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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  デビルズ・ダブル -ある影武者の物語- 《ネタバレ》 
イラク戦争後に暴露されたフセイン一族の悪行三昧は戦勝国によるネガティブ・キャンペーンである可能性を否定できないし、おまけにこの原作を書いたのは亡命中のラティフ本人なので内容の客観性にも疑義があり、実話という触れ込みの本作についても話半分のつもりで鑑賞したのですが、それでも映画としては面白く仕上がっています。後述の通り脚本にはアラがあるのですが、安定した演出によってドラマとしてもサスペンスとしてもアクションとしてもそれなりにまとめられているのです。本作の演出を担当したのはリー・タマホリ。『007/ダイ・アナザー・デイ』を大ヒットさせたものの、続く『トリプルX/ネクストレベル』と『NEXT』が連続して失敗し、おまけに女装姿で売春(買春ではない)しているところを囮捜査官に逮捕されるという前代未聞のスキャンダルによってハリウッドから干された人物なのですが、ヨーロッパ資本を得ての5年ぶりの監督復帰作にして、相変わらず水準以上の腕前を披露しています。主演のドミニク・クーパーの演技も素晴らしく、観客が一目で判別できる程の高いレベルでウダイとラティフを演じ分けています。なぜ彼が、いかなる演技賞をも受賞できなかったのかと不思議になる程です。。。 問題があるのは脚本で、無難にまとめられてはいるものの、焦点を当てるべき対象を間違えたために意図した物語にはなりえていません。脚本家が夢中になったのはウダイによる悪行の数々なのですが、この物語の主人公はウダイではなくラティフです。掘り下げるべきはラティフの苦悩だったはずなのに、これが意外と適当に流されています。例えば、家族に危害が及ぶからと影武者役を渋々引き受けていたラティフが、家族を見捨ててでも国外へ逃げようと決意した心変わりの背景の描き込みが不足しているのですが、このために後半の展開に感情移入できないという事態が発生しています。一度は国外へ逃亡したラティフが復讐のためにイラクへ戻るという展開にしても、ラティフの心情の描き込みが不足しているために作り手が意図した程のカタルシスを観客に与えるに至っていません。
[DVD(字幕)] 6点(2012-08-12 03:52:22)
22.  テイカーズ
固い絆で結ばれた金持ち強盗団vs仕事一筋の鬼刑事という典型的な「ヒート」症候群の一作ですなのですが、マイケル・マンのようなディティールに対するこだわりはほとんど感じられません。ひたすらに見てくれのゴージャスさ、カッコよさを追求した画面はトニー・スコットを思わせ、さらにはキャラクター造形も雑なので男臭さも皆無に等しい状態です。ドラマパートはジェイソン・ステイサムが出るような作品群と大差のないレベルで、ロクな見せ場もない前半部分にはかなり退屈させられました。。。 しかし、物語が折り返し地点に差し掛かり、目玉である銀行輸送車襲撃がはじまると、映画は凄まじい勢いで疾走をはじめます。二転三転する怒涛の展開に、スピード感ある見せ場の連打。製作費3,200万ドルという中規模予算のアクション映画としては、恐ろしいぐらいにサービスしてくれます。これにはお腹いっぱいになりました。決して出来の良い作品ではありませんが、大きな期待をしなければ十分に楽しませてくれるアクション映画です。。。 なお、本作のDVDジャケットには「全米No.1大ヒット!」とデカデカと書かれていますが、本作が全米1位を獲れたことには理由があります。アメリカでカリスマ的な人気を誇るヒップホップアーティストT.I.とクリス・ブラウンが強盗役で出演しており、さらにポール・ウォーカーとヘイデン・クリステンセンという2人のイケメン俳優が彼らをサポート。若い人が好むキャスティングをしたことがヒットの要因であり、決して作品の質が評価されたわけではないという点にはご注意ください。
[DVD(吹替)] 7点(2012-05-13 17:15:52)(良:1票)
23.  デビルマン 《ネタバレ》 
酷い酷いとは聞いていましたが、今回体感した酷さは前評判を軽く上回っていました。シベ超がかわいく思えるほどの駄作ぶり。本作は日本映画の黒歴史として永久に語り継がれるはずです。まず、出演者の演技が素人以下。イメージが固定されたプロの役者は敢えて避け、観客に先入観なく受け入れられる若手を抜擢するというキャスティング方法もあるにはあるのですが、本作はロクな指導もなく素人を素人のままカメラ前に立たせているため、物凄いことになっています。誕生日プレゼントをもらう時も、サタンになってしまった時も、恋人の生首を発見した時もすべて同じ表情、同じ語気。おまけに一言一言セリフを思い出しながら喋っているため、句読点がくる度に一呼吸入れるというおかしな話し方になっています。そうして役者がまったく演技をしていないことに加えて、脚本までが支離滅裂なので話がサッパリ理解不能。例えば、序盤において了は明に対して自分がサタンであることを明かすのですが、中盤においてデーモン狩りを行う人類に了が復讐しようとすると、明は了に向かって「お前、サタンだったのか?」と頓珍漢なことを言い出します。さらにラスト、ついにサタンの姿になった了に向かって、明は「お前はサタンだったのか…騙したな!」と怒り出します。この映画は「メメント」でしょうか?演出もいい加減で、昼間かと思えば次のカットは夜になったり、雨かと思えば次のカットは晴れていたりと、10億もの金をかけてエド・ウッド並の仕事を披露。人間ならざる者同士の死闘を描くにはかなりの映像テクニックが必要となるはずなのですが、この監督は役者のアクションをただカメラで追うだけなので、物凄く恥ずかしい見せ場の連続となっています。俳優達はガンカタっぽい動き、スパイダーマンっぽい動きの後に決め顔をするのですが、カメラワークやカット割り、音楽等によるフォローがないため気の毒になるほどダサイです。気の毒といえば、半デーモン状態の明の特殊メイクもえらいことになっています。予算の都合かフルCGデビルマンの登場時間は少なく、代わって役者に簡単なメイクを施しただけの半デーモン状態が多く登場するのですが、このメイクが出来損ないの世紀魔Ⅱ状態。おまけに腕を前に構えるおかしな戦闘ポーズにも脱力で、センスのない監督にマンガ映画を任せると大変なことになることがよくわかりました。
