21. パコと魔法の絵本
《ネタバレ》 「大人向けの絵本」という、一見すると矛盾した表現が似合う作品。 中島監督作といえば「下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も、現代の寓話、大人の為の絵本というフレーズが似合いそうな趣きがありましたからね。 本作においても、感動と笑い、対話と活劇、それぞれの要素がバランス良く詰め込まれていたように思えます。 印象深いのは、人間としての「強さ」に拘っていた主人公の大貫が 「強くなきゃ、会社も興せなかったし、財産だって……」 と言いかけてから、手に入れた二つが絶対的な価値を持つものではないと悟ったように、言葉を詰まらせるシーン。 正直、ここに至るまでは (いくらなんでもオタクっぽさが濃過ぎる) (テンションの高いギャグシーンにも付いていけないし、この映画とは相性が悪い) と、少々うんざりしながら観賞していただけに、ここでハッとさせられた感じでしたね。 劇中の大貫が「周りを見下していた傲慢な人間から、心を入れ替えて誠実になる」という変化を遂げる流れと、観客として、上手くシンクロ出来た気がします。 この手の「主人公の改心話」というのは王道ネタであり、決して目新しくはないのですが 「急に良い人ぶりやがって」 「今更善人ぶったって手遅れなんだよ」 という批判が、作中で行われている辺りも面白かったです。 人生という枠組みで考えてみた場合、晩年に良い人になったとしても、それまでの長い年月を悪人として過ごしたのだとすれば、彼を一概に「善人」という括りでは語れないでしょうからね。 物語としては、悪人から善人に転身した者の方が輝いてみえたりもしますが、実際は「一度も悪人にならず、生涯を善人で通した人」の方が、ずっと立派だよなぁ……なんて考えが浮かんできたりもしました。 こういった道徳的な側面というか「観る者に考えさせる」描写を挟んでいる辺りは、実に絵本らしくて良かったと思います。 個人的に最も好きなのは、落ちぶれた元子役と、彼のファンだった看護婦とのやり取り。 「その子は、ろくでなしの親と二人暮らしで、貧乏で、馬鹿で、不良で、生きてても、何にも良い事なくて……」 「だけど、その男の子を観ている時だけは、凄く幸せで……」 「アンタは、その子の夢だった」 という独白から、彼に「俳優」としての再起を促す件は、本当に良かったですね。 この映画におけるクライマックスは、ここだったんじゃないかと思ってしまうくらい。 それが影響しての事なのか、終盤にたっぷりと尺を取って描かれる「ガマ王子VSザリガニ魔人」の劇については(ちょっと、長過ぎじゃない?)と思えたりもして、残念。 「皆で劇をやろう!」と決意して、それぞれ稽古したりする件が一番盛り上がっていたと思うので、劇そのものは、もっと短く、アッサリ済ませた方が良かったんじゃないでしょうか。 それと、本作の特徴としては、感動と笑いを交互に提供するような演出が挙げられるのですが、劇の中でザリガニ王子を倒す件で「笑い」の方を選択し「ドリフかい!」で倒しちゃうのも、ちょっと好みとは違っていましたね。 それまで充分に笑いは取っていた訳だし、敵役を倒す場面はシリアスに、感動の方で〆て欲しいと願っていただけに(あぁ、そっちを選んだのかぁ……)と嘆息させられた形。 劇の最中、発作を起こして死んだと思われた大貫が、実は生きていたというオチの後 「死んだ方が良かったかにゃ?」 「そっちの方が感動的だし……」 なんて会話を交わして、笑いを取ったのに、大貫を改心させたパコの方が死んでしまうという「感動的」な展開に移行するのも、ちょっと悪趣味に思えてしまい、ノリ切れず。 最初は白け、途中からは大いに没頭し、終盤にて再び白けてしまったという形の為、何とも評価が難しいですね。 「観客をふるいにかける映画」なんて言葉がありますが、この映画で最後まで落ちる事なく楽しめた人にとっては、凄まじい傑作と思えるんじゃないでしょうか。 自分は残念ながら脱落してしまった訳ですが…… 付いていけずに落とされた後にも、魅力の余韻が残る一品でした。 [DVD(邦画)] 6点(2017-01-25 06:39:11)(良:1票) |
22. パラサイト・バイティング 食人草
《ネタバレ》 面白いんだけど、それ以上に「痛い」映画。 特殊な植物の蔦が体内に侵入し、それを取り出そうと自らの身体を切り刻む女性のシーンなんて、もう画面から目を背けたくなるし、仮に背けたとしても嫌ぁ~な声と音がして容赦なく「痛み」を連想させてくるしで「そんなに丁寧に描写しなくても良いよ! 観客に痛みを伝えたりしないでよ!」と訴えたくなります。 そんな具合に、ともすれば不快感だけを味わう事になりそうな内容なのですが…… これが案外、しっかり楽しむ事が出来たのですよね。 まず、冒頭「災難に見舞われる前の、楽しい旅行風景」がキチンと描かれているのが好印象。 そして舞台となる遺跡を訪ねる際に、現地人から「あそこだけは止めておけ」という類の、お約束の台詞が飛び出す辺りが、何だかニヤリとさせられるのです。 作り手に対し「おっ、分かってるね」と拍手を送りたくなるような演出。 麻酔無しで脚を切り、これで何とか助かったかと思われたのに、その後に口から蔦が入り込んだ時の絶望感なんかも良かったですね。 じわじわと追い詰められていく描写が丁寧なので(あっ、これハッピーエンドは無理だな……)と、観客にも自然と受け入れさせてくれます。 そうして全滅も覚悟したところで、ヒロインだけは何とか遺跡からの脱出に成功するという結末は意外性がありましたし、途中(プレッシャーに押し潰されて、嫌な奴と化してしまうのでは?)と不安になったりもした一同のリーダー格、医学生のジェフが最後まで良い奴のまま、自ら囮になってヒロインを逃がしてみせるという展開も好みでした。 とにかく観ていて「痛い」と感じる場面が強烈なので、再見したくなる映画とは言い難いのですが(観て良かったな……)と、素直に思えましたね。 なお、DVD収録の別エンドでは、ヒロインも結局は死んでしまうという救いの無い結末なのですが、自分としては「何とか一人だけは助かった」という、本編の終わり方を支持したいところです。 [DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 06:52:49)(良:1票) |
23. 半分の月がのぼる空
