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81.  ゾンビ/ディレクターズカット完全版 《ネタバレ》 
~DAWN OF THE DEAD~死人の夜明け訳が一般的。“ザ・デッド”の始まり、兆し。ゾンビ=リビング・デッドにわざわざ“リビング”を付ける必要もないくらいゾンビが溢れる世界。新型コロナウイルスにわざわざ“新型ウイルス”って付けない感覚。または人間という種の“死”の始まり。  鑑賞環境の選択項目に『店先』って無いのね。…そりゃ無いか。 当時小学4年生、夏祭りの昼間に、友達3人とクーラーの効いたそうご電器へ。AV家電コーナーで垂れ流されてた映画を見た友人(ホラー平気)が「あ、ゾンビだ」と見出した。きっとビデオかLDの展示だと思う。まだホラー耐性の無い頃だったけど、見栄張って「全然怖くないね」と言いながら見続けた。 「この人殺されるんだよ」とかイチイチ教えてくれる友人は、鬱陶しいというより怖いシーンへの心構えが出来た。 思ったほど怖いシーンもなく、ショッピングセンターで好き勝手する主人公たちにワクワクしたし、彼らの安息をぶち壊した暴走族に怒りを覚えた。そしてゾンビの捕食シーンが怖く、友人は「あれ豚の内臓だよ」とか教えてくれたが、そんな裏事情より、いつかノロノロ歩くゾンビに襲われたらどうしようと、しばらく怖かった。片足の神父さんの記憶があるから、追い出されもせずほぼ全視聴したんだな。緩やかな時代だ。  中学に入り、ビデオをダビングしたものを擦り切れるくらい見た。最近DVDも買った。 私が見てたのは、オープニングからゴブリンの印象的なテーマソングが流れる米国劇場公開版だったようだ。今回見たBSのディレクターズ・カット版とは、音楽の入り方が微妙に違う。ダリオ・アルジェント監修版は、もしかしたら見たこと無いかもしれない。  赤いゴツゴツした不気味な壁から始まるオープニング。心臓の音のような不気味な音楽。説明もなくガヤガヤした現場。役に立たないテロップ、少ない情報、受け入れられない専門家の話、仕事を投げ出すスタッフ、不満を見せながらも働くスタッフ。同僚の「our responsibilities finish(俺たちの責任は果たしたよ)」で終わる音楽…DC版より米国版が最高。このドキュメンタリータッチな臨場感がたまらない。 場面は変わりSWAT指揮官の「your responsibilities!(お前たちの責任だぞ)」に続く。責任。ゾンビが街をウロウロしてる現状、仕事なんかしてる場合じゃない。誰の責任とか言ってる場合じゃないなのに、人間は争いと収束行為を続ける。 牧草地の州軍とハンターの場面も秀逸。記録映画のような撮り方。あの歌、誰のなんて曲だろう?DVDを見出すと、OPとここは何度もリピートしてしまう。 給油所でゾンビに襲われるスティーブン達。「逃げろ!」と言われても逃げないフラン。逃げられない、助けられない、助けを呼べない、叫べない。ただ、ゾンビと格闘するスティーブンと、自分に向かってくるゾンビを交互に見ることしか出来ない、この何も出来ない感が凄い上手い。この世界のゾンビが唸ってノロノロ歩くから出来たシーン。ゾンビに叫ばれて走られたら、こちらも走るし、叫んでしまう。この違い、この見事な世界観。 ショッピングセンターのゾンビを一掃後、悲しげな音楽が流れる。あちこちに散乱する動かないゾンビ。こうなっては人間の死体と変わらない死体の山。言葉が出ない主人公たち。ゾンビを建物外に棄てるのではなく、冷蔵庫に埋葬する心境。 一生観続ける映画なので、続きはまた、そのうち
[ビデオ(字幕)] 10点(2021-02-14 14:19:28)(良:1票)
82.  M:I-2 《ネタバレ》 
今回M:Iシリーズを一気観しようと思ったけど、どうしてもこの2は観る気が起きなくて。これほど、私が望んだものと、出来上がった作品に乖離があった作品も珍しいかも。 そもそも当時の多くの映画は、売れたら続編を制作するもので、今ほど続編制作やシリーズ化を前提にした作品は少なかったと思う。だけど“その作品が何故売れたか?”“どこがウケてヒットしたか?”はしっかり検証した上で、続編は制作されるものだと思う。  映画公開直前、トムとジョン・ウーが来日して、特にトムがハイテンションで、この作品の満足感を全身で表現していたのが記憶に残っている。あの名作の続編なんだし、きっと面白いに違いない。そう思って劇場に行きましたよ。 飛行機墜落からロック・クライミングまでは期待通りのものを観せてもらえたけど、大袈裟な指令内容の受け渡し、サングラス投げてから爆発のタイミングの格好良さで、ちょっと嫌な予感。こんな映画だったっけ?  普段は冗談も言うけど腕は確か。冷静な判断力で逆境を乗り越えるイーサン・ハント。だけど今作では余裕がありすぎて緊張感が感じられない。ヤバい状況でもヘラヘラしてる感じで緊張感なし。ロン毛になったのも影響して、前作で追い詰められた表情をしていたイーサンと同じ人物に思えない。 車が有り得ない軌道でクルクル回ったり、白い鳩が主人公を横切って飛んだり、宙を舞うほどの勢いのバイクから空中衝突したり、ジョン・ウー監督のカラーが出すぎてて受け付けなかった。前作に満足した人は、今作のような超人アクションが観たかったわけではないハズだ。 前作のどういう所がウケて大ヒットしたのか、リサーチした結果がコレなのか? トム様「カッコいい俺を観て!」ウー様「ど派手な俺のアクション映画を観て!」わかった、わかった。 わかったからこういうのは、ミッション・インポッシブルではなく、他の作品でやってほしかったわ。
[映画館(字幕)] 3点(2022-04-10 21:57:39)(良:1票)
83.  ドクトル・ジバゴ(1965) 《ネタバレ》 