[DVD(邦画)] 0点(2012-02-12 19:12:16)(良:3票)
24.  デビルクエスト 《ネタバレ》 
借金返済のためここんとこ映画に出まくっているニコラス・ケイジですが、本作ではついに時代劇に進出。十字軍騎士役をケイジが演じるというキャスティングはさすがに厳しいだろうと思っていたのですが、意外なことによくハマっています。多くの人が忘れていますがこの人はオスカー俳優、トラウマを抱えた歴戦の勇者を見事に演じているのです。剣術も様になっていて、なかなか器用なところを見せてくれます。その相棒を演じるロン・パールマンは、ケイジがハマらなかった場合の保険としてキャスティングされたかのようなポジションですが(彼がいなくても物語は成立する)、ケイジとの相性はなかなか良くて二人の掛け合いは映画を面白くしています。監督のドミニク・セナも時代劇初挑戦ながら安定した演出を披露。老朽化した吊り橋を渡る場面ではハラハラさせられたし、作品のキーパーソンである女性の描き方はなかなか秀逸なものでした。「女性は魔女裁判の被害者なのか?それとも本物の魔女なのか?」というミステリーが前半部分のキーとなるのですが、この点、セナは適度に観客を混乱させる演出を施していて、なかなか引きのある物語としているのです。問題は、後半になると映画がボロボロになることで、脚本の弱さや予算の少なさといった本作の抱える弱点が一気に露呈してしまいます。女性の正体は月並みなものだったし(前半部分の引きがうまかっただけに、余計ガッカリさせられました)、ついに正体を現した悪魔のVFXは10年前のクォリティで、安っぽさが全開となっています。最終決戦の舞台が狭い書庫なので視覚的な面白みにも欠け、人類存亡を賭けた戦いであるというスケール感も表現できていません。ここでハッタリをかませなかったことが、MTV出身のドミニク・セナの限界とも言えますが。
[DVD(吹替)] 6点(2012-01-14 14:53:09)(良:1票)
25.  ディファイアンス 《ネタバレ》 
ハリウッドで定期的に製作されるホロコースト映画にはプロパガンダ臭がするため、私はそれらに対して懐疑的な姿勢を持っています。本作についても「どうせいつもの『私達は被害者です』映画だろう」と高を括って観ていたのですが、前半を見終わって、これはホロコースト映画ではないことに気付きました。ユダヤ人の被害者意識が殊更には強調されていないし、ナチスによる残虐行為もほとんど登場しません。それどころか、ユダヤ人の中にも仲間を苦しめる者がいたことや、捕虜となったドイツ兵にリンチを加える場面がきちんと描かれていて、ユダヤ人寄りの映画ではないことがはっきりとわかります。本作のテーマはホロコーストではなく、森で数年間立て篭もらざるをえなくなった人々の戦いという、恐ろしく単純なものだったのです。ダニエル・クレイグ演じるトゥビアの、リーダーとしての苦悩に対して特にスポットが当てられるのですが、リーダーシップに関する考察としては興味深い内容となっています。立て篭もったユダヤ人達は食うにも困る状態にあり、そんな中では「自分さえ良ければ」という風紀が横行しがちとなります。自分の生存すらままならぬ状況では、他人を思いやる余裕などないからです。だからこそ、集団を維持するための強力なリーダーシップと厳格な規律付けが求められるのですが、ここでトゥビアはひとつの大きな問題にぶち当たります。いよいよ状況が極まり、規律を無視する者が現れた時、リーダーとしてこれにどう対処すればよいのか?ある者は、「食糧は全員で平等に分配する」という規則を破り、貴重な食料を独り占めしようとしました。ある者は、「妊娠をしてはならない」という規則を破り、子供を作ってしまいました。トゥビアは、前者に対しては死を与えましたが、後者は無罪放免としました。しかし、規則違反という点では後者に対しても何らかの罰が与えられるべきではなかったのか?ここに集団維持や規則というものの難しさがあります。例外を認めると規律は崩壊してしまうし、かといって厳格すぎると形式が先行して規律が破綻してしまう。結局、トゥビアはこのジレンマを乗り越えることができず、クライマックスではリーダーとして機能不全に陥ってしまいます(運よく援軍に救われただけで、あのままでは全滅していました)。「こんなオチ、ありなの?」とも思ったのですが、なかなか興味深い着地点だとも思いました。
[DVD(吹替)] 7点(2011-12-19 01:59:34)
26.  ディープ・ブルー(1999)
