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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1874
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ゴーストランドの惨劇 《ネタバレ》 
惨劇は16年前に終わったはずだった――。叔母の遺した古い洋館へと越してきたシングルマザーの母親とその双子の娘たち。常に不機嫌な反抗期真っ盛りの姉ヴェラと、ラブクラフトをこよなく愛し自身もホラー小説を書いているという内向的な妹ベス。変わり者だったという叔母の趣味なのか、家中に気味の悪い人形が溢れ返っている新居で、彼女たちはひとまず最初の夜を過ごすことに。だが、そんな彼女たちを悲劇が襲う。突然押し入ってきた二人組の暴漢に、姉妹はなすすべもなく酷い暴行を受けてしまうのだった。しかし、隙を突いて反撃に出た母親の決死の行動により、二人は何とか無事逃げ出すことに成功する――。16年後、ホラー作家として大成した妹ベスの元に一本の電話が掛かってくる。それは惨劇以来、神経を病んでしまった姉からの悲痛なSOSだった。居てもたってもいられなくなったベスは、すぐさま、今も母親と姉が暮らしているというかつての叔母の家へと向かう。久しぶりに再会した二人は、ベスに衝撃の事実を告げるのだった……。監督は、その容赦のない残虐描写で世界に衝撃を与えたカルト映画『マーターズ』の鬼才、パスカル・ロジェ。彼の6年ぶりとなる待望の新作ということで今回鑑賞してみたのですが、いやー、これが期待に違わぬ素晴らしい出来でした。この監督お得意の全編に渡って展開される暴力シーンの容赦のなさは、もはや完全に振り切れてます。だって、逆さづりにされ恐怖のあまりおしっこを漏らしちゃったローティーンの少女が、その尿塗れとなった全身の臭いを変態男に嗅がれるという、そこらの鬼畜系AVも真っ青なほどの残虐シーンが出てきますから。いや、この監督、ホントに頭大丈夫なんですかね(笑)。まあ肝心のお話の方は完全に破綻してましたけど。例えば、物語の三分の一が主人公の少女の〇〇オチだとか、警察が相変わらず無能すぎだとか、物語の重要なモチーフとなっているラブクラフトの扱いがほぼ添え物でしかないとか(せめて彼の小説に出てくるクリーチャーは登場させてほしかった!)。でも、そんな欠点を補って余りある魅力がこの作品にはあります。それは、少女の〝妄想力〟。とにかくこの全編を彩る少女趣味の禍々しさに、僕は完全にやられちゃいましたわ。家中に溢れ返る可愛さ全開なのに何処か不気味なフランス人形たち、お菓子やキラキラのおもちゃがたくさん吊り下げられたキャンディ・トレーラー、主人公が無理やり着せられるロリータファッション、そして絶え間ない暴行のせいで顔面ボコボコになった少女たちが泣きながら食べるマシュマロ…。悪趣味極まりないこの世界観は見事に完成されています。男たちの酷い暴力や醜い性欲に立ち向かうために、少女が手に取った武器は夢見る妄想力。こんな残酷な世界で大人になんかなってやらない。『不思議の国のアリス』や『アンネの日記』にも通じるテーマがここにはある。非常に退廃的なので、かなり観る者を選ぶ映画ですが、僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2020-08-17 23:44:04)(良:1票)
2.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
素晴らしいの一言に尽きる。あの時、あの時代を生きた市井の人々のささやかな幸せが圧倒的な暴力の前に無残に崩れ去る。平凡な人々が胸に抱いたであろう静かな怒りに胸が震えました。すずを演じたのんの嵌まり方も良かった。またいつか観てみようと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2018-08-11 03:35:57)
3.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
皆さん、今日はお集まりいただきありがとう。僕やエイミーにとってとても心強いです。ご存知のように僕の妻エイミー・ダンは3日前に失踪したきり手掛かりすら得られていません。どんなことでも構わない、情報をお持ちの方は是非教えてください。それからもう一つ、皆さん聞きたいだろうからあえて自分から言います。僕は妻の失踪には一切関係ありません。警察にも協力し、隠し事もない。エイミーは僕の最愛の人です。確かに僕は良い夫ではなかったかも知れない。でも、本当です、僕は心から妻を愛しているんです――。結婚生活5年目を迎えた、ニックとその妻エイミー。結婚当初は仲睦まじかった彼らもいまや愛は冷め、離婚の瀬戸際に追い詰められていた。