オープニングの油絵のような白樺林とベタ塗りの空。 小さい頃に連れて行ってもらった老舗デパートの渡り廊下の壁か、親戚の集まりで一度だけ行った大型温泉ホテルのロビーか… ラーラのテーマを聞きながらエンドレスで観てられるわ。  葬列シーンの山でかっっ!!あれがウラル山脈(違うらしい)?山吹色の花と灰緑色の草、地表を覆い尽くす雪と氷、ガラスの雪の結晶、タマネギみたいな屋根、赤と黒の装甲列車。どっからどう観てもイメージ通りなソ連、ソ連、ソ連!(※世代的にロシアよりソ連。) 現地ロケをせずにこれだけソ連感を出せるのが凄い。広大な自然を堪能出来て、ソ連版『北の国から』な感じも味わえる。 兵役に行くパーシャの服を引っ張る赤ちゃん。ハラリと落ちるテーブルの花びら。歴史的超大作となると端々まで役を演じるんだな。  タイトルは~Doctor Zhivago~ジバゴ先生。 平たく言えば、全く詩を書かない詩人ユーリと美少女ラーラの不倫物語だけど、ちょっとコマロフスキーに注目したい。 コマロフスキーは半分冗談で17歳の小娘ラーラにベールを掛ける。 なんかあまりに美しかったんでヤバいと思ったんだろう。この時の苦笑いが彼の良い人っぽさを出していた。 パーティの日、母が風邪を引き、コマロフスキーは『欠席しよう』と、ラーラは『看病する』と言うが、母の強い頼みで二人で行くことになった。 当初コマロフスキーにそんな気はなかったんだろう。帰りの馬車でコマロフスキーの顔にチラチラと掛かる怪しい影。対象的にラーラの顔はハッキリ灯りが。 ユーリは戦地でラーラと過ごし、不倫関係を持ちかける。この時ユーリの顔に掛かる怪しい影。目だけギラギラ。ラーラの顔には日が当たっている。 ただの不倫と言えばそれまでだけど、コマロフスキーもユーリも、ラーラの天性の魔性に取り憑かれたんだと思う。もちろん彼女の美しさに罪はない。 ユーリとラーラ親子を逃がそうとするコマロフスキー。逃げなかったユーリの代わりに、生涯父親としてトーニャを育てた。良い人すぎるぞコマロフスキー。  機会がなかっただけで、エフグラフ・ジバゴ将軍も彼女に取り憑かれてトーニャ探しに協力した。『淡い恋心』と言っていたけど… ん?ユーリの妻も、ユーリとラーラの娘も、どっちもトーニャなんだな。好きな人の奥さんの名前つけたんだな。 唯一ラーラを妻にしたパーシャはどうだったか?彼はラーラより、ボリシェヴィキに取り憑かれていた。 ところでユリアティンの男どもが、なんであんな美女を放っておくか謎だったけど、たぶんパーシャを捕まえるために家を見張っていた(当時の)KGBとかが、追い返してたんだろう。  魔性の女ラーラは強制収容所で死んだ。番号で処理され、記録は紛失。ユーリの美しい詩も、ソ連では発売禁止。 社会主義国家に女性の美しさや、詩の美しさは不必要なんだろう。まさにパーシャ≠ストレルニコフそのものだ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-04-12 23:07:00)(良:1票)
84.  バンビ、ゴジラに会う 《ネタバレ》 
なんか私もレビューしたくなったので…  そもそもの邦訳が“会う”だし、“バンビ対ゴジラ”だったりしたみたいだし、意味がよく解らないと思う。 ~Bambi Meets Godzilla~バンビ、ゴジラに出逢う。 タイトル崩すと~B Meets G~に出来る。  ~Boy Meets Girl~少年、少女に出逢う。からタイトルとネタ持ってきたのかも? 少年が、少女に出逢って、恋に落ちたり冒険したり、物語が動いてゆく類型のことなんだけど、 主人公が少年でなくバンビで、相手が少女でなくゴジラだと、その後の展開も無く踏まれて終わり。ってお話だねぇきっと。 最後ゴジラの足が進んでいくことなく、鋭利な爪が力なくフニュウ~ってなる。なぜならここで全ての物語が終わったから。 映画としてみたら、ゴジラ登場のインパクトだけでなく、残りの上映時間どうしてくれるんだ?って余韻で、二段オチなのかも。  1分半の映画のレビュー書くのに9分も掛かったよ…
[インターネット(字幕)] 5点(2021-08-12 14:32:07)(良:1票)
85.  許されざる者(1992) 《ネタバレ》 
~Unforgiven~許されていない。 実際に顔を傷付けられたのはデライラだが、償いの馬を受け取るのは主人のスキニーだ。もちろんデライラが声高に復讐を望んだわけではない。無関係のデイビーは罪滅ぼしに名馬を渡そうとしていたし、デライラもそこまで怨んではいなかったと思う。だけど復讐の対象は2人共だ。罪を償ったのに、なぜこの2人は、特にデイビーまで許されなかったのか。 実際の事件から尾ひれがついて、娼婦はアチコチ切り刻まれたことになっていて、悪逆非道のカウボーイに怒りを覚えるマニー。 子供のために金が必要なマニーは、実際の(そこまで重症ではない)デライラを見ても疑問をぶつけない。もう金のためにカウボーイを殺すことに決めている。 過去の罪の許しを請うマニー。死を怖がり、死の国と妻の悪夢にうなされていることをネッドに告白する。非道の限りを尽くしてきたマニーは、妻との生活で改心したが、その妻とは死別、酒も女もやらず、人里離れて真面目な農夫をしているが、悪夢は彼を許していない。 マニーは一見無関係の酒場の主人スキニーを撃ち殺す。 友人の死体を店先で見世物にすることは許されることではない。例えスキニーが銃を持っていなくても。 何が罪なのか、誰が罰を与えるのか、どんな罰を受ければ罪は許されるのか。色々と考えさせられる映画だ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-02-13 21:08:00)(良:1票)
86.  サムライ(1967) 《ネタバレ》 
