になってしまった。映画としては船越英二の悪趣味なアトリエのセットがいかにも大映らしい丁寧な仕事で素晴らしいし、増村監督の演出も本領発揮というか、いやちょっとこれは暴走気味と思えるくらいに作品に対する気合いの入り様が伝わってくる傑作だと思うものの、やはり怖すぎてまた見たいとは僕もおそらく思わないかもしれない、でもとにかく本当に凄い映画を見てしまった。
[DVD(邦画)] 8点(2008-10-30 15:39:04)(良:2票)
64.  けものみち 《ネタバレ》 
数年前に放送された米倉涼子主演の連続ドラマ(未見)が有名な松本清張サスペンスの映画化作品。いわゆる悪女を描いた映画で、主演は池内淳子。庶民的で地味な印象がある女優なだけにどんなものかと思っていたが、この頃の東宝の喜劇映画や後年のテレビドラマの脇役、そして「男はつらいよ 寅次郎恋歌」のマドンナ役で見せる姿とは全く違う演技でこの民子という悪女を熱演していて、表情もきつくて怖い。増村保造監督作品の若尾文子・・・とまではいかないものの、(ちなみに本作の脚本家は増村作品常連の白坂依志夫だったりする。)見ていて違和感はないし、印象にも残り、この民子という役は池内淳子の数少ない映画で代表作と言ってしまってもいいのではないだろうか。この民子をあくまでクールに傍観的に描く須川栄三監督の演出がよく、独特のカメラワークも印象的だ。「寒流」でもそうだったが、本作でも金と色と欲に執着する人間が描かれているのが松本清張原作作品らしいところで、何か裏の考えを持った登場人物たちが次々と出て来て、人間の本質を見せていくが、それを演じるのが池部良や小林桂樹など普段は実直な役柄の多い俳優という見る人の裏をかいたキャスティングなのも見事。中でも池部良がこういう卑劣な役柄を演じているのが本当に珍しく、ラストの燃え盛る風呂場を見ながらの高笑いは本当に怖かった。そんな中、病気で寝たきりでありながら色欲エロ爺なフィクサーを演じる小沢栄太郎はイメージ通りのキャスティング。見ていてものすごくいやらしい爺で、この人がこういう役を演じると本当に怖いくらいにハマる。それに大塚道子。「上意討ち 拝領妻始末」の三船の妻役も怖かったが、この女中頭の役も存在感がありやっぱり怖い。そうそう、先週まで「黒い画集」シリーズを見ていたのだが、三部作それぞれに主要人物として出演していた小林桂樹、池部良、土屋嘉男の三人が共演しているのも見どころの一つだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-05-08 18:40:43)(良:2票)
65.  楊貴妃
溝口健二監督のカラー映画は本作と「新・平家物語」の二本。「新・平家物語」がイマイチだったのであまり期待はしていなかったが、話が壮大なわりに上映時間は90分と短く、ドラマに深みを感じることができない上に後半はえらく駆け足になってしまっているのでかなり物足りなく感じる。楊貴妃(京マチ子)と皇帝(森雅之)がお忍びで出かける祭りのシーンが印象に残るのだが、それ以外は溝口監督の演出も精彩を欠いている感じで、いままで見た溝口監督のほかの作品と比べても平凡な印象しか残らず、はっきり言ってあまり気乗りしないまま引き受けてしまったのではないかとも思えるような凡作で、ちょっと言い過ぎになるかもしれないが、この前の大映のカラー映画「地獄門」がカンヌでグランプリを受賞したことで調子に乗った永田雅一社長(溝口監督に絶大な信頼を寄せていたという。)に溝口監督がいいように使われただけという気もしてきて、そう考えると残念としか言いようがない。「新・平家物語」と同じく5点という評価だけど、この映画は今まで見た溝口監督の映画の中ではいちばんつまらないと思う。
[DVD(邦画)] 5点(2009-05-26 13:34:17)(良:2票)
66.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