そんな中迎えた5回目の結婚記念日の朝、ニックは今日もエイミーと朝から口喧嘩をして家を出てきてしまう。それでも帰るところはただ一つ。ニックは今後のことを話し合うため、エイミーが待つ家へと戻るのだった。ところが…、そこで彼を待っていたのは破壊されたリビング、何処を捜しても姿を見せない妻、彼に不審の目を向ける刑事、近所の人々の好奇の視線、そしてマスコミに簡単に踊らされる娯楽に餓えた大衆たちの悪意の連鎖だった。自分をずっと信じてついて来てくれる双子の妹とともに身の潔白を証明しようとするニックだったが、彼に不利な真実が次々と明らかになり、ニックは二度と抜け出せないような恐ろしい蟻地獄へと嵌まり込んでゆく…。果たして事件の真相とは?妻は何処に消えてしまったのか?本当に彼が妻を殺したのか?それとも…?サスペンス・スリラーの現代の名匠デヴィット・フィンチャー監督の最新作は、そんな一組の夫婦が抱えた深い闇をミステリアスでダークに、そしてエロティックに描いた濃厚な2時間20分でした。けっこうな長尺であるにも関わらず、冒頭から謎に充ちたストーリー展開で観客をぐいぐい惹き込み、二転三転する事態に驚愕させられ、やがて判明する真相に心の底から戦慄――特に結婚した男性なら誰しも――させられる良質のミステリーでしたね、これ。うん、めちゃくちゃ面白いじゃないですか!特にこの完璧なまでの構成力、優れた映画監督は優れた編集の力で物語を見せるという典型的な例でしょう。フィンチャー監督って昔はあんまり好きじゃなかったのだけど、前作の『ドラゴン・タトゥーの女』といい本作といい、ここ最近のその才能の充実振りには素直に驚嘆です。もう女の怖さとしたたかさを美しく描かせたら彼の右に出る者はいないですね。特に、金持ちの男に自らの身体を抱かせ、相手が射精した瞬間に咽を掻っ切り、血塗れになりながらも最後まで冷静に作業を進めるエイミーの狂気に充ちた美しさには惚れ惚れとさせられました。前作のリスベットや本作のエイミーに徹底的に一貫しているのは、男――及び男が創り上げたこの社会の傲慢さに対する反抗なのでしょう。いやー、男としては冷や汗もんっす(笑)。うん、久々に充実した映画体験をさせてもらいました。9点!
[DVD(字幕)] 9点(2016-02-23 21:15:45)(良:1票)
4.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
やっぱり何度観ても傑作!世の中には一時間半の映画でも退屈ですぐ眠たくなる映画がたくさん溢れ返っているというのに、この作品は三時間もあるのに無駄なシーンが一切なく、最後まで緊張感を持続させたまま一気に観ることが出来る。そして重厚な雰囲気のなかで淡々と、時には突発的な暴力描写を交えながら、描出されるのは普遍的な家族の絆。なんとなくドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』までを彷彿とさせる、この家族の年代記はまさに芸術の域にまで達している。映画好きなら、一度は観ておかなきゃいけない傑作!
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-26 15:20:15)
5.  コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 
ティム・バートンが大好きな自分としては、この映画かなりツボです。夢見がちな少女が迷い込む、悪夢のようなそれでいてどこか懐かしいメルヘン描写が素晴らしい。実際、これ子供が観たらトラウマになりそうな描写がてんこ盛りだけど、それでも目がボタンになった両親の、現実とは違ってすごく優しいのになぜかぞくぞくするような不気味さがあるところなど、良い意味で僕の感覚を刺激してくれました。またいつか観てみたい。あと、太った双子のおばさんのブサ可愛いところもなかなか魅力的。
[DVD(字幕)] 9点(2012-08-27 20:25:10)
6.  告白(2010) 《ネタバレ》 
昨今の邦画業界の商業主義に走るあまり、観客に迎合したような、昔のアニメとかドラマとかをCG満載にリメイクしてお父さんもお母さんも子供たちも楽しめて、そしてそれでは飽き足らずジャニーズのアイドルを多用したので若い女の子たちも楽しんでくださいね的な、観客に媚びまくったような軟弱な体たらくぶりに正面から挑戦するような、中島哲也監督の猛毒エンターテイメント。もう、その一本、筋が通ったような彼の信念は大好きです。人間の悪意や偽善、そして集団心理のとてつもない残虐性といった、深くて重たいテーマを扱いながら、ちゃんとエンタメ映画として一級品の作品に仕上がっているところは、本当に素晴らしい。思春期の少年少女たちの誰もが孕む、少しでも触れたら壊れてしまいそうな狂気の世界を陰鬱に、そして美しく描きながら、最後はそんな身勝手な子供たちに、松たか子演じる教師が全ての大人の代表として鉄槌を下す。「なーんてね」なんていう中2病的な逃げが、どれだけ卑怯かを分からせるために……。冒頭の、牛乳パックが転がって中身が零れるシーンから、そんな素晴らしいラストまでぞくぞくするような緊張感が一切途切れない、中島哲也監督の傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2012-05-17 01:50:30)