とにかく黙って立ってるだけでカッコいい。油絵のような背景と相まって何ともアランとしててドロンとなる。 武士道から一文を引用しているのに、何故タイトルは侍にしたのかな。 コステロの殺し屋としての腕前がどれ程かは、作中だけではちょっと解りかねるが、凄腕なんだろう。 ゴツい鍵束を持ち歩いて車を盗むコステロ…アレはやはり、車の修理屋から借りるんだろうかね?当時のシトロエンは今の日本ではプリウスみたいにどこにでもあった車らしい。あのオヤジは表向きはシトロエン専門の修理屋で、裏で殺しの仲介していると。で、直すついでに合鍵を作ってたのかな?それかシトロエンの鍵パターンが全部であれしか無いとか?フランス人は合理的だって言うし… 暗殺後を目撃されたコステロ。そりゃ、サイレンサーも付けない銃で撃っちゃ… その後盗んだ車を捨ててタクシー移動。でもアリバイは作ってても暗殺時の格好のままアッサリ捕まり思いっきり怪しまれるコステロ。 適当に捨てた血の付いた紙袋も警察の手に渡り、部屋に盗聴器まで付けられるコステロ。 その盗聴器を泳がしておかずスイッチ切っちゃうコステロ。 メトロで尾行されて走って逃げるコステロ…そうこの時のガムのお姉さんがやたらと格好良かった。 今のパリのメトロに居ても全然違和感無いくらい美しい。 修理屋のオヤジから『これが最後だ』と言われたコステロ…単に拳銃はもう無いという意味か、危なっかしいコステロの今後を心配してくれたのか? コステロの実力が見えてきたところで、彼は自分を殺そうとした依頼人を殺す。最後の依頼は依頼人本人の愛人であり、依頼人を守るために嘘の証言までした目撃者のヴァレリー殺し。足がつかないように殺し屋の自分だけでなく、愛人まで殺そうとする依頼人。 武士道とは死ぬことと見つけたり。凄腕の殺し屋がミスをしてから、自分の死に場所を見つけるまでの物語か。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-01-26 01:57:30)(良:1票)
87.  勝手にしやがれ 《ネタバレ》 
~À bout de souffle~息が続かない、息切れ。内容と結びつきにくいタイトルだ。 車を盗んで白バイに追われ、警官を撃ってしまうミシェル。セフレから金を盗み、元カノの部屋に勝手に入ってイチャイチャ。 何とも場当たり的でいい加減な主人公だ。でもこういう男はモテる。…まぁ映画を見てない女性にミシェルのマネをしても、ウザがられるだけだろうけど。 仕事に勉強に頑張ってるインテリっぽいパトリシアと、ヤりたい感アリアリな、ちょっと幼稚なミシェル。会話も噛み合ってるんだかズレてるんだか。 パトリシアとのイチャラブが延々と続き、見ていてなんかもう勝手にしろよ…って気持ちを邦題にしたんだろうか? だけどカメラワークや音楽の入り方は印象的で美しく、ミシェルの見せ方は格好良く、パトリシアの仕草は可愛いのだ。 パトリシアがエスカレーターに乗るシーンがやけに心に残ってる。何でかはわからないけど。 そうそう、灰皿あるんだから、使えよ。 タイトルは知っていた。ヌーベルバーグも何となく知っていたが、作品自体観るのは今回初めて。どんなレビューを書けば良いのか難しい作品だった。 映画を料理に例えると、この映画は料理全体の完成度より、使われた調味料の新しさが話題になったのかもしれない。 胡椒、ターメリック、マヨネーズ、パクチー…後年どの家庭にもある調味料。 今ではもう当たり前に口にしている味なので衝撃は受けないけど、最初に世の中に登場した時は凄かったんだろうな…なんて。 そんな感じで観たけど、万が一こういうのが映画の主流になっていたら、私は映画について行かなかったかも。 イメージビデオっぽくもあって、間接照明の部屋とかで垂れ流してたらお洒落そう。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-03-06 23:58:55)(良:1票)
88.  男はつらいよ 《ネタバレ》 
寅さんはテレビドラマの最後にハブに噛まれて死んでしまった。って、バラエティ番組で観た記憶がある。そんな主人公が銀幕に蘇り、ギネスに載る長寿シリーズ化するとは、当時のスタッフたちも、ファンたちも、思っても見なかったことだろう。 本作はまだ長期シリーズ化は考えていなかったため、一本完結のまとまりの良さを感じる。…といっても、シリーズの各作品の関連性・連続性なんて、殆ど感じない作品だけど。寅さんは私も、数作品程度は摘んで観てみたことはあるけど、全話CSで放送されるこの機会に、通して観てみようと思い立った次第です。さぁ最後まで完走できるかな?  1作目にして寅さんの基本設定が全部入ってるように思う。寅が帰ってくる。トラブル起こして出ていく。マドンナに恋して気分良く戻ってくる。フラれる。出ていく。更に柴又のレギュラーキャラは、本作で殆ど全員出てくるんじゃないかな?まさか1作目からさくらが結婚して、満男まで産まれるとは思わなかった。このまんま50作突っ走ったのか。やっぱりすごい作品だわ。 1作目は他作品と違って、寅が20年ぶりに柴又に帰ってくる。寅さんと言えば『生まれも育ちも東京葛飾柴又』…って本人言ってたけど、14歳で出ていって以来の帰省だろうから、地方の方が長くなってるぞ?  さくらが凄く可愛い。私が観たのは'80年代以降のシリーズだったから、本作の若くて美しいさくらに驚いた。たぬき顔で茶髪で膝上スカートで脚が綺麗で身体細くて。キーパンチャーなんてモダンな仕事してて。キツネ目でいい加減で馬鹿でヤクザな寅と、兄妹なのが信じられない。 本作は冬子がマドンナ・ポジションだけど、真のマドンナはさくらじゃないかな。20年ぶりにやっと会えたら、結婚して離れ離れ。本作以降いつも隣りにいるけど、永遠に距離が縮まることのないシリーズの陰のマドンナ。そんなさくらにスポットが当たったのが、まさかの1作目だったとは。  大企業のBGからお見合い、結婚、出産と、1作の間に大人の階段を登っていくさくらに対し、35歳にもなって麦わら帽子に釣竿持って冬子のところに遊びに行く子供みたいな寅。『生まれも育ちも東京葛飾柴又』あぁ、寅次郎って20年前から、14歳の頃から時間が止まっているんだな。 父との大喧嘩から家を飛び出し、テキ屋稼業で生計を立て、舎弟の登の面倒を見て、可愛い妹は嫁に行き…『男はつらいよ』の意味が、マドンナにフラれるから以外の意味も、しっかり持たせてある1作目でした。 一年後、喧嘩別れ同然に故郷に帰したハズの登と一緒にテキ屋をしている寅次郎にほっこり。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-05-24 23:48:27)(良:1票)