《ネタバレ》 作中にて「こういうの言うのって、疲れるね」との台詞がありましたが、観ているこちらまで疲れてしまうような内容。 まず、大泉洋が主人公の未来の姿であったという叙述トリックについては、見事に騙されました。 その驚きと感動が同時に味わえる演出は確かに凄いと思うのですが、ただ一点。 主人公には娘の未来がいるにも拘らず「里香がおらん俺の人生、空っぽや」なんて、それだけは父親として絶対に言っちゃいかんだろうという台詞を口にしたのが、受け入れ難いものがあったのですよね。 過度な自己憐憫で泣かせようという、作り手の意図が透けて見えたように思えて、折角の感動的な場面なのに、白けた気持ちになってしまいました。 せめて、その後にもっと明確に「自分には娘がいた」と気付いて反省したり、この子の為に頑張って生きようと決意するシーンがあったりすれば良かったのですが、それも無し。 また、最後に勇気を出して手術を行うと決意する理由も「里香の命令やもんで」って、照れ隠しではなく単なるヒロイン依存症に思えてしまい、残念でした。 基本的にはベタな「難病もの」であり、王道の魅力を備えているのだから、ツボにハマれば、素直に感動出来たのだと思います。 けれど、本作は自分の好みとは違っていたみたいで、何だか凄く勿体無い気持ちになりましたね。 一緒に病院を抜け出して、ヒロインの思い出の場所に連れて行ってあげる件。 そして学校の劇に、急遽代役として二人が出演する件などは、ご都合主義ではあるけれど「青少年がやってみたいと願う事を、映画の中で疑似体験させてくれる」という意味では、とても良かったですし、好印象。 特に後者の最中にて「私は、一瞬でも長く貴方の御傍にいたいんです」という台詞を、ヒロインが迷った末に口にする流れなんかは、本作の白眉であるように感じられました。 その劇の後、お姫様の恰好のまま倒れたヒロインを、王子様の恰好をした主人公が病院へと運ぶシーンにて、おんぶ等ではなく、ちゃんとお姫様抱っこで運んでいる辺りにも感心。 こういった細かい部分にて、観客の喜ばせ方を心得ているかどうかって、とても大切な事だと思います。 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が作中で効果的に扱われている辺りなども、ファンとしては嬉しい限り。 ラストにて、二人のキスと同時に、エンディング曲が流れ出す演出も秀逸でしたね。 性行為などの演出は徹底的に省いているのも「純愛」「真摯な物語」といった感じがして、作り手の誠実さが伝わってきます。 細かい部分での違和感、好みの違いはありましたが…… 決して嫌いにはなれない、とても真面目な映画でありました。 [DVD(邦画)] 6点(2016-09-28 22:03:22)(良:1票) |
24. パーマネント・レコード
《ネタバレ》 主人公かと思われた登場人物が、映画が始まって三十分程で、自ら命を絶ってしまう。 それでも、そこに驚きは無く(あぁ、やっぱり……)という思いに繋がるのだから、如何に丁寧に「死に至る心境」を描いていたのかが分かりますね。 学園の優等生で、人気者であり、恋人も、親友もいるはずなのに、何故か孤独を漂わせているデビット。 幼い弟に対し、自分と入れ替わらないかと提案するシーンなんて、特に印象深い。 「楽しいぜ、みんなのアイドルさ」「僕の方は一日中、眠れる」 という台詞からは、彼が感じている重圧と、そこから解放される事を願う気持ちが、痛い程に伝わってきました。 そんな彼の親友であり、映画後半の主人公となるのは、若き日のキアヌ・リーヴス演じるクリス。 親友のデビットが残した遺書代わりの手紙を目にし、衝撃を受ける姿が、何とも痛ましい。 「すべてを完璧にしたかった」「だめだった」 という短い文面を読み上げ、その深い絶望を感じ取って、思わず嘔吐する。 そんな場面を目にすると、映画前半での「デビットに同情する気持ち」も、瞬く間に吹き飛んでしまいますね。 自殺という行いが、如何に残された者達を傷付けるかについて、改めて考えさせられました。 そんな具合に、色々と心に響いてくる内容だったのですが、映画としては、クライマックスの演奏シーンで盛り上がれず、淡々とした流れで終わってしまったように思えて、少々残念。 デビットの遺作である曲を、クリス達がバンド演奏する事を期待していたのに、ヒロインの独唱という形になったのが、どうにも肩透かしだったのですよね。 そこはやっぱり、手紙と楽譜を受け取ったクリス自身に演奏して欲しかったなぁ……と思ってしまいました。 一夜明けての、ラストシーン。 デビットの転落死を経て、崖に設置された金網は、さながら彼の墓標のようでしたね。 そんな金網に手を添えて、寂し気な姿を見せていたクリスが、呼び掛ける声に振り向き、名残惜し気に金網を見つめながらも、仲間の許へ歩いていくエンディングは、とても好み。 悲しみを抱えながらも、それに囚われる事は良しとせず、生きる事を選んでみせるという、前向きなメッセージが伝わってきました。 自殺というデリケートな問題を扱いながらも、決してそれを肯定せず、勇気を持って否定してみせた一作だと思います。 [ビデオ(字幕)] 6点(2016-08-24 09:26:05)(良:1票) |
25. バウンス ko GALS
《ネタバレ》 中盤におけるヤクザとコギャルとの問答シーンの緊迫感は凄いですね。 結果的には意気投合して「見逃してもらった」形となる訳だけど、殺されるなり殴られるなりしても全くおかしくない雰囲気だっただけに、息が詰まるような思いがしました。 今となっては古臭くなっているかも知れませんが、当時における「コギャル」の生態を描いた品としても、凄く貴重。 コギャル当人に言わせれば「私ら、こんなんじゃないし」という答えが返ってくるかも知れませんが、年代も性別も異なる自分の目線からすると、極めてリアルに描かれているように思えます。 援助交際を行っているグループの中でも、すぐに身体を許す子は「サセ子」と呼ばれて見下されてしまう辺りなんかも、非常に興味深い。 こういった場合、第三者の目線からは「コギャル」と、ついつい一括りにしてしまいがちだけど、彼女達の中にも差別やら区別やらが存在するんだなぁ……と、しみじみ感じました。 「別に自分達が特別な訳じゃない」 「常識ある大人が少なくなったんです」 などの台詞によって「援助交際とは、そもそも大人側の需要が存在しなければ子供側の供給も存在しない」という真理を突いてみせるのも、実に上手いですね。 男性であるヤクザ目線でも、女性であるコギャル目線でも、互いの言い分に一定の説得力があるというか、観ていて肩入れ出来るような感じに仕上げているのは、監督さんの力量なのだと思われます。 こういった世代差や性別を越えた「対話」を扱う際に、どちらか片方を貶める事なく描いてみせるのは、中々出来ない事かと。 「どうして子供が売春なんてするんだ?」という観客の疑問に対し「子供の内は捕まっても罪が軽いから、悪い事をするなら今の内。二十歳になったら悪い事は止める」と語る少女を作中に登場させて、一つの答えを示している辺りなんかも、色々と考えさせられましたね。 それまで大人の「欲望」を利用して金稼ぎしていた少女達が、終盤にて大人の「善意」によって救われる構造なども、面白かったと思います。 ただ、自分としては最後の最後で、妙に綺麗にまとめてみせたというか、ちょっと終盤の展開だけ映画の中で浮いているようにも感じられて、そこは残念。 あの終わり方だからこそ、青春映画としての魅力も強まっているのかも知れませんが、もう少し苦みを含んだハッピーエンドでも良かったかも知れませんね。 それまでの展開がリアルであっただけに、爽やか過ぎて非現実的に思えてしまいました。 エンドロールの最後に流れる笑い声が、凄く怖かったりもしたのだけど、あれの演出意図も気になるところ。 大人目線による「子供の得体の知れない不気味さ」を表したにしては、劇中でその「不気味な子供」を好意に近い目線で描いている訳だし、どうも不可解。 全体的にクオリティは高いのですが、最後まで謎や違和感も残るという、後味爽やかとは言い難い映画でありました。 [DVD(邦画)] 6点(2016-08-10 10:11:46)(良:1票) |