今までずっと見たかった映画ではあったが、リメイク版2作と東宝で作られた日本版2作を既に見ていることと、80年前の特撮がいかにも古臭そうな印象だったため、なかなか手が出ずにいたが、そんなことを考えるのがバカバカしくなるほど素晴らしい映画だった。登場するキングコングや恐竜たちはストップモーションでリアルに表現されていて、恐怖感もちゃんと出てて、もうそれだけで感動的だし、着ぐるみやCGによる特撮と違ってストップモーションによる特撮は見慣れていないが、トリック撮影初期の段階でここまでのものができていたとは。これが円谷英二監督などのちの特撮映画の製作者たちに与えた影響が大きいことは有名な話だが、実際に見てみてなるほどと思わされた。リメイク版は2作ともヒロインのアンが徐々にキングコングに惹かれていく展開があり、本作でもそうだろうなと思っていたのだが、それがなく、アンはキングコングに対してひたすら悲鳴をあげるのみというのがビックリした。だが、それがかえってリアルだ。ドラマ性を極力廃したシンプルな構成なのも良かったが、それでもアンを抱えてエンパイアステートビルに登ったキングコングが無残に殺されてしまうという結末はやはり初代である本作から既にどこか哀愁を帯びていて印象に残り、なにかやるせなさを感じさせる。そしてなによりもやはり当時はゼロに近い状態から始まったに違いない怪獣のリアルな表現という命題に果敢に挑戦しそれを見事にやってのけたスタッフたちはまさに賞賛されるべき偉業を成し遂げていて、きっと裏で大変な工夫と努力と苦労があったことは想像にかたくない。また、ここから今につながる怪獣映画の歴史が始まったのかと思うと感慨深いものもある。怪獣映画が大好きな自分にとっては10点以外はつけることができない。本当にもっと早く見ればよかったと見終わって素直に思ってしまった。
[DVD(字幕)] 10点(2013-11-12 14:10:02)(良:2票)
67.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 
あまり期待してなかったというか、予備知識がほとんどない状態で見たのだが、典型的な巻き込まれ型サスペンスで最初からテンポもよく、展開もスピーディーで伏線の張り方や回収の仕方もうまく娯楽映画としてなかなか面白かった。中村義洋監督はこの前見た「白ゆき姫殺人事件」でもそうだったのだが、本作でも真犯人は誰という方よりも、濡れ衣を着せられた主人公・青柳(堺雅人)がいかに逃げるかに重きを置いていて、(単に原作がそうなっているだけかも知れないが。)そこがけっこう面白いし、最後まで真犯人を明らかにしないのもこの手の作品だとずいぶん思い切った印象があり、コレにモヤモヤする人もいそうだが、本作については真意がそこではないので別に違和感は感じないし、これでいいと思う。それに見終わった後、結局犯人は誰だったんだろうと想像してみるのも楽しい。よく考えたら重いテーマなのだが、全体的に軽いつくりでリアリティもなく、漫画チックな感じがミスマッチな感じがするのだが、そんなに気にならなかった。後半部分はちょっとご都合主義的すぎたかなという気がしないでもないがギリギリ許容範囲というところで突っ込みながらもそれも含めて楽しんでいた。ファーストシーンがラストにというのはいかにも映画的で良いなあ。整形して別人として生きていかなければならなくなった青柳を思うと少し切ない気持ちになるんだけど。出演者に関しては堺雅人と竹内結子は去年「真田丸」でずっと見ていたので少し引きずってしまうかもと思っていたのだが、よぎることもなく見れたのでちょっと安心した。ほかの出演者たちも概ね好演しているが、中でも通り魔・キルオを演じる濱田岳が良い味を出していて印象に残る。「はじまりのみち」の便利屋役も良かったが、やはり最近の若手俳優の中ではわりと好きな役者だ。あと、青柳を追う刑事を香川照之が演じていて「鍵泥棒のメソッド」を思い出していたら、青柳の整形後の姿を演じていたのは滝藤賢一。「半沢直樹」は見ていないのだが、思わず少し見てみたいと思ってしまった。中村監督の映画を見るのはまだ2本目で、伊坂幸太郎原作の映画を見るのも本作が初めてだったのだが、このコンビの映画は何本かあるようなので、この中村、伊坂コンビのほかの映画も見たいと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2017-05-03 00:49:59)(良:2票)
68.  青空娘