89.  時をかける少女(1983) 《ネタバレ》 
初見、淡々と映画を見て「ふぅぅん。大林監督の、当時の角川アイドル映画だね」と、それ以上広がらない感想を持った。 角川春樹が原田知世に“この映画をプレゼントして芸能界を引退させたい”という想い。大林宣彦の“プライベート・フィルムとして好きにやりたい”という想いが、筒井康隆の原作(未読だからどれだけ弄ったか解らないけど)と、上手い具合にマリアージュしていた…って事は、後から調べて解ったこと。 …こういう話がパンフレットを買わなくても、検索すれば誰でも見られるんだから、便利な世の中だわ。  そのへんを踏まえて再視聴。土曜日の実験室。深町くんが芳山和子の記憶を消して、未来に帰る話をしている。 引退するアイドルのプライベートフィルムとしてみると、芳山くんを角川春樹(&原田知世のファン)。深町くんを引退する原田知世。そこには出てこない吾郎ちゃんを渡辺典子辺り(本来、事務所としてプッシュしなきゃいけないアイドル)として観ると、二人の会話からして、まぁ面白い。 芳山(角川)と吾郎(角川アイドル)が積み重ねてきた記憶(映画の主演ワク)を、訳あって深町(原田)がちょっとお借りして、お互いに好きになってしまった。 時をかける少女は、原田知世主演だから出来た映画。彼女でなければ、このワクは他のアイドルの違う原作の映画になっていただろう。 数年後のある日、偶然に再会する二人。深町(原田=一般人)は相手が芳山(角川=業界人)だと気づくが、芳山は気が付かない。あれ?どこかで…ってなるけど、別々の方向に歩き出す。引退から数年後、角川は原田とこんな再会が出来れば幸せかな?と思ったんだろう。 そこからあの楽しいエンディング。 「あなた わたしのもとから♪」主題歌(の歌詞)もベストマッチ。この映画と原田知世への愛が溢れた素晴らしいエンディング。  こんな映画が撮れるのは、大林監督だけだと思う。 モノクロとカラーの合成、アニメーションと実写の融合、コマ撮り、興味がある斬新な技術はどんどん入れてくる姿勢。大学の映研が楽しんで作った、とても出来の良い自主制作映画みたい。 ハリウッドのSF大作なんてお金無いから作れないけど、大林監督の技法なら頑張れば出来そうだ。 「あれシクラメンぽいけど、ラベンダーって言えばラベンダーに見えるんだ!(※調べたら造花でした)」 どう撮るかは工夫次第。そう思って映画制作を諦めなかった、未来の映画監督のタマゴも多かったんじゃないかな? でも数年後の老夫婦の会話に、そこそこの時間を割いているところとかが、やっぱり素人とプロの違い、本物の監督のハードルの高さを魅せてくれている。素晴らしい監督だ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-06-05 12:33:08)(良:1票)
90.  バトル・ロワイアル 特別編 《ネタバレ》 
~『バトル・ロワイアル』のつづき~  この時のたけしはまだ若くギラギラしていて、出てくるだけで存在感が凄い。原作はあくまで生徒たちが主役で、教師はここまで物語に絡んでこなかったと思う(途中までしか読んでない)けど、映画では主役級の役割を持って登場している。 まるでセリフを喋るように、感情的に話す生徒たち(もちろん演技指導で)と違い、普段の話し方の北野武がまた怖い。桐山役の安藤政信が自らセリフを一切排除した理由も、もしかしたら邦画のセリフっぽいわざとらしさが嫌いだったのかもしれない。  キタノが自分を殺させようとする中川に掛ける言葉「中川、頑張れ」が、自殺した七原の父が書いた「秋也ガンバレ!!」とオーバーラップ(※このキタノのセリフのシーンに、七原の父のシーンを流してしまう親切さが余計。だけど同世代の子供に観せたいという意図があったろうから、敢えてだろうけど)する。 自分が死ぬ。となった時、当然生きるよう努力すると思う。それが無理だと悟った時、冷静であれば、生きられない自分の代わりに、特定の誰かに何かを託したくなるのかもしれない。クサイ話だけど、生きた証を誰かに託す行為。 子供たちも、42人のうち41人が死ぬルールから、自分が生きる可能性が限りなく低いなか、僅か15年の人生の知恵を絞り、生きる努力、生きない決断を自分で選んでいく。子供たちの死に様をみせる映画から見えてくる、子供たちの3日間の生き様。 GPSを持った杉村が、片思いの琴弾に好きだと伝えたくて奔走する。誤って自分を撃った琴弾に「逃げろ」という気持ち。好きな子に気持ちを伝えることに残りの命を使う気持ち。そんな事ができる子供たちだから見えてくる、どこかに忖度のない、残りの人生の使い方。彼らより長いこれからの人生を私がどう生きるか、とても考えさせられた。 最後に「走れ。」とメッセージ。詰め込み過ぎと言うか自己満足と言うか、邦画らしいダサさがまだ残ってる。  今回買ったDVDが特別篇と書いてあって、追加シーンがあるんだそうだ。観たのもう20年近く前だし、公開版とどこが違うのか、調べないと解らなかったけど、物語に深みを持たせる回想シーンとかが追加されているようだ。殺し合い中の他の生徒の動きとかは特に追加がなかったのは残念だけど、バスケのシーンも相馬の過去も、悪くなかったと思う。  当時あれだけセンセーショナルだったこの作品だけど、今だったら数あるシチュエーションの一つに過ぎない。この作品以降、必然性もなく人の命を使った、殺人ゲーム的な作品がたくさん出てきた。多くの作品が『私だったら“このゲームを”どう生き残るか?』って、今置かれている理不尽な状況からの生還を考える程度に過ぎない。 「人生はゲームです」今置かれている特異な状況だけに収まらず、これまでの生き様まで踏み込んだこの作品は、先駆者にして稀有な存在に思える。