7.  この茫漠たる荒野で 《ネタバレ》 
彼の名は、ジェファソン・キッド大尉。今は退役したものの南北戦争で戦ったかつての英雄だ。そんな彼の現在の職業は、〝ニュース屋〟。まだ通信技術も移動手段も限られていたこの時代に、普段新聞を読まない市井の人々のために全米各地を転々としながら日々の出来事や政治情勢を分かりやすく読み聞かせることを生業としている。今日もまた次の町へと向かうために荒野を旅していた彼は、途中10歳くらいの謎めいた少女と出会う。白人でありながら英語は話せず現地の民族服を着た彼女は、明らかにインディアンに連れ去られた子供だった。調べてみると、彼女の名はジョハンナ。6年前にインディアンによって家族を皆殺しにされて、そのまま部族の中で育てられたらしい。唯一の身寄りは、テキサス南部に暮らす叔父夫婦のみ。遠方へと出払ってしまった保安部隊の代わりに、地元当局から身内の元へと送り届けてほしいと頼まれた彼は、仕方なく彼女を連れて荒野へと旅立つのだった。だが、武器となるのは鳥撃ち用の貧弱な散弾銃だけ。そんな二人を当然、荒野の荒くれ者どもは見逃すわけもなく、執拗に付け狙い始める……。『キャプテン・フィリップス』のポール・グリーングラス監督と名優トム・ハンクスが再びタッグを組み、南北戦争後のアメリカを舞台に孤独な退役軍人と家族を皆殺しにされた少女との苦難の旅路を描いたロード・ムービー。主人公となるのが現役バリバリの英雄なんかじゃなく、今や老境へと差し掛かろうかという枯れたオヤジというのが本作のミソ。そんな圧倒的に弱い立場の二人の旅路は常にサスペンスフルで最後までハラハラドキドキの連続で目が離せません。特に中盤、少女を売春宿へと売り飛ばそうという無法者3人に荒野で追い詰められるシーンは、リアルで生々しくひりつくような緊張感に溢れた名シーンでした。それ以降も、豪族が支配する地方の村落でニュースの読み聞かせからのアジテーションで村民に暴動を起こさせて逃げようとするシーンは、名優トム・ハンクスの面目躍如といった素晴らしい熱演で見応え充分。そんな彼とタメをはる子役の女の子も、これが新人とは思えない堂々とした演技で全く負けておりません。最後のオチもベタながら、この茫漠とした世界の中で微かな希望を感じさせ、良い余韻を残してくれます。過酷な運命に見舞われた少女がこれから先、少しでも幸せになってほしいと祈らずにはいられないなかなかの逸品でありました。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-10-30 02:30:45)
8.  500ページの夢の束 《ネタバレ》 
彼女の名は、ウェンディ。何処にでも居るような平凡な女の子。でも、一つだけ人と違うことがある。それは人と話すのが大の苦手で、自分の思い通りにならないことがあると思わず“かんしゃく”を起こしてしまう困った癖を持っていること。そう、彼女はいわゆる自閉症なのだ。唯一の肉親である姉の結婚を機にウェンディは福祉施設で暮らすようになり、今はパン屋さんで働き自立している。でも、本当の願いは思い出がたくさん詰まった自分のお家に帰ること。そんな折、姉の勝手な判断で大切なお家が売却されてしまうことを知るのだった。到底納得いかないウェンディはまたしてもかんしゃくを起こしてしまう。食事が喉を通らないほど落ち込んだ彼女が、考え込んだ末に思いついた解決法。それは、映画会社が主催する、自分の大好きなテレビドラマ「スタートレック」の脚本コンテストに応募し、賞金10万ドルを手に入れることだった。寝る間も惜しんで書き上げた500ページにも及ぶ原稿はすでに完成してある。だが、締切は明後日。とてもじゃないが、今から郵便局に預けにいってては間に合わない。仕方なくウェンディは、たった一人ロサンゼルスへと向かうバスへと乗り込むのだった。愛犬のピートを相棒にして――。自閉症と言う個性を抱えた一人の女性が、自らの夢を叶えるために遠く離れたロサンゼルスまで旅する姿を描いたロードムービー。前作で、障碍者と性と言う難しい問題をあくまで軽く爽やかに描いたこの監督らしい、ほのぼのとした空気に包まれた心温まるお話でしたね、これ。とは言ってももちろんキレイごとばかりではなく、当然そこには障碍のある人の生き辛さや家族の葛藤、世間の無関心やそんな弱者を食い物にする悪人の存在もちゃんと描かれる。でも、そこまで深刻になる一歩か二歩手前で引くこの監督の絶妙な匙加減は見事としか言いようがありません。特に居なくなった彼女を追って奔走する、トニ・コレット演じる施設職員には好感持ちまくりです。