26. パレード
《ネタバレ》 これは久々に「怖い」と思わされた映画です。 正直に言うと、終盤までは退屈で仕方ない。 夜の遊園地にて、女性が子供時代のトラウマを語るシーンの演出なんかはベタベタで、話の途中で相手の男が目を瞑っているのに気が付き「何だ、寝ちゃったのか」と呟く件なんて、もう観ているコッチが恥ずかしくなるくらい。 だた、このシーンにて「途中で寝ちゃった」はずの男性が、そっと目を開き、寝た振りをしていた事が明かされるのですよね。 (出会って間もないのに、いきなりヘビーな話されて困ったから、聞かなかった事にしたのかな……)と、軽く受け流していたのですが、まさかそれがラストの伏線とは、恐れ入りました。 連続通り魔の犯人が、ルームシェアしている若者達四人の中にいる事は、大体予見出来る範囲内だと思います。 その正体が、藤原竜也演じる直輝であったという点についても「一人だけ夜中に出歩いていて、アリバイが無い」という事を鑑みれば、意外とは言えない。 衝撃的な犯行シーンに差し掛かっても、観客であるこちらとしては(まぁ、そうだろうなぁ)という感じで、然程驚きは無かったのですが、そんな風に心が緩んだ隙を突くようにして、映画は「本当に怖い」ラストシーンに流れ込むのです。 偶々犯行を目撃してしまった、新たな入居者のサトル。 諦めきった表情で「警察に突き出される事」「自分を慕っていた同居人の皆にも犯行がバレてしまう事」を覚悟する直輝に対し、サトルは事も無げに、こう言い放ってみせる。 「もう、みんな知ってんじゃないの?」 この一言にはもう、完全に直輝と心境がシンクロしてしまって、心底から吃驚。 そして、何故知っているのに止めなかったのか、その理由が既に作中で明かされていた事に気付いて、二度驚く訳です。 恐らく彼らは「重い話を聞く事」が「面倒臭い」のだと思います。 だからトラウマを抱えた女性を相手にしても、寝た振りをしてやり過ごす。 同情したり、慰めたり、励ましたり、怒ったり、一緒に泣いてみせたりするのは、疲れるし、やりたくない。 同居人が殺人犯じゃないかと勘付いても、それが確定してしまったら面倒なので、踏み込まない。 観客が知りたいと願う「犯行の動機」に関しても、一切詮索したりはしない。 自分にとって「都合の良い人物」「皆の頼れる最年長者」でありさえすればいいという、怠惰な利己主義。 作中で長い時間を掛けて、彼らは「問題を抱えているけど、基本的には良い奴ら」として描かれていただけに、その衝撃は凄かったですね。 そんな人間関係の中で、直輝だけが一方的に「重い話を打ち明けられる事」が多い。 しかし、直輝にとっての悩みである「自分が殺人犯である事」は、誰にも打ち明けられない。 信頼出来る人格者として扱われている為、仲間から打ち明けられた秘密を、他の仲間に話す事も無い。 あまりにも便利な相談役。 だからこそ、他の住人にとっては直輝が必要だったのでしょう。 ラストシーンにて、泣き崩れる直輝に「皆で旅行に出掛けよう」と誘う一同の、冷たい表情。 そこからは、親しみに見せかけた究極の無関心というか「大切なのはアンタがどういう人間なのかじゃなくて、アンタが私の仲間として役に立ってくれるかどうかだ」という要求が窺い知れて、本当に背筋が寒くなりました。 日常にて何気なく使われる「空気を読めよ」という言葉なんかも、本質的には彼らの要求と同じではないかと思えたりして、何ともやりきれない。 全編に亘って楽しめる内容とは言い難いのですが、とにかくラストの衝撃に関しては、折り紙付き。 こういった事が起こり得るからこそ、途中まで退屈な映画でも、最後まで諦めずに観なきゃいけないんだな……と、再確認させてくれました。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-03 07:34:31)(良:1票) |
27. バレット(2012)
《ネタバレ》 「女子供は殺さない」「義理人情に篤い殺し屋」というキャラクターを主人公に据える前時代的な潔さが、もう天晴。 とにかく勧善懲悪が徹底していて、敵を次々に殺しまくり「死んでも誰も悲しまない悪党が死んだだけ」と堂々と語ってみせるのだから、これは凄い事です。 上記の台詞に関しては、正直ちょっと引いてしまったりもしたのですが(きっと、この映画の世界では本当にそうなんだろうな……)と、納得させられる力強さがありましたね。 往年の名匠ウォルター・ヒルだからこそ、出来た事なのかも知れません。 そして、とっくに承知の上なはずだったのですが、それでもシルヴェスター・スタローンの風格と肉体美には、改めて惚れ惚れ。 主演俳優を格好良く撮るという意味合いにおいては、文句無しで合格だったかと思う次第です。 その一方で残念なのは、スタローンにばかり比重が偏り過ぎて、相棒となる刑事の影が薄く、バディムービーとしての魅力には欠けるように思えてしまった点でしょうか。 何せ一番印象に残る活躍が、携帯電話で警察のデータベースから情報収集するという、刑事なら誰でも出来そうな事だったりするのだから、何とも寂しい限り。 ラスボスとなる殺し屋を撃ってスタローンを救ってみせる場面も、あるにはあるのですが、正直そこに関しては「元相棒の形見であるナイフを首に突き刺す」という形で、復讐のカタルシスと共に終わらせておいた方が良かったんじゃないか、と思えてしまいました。 途中、クリスチャン・スレーターがアッサリ殺される展開に関しても(まぁ、スレーターだしなぁ……)と、彼を好きなはずの自分ですら納得してしまうような予定調和の中にあるのに、相棒の刑事は心底から吃驚して「何故殺した?」と動揺していたりするものだから、ちょっと感情移入出来なかったです。 そんな本作の価値を大いに高めているのは、斧を武器とした武骨なラストバトルでしょうね。 相手役となるジェイソン・モモアも雰囲気たっぷりで、非常に重量感のあるアクションとなっています。 ぶつかり合う斧の刃先からではなく、互いの筋肉から火花が飛び散っているかのような迫力には、大いに興奮させられました。 スタローンが相棒の肩を撃って、彼の無実を証明してみせた後に、悠然と立ち去っていく後姿なんかも、これまた素敵。 色々細かな不満はあったりしても、その格好良過ぎる背中を見つめるだけで、もう満足させられちゃうのですよね。 何とも罪作りな背中でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2016-06-24 07:31:06) |
