Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順123
投稿日付順123
変更日付順123
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  キングスマン
古典へのリスペクトと現代風のオリジナリティー、そしてユーモアとスリルの完全なる調和。 普段はダラダラと長文レビューを書く私ですが、本作についてはコネる理屈も思い浮かばないほど夢中になって鑑賞しました。 最高!!以上!
[映画館(字幕)] 10点(2015-09-11 21:06:03)(良:1票)
2.  96時間
普段はセガールがやってるアクションを演技派のリーアム・ニーソンにやらせたという、本当にそれだけの映画なのですが、この意外な組み合わせが実に良い味を出しています。物語は直球勝負で何の捻りもなく、セガール辺りが主演していれば誰からも見向きもされない程度の話です。主人公の思惑通りに話がぽんぽんと進む、ご都合主義の塊のようなアクション映画なのですが、これを演技派俳優にやらせることで映画全体に妙な説得力が漂い、話の弱点がうまくカバーされています。アクション映画がある種の説得力を持てば、もう怖いものなしです。見ているこちらは、ひたすら突き進む主人公を応援し、悪人をバタバタとなぎ倒していく様に拍手喝采していればよし。かなり熱くなりながら見入ってしまいました。ここまでシンプルに燃えさせるアクション映画は久しぶりです。この脚本にこの俳優、ベッソンのヒットメーカーとしての慧眼には脱帽なのです。。。ベッソンは話を複雑にしすぎることもせず、ニーソンを得たからといってドラマを過多にすることもなく、派手すぎる見せ場も加えず、この手の物語に調度良い温度感を保っています。この判断力も、実は凄いのではないでしょうか。振り返ってみれば、本作は枝葉をつけようと思えばいくらでも付けられる話でした。ニーソンの親子関係然り、警察とヤクザの癒着関係然り。しかしそういった「おいしい部分」にはわき目もふらず、ひたすらにエモーショナルなアクションを追求した本作の禁欲的な姿勢も、大いに評価すべきでしょう。とにかく、アクション映画が好きな方には絶対におすすめの一本です。ここ数年で最高のアクション映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2010-06-10 21:50:52)(良:4票)
3.  キング・コング(2005)
ピーター・ジャクソン作品におけるVFXは他の監督のものとは異質な印象を受けます。作り物の映像をいかにリアルに見せるかがVFXの勝負所ですが、この人の作品のVFXはCG&ミニチュア丸出し。カメラは巨大建造物をすり抜け、恐竜の肩越しに人間を見下ろし、自由に空を飛びますが、この見せ方では絶対にリアルに見えません(エアフォース・ワンの飛行機大破シーンにおいて、カメラがありえない動きをしたためにCG丸出しになったのと同じ理屈)。とはいえVFXに精通している監督さんですから、恐らく意図的にこれをやっているはず。つまりハナからリアルに見せる気がないのです。ではこの人の映画がダメなのかと言うとその逆で、CGのひとつの使い道を実践しているように思います。CGはリアルな映像を作ることがひとつの使い道ですが、同時に監督の脳内にある映像を自由にビジュアル化するツールでもあるはず。指輪物語では本の挿絵や読者の脳内にしかなかったイメージを見事に映像化しました。決してリアルには見えませんでしたが、イメージの映像化という意味では完璧でした。そしてキングコングでは、伝統的な特撮の魅力を復活させています。昔ながらの特撮映画は、いかにも作り物な映像が味だったりします。ストップモーションのモンスターはチラチラとぎこちない動きでリアリティのかけらもありませんが、そんなキャラが人間臭い動きをすることに愛着を覚え、ミニチュア丸出しであっても大破壊に興奮しました。それは「良いものを見せてもらった」というサービス精神に対する感動も多かったように思います。ピーター・ジャクソンはCGを本物っぽく見せることではなく、怪獣映画に必要なイメージをどう伝えるかに重きを置きました。JJ・エイブラムスがクローバーフィールドにおいて絶対に避けた「神の視点(現実的にありえない俯瞰ショット)」をあえて選択しているのです。怪獣映画においてはリアルに見えることは決して重要ではなく、大量破壊をもっとも見えやすい場所から見せるサービス精神の方が大事だとわかっているようです。また、コングの仕草や表情、巨大昆虫達のいやらしい動きなど、モンスターに味のある動作をさせることで独特の存在感を与えている点もストップモーションの良さを継承しています。本流の大作映画の作りではないため批判的な意見もあるようですが、伝統的なモンスター映画の継承者という意味では完璧な作品だったと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2009-01-03 19:00:18)(良:3票)
