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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 823
性別 男性

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1.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
最近には見られなかった直球の映画。クイズという形を借りて、彼の生き様を描き、彼の生き様を通して“夢”や“愛”を手に入れるという単純なハッピーエンドムービーを単純に楽しめことができた。スラムの負け犬でも、諦めなければなんとかなる、思い続ければなんとかなるという“甘い”ストーリーは非常に好みだ。本作は、社会派の映画でもなければ、リアルなインドの実態を描いた映画でもないだろう。ましてや、教養のない人間が、難問のクイズに答えられるはずもない。リアルティのある作品ではないが、そういうことはでうでもよくなるほどの出来栄えだ。 インドが舞台であることが、本作の勝因ともいえる。 この舞台がアメリカや日本だったら、全く面白くはないだろう。 出来すぎたストーリーに嘘っぽさを感じてしまうはずだ。 アメリカにはもはや「アメリカンドリーム」はないかもしれないが、発展を続けているインドには「アメリカンドリーム」があると感じさせるパワーやパッションの溢れる街であるというように魅力的に描かれている。 また、クイズを絡めて、一人の男の生き様を語るというのは素晴らしいアイディアだ。 普通に描けば、大して面白くないストーリーでも、この手法によりダイナミックさが加わった。ストーリーに飽きることがなく、画面に集中させる効果も非常に高いといえる。 個人的には、最後の問題をジャマールは回答できなくてもよかったのではないかと思う。ジャマールにとっては、“愛”さえ手に入れれば、“金”などどうでもいいもののはずだ。「三銃士」の三番目と命名したラティカ自身が分からない「三銃士」の問題を間違えるというのも面白い運命とも思ったが。もともとゼロからのスタートなのだから、ゼロの状態からジャマールとラティカがスタートする方がもっとイマジネーションは膨らむと思う。あの二人にはむしろ“大金”は不要ではないか。 さらにレベルの高い演出をするのならば、司会者が正解かどうか答える瞬間に画面が切り替わり、駅のシーンへ移行してもよかったかもしれない。彼が正解できたかどうかを、観客の心に委ねてもよいだろう。 ただ、最後のエンドクレジット中のダンスはややマイナスといわざるを得ない。 ダニー・ボイルはインド的なものを取り入れようとしたのかもしれないが、せっかく気持ちよくさせてもらったのに、あれで“夢”から一気に冷めてしまった。
[映画館(字幕)] 9点(2009-05-10 21:44:04)(良:2票)
2.  素晴らしき哉、人生!(1946) 《ネタバレ》 
「友人や困っている人を助けましょう」「自分の命を大切にしましょう」とかなり道徳的すぎるところもあるが、さすがに映画史に残る素晴らしい傑作といえる作品だ。 最近の映画のように、あえて難解にしてこねくり回すよりも、ストレートにメッセージを伝えており、非常に分かりやすい。分かりやすい単純なハッピーエンドだからこそ、多くの人の共感を得られやすいのではないか。現代の映画にはない“良さ”を感じられる作品だ。 また、ジョージがそれほど完全な善人というわけでもないのも気に入った。 彼には、自分の夢はあるが、夢が叶わない苛立ちやフラストレーションを常に抱えているのがよく分かる。 困難にぶち当たったときには、子どもや子どもの先生に八つ当たりしたり、物に自分の苛立ちをぶつけたりもする。 ときには、金儲けの誘惑にも負けそうにもなる。 聖人君子のような、現実にはいないだろうという完全なキャラクターではなく、欠点を抱えた、より現実的なキャラクターとしてジョージは存在している。 ジョージは架空の存在というよりも、自分自身の分身のように感じられるので、より共感を覚えやすくなっているのではないか。 そして、天使の存在も意外といい効果を発揮していると思う。 たいていの人間ならば、「人生は過酷なものだ」と分かっているはずだ。 「人生に奇跡など起きる訳がない」とも知っている。 しかし、天使が登場することによって、本作にファンタジックさの色合いが濃くなる。厳しい現実世界ともやや異なる世界であるとイメージ付けることによって、奇跡が起きても、すんなりと受け入れることができるようになっているのではないか。 そして、ファンタジックな世界ではあるものの、相反する現実的な色合いもまた濃いので、身近にも感じることができる。 虚構と現実のバランスが上手く取れた作品である。 現実世界を序盤に描き込み、天使の登場が終盤までズレこんだのも、功を奏している。 天使も全く天使らしくないのも素晴らしいアイディアだ。 全て計算で演出しているのならば、フランク・キャプラは天才といえるだろう。 観る人によっては、甘すぎ、ご都合主義的だと感じるかもしれないが、たとえ夢が叶わなくても、たとえ自分の人生が思い描いたものでなくても、たとえ平凡な人生でも、「自分の人生もそれほど悪くはないのかな」という錯覚に陥らせてくれるパワーのある映画と感じさせる。
[DVD(字幕)] 9点(2008-03-27 00:01:05)
3.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 《ネタバレ》 