B級モンスター映画としては及第点の仕上がりだと思います。及第点であって合格点ではないのは、B級ならではのバカバカしくも突き抜けた盛り上がりに欠け、かといって真剣な鑑賞に耐えうる大作の風格を持つわけでもなく、中途半端な仕上がりとなっているからです。例えば前年に公開された「ザ・グリード」は、途中までモンスター映画だったものが終盤では怪獣映画に変わってしまいます。あの偏差値の低い大盤振る舞い、理屈ではなく面白さ重視の姿勢こそがB級モンスター映画に必要なものなのですが、一方この映画、設定はバカなのに映画としての体裁を整えようとする面が時折顔を出し、もうちょっとムチャクチャやって欲しいという手前のところで止まってしまっています。。。この映画、真面目なのか不真面目なのかがよくわかりません。遺伝子を改造されたスーパーシャークが暴れ回るという物語は完全にB級なのですが、その割に撮影には妙に気合いが入っています。そこら中から水が噴き上がり、いくつものセットを浸水させるという撮影はかなり本格的で、「アビス」や「タイタニック」に匹敵するほど。90年代後半には「スフィア」や「ヴァイラス」など海洋パニック映画が何本か作られているのですが、それらは舞台こそ海ではあっても、水を使った撮影はほとんどやっていない代物ばかり。その中にあって、本作は完璧主義のキャメロンと同等の仕事をやっているのです。そんな真面目な撮影の一方で脚本や演出はかなり雑で、登場人物は魅力に欠けるし、見せ場は単調だし、水が迫ってくるというタイムリミットも映画にまったく活かせていないし、もうちょっと丁寧に考えれば面白くできたのにという惜しい点がいくつもあります。また、雑なら雑で「ザ・グリード」のように突き抜けてしまえばいいのですが、「遺伝子操作という倫理的タブーを犯したから、われわれはそのしっぺ返しを受けているのだ」なんて説教臭い話が入ったり、「おかしくなりすぎないように」という配慮からかスーパーシャークの暴れ方が意外と地味だったりで、B級モンスター映画としてもやりきれていません。ハーリンの演出も全盛期と比べるとパワーが足りていなくて、とにかくこの映画のすべてが「あともうちょっと足りない」というもどかしい状態となっています。
[DVD(字幕)] 5点(2010-09-19 22:25:23)
27.  デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~
トニー・ギルロイの脚本作品は大好きだし、「フィクサー」では監督としての才能も評価したのですが、本作はイマイチでした。プロの男達の泥臭いドラマをやらせると傑作を作ってくる人ですが、オシャレな男女の軽いドラマをやる才能はないようです。。。とは言っても、本作は決して適当な作りではありません。コメディという新境地に挑むに当たって、自身がもっとも得意とするエージェントものを題材とすることで保険をかけてきた判断は正解であり、エージェントものとしての質は悪くありません。二転三転する物語はよく練られているし、オチも綺麗に落ちています。「驚愕のドンデン返し!」を謳った映画は他にも多くありますが、本作のように観客をうまくミスリードしながら綺麗に落とす映画は貴重ですらあります。脚本家としてやるべき仕事はきちんと出来ているのです。しかしコメディには人を笑わせるセンスが必要であり、この人にはそれが致命的に欠けていました。面白くしようとしていることはわかるものの、ポール・ジャマッティが出ている場面しか笑えるところがないというのは問題です。また、時系列の往復を繰り返したために物語が複雑になりすぎてしまい、コメディ映画に求められる温度感とズレたこともマイナスでした。「フィクサー」のような重厚なサスペンスならともかく、本作のような軽いコメディにおいて観客に過度の集中力を要求する構成はやりすぎでしょう。また、「プルーフ・オブ・ライフ」の頃から女性を描くことを不得意としていたギルロイですが、本作においてもその弱点は克服されていません。女性経験豊富なクライブ・オーウェンを何年間も夢中にさせるほどジュリア・ロバーツが魅力的に描かれていないし、ここでの説得力が欠けたために、騙し騙されのコンゲームとしての面白さが半減しました。プロの監督に任せれば光る可能性もあった脚本だけに、この出来は残念です。
[DVD(吹替)] 5点(2010-07-26 20:06:48)
28.  ディア・ハンター 《ネタバレ》 
よく問題とされるアジア人の描写については、それほど気になりませんでした。ベトナム戦争は舞台に過ぎず、本作が扱っているのは戦争がいかに人を壊すものであるかというより普遍的なテーマであって、アジア人を悪く描くために作られた作品でないことは十分に読み取れるからです。。。にも関わらずきびし目の点数を付けたのは、ドラマがいまいち心に入ってこなかったため。まず、役者に問題ありと思いました。地方に暮らす普通の若者たちを主人公としつつも、それを演じているのがデ・ニーロにストリープですからね。どう見ても普通の若者ではありません。シリアスな後半では彼らの演技力が如何なく発揮されるものの、前半のバカ騒ぎでは「普通の若者を演じてますよ」という取って付けたような感じがしました。ルックスに幼さを残していたウォーケンはセーフ、残りは全員アウトでしょう。30代半ばを中心とする俳優達の年齢はキャラクター達に合っておらず、この内容であれば20代の役者を使うべきだったと思います。本作は前半のバカ騒ぎに合った人選をすべきだったのであり、後半を演じられるか否かで俳優を決めてしまったことは誤りだったと言えます。。。次に、本作のキーだったニックの行動があまりに突飛で、私の理解が追いつきませんでした。なぜ、ロシアン・ルーレットのプレイヤーとなったのか。なぜ、マイケルが迎えに来たにも関わらずロシアン・ルーレットを止めなかったのか。「戦争で心を壊したから」ということは分かります。ただし細かい原因を読み取れなかったので、自殺願望を掻き立てるまでに彼を追い詰めたものとは一体何だったのかがよくわかりません。私は、戦場に仲間を置き去りにした罪悪感のためかと思っていたのですが、だったら迎えに来たマイケルの前で死ぬ理由がわからなくなります。戦争により人格が完全に変わってしまい、故郷には戻れない人間となってしまった。だから戦争の終わりとともに命を絶ったとも解釈できます。しかし、そうした背景を匂わせる描写が本編中にほとんどないため、こちらもスッキリしません。前半の日常の光景は長い時間をかけてじっくり描いたのですから、こうした狂気の部分も丁寧に描いて欲しかったです。
[レーザーディスク(字幕)] 4点(2010-06-26 20:48:38)(良:1票)