4.  金融腐蝕列島[呪縛]
90年代後半は『新世紀エヴァンゲリオン』や『踊る大捜査線』など大人の仕事をリアリティとエンタメのバランスをとりながら見せるという作品が随分と流行っていましたが、その路線を徹底的に突き詰めたのが本作でした。 ヒーロー然とした登場人物はいないし、展開にも突飛な部分はなく、現実に発生した総会屋利益供与事件の裏側では本当にこういうドラマがあったのかもしれないというリアリティを誇っていますが、同時に映画全体はアクション映画並みのテンションの高さを維持しており、本来は面白みのない題材をこれだけ面白く仕上げた監督の手腕には感服しました。 また、日本映画にありがちなもっさりとした人間ドラマに突入することなく、企業の危機管理問題に終始して2時間をやりきってみせた姿勢も気持ちよかったです。 私自身がこの映画の世代の人間ではないので一部によく分からない用語があったりもしたのですが、細かい部分を理解していなくても全体の流れには付いてこられるよう、物語の基本構造は単純に作られています。深く理解したい人にも、軽く楽しみたい人にも応えられる構造となっているという点でも、本作の出来は驚異的であると感じました。
[インターネット(邦画)] 8点(2018-06-15 18:12:34)
5.  機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル
ファーストを始めとした宇宙世紀もののアニメはすべて視聴済。本作の原作コミックは未読というステータスでの鑑賞です。 プリクェルのコツとは、いかに正編の要素を多く残すかという点にあると私は考えています。例えばスターウォーズEP1,2が否定されて3が絶賛されたという現象についても、ファンはEP4~6で自分たちが愛した世界の再見を望んでいたのに対して、ルーカスは世界観を広げることに固執し、結果、EP4と年代設定が近いEP3以外はファンの眼鏡に叶わなかったということが理由として考えられます。 そこに来て本作ですが、オリジナルキャラクターやオリジナル設定はほとんど挿入されず、ファーストにあった要素をうまく繋げることで物語を構成しており、ファンサービスとしては非常に良くできています。赤い彗星と黒い三連星が連邦軍の艦隊を相手に大暴れをしてモビルスーツ戦時代の幕開けを宣言した冒頭から、まさにファンが見たかった内容となっています。 少年期のシャアも、ファンが連想する通りの個性となっています。口数は少なく不要な話はしないが、必要な場面では自分を殺そうとする大人相手であっても堂々と主張をするという無駄のない性格。これぞシャアって感じです。ザビ家とラル家の対立にしても、彼らの行く末を知っているからこそ楽しめる内容となっており、本当によくできているなと感心させられました。 見せ場の数は少ないものの、ドラマだけで十分に楽しめる素晴らしい作品だったと思います。
[インターネット(邦画)] 8点(2017-08-05 23:57:48)
6.  キング・オブ・コメディ(1982)
かなり荒唐無稽なお話でありながら、主人公が常軌を逸していく過程の描写が極めて丁寧で説得力があるので、きちんと見られてしまうという点には感心しました。誰にでもあるちょっとした心の闇にスポットを当て、観客に「分かる分かる」と思わせながらダイナミックなドラマへと導いていく。この手のイタイ映画を作らせると、スコセッシは世界一だと思います。。。 妄想の世界での対話を繰り返すうちに、その対象と古くからの友人であるかのような錯覚に陥ってしまう。アイドルや歌手のファンには結構ありがちなことではないでしょうか。私の周りには、「俺はゆずの友達だ」と主張する知り合いがいます。また、自分自身の成功を妄想するということは誰でもやっていることであり、高校時代の恩師が現れて「君を見くびっていてすまなかった」と謝る場面などは、特にリアルだと感じました。恥ずかしながら、私自身も似たような妄想を繰り返していた時期がありましたから。自分は社会から正当な評価を受けていないという被害者意識と、自分を見下している人間達にいつか吠え面かかせてやるという復讐心、こうしたものの描写が実によくできているのです。主人公を『ミザリー』のような完全にイっちゃった人とするのではなく、ささやかな欲望や虚栄心、現実逃避癖を持つ小市民としたことで、非常に間口の広い映画になったと思います。。。 『ゴッドファーザーPARTⅡ』 や『レイジング・ブル』の重厚な演技から一転して、コメディの才能も見せつけたデ・ニーロの演技力の高さには心底驚かされました。キャリアで初とも言えるコメディ演技を完璧にやりきっていると同時に、カリスマ俳優が小市民になりきってしまうというカメレオンぶり。ヴィト・コルレオーネを演じた人ですよ。困った奴なんだけど、同時に哀れみも感じさせられる。この引き出しの多さには脱帽するしかありませんでした。
[DVD(字幕)] 8点(2014-02-15 15:54:43)
7.  キャプテン・フィリップス