若尾文子といえば落ち着いた上品な大人の雰囲気が漂う女優、あるいはちょっと小悪魔的な魅力を持つ女優というイメージがあるのだが、増村保造監督との初コンビ作となる本作では、そのイメージとは違う明るく元気なヒロインを演じていて、川島雄三監督の「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」でも印象的だった彼女だが、ここまで爽やかで清潔感溢れる魅力を感じるのは初めてだ。映画の面白さや完成度としては確かに「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」、同じ増村・若尾コンビの作品なら「華岡青州の妻」のほうが上だと思うものの、この映画の若尾文子の明るい魅力にはとにかく「やられてしまった」という感じですごくかわいい。そして映画としても増村監督らしいハイテンポな演出も見ていて心地よく、軽い仕上がりになっていて、とても見やすく楽しいものになっている。脇のミヤコ蝶々や南都雄二もいい味を出していて楽しいが、とにかく本作「青空娘」は、何度も同じことをいうようだが、若尾文子、若尾文子の魅力に尽きる映画だ。
[DVD(邦画)] 8点(2008-07-08 20:28:32)(良:2票)
69.  仁義なき戦い 完結篇 《ネタバレ》 
前作「頂上作戦」で一応の完結を見たかに見えたこのシリーズだが、四部作では中途半端と考えたのか(実際はヒットシリーズを手放すのが惜しかったのだろう。)急遽企画され製作された五作目にして広能昌三を主人公としたシリーズの完結篇。笠原和夫が脚本から降板してしまい、高田宏治が脚本を担当している。これまでのシリーズと比べてややこじんまりとしていて盛り上がりにも欠けるし、前作のラストから強引に続けてしまった感もやはりある。それに今回は広能(菅原文太)をはじめ、武田(小林旭)も山守(金子信雄)もあまり登場しないのだが、それでもなかなか面白かった。しかし、このシリーズ(に限ったことではないが)では役者の使い回しが目立つが、今回話を引っ張る若いヤクザを演じるのが北大路欣也というのは「広島死闘篇」の山中役が印象的だっただけに止めてほしかったかも。大友役も宍戸錠に代わっているが、千葉真一のようなインパクトはないものの、それほど違和感はない。(小林旭と宍戸錠の共演を見ていると日活映画を連想してしまい、裕次郎がどこからか出てくるのではと思ってしまったり。)一作目の青大将のようなキャラからみるみる出世していった槙原(田中邦衛)が殺されるのはキャラに愛着がわいていたのでやや寂しさを感じる。ラストの広能が引退を決意するシーンもこれで本当に終わりなんだと思うと感慨深いものがある。(エンドマークが「仁義なき戦い 完」というのも哀愁を感じさせていていい。)余談だが映画館の入り口で桜木健一演じるヤクザが殺されるシーンで出てくる藤純子のポスターを見て「緋牡丹博徒」シリーズが見てみたくなった。
[DVD(邦画)] 7点(2011-03-30 19:05:30)(良:2票)
70.  妻は告白する 《ネタバレ》 
なんといってもヒロインを演じる若尾文子。先週見た同じ増村保造監督の「青空娘」では明るく元気なヒロインを好演していたが、この作品では一転して夫殺しの容疑をかけられた妻という役を妖艶に演じていて、演技ももちろん素晴らしいのだが、川口浩を自宅に呼び寄せて、「夢を見るのよ。あなたの夢よ。」などと語りかけてくるシーンなどこの作品の若尾文子には何やら今までにない色気を感じる。とにかく容姿はもちろん声も妙に色っぽい。そこへきて監督は増村保造である。今年になって見た増村作品は「好色一代男」、「青空娘」。いずれも普通に楽しめるといった感じの作品だったが、この映画では若尾文子をロープで縛ったり、山で三人がザイル一本でつながれ宙吊りになっているシーンとかも妙にエロティックで増村監督の本領発揮といったところ。映画は法廷サスペンスとしての面白さを保ちつつも、それ以上に一人の男を愛してしまった女の情念を描ききった人間ドラマとして非常に深い作品になっていて、正直言ってここまで凄い映画は見たことあるだろうか。とくに、ラストの若尾文子が川口浩の勤める会社にびしょ濡れ&やつれた表情で現れるシーンは凄まじく、そして怖い。こんな凄い若尾文子の演技を見てしまうと、若尾文子の今まで見た出演作の中でこの滝川彩子という役をベストアクトに挙げたくなってしまう。「青空娘」のレビューで若尾文子の魅力に尽きる映画だと書いたけど、本作も若尾文子の「青空娘」とは違う魔性的な魅力あっての映画だと思うし、そんな若尾文子を撮る増村監督の撮り方もうまい。出来としても今まで見た増村作品の中では最高の映画ではないかと思う。まだこの二人のコンビ作は数本しか見ていないが、もっと見たくなってしまった。
[DVD(邦画)] 9点(2008-07-17 13:29:17)(良:2票)
71.  男たちの大和 YAMATO 《ネタバレ》 