29.  D.O.A.
設定は良いし、少々のアラがあっても勢いで乗り切れる90分強という上映時間。それなりに楽しめる娯楽作にはなるはずなのですが、これが驚異的なまでにつまらないという奇跡を成し遂げています。主人公の命にタイムリミットを設定したにも関わらず、焦っている様子がまったくないのが最大の問題。36時間で死ぬ、それまでに身の潔白を晴らさねばならないのに、特に焦ってる様子もなく教え子メグ・ライアンといちゃいちゃしてるんですよ。夕方に妻を殺されたにも関わらず、その夜には教え子といちゃいちゃしてるんですよ。これでどうやって感情移入しろというんでしょうか。本作最大の特色は主人公のタイムリミットだったわけですが、それをまったく活かせていないのでは話になりません。また、主人公にわざわざ遅効性の毒をもった理由も明確ではなく、なぜその場で殺さなかったのかと不思議でなりません。他の謎についていい加減な部分があるならまだしも、本作の核となるタイムリミットについての設定が適当なのでは、脚本家はちょっとサボりすぎじゃないかと思います。。。 それに、妻を殺害し、自分の命も奪おうとしている犯人と相対したら怒り狂うでしょ、普通。しかしこの主人公は、犯人の言い分を「うん、うん」とおとなしく聞いてやってるんですよ。こんな主人公にどうやって感情移入しろというんでしょうか。犯人も犯人で、主人公に「お前が犯人だろ」と言われると真相を洗いざらい丁寧に説明してくれる激安野郎で、ある秘密を隠蔽するために殺人まで犯した人間とは思えないほどの口の軽さ、往生際の良さ。せっかく大学教授を主人公にしたのに、知的な謎解きをやらず緊張感のないアクションと口頭でのネタバラシを繰り返すのみではまったく面白くありません。
[地上波(字幕)] 1点(2010-06-23 08:12:55)
30.  デアデビル 《ネタバレ》 
「X-MEN」「スパイダーマン」の予想を超える大ヒットを受けて急ごしらえで作られた作品だけあって(公開日が決まった時、製作開始のアナウンスからあまりに間を開けず完成したため「もう出来たの?」と驚いた記憶があります)、実に浅い作りとなっています。レーダーセンスの映像表現は美しいもののそれ以外に特に誉めるべきものがなく、数あるアメコミ実写化作品の中でも最低クラスの完成度と言えるでしょう。父親を殺されたマードック少年の怒り、善を名乗りながら人を殺すことの葛藤、素顔では愛し合いながら仮面をかぶると敵同士となるエレクトラとの関係などアメコミにありがちな要素てんこ盛りなのですが、そのどれもが中途半端で消化不良を起こしています。短い上映時間の中で原作にあった多くの要素を詰め込んでしまったため、すべてのイベントが軽く、印象に残らないものとなっているのです。エレクトラの扱いなどは特にひどいもので、父親の仇がデアデビルだと誤解しひと波乱起きるかと思いきや、デアデビルの正体が恋人マードックだと知った途端に誤解が解けてしまうというお手軽さ。新聞記者も何のためにいるのか不明であり、彼の登場シーンは丸ごと割愛してもよかったように思います。ハリウッドの川合俊一ことベン・アフレックもアメコミの主人公には合っていません。体が大きく動きが鈍重であるため、夜の街を飛び回る身の軽さが感じられないのです。キングピンとの最後の戦いに至っては、大きな人ともっと大きな人のただのどつきあい、アメコミヒーローの戦いではありませんでした。キングピンと決着をつけず、ブルズアイも生かしておき、エレクトラの生存も匂わせるという、ヒットしたら続編作るよ!という制作陣の腰の引けた姿勢もグダグダで、さすがにこんないい加減なものは評価できません。
[DVD(吹替)] 3点(2009-09-12 00:10:49)(良:1票)
31.  テキサス・チェーンソー ビギニング
「ビギニング」と言っても、レザーフェイスの生い立ちについては「セブン」風のタイトルバックで断片的な情報が与えられるのと、精肉工場からチェーンソーを持って帰るエピソードぐらいで、これぐらいなら誰でも想像がつきますよねという範囲のもののみです。要するに、そのルックスからいじめに遭って性根が歪んだウォーズマンみたいなやつだということです。今回レザーフェイスの出番は少なく、代わって前作でも輝いていたホイト保安官が映画を席巻します。キューブリックも惚れたリー・アーメイ先生の容赦のない罵倒、不条理を不条理とも思わない揺るぎのなさ、巨乳のお姉ちゃんがいれば躊躇せず乳を揉むストレートな人柄が炸裂。その暴れっぷりは「フルメタル・ジャケット」を完全に超えており、レクター博士やダースベイダーが物分かりの良い穏健派に思えるほどの壮絶な悪者ぶりを披露します。前作はレザーフェイスとの追っかけがメインでアクション映画のようになっており、ショックシーンの連続ではあるもののビジュアルへの偏重が恐怖の底にもなっていました。しかし本作は気の狂った人間から無茶を言われまくる不条理さが大幅に強化されたことで恐怖が底なしとなり、さらにパワーアップしたゴア描写との併せ技により、ホラー映画としては史上最高レベルに達しています。残酷慣れした私の友人も「これは怖かったなぁ」と大絶賛でした。不条理さが支配する独特の空気を作り上げ、また観客の先読みをリードして話を進めるなど、脚本はかなり練り込まれています。特にすごかったのが、一家の母さんとデブのおばちゃんが、足元に女の子が転がってるのに気にも留めず世間話をしているところ。このとんでもない世界観、被害者たちの絶望感は他にありません。そこからの逆転のカタルシスもきっちりと描いており、体に力が入りっぱなしの90分でした。