[DVD(邦画)] 8点(2022-01-16 16:05:04)(良:1票)
91.  飢餓海峡 《ネタバレ》 
W106方式という撮影技法のためか、映像が荒く製作年よりも古い作品に見える。 この方式の影響か解らないけど、軽快で躍動感があるカメラワークが面白い。 トラックが到着して、そこから警官隊がワラワラ降りてきて、そのまま舟に乗り込んで出港までを勢いよく撮り流す。 東京の下町の人混み。そこで客引きをして働く八重。警官が捕物を始め、逃げるタチンボ達。柱に隠れてやり過ごす八重。飲み屋街に逃げる頃にはカメラは屋根の上。後ろを振り返りながら逃げる八重、ゴミゴミした飲み屋街…ここまでワンカット。 こんななめらかに動きのある映像、当時どうやって撮ったんだろう?  イタコの話は訛りが強くてよく解らないけど「(三途の川を渡ってしまえば)我が戻る道は一筋もござらい」のように言っている。八重のマネ「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」。イタコを知らない多吉は、その言葉を自分の運命と重ねたんだろう。多吉にとって津軽海峡が三途の川。 共犯の二人は多吉が殺したんだと思う。 帰り際「今度いつ来るの?」と言う八重、戻る道がない多吉。お代の50円とは別に渡した34,000円は、殺した二人への供養の意味もあったと思う。犯した罪を善行で償おうとしたんだろう。その後も善行を重ね続ける。臆病だから罪を認める勇気もない。 樽見と名を変え、自分なりに罪を償って、余生を過ごしていたところに八重が来る。この時の樽見の落ち着き具合は、見ていて多吉とは別人じゃないかと錯覚させる。忘れたい過去の自分を10年も探していた女。衝動的な殺人。 10年前の自供は、もしものときのために前々から用意していた筋書きだろう。 何とか助かる道を模索する樽見に弓坂が見せる舟の灰。善行で罪を償ったつもりでいた自分を、10年も追ってきた人間がここにもいた。 「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」 八重殺しを自供することも、隠し通すこともしない、出来ない。 現世でも地獄でもない三途の川、津軽海峡に身を投げる多吉。臆病な善人らしい最後かもしれない。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2021-05-28 11:13:29)(良:1票)
92.  アラビアのロレンス 完全版 《ネタバレ》 
ロレンスの葬儀、語る人それぞれで一致しない人物像。スエズ運河の対岸でバイクの男が問い掛ける「お前は何者だ!?」 イギリス人でありながら、エル・オレンスという名を与えられ、1人だけの部族としてトーブに身を包む。カメラを向けられるとヒラリと舞ってみせる。自分のやることがほぼ上手く行って、神か英雄の気分だろうか、相当なナルシストなんだろう。 ガシムを処刑し流砂でダウドを死なせたことを「楽しんだ」と告白してしまう。アカバから休まる暇が無かったためもあるけど、この時すでにかなり精神的に追い詰められていたから出た発言に思える。オスマン帝国軍に捕まり、自信喪失してアッサリ転属を願い出るところは、理想よりも恐ろしい現実を見せつけられたんだろう。かと思えばモトの任務にもアッサリ戻るところから、行動に一貫性がない。子供のような人物だ。 村の虐殺に感化され、感情のまま皆殺し命令を出したり、ダマスカスを占領したけど、アラブ民族会議をまとめられなかったり。カリスマ性はあっても、軍人としても政治家としても一流とは言えないロレンス。ダマスカス侵攻中、まだ熟れてない葡萄を口にしたロレンス。上手く機能しないアラブ民族会議にバラバラに散るアラブ部族。“もし実れば見事な果実だった”は、ロレンス自身のツメの甘さ、未熟さを表すかのようだ。アラブのためと言いつつ、自分が誰かに認められるための戦いだったように思える。結局、あれだけの活躍をしたのに、イギリスにもファイサルにも利用され、終いには砂漠に居場所がなく、すごすごと本国に帰るしか無いロレンスが寂しい。だけど未だに国家としてまとまっていないアラブ諸部族を考えると、ロレンスの能力に関わらず、西洋とは文化が違いすぎるために、イギリスやフランスがアラブを国家というワクにハメること自体が、そもそもの間違いなんだとしか思えない。  この映像凄い。これは音楽とマッチして、とっても良いシーンだな。…とか思ったところがそのまんまウィキに書かれていて、なんかリーン監督の思うツボって感じでちょっと悔しい。 マッチの火を吹き消すと画面に広がる曙色の朝焼け。蜃気楼から現れるアリ。砂漠のアカバ戦で役に立たない大砲とその先の海。夕暮れの海岸をラクダで進むロレンス。想像を超える砂漠の世界の美しさ。映画という文化が伝える自然のダイナミズム。おそらく誰が観ても圧倒される映像美。オリジナリティのない表現で悔しいけど、これが映画だ。とても長い映画だけど、しばらくするとまた観たくなる魅力がある。 コロナの影響はもちろん、中東の不安定な政局を考えると、今後しばらくは、本物のこの風景を安全に見ることは難しいかもしれない。生きているうちに一度は見てみたいな。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-09 00:52:02)(良:1票)