28. ハンター(1980)
《ネタバレ》 始まって十数分、粉塗れになる乱闘シーンで「あれ?」と思い、そこから更に三十分後の爆発シーンで、ようやくコメディ映画なのだと気が付きました。 かと思えば、クライマックスにおける電車上のアクションは中々の迫力であったりして「一粒で二度おいしい」タイプの作りとなっていますね。 これが遺作であるというスティーヴ・マックィーンが、色んな面を見せてくれたという意味においては、非常に嬉しい内容。 ただ、自分としては正直コメディ部分は退屈だったりもして、残念でした。 その分、終盤のアクションパートでは画面に釘付けになる事が出来たのですが(どうせなら両方を楽しんでみたかったな……)と、切なく感じてしまったのですよね。 好きな俳優さんの作品であるだけに、全面的に肯定出来ない事が、もどかしかったです。 ラストに関しては、ほのぼのとしたハッピーエンドで締められており、驚くと同時に癒されるものがありましたね。 西部劇、刑事ドラマ、脱獄物と、シリアスな作風の品に出演している印象が強いマックィーン。 そんな彼が、何とも優しい手付きで赤ちゃんを抱き上げて、父親として笑ってみせている。 その姿が、最高に似合っていて、最高に決まっているのだから、本当に凄い事だと思います。 映画の内容そのものよりも、最後の出演作までマックィーンは格好良くて、魅力的だったという、そちらの方に感動させられた一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2016-06-21 12:56:14)(良:1票) |
29. バス停留所
《ネタバレ》 マリリン・モンローが「演技派」への転身を図った第一作目という事で、彼女を語る上では外せないタイトルだと思います。 そんなモンロー当人の演技だけに着目すれば(頑張っているなぁ……)と、微笑ましい気持ちになったりもするのですが、映画全体から受けた印象となると、中々に厳しいものがありましたね。 まず、この映画の中心はモンロー演じるチェリー(=シェリー)ではなくて、ドン・マレー演じるボーな訳ですが、彼がどうにも感情移入を拒むような主人公像なのです。 根は悪い人間ではないのでしょうが、余りにも傍迷惑だし、現代の目線からすると思い込みの激しいストーカーにしか見えないのが困りもの。 そんな彼が殴られて、打ちのめされて、ようやく改心し、最後にはモンローと結ばれるというハッピーエンド構成なのですが、その「彼が反省して生まれ変わる」までが長過ぎるように感じてしまいました。 確認してみたところ、全95分の内、雪の中での殴り合いに突入するまでに70分以上が経過している計算なんですね。 個人的には、このイベントをもっと早い段階に持って来た方が良かったんじゃないかな、と。 まるで尺が足りないかのように、終盤にて「主人公が改心する」→「ヒロインと結ばれる」という出来事が立て続けに起きた印象を受けてしまい、今一つ納得出来ないものがありました。 上述のように「前振り」部分が長過ぎたんじゃないかと思えてしまう作品なのですが、終わり方は爽やかで好み。 子供っぽい主人公の面倒を見続けてくれた、親代わりのような年長の親友が「わしは邪魔だ。お前には彼女がいる」と身を引いて、バスに乗り込む二人を送り出す場面は、グッと来るものがありましたね。 相手を思いやる気持ちに欠けていた主人公が、ヒロインが凍えてしまうと気遣って、自らの上着を脱いで羽織らせてやると、ヒロインもそれに応えて、一度は勝手に彼に持ち出されてしまった緑のスカーフを、今度は愛情込めて彼の首に巻いてみせるシーンなども、負けず劣らず良かったです。 面白かったかどうかと問われたら、頷きがたいものがあるけれど「良い映画だった?」と問われたら、迷った末に頷いてしまう。 そんな映画でした。 [DVD(字幕)] 6点(2016-05-18 01:47:53) |
30. パワーレンジャー(2017)
《ネタバレ》 「パワーレンジャー」(1995年)「パワーレンジャーターボ/誕生! ターボパワー」(1997年)と併せて、三作連続で鑑賞したのですが…… 前二作はテレビシリーズの劇場版という趣が強い為、予備知識無しで楽しめたのは本作のみでしたね。 単純に出来栄えとしても、三作品の中では一番良かったんじゃないかと思います。 ただ、それは「シリーズの中では一番面白い」というだけであり、純粋にコレ単品で評価するとなると……結構厳しいです。 学園物なテイストを盛り込んだのは悪くないと思うし、ちゃんと巨大ロボットも登場して「戦隊物に必要な事」は最低限やってくれているんですが、どうも物足りない。 映像のクオリティも高くて「本気でリブートする」「続編を何本も作れるような、人気シリーズにしてみせる」という心意気は伝わってきたんですが……残念ながら、その熱意が面白さに繋がっていないんですよね。 ちょっと酷な言い方をするなら「熱意は感じるけど、センスは感じない映画」って事になっちゃうと思います。 いや本当、悪い映画って訳じゃないんですけどね。 元々自分が特撮ヒーロー物を好きってのを差し引いても、一定のクオリティは有って、娯楽映画として及第点に達してると思いますし。 超人的な力を手に入れて喜ぶ姿とか、皆で焚火を囲んで絆を深める場面とか、若者達が主役ならではの「青春映画」としての魅力も描けてたと思います。 でもやっぱり、作り手にセンスが欠けてるというか…… 例えば、絶体絶命の場面でブルー(元いじめられっ子)が主人公のレッドに「友達になってくれて、ありがとう」と伝える場面とか、演出次第で、もっと感動的に出来たはずなんです。 なのに本作は(えっ、何で?)と戸惑うくらい、そういうオイシイ場面をアッサリ流してしまう。 それはレッドが父親を助ける場面も然りであり「父親がレッドの正体に気付く」とか「喧嘩しがちだった二人が和解する」とか、いくらでも面白い展開に出来たはずなのに、ただ助けるだけで終わっちゃうんですよね。 本当に勿体無くて、観ていて焦れったい。 エピローグにて「新たな戦士」の登場を示唆する一方で、倒しそびれた敵などが存在しない辺りは「観客にモヤモヤを残さない、誠実な作り」と褒める事も出来そうなんですけど…… 何か、さっきから「作り手の誠意」ばかり褒める形になっていて「映画の面白さ」を褒められないのが、寂しい限りです。 「好きな映画」とも「面白い映画」とも言えそうにない。 でも、絶妙に嫌いになれないという、不思議な感じ。 粗が有るのは分かってるけど、何とか肯定してあげたくなる。 「ヒロインや女怪人が可愛いってだけでも充分じゃん」とか、そういう軽いノリでフォローしたくなる。 まだ半人前だけど、頑張って戦ってるヒーローを応援したくなるような…… そういう「応援したくなる映画」っていうのが、一番的確な評かも知れません。 [インターネット(吹替)] 5点(2023-07-19 19:27:16) |