バスの運転手や医者、融通の利かない映画会社の事務員など嫌なやつも沢山出てくるのですが、それ以上に彼女のような魅力あふれる人々がいっぱい出てくるのがとてもいい(宇宙の言葉を突然話し出す、あの警官マジサイコー!)。そう、どんな人にだってちゃんと手を差し伸べてくれる優しい人が居ることを改めて教えられました。主演を務めたダコタ・ファニングも自閉症を抱えた若い女性をリアルに演じていてとても良かったです。最近妹の方が何かと話題になることが多いのですが、彼女にはこのまま演技派の道を歩んでいって欲しいものです。今回の結果は残念だったけど、必ず認めてもらえる日がきっと来るよ。そう思わずにはいられないヒューマン・ドラマの佳品でありました。お勧めです。
[DVD(字幕)] 8点(2020-02-18 22:39:07)
9.  心と体と 《ネタバレ》 
ブタベスト郊外にある食肉加工工場。妻と離婚し、孤独な独り暮らしを続けている工場の責任者エンドレはある日、食堂で見慣れない若い女性を見かける。産休に入った職員の代理として雇われたという彼女の名はマーリア。誰にも心を開かず常に一人でいる物静かな彼女が、エンドレは何処か気になるのだった。だが、それ以上なにが起こるわけもなく、二人は工場の単なる上司と部下として何気ない日常をやり過ごしていた。そんなある日、ちょっとした事件がきっかけで二人は驚きの事実を知ることに。二人が毎晩見る鹿の夢――牡鹿と女鹿となった二人が静かな森の中で木の葉をついばんだり池の水を飲んだりするという夢を、二人が毎晩同時に見ていたらしいのだ。戸惑いつつもエンドレとマーリアは、その後も鹿となったお互いの夢の中で次第に打ち解けてゆく。「もっと深く知り合いたい」――。そう強く思い始める二人。たが、現実生活ではどこまでも不器用なためいつまで経ってもすれ違うばかり…。奇妙な夢の中で知り合った、孤独な中年男性と生きづらさを抱え込んだ若い女性との不思議で静かなラブ・ストーリー。アカデミー外国語映画賞にノミネートされたというハンガリー発のそんな本作、何の前知識もなく今回鑑賞してみました。最後までとても淡々とした物語なのですが、それでもこの詩情あふれる映像の美しさは特筆に値します。それまで生きていた牛がただ事務的に屠殺され首を切り離され床のタイルを血で汚しながら淡々と食肉へとさばかれていくさまを、ここまで美しく撮れる監督は世界でも稀ではないでしょうか。そこに差し挟まれる二匹の鹿の映像も、本当に二人が姿を変えて逢引きしているように見えるのですから、この映像センスは本当に群を抜いている。内容の方は言ってしまえばまぁよくある、いわゆる〝枯れた中年男とメンヘラ女子の面倒臭い恋愛物語〟なのですが(日本の小説で例えるなら川上弘美の『センセイの鞄』のような)、このお互いの夢の中で逢引きを重ねるという設定が凄く秀逸。メルヘンなのかリアルなのか、この変な感覚は今まで味わったことのない不思議な世界観でとても惹き付けられました。次の日、昨日の夢のことを思い出しながらお互いににやにや見つめ合うとこなんて、「確実に交尾したね、この二人」と今まで口にしたことのないような言葉を呟いちゃいました(笑)。ただ、この設定が後半いまいち活かされていなかったところが惜しい。もっと夢の中での二人の秘密の逢瀬を見たかった。とはいえ唯一無二の独自の世界観を持ったこの監督のセンスには要注目。本作が18年ぶりの新作らしいけど、もっと早めに次作が観たいです!
[DVD(字幕)] 8点(2019-05-08 01:10:11)(良:1票)
10.  (500)日のサマー 《ネタバレ》 
これは運命の女性と出逢うまで幸せになれないと思っていたトムと、彼が一目見て運命の人だと信じてしまった美しい女性サマーとの500日にわたるボーイ・ミーツ・ガールな物語である――。何処にでもあるような平凡な男女の平凡な恋物語を時間軸を行ったり来たりする斬新な設定とセンス溢れる美しい映像と音楽とで見せる切ないラブストーリー。普段、こういう恋愛を真正面から取り上げた映画ってあんまり観ないのだけど、「キックアス」のヒットガール役で僕のロリコン魂に火を点けたクロエ・グレース・モレッツちゃんが出演、しかも最近はすっかり“女の子”から“女”へと成長してしまった彼女のまだ“女の子”だった時代の貴重な姿を是非ともこの目に収めておこうという超不謹慎な理由で鑑賞してみました。なんだけど、うーん、クロエちゃん、あんまり出てなかったぁ(泣)。と、冗談はさておき(?)、もっと女性向けの作品だと思っていたら、意外にもこれって男性目線な映画だったんですね。500日と言えば、ちょうど付き合い始めてからの天国気分から喧嘩や倦怠期やらで危機を迎えたものの、なんとか仲直りできたにもかかわらずやっぱり別れちゃって、でも彼女のことが忘れられなくて縒りを戻すために頑張ってみたり…という誰もが一通り経験するオーソドックスな恋愛のちょうどな期間。特に、300日を過ぎて彼女と別れちゃったトムのウジウジしたどうしようもない駄目な感じ、なかなか共感できました(笑)。男ってこんな時期あるよね~。僕も当時付き合っていた大好きだった彼女にフラれちゃって、それにその頃ちょうど仕事も上手くいかなくて、そのまま酒に溺れてどん底生活を送っていた時期があったので、観てるとその頃のことを思い出しちゃってなんだか無性に切なくなってしまいました。「海に魚はいっぱいいるわ。今は彼女しか居ないと思ってるんだろうけど、私はそうは思わない」トムの妹を演じるクロエちゃんのそんな優しい言葉に素直にジーンときちゃったっす(あー、またこれで僕のロリコン度が増してしまうだろーな笑)。と、またまた冗談はさておき(?)、辛い失恋を経験した全ての男たちに観てもらいたい佳品でありました。お薦めっす。
[DVD(字幕)] 8点(2014-05-31 00:42:02)
11.  孤独な天使たち 《ネタバレ》 
団体行動が苦手で学校でも浮いた存在である14歳の少年ロレンツォは、過保護で口うるさい母親から少しでも離れたくて、スキー合宿へと参加すると嘘をつき、いまは離れて暮らす父親の所有する地下室へと勝手に潜り込むのだった。数日間の孤独なバカンス、水槽に飼育された蟻の巣を眺めたり、好きな音楽を聴いたり、そんな自由気儘な生活を謳歌しようとした矢先、彼の腹違いの姉オリヴィアが「何処にも行き場所がないの。お願い、中に入れて!」と強引に転がり込んでくる。がさつで無神経なそんな彼女に、当然のように出て行くことを強要するロレンツォ。だが、オリヴィアが麻薬中毒から必死に立ち直ろうとしていることを知った彼は、そのアルマジロの皮のように硬い殻で覆われた孤独な心を少しずつ開いてゆく…。都会の片隅、誰も知らない暗い地下室での数日間に限定された姉と弟の屈折した交流を繊細に描き出す、巨匠ベルトルッチ監督の約10年ぶりとなる待望の復帰作。いやー、齢70を過ぎて、まだまだこんなに鬱屈した少年の心理を瑞々しく描けるなんて、さすがはベルトルッチですね。そんなブランクを微塵も感じさせない気品に満ちた青春ドラマの佳品でありました。舞台はほぼ薄汚れた地下室のみ、登場人物もほぼこの少年とその姉のみなのに、見事な手腕でもって構築された刹那的で深い物語世界に、最後までしっとりと浸ることが出来ました。最初はいけ好かない印象の姉が、実は夢破れた孤独な少女として少しずつ弟と心を通わせてゆき、次第に外の世界へと興味を向け始めていく自然な描写とか、もうさすがの貫禄。病のせいで、映画製作から遠ざかっていたというベルトルッチのこの10年間がつくづく残念でなりません。
[DVD(字幕)] 8点(2014-05-05 11:57:40)
12.  コラテラル 《ネタバレ》 
都会の片隅で鬱屈した毎日を過ごす孤独なタクシードライバーが、偶然乗せたある乗客の仕事にどんどんと巻き込まれていくハードボイルドサスペンス。それまで重厚な男たちの世界を撮り続けてきた監督が、いい意味で肩の力を抜いて撮った佳品。どんどんと暴走していくトム・クルーズの姿が意外に嵌っていて良かったです。全体を覆う都会の夜の雰囲気もナイス!観終わった後に、「あぁー面白かった!」と素直に思える良質のエンタメ作品。ただ、ちょっと女性には分かりにくい世界かもだけどね。
[DVD(字幕)] 8点(2013-04-30 16:53:29)
13.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
なにもかも完璧だった前作をこよなく愛する自分としては、第二作目となる今作は多少冗長な印象も受けたけれど、それでも相変わらずのクオリティの高さに素直に圧巻。ダークなマフィアの世界を舞台に描かれる重厚で深淵な父子の物語は何度観ても素直に胸を打つ。徐々に勢力を拡大していく父と、ファミリーを守ろうと必死にもがけばもがくほど実際の家族を失っていく息子。対照的な二人の姿を、アル・パチーノとロバート・デ・ニーロという希代の名優が見事に演じきっている。最後の、家族と共に父の誕生日を祝った過去を回想するアル・パチーノの愁いを帯びた表情がいつまでも忘れられない。
[DVD(字幕)] 8点(2013-04-28 14:15:51)
14.  コーダ あいのうた 《ネタバレ》 
彼女の名は、ルビー・ロッシ。寂れた港町で漁業を営む家族とともに暮らす平凡な女の子だ。勉強やスポーツが特に出来るわけでもなく、人が羨むような特技もない。見た目だって普通、交友関係もいたって人並。だけど、彼女には他の人とは違う特徴が一つだけ。それは、彼女以外の家族全員が耳の聞こえない、いわゆる聾者だということ――。そう、両親はもちろん彼女の兄も一切耳が聞こえず、言葉を話すことも出来ない。家族との会話は全て手話、食事のときも食器の音以外何も聞こえない。どうしても他の人とコミュニケーションを取りたいときは、唯一の健常者であるルビーの力を借りなければならなかった。彼女はいわゆる〝コーダ(聾者の両親に育てられた子供)〟。それでも家族とともに充実した日々を送っていたルビーは、ある日、ふと思いついて高校の合唱クラブへと入部することに。緊張しながら初めて人前で披露した歌声。顧問の先生は、指導を続けてゆく中で粗削りながらも彼女の歌声に秘められた可能性を感じるようになる。ボストンの音楽大学への進学を薦められるルビー。でも、私がいなくなれば家族の生活はますます大変なものに。思い悩んだ末にルビーが出した結論とは?耳の聞こえない家族の元で育った17歳の女の子の青春を瑞々しく綴ったヒューマンドラマ。アカデミー作品賞受賞ということで今回鑑賞。感想は、良くも悪くもとにかくオーソドックス。全編通じて、何処かで見たような映像と何処かで聞いたようなお話のてんこ盛り。主人公カップルが崖の上からキレイな森の湖に飛び込むシーンなんて、この手の青春ドラマでもう何回見てきたことか。誰もいない湖面で2人泳ぎながらキスするとか、トム・クルーズの『カクテル』ぐらいから受け継がれてきたもはや青春映画のテンプレなんでしょうね。クライマックスの両親が見守る中での発表会なんかも、まぁ~~既視感満載。でも……、このベタさ、自分はけっこう嫌いじゃない。それはやはり、主人公をはじめとする登場人物誰もがみな魅力的だからでしょうね。この家族、障碍を持っていても誰も自分を憐れんだりしていない。自分たちだけで健常者と普通に渡りあおうとするし、頼るべきところはちゃんと頼るしたたかさも持ち合わせている。そんな両親を愛していながらも世間に引け目を感じてしまう主人公も気持ちが分かるぶん切ない。何かと言うと家族の責任を前面に出し娘に依存しようとする両親も最初はちょっとウザかったですけど、最終的には娘を清々しく送り出すところは素直に感動しました。妹にちゃんと自立した道を歩んでいって欲しいと願う兄も凄くいい奴。妙に下ネタが多いところも、障碍者を必要以上に美化しないという決意が感じられて好感持てますね。自分は最後まで清々しい気持ちで観ることが出来ました。ルビー、これからもっと幸せになれよーー!
[DVD(字幕)] 7点(2023-06-12 07:40:39)
15.  降霊会 血塗られた女子寮 《ネタバレ》 
それはちょっとした悪戯のつもりだった――。深い森に囲まれた全寮制女子高校、エデルヴァイン。ここは選ばれし裕福な女子生徒だけが学ぶことを許された特別な場所だ。生徒たちは厳格なルールに支配された女子寮で静かに暮らしている。そんなある日、ヒマを持て余した女子生徒が何気なく始めた真夜中の降霊会。実は生徒会長のアリスが大人しい優等生ケリーにみんなでドッキリを仕掛けようとしたのだ。効果はてきめん、居るはずのない霊の心霊現象に怯えたケリーは、悲鳴をあげながら一人で逃げ出してしまう。笑い転げるアリスたち。だがその直後、ケリーは謎の転落死を遂げてしまうのだった――。彼女の死は事故として処理され、アリスたちはすぐにいつもの日常を取り戻していた。それから数週間後、ケリーのあいた部屋の後釜としてカミールという名の少女が転校してくる。カミールは、寮を牛耳るアリスたちと衝突しながらも徐々に学園生活へと馴染んてゆく。やがて、彼女はこの部屋で幾つもの怪異現象に見舞われるようになるのだった。果たしてこれは霊の仕業なのか?アリスに誘われるまま、再び行われた降霊会に参加したカミールは、更なる超常現象に襲われることになる……。まあ日本でゆうところのいわゆる「こっくりさん」をネタにしたよくある定番ホラーなのですが、ツボを押さえた演出のおかげでそこそこ楽しんで観ることが出来ました。霊に狙われたと思しき女子生徒たちが次々と惨劇に見舞われるシーンはどれも既視感満載のベタなものばかり。でも変に奇を衒ったものじゃない分、安定感はばっちりでした。全寮制女子寮という閉ざされた世界も閉塞感が半端なく、この不穏な雰囲気は大変グッド。主人公をはじめとする女子生徒たちがみんな魅力的でそれぞれキャラ立ちしているのもポイント高い。ただ、残念なのは後半からかなり失速しちゃうところ。特に最後のオチが途中から容易に読める代物で、しかもそれまでの禍々しいホラーシーンを一気に冷めさせてしまうような真相だったのが残念でならない。ここは最後までオカルト推しでいくか、それかもう一捻りある展開でもっと観客の度肝を抜いてほしかったです。と、ここまで観て、まあアリがちな普通のホラーかなと思ったんですが、最後でまさかのサプライズ!最後のキスシーンで一気にそっち系映画となったのは嬉しい驚きでした。それまでも主人公とケリーの友達である少女が一緒にベッドで寝るシーンなどもあって、「あれ、これはもしかして百合なのか?……」と思わせつつもずっと寸止めで終わらせて来たのが、最後の最後でやられましたわ。「また、会いたい…」「私があなたを捜すわ…」。このセリフとその後のキス、百合萌え好きな自分としては思わず胸キュンでした!最後のこのシーンに+1点!!
[DVD(字幕)] 7点(2022-10-27 04:43:24)
16.  荒野の誓い 《ネタバレ》 
1892年、いまだインディアンの脅威が去らぬアメリカ南部の田舎町。退役を間近に控えた、かつての戦争の英雄ブロッカー大尉に、恐らく最後となるであろう任務が下される。それは、過去に仲間を惨殺したアパッチ族の首長イエロー・ホークを故郷まで連れ帰るというものだった――。末期の癌を患い、長年囚われの身だった彼を人道的な見地から故郷に帰そうというのだ。殺された仲間のことを思い、当初は断ったものの、軍人としての義務と年金のために仕方なく任務を引き受けるブロッカー大尉。信頼する仲間たちを集め、首長とその家族を連れ荒野へと旅立つのだった。ところが初日、彼は荒野で悲嘆に暮れるある一人の婦人と出会う。話を聴いてみると、彼女はなんと凶悪なコマンチ族に幼い三人の子供たちと愛する夫を目の前で殺されたらしい。絶望の淵に立たされた彼女をそのままほっておくことも出来ず、大尉は彼女を連れて旅を続けることに。だが、目の前に拡がる広大な荒野は彼らに何処までも無慈悲だった……。雄大な大自然を背景に、そんな恩讐の中に生きる人々を冷徹に見つめた西部劇。監督は、『クレイジー・ハート』でアカデミー賞の栄誉に輝くスコット・クーパー。この監督らしい細部にまで拘った丁寧な演出は本作でも健在で、一つ一つのエピソードの見せ方などは相当巧い。特に、家族を殺され天涯孤独となってしまった未亡人が自らの手で家族を埋葬するための穴を掘るシーンなど、その絶望感がひしひしと伝わってきて僕は思わず涙してしまいました。彼女を演じたロザムンド・パイクの素晴らしい熱演は特筆に値します。彼女を助ける寡黙な軍人役のクリスチャン・ベールも渋さ爆発で大変グッド。彼らが大自然の中を旅するシーンは全てが美しく、まるで優れた絵画を観ているようで非常に良かったですね。ただ、残念だったのは後半の展開。てっきりこの凶悪なコマンチ族を彼らが復讐のために追い詰めるのかと思いきや、呆気なくこいつらは第三者に殺されてしまいます。そこから物語としての強度が明らかに弱まってしまったのが惜しい。この家族を殺したコマンチ族との対決をクライマックスに持ってこないとやはりカタルシスが得られませんって!それに、入植者である白人たちとアメリカ先住民族の和解のドラマもかなり唐突でいまいち説得力が感じられない。前半の展開がすこぶる良かっただけに、なんとも勿体ない作品でございました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-29 00:20:42)(良:2票)
17.  ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 《ネタバレ》 
夢の怪獣大戦争!!!!「どうせ子供向けなんじゃろ~」とまったく期待せずに観たら、意外や意外、なかなか面白いじゃないですか、これ。別にゴジラにもキングギドラにもそこまで思い入れない自分ですけども、ここまで過去作にリスペクトしてくれたら同じ日本人としてはやはり胸が熱くなりますね~~。ブルーを基調とした映像もスタイリッシュかつ迫力満点で、けっこうセンスを感じました。キングギドラと覚醒ゴジラが最後に一騎打ちするシーンなんて、もはや理屈抜きにカッコいい。ま、ストーリーなんてこの際どうでもいいでしょ(笑)。うん、なかなか面白かった!!7点!!
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-06 01:34:33)
18.  ゴールデン・リバー 《ネタバレ》 
1851年、ゴールドラッシュに沸く西部開拓時代のオレゴン。各地を旅しながら刹那的に生きるシスターズ兄弟は、その類稀なる銃の腕で人々から恐れられた殺し屋コンビだ。冷静沈着で常に先を見据えた行動を取る兄イーライと自分の直感だけを頼りに時に暴走も辞さない弟チャーリーは、雇い主である地域の大物「提督」の命を受け、南へと旅を続けていた。目的は、ボスを裏切った男を見つけだし殺すこと――。先に出発し男を捜して旅を続ける偵察係モリスと合流するため、彼らは馬を走らせていた。だが、彼らがどんなに馬を急がせてもモリスに追いつくことは出来なかった。何故ならモリスはボスを裏切り、追っていた男とともに金脈を見つけ一山当てようともくろんだからだ。相次ぐトラブルに見舞われながらも、執念の追跡でモリスを見つけ出したシスターズ兄弟だったが……。西部開拓時代のアメリカ南部を舞台に、金脈に目がくらんだ男どものひりひりするような駆け引きを濃密に描いたクライム・サスペンス。冷酷無比な殺し屋兄弟を演じるのは、今ノリにのっている実力派のホアキン・フェニックスとジョン・C・ライリー。彼らに追われる裏切り者役には、こちらも人気者のジェイク・ギレンホール。何の予備知識もないまま、そんな豪華な共演陣に惹かれ今回鑑賞してみたのですが、これがなかなかよく出来た犯罪ドラマの良品で、西部劇がもともと得意ではない僕でも充分楽しんで観ることが出来ました。とにかくこの三人の主要キャラクターの人物像がよく描けている。酒と女に目がなく何度もそれで失敗しながらも懲りない弟、対照的に女には奥手で唯一思い出?のスカーフにフェティッシュな愛情を注ぐ無骨な兄貴、自分の人生に疑問を抱き理想のために逃亡を続ける密偵、それぞれの思いを抱えた彼らの追跡劇は丁寧な演出の力もあり最後まで惹き込まれます。物語の中盤、ひょんなことから手を組んだ彼らが文字通り〝黄金の河〟を求めて荒野を分け入ってゆくところから、物語はより一層悲愴感を増していく。ここら辺の各々の心理描写も鋭く、完成度は高い。苦難の旅の末、とうとう目的地に辿り着いた彼らは、欲に目がくらんだ弟の愚かな行動により破滅への道を辿ることに。人間の愚かさを冷徹に見つめたそのアイロニカルな視点は鋭い。金に翻弄された男どもの狂気に満ちた犯罪劇、なかなか見応えのある秀作でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-28 02:50:30)
19.  荒野にて 《ネタバレ》 
女癖の悪い父親とともに暮らす15歳の少年、チャーリー。何かとトラブルの絶えない父に愛想を尽かせた母親は、彼が赤ん坊の時に家を出たまま消息不明だった。学校にも通えないほど貧しい生活だったが、それでもチャーリーはそんな父との生活に満足していた。そんなある日、彼は地方競馬の競走馬を専門にする調教師デルと出会う。少しでも生活の足しにしようと、彼の元で働き始めたチャーリーは、デルの今の稼ぎ頭である若い馬ピートの世話を担当することに。そんな折、チャーリーの父親の浮気がばれ、激高した愛人の夫になんと父親が殺されてしまうのだった。天涯孤独となってしまったチャーリーは、馬のピートに深い愛情を注ぐようになる。だが、ピートは長いスランプから次第にレースで思うような結果を残せなくなってしまう。するとデルは、ピートをメキシコへと売り飛ばすと言い出すのだった。「ピートは僕の友達だ、それだけは絶対ダメだ!」――。そんな彼の意見などデルは到底聞こうとしない。どうしようもなくなったチャーリーは、ピートを連れ密かに荒野へと旅立つのだった……。家族をなくし孤独の中に生きていた少年とピークを過ぎた一頭の馬との逃避行を雄大な荒野の景色の中に描き出すロード・ムービー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが丁寧な演出の力が光る佳品に仕上がっておりました。少年と馬との友情物語という、これをディズニー辺りが撮れば心温まる安定のファミリー・ドラマになりそうなものだけど、本作は全く違います。ここで描かれるのは、圧倒的な貧困の現実。主人公がどれだけ不幸な境遇にいようが、誰も助けてくれたりなんかしません。せいぜい働き口を紹介する程度で、時には主人公のなけなしの金を毟り取る輩さえ出てくる始末。それは馬も同じで、「競争馬はペットじゃない。勝てなくなった馬は処分する」という厳しさが徹底しているのです。だから、主人公は行く先々で窃盗や無銭飲食を繰り返すしかありません。それでも希望を捨てず、一人と一頭とで荒野をゆく彼らの姿がとても切ない。風呂にも入れずどんどんと汚れてゆく主人公と対照的に雄大な大自然の映像はますます美しさを増してゆく。この監督の無常観に満ちた、その詩的センスの良さには唸らされます。ただ、惜しいのはピートが途中で呆気なく物語から退場してしまうこと。たとえどんな最期を迎えるにしても、ピートにはこの少年の旅路を終わりまで見届けて欲しかった。とはいえ、この少年がどん底に堕ちるぎりぎりのところでほんの少しの希望へと辿り着くラストには思わず涙してしまいました。いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる青春ドラマの良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-19 00:11:41)
20.  コンタクト 《ネタバレ》 
無限大の宇宙に対する、ちっぽけな人間の畏怖と、それでもロマンを追い続ける主人公たちの情熱を、徹底的に科学的に考察された設定と美麗なCG技術で魅せる壮大なSFドラマ。この全編をおおう知的で上品な雰囲気は大好きです。そしてそんな主人公を演じるジョディ・フォスターもとっても魅力的。ちょっと最後に宗教色が強くなり過ぎたところは残念だけど、この科学者たちのあくなきロマンは何度観ても面白いです。同時期に撮られた、ローランド・エメリッヒのお馬鹿SF作品とは好対照だね。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-09 13:34:02)
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