出所した角川春樹の復帰第一作で、「北京原人」のあと、映画の仕事から干されていた佐藤純弥監督にとっても久々の新作となった大作戦争映画。公開当時は佐藤監督の映画を見るのに抵抗があったのと、角川春樹というのにも今さら感があったのだが、「新幹線大爆破」を見たあとなんとなく佐藤監督の映画を見るのに抵抗がなくなったことで、とりあえず見てみた。当初、脚本としてクレジットされていた野上龍雄がトラブルで降板し、脚本も佐藤監督一人によるものだが、脚本に関してトラブルがあったことをあまり感じることはなく、思ったよりはまともな(少なくとも「ローレライ」よりは)映画だった。しかし、レイテ沖海戦のシーンは描写があっさりしすぎており、戦闘シーンも大和乗組員たちの悲壮感があまり感じられず、実物大の大和のセットの迫力ともあいまっていかにも角川春樹らしいなあという思いのほうが先に立ってしまうし、最近の美術さんは「汚し」を知らないのかと思うほどいつまで経ってもセットがキレイなのは違和感がある。(そりゃ、撮影終わったあと、展示するのを考慮してるのかもしれないけど、リアリティーなさ過ぎ。)沈没シーンも東宝の「連合艦隊」のようなドラマチックさはない。生き残った神尾(仲代達矢)の回想形式で進んでいくが、合間合間に入る現代のシーンはけっこうくどく、とくに神尾が心臓発作を起こして倒れている間に若き日の神尾(松山ケンイチ)が戦死した戦友(内野謙太)の母(余貴美子)に会いにいく回想が流れるのは、意図としては分かるのだが、なんだか強引な気がするし、倒れた神尾を真貴子(鈴木京香)が介抱するのも、鈴木京香の見せ場をとりあえず作っておいたという感じしかしない。はっきり言って現代のシーンは最初と最後だけでよかったのではないかと思う。全体的に見て、さっきも書いたようにまともな反戦映画であることは感じられるが、やっぱりそれよりも先に角川春樹の映画だなというのが来てしまい、見終わってあまり残るものはないように感じるし、同じテーマの映画なら「連合艦隊」のほうが好きだな。白石加代子が神尾の母役で出演しているが、この人には金田一シリーズなどで怖いイメージがあり、出ている間もずっとそのイメージが抜けなかった。先週まで「緋牡丹博徒」シリーズを見ていたせいかどうかわからないが、寺島しのぶがお母さんの富司純子にちょっとだけ似て見えた。(富司純子のほうが好きだけど。)
[DVD(邦画)] 5点(2011-08-16 14:05:07)(良:2票)
72.  武士の一分
山田洋次監督の藤沢周平三部作完結篇。主演がキムタクということでかなり心配だった本作だが、いつもはテレビドラマやバラエティー番組などでかっこつけた印象のあるキムタクが全く違った一面を見せていて、アイドルではなくちゃんとした一俳優として素晴らしい演技をしているのが新鮮に思える。山田監督もこれまでの二本で相当こなれたようでキムタクに媚びることなく自分の作風を前面に押し出して夫婦愛を描いた傑作に仕上げているのはさすがと思う。キムタク以外の出演者で良かったのはなんといっても妻役の檀れい。初めて見る女優だったのだが、この3本の中のヒロイン役女優ではいちばん良かったと思う。キムタクの相手役女優といえば山口智子や常盤貴子、松たか子など既にテレビでお馴染みの人気女優がやることが多い中で、映画初出演の元宝塚女優というテレビではあまり知られてない女優を起用したのは正解だろう。笹野高史も大きな役はおそらく見たのは初めてと思うが、味のある抑えた演技でとても良かった。3本とも同じ点になったが、個人的には世間的評価の高い「たそがれ清兵衛」より「隠し剣 鬼の爪」や本作のほうが山田監督らしくて好きだな。
[DVD(邦画)] 8点(2007-10-11 07:01:48)(良:2票)
73.  天城越え(1983)
「砂の器」でもそうだったが、本作もサスペンス・ミステリーよりは人間ドラマに焦点が置かれた重厚で深みのある作品で、天城峠の美しいロケーションも素晴らしい。しかしなんといっても田中裕子。今まで何本か映画やドラマで見てるけど、こんなにも美しく、妖艶な魅力を放つ彼女を見るのは初めてな気がする。とくに犯行を自供したあと雨の中でびしょ濡れになるシーンはなんともいえない美しさでついウットリしてしまう。はっきり言ってこれなら主人公少年でなくてもこちらも惚れてしまいそうなくらいとにかく美しく、そして切ない。中盤の取り調べのシーンの演技もかなりの熱演で今まで田中裕子に対してこういう激しい演技をするというイメージがあまりなく、どちらかといえば少し病弱そうでおとなしい役が多いイメージが強かったため、かなり驚いた。そんな田中裕子にすっかり魅せられてしまったからか、ラストはやるせない気持ちになった。最初に書いたように重厚で深みのある映画で、映像も美しいのだが、やはり田中裕子の存在がこの映画の質をかなり高めているのは間違いないだろう。じゅうぶんに傑作といえる映画である。