ポール・グリーングラスの代表作と言えばジェイソン・ボーンシリーズですが、実はこの人はジャーナリスト出身であり、その経歴を活かして『ブラディ・サンデー』や『ユナイテッド93』といった実録物でも才能を示しています。本作もその系譜に連なる作品なのですが、同時に『ボーン・アルティメイタム』や『グリーン・ゾーン』で得た娯楽アクションの手法も存分に活かされており、圧倒的な迫力と臨場感で観客をその現場に立ち会わせるという空前絶後のスリラーとして仕上がっています。序盤で登場人物の簡単な紹介が終わると映画は一気に本編に入り、クライマックスまで一瞬の緩みもなくフルスロットルで突っ走るという絶倫ぶり。海賊の乗る救命艇と彼らが目指すソマリア海岸、そしてそれを追う米駆逐艦の位置関係、救出作戦の進行具合など、現場の概要や事件の推移といった情報を簡潔に整理して観客へ伝える技術は超一流であり、観客の側が意識せずとも物語が自然と頭に飛び込んでくるという親切な作りになっている点でも感心しました。また、海賊の側にも同情すべき背景があること、彼らが主人公に対して乱暴するのも、受容可能な量を遥かに超えるストレスを受けたためであること等、海賊達が絶対悪として描かれていないことも好印象でした。撮影にあたって米海軍の全面協力を得られているという事実が示す通り、本作がアメリカ万歳映画であることは間違いないのですが、それでも、安易な勧善懲悪という図式は避けて、多面的な見方ができる社会派映画として作り上げた点は大いに評価できます。とにかくこの映画、貶す点が何ひとつ見つからない程よくできています。。。 ここしばらくは大物臭が漂い、『キャスト・アウェイ』以降は骨身を削るような演技からも遠ざかっていたトム・ハンクスですが、そんな彼が本作ではかなり体を張っています。彼ほどのクラスの俳優がここまでやるのかと驚いた程であり、久々のオスカーノミネートもありうるのではないかと思いました。凄いと言えば、主人公と対峙する海賊達も同様であり、アメリカ在住のソマリア人から選ばれた演技経験ゼロのど素人でありながら、ハンクスと堂々と渡り合ってみせています。
[映画館(字幕)] 8点(2013-12-01 00:39:44)
8.  キック・アス
前半部分は「スパイダーマン」をなぞり、「現実はマンガほど簡単じゃないよ」とヒーローものの解体作業を行うのですが、クライマックスでは見事なまでのカタルシスを炸裂させてニューヒーロー誕生を高らかに宣言するというニクイ構成となっています。「ギャラクシー・クエスト」とまったく同じ構成ではありますが、ボンクラ男子の妄想を肯定するこの手の映画は、やはり嫌いになれません。マシュー・ヴォーンの演出は冴えまくっていて、キックアス処刑ライブにおけるヒットガール登場のタイミングや、「マトリックス」と「ウォンテッド」を合わせて「リベリオン」風味にしたようなラストの討ち入りなどは、アクション映画として完璧だったと思います。また、残酷描写から逃げていない点でも本作は評価できます。描写が極めて残酷であること、特に小学生が銃を握って大人と戦うという点において本作は厳しい批判を受けましたが、アメコミを解体する作業において、これらの点は決して外してはいけない部分でした。スパイダーマンが悪との戦いをはじめたのは高校生の頃だったし、ザ・フラッシュの相棒であるキッド・フラッシュは小学生、日本にも10代のヒーローは大勢います。そんなヒーローものの設定を煮詰めていくと、武装した子供が犯罪者を殺して回っているという異常な図式が自ずと浮かんできます。アメコミの解体作業をやるのであればその異常性を観客に認識させるという描写は絶対に必要だったわけですが、マシュー・ヴォーンは批判を覚悟でその描写をきっちりとやりきったのです。。。さらに、この手のオタク映画では音楽のセンスも重要となってきますが(オタク臭さ全開の「パルプ・フィクション」がカッコイイ映画となりえたのは、タランティーノの選曲センスによるところが大きい)、その点でも本作は効果的な選曲をしてきます。前述の「ギャラクシー・クエスト」がオタク系の人を喜ばせるだけの映画に留まったのに対して、本作はカッコイイ選曲を披露したことで、オタク以外の人をも取り込むセンスの良い映画になりました。知的でありながら優れたエンターテイメントであり、オタク臭いのにセンスが良い本作は、非常に完成度の高い作品であると言えます。文句の付けどころがないほど良く出来ています。
[DVD(吹替)] 8点(2012-01-16 01:15:52)
9.  キラー・インサイド・ミー 《ネタバレ》 