EPⅡは渋谷で鑑賞。その時はコスプレ集団がいっぱいいて祭り気分に浸れた。今回は有楽町日劇1(21時30分)で鑑賞。今回もトルーパーがいっぱいいるかと思いきや、ほとんどいなかったのが残念だった。やはり有楽町は大人の町なのだろうか。しかしライトセーバー持ちこんでいる人が多々おり、それなりの独特の祭り気分には浸れる(EPⅠの頃は映画に興味がなくてどういう雰囲気か分からず)。 内容として「①いかにアナキンがダークサイドに陥ったのか」と「②アナキンとオビワンの溶岩での一戦」と「③パルパティーンの真の姿とその強さ」がどのように描かれるのかが興味があった。 ①に関しては、大きな軸としてパドメの死をいかに止めるかがダークサイドに陥る要因に描かれており納得できた。愛に固執してはならないというジェダイの教えが活きている気がする。さらにパルパティーンの策略により、ジェダイ評議会とアナキンをわざと対立させるようにし、アナキンを孤立・反発させるように仕立てており、論理的に脚本はよく出来ていると思う。演出としてもアナキンが一人たたずみ思い悩むシーンが好感的だ。あの「静」があるからこそ、心の内の「動」を感じることができる。また、通商連合を皆殺しした後に涙を流すシーンも効果的だった。パドメの最後の言葉と上手くリンクしている気がする。 ②に関しては、概ね良かったと思われるが、場所を動かすだけでなく、戦闘に何らかのもう一工夫あったら良かったのだが。ラストもちょっとあっけない気がした。「地の利」だけではオビワンにアナキンを倒すだけの戦闘力があるとは思えない。せっかくあの場所にパドメがいるのだからどっかで利用されるのかと思ったのだが。しかしアナキンが燃えあがるところはいい。ダースベイダーになるためにはあの位の激しい演出は必要だろう。 ③に関しては多少不満。動きが他よりもトロいと思う。まあヨーダに反撃食らって慌てるところは良かったが。ウィンドゥとの一戦は良かった。アナキンに引き返せない場所を創るために、わざと追い詰められる演技は最高だ。 さらに評価できる点としてはⅠ~Ⅲに掛けて民主主義の崩壊と独裁的帝国の誕生を描いている。ただのSFとは一線を画す。また、ジェダイの騎士惨殺には感じるものがあるし、ジェダイの子ども達も末路も描く必要はあったと思う。アナキンが更に越えてはならない一線を越えたと感じられる大事な場面だ。
[映画館(字幕)] 9点(2005-06-26 01:58:39)(良:4票)
4.  スパイダーマン2
まずオープニングクレジット出来が素晴らしい。 前作の復習が出来るだけでなく劇画風デザインのセンスの良さが光る。 前作での「ヒーローとして生きる決意」を引き継いで、本作では「ヒーローとしての責任の重さ」、「その重さと一人の若者としての葛藤」、「ヒーローの孤独感」の三点が上手く描けていたと感じた。 ヒーローではない時の一人の若者としてのピーターパーカーに対してスポットを当てることにより、家賃を稼ぐために働かなくてはならない等の日々の営みがある「一人の人間」であることを改めて強調している。 普通の人間であることを強調することにより、ヒーローの困難さとその重みがますます感じられ、またヒーローとして生きるためには何かを犠牲にしなくてはならないことに説得感が増す。 しかし、たとえヒーローであっても、人を愛することまでも犠牲にしなくてはならないのかという問いに対しては、苦悩する一人の若者ということを強調することにより、ヒーローでも人を愛してもいいんではないかという答えを出したと思う。 今回、顔を晒しまくったのは、ヒーローの重みは一人で背負えるものではない、周囲の人の支えや愛する人が見守ってくれるから、ヒーローとして頑張れるということを言いたかったのではないだろうか。 それを描いたのが、電車のシーンだろう。ヒーローモノとしては最高のシーンだと思う。 ピーターの表情も良かったが、ぶっ倒れそうなピーターを皆で支えるシーンは、ヒーローはたとえ一人で戦うとしても、一人だけでは出来ない、周囲の人によって支えられるから成り立つことを表しているように感じとれた。確か前作でも橋のシーンで周囲の人に助けてもらっていたはずだ。 他にもピーターには支えてくれる叔母さんがいる。 一度は捨てたはずのヒーローの道を取り戻すきっかけになる叔母さんのセリフは本作のテーマ。あの叔父さんと叔母さん夫婦は本当にピーターにいい影響を与えてくれる。 期待していたんだが「1」に続いて地味なままで終わったハリーは次回では出番がありそうで楽しみ。 エレベーターや腰痛ネタもあり、笑えるシーンや泣けるシーン、爽快なシーン、苦悩するシーンなど様々な感情を味わえる本当に良い作品に仕上がっていると感じた。
9点(2004-07-04 02:38:06)
5.  スクール・オブ・ロック
日比谷で観ましたが、観客ダイブとラストには拍手が巻き起こりました。 「LOTR」や「SW」ならよくある話だけど、それほどメジャーでもないこの作品でみられるとは思わなかった。それだけ皆ハマッたといえるのではないでしょうか。  自分もロックは全然詳しくないけど、十分楽しめた口です。 ジャックブラックの好演もさることながら「ロック」への熱い情熱を高く感じられる。  ブラックの役どころが特に良かった。 途中からブラックの子どもたちへの接し方も上からモノを言うというより、同じ目線で語っているように感じられ、演じる曲もザックが原案し、皆で一緒に完成させていく姿に自分も引き込まれた。  一番気に入ったシーンは、突然の曲変更で一番きつかった照明係に演者よりも一番に労をねぎらったようなところですね。 演者だけが光があたるのではなく、それぞれ一見地味な役ところにもクラスの子どもたちを配置し、クラス全体でライブを成功させたというのが伝わってくる。 だから、子どもたち皆活き活きと演じていたような気がする。  ブラックも「ロック」の精神を教えていたつもりが、子どもたちに改めて「ロック」の精神を逆に教わったのではないだろうか。  校長や同居人の「夢」や「大人」について語るサイドストーリーも描かれているのでより深みをましている。