31. ハンニバル・ライジング
《ネタバレ》 「ハンニバル」の時点で(殺人鬼であるレクターを、ヒーローとして描こうとしてるのでは?)って違和感があった訳だけど、本作では完全にヒーローに変身しちゃってますね。 「羊たちの沈黙」にて、罪の無い警官を平気で殺してた男が、良くもまぁここまで変わったもんだと、妙に感心しちゃいます。 そんな具合に、皮肉な目線で捉えるなら「レクターを正義の味方みたいに描かないで欲しい」とか何とか、文句も言えちゃう訳だけど…… 意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。 後のシリーズと切り離し、本作単体で考えるなら「妹を殺した連中と、愛する女性を侮辱した男しか殺してない主人公」って形になってるし、シンプルな復讐劇として、奇麗に纏まってると思います。 むしろ本作に関しては「主人公は後のハンニバル・レクターである」って点が、デメリットになってるんじゃないかと思えたくらい。 レディ・ムラサキから剣道を習い、それを活かして最初の殺人を行う訳だけど(それなら、後々も日本刀がレクターの得意武器となるはずでは?)って、気になっちゃうんですよね。 それと、この後レクターは上述の通り「罪の無い警官を平気で殺してた男」に変貌する訳だけど、その変貌するキッカケなども描かれていないから「殺人鬼ハンニバル・レクターが誕生した理由」ってのが、見えてこないんです。 あえて言うなら、愛する女性のレディ・ムラサキに振られた事が「復讐者」から「殺人鬼」に変わった理由かとも思えるんですが…… それにしては、エンディングにて「復讐」を完遂しようとする姿で終わってるしで、何かチグハグですよね。 素人の浅知恵ですが、本作に関しては「純粋な復讐劇」として考えるなら、自らも妹を食べていたと悟った主人公は、復讐を完遂した後に自殺する結末の方が良かったと思うし、逆に「ハンニバル・レクター誕生を描いた物語」として考えるなら、復讐の為じゃなく快楽の為に殺人を犯すようになった場面を描くべきだったと思います。 「ハンニバル」よりは面白いって思えた一作なんですが、この辺りの歪さに関しては、正直褒められないです。 その他にも「山小屋の兵士達が、それほど餓えてるように見えない」とか「失語症が治るカタルシスを描かずに、あっさり治しちゃうのは勿体無い」とか、色々と気になる点も多い映画なんですが…… レクターが返り血を舐める場面なんかは、素直に恰好良かったし「正義では裁けない悪を、悪をもって誅す」というダークヒーロー的な魅力は、しっかり描けてたと思います。 何より見逃せない功績は、本作にてレクターに美形属性が備わった点ですね。 本作で美少年としてのレクターが描かれたからこそ、後にドラマ版「ハンニバル」が生まれたのかも知れないし…… そう考えると、非常に意義のある一本だったと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2023-05-10 03:21:23)(良:1票) |
32. バブルへGO!! タイムマシンはドラム式
《ネタバレ》 馬場監督の映画ではお馴染みの「田中真理子」と「吉岡文男」の名前が出てくるという、それだけでもファンとしては嬉しくなっちゃいますね。 インタビューによると、元々は「タイムマシンを題材にした映画を撮りたい」という気持ちがあり、バブル要素は後付けで話を作り上げたとの事ですが、それも納得。 終わってみれば「タイムスリップした先はバブル景気の頃でした」というのは大して重要ではなく「タイムマシンによって過去を変えた結果、現代の状況が良くなる」という、王道なハッピーエンドストーリーでしたからね。 とかく世間では「馬場監督」=「バブル映画」というイメージで語られがちだけど、一番の傑作と言える「メッセンジャー」(1999年)はバブルと関係無い内容だったし、少なくとも監督当人は、そこまで「バブル」に拘ってる訳では無いんじゃないかなって気がします。 実際どうだったかはさておき、馬場監督がバブル期に手掛けた過去作よりも「贅沢過ぎて有り得ない世界」が描かれており、意図的に「バブル」をギャグとして描いてると分かる辺りも、興味深いポイント。 監督自身も「俺なんかがそういうストーリーを考えたとき、最高! っていうバブルは思いつかない。絶対」と語られていますし、誇張されまくってるであろうバブル期の描写が、ナンセンスギャグっぽくて面白かったですね。 案外、本当にバブル期を経験した年代の人こそ「有り得ねぇ」「こんなんじゃなかった」と笑いながらツッコみ、自分みたいにバブル期を直接知らない世代ほど「当時は凄かったんだ」と真に受けちゃう人も多いんじゃないかなって、そんな風に思えました。 「百円玉」「髪を掻く仕草」などの伏線が、ちゃんと分かり易いのも親切だし「クラブ」や「ヤバい」という言葉の意味が、時代を経て変わってるのを示す場面なんかも、如何にもタイムトラベル物っぽくて、ニヤリとしちゃいましたね。 かと思えば、首相に「話せば分かる」と訴えるという五・一五事件をパロった場面もあったりして、本当に幅広く色んなネタが散りばめられているので、観ていて飽きなかったです。 主演の阿部寛は実際に「バブルのド真ん中にいた」との事で、バブル期の世界を遊び過ごしてる姿に説得力があった辺りも良い。 ヒロイン格の真弓を演じた広末涼子も、わざとらしい仕草や演技が愛らしく、2007年当時は無かったであろう「あざと可愛い」って言葉が似合うような魅力がありましたね。 当初は「女を口説こうとする男」として彼女に接していた主人公が、その正体を悟った途端に「娘を守ろうとする父親」に変貌する様も微笑ましく、個人的には、ここの「軟派男が父親の顔になる瞬間」が、本作の白眉だったように思えます。 そんな具合に、色々と良い部分もある映画なんですが…… 正直に告白すると、総合的な満足度としては、決して高くなかったんですよね。 この度、馬場監督の映画五本を通して鑑賞し、デビュー作から徐々に面白さがアップしていく様を見守ってきていたもので(あの「メッセンジャー」の次に撮った映画となれば、さぞ傑作だろう)と、勝手にハードルを上げ過ぎてしまったのかも。 