怖かった!アメリカでは評価されなかったようですが、これはとんでもない傑作だと思います。現実の報道等を見るに、この世界には殺人という行為を生来の欲求として楽しむ人間がある一定数存在するようです。そんな人間の心理・行動を鋭く描いた、恐らく唯一の映画が本作であると思います。それはキューブリックやスコセッシらが描いてきた狂気とは一味も二味も違ったもので、当然のこととして淡々と殺人を行う異様な空気が映画全体を席巻。婚約者を愛し、彼女と一緒にいるとこの上ない開放感が得られると語りながら、もう一方では「この女は絶対に殺さねばならない。もう笑ってしまうくらいにそう思う」とサラっと言いのけ、実際に無惨な殺し方で婚約者を惨殺する主人公ルー。自分を愛してくれた娼婦、すべてを受け入れてくれた婚約者、息子のようにかわいがってくれた上司、兄貴のように慕ってくれた街の若者、それらすべての人々を死に追いやり、その死を鼻で笑うという空前絶後の鬼畜ぶりには戦慄しました。街では好青年として振舞っているものの、明らかに周囲の人間を見下し、調子を合わせているだけという冷淡さが滲み出たキャラクターに、ケイシー・アフレックが完全にハマっています。「ジェシー・ジェームズの暗殺」でも感じたのですが、この人の腐りきった瞳は本当に素晴らしい。レクター博士やアントン・シガーに並ぶ怪演を堪能できます。ルーの中には一応、マトモな人格も存在しているのですが、殺人者としての人格との間に対立や葛藤がまったくないことが、この映画をより陰惨なものとしています。呵責も後悔もなく、平然と殺人を犯してしまうのですから。唯一の救いはラスト。ビル・プルマンが登場して以降はルーの脳内の物語なのですが(keijiさんのレビューでそれに気付きました)、「場違いな畑に生えた草は雑草なんだ」というビル・プルマンの説得によって殺人者としての人格はこの社会において不要であることを自覚し、ルーはその人格を葬り去ります。大事な人をすべて失った後では、もう遅いのですが。。。なお、ラストに流れる”Shame on you”を歌っているスペード・クーリーは、娘が見ている前で妻を殴り殺した人物のようです。まぁ何から何まで陰惨な映画ですね。
[DVD(字幕)] 8点(2011-12-30 15:27:20)(良:2票)
10.  ギャング・オブ・ニューヨーク 《ネタバレ》 
一度目は「つまんないなぁ」って思ったんですけど、2度目の鑑賞は楽しめました。よく作りこまれてる映画なので、2度3度見る方が絶対に楽しめるんですね。この映画はなかなかに意欲的で、ヤクザの抗争にリンクさせて激動のアメリカ史が描かれています。「ゴッドファーザー」サーガは時代とともに変わりゆくマフィアの姿を描いていましたが、ここではギャングが時代そのものとして描かれます。時代に翻弄される映画は数あれど、時代そのものを描く映画は少ないように思います。脚本の出来がよく、個人である各キャラクターの行動とアメリカ史の推移が違和感なくシンクロしています。さらにすべてのエピソードがクライマックスへ向けて収斂しており、本当によくまとまっています。クライマックス、混沌が支配する街でフツフツと堆積していた不満がついに爆発し、全市を席巻する大暴動へと発展。暴動の中でのネイティブズ(建国以来のアメリカ人)VS移民(新たなアメリカ人)の果し合いは、まさに世代交代の瞬間です。ここでのビルの死は古いアメリカ人の敗退、そして新しいアメリカ人の勝利を意味しており、それは移民が主役となって成長してゆくその後のアメリカの象徴でもあります。同時に、ここでの果し合いは政府による砲撃で中断しますが、それはギャングによる支配の終わりを意味します。それまでのNYはギャングの支配下にありました。ギャングこそが法律であり、政治家ですらギャングと共存関係にありました。しかしついに政府の力が全市に及び、彼らによる支配は終わりを迎えたのです。ネイティブズとギャングという2つの時代の終焉をこの映画は描いていたのです。そしてラストでは、ビル・ザ・ブッチャーとヴァロン神父という過去の遺物の墓標が見守る前で、NYは現在へと成長をしていきます。そしてテーマ曲「The Hands That Built America」と来るわけですから、もう震えましたね。そんな立派な映画なわけですけど、問題点は主人公のアムステルダムにあると思います。彼は状況に流されて右往左往してるだけで、どうにも行動が弱い。別にディカプリオがというわけでなく、描写自体が弱いんです。このあたりがスコセッシの限界というか、彼はキレた人とかキ○ガイとか、要するに傍若無人なまでに我が道を行く人を描かせるとピカイチなんですけど、一方で迷い悩む人間を描くのはあまり得意ではないようで。
8点(2004-09-10 02:51:17)(良:1票)
11.  危険な情事 《ネタバレ》 
1987年に公開されたすべての映画の中で世界興収がもっとも高かった作品なのですが、R指定の不倫映画が世界的な大ヒット作になるなど前代未聞の事態。公開当時の空気を知らない私としては「これは一体どうしたことか」と思ったのですが、実際に本編を鑑賞してみると、確かに本作はそれだけの実力のある作品だと感じました。 セクシャルな題材を得意とするエイドリアン・ラインの演出は絶好調。ダンとアレックスの出会いから不倫に至るまでの序盤の流れは王道のラブストーリーとして撮られているし、アレックスがちょっとずつ面倒臭くなっていく中盤のいや~な緊張感や、アレックスが完全に常軌を逸した終盤のショック描写など、そのパートごとに必要な色をきちっと出せています。 