9点(2004-06-25 14:36:32)(良:3票)
6.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
本シリーズは全くの未見だったため、本作を鑑賞する前に1と2をとりあえずチェックして本作に臨んだ。その予習があまりにハマったため、多少オマケをしたいところ。 「コバヤシ丸」テストのエピソードは、2を観ていないと深く楽しむことはできまい。未来のスポックが若いカークに出会った際に語ったセリフ「これまでもそしてこれからも私は永遠にあなたの友人です」も2を観ていないと“深さ”が分からないだろう。 このシリーズを観ていない者も楽しめるように作ったらしいが、やっぱり往年のファンを喜ばせるような作りになっている。 たんなる前日譚だろうと思っていたら、見事に裏切ってくれたアイディアは評価できる。パラレルワールド化したことで、既定路線を交えながら、新たな世界観を構築できるメリットを生んだ。新シリーズは新たな解釈を加えていくことが、これによって可能となったといえる。 パラレルワールドというアイディアもそうだが、冒頭の壮絶なシーンに対して、感動的な“出産”を上手く絡めてくるなど、「1+1」が「3」にも「4」にもなることをエイブラムスはよく分かっているようだ。 ただし、違和感があったのは、肝心のスポックだろうか。 バルカン人は感情を抑制し、全てを論理で物事を考えることができるという設定の割には、あまりにもあらゆる“感情”に溢れていた。 彼からは「怒り」「悲しみ」「喜び」「愛情」「友情」といったものが伝わってくる。 もっとも、地球人とのハーフであり、母親と故郷を同時に失っているので冷静にいられるわけではないということは分かるが、序盤のカークとの確執などは感情的になりすぎているところがある。 未来のスポックが語っていたように論理的に考え過ぎることは正しいことではなく、感情的になること自体はもちろん悪いことではないが、地球人らしい感情の表し方に終始しており、バルカン人らしさが上手く活かされていなかったような気がする。 カークとスポックがいい対比関係にはなっているものの、ややステレオタイプ的なところがある点が気になるところだった。 全体的にも、単なるSFアクションに展開しすぎるところが見られるが、最後の「新世界を探索し、新しい文明、生命体を求めて、人類未踏の世界へ」といった類のセリフを聞くと興奮が高まり、やはり低い点数は付けられない。 新シリーズへの期待感はいっそう高まってくる。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-14 03:18:50)(良:2票)
7.  スター・トレック(1979) 《ネタバレ》 
このシリーズは映画もテレビも見たことないので、初見となった。 70年代のSFが面白いわけないだろうと思っていたが、意外と楽しめたというのが正直な感想。 冒頭以外には、敵の宇宙人も登場せず、銃を使って撃ち合うこともない。 ストーリーは哲学的な内容で溢れており、現代ではなかなかお目にかかれなくなった、ある意味で斬新かつ新鮮なSF作品と感じられた。 「スター・ウォーズ」のようなエンターテイメント性、「エイリアン」のような神秘性、「未知との遭遇」「2001年宇宙の旅」のようなテーマ性を兼ね備えた作品に仕上がっており、ユニークかつ深いと感じられる。 その“深さ”も、一般人が楽しむことのレベルであり、理解できない難解さではないということも好印象だ。 本作をみて「機械ですら創造主を知りたい」と願うのならば、「炭素ユニットである我々も当然創造主を知りたいと願うのではないか」というようなことを考えていた。 宗教的な見地からも深みや面白みを感じられる。 深く考えれば、「人間と機械との違い」「人間とは何か」「人類の進化」という点まで広がる。 機械とは異なり、人間は非論理的であり、感情的であり、愚かなのかもしれないが、そうだからこそ、色々と何かを想像・創造して、幸福に生きることができるのかもしれない。 エンタープライズ号のクルー同士の微妙な関係も面白い。 はっきりしたことは本作では何も描かれていないが、「過去に何かがあったのだろう」と想像力が膨らむような作りになっている。 カーク船長も完璧な人間ではなく、ある意味では不完全な船長だ。 “機械”ではないので、不完全であることは当然なのかもしれない。 ただ、なかなか始まらないのでDVDが壊れているのかと思ったくらいに映画がスタートしないのは驚き。 いよいよ始まっても、序盤のスローな展開は異常。 エンタープライズ号にはそれほど興味が全くないので、ただの宇宙船を延々と映されたシーンが続いた際(ファンにとっては最高のサービスだと思うが)には、「これは絶対に寝るな」と思ったが、序盤を乗り切れば、あっという間にこの世界観に引きずり込まされる。 宇宙の神秘というか、宇宙の奥深さを感じさせるようにもなっており、ミッション終了後にカーク船長が宇宙に旅立つ前から、無性に「冒険に行きたくなる」ようにもなっている。 ファンが多いのも納得といえるデキといえる。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-14 03:06:20)
8.  スカイ・クロラ The Sky Crawlers 《ネタバレ》 