[DVD(邦画)] 8点(2009-06-17 20:38:18)(良:2票)
74.  快盗ルビイ 《ネタバレ》 
「麻雀放浪記」に続く和田誠監督の第2作。「麻雀放浪記」では渋い男たちの世界がモノクロ画面の中にこれでもかと言わんばかりに展開されていたが、この映画は小泉今日子主演のアイドル映画。小泉今日子はさして好きな女優というわけではなく、アイドル時代の出演作を見るのも初めてだったため、ファン以外にはきつい映画かもしれないと思いながら見始めたが、なんともお洒落な映画でなかなか楽しめた。ルビイこと加藤留美を演じる小泉今日子がなんともかわいらしく、それでいて真田広之演じる下の階のダメ男をうまく自分の泥棒計画の相棒にしてしまうという小悪魔的な女を演じており、すごく魅力的だし、元々小悪魔的なイメージの強い人なのだが、そのイメージはおそらくこの映画からできたものなのではと思える部分もある。対する真田広之の三枚目のダメ男も思ったほど悪くなく、この二人のやりとりを見ているだけでもじゅうぶんに楽しめ、主演のふたりが「たとえばフォーエバー」を歌うシーン、窓から二人で星を見ているエンドロールが素敵だ。そのエンドロールでカーテンコールのように出演者がクレジットされる演出もいい。天本英世や名古屋章(二人とも「麻雀放浪記」にも脇で出ていたな。)といったチョイ出のわき役たちも光っている。映画としては特に傑作というわけではないが、サクッと見られる娯楽映画の王道的作品だろう。面白かった。
[DVD(邦画)] 7点(2012-01-21 13:52:41)(良:2票)
75.  あらくれ(1957) 《ネタバレ》 
とにかく荒々しい主人公を熱演する高峰秀子の演技に圧倒されてしまい、見終わった特にはなにかすごいものを見てしまったという気がした。とくに加東大介扮する夫との取っ組み合いの喧嘩のシーンはすごく、今まで成瀬巳喜男監督の映画何本か見てるけどここまでテンションの高いシーンのある作品はなかったし、ラスト近くでの主人公が夫が愛人と会っているところに乗り込んでくるシーンもものすごい。この二つのシーンは本当に今まで見た成瀬作品から考えれば異質であるし、青観さんが書かれてるように川島雄三監督の作品のような勢いを感じた。そんな中でもこの映画は運命に翻弄される一人の女の生き様を描いたドラマとしても見ごたえのある作品になっていると思うし、最初に書いたように荒々しく、強く、逞しいヒロインを演じる高峰秀子が圧倒的な存在感を放っており、演技力も抜群で素晴らしいの一言である。それから、最初の夫を演じる上原謙が陰険なダメ男というのも珍しい。いつもと印象が違いすぎてしばらく気がつかなかった。映画館のシーンは弁士がいたり、途中でフィルムが切れたりして舞台となった大正時代の時代性がよく出てる。劇中頻繁にかかるチンドン屋の音楽も印象的。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-06-23 00:16:40)(良:2票)
76.  私をスキーに連れてって 《ネタバレ》 
若大将シリーズすべて見終わって、シリーズのファンが多いというホイチョイ・プロダクションの本作を見てみる。確かにスキーを題材にしているのは「アルプスの若大将」の影響が大きいのだろうし、田中邦衛の役名が田沼雄一をもじったような役名だったり、チョイ役で中真千子が出演していたりして製作スタッフが本当に「若大将」シリーズのファンが多いんだなあということが分かる。しかし映画自体は今見るとものすごく時代を感じる代物になっていて、いかにもバブル景気の時代のヒット作という感じ。冒頭のスキーシーンが冗長に感じられるのを筆頭に、いかにスキーシーンをカッコよく撮るかに重点がおかれており、物語としてはあまり面白くないし、主題歌と挿入歌を担当するユーミンの曲も「恋人がサンタクロース」とか好きなんだけど、少しくどく感じてしまった。まあ全体的に見てフジテレビの映画らしい映画といえばそうで、この当時からフジテレビの映画はあまり今と変わり映えしないなあという印象が残った。
[DVD(邦画)] 4点(2012-03-20 02:03:23)(良:2票)
77.  風船