また、ストーカーが社会問題化する前に制作された作品ながら、アレックスの人となりもよく出来ています。基本的には常識をわきまえた普通の人間なのだが、ダンに関係することとなると感情がすべての理性的な判断を押さえ込んでしまい、自分自身でも制御が利かなくなってしまう。そして、そんな不安定な状態でしばらくいる内に理性が感情に従属するようになり、衝動的な嫌がらせが計画的な犯行へと転じていくという症状の経過が実にリアルなのです。ドラマはやや荒唐無稽な着地点を迎えるものの、アレックスのキャラクターの作りが良いおかげでリアリティが棄損する一歩手前のところで踏みとどまっているし、その描写の緻密さから社会啓蒙的な意味合いもある作品だと感じました。 難を言えば、性欲の塊にしか見えないマイケル・ダグラスでは、家庭一筋の善良な男に魔が差したという話が成立していないことでしょうか。本作は、遊び慣れていない男が遊び相手のチョイスを間違え、遊び方を間違え(避妊を怠ったり、言っちゃいけない場面で相手を本気にさせる言葉を言ったり)、また遊びの終わらせ方を間違えてドツボにハマる物語でもあり、そのためには真面目一徹みたいなイメージの俳優の方がドラマを具現化できたはずなのですが、マイケル・ダグラスではその点が表現できていません。実は本作はブライアン・デ・パルマが監督する予定だったものの、デ・パルマはダグラスを外さなければ自分が降りると主張。プロデューサーはダグラスを支持して監督がエイドリアン・ラインに交代したという経緯があるのですが、確かにデ・パルマの見立ての方が正しかったように思います。
[インターネット(字幕)] 7点(2018-06-18 18:44:42)
12.  キングコング: 髑髏島の巨神
IMAX 3Dにて鑑賞。そもそも迫力のある作品である上に、要所要所で3D効果も上がっており、3D料金を払う価値はあったと思います。 愛が深すぎてゴッドファーザー並みの上映時間となったピージャク版の反省からか(ちなみにエクステンデッド版はゴッドファーザーPART2並み)、本作は怪獣大戦争に終始した作風が潔い限りでした。主要登場人物の顔と名前を一致させたところですぐにスカルアイランド入りする無駄の無さに加え、毎回恒例の原住民による白人女性捧げもの儀式も割愛されており、島に入ったアメリカ人をいきなりコングが迎えるという思い切ったショートカットがなされています。 しかも、1933年より一貫してコングにとって因縁の相手であり続けた空飛ぶ兵器を複数相手にして、いとも簡単に勝利するという対戦カードの組み方には興奮させられました。「今回のコングのパワーは桁違いです」ということを、序盤の時点で宣言しているのです。そこから先はひたすら怪獣が暴れるだけという本編ですが、実際には2時間近くある上映時間が体感上では90分程度に感じられたので、それだけダレ場なく集中できる作品だったのだろうと思います。 コングは過去最高の男前ぶり。島の治安維持に積極的に関与し、弱きを助ける正義の怪獣という立ち位置が明確にされており、その千両役者ぶりがまぶしいほどです。とはいえ、哺乳類に対する肩入れが強く、爬虫類系を無闇に敵視しているきらいがあるため、この辺りの気風から、同じく番長気質のゴジラと衝突することになるのではと推測しています。 上記の通り娯楽に特化したことの引き換えに、ドラマ性はほぼ皆無といってもいい内容であり、さらには、理由はよくわからないがひたすら狂っていて場を荒らし続けるサミュエルさんとか、何のために存在しているのか分からず、かつ、最後まで何の活躍もしないのに画面の片隅に写り続ける謎の中国人キャストとか、最近の悪しきハリウッド大作あるあるが何の工夫もなく本編にぶち込まれており、人間が写っている部分は何から何まで雑です。言葉を話さないという設定を与えられてモブに徹した原住民に至っては、どれだけ滅茶苦茶な端折り方をされてるんだよと笑ってしまいました。
[映画館(字幕)] 7点(2017-03-26 00:24:30)
13.  機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- 《ネタバレ》 
テレビシリーズは全話鑑賞済です。 好評なテレビシリーズに対して、おおむね不評なこの劇場版ですが、私はどちらも楽しめました。宇宙をメインの舞台としたシリーズだけに、地球外生命体との接触はいつか行き着いたであろう領域であり、本作はついにそこに手を出してしまっただけのこと。「さすがにこれをガンダムと言えるのか」との批判はごもっともですが、ガンダムという媒体の限界に迫ったという点で、本作の試みは好意的に評価してもいいのではないかと思います。 テレビシリーズの時点でも凄かった戦闘シーンは、劇場版にてさらに磨きがかかり、怒涛の見せ場の連続には目を奪われました。クライマックスレベルの見せ場が延々続く演出の絶倫ぶりは必見なのです。また、テレビシリーズでは敵味方に分かれて戦ってきたキャラクター達がオール地球で結束して事に当たるという展開には、分かっていても燃えさせられます。特に、好敵手だったグラハム・エーカーが刹那のために道を作る場面の興奮は只事ではなく、この数十秒のやりとりのためにテレビシリーズ全50話があったのではないかと思わせるほどでした。