ビジュアルは文句なく、ストーリーも良く、しかも何かを考えさせるようになっており、非常に満足できる作品に仕上がっている。 世界や海外を意識したためか、自分の追求するスタイルを少々捨ててはいるが、自分のコアな部分はきちんと投影されている点は素晴らしい。 自分の世界観を分かりやすく伝えるのもプロの監督の仕事だ。 あまり彼の作品は観たことはないが、やはり押井監督はプロフェッショナルな監督だと感じさせる。 チカラを相当に注いだと思われるビジュアル面では他の追随を許さない圧倒的な美しさには驚かされる。 単に美しいだけではなく、空や雲の空気感・飛んでいるような感覚までをも描きこもうとしている。 ある意味では“芸術”ともいえる領域だ。 キルドレについては、現代の若者をイメージしているのだろうか。 空の多彩な表情とは変わって、能面のような表情が実にいいコントラストになっている。 感情的にならないドライな若者たちを非難しているようには感じない。 現代の若者を上手く捉えており、彼らに非常に分かりやすくメッセージを伝えたと思う。 本作ではキルドレの代わりがいくらでもいるという設定になっているが、現代の若者たちに対して「それでいいのか?」と問うているのではないか。 「オマエらは人形じゃない」「代わりなんていない」「この世界はゲームじゃない」ということを監督は伝えたがっているように感じた。 また、描くことが難解な微妙な部分を上手く演出している点を評価したい。 冷めているようで、ほんの少し熱い部分もある。 感情を表に出さないが、内面には秘めたる部分もある。 諦めているようで、何かを変えようともがいている部分もある。 逃げているようで、立ち向かおうとしている部分もある。 このような微妙な感覚を上手く演出しているのはプロの仕事だ。 菊地凛子の起用の成否の判断は難しいが、恐らく押井監督はギャンブルに出たのではないか。 彼女よりも上手い声優はいくらでもいたと思うが、彼女の下手くそさ(しっくりこない違和感)が良い意味で個性的な味わいが出たような気がした。 栗山千明のように悪くなくても印象の残らないよりも、冒険を犯して印象に残すということに主眼を置いて勝負したと思われる。 菊地凛子は好きではないが、そういう意味においては彼女の起用は当たった。
[映画館(字幕)] 8点(2008-09-04 00:32:56)
9.  スカーフェイス 《ネタバレ》 
2時間50分という長尺だけれども、その長さをまったく感じさせなかった。トニーモンタナの人生をきっちりと3部に分けて、飽きさせることなく描き切られている。 第一部は「チンピラから成り上がりまで」、第二部は「ボスとして伸し上がり、盛隆を極めた日々」、第三部は「落日」という感じだろうか。きっちりとストーリーが時系列に、かつドラマテッィクに流れていくから、飽きないのだろう。 これらを通じて感じたことは、「チンピラは、金を得て、権力を得て、女を得たとしても、やはりチンピラでしかない。」ということだ。チンピラという言葉は、トニーモンタナには失礼かもしれないいかもしれない。彼はトラみたいな猛獣のような存在かもしれない。決して群れることができず、周囲を信用することもできず、周囲を傷つけることしかできない。そんな孤独で哀しい男の「生き様」がしっかりと描き切られており、アルパチーノが見事に演じきった。まさにトニーモンタナという人間に完全になりきったような演技であった。アルパチーノのベストといってもよいのではないか。 そして、トニーモンタナの変化が痛々しくも描かれている。「びびったら心臓に悪い」と言いつつも、セキュリティを完備した「城」に立て篭もり、「信頼とガッツが自分の取り柄」のようなことも言っていたが、徐々に人々から「信頼」が失われていく。「世界をこの手におさめる」という「夢」を追い求めるものの、自分の「ファミリー」すら手中におさめることはできず、結局「金」に溺れ、「権力」に溺れ、「ヤク」に溺れていき、破滅への道を歩んでいくしかなかった。 トニーは前々から、エルヴィラに対して「子供は好きか?」とか、「自分の子供を生んで欲しい」と言っていたから、幸せな家族に憧れていたのだろう。父親はおらず、自分の母親から罵倒され、非難される。そんなバラバラな家庭生活を送っていたから、「子供」や「妹」、「家族」に対して、固執したのではないか。エルヴィラとの間に子供さえできていれば…彼の生活も少しは変わったのではないだろうか。 映画の評価としては、7点くらいかなあと思うけれども、アルパチーノの演技のおかげで、深みのある素晴らしい映画に仕上がったので、もう1点追加して、8点としたい。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-26 00:01:39)(良:2票)
10.  スネーク・アイズ(1998) 《ネタバレ》 
表面上のストーリーだけを評価すれば5、6点程度の映画なのかもしれないが、デパルマ監督の卓越した手腕を見せつけられたことにより、個人的な評価が随分上がった。8点はちょっと高すぎかもしれないが、デビットコープの大した事のない脚本を高レベルの映画にきちんと仕上げた点を評価したい(コープ脚本の「パニックルーム」を高レベルの映画に仕立てたフィンチャーと同様)。 ポイントはなんといっても、冒頭ちょっと過ぎからの「長回し」だろう。100分未満の映画にも関わらず10分以上をワンショットで撮ってしまう技量には驚愕する。その他にも分割画面により同時並行にストーリーを進め、緊迫感を高めたり、同じ場面を色々な角度から描いて、全貌を徐々に明らかにしたり、仕切られたホテルの部屋の上からカメラを動かしたりと、デパルマ監督の演出が冴えわたった見事な作品に仕上がっている。 ニコラスケイジも役になりきった演技が好印象だ。決してヒーローでもない安っぽい小悪党役が彼にハマッタ感じがする。金への誘惑などに対する「心」の揺れをタバコの手の揺れで表現しているのもベタであるが、分かりやすくてよかった。決して100万ドルの男ではなくて、血塗られた100ドル程度の男(汚れた安っぽい男)なんだよ、あのニコラスケイジの役は。 