三橋達也のダメ男ぶりが「洲崎パラダイス 赤信号」よりパワーアップしていて見ていて本当に腹が立つし、二本柳寛の役柄や森雅之演じる主人公の妻もなんか嫌なキャラクターであるので見ててちょっと鬱な気分になるし、ストーリーも川島雄三監督の映画としては暗いと思うものの、そのような状況下にいても明るく健気に笑顔を振りまいている純真無垢な娘・珠子を演じている芦川いづみの存在があることによって、かなりその暗さが和らいでいる。はっきりいって彼女がいるといないとではこの映画の印象は全く違うものになっていただろう。川島監督の映画としては個人的には「洲崎パラダイス 赤信号」や「愛のお荷物」のほうが好みではあるが、芦川いづみに2点ほどプラスして8点。そうそう、劇中出てきた映画館でかかっていた「ビルマの竪琴」の予告編が楽屋オチ的で川島監督らしい。
[DVD(邦画)] 8点(2008-01-23 00:25:37)(良:2票)
78.  男はつらいよ 知床慕情
三船敏郎演じる無骨な獣医と寅さんの対比が面白い。ただ、三船と淡路恵子のロマンスに重点が置かれていて、寅さんの恋が霞んでしまってるように思えるのが少々残念だ。 しかし、主演ではない三船を初めて見たのがこの作品だっただけにとても印象に残り、また、黒澤明監督の「野良犬」で共演していた淡路恵子が共演しているというのも黒澤映画ファンにとっては嬉しかったりもするし、「野良犬」ではまだ女の子だった彼女が、堂々と三船の相手役を演じていてなにか感慨深いものがある。ちなみに淡路恵子はこの作品が一時引退して復帰した後の最初の映画とのことで、両方の作品で三船と共演しているのも偶然ではなくもうこれは山田洋次監督が「野良犬」を意識した上でのキャスティングとしか思えない。冒頭が夢ではなく、1作目を意識したかのような寅さんの語りと桜の映像で始まるオープニングも意表をついた感じで印象に残った。竹下景子がマドンナを演じる回では「口笛を吹く寅次郎」のほうが好きだが、この「知床慕情」もやはり後期シリーズの名作であり、三船の助演としての、そして晩年の代表作であることは間違いないと思う。最初は7点にしていたが、8点に変更だ。
[地上波(邦画)] 8点(2005-04-29 13:12:55)(良:2票)
79.  華岡青洲の妻
市川雷蔵が主役の映画かと思いきや、嫁(若尾文子)と姑(高峰秀子)のドロドロしたバトルが中心で、雷蔵はあくまでも重要な脇役という位置づけ。(一応、クレジットではトップだけど。)でもなかなか見応えのある内容で満足することができた。最初のシーンで手術を受ける患者のあまりにも痛そうな絶叫が忘れられない。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2005-08-08 23:31:28)(良:2票)
80.  銀河鉄道999
テレビシリーズは小学生の頃に再放送をなんとなく見てた程度(たぶんその後にある特撮ヒーロー番組の再放送が目当てでそのついでにときどき見てたんだと思う。)で、作品自体にそれほど思い入れがあるわけでないのだが、とりあえずBSでやっていた本作を見た。うーん、全体的なストーリーをよく知らないので、だいたいこんな話だというのは分かったが、話が駆け足気味に進むので、ドラマとして深みを感じられず、詰め込みすぎという印象。それに鉄郎ってテレビシリーズでは10歳くらいの子供だったのに年齢を少し引き上げているのは多分青春映画という線で本作を仕上げたかったんじゃないかな。さっき書いたようにテレビシリーズに思い入れはないのだが、はっきり言ってテレビシリーズと同じのほうが良かったような気がする。キャプテンハーロックなどの登場はファン向けのサービスかも知れないが、松本零士作品にそれほどなじみもないのでなんの感慨もない。ラストは感動的だけど、やっぱりテレビシリーズを毎回見た上で最終回のラストシーンを見たほうが感動できるだろう。そんなにつまらない映画でもなかったが、やはりテレビシリーズの方がもっと内容が濃いのだろうなあと思う。余談だが、メーテルを演じる池田昌子に加えてナレーションが城達也なので、見終わってなんだか「ローマの休日」の日本語吹き替え版が見たくなってしまった。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-08-14 13:27:26)(良:2票)

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