93.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
“SINGIN' IN THE RAIN”邦題まま。1929年にはこの楽曲はあったらしい。ライバル映画の『ジャズ・シンガー』が1927年だから、細かく言えば、ややフライング気味?ジーン・ケリーにドナルド・オコナー凄いですね。フレッド・アステアの流れるようなダンスに比べ、パワフルでスピーディ。人間離れした動きに圧倒されました。  コズモのソロ『奴らを笑わせろ』なんてまるでジャッキー・チェンのスタントアクションのよう。計算された動きが笑いに繋がる。 3人共演の『グッド・モーニング』息ピッタリの完璧な動きの影に猛特訓アリ。わずか3ヶ月ほどの練習でこのダンスしてるデビー・レイノルズも凄い。 どれも極力全身が映る(動きを隠すアップに逃げない)撮影で、ワンカットが結構長く、演者には笑顔が要求されるから、これは大変だ。  そしてこの映画のための曲と言える『雨に唄えば』は圧巻。水たまりを踏みつけ、激しく動きつつ、止まるところでピタッと止まる。雨の中上を向くドンの笑顔。たぶんスタジオで大雨を降らせながらも、ケリーの顔には極力水が掛からないよう(雨粒で顔が歪まないよう)工夫してるな。  時代背景がサイレントからトーキー映画に移行する時代。ライバル社は『ジャズ・シンガー』というトーキーのヒット作を作ってきた。 声が独特すぎるリナのように、サイレントでは名女優でも、時代を乗り越えるのが難しい女優もいる。 またキャシーのように舞台女優(たぶんだけど、嘘や見栄でなく売れない舞台女優なんだろう)の傍ら、サプライズダンサーで生活費を稼ぐ女優もいる。 新しい時代は雨のように苦難をもたらすけど、捉えようによっては雨すら楽しく出来る。どんな逆境だってチャンスにすることは出来る。 そんな、観ていて明るくなれる楽しい映画です。
[DVD(字幕)] 8点(2023-09-05 15:43:47)(良:1票)
94.  北北西に進路を取れ 《ネタバレ》 
~North by Northwest~…北北西じゃないんだよ。北の大都市ニューヨークからイリノイ州、サウスダコタ州と、どんどん北西へ移動しているので、『北部から北西部に向かって移動しますよ。』的な?ノースウエスト航空がスポンサーだから説は面白い。 オープニングの緑バックと白線がビルに変わる画。国連ビルから逃げるロジャーをビルの上から撮る画。だだっ広い農道で帽子の男と向かい合うロジャー。印象的なカットが結構ある。 ちょっとしか出てこないロジャーのお母さん。50ドルのお小遣いでホテルの鍵を取りに行くとことか、殺し屋相手にエレベーター中を笑いに包むなんて素敵だ。再び殺し屋が来た時、お母さんが使った“笑いを起こして目立てば逃げられる”を、オークション会場で実践するのも親子らしくて良い。このお母さんの活躍をもっと見たかった。 旅のさなかに出会う美女ケンドールの大人の落ち着き。特にマッチの火に手を添えるところがセクシー。 最後の舞台がラシュモア山、観光地ものの2時間サスペンスっぽい。今回久しぶりに見て、こんなにラシュモア山のシーン長かったっけ?って思った。 この映画で観光地としての魅力は出し切った感があるせいか、ラシュモア山が舞台の映画はしばらく無かったと思う。 落ちそうなケンドールの手を掴むロジャーの唸り声が、急に優しい声と笑顔に変わるエンディングが印象深くて好き。
[地上波(吹替)] 7点(2021-06-24 23:13:20)(良:1票)
95.  男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花<特別篇> 《ネタバレ》 
シリーズ49作目…と呼ぶのは、どうかなぁと思ってしまう内容でした。 25作目が丸々入って、前と後ろに追加映像が入ってます。観る前に“CGの寅さんが出る”と知っていたので、ポリゴンでカックカクの寅が出てくるのかな?…なんて、ちょっと過度な期待をしてしまいました。 作品内容は25作目そのまんまなので、内容のレビューは『~寅次郎ハイビスカスの花~』をご覧頂くとして、南国の楽園な雰囲気が、まだ記憶に新しい『紅の花』と結構カブってます。しかしまた、どうして48作品の中から『ハイビスカス』が選ばれたんでしょう? その答えは、舞台が沖縄だったから。ってのは、どうでしょうか?  本作公開の2年前、沖縄で米兵による痛ましい事件が起きました。ここ最近の寅さんは、就職難だったり震災ボランティアだったりと、時代とリンクした話題にも触れるようになっていたので、この当時もし寅が元気だったら、沖縄を励ましに行っていたんじゃないか?なんて思ったりもします。 そして本作公開の3年後には沖縄サミットが控えていて、 守礼門が描かれた2000円札も発行されました。この作品の前後、日本中から沖縄が注目されていたんですね。…それと“寅は最後、沖縄でハブに噛まれて死んでしまう”ってTV版最終回ネタにも引っ掛けてるのかもしれません。ハイ単なる妄想です。  まぁ何にせよ、コレを49作目と呼ぶのは抵抗を感じます。あと金儲けの匂いも感じてしまいます。当時各家庭にはビデオデッキが普及していたし、過去を振り返りたければレンタルとかで幾らでも観られたんです。あの程度の追加映像を前面に出してお金取ろうなんて、駄目だと思います。 あくまでシリーズ25作目の<特別篇>ですよ。という立ち位置を明言して、入場無料か、せいぜい特別料金1000円とかで公開してほしかったです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2024-04-24 22:33:56)(良:1票)
96.  ウエストワールド 《ネタバレ》 