[DVD(邦画)] 7点(2016-06-13 15:53:35)
14.  機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛
3部作完結篇はMS戦の連続。ボリューム・テンションともに凄まじいレベルに達した見せ場が連続し、息つく暇がありません。さらには新作カットの分量も多く、3部作中、もっとも気合を入れて作られていることが素人目にも分かりました。例を挙げると、コロニーレーザーの内部構造がより精緻に描写されたことから、主要登場人物が勢揃いしての大乱戦の戦況や位置関係が分かりやすくなっており、誰が何をしているのかがイマイチ掴めず没入感の薄かったテレビ版と比較して、戦闘シーンのテンションは格段に上がっています。これぞリメイクの恩恵です。 また、エピソードのリストラがしばしば問題視される当3部作ですが、本作ではかなり的確な取捨選択がなされています。テレビ版ではウザくて仕方なかったカツ・コバヤシやロザミア・バダム関係のエピソードが大幅に切られており、特にロザミアについては居ないも同然の扱いで、これによりストレスなく鑑賞できるようになりました。これもまたリメイクの恩恵ですね。 そして、これまた賛否の分かれるクライマックスですが、これはこれで良かったのではないかと思います。ただし、「新訳Ζ」を謳った割には改変が少なく、もっと凄い展開が見られると勝手に期待していた私としては、多少の落胆もありましたが。
[DVD(邦画)] 7点(2015-07-10 17:19:54)
15.  機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者
リメイクではなく「新訳Ζ」。つまり、オリジナルありきの映画版ですという立ち位置をコンセプトの段階より明確にした作品であり、ゆえに、テレビシリーズを踏まえていない観客には徹底的に不親切な作りとなっています。驚いたのは冒頭、カミーユがジェリドに殴りかかるという、すべての発端となった事件をカットしていること。「この時点で分からない人は、この映画を見ても仕方ないよ」と、監督が冒頭で宣言しているのです。以降の展開も恐ろしい程の駆け足で、かつ登場人物の紹介も一切なく、テレビ版を見ていない人は論外としても、見たことはあっても記憶が曖昧な人では、ついて行くのはちょっと難しいのではというレベルです。そもそも、50話を費やしてもよく分からなかった『Ζ』を90分×3部作でやるには相当な無理があるわけで、観客の方で脳内補完をしてもらうことが作品の前提条件となっているようです。 では、本作の存在価値は何かというと、新規作画により大幅にパワーアップしたMS戦をタップリと堪能できることであり、「こういう戦闘を見たかった!」と満足できるクォリティの見せ場が次々と展開されます。本作のクライマックス、アッシマー隊との追撃戦のスピード感やテンションには凄まじいものがあり、これだけでも見る価値は充分にありました。また、Ζはシリーズ中でも特にMSのバリエーションが充実した作品であり、21世紀の技術でエゥーゴやティターンズのMSが続々と登場するだけでもワクワクしました。 1988年の『逆襲のシャア』でも感じたのですが、富野監督は音響へのこだわりも相当なものです。テレビ版のモノラルから5.1チャンネルにパワーアップした音響は素晴らしい迫力だったし、ガンダムMk-Ⅱのヘッドバルカンの効果音を変更するなど、細かい部分にまで気の利いた演出には感心させられました。賛否両論ある本作ですが、最新技術でΖを再リリースするということの意義は、きっちりと果たせていると思います。
[DVD(邦画)] 7点(2015-07-10 17:18:29)
16.  キック・アス ジャスティス・フォーエバー 《ネタバレ》 
前作はジャンル映画の傑作でした。子供が悪党を殺して回るというアメコミものの異常性を炙り出してジャンルの破壊活動を行いつつも、クライマックスでは空前のカタルシスを生み出してヒーローものとして王道の着地点に降り立つという離れ業をやってのけたのですから。第一作で完璧にまとまっていた話の続きを作るという点については期待よりも不安が大きかったのですが、案の定、本作の前半部分はグダグダでした。。。 前作において登場人物達の年齢ははっきりと言及されていませんでしたが、キックアスとレッドミスト(続編ではマザー・ファッカーと改名)は高校生、ヒットガールは小学生という設定だったように見受けました。一方、続編ではキックアスとヒットガールが同じ高校で勉強しており、成長したクロエ・グレース・モレッツに合わせてキャラクターの設定が操作されたらしい点にまず萎えました。前作でマフィアを壊滅させ、ヒーローとして覚醒したはずのキックアスが再び弱々しい存在に戻っていたり、前作のラストでキックアスへの復讐を誓ったはずのマザー・ファッカーが、本作でもキックアスへの復讐心を抱くに至る描写を加えられたりと、前作との重複が目立つ点もマイナスです。