作品全体の演出が、やたらコメディタッチ……というより漫画的なのも(何か、馬場監督らしくないな)と思えて戸惑ったし、台詞の切れ味も鈍ってた気がします。 上述の「父親の顔になった主人公」って場面が好きだっただけに、ラストにて「結局、今も愛人を囲ってるような浮気者のまま」と示唆して終わるのも、ガッカリしちゃったし…… ここまで「何もかも上手くいくハッピーエンド」にした訳だから、そこは変に捻ったりせず「家族を大切にするパパになりました」で良かったと思うんですよね。 「国の景気なんかより、家族の絆が大事」って結論を出したはずなのに、最後の最後で「景気は上向いたけど、家庭不和の火種は残ったまま」になるだなんて、どうにも受け入れ難いものがありました。 そんな訳で、結果的に「最新作がデビュー作の次につまんない」って評価になってしまった事が、本当に残念。 でも馬場監督って、まだまだ現役で2022年にもドラマの監督を務めてる訳だし…… 自分としては映画の新作にも、是非期待したいですね。 以前チラっと語っていた「波の数だけ抱きしめて」 (1991年)の続編っぽい話とか、何とか実現させて欲しいものです。 [ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-10-10 18:13:49)(良:1票) |
33. ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝
《ネタバレ》 始皇帝暗殺を題材にした「HERO」(2002年)を踏まえた上で鑑賞すると、今作でジェット・リーが始皇帝を模したキャラを演じてるのって、感慨深いものがありますね。 敵の強さや、スケールの大きさという意味合いでも今作がシリーズで一番だろうし、貴重な「悪の親玉であるジェット・リー」が拝めるってだけでも、一見の価値有りな映画だと思います。 ただ、面白さという点に関しては……正直、結構厳しいです。 エヴリン役が他の女優さんに変わってるとか、アレックスが幼児から大人に急成長してるのに戸惑うとか「続編映画ならではの違和感」も大きいんだけど、そういうの抜きで単品として評価しても(えっ、何で?)と思っちゃうポイントが多いんですよね。 上述のジェット・リー演じるハン皇帝にしたって、中盤で見せる三つ首の竜の姿が迫力満点だったのに、終盤では竜に変身せず、人型のまま倒されちゃうというんだから、もうガッカリ。 唐突に出てきて「雪山以外じゃ活動出来ないから」とばかりに、唐突に姿を消しちゃうイエティも、また然りですね。 せっかく魅力的なモンスターを登場させてるのに、それを活かし切れていなかったと思います。 他にも、前作と違って「死に際まで互いを救おうとする悪のカップル」を描いてるのは良いんだけど「彼らが強く愛し合ってる」という伏線が無いから、唐突で感動出来ないんですよね。 最後のオチが「ペルーでミイラが発見された」っていうのも、凄く微妙。 ガッカリした気分のまま映画が終わっちゃうので、何だか映画全体の印象まで悪くなっちゃいます。 そんな訳で、三部作の中では明らかに見劣りする出来なんだけど…… シリーズのファンとしては、文句ばかりじゃ寂しくなるので、以下は良かった点を。 まず「リックが二丁拳銃で戦う場面がある」って事に関しては、素直に嬉しかったですね。 時代設定に合わせ、主武装はマシンガンになっているのに、ちゃんと序盤で二丁拳銃姿も見せたっていうのは、ファンサービスとして正解だったと思います。 中華街を馬車で暴走したりとか、前作のようなカーチェイス場面があるのも嬉しい。 新たなヒロイン格となるリンも可愛かったし、特に「不死の命を捨てて」と言われ、嬉しそうに微笑む場面なんかは、胸がときめくものがありましたね。 アレックスと彼女の恋路が、悲劇に終わったりせず、無事に結ばれる結末であった事にも、ホッと一安心です。 やっぱり、このシリーズにはハッピーエンドが似合うと思います。 なお、2022年現在「ハムナプトラ」の四作目は作られておらず「ペルーのミイラ」がどうなったかについては、謎のままとなってる訳ですが…… きっとリック達なら、何時ものようにミイラを倒して、そして世界を救ってみせちゃうんでしょうね。 更なる続編があるのなら、アレックスとリンの間に生まれた子供。 つまりは、リックの初孫なんかが登場する事にも、期待したいものです。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2022-09-11 15:48:43) |
34. バトルクリーク・ブロー
《ネタバレ》 ジャッキーが自伝にて「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画を、金払って観ようという人はいない」と語っている通り、商業的には失敗した映画。 その原因は「燃えよドラゴン」(1973年)を手掛けたロバート・クローズ監督が、ジャッキーに「ブルース・リーのような魅力」を求めてしまったからに他ならない……なんてイメージがあったのですが、久し振りに再見し、それは間違いだったと気付かされましたね。 それというのも、本作は意外にもコメディ色が強くて「ジャッキーらしい魅力」を、ちゃんと描こうとしてた痕跡があるんです。 (これはブルース・リーっぽいな)と感じた場面なんて「敵の屋敷に侵入する場面」「友人を殺された仇討ちしようと、怒りの声を放つ場面」くらいでしたし。 少なくとも「ジャッキーにブルース・リーの真似事やらせたから失敗したんだ」って認識は間違ってたみたいで、大いに反省させられました。 ただ、映画として面白かったかどうかっていうと……やっぱり「微妙」「退屈」って印象の方が強いです。 ジャッキー当人はキレのある動きを見せているんだけど、肝心の相手側が「戦ってる」というより「事前の打ち合わせ通りに動いてる」って感じが見え見えで、迫力が伝わってこないんですよね。 ローラーレースの場面でもスローモーションを多用していてテンポが悪いし、演出も良くなかったと思います。 そして致命的なのが、脚本の拙さ。 何せ本作と来たら「ジャッキーが人質を取られてギャングの言いなりとなり、要求通りにストリートファイトの大会で優勝しました」ってだけの話なんです。 一応、途中で仇敵の一人は倒して溜飲を下げてるんだけど、肝心のギャングの親玉は無傷どころか、ジャッキーが言いなりになってくれたお陰で万々歳。 そんな親玉に「約束通り人質を解放する」って言われ、ジャッキーは笑顔になって終わるんだけど…… (それでハッピーエンドにして良いのか?)ってツッコむしか無かったです。 主人公の父親が料理店を経営してるとか、現実のジャッキーの生い立ちにリンクさせるような設定は悪くなかっただけに、どうにも着地の仕方に納得出来ない。 