実際には行けない世界を体験したい。人に銃を撃ちたい。綺麗な女を抱きたい。その世界のヒーローになり、しかも安全に楽しみたい。人間のワガママな欲求を満たす、大人のアミューズメントパークが舞台だ。保安官になる男が現代のメガネそのままとか、客側のルールは案外ゆるい。 ウエスタンでは本物の銃が使える。中世と古代ローマは本物の剣だけど、どんな安全装置だろう?第二次大戦などの戦場が無いのは、アメリカが戦争ばかりしてたからだろうか。 撃たれたロボットは血が流れて死ぬが、死んだロボットはデロスの係員が回収。西部の街にワゴン車が来て回収する姿は、リアルと言うかシュールと言うか。 ロボットはセンサーによる死んだフリではなく、本当に死ぬ=故障するんだろう、修理をするが騙し騙しの修理なのがリアルで、まるで赤字続きの鉄道会社のようだ。それが最近、中央ユニットの故障が連続発生するのは、新型コロナの感染のように未知で、人間が作ったものに関わらず、後手後手対応になるのがリアル。しかしヘビや馬やニワトリまでもロボットでは、コストが掛かりすぎるだろうとは思う。 ユル・ブリンナー扮するガンマンが三度も登場するのは、安全だから笑える展開だけど、故障中ならそりゃ怖い。自分の安全を保証する管理室が全滅している絶望感は見事。目が銀色に光るガンマンは追跡を楽しんでいるようにも思える。感熱センサーを使っての無言の追跡、しつこさは、後のターミネーターやプレデター他、多くの作品に影響を与えたんだろう。 エンドロールは緑文字で、当時のコンピューターっぽさを出したのか?陽気なウエスタンミュージックからの不気味なギターは、ピーターの悪夢を再現しているようで見事。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-03-13 09:33:30)(良:1票)
97.  モダン・タイムス 《ネタバレ》 
~Modern Times~現代。いま。  なんてシンプルで美しいタイトルだろう。 いま、社会で起きていることを面白可笑しくドタバタコメディにしていて、それが80年以上経った現代でも共感できることが多々あるから、スゴイ。 家畜のように会社へ向かう人の波と、誰でも出来る単純な流れ作業。効率を上げるための無理なスピードアップ。 無駄を減らすための無駄だらけの食卓マシンが面白い。マイペースな口拭きマシンがイイ。  職業病でボルトっぽいものを何でもネジる男。 同僚のチクビをネジって、美人秘書のお尻のボタンを追いかけての、胸にボタンのあるオバサン登場。 どうなるか言わなくても解る見事な三段落ち。  働きすぎてノイローゼになったら病院=社会に戻すためのメンテナンス。 誤認逮捕されて刑務所=社会にとって間違った考えを正すための罰。 パンを盗んで捕まる娘=刑務所怖い。自ら無銭飲食で捕まる男=刑務所快適。同じ逮捕なのに考え方のギャップ。 社会風刺という固っ苦しいテーマにニヤリ…でなく、単純に面白く観られた。  『口角上げて、笑って。そうそう。』夜明けにすべてを失った二人が、希望を胸に歩き出す。スマイルの美しさ。 いつの時代も、いま、必要なことは、笑うこと。人間社会がある限り、普遍で不変のシンプルなメッセージ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-05-28 12:28:16)(良:1票)
98.  きっと、うまくいく 《ネタバレ》 
-3 Idiots- “三バカ”。 3馬鹿って言い回しが日本独自のものらしいね。洋画ショート・サーキットとかで三ばか大将って出てきたけど、-The Three Stooges-で、どっちかって言うと“三ボケ”。 ルームメイトといたずら。憎たらしい学長。イヤミな同級生。ヒロインとの恋愛。試験、就職。決めセリフ「うまーく いーく」学園コメディとしてホントよく出来ている。上級生とのトラブル、アタマの硬い先生との口論なんかを、ランチョーがスカッと解決する展開は万国共通の面白さ。  それでもやっぱり日本とインド。文化の違いは当然だけど、いちばん違和感を感じるのは、チャトルのからかい方。ウガンダ育ちで共通語が不自由なのをからかうところ。学ぶことより成績優遇なインドの教育現場の問題提起をしているけど、言葉が不自由で学年2位の成績は、単純に凄いんじゃないかな? “ゴーカン”については、う~ん…だけど、日本もついこの前の'90年代、ギャグ漫画でエイズを笑いのネタにしてた事を考えると、目くじら立てるところでもないって気もして…ブラックユーモアって難しい。 自殺の多さも気になるところで、ロボの死の衝撃。ラージュは助かるの解ってたけど、それでも1本の映画にあれだけ自殺が出てくるのって、やっぱりインドならではの社会問題なんだろうな。後半ウイルス校長が良い人になる所、無重力ボールペンと鉛筆の話はとても好き。だけどこの、自殺に追い込んだ張本人ということが引っ掛かってしまうのが残念。 ヒンドゥー語の不自由な学生と、イヤミな同級生。憎たらしい校長と、自殺に追い込んだ張本人。は、登場人物を分けてほしかったかも?  ランチョーが別人で第2部に続くのは、とっても良かったし期待した。単なるコメディだった学生時代から、後半は手の混んだミステリーになるのか?って。でも思ったのと違って、あ、そういうことかって結末だったけど。トラブル→解決→次のトラブル…の連続で約3時間は、そのまんまコメディ映画2本ぶんのボリュームで、どうしても長く感じてしまう。2本の映画というより、二夜連続のドラマ総集編をいっぺんに観るような感覚。 ランチョーの秘密はわかったけど、どうしても“何も言わずに姿を消した理由”は引っ掛かるところ。彼女も親友も放り出して姿を消すなんて、愛着や未練はなかったのかな?って。ドラマの引っ張り方としてはアリだけど、1本の映画としてなら、もうひと説明欲しかったところ。 まぁ再会したときの袋叩き。ランチョーの今の生活は、万国共通のスッキリ具合。高評価も納得です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-06 15:43:53)(良:1票)