ストライプス大佐をはじめとした新キャラ達の印象も薄く、前半は二番煎じ以下の酷い出来でした。。。 しかし、マザー・ファッカーによるキックアスへの復讐が本格化する後半部分になると、映画は突如として息を吹き返します。ナイト・ビッチがレイプされたり、キックアスの父親が惨い殺され方をしたりと、物語は凄惨を極めます。ここに来て映画はアメコミものという領域を離れ、コテコテのバイオレンス映画と化すのです。マザーロシアが警官隊を返り討ちに遭わせる場面や、ヒットガールが囚われた主人公を救出するカーアクションなど、見せ場の出来も絶好調。前作と比較すると落ちる出来ではあるものの、アクション映画としては水準以上の作品だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-04 01:22:13)
17.  ギフト(2000)
サム・ライミほど、自身のキャリア形成に熱心な監督はいないと言われています。特段ホラー映画が好きというわけでもないが、低予算でも観客から注目される可能性が高いということでデビュー作に『死霊のはらわた』をチョイス。同作のシリーズ化により10年かけて世界中の映画オタクに名を売ったところで、一流俳優がズラリと顔を揃えた『クィック&デッド』に挑戦。しかし、この挑戦が不発と見るや、『シンプル・プラン』を撮って「私には映画監督としての基礎的スキルがあります。決してキワモノ監督ではありません」ということをアピール。そして、ハリウッドへの再度の橋渡しのため、これまた実力派俳優が名を連ねた本作を作り上げ、『スパイダーマン』へと繋げたわけです。。。 本作は、ビリー・ボブ・ソーントンが無名時代に書いた脚本がベースとなっていますが、この脚本は超能力者の悲劇を中心に、田舎町での殺人事件や、家庭内暴力、幼児虐待といった複数のテーマがギューギューに詰め込まれており、もはや闇鍋状態。サム・ライミはこれを驚くほど丁寧に整理し、2時間以内で完結するコンパクトなドラマとしてまとめています。あまりに美しく片付けすぎて、主人公自身の家庭の物語や、DV夫に悩むDQNねえちゃんの話などは途中でどっかに行ってしまいますが、語り口が極めて洗練されているので、そのような欠点も鑑賞中には大して気になりません。人間ドラマとサスペンスが絶妙な比率で混ぜ合わされているし、音でビビらせるというホラー演出も随所で効果をあげており、2時間はきっちり楽しめる映画として仕上がっています。。。 ハリウッド進出して間もない頃のケイト・ブランシェットを中心とし、ジョヴァンニ・リビシとヒラリー・スワンクという実力派に脇を固めさせ、キアヌ・リーブスとケイティ・ホームズがそこに華を添える。完璧に計算されたキャスティングです。ブランシェットは後の大女優の風格と技術をこの時点で見せつけているし、リビシはすべてが良すぎます。こんなメンツに囲まれたキアヌはちょいと可哀そうですが、新境地開拓に熱心な姿には好感が持てました。『スパイダーマン』の編集長やメルおばさんも顔を出し、俳優を見ているだけでも楽しめる映画となっています。
[DVD(吹替)] 7点(2014-07-11 01:18:18)(良:2票)
18.  キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
IMAX3Dにて鑑賞。ファルコンの飛翔シーン等で3D効果は発揮されていたものの、そもそもアトラクション映画として作られていないためか、全体としては3Dで見る必然性のある場面に乏しく、3D料金分は損したかなという印象を受けました。。。 他方、内容の方は骨太アクションとして堂々たる仕上がりで、なかなか見応えがありました。弱いだの、ダサいだの、役立たずだのと、今まで散々な言われようだったキャップですが、本作では彼が強すぎないことを活かした舞台と物語が用意されており、そこではキャップが十分にかっこよく、かつ、男らしく見えています。ジェイソン・ボーンのようなキレっキレの肉体アクションの合間に、彼のシンボルである盾を実にクレバーに使うことで、これはキャプテンアメリカの映画であるという印象も残す。リアリティとファンタジーの間で見事なバランスをとってみせた監督達の采配には脱帽なのでした。物語の方も、ヒドラだのヘリキャリアだのと漫画的な要素を散りばめつつも、全体としては70年代のポリティカルサスペンス風にまとめられており、おかしな組み合わせをとりつつも、総体としてはまったく破綻が生じていないという点では驚かされました。さらには、平和のための予防措置として政府が国民生活を脅かすことの是非をも問うており、今日の社会問題までが作品に織り込まれています。本作は、クリストファー・ノーラン作品をも射程に捉えかねないほどよくできたヒーロー映画だと思います。。。 不満だったのは、タイトルロールであるウィンターソルジャーの印象がイマイチだったこと。キャラ造形は決して悪くはないものの、作品全体の志の高さと比較すると、彼の存在は小さすぎたかなという感じでした。強力なヴィランを生み出せていないことが本作を含む一連のマーブル作品の欠点であり、来年公開の『アベンジャーズ2』に向けて、この課題をどう改善していくのかに注目なのです。