どんなにベタでも良いから「人質を取った卑劣なギャングに復讐するカタルシス」は描いて欲しかったですね。 「口笛を交えたBGMは良い感じ」とか「特訓の描写は頑張ってる」とか、一応褒めるべき点はあるし、何より自分は「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画」でも結構楽しめちゃう口なので、駄作と断ずる事は出来ないんですが…… 失敗作扱いされても、特に反論しようって気にはなれないです。 それと、後世の人間としては「紆余曲折を経て、ジャッキーはハリウッドで大成功を収めた」のを知ってるからこそ、余裕を持って鑑賞出来たけど…… もし自分が「公開当時のジャッキーファン」だったとしたら、相当キツかったと思いますね。 (違うんだ、ジャッキーは本当は凄い奴なんだ)(ハリウッドで通用しなかったのは偶々なんだ)って想いで一杯になってた気がします。 成功してくれて良かったです、本当に。 [DVD(吹替)] 5点(2022-05-18 03:49:19)(良:2票) |
35. バウンティー・ハンター(2010)
《ネタバレ》 愉快な雰囲気の映画でしたね。 追う者と追われる者、賞金稼ぎと賞金首が元夫婦であり、二人が追いかけっこを通して、徐々に復縁していくというストーリーラインも良かったと思います。 ただ、自分としては今一つ楽しめなくて……その理由は、主人公の性格。 野性味があって、毒舌で、所謂ツンデレ気質でと、女性目線なら魅力的なキャラクターに思えたかも知れませんが、単なる「嫌な奴」としか思えない場面も多く、感情移入するのが難しかったです。 演じているジェラルド・バトラーは嫌いじゃないし、なんだかんだで一途な男なんだろうなぁ、って事は伝わってくるんですが、あまり応援出来ないタイプ。 元妻の家に忍び込んで、トイレの便器に歯ブラシを落としたり、録画されていた番組を消したり、ベッドの上でスナック菓子を貪り枕で口元を拭うシーンなんかは、流石に呆れちゃいましたね。 しかも、そこをさも痛快な復讐劇みたいなタッチで描いているもんだから、どうにもノリ切れない。 監督さんは傑作映画「最後の恋のはじめ方」なども手掛けられているし、全体的な演出や音楽の使い方なんかは、結構好みだったんですけどね。 カジノのシーンにおける「最初は乗り気じゃなかったヒロインも、勝ち続けるにつれ段々ヒートアップしていく」という流れや「軍資金片手にエレベーターに乗り込んだ主人公が、次の瞬間には酒のグラス片手に出てきて、ボロ負けした事を示す」という表現なんかも、良かったと思います。 「主人公とヒロインは元夫婦である」という設定も活かされており、互いを知り尽くしている夫婦ならではの会話が劇中に散りばめられている点も、好感触。 で、そんな主人公カップルを囲む脇役陣はというと……ヒロインの母親は結構良い味出していたけど、精々それくらいで、他は微妙に思えちゃいましたね。 中でも、ヒロインに片想いしている男のエピソードなんかは、本筋に全然関係無いし、人違いで骨を折られたりして悲惨な目に遭うだけなので、全然笑えない。 主人公目線なら「俺の元妻に言い寄るから悪いんだ、ざまぁみろ」と思えたかも知れませんが、ちょっとキツかったです。 「結婚記念日を一緒に過ごす為、嫌味な警官を殴って主人公もヒロイン共々逮捕され、檻の中でキスをして終わり」というハッピーエンドに関しては、中々オシャレだし、綺麗に纏まっていたと思います。 終わり良ければ全て良し……という程ではありませんが、この結末のお蔭で、そんなに後味は悪くない。 まずまずの満足感を味わえた一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-09-05 18:36:41)(良:2票) |
36. パーフェクト・ゲッタウェイ
《ネタバレ》 ミラ・ジョヴォヴィッチの悪役は珍しいけど、結構良い感じだなぁ……と思っていたら、最後の最後で裏切りというか、彼女も被害者であったかのような展開になるのが残念。 元々彼女ってキツい顔立ちの美人さんですし、今回は徹底して悪女という路線を貫いても良かったんじゃないかと思えました。 同監督作の「ピッチブラック」が「悪人だと思ったら実は善人だった主人公」の話であるのに比べると、今作は「善人だと思ったら実は悪人だった主人公カップル」の話となっており、どうしても後味は悪かったですね。 途中から登場するカップル二組に主人公交代しているし、そちら目線で見ればハッピーエンドなのでしょうが、今一つその目線の変換がスムーズに行われておらず、彼らに感情移入する前に映画が終わってしまったという形です。 法螺噺っぽく口にした「頭蓋骨をチタニウムで埋められた」という一言が伏線となっている点には感心させられたし、練り込まれた脚本なのは分かるのですが、何というか「気持ちの良い裏切り方じゃなかった」という感じですね。 この手の「主視点の人物こそが犯人である」ネタって、よっぽど上手くやってくれないと褒める気になれないし、本作においては「自分達が犯人のはずなのに、何故か他のカップルに怯える主人公達」の描写が頻繁に出てくるので、ちょっとアンフェアな印象が強いです。 結婚式の映像で二人の顔が映らなかったり、脚本家のはずなのに映画の話になると歯切れが悪くなったりする時点で、観客としても「この主人公カップルは怪しい」と勘付くから、それほど意外性がある結末でもないし、その一方で「じゃあ、結局なんで他のカップル達に怯えていたの?」という疑問が残ったまま。 答えとしては「自分達が犯人だとバレるのを恐れていた」「別に犯人とか関係無く危ない奴らだと思っていたので怯えていた」「完全に被害者カップルになり切って演技を楽しんでいた」などが用意されているのでしょうけど、作中で明確にコレと示される訳でもないので、宙ぶらりんな印象なのですよね。 オチをバレないようにする為の紛らわしい演出が多過ぎて、そういうのは「上手い」っていうより「姑息」なんじゃないかと思ってしまいました。 物語の舞台となるハワイの景観は素晴らしく、観ているだけでリゾート気分を味わえる辺りは、好印象。 それと、普通なら真っ先に容疑者リストから外してしまうような怪しい男を演じていたのが、今やすっかり大物となったクリス・ヘムズワースというのも、上手い配役でしたね。 当時は単なる脇役に過ぎなかったのでしょうが、現代の目線からすると「怪し過ぎるけど、彼が演じているなら意外と犯人って事も有り得るかも……」と思える為、目眩ましとして非常に効果的であった気がします。 上述の通り、オチには納得出来ませんでしたが、程好い緊張感が味わえたし、なんだかんだで楽しめた一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-04-18 23:02:08)(良:1票) |