シニーズも好演している。彼は部下を見捨てて溺死させた過去によって「命」の重みに対して不感症になってしまったのだろう。数万の命のために数名の命を犠牲にしても厭わない「軍人」と、一人の命のために働くことが本分の「警官」の構図が面白い。また、親友同士の駆け引きも見所の一つになっている。 ラストではシニーズは自害し、ニコラスが親の一人勝ち(スネークアイズ)をしたかのように見えたが、実はそうではなかった。一躍「英雄」に祭り上げられるものの、汚職が次々と明らかになり(高級車に乗り回す)、「別荘(刑務所)」に行く破目になる(刑期を終えて真人間になったらジュリアはまた逢いましょうと言ってキスをする)。結局、親の一人勝ち(スネークアイズ)をしたのは、事件の全貌が闇に葬られ、予定通り建設を進めるパウエルであったと、ラストの宝石(赤毛の女が嵌めていたもの)が告げている。そういうオチにするんだったら、もうちょいパウエルにもスポットを当てても良かったかなとは思うが、真の悪人は捕まらないという一種のメタファーなのかもしれない。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-14 21:13:41)(良:1票)
11.  スリーピー・ホロウ 《ネタバレ》 
なかなか評価が難しい映画である。脚本は7点、演出は10点ということで平均すると8.5点なので、8点か9点にすべきかで悩むところ。 まず、本作を謎解きモノと考えればたぶん点数は低くなるでしょう。色々と風呂敷を広げた割にはストーリーが上手く整理ができていない上に、ストーリーを追った所で黒幕が誰かということに対して伏線が上手く張られていないので、観客やイカボットが黒幕を突き止めるという謎解き独自の面白さに対して評価はできない。 ホラーという点から見てもたぶん点数は低くなるでしょう。この映画を観て、ホラーだと思う人がいるのかどうかも分からないが、(首はいっぱい飛ぶけど)怖いと感じさせる部分は皆無と言ってよいのでないか。ホラー的な要素という点に対しても本作は評価はできない。 したがって、この映画はホラーでも、ミステリーでも、サスペンスでもない気がする。むしろ、新しいジャンルをバートンが創り出したのではないだろうか。バートン独特の世界を楽しむというのが、この映画の鑑賞スタイルのような気がする。スリーピーホロウを舞台に繰り広げられるスモークが掛かったようななんとも不気味な世界。ホースメンや魔女の妹、死の木など、今までの映画に観たことがなくどれも素晴らしいとしかいいようがない。 ただし、やはりこの手の映画なら登場人物等をもう少し整理して「謎解き」の要素を深めた方が映画としてはより評価されると思う。 また、本作は「魔女」をテーマに扱っている。黒幕は、母が周囲から魔女だと思われたため、村から追い出された恨みを抱えており、イカボットも母が魔女だと父から思われたため、母を父に殺されてしまうというトラウマを抱えている。それゆえ、イカボット自身、神を信じられなくなり、科学というか、原因と結果や理性といったものしか信じられなくなるというバックボーンがある。 そういう設定であるにもかかわらず、それらが何かうやむやにされた感がある。黒幕とイカボットはバックボーン自体は同じであるにもかかわらず、そういう設定が上手く説明・利用できておらず、ラストのオチとしては上手く落ちない感がある。科学信奉者が非科学的なものに挑戦するとういう設定自体は面白いが、その設定が上手くストーリーには噛み合わなかったかなという気がする。また、彼がこの事件を機にどのように変わったのかという視点を分かりやすく組み入れても良かったと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2005-08-14 16:18:35)
12.  スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃
エピソード1~3の流れの中で、本作は、アナキンの心の弱さを中心に、正規軍という名のクローン軍が創設されてしまい。また、ジェダイの力が弱まりつつあり、ダークサイドの力が元老院にまで及んでいることが描かれている。 大きな流れの中では、エピソード2の位置付けの意義は充分と考えられる。 一方、エピソード2を単体の映画と評価すると、後半の怒涛の展開には文句のつけようが無く、満点を付けても良い。ただ、どうも中盤のバランスの悪さが目に付く。 確かにアナキンがダークサイドに転落するまでの大切な過程なので、じっくり描くことは否定しない。 タスケン族惨殺事件は、自分の力の足りなさによって、母を死なせてしまったという自分への苛立ちとオビワンへの怒りを描くためにも必要不可欠だ。 エピソード1でヨーダが、恐れは怒りを産み、怒りは憎しみを産み、憎しみは苦痛を産むというセリフからもここは大事な部分だろう。 問題は、アナキンとパドメの恋愛だ。確かにこの二人が恋に落ちないと、ルークとレイアが産まれないので既定路線であり仕方がない部分はある。しかし、必要以上にこの二人の関係が描かれすぎている。エピソード3で強引に二人の関係を引き離そうという動きでもない限りやり過ぎではないか。この二人の恋愛をファンが見たいかどうかは想像がつくとは思うが。 そして、ルーカスの演出方法として、様々なストーリーを同時並行的に描く手法がよく用いられる。ストーリーがよりスピーディーになり、より引き締まるという効果があるとは思う。しかし、今回のようにジャンゴを追うオビワンとパドメ護衛のアナキンのストーリーを並行的に描くことによって得られる相乗的な効果は、それほどない。 緊迫感のあるジャンゴとオビワンとのやり取りに対して、野原で二人でゴロゴロしているシーンを並列的に並べるのは、互いを殺してしまっている気がする。 もしどうしても描くとすれば、今回ばかりは、それぞれのストーリーをややじっくりと描く必要があったと思う。 個人的に好きなパルパティーンがイマイチ出番がないのが残念だが、要所要所でしっかりと影を感じられたので良しとしたい。
[DVD(字幕)] 8点(2005-06-12 19:40:33)(良:1票)
13.  スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 《ネタバレ》 
評判は良くないけど、映画自体はとても良く出来ていると思う。 脚本はよく練られているし、映像も素晴らしいとしか言いようが無い。欠点を一言でいえば、「スターウォーズ」らしくないというところだろうか。 エピソード1~3までで、アナキンがダースベイダーになるまでと、共和国が帝国になるまでが描かれると思われる。今回、序章ということで、アナキンがパダワン見習いになり、パルパティーンが議長になるところまで描かれるのは総論からすれば、充分だろう。パルパティーンは結構好きだな。エピソード1~3の裏の主役ではないかと思うほど存在感がある。 各論からすれば、ポッドレースには臨場感があり、アナキンの細かいリカバーなど詳細に描かれている。ポッドレース自体は素晴らしいと思う。しかし、ストーリーに比して、このポッドレースに重きを置きすぎている気がする。バランスが悪すぎる。 一方、ラストの展開はなかなか面白い。クワイガン他1名とダースモールの戦い、ジャージャー率いる部隊と機械兵との戦い、アナキンの戦闘機での戦い、パドメの侵入作戦と4つのストーリーを交互に描くことで、よりスピーディーな展開となり、ダースモールの戦いの緊張感が他のストーリーにも及ぼしていて、よりよい効果をもたらしている。 しかしこのような効果にも関わらず、各ストーリーのオチはお粗末なものだ。 ジャージャーの戦いは陽動作戦であるためこのオチは動かしようはない。ただアナキンのはなんとなく…過ぎないだろうか。フォースのなせる技という説明かもしれないが、R2-D2が誘導したなりの説明が必要かもしれない。 パドメの侵入作戦は、総督がいきなりパドメに対して女王であることを前提に話し始めたため、「おい!どういうことだ!」と突っ込もうとしたら、偽のアミダラが出てきてよく分からない内に終わってしまう。 ダースモールの戦いも拍子抜けだ。あれくらいでオビワンが勝てるぐらいなら、クワイガンの存在が薄くなってしまう。クワイガン即死でないなら、最後に弟子のためにダースモールの動きを邪魔するくらいしないと不味いだろう。
[DVD(字幕)] 8点(2005-06-12 16:00:16)
14.  スパイダーマン(2002)
本作のテーマは「ヒーローの宿命」ということでしょうか。 ヒーローとして生きるということは、たとえ好きな人を愛したとしても、それは結局、彼女を傷つけることにしかならないというヒーローの宿命を描きたかったのではないか。 しかし、一緒には居られないが、いつまでも好きな人を見守り続ける覚悟を決めたのが、ラストの墓の告白シーンで感じられた。 そして、何度も繰り返し語られた「大いなる力には大いなる責任が伴う。」ということを、全般を通してかなりねちっこく描いていると感じた。 自分に関係ないと思っていた犯罪者が、ひいては自分の愛する家族を傷つけることになるという一連の正義への目覚めへの流れはよく出来ている。 自分の信じる正義の道がマスコミやゴブリンによって揺さぶりを掛けられ続けるというのも悪くない流れだ。 映像の出来に関して言えば、あの浮遊感を表現できたのはモノ凄いと感じた。 小ネタだが、スパイダーマンと名づけたのがプロレスのリングアナというのはちょっと驚いた。 デフォーの二面性を描いた一種のゴラム化は見応えがあった。
8点(2004-06-30 00:32:43)
15.  スクリーマーズ
観た瞬間、B級だなと思わせるもすぐにディック独自の世界に引き込まれる。 タイプⅡは誰かというストーリーで進むのかと思いきや、「生きて二人で地球に帰るんだ」みたいな「えっ、そんなストーリーだっけ?」と思うほど、ラストでは一気に恋愛色が強まるし、あのメチャクチャ感がたまらない。脱出用の宇宙船を見て、やっぱりまぎれもないB級作品だったと再認識させてくれるのもいいね。B級としてはかなりレベルの高いB級でしょう。 一応の疑問は、メガネ野郎も出血タイプのロボということでいいんだろうか、あと少年タイプを最初に撃ち殺したり、連合の基地を占拠していたロボを一緒に大虐殺するのは仲間割れしているんことになっちまうが。
8点(2004-03-16 19:57:44)
16.  スター・トレック2/カーンの逆襲 《ネタバレ》 
タイトルを見れば分かることだが、前作のような哲学的なテーマには挑戦せず、今度こそは普通の対戦型SFになっているだろうと思っていた。 そのため、80年代という時代背景を考えれば、今のSF作品を見慣れている自分にとっては恐らく見るに耐えないレベルの低いものになるのではないかとタカをくくっていた。 しかし、予想に反して、意外に面白いと感じられて、この世界観に引きずり込まされた。 80年代において、このクオリティ、壮大なスペクタクル感、人間模様、激しいバトルを描くことができるというのは、流石は人気シリーズだけのことはある。 日本においては、他のSFの陰に隠れてしまったことが、もったいない。 このシリーズは過去に一度も観たことはなかったが、シリーズを全部観てもいいかなと思わせるほどに、楽しむことができた。 カーンとカークの過去の関係についてはテレビ版で深く描かれているようであり、本作ではあまり語られていないので完全には理解できないことは残念だが、この程度ならば「過去に何かあった」ということだけを感じ取れれば、問題ないだろう。 “規則”とそれだけに囚われない“直感的な行動力”の重要性についても本作のテーマになっている。 “直感的な行動力”がカークの勝因であり、またカーンの敗因だろうか。 常識に囚われない発想こそが、冒険の“基本”であることが描かれているのと同時に、規則に則って、会話を“暗号化”していることも見逃せない。 “規則”ももちろん必要なことだろう。 要するに“臨機応変な行動”こそが冒険にとって重要ということのようだ。 残念なことは、「スポックが死ぬ」ということを、本作を観る前から知っていたことだ。 当然「スポックが復活する」ということも観たこともないのに知っているが、それを知らないで見たら、果たしてどう感じただろうか。 “感動”はもっと大きかったように思われる。 バルカン人らしく、感情では行動せずに、すべて論理的に考えた末での行動ではあるが、やはり“友情” “エンタープライズ号に対する愛着”という非論理的な感情を思わずにはいられない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-14 03:09:46)
17.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
歴史や背景に関する知識はゼロで鑑賞したが、知識があまり必要な作品ではなさそうだ。史実と異なるかもしれないが、そういうことはあまり気にならない。 史実をきちんと描く必要のある映画もあるが、作品を通して“何を描くか”“何を伝えたいか”ということが大事だ。『職業:戦士』という言葉が心に残るほど“スパルタ”の精神が上手く描かれている。無駄に死ぬよりも、何かのために戦って死ぬために彼らは自らを鍛え上げている。国のため、愛するもののため、仲間のため、自由のために、戦場で死ぬことこそ、名誉であり誇りであるという精神は見事であり、どことなく“侍魂”にも通じるところがある。 また、ザック・スナイダーの恐ろしいほどのセンスの良さも光る作品に仕上がっている。素人でもプロでも、この仕事を真似できるものはいないといえる。彼だからこそ出来る映像表現ともいえそうだ。 素晴らしいグラフィックだけではなく、見応えのあるバトルも見事である。 しかし、バトルにはやや飽きてしまったところもあった。 サイやゾウ、爆弾魔術師軍団、停戦交渉ありと、手を替え品を替えたバトルが展開されているものの、基本的にはワンパターンというところがある。 レオニダスを苦しめた中ボス級の強敵が一人いたものの、こういった特異なキャラクターをもっと出すとさらに面白くなったかもしれない。 また、隊長の息子をドラマもなく単に無駄死にさせたことはもったいないところだ。 父親や王を護って死ぬというようなドラマや、楽勝のための慢心さが生んだ心の隙というような展開でもよく、何か物足りない展開だった。 圧倒的なグラフィックで、ただただぶった切るシーンで圧倒するというのも分かるが、バトルの中にもう少し“ドラマ”が必要だったのではないか。 男の映画ではあるが、王妃を通して女の戦いもきちんと描かれている。 スパルタは男だけではなく、女も強いということを描きたかったのだろう。 しかし、こちらも完全にはオチておらず、裏切り者の政治家を刺し殺すくらいならば、交渉する必要があったのかとは思うが、彼らスパルタ人の愚直さを表しているのかもしれない。 自分のためというよりも、自分を犠牲にして何かを守るために戦うスパルタ人の気質を表しているようにも感じる。 素晴らしいビジュアルや才能であるが、バトル等においてドラマが不在だったことがマイナスと感じられた作品だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 22:30:48)(良:1票)
18.  スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師 《ネタバレ》 
面白いとは思うが、期待感があまりにも高すぎたためか、やや不満なところもあった。強引なストーリー展開はミュージカルなので許されるが、ストーリーの膨らみがやや物足りず、さらに感情面に訴えてくる点が少ないような気がした。バートンが意識したのは、ストーリー展開ではなく、ミュージカルそのものだったからだろう。ストーリーを楽しむというよりも、ミュージカルとして視覚的・聴覚的に楽しませることを念頭において製作したものと思われる。 それにしても、バートンの世界観はさすがだ。どっぷりと彼の世界観に浸ることができた。陰湿極まりないが、どこかユーモアがある見事な世界だ。グロいけれども、これは品のあるグロさだ。グロさを極めたものだけが、到達できるグロさだろう。 デュエット構成のミュージカルは見応え・聞き応え十分だ。 メチャクチャ上手いというわけではないが、編集の上手さで盛り上がりのあるデュエットを堪能することができるのは、映画ならではのものか。 ストーリーとして面白いのは、トッドが妻の顔も娘の顔も分からなかったことだろう。 15年間の牢獄の中で、記憶から消えつつあったのは妻や娘の顔であり、克明に記憶に刻まれたのは、判事の顔や役人の顔だったのではないか。 彼は“復讐”に溺れていただけということがよく分かる。 「恋に恋する」という状況があるが、あれに近いものがあったのではないか。 なんのために復讐するのかが、トッドには分からなくなっていたのかもしれない。 復讐することでしか、自分自身をサルベージ(救う)できなかったようだ。 ラベットが「顔を覚えているのか?」と聞いたときに、トッドがつまりながら「髪は黄金色で・・・」と答えていたのが印象的だ。 欲を言えば、もっとトッドの悲哀を感じさせて欲しかったところだ。 “復讐”いう名の魔物に取り憑かれた男の哀しさを十二分には感じることはできなかった。そういった感情をミュージカルで表現せざるを得ないため、通常の映画のようには上手くはいかなかったのかもしれない。 ラストのクダリも少々物足りないのではないか。観客には妻の正体が分かっているために“復讐”に囚われた男の末路の悲劇に深みや衝撃があまりない。 ラストのオチはあれでやむを得ないだろう。贖罪を求めて、自分の死を受け入れるかのように自分の首を少々上げるトッドの姿には、さすがに悲哀は感じられるものとなっている。