[DVD(吹替)] 8点(2009-06-19 19:03:56)(良:1票)
32.  ディパーテッド 《ネタバレ》 
豪華メンバーで製作されたものの仕上がりはオリジナルと同じという、なんとも評価に困るリメイク版です。とはいえパクリの一言で片付けられないのは、プロットのおいしいところだけをいただいた別モノにはせず、シーンひとつひとつに至るまで丁寧にオリジナルをなぞっていること。往年の名作ならともかく、いちアジア映画をハリウッドの大御所がここまで忠実にリメイクというのは前例がありません。ヘタな改変をしてはならないという敬意すら感じられます。例えば、ジャック・ニコルソン扮する親分は地のヤクザにしか見えず、覆面捜査官を送り込むほどの重要人物には感じられないという欠点があります。話に説得力を持たせるにはより大きな犯罪組織にすべきでしたが、あえてオリジナルと同じスケールにしているように思います。携帯や封筒といったアイテムや仕掛けの使い方もオリジナルと同様ですが、ハリウッドの力があればより凝ったサスペンスにもできたはず。しかしそれをあえてやっていないのです。以上話の大枠は一切いじらず、ドラマの通りがよくなるように人間関係のみが変更されています。最大の変更点は主人公達の年齢で、オリジナルでは潜入から相当な年月が経っている設定でしたが、リメイクでは潜入開始から数年間の様子が描かれます。この変更の影響は大きく、大義名分があるとはいえ犯罪に手を染め、自分は警官としての本質を失いつつあるのではと悩むオリジナルの主人公に対し、リメイクでは素性がいつ暴かれるかというビリーのストレスが主に描かれます。この部分のテコ入れのため、ディグナムというキャラクターが追加されています。ビリーを危険な戦場へと突き放すためには温厚なクィーナンのみでは不足であり、ディグナムのような厳しく融通の利かない人間が必要だったのです。こうした変更によりビリーの生死がかかったドラマであることがより強調され、後半では自分はほぼ死人(=ディパーテッド)のようなものであることを悟りながらコリンと対峙するビリーの悲壮感がよく描かれていました。コリンはオリジナルから一転して悪役に徹しています。ビリーの物語を描くためには、コステロとはまた違ったタイプの純粋悪である方がよいので、その上での変更だったと思います。これにより、ラストの廃ビルでの顛末が、形式的にはオリジナルとまったく同じであるものの、意味合いが正反対になっているのは興味深いところでした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-02 18:25:03)
33.  ディセント 《ネタバレ》 
最近は聞かなくなった表現ですが、昔のニュースでは雪山で遭難などが起こると「○○大学のパーティーが行方不明になりました」と言っていました。それを聞いて「そんなとこでパーティーなんかするからだよ」と思ってた子供の頃の私。この映画を見ると、その頃の気持ちが甦りました。金と時間にそこそこ余裕があって気力・体力も自信のある女性方が、入っちゃいけない洞窟に入ってえらい目に遭うというお話。「そりゃ入ったあんたらが悪いよ」と、若者のやんちゃを戒める町内会の年寄りのような冷めた目で見てしまいました。この映画、演出・演技・視覚効果はどれもなかなかのレベルです。飛び上りそうなショックシーンがいくつもあるし、最初は自信まんまんのみなさんが「あ、ヤバイかも」「これは本格的にマズイ」「あ~~~助けて~~~!」と追い込まれていく心理的圧迫感も表現できていたし、洞窟も本物にしか見えません。地底人だって本当にそういう生き物がいるかのようなデザイン、質感だったし、天井にぶら下がる場面などではいかにも「吊ってます」とは見えない絶妙なサジ加減で身体能力が表現されていました。以上なかなかよく出来ているのですが、どうしても「入ったあんたらが悪い」に邪魔されて乗り切れなかったのが残念です。一方、職業探検家がスポンサーからの指示を受けて洞窟に入り、地底人に襲われる「地獄の変異」は好感を持って見られたことを思うと、やはり登場人物に憐れを感じられなかったのは大きいようです。こちらではむしろ地底人のことをいろいろ心配してしまいました。長年誰からも気付かれずひっそり生きてきたのに、突然の侵入者が大騒ぎして仲間が大勢殺されてしまう地底人のみなさん。女性地底人も登場しますが、地底人にも性別があって若いうちは恋愛とかしてるんでしょうね。あのルックスでもモテるモテないの差があったりして。なのに、それをブチ壊してしまうパーティー達。目が見えるやつとの勝負なんて卑怯じゃねぇか!という地底人のみなさんの焦りと憤りが画面から伝わってきました。ラストはパーティーによる大殺戮。そして誕生日会の場面で映画は終わります。以上、パーティーにはじまりパーティーに終わる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2009-01-11 21:28:16)(笑:1票) (良:1票)