[映画館(字幕)] 7点(2014-04-20 02:21:58)(良:1票)
19.  キャビン 《ネタバレ》 
個人的に、ホラー映画の進化は『悪魔のいけにえ』で終わっていて、以降はシチュエーションを変えながら同じパターンを繰り返しているのみだと感じています。ホラーの作り手達も同様のことを考えているのか、『スクリーム』を皮切りに、『スリザー』や『フィースト』といった、ホラー映画あるあるを柱としたホラー映画は少なからず製作されています。本作もそんな作品のひとつなのですが、世界最強のオタク・ジョス・ウェドンが脚本を書き、それを『クローバーフィールド』のドリュー・ゴダードが監督したとなれば、ただの映画ではないだろうとの期待をさせられます。。。 が、しかし、内容は驚く程グダグダでした。被害者と仕掛人を交互に映し出すためスリルが持続しないし、さらには過去のホラー映画を上回るほどのインパクトある殺戮場面も作り出せておらず、正直言って眠かったです。「これはホラーのパロディですから」と言って作り手側が真剣勝負から逃げているような雰囲気さえ感じて、少々不快でもありました。「これでいいのか、ウェドンさんよぉ」と、心の中で何度も何度も叫びましたよ。。。 が、しかし、舞台が地下の実験施設に移り、話の核心部分に触れた辺りから、映画は異常な勢いで疾走をはじめます。『モンスターズ・インク』実写グログロ版、本当に最高でした。中盤をグダグダにしていたのも、このクライマックスを盛り上げるためだったのねと非常に納得。「疑ってすまんかった、ウェドンさん」と、心の中で何度も何度も謝罪しましたよ。モンスターパニックでお腹いっぱいになった後に、ダメ押しのシガニー・ウィーバー投入。この畳み掛け方は非常に素晴らしいと感じました。さすがはジョス・ウェドン、オタク心のくすぐり方をよくご存知で。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-12 01:31:20)(良:2票)
20.  キック・オーバー
“Gringo”とはヒスパニックの人々がアメリカ人を指して使う言葉であり、原題は「そのアメリカ人を捕まえろ」という意味です。このタイトルが示す通り、舞台はアメリカではなくメキシコ。メキシコの巨大刑務所に収監されたアメリカ人犯罪者がサバイバルのために立ち回っているうちに、2大マフィア間の抗争の中心人物になっていくという、クライムアクションとしてはありがちなお話です。ただし、オスカー監督であるメル・ギブソンが脚本を書き、恐らくは実質的な監督権をも掌握して製作された作品だけあって(クレジット上の監督であるエイドリアン・グランバーグは『アポカリプト』で助監督を務めた人物であり、組合の規定によって本作の監督にクレジットされたと思われます)、過去の類似作よりも頭一つ抜きん出た仕上がりとなっています。雑多な登場人物が入り乱れる複雑な内容でありながら、脚本の交通整理が抜群にうまいので大きな混乱をもたらしていないし、グロとユーモアと男らしさのブレンドも絶妙なサジ加減となっています。また、見せ場の数は多くないものの、ひとつひとつの見せ場は面白く作りこまれており、しっかりとした基礎を持つ製作チームならではの安定した仕事が作品のクォリティに大きく貢献しています。さらには、精神疾患を患い、ほとんど引退状態にあったメル・ギブソンが依然としてスターオーラを維持しており、気の良い犯罪者にピタリとハマっています。すべての要素において破綻がなく、完成度の高い作品であると感じました。。。 そして、本作がもっとも光っていたのは、悪名高きエル・プエブリートを舞台として設定したこと。エル・プエブリートとはメキシコに実在した刑務所であり、内部では犯罪者が家族と同居し、自由な商業活動までが行われていました(通常の商店のみならず、麻薬や売春関係も堂々と営業していたとか)。刑務所内での待遇は金で買うことが可能であり、さらには犯罪者同士の殺し合いも日常の光景だったようで、これはもはや現実世界の『ニューヨーク1997』。2002年に刑務所の破棄が決定した際には軍隊までが動員されたという、まさに悪の巣窟だった場所です。こんな場所が今の今まで映画のネタにされていなかったことが驚きですが、本作ではエル・プエブリートが影の主役としての機能を果たしています。とにかく、このありえない環境が面白すぎるのです。
[DVD(吹替)] 7点(2013-02-15 13:39:53)(良:1票)
070.55%
1171.33%
2272.12%
3564.40%
417513.74%
517713.89%
619715.46%
730924.25%
822217.43%
9685.34%
10191.49%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS