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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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61.  処女の泉 《ネタバレ》 
エグい。ベルイマン作品で一番エグい部類に入る作品だ。 中盤の“例のアレ”は「沈黙」並にエグい。神にいくら祈っても何もしちゃくれねーよ。神がこの世で一番頼りにならない!!神を心の支えにして生きる事が人間の強みであり弱みだろう。 マックス・フォン・シドウが“標的”を前にナイフを突き立て、まるで死刑執行人のようにイスに座り待つ。この場面がスゲー怖いのよ。シドウがナイフで“死刑執行”していく場面は黒澤明の「羅生門」で見た独特の殺陣や戦闘を思い出す。 ラストの少女から湧き出る泉は何を物語んだろうね。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 14:17:59)
62.  死刑執行人もまた死す 《ネタバレ》 
ラングは人によっては「ドイツ時代よりも冴えがない」という人もいると思うが、俺はアメリカに来てからの方がより面白くなった監督だと思う。 1930年代~40年代はドイツ時代の「M」や「怪人マブゼ」から連なるラングの黄金時代だ。アメリカ時代は「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」や「スカーレット・ストリート」「激怒」が最高だと思うが、この作品もラングが生きてきたドイツへの望郷とナチスへの反抗が詰め込まれた傑作。 劇中で命を燃やすレジスタンスたちはラングの分身。 麗しき女性たちにはドイツ時代に長年コンビを組んだ愛しきテア・フォン・ハルボウの面影でも刻まれているのだろう。  サスペンス映画としては2時間オーバーと長尺だが、ダレも飽きも感じさせない密度。 銃撃戦はほとんど無いが、徹底した骨太のドラマとスリリングなやり取りの数々で次から次へと楽しませてくれる。  また、レジスタンスを処刑するゲシュタポ側も一歩間違えれば問答無用で殺される・・・その辺の怖さ。  何より本作が求めるものは「屈しない」という事だ。 戦争に屈してたまるか、独裁に屈してたまるか、俺たちは自由に生きるんだ、自由のために闘うんだ、自由のために死ぬんだ。負けてたまるか!!  処刑台に連行される男たちは、実に清々しい顔つきで散っていく。「あの世で会おうぜ!!」  Not The End.
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-14 16:38:45)
63.  女王陛下の007
文字通り“一発”の弾丸レーゼンビー。 007シリーズにおいて異色とされる本作だが、むしろ小説からして見ればコネリー版007が異色というか“異常”である(褒めてる)。 イアン・フレミングもビックリだろうぜ。まさかボンドが野獣みたいな(賛辞)ゲドゲドの悪党面(大絶賛)のショーン・コネリーになろうとは(だからコネリーはカッコ良いのだ)。 映画ファンにとってはコネリーが唯一絶対のボンドになってしまった。そしてアホ(褒めてる気がする)のテレンス・ヤングのせいでハードボイルド風ギャグ映画になってしまった(そこがボンドシリーズの良いところです)。  そんな007ファンにとって本作「女王陛下の007」と「カジノ・ロワイヤル(2006)」は異質に見えたのだろう。 だが俺はその異質と言われる誰よりも“普通の人間臭い”ジョージ・レーゼンビーの「007」が好きなのだ。 冒頭の曲の掛かり方が素晴らしいじゃないか。 スキーによる格闘戦なんか超カッコ良いじゃないか。 ラストシーンのレーゼンビーの演技はシリーズ屈指、いやレーゼンビーにとってもベストな演技だと思う。 そうだ、これは「007」じゃない。紛れもなく「007」だ(どっちだよ)。 誰でもショーン・コネリーのような野生やプロース・ビアスナンのような中年ダンディズムに達せられるワケじゃない。 かといって、ダニエル・クレイグのような屈強な戦士になれるワケでもない。みんながスーパーマンになれるワケないじゃないか。 コネリーやブロスナン、クレイグにできない事をレーゼンビーはやってくれたと思う。誰よりも普通で、誰よりも哀しみを背負ったリアルな「007」として。   え?ジュン・ヒューストンの「カジノ・ロワイヤル」?何ソレ?オーソン・ウェルズには美味しいの?
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-13 17:57:36)(良:3票)
64.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
ワイルダーの傑作は数あれど、個人的に最高傑作を一つ挙げるとすれば「深夜の告白」になるだろうか。 レイモンド・チャンドラーと組んだシナリオというだけでも凄い。 「失われた週末」「サンセット大通り」に先駆けた初期の傑作フィルム・ノワールであり、ワイルダーが余り好きで無いという人間にもオススメする作品だ。  真夜中のハイウェイ。 冒頭から車をブッ飛ばして会社に駆け込む一人の男。どうやらこの男はかなりワケ有りのようだ。 そこから回想形式で事の顛末を告白していく形式が面白い。 如何にして事件に至ったのか。倒錯的なサスペンスとして、中盤から徐々にスリルを増していくストーリーが面白かった。 エンジンが中々かからない場面も異様に緊張感を盛り上げる。 バーバラ・スタンウィックの悪女振りも最高。真の主役はフレッド・マクマレイではなくエドワード・G・ロビンソンなのかも知れない。どちらも素晴らしい名演だ。  ワイルダーと組んだレイモンド・チャンドラーだが、この二人の折り合いは最悪と言っても良い。 ジェームズ・ケインの原作が元だが、そもそもチャンドラーはケインの作品が大嫌いだった。元々金欲しさで契約を結んでいたに過ぎず、ケインと同席しようものなら遠慮なく作品を酷評するほどだった。ワイルダーも余り好きではなかった。 ワイルダーが長くコンビを組んてきたチャールズ・ブラケットまで「糞」呼ばわり。こんな状況で一体どうやってこの傑作が生まれたのだろうか。不思議でしょうがない。  だが、それと作品の完成度は別だ。 チャンドラーの鮮やかな脚色、ワイルダーの辛辣な人物描写。制作現場のギスギスした空気は、そのまま映画の面白さに結びつく。 そんな二人を不安に満ちた表情で見守るかのようなミクロス・ローザの音楽も秀逸だ。いや、実際にカメラで見守るのはジョン・サイツの見事な撮影だろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-11 21:32:42)(良:1票)
65.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
「ヒズ・ガール・フライデー」「イヴの総て」に並ぶセリフ劇の傑作。 フランクリン・J・シャフナーが演出を手掛けたドラマが原作だが、映画版となったシドニー・ルメットのこの作品もモチロン面白いし、リメイクとなるウィリアム・フリードキン版やニキータ・ミハルコフ版もまた面白いんだよなコレが。 同時に、ハリウッドのアカデミー賞ってシステムがクソッたれだという事もよーく解る作品だ。 あの雨上がりのシーンを撮影した名カメラマンのボリス・カウフマン! ソ連出身、「これがロシアだ!(カメラを持った男)」を手掛けたジガ・ヴェルトフの弟、 「アタラント号」「波止場」「ベビイ・ドール」を撮ったカウフマンに撮影賞を与えないなんてアホなのか? そりゃあ、受賞した「波止場」に比べたらシーン数は少ないだろうよ。 だが、ラストシーンにおけるカウフマンの撮影が無かったら作品の評価そのものが割れるほどだと俺は断言したい。 何と言ってもヘンリー・フォンダが闘いを終えて外に出るシーン。 今まで降っていた雨が止み、法を巡る論戦からの、密室からの解放感。濡れたアスファルトから漂う蒸気の涼しげな様子。その場所でフォンダと御老公が互いの健闘を讃えてそれぞれの名前を聞くシーン。 このシーンの何ともいえない空気感というか、一仕事終えた後のあの達成感。 それがラストシーンに刻まれているのよ。 密室において繰り拡げられる12人の男たちの言葉をぶつけ、言葉による殴り合い。たった1人の少年の命のために。 無罪なら(人生を)延長、有罪なら即座に・・・無駄と解ったらブッ殺して(死刑)楽にしてやればいいのだから。 異を唱える1人の男がイカれているのか、 それとも何の疑問も抱かず問答無用で少年に死刑を下せる11人の男たちがイカれているのか。 セリフだけかと思いきや、証言を思い返す内に出てくるナイフ、現場再現、子供の写真、そして眼鏡。 フォンダの言葉だけが11人の男たちを動かすワケじゃない。 過ぎる時間、暑さ、降りしきる雨、雨、雨。心も身体も消耗、誰が最後まで粘り、誰が最後に折れるのか。 12人の、そして傍観者・伝達者として部屋に出入りする13人目の男。 欲を言えば例の女性や例の御老人の姿も一瞬でいいから見せて欲しかった。 ま、そこは小説のように想像に任せるとしましょう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-11 02:19:02)
66.  ジャッカルの日 《ネタバレ》 
ジョン・フランケンハイマーの「影なき狙撃者」に次ぐ佳作。 ジンネマンだから見る気すら起こらなかったけど、「ジャッカル」とか言うクソリメイクを見てしまったのが間違いだ。ただジンネマンを少し見直せたという意味ではちょっぴり感謝していると言えよう。 「暴力行為」の一発屋という印象があったジンネマンだが、コレは中々面白かった。 いつものジンネマン特有と言えるピリピリした空気で緊張が保たれる。 「真昼の決闘」なんて勘違い西部劇は緊張が保たれるものの決闘が1回だけと解かってしまい極めて退屈な映画だったが、「ジャッカルの日」は殺し屋とフランス官憲たちの心理描写が面白い。 ドゴール将軍の暗殺を巡って繰り広げられる追走劇。 イギリス出身という事以外名前も解らず謎がジャッカル。彼の完璧と思われた計画がパリの習慣によって狂う瞬間は息を呑む。 キツネ(エドワード・フォックス)が“ジャッカル”というのも皮肉なものだ。 政治的に“黙殺”されていく暗殺者の孤独。ルベル警視はそれを悟っていたのかも知れない。 ジンネマンはやはり現代劇でこそ真価を発揮する男だ。「地上より永遠に」「ジュリア」も良い作品だと思う。 
[DVD(字幕)] 8点(2014-03-06 14:08:27)
67.  少女ムシェット 《ネタバレ》 
再見。 何度見てもハートフルボッコの筈なんだがなあ…ヒロインの健気な姿を見るだけで元気になれるのは何故なんだろう。  「バルタザールどこへ行く」に並ぶ、少女の不幸を冷徹な眼差しで…いや見守ってやることしか出来ない無力さに打ちのめされるシネマトグラフ。 この映画を見て落ち込んだという方には同じブレッソン「スリ」「ブローニュの森の貴婦人たち」、ドタバタコメディ「公共の問題(公共問題)」、良い意味の“ハラハラ”を味わいたいんだよという人には「抵抗」を見て心を癒すことをオススメします。   薄暗い部屋で心配事を語る疲れ切った女性、森の中で茂みをかき分ける者、帽子から輪になった紐を取り出し、木の枝に括りつけて草木の上に置く者、“仕掛けた”者が待っていたもの、引っ掛かり悶える鳥、それを掴み取る手、一部始終を見届ける視線。 抜け穴、収獲、すれ違う帰還者と登校途中の少女。  授業でみんなが歌う中で口をつむぐ理由、だからって突き飛ばしピアノの前で首根っこ掴んでまで曝しものにするこたぁねえだろ。何度も歌わされ、嘲笑され、耐えきれなくなり顔を覆い泣き出してしまう。誰も助けちゃくれない。 男の子もわざわざ呼び止めてズボンを脱いで見せつける嫌がらせ。  家に帰れば父親たちは夜遅くまで酒に溺れ(警察にバレないように酒瓶を布で隠して)、冒頭で語っていた母親は病で寝込み、夜泣きする赤子の世話と忙しい。  だが彼女もただ黙って耐えるだけの少女じゃなかった。 ちょっと大人の男に視線を送っただけで平手打ちを浴びせるようなロクでなしの父親だ。教会にもわざと泥まみれの靴で入るのは、突き飛ばされるのが分かっていても暴力を振るう父親へのせめてもの抵抗。 それは散々な目に遭っているのにどうして宗教にまで縛られなきゃならないの。何もしちゃくれねえ宗教なんぞを信仰する馬鹿馬鹿しさ、冗談じゃないと彼女が…ブレッソンが叫びたかったことなのかもしれない。  下校時には道脇の茂みに伏せるように隠れ、女生徒たちに泥をブン投げまくる。例え振り返ったとしても隙あらば投げることを繰り返す。 幼い少女たちは下着が露になるのもお構いなしに鉄棒を回り、香水をかけ合い、男の子が乗るバイクにまたがり、早く大人になりたそうに振る舞う。 遊園地に行くのは憂さを晴らすため。ゴーカートのぶつけまくりぶつけられまくることが許された運転、回転飛行機で飛ぶように二人きりの男女を見つめる視線。  密猟の男たちが河原で拳を浴びせ揉みくちゃになるのは、仲直りし飲み合うため。  スカートからのぞく女の肢体、ストッキングを止めるバンド、泥に埋まり残される靴、雨に濡れた少女を“捕まえる”ための誘い、手の出血を焼けた枝で止める荒療治、蝋燭立てになった酒瓶、机の上に逆さまで並べられた椅子、カバンの中にしまわれる小銭?、ふら付き発作が起きようが泡を吹くまで飲んだくれブッ倒れる。虚空を見つめて目を開っきぱなし、そんな姿に思わず歌うのを嫌がっていたはずの少女が男を介抱するため、子守唄を聞かせるように歌声を響かせる。 豹変、酒瓶の山を落とし割り、机を薙ぎ倒し、燃え盛る火の前まで追い詰め襲い掛かる。どうして男ってこんな奴しかいないの?という絶望。  木の枝に紛れる逃亡、辛いことがあったら母親の手を掴み慰めてもらう。わずかに残った希望…。  森番に部屋の中まで連れられ夫婦揃って説教を喰らい、ミルクを買いに行った先で親切にスープとパンを振る舞いポケットに“ほどこし”を入れる女主人。ポケットに手を入れる「スリ」とは真逆の行動で彼女に幸せが訪れるのか…それを粉砕する様に割られてしまうカップ。机の上に投げ捨てられる“ほどこし”。  文句言いながら渡されるほどこしなんて御免だよと、絨毯を泥だらけの靴で踏みにじる。  ウサギ狩りで猟銃が刈り取る命、命、命。「バルタザールどこへ行く」の動物たちがそうだったように、この映画も容赦なく犠牲になっていくのだ。  もらった服も木の枝で引き裂き、寝転がり草まみれにし、それを纏いながら転がって、転がって、転がり続けた先…。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-28 18:41:11)(良:2票)
68.  市民ケーン 《ネタバレ》 
「フォルスタッフ」「黒い罠」「オセロ」と随分楽しませてもらったウェルズだが、この作品はどうも退屈だった。というか、この映画1本だけでウェルズを語るのは「市民ケーン」以外のウェルズへの過小評価にも等しい行為だ。そのせいで日本における、いやアメリカでもウェルズは過小評価されてきたのではないだろうか?だからハッキリ言っておきたい。ウェルズは絶対に「市民ケーン」以外も見ろ、と。この映画を楽しめなかった人・楽しめた人すべてに。  この映画もワンシーンワンシーンは好きなんだけどさ。 新聞社に乗り込んでどんどん成長させていくシーンとか、 ケーンと奥さんの冷え切った会話、 鳥が飛び立つような場面転換、 終盤で怪獣のように室内で暴れる様子は「ゴジラ」へ、その暴走を止める「薔薇の蕾」、 鏡の前を歩き幾人にも分裂するケーンの姿・・・。  重厚な音楽と共に始まるオープニング。侵入を阻む柵、鉄格子、まるで城のようにそびえる不気味な黒い建物。 窓の灯りが消えたり付いたり、雪が降り続ける丸い球体が手から転げ落ち、砕け散る。「薔薇の蕾」の言葉を残して・・・。 続いてたった今くたばった人間の生涯を語るニュースフィルム。城主に君臨する新聞王としてのケーン。 およそ10分に渡るニュースフィルムが終わると、続いて新聞記者が“本当のケーン”探しに出かける。劇中の人物は時折黒いシルエットのように映される。 夫としてのケーン、雪の中で無邪気に遊ぶ子供だったケーン、養子としてのケーン、野心を燃やして新聞社に乗り込む若者としてのケーン、共に仕事をした仕事仲間としてのケーン、ライバルとしてのケーン。様々なケーン像が明らかにされ、過去を語る場面と共に蘇っていく。  映画そのものが偽りであるように、世間に知られるケーンもまた偽りの存在でしかない。劇中の記者は、観客は本当のケーンを知る事が出来るのか、出来ないのか。様々な要素を持った謎解き映画でもある。  残された夥しい遺品に蟻のように群がる人々、街のビル群のようにも見える遺品の山。そして何も知らない人々に焼き尽くされる“真実”。黒い煙はケーンのいるあの世にまで届くのだろうか。 すべてを奪われ、すべてを手に入れたつもりになって、本当に欲しかったものは最後まで得られなかった。   修復版で意図的にザラザラにしたニュース・フィルムの演出まで修復してしまったのは残念でならない。
[DVD(字幕)] 8点(2014-01-31 11:20:55)
69.  JAWS/ジョーズ 《ネタバレ》 
ハワード・ホークスの傑作「リオ・ブラボー」の換骨奪胎、そして「虎鮫(Tiger Shark)」やクリスティアン・ナイビイと組んだ「遊星よりの物体X」といった作品へのオマージュも散見されるパニック・サスペンスの傑作。  日本で言う虎鮫(Cloudy catshark)は小さい鮫だが、アメリカの虎鮫・・・いやイタチザメ(Tiger Shark)は巨大な顎で人間を食いちぎるモンスター。  日が落ちた海岸の闇、恋人と戯れる水着の女性は海原に飛び込む。何も知らない彼女は、水中で優雅に脚を動かしている。海の底から獲物めがけて徐々に浮上する“捕食者”の視線。ジョン・ウィリアムズの不気味な音楽が恐怖を最大限に盛り上げる・・・イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」は、“捕食者”が奏でる夏の悪夢へと変わる。  前半は恐怖から逃げる事しか出来なかった人々。それを、鮫に因縁を持つクイントの一撃がこの映画の流れを変えてしまう。   「ジョーズ」は、身近な海に潜むサメの恐怖を描いたパニック映画だが、ただ人がギャーギャー叫ぶだけの映画ではない。 その恐怖に屈するか、サメに勝つか。そんな人間の愚かさや葛藤のある人間ドラマが一番の見所だね。  後半のガラッと変わる展開も面白い。  サメとの因縁が深いクイント。討伐組を引っ張る頼もしい男だが、次第にサメとの因縁や過去の哀しみを語る姿・・・最後の最期まで誇りを持って戦ったカッコいいオッチャンだ。 本編ではカットされてしまったが、店で子供と戯れるシーンとか、見れば見るほど好きになる人だ。 ジョーズは、魅力的な登場人物が多くて何度見ても飽きません。 それにサメが近づく度に緊張を極限まで高めるジョン・ウィリアムズの音楽!あの音楽を聞くためだけでもまた見たくなってしまう。  終盤はいよいよその恐怖の的との真っ向勝負! これ以上、誰も死なせたくない。人間の意地、サメにもサメの生き方を通さなきゃならない意地、こっちにも生きるための理由がある。だから戦う!  壮絶な決着の後に訪れる、静かなラスト・・・怖いけど、良い映画。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:58:35)(良:2票)
70.  ジョニーは戦場へ行った 《ネタバレ》 
ダルトン・トランボ自らの小説「ジョニーは銃を取った」の映画化。  オープニングのドラムの連打。  まるで機銃を掃射するように一つ一つ叩かれる音は、機銃に斃れていく兵士の叫びでもあるのかも知れない。  トランボの戦争に対するあらゆる怒りがこの映画には詰まっている。  戦争が起こる度に原作小説を発禁にしてきたアメリカ政府の傲慢。  「人間」として殺され、消耗品の「弾丸」という兵士にされていく人々。  戦争そのものに殺されていった人々の叫びをトランボは聞いたのかも知れない。  原作は第二次大戦が勃発した1939年。  まだ第一次大戦の暗い影を引きづっているような時代に続けざまの戦争。  第一次の頃に子供だった人間が、大人になった途端に戦場に出され殺されに行く。  何処にいたって戦場だ。子供も大人もみんな無差別に焼かれる。  戦争したけりゃてめえらだけでやれ。どうしてこんな争いのために我々が殺し殺されねばならんのだ。  顔を焼かれ四肢をもがれた「ジョニー」からはそんな激しい怒りが伝わって来る。  美しき過去の「幻想」、光の届かない闇の「現実」。  戦場に行けば二度と戻れないかもしれない。だったら死ぬ前に好きな人を思いっきり抱きしめてやりたい・・・。  叫びたくても叫べない、  触りたくても触れない、  泣きたくても泣けない、  眼をつぶりたくてもつぶる眼も無い。  こんな人間を誰が作った!  「ジョニーよ、銃を取れ」と無責任に叫んだ全ての人々だ。  自分の利益のために他人の死体を踏みつけにしてきた多くの人間だ。  トランボはそんな人間への怒りを命懸けで叫んだ。  何が赤狩りだ。  何がプロパガンダだ。  ジョニーの気持ちを否定できる奴なんざこの世にいない。  何故ならジョニーの苦しみはジョニーにしか解らないのだから。  我々はジョニーのありのままを受け止め考える事しかできないのだから。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:54:28)(良:1票)
71.  死の谷 《ネタバレ》 
ラオール・ウォルシュが描く西部劇の傑作の一つ。  ウォルシュ監督の「ハイ・シェラ」を西部劇としてより洗練させてリメイクした。  現代的な様相、何処か虚無的な雰囲気、ファムファタール(悪女)の誕生・・・フィルム・ノワールとしても面白い西部劇だ。   ガンファイトは物足りないと感じる時もあるが、冒頭から脱獄、駅馬車の襲撃など要所要所でアクションが程よく入り人間ドラマもかなり面白いのでダレが無い。  ラストの警備隊の追撃や二人の最期はガンファイトとしても素晴らしい&壮絶なシーンを見せてくれた。   本編は白人とインディの哀しき運命を描くストーリーだが、この映画は「生」と「死」が強調されている。 白黒の画面だからこそそれを色濃く感じられる。  主人公は犯罪を犯した“罪人”であったが、一度牢獄から出て「カタギの人間」としてやり直そうとした。  旅を続ける傍ら様々な事件に巻き込まれ、インディアンの混血の娘に惹かれる。  二人は次第に強い絆で結ばれていく。  祝福する者は誰もいない教会での結婚式・・・社会からはみ出した者同士にしか解らない痛みと温もり。 しかし運命は主人公を元の犯罪者という逃れられない「死」へと追い込んでいく。  一度犯罪を犯せばその烙印を一生背負う。  一度人を殺せばもっと重い烙印を背負い続ける。  そんな事を言われているような胸に響く映画だった。   この映画は90分だが、「たった90分」と思うほど時間が早く感じられる。  もう30分この二人のやり取りが見たいくらい切なくなってしまう幕切れだった。  握った手・・・二人は一緒にあの場所へ行けたのだろうか・・・。 「暗黒街の弾痕」といい、「ボニー&クライド/俺たちに明日はない」といい、どうしてこんなにも切ない映画が多いのか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-30 10:10:01)(良:2票)
72.  情婦 《ネタバレ》 
アガサ・クリスティーよりもパトリシア・ハイスミスの方が面白いと思う俺は正直クリスティーの映画化作品はどれもハズレばかりという印象。 だが、ワイルダーのこの「検察側の証人」はクリスティーの傑作短編群にも引けを取らない、数ある映像化(ドラマは除く)の中で唯一と言っていい傑作! 俺個人はワイルダーといえば「深夜の告白」や「アパートの鍵貸します」だけど、この作品も一気に引き込まれるし何よりチャールズ・ロートンとエルザ・ランチェスターといった面々のやり取りがとにかく楽しくて面白い。 ワイルダーの映画って狙いすぎててイマイチ笑えないのだけど、この作品は冒頭から笑いっ放しだった。 裁判の幕が上がるようなオープニング、そこに向う役者を揃える様に一人ずつ登場人物が姿を現す。 老練な弁護士ウィルフリッド、それを何かと心配する看護婦のミス・プリムソル、ウィルフリッドを助けるブローガンムーア、殺人の疑いをかけられるレナード、そして謎の女であるクリスチーネ。 ウィルフリッドとプリムソルが夫婦喧嘩(チャールズ・ロートンとエルザ・ランチェスターは何度も共演するガチの夫婦)をしながら車で事務所に向う場面。二人が喋るだけで楽しくなってくる。階段のリフトを見て子供のような表情を見せるロートンが面白い。このリフトのやり取りだけでも見ていて飽きない。 ところどころ伏線としか思えないセリフばかり。 何?マッチがない?君は悪い奴だ、え?ライターはある?君は良い奴だよ・・・都合良いなあ本当。 やっと退院しかたかと思えば山ほど来る依頼に口うるさい看護婦。葉巻もロクに吸えない、杖に仕込んでまで吸おうとするヘビースモーカー。 そんな彼を動かしたのはその葉巻だった。ポケットの葉巻を見て飛びつくウィルフリッド。葉巻目当ての依頼承諾がとんでもない事件に発展していく。その葉巻を「あ、そうだった」と思い出したかのように返すウィルフリッド。嫁にバレたらマズい。 モノクルの“光”で心理分析、法廷でもウィルフリッドの薬で経過時間を表現したりと単なるセリフ劇に終わらせず一切退屈させてもらえない面白さ。 レナードとクリスチーネの過去も面白い。コ-ヒー1杯飲むためにキスを繰り返す“楽しい取引”、タバコとガム、ベッドにダイブで天井崩壊、ディートリッヒの生脚。 ダメ男を助けるための大芝居、そんな尽くす女を裏切るかのような二重三重の大どんでん返し。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-22 00:26:30)(良:1票)
73.  シャレード(1963) 《ネタバレ》 
純粋な娯楽として大いに楽しめる傑作サスペンス。  ヘップヴァーンのサスペンスと言えば「暗くなるまで待って」も面白いのだが、やっぱり「シャレード」の方が楽しくて好きだったりする。 なにしろ「北北西に進路を取れ」のケイリー・グラントのコミカルなキャラクターが楽しい。  ヘプヴァーンとグラントのやり取りは本当に飽きない。 疑心暗鬼が薄れたり高まったりの繰り返しもドラマを盛り立てる。 地味にジェームズ・コバーンまで出ているのも忘れがたい(当たり前だけど若っけえ)。  冒頭からセンスの塊のようなオシャレなオープニング、ヘップヴァーンの颯爽とした登場シーン。神オープニング。  今回のヘップヴァーンは色っぽいなあ。 オレンジを取るエロイ「ゲーム」で見せる艶めかしさ、パジャマ姿で髪を後ろに結ぶヘップヴァーンの可愛さ。  ストーリーは真犯人をめぐって様々な関連人物が登場するが、一人、また一人と消えていき最も信頼していた男にも裏切られるような展開はハラハラドキドキだ。 でもドーネンのユーモアに溢れた演出であまり殺伐とした空気はない。 なのに一切ダレる事なく楽しんでしまった。  ラストの劇場におけるクライマックスも面白いアイデア。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-21 23:33:56)
74.  ショーシャンクの空に
スティーヴン・キングの小説「恐怖の四季」に収録された「刑務所のリタ・ヘイワース」が原作。 スティーヴン・キングらしい「人間賛歌」と「不気味な宝探し」に溢れる。 原作のタイトル通り、リタ・ヘイワースやマリリン・モンロー、ラクウェル・ウェルチのポスターの使い方の巧さ。 その時代時代を代表する女優であり、世間から断絶された刑務所の時間経過をより解りやすくしている。 彼女たちが隠す「秘密」も大きな伏線となってくる。 所々に散らばった伏線、人間賛歌のヒューマンドラマから巌窟王になっていく切り替えの面白さ。 憎悪を超えた「理解」と「反撃」の数々。 冤罪によって収監された主人公のアンディ。 博愛主義でも偽善で物を言う男でもない。 いつも他人のために悩み、怒り、戦った。 ただ単に安らぎを求めていたのだから。 どんな暴力にも屈せず、望みを捨てずに懸命に生きる姿、古株のレッドやブルックスといった個性豊かな囚人たちとの心の交流。 最後の最後まで生きる事に執着した人々の人間賛歌も心地良い。  ティム・ロビンスの野心が見え隠れする奇妙で魅力な人物像、 モーガン・フリーマンの温かみのある演技。  同時期に「フォレスト・ガンプ/一期一会」、「パルプ・フィクション」、「スピード」といったキワモノ映画(大賛辞)のオンパレードに飲まれた不遇。 その中でもこの映画は最もおとなしく、最もパワーを爆発させた映画では無かろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-20 16:19:49)(良:2票)
75.  十三人の刺客(1963)
再評価です。 前見たときは戦闘まで淡々としすぎていて退屈でしたが、今回は「太秦ライムライト」を気に色々と見直す事にしました。 そしたら退屈どころかその丁寧なドラマ作りに見入ってしまいます。 それに戦前の時代劇を幾つか見たおかげで俳優陣の豪華さに今更ながら驚いています。「鴛鴦歌合戦」や「赤西蠣太」の名演を見た後だと、片岡千恵蔵の重きを置いた演技の良さがようやく解りますし、その補佐役として「鞍馬天狗」の嵐寛寿郎や月形龍之介など時代劇を支えてきた骨太の名優たち。どうしてこんな面々の凄さに今まで気付けなかったのか。戦前日本映画の凄さを知った今の自分には、老いて尚も重厚で重い時代劇を作ろうとした野心が伝わってきます。「十三人の刺客」は今でいう「太秦ライムライト」。 黒澤映画や小林正樹の「切腹」などは、今だと最新鋭の技術の粋とも言える「驚異的な存在」だったのでしょう。時代劇の人気が続く嬉しさの反面、サイレント時代から培われた「剣劇」というカタの衰退・・・それを残すべく千恵蔵を始めとする古参の強者、里見浩太朗や丹波哲郎をといった新進気鋭、西村晃など名バイプレイヤーたち・・・今考えると恐ろしい顔ぶれです。 終盤まで戦闘が無いのも往年の時代劇のようなドラマに重きを置いた作風であるし、数十分にわたる戦闘も阪東妻三郎の「雄呂血」や伊藤大輔の「忠次旅日記」えのオマージュにも似たこだわりが感じられます。 この映画の神髄はサイレント時代の「呼吸」を理解しないと中々味わえないものなのかも知れません。
[DVD(字幕)] 8点(2013-12-24 12:53:08)
76.  七人の侍 《ネタバレ》 
個人的には後年の「椿三十郎」や「天国と地獄」の方が完成度は高いと思うが、やはり一番好きな黒澤映画はコレになるだろうか。俺にとって白黒映画の悪いイメージを払拭してくれた思い入れのある作品の一つ。  ジョン・フォードやボリス・バルネットが馬ごと追ってスピードを追求すれば、黒澤明の場合は馬を待ち構えて迎え撃つ視点。冒頭で野武士が走り去るのを見守る視点は恐怖から、最終決戦で馬を追いかけるのは「ぶった斬ってやる」と標的に一撃浴びせるために。  黒澤が受け継ぎリスペクトを捧げるアクションの素晴らしさも見所だ。 百姓と侍たちが絆を結ぶ展開・馬や群衆スペクタクルの迫力は伊藤大輔「斬人斬馬剣」や鳴滝組の「戦国群盗伝」、仲間集めと馬の疾走はフォード「駅馬車」、ユーモアと殺陣の切れ味は山中貞雄「丹下左膳」等々。  冒頭20分の導入部、麦が実る「麦秋」までのタイムリミット、鶯の鳴き声は春の証明。実るのが速い街の麦は時間の経過を伝えその得たいの知れない恐怖が強まっていく。 そこに光を差し込む官兵衛といった侍たちの登場。戦力が揃っていく頼もしさと楽しさ、人足や菊千代が百姓と侍たちを結び付けていくドラマ、戦闘準備のワクワク感。それが詰まった2時間だけでも面白いが、それを爆発させていく後半1時間30分の死闘・死闘・死闘!  登場人物もみんな味のある面々。 野武士を恨む利吉、娘が大事な万蔵、弱腰の与平、間に入って仲裁する茂助、侍に惹かれる志乃、どっしりと構える長老儀作。  侍たちも冷静な指揮官の官兵衛、地味ながらハニカミと戦闘時の怒気が頼もしい五郎兵衛、縁の下の力持ち七郎次、若く未熟な勝四郎、ノッポのムードメーカー平八、凄腕の剣客である久蔵、侍・百姓・野武士に片足突っ込んだトラブルメーカー菊千代。  それぞれに役割があって必死に生きようと戦う。特に菊千代は大きな楔。二つの立場を繋ぐ無くてはならない存在。 彼が居なければ官兵衛が百姓の心情を深く理解する事も無かっただろうし、また官兵衛がいなければ菊千代が村に来たかどうかも解らなかった。持ちつ持たれつの関係。  菊千代と官兵衛の一喝による「鎖」、野武士という打倒すべき目的は「道」となって団結を高めていく。さらには平八の死。百姓を代表する利吉の責任感、家族同然となった仲間の死。誰も裏切り者が出なかった理由がここにあるんだろうな。  劇中の野武士は作物を食い荒らす「災厄」でしかない。「災害」に感情移入すればコチラが殺される。殺るか殺られるか。野武士もまた仲間の死を還り見ず何度も突っ込む。理由は解らない。解らないからこそ怖い。色々な解釈が持てる存在だね。  とにもかくにもこれほど心打たれた作品、点数など安いもの。俺にとってマイフェイバリットな映画の一つだ。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-14 13:26:20)(良:4票)
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