34.  デス・プルーフ in グラインドハウス
期待して見に行ったのですが、あまりに面白くなくてガッガリでした。そもそも「グラインドハウス」は上映形式が先立った企画のはず。上映時間が短く内容も薄いB級映画だが、2本同時に見られて、おまけにいかがわしい予告編もあって妙な満足感がある。いわば新橋のそば屋の「カツ丼&そばセット」のようなものです。ひとつひとつのメニューは誉められたものではないが、ふたつを同時に味わえるからそれはそれでいいじゃないかという。そんなチープなボリューム感を復活させることが趣旨の企画であり、それぞれの作品も同時上映を前提に意図的に安っぽく適当に作られているだけに、一本ずつに切り離されてしまうと相当ツライ。しかも本来内容のない映画を一本の上映作品として成立させるため、オリジナルにはなかったシーンを追加して上映時間を水増ししてしまったのがさらに裏目に出ているように感じました。ダラダラと続く会話が退屈で仕方なく、内容からするとこの映画は90分程度が限界だったと思います。商売に合わせて作品を勝手に編集することで有名なワインスタイン兄弟ですが、ここでも兄弟の儲け主義が作品の価値を失わせてしまっていて本当に残念です。本編開始前に流れた「プラネットテラー」の予告が相当面白く期待が膨らんだのですが、「デスプルーフ」がこの状態では「プラネットテラー」も推して計るべしだなという感じです。「プラネット・テラー」はあえて劇場に行かず、DVD発売の際に「デス・プルーフ」との同時上映にして「ひとりグラインドハウス」を楽しみたいと思います。
[映画館(字幕)] 4点(2007-09-08 18:14:26)(良:1票)
35.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
【予備知識一切なしで見るべき映画なので、未見の方がレビューを読まれる際にはご注意を】ブラッカイマー&トニー・スコット&デンゼル・ワシントンとくれば「いつもの無難なアクション大作だろ」と思いきや、史上空前のとんでもない仕掛けがぶち込まれた異様な映画となっていました。タイムスリップを題材としたSF映画は数あれど、アクション映画のメインアイテムとして大真面目にタイムマシンを登場させる大胆不敵さには驚きました。誰も思いつかなかったこの一発芸は、実に巧みな脚本と卓越した演出センスによって、映画として十分成立するレベルにまで到達しています。多くのヒット作の脚本を手がけてきたテリー・ロッシオは、このすさまじい題材がどうすれば観客に受け入れられるかを見事に計算してきます。いきなり「これはタイムマシンです」と言うのではなく、デンゼル・ワシントンが謎のマシンの正体を暴くという展開を入れることで説得力をぐっと増しているのです。また、トニー・スコットのハイテク描写の巧みさにも舌を巻きます。「好きな場所に入り込んで過去を覗き見ることができるが、膨大な情報処理には4日を要するため常に4日前の映像しか見ることができず、しかも一度に見られるのは一つのアングルだけで巻き戻しはできない」という煩雑な基本設定を観客に受け入れさせるというウルトラCに挑み、言葉と視覚を交えることで見事それに成功しているのです。装置がタイムマシンであることが暴かれる一連の描写も、脚本レベルの驚きのみに留まらず映像的な面白みも十分。右目で現在を、左目で過去を見ながらのカーチェイスという荒唐無稽な見せ場では、知的な面白さと映像的な興奮でテンション上がりっぱなし。ここまで煩雑な設定を映像で饒舌に語れる監督は他にいないでしょう。確かに細かいアラはいくつか目に入ります。タイムパラドックスの処理に矛盾があったり(爆発した救急車や血のタオルのくだりは時系列上明らかに矛盾が…)、犯人の扱いがやたら適当だったり(目的が最後まで不明、人物像も適当、爆弾魔なのになんでマシンガン持ってんだ…)、ヒロインがデンゼルを受け入れる過程の葛藤が単純だったり。こうした細部の甘さにより傑作となる詰めを外しているような気もしますが、このとんでもないアイデアを実行し、成功させたこと自体を評価しようではありませんか。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-03 12:49:42)(良:1票)
36.  ティアーズ・オブ・ザ・サン