37. 犯人に告ぐ
《ネタバレ》 とても真面目に作られた、硬派な一品だと思います。 ただ、こういった品は「堅苦しくて退屈」という印象に繋がってしまう危険性も孕んでいる訳で…… 残念ながら、本作はそれに該当してしまった気がしますね。 メディアを使って犯人を挑発、対話というテーマは非常にエンタメ性が高く、コメディタッチな作風と相性が良さそうなのに、あえてシリアスに徹したのが本作の特徴であり、魅力にもなっているのでしょうが、自分には合わなかったみたいです。 楽しめなかった理由としては、主人公に感情移入出来なかった点も挙げられそう。 彼は同僚との手柄の奪い合いの為に捜査に最善を尽くさず、結果的に幼い子供の死を招いてしまう。 そこの件で、観ているこちらとしては決定的に幻滅してしまい、最後まで挽回する事が出来なかったんですよね。 序盤で妻と息子の死が連想される展開だったのに「結局二人とも生きていました」というオチが付くのは、恐らく「誘拐によって子供が死んだのに、自分の息子は生きている」という主人公の罪悪感を描く為、そして終盤に息子が誘拐されてしまう展開に繋げる為なのでしょうが、その辺りがどうもスムーズに感じられない作りなのも残念。 これに関しては、いくら終盤に盛り上げる為の伏線とはいえ、序盤で(えっ、結局生きていたの?)と拍子抜けしてしまうデメリットの方が大きかったように思えました。 犯人の捕まるキッカケが「偶然手紙を落としてしまった」「服の色に関する勘違い」というのも、ちょっとネタとしては弱いかなと。 ラストに主人公が目を見開いて終わる演出に関しても 1:真犯人が別に存在する事に気付いた。まだ事件は終わっていない。 2:結局、罪滅ぼしする事は叶わなかった為、未だに昔の誘拐事件のトラウマに囚われている。 3:全てが終わった事に安堵したがゆえの死。 といった具合に、色々解釈の余地があるのですが、どれだったとしてもバッドエンド色が強く、好みとは言い難いですね。 翻って、良かった点はと言えば……やはり、主演の豊川悦司の魅力に尽きるのではないでしょうか。 その話し振り、立ち居振る舞いには流石の存在感があったし、カリスマ的な犯人役なんかも似合いそうな、ミステリアスな魅力を備え持っている。 それだけに、そんな彼があえて刑事役を演じるというのが、絶妙な配役であったように思えます。 過去の罪を清算する為とはいえ、自分を刺した誘拐犯を庇って逃がそうとする辺りなんかは(警官として、それはマズいんじゃない?)と感じ、賛同するのは難しかったのですが、彼が演じる事により、その選択にもそれなりの説得力が生まれていた気がするんですよね。 本作のクライマックスである「震えて眠れ」のシーンの迫力と恰好良さも、豊川悦司だからこそ醸し出せたんじゃないかな、と感じました。 [DVD(邦画)] 5点(2017-04-06 12:33:05)(良:1票) |
38. 罰ゲーム
《ネタバレ》 作中で行われる「サイモンセッズ」というゲームに対し、全く馴染みが無かった事もあってか、今一つ楽しみ切れなかったように思います。 「ジョージ・マクフライ」ことクリスピン・グローバーが殺人鬼を演じている為か、襲われる若者達よりも、彼の方が主人公と呼べそうな作品なのですよね。 だから「殺人鬼がヒロインを監禁して、双子を産ませるオチ」に関しても、彼の目線からすればハッピーエンドという可能性もあるのですが……やっぱり後味は悪くて、満足度は低め。 「双子は両方とも生きている」と匂わせる描写が幾つかあり、その答え合わせがスタッフロール後に行われる遊び心なんかは、決して嫌いではないのですけどね。 ただ、それも「生きてたのかよ!」とツッコませてくれる一方で、結局はサイモンも殺人やら監禁やらの片棒を担いでいるなら「善と悪の双子」という対比も崩れる訳だし、何だか中途半端な印象に繋がってしまった気がします。 自分としては、ヒーローになるかと思われたザックが無残に殺されてしまった辺りも残念でした。 良かった点としては、やはりツルハシを使った豪快な殺し方が挙げられるでしょうね。 不謹慎な話ですが、こういう映画では殺害シーンに一種の「気持ち良さ」「爽快さ」を求められるものでしょうし、その点に関しては平均ラインをクリアしていそう。 森の中に無数のツルハシが飛び交い、何とかそれを回避するアクション場面なんかは、視覚的にも楽しかったです。 上述のザックの死体の中に隠れ、そこから飛び出して殺人鬼に鉈で襲い掛かるヒロインの姿なんかも、迫力があったかと。 「悪魔のいけにえ」の晩餐風景などもオマージュされており、スラッシャー映画として押さえるべき点は押さえてある為、妙に憎めない映画でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2017-02-13 21:18:11) |
39. 八月の狂詩曲
《ネタバレ》 所謂「夏休み物」に分類されそうな一品。 とはいえ、劇中にて「原爆」の影響が色濃過ぎる為、素直に楽しむ事が難しい作りとなっていますね。 序盤にて子供達が、被爆地となった学校を見学したり、滝壺で弁当を食べたりしている辺りは、まだ遠足的な雰囲気を味わえたのですが、リチャード・ギア演じるクラークさんが登場して以降は、完全に反戦、反核映画といった感じ。 「アメリカは被爆地に慰霊碑を送っていない」という指摘だけで済ませず、日系とはいえアメリカ人であるクラークに「すいませんでした」と謝罪させるシーンまであるのだから、日本人としては、何だか居心地の悪さを覚えます。 後者の台詞に関しては「オジサンの事、知らなくて……」という前置きがあるのですが、その後に「私達、悪かった」という言葉まで続く為、どうしても「原爆を投下した事をアメリカ人に謝罪させている」というニュアンスを感じてしまうのですよね。 こういった内容の映画も必要だと思うし、学校の教材映画としても有効活用出来そうではあるのですが、純粋に娯楽作品として考えた場合「面白い」と思えるシーンが少なくて、何だか物足りないものがありました。 終盤、お婆ちゃんが錯乱してしまう展開に関しても「雷をピカ(=原爆)と勘違いして、子供達を守ろうとする姿」には心揺さぶられるものがありましたが、その後に関しては、唯々唖然。 「お婆ちゃんの頭の時計は、逆に回ってんだよ」「多分、あの日の事ば思い出して……いや、あの日の気になって」という説明的な台詞の数々にも (えっ、何で孫だけじゃなく近所の人まで、そんなに正確に分析出来るの?) という違和感が生じてしまい、どうも納得出来ない。 童謡「野ばら」を流す演出に関しても、ちょっとシュール過ぎたと思いますし、そのままブツ切りのように終わる形だったのも、好みとは違っていて、残念でした。 そんな中で「河童」が窓から顔を覗かせるシーンは「いや、それどうやって扮装したんだよ!」と観