[映画館(字幕)] 7点(2008-01-19 23:37:35)
19.  スーパーマン リターンズ
約20年ぶりに復活したシリーズ最新作は、続編でありながら、原点回帰のリメイク的な内容にもなっている面白い造りだ。今まで観た事がない人でも十分楽しめる内容にはなっているが、「Ⅰ」とリンク(マーロンブランドの重要なセリフ等)する部分もあるので、事前に「Ⅰ」だけでも観ておくとより一層楽しめるだろう。 【評価とテーマ】なかなか評価は難しい。「なぜスーパーマンが必要なのか」というテーマを相当ねちっこく、かつ丁寧に創りこんだため、完成度は高く、スーパーマンに対する深い愛情も感じられる良作というジャッジもできるが、2時間30分という長尺と派手なバトルがあるわけでもないストーリーとのバランスを踏まえると「長い・飽きる・くどい」といった評価も聞こえてきそうだ。「初代」に思い入れのある人には高評価で迎えられると思うが、最終的にはあまり高い平均点は期待できないかもしれない。 【ブランドンラウスが演じるスーパーマンについて】見た目や雰囲気はクリストファーリーブを彷彿とさせる見事なチョイスかもしれない。しかし、肝心の演技ができるかどうかは別だ。彼のスーパーマンは「表情」が語っていない。鉄火面のような無表情、CGのような無機質さを感じる。「人類に対する慈悲深い無償の愛」が根底にあるのは分かるが、「表情が豊かではない」→「感情が伝わらない」→「行動に対して共感できない」→「さっきから同じことの繰り返しじゃないか」という思考が延々とループしてしまった。もっと人間くささを出してもよかったように思える。 【ケヴィンスペイシーが演じるレックスルーサーについて】「セブン」のようなゾクゾクするような悪役を期待していたが、やや魅力を欠いている。好意的な評価をしても初代のジーンハックマンと同レベルかなという印象。もっとはじけてもいいと感じたが、本作のテーマを踏まえて、キャラクターとしての存在感を抑えたようにもみえる。本シリーズは、悪役が目玉となる「バットマン」とは根本的に異なり、あくまでも主役はスーパーマンという方針なのかもしれない。 【その他】幼年期のジャンプシーンは「スパイダーマン」や「ハルク」、着地時には「ミッションインポッシブルⅠ」を思い出した。ルーサーの出獄理由は「ダーティハリーⅠ」と似ているし、「タイタニック」のようなシーンもある。パクリではなくサービス的な意味合いでなかなかユニークと感じた。
[試写会(字幕)] 7点(2006-08-02 21:01:38)(良:2票)
20.  スタンドアップ 《ネタバレ》 
「女性」として、そして「母親」として、あるいは「娘」としてのジョージー・エイムズという人間をシャーリーズセロンが見事に演じきった。自分の力だけで子供たちを育てていきたいという芯の強さ。弁護士、父、母、同僚、友人多くの人々に支えられながら、決して泣き寝入りすることなく常に戦い続けたいという激しさ。不当に罵られた際に親友や子ども、周囲にあたってしまう弱さ。父や周囲に蔑まれても「過去」を一人で抱えてしまう「苦しみ」。セクハラや恐怖に対する怯え、苦しみ、怒り、やるせなさ。これらの複雑な感情が観客にもダイレクトに伝わる迫真の演技だったと思う。 しかし、全般的に優れた作品で穴がなく、かなり「リアル」なストーリーなのだけれども、どこか「押し」の強さや盛り上がりが足りない感じもした。最初8点くらいの作品かなと感じていたけど、そこまで高得点を与えてよいのかと悩んでしまう映画だった。 そして、個人的に残念だったのは法廷シーンが少なかったこと。本作で日本にはないクラスアクション制度(集団訴訟)について少し勉強できるかなと思っていただけに残念。不勉強ながらちょっとかじったことがあるのでクラスアクションについて知っていることを書くと、普通の一般の訴訟では、被害を受けた被告と原告が、自分の権利を巡って争うものであるが、クラスアクションは、クラス(本作ではセクハラで被害を受けた女性のすべて)を代表して、クラス全体の権利を個人が争うものである。勝手に他人の権利を処分することになるので、クラスにいる者には通知する必要があるが、クラスにいる者は積極的に「除外(オプトアウト)」の手続きを取らなければ、判決の効力はクラス全体に及ぶという制度である。いろいろと弊害も多い制度(自己の権利が勝手に他人に処分されるおそれ、高額な賠償額による企業経営の切迫、弁護士の金儲けの手段)であるので、EU諸国でも導入されておらず、おそらくアメリカ特有の制度である。アメリカでも、今ではクラスアクションをなんとか押さえ込もうとしている始末であるため、日本で導入されることはまずないでしょう。日本にも選定当事者制度(あまり利用されていない)という類似の制度があるけど、こちらは被害を受けた複数の者が、自己の権利を被害を受けた者に委任して、一人ないし複数が代表して訴訟を争うものである。似ているけど、本質は大きく異なる。
[DVD(字幕)] 7点(2006-07-21 23:33:20)(良:1票)
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