アントワン・フークアという人物は良い監督なんだか悪い監督なんだかよくわからない人です。この人はマイケル・ベイやサイモン・ウェストらと同じプロパガンダ・フィルムズの出身で映像は確かにMTV風なんですが、ベイのような軽さやバカっぽさがなく、意外とどっしりとした映画を作ってみせます。そういった意味では本作に適任と言える人物で、火薬大量消費のアクションパートと重苦しいドラマパートの色合いを違和感なくまとめられたのは彼の手腕あってこそだと言えますが、一方でストーリーテリングに無頓着なところが見られます。困難な作戦に挑む特殊部隊の物語なのに、人数もさほど多くない隊員ひとりひとりの名前すらよく確認できないという見せ方はさすがにないと思います。せっかく個性的なメンバーが揃っているのに、彼らが誰だかよくわからないまま死んでいくというのは実にもったいない。また難民の描き方も中途半端で、最初から最後まで彼らはお荷物でしかないのでは感情移入できません。特殊部隊にはない土地勘を活かして協力関係が築かれるという話にすれば、彼らの存在感や見せ場のバリエーションも増えたはずです。そしてなんといっても最悪なのがケンドリックス医師の扱いで、せっかく助けに来てくれた特殊部隊に文句しか言わないバカ女にしか見えません。ウォーターズ大尉の行動にはケチをつける一方で、敵に追われてるのに休憩させてくれなどと危機意識ゼロのことを言い出したりで、本当にイライラしました。確かに、彼女の連れている難民は子供や病人が多数いて、彼女は自分のためではなく彼らを気遣って無理を言ってるのですが、そういった面が伝わる描写がまったくないのでバカ女にしか見えないのです。そんな感じでツメの部分で失敗しているのがもったいない限り。基本的にはそれほど悪い映画だとは思いませんでしたから。また、多くの方が指摘されているようにアメリカ万歳的な部分もありましたが、あれは製作側が意図したものではなくアメリカ人の地が出たものだと思います。私が一番不自然に感じたのは越境に成功した難民が「自由だ!」と叫ぶところで、自由を絶対の価値観とするアメリカ人ならではの発想だなと。また、大統領の息子が「私の父は民主主義の普及に努めていまして」なんて語るシーンもやはりアメリカ的。アメリカ人は自由や民主主義が世界的な価値観だと信じ込んでるんだなというのがよくわかります。
[DVD(吹替)] 6点(2006-11-23 19:12:30)
37.  ディープ・インパクト(1998)
地球に隕石が落ちてくると聞かされればド派手な映画を連想しがちですが、その実めぼしい見せ場と言えば隕石が落ちてくる1箇所のみであり、派手なシーンの連続というわけにもいかない厄介なテーマだと言えます。そんな課題に対してドラマパートに力を入れて終末感を煽ったのは正解で、無理に見せ場を盛り込んだ結果肝心の終末感をなくしてしまったアルマゲドンなどよりも余程映画として成立しています。実際に地球の危機が訪れた時に政府はどう対処するのかがよく考えられていて、隕石への対抗策を何段構えにも準備し、またパニックを押さえ込むための措置もきちんと講じられています。「給料や物価は現状で凍結しますので、生活はすべて今のままです」とまで大統領が言及していることには感心しました。また、絶望して辞任した財務長官からマスコミが政府の異常に気付くという展開も面白く、論理的によく練られた脚本だと言えます。映画において「リアクション」というのは大事な要素です。地球の危機を目前にした人々は何を感じ、どう行動するのか?これをテーマにしているので本作は質の高い映画となっています。どれだけ見せ場の連続であっても、それに対峙した生身の人間のリアクションをきちんと描けていない映画は大したものにはなりません。肝心の隕石衝突シーンにしても、津波に飲まれるビルの屋上には津波と逆方向に逃げる人影がきちんと描きこまれており、世界が滅びるとはただ物が破壊されるだけではなく、その下には怯える人たちが大勢いるということをわからせるのです。地球の危機をテーマにした映画は多くありますが、たいていのものに欠けているのはこの丁寧な描写だと思います。そんな充実した映画なのですが、後半になるとドラマパートにも穴が出てきたのは残念でした。誰をノアの方舟に入れるかは政府が厳正に決めたものなのに、その権利を個人の判断で勝手に譲渡し合ってるのは変だったし、それに付随して「私はここに残るからあなたは方舟に行きなさい」なんてドラマもくどかったです。生き残る権利を与えられなかったその他大勢の人々がパニックを起こすのならまだしも、ノアの方舟に入る権利を与えられた者が「やっぱり好きな人といっしょにいたい」だなんて言ってるんですから、非常事態という認識の欠けた人達が自己満足で騒いでるようにしか見えませんでした。
[映画館(字幕)] 7点(2006-11-05 01:08:36)
38.  THX-1138
正直、かなり退屈な映画ではあります。ルーカス若気の至りというか、当時まだ25歳だったルーカス、彼はいかにも意味ありげで、誰も作ったことのないような映画にチャレンジしたかったんでしょう。本来は簡単なお話なんですけど、抑揚のない展開、無機質なセリフが理解を拒みます。天の声が「物を買え」と煽りまくってるわりに、完璧な管理社会からはまったく消費の痕跡がうかがえない、それ以前に社会の全体像があまり見えてこない、チンタラ歩くだけのポンコツロボコップからは簡単に逃げられそうなど、設定上のミスもいくつか目につくし。しかし、それ以上にこの映画からはルーカスの才気が溢れ出ています。だだっ広い空間に延々と白のみが続く監獄(マトリックスに影響?)は、本来は狭くて汚いことが恐怖の根幹である監獄のイメージの正反対、そして直線のカーチェイス(マッドマックスに影響?)