99.  その男、凶暴につき 《ネタバレ》 
この映画の僅か3年前(え?たった3年前だったの?)、『たけしの挑戦状』というファミコンソフトが出ました。不良サラリーマンが海の向こうに宝探しに行く内容だったけど、ゲームを進めるには難易度が高すぎて、カラオケしたりパチンコしたりと町をブラブラするだけのゲームになってました。警官やヤクザはもちろん、無関係な市民や奥さん、子供まで、殴れます。 今思うと、たけしは“日常の中の暴力”を、ファミコンという新しい娯楽で表現しようとしたのかもしれません。ゲームバランスは滅茶苦茶だったけど、案外たけしの考えた通りの再現度だったのかもしれません。  『コドモには見せるな……』のキャッチコピーを覚えています。無抵抗な浮浪者を遊び半分で痛めつけ殺してしまう少年たち。橋の上から船のオジサンに空き缶を投げて「バカヤロー!」と叫ぶ子どもたち。自分を捕まえようとする刑事と取っ組み合いになり、バットで頭を殴る容疑者。自供させるために何発ものビンタ。日常生活でその辺にありそうな、街の片隅で偶然目にしてしまいそうな、目を背けたくなる暴力描写。『まさか自分がこんな目に遭うとは…』そんな被害者の声が聞こえてきそうな、爽快なアクション映画と違って、痛みを感じる映画でした。  暴力を振るう側が相手に対し躊躇してないこと。相手の受ける痛みを一切感じてないこと。この一方的な無感情の暴力が、観ている私に痛みを感じさせるんだと思います。また恨みや憎しみで暴力を振るっている訳じゃないのも恐怖です。そして暴力が行われるまでと、行われた後の“間”が怖い。痛いのは一瞬なんだろうけど、その前後がずっと痛い。もし私が現場を目の当たりにしてしまったら、きっと観なかったことにして通り過ぎようとするでしょう。そんな観たくもない暴力を延々と見てる気分で、何かとても生々しく感じました。 我妻と清弘。仕事仲間からも距離を置かれる2人。無機質な倉庫に指す光と深い影がとても印象的。無言で撃ち合う2人。正義も悪も無い、2人の狂気がぶつかり合う最後の対決は、延々と暴力を積み重ねた本作のクライマックスとして相応しい結末でした。
[地上波(邦画)] 8点(2024-05-14 00:53:05)(良:1票)
100.  スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃 《ネタバレ》 
思ってたのと違うEP1の出来に、制作側がファンの納得する作品を作ろうと努力したと思われる本作。 劇場予告から期待が高まる。やっぱりC-3POはあのカタチでないと。ボバ・フェットが出てくるのか(ボバのお父さんだった)。前作のレトロ感のあったメカから、70年代風SFメカにシフトしてきた。だんだんSWらしくなってきた。って言ったら変かな。  ジャワのサンドクローラーが2台…彼らにも歴史があるんだなぁ。青い牛乳…タトゥイーンと言えばだ。サイズミック・チャージの破壊力…おぉ、新しい。多脚歩行メカ…コレ出てくるとSWって感じがする。白いトルーパー…味方側なんだ、へぇぇ~。ジェダイの集団戦…おぉ!アツい!!。呆気ないジャンゴ・フェットの最後…そういやボバも呆気なかったな。ダースモールといい、強そうな敵が呆気ないのがSWらしいかも?などなど、旧作のファンが喜びそうな展開が嬉しい。パドメ暗殺のカーチェイスで、オビ「遅いぞ!」アナキン「良いのがなくて、オープンタイプで早いヤツ」ハンとレイアがしそうな会話も、これこそSWって思えた。そして何より空飛ぶR2と、素早くて強いヨーダには驚いた。新3部作に期待してたのって、こういうのだったんだと思う。 前作はポッドレースで今回は闘技場。近年公開されたグラディエーターの影響もあるだろうけど、クォ・ヴァディスやスパルタカスといった往年の名画がモトなんだと思う。  アナキン「不安だろうけどR2が付いているよ」のあと、パドメの「アハハ!」が可愛い。幼い頃から女王として自由のなかったパドメの、少女らしい笑い声。 でもこのアナキンとパドメの恋愛描写が何とも不評だった。草原を転げ回ってキャッキャ・ウフフって中学生か!って。ハンとレイアがサバサバした今風の恋愛をしていたのに対し、アナキンとパドメはシェイクスピアの戯曲のような恋愛、敢えて古典的な恋愛として描こうとした結果だと考える。別に恋愛悲劇の代名詞タイタニックがやりたかったんじゃなく、ロミオとジュリエットみたいなベタな恋愛描写を入れることに、意味があるんだと。 EP1ではあまりピンとこなかったけど、EP2を観て強く感じたことは、この新3部作は旧3部作から見た昔話というポジションで描かれている。旧3部作は現代(と言っても70年代後半)で、私たちも現代人。あくまで旧3部作を基準として、その過去と、その未来を描くのが、SW9作品の構成なんじゃないかと。だから“prequel trilogy(前日譚・三部作)”なんだと。昔話だからメカがレトロなのはもちろん、アナキンとパドメの恋愛も、私たちから見たら古風な描写なんだろうと、私はそう思ったわけです。 この物語の結末は変わらない。タトゥイーンでアナキンが夕焼けに照らされるシルエットがダースベイダーっぽかったりとかは、避けられない結末を表しているようで悲しくも感じる。 前作の不評の要因、ジャージャーの出番を激減させたのは良い判断。そしてパドメに代わり、パルパティーンに非常時特権を与える動議を出すという大役。出てくる度に何かやらかすジャージャーは、ついには共和制をぶち壊すキッカケを作ってしまった。ってのは、なかなか上手な使い方。
[映画館(字幕)] 8点(2021-09-02 18:07:55)(良:1票)

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