は、細かいカット割りの中で障害物を時によけ、時にぶつかるという従来のカーチェイスの迫力を覆します。そして「予算超過」と言って追跡があっけなく打ち切られる展開も、本作の雰囲気になかなか合っていますね。「そう来るか」って感じでした。やっぱりルーカスはただものではないのです。そして最近リリースされたDVD。ここに収録されていたドキュメンタリーが、ルーカス30年ぶりの復讐とでも言うべき壮絶な内容でした。60年代にはハリウッドのスタジオシステムは完全に崩壊し、そこからコッポラ、ルーカス、スピルバーグ、スコセッシ、デ・パルマ、ミリアスなど、ハリウッド幕末の志士とも言うべき若き才能が登場してきます。そんな新しい世代がはじめて本格的に製作したのが「THX-1138」なんですけど、本作は出資先のワーナーによって不遇の扱いを受けました。作品を理解しなかったワーナーは映画を勝手に編集し、捨てるように公開し、失敗作の烙印を押されてしまいます。そして関係者が大物に成長した現在、彼らは恨み節全開のドキュメンタリーに、なんと当時のワーナー重役まで登場させています。映画を握りつぶした張本人のインタビューまで収録されているんです。思えばコッポラとルーカスというのは、映画製作よりも映画業界を変えることにその人生を費やしており、貴重な才能を早く枯らしてしまった感じもします。スター・ウォーズがエピソード9まで作られなくなったのもそのためなら、ちょっと惜しい気もします。 
7点(2004-10-21 01:33:31)(良:1票)
39.  デイ・アフター・トゥモロー
ID4の巨大UFOと言い、これの凍結自由の女神と言い、エメリッヒさんの映画はいいポスターになりますね。彼の映画には常に印象的なシーンがあるんですけど、実際に見てしまうとガッカリなのは映像を動ではなく静で捉えているためでしょうか。彼はダイナミックなシーンを考えることはできても、どうにも動きに欠けるんですね。「車が流されていく」だとか「水に追いかけられる」だとか、映像が常に言葉で説明できるところに留まってるんです。演出次第ではもっとハラハラドキドキな映画にできたと思うんですけど。とは言っても、前半のディザスター特盛り祭にはやっぱり満足できましたけど。思いつく限りのことをやらかしてくれましたね。ないのは大地震と隕石くらいじゃないですか。その分、見せ場らしい見せ場のない後半がいっそうキビしかったのも確かですけど。これで後半、「氷河期移民を受け入れないラテンアメリカ政府に対し、アメリカが核で先制攻撃」なんてことになってくれればもっとステキだったんですよ。
7点(2004-10-07 00:22:16)
40.  天国の門 《ネタバレ》 
すごい力作だと思うんですけど、天国どころか地獄のように長い。ひとつひとつのシーンが異様なまでに長いんです。それもそのはずと言うか、この映画はすべてにおいてリアリティーにこだわり抜いたために、何もかもを見せたいという衝動にかられたんだと思います。序盤に出てくる駅ひとつにしたって、アメリカ中を探して見つけ出した年代物の機関車をモンタナまで運び、線路を敷き、駅を建設して撮影したわけですから、そりゃじっくり見せたいでしょ。荒野の雰囲気を出すために画面には常に塵や煙が舞っていますが、それにしたって計算されたかのような動きを見せるし、撮影は基本的に自然光。キューブリックにゃ負けとれんってわけですね。映画はいかにウソをつくかの勝負で、バカ正直にセットを丸々作ったり、わざわざ自然光のみにこだわることもないだろう、なんてことはこの際言いますまい。映画会社をひとつ潰したほどのこだわりなんて、見てて楽しいし。演技派揃いの渋い俳優陣もよかったのですが、画面をさらうような美男美女がいないってあたりもリアリティーのうちなんでしょうか。そしてエラ役のイザベル・ユベールさんは景気よく脱ぎまくってましたが、そのわりにスタイルの方がアレなのもリアリティーの一種でしょうか。なんてことを言いつつ、実は佳境に入るまでは話にのめり込んでたんですよ。だって金持ちが農民を虐殺しに来るという題材の時点で男気を燃えさせますよ。仲間割れする農民をまとめつつ保安官が戦いを挑むんだろう、その時にはエラに説得されたウォーケンも加勢に来て重要な役割を果たすんだろう、そしてクライマックスでは片方が死んで三角関係も丸く収まる、なんてアツイ展開を想像しながら見てたんですけど、佳境に入るとすごい展開に。決戦を前にしてウォーケンはアッサリ死に、一方保安官はフラれたショックで保安官を辞めるとゴネ出し、結局農民達は自発的に闘いを挑みます。おいおい、俺の燃える展開は?って感じですよ。しかもアクションにしたってカタルシスがまったくなし。リアリティーを残しつつでも、もっとかっこよく撮れたでしょうに。そして最後は大宮サティのカート野郎さん同様、あんまりピンときませんでした。「で?」って感じです。クライマックスに向けてもっと盛り上げてくれれば、西部劇の決定版になった映画かもしれないんですけどね。少なくとも監督はそのつもりで撮ってたんでしょうけど。
7点(2004-09-20 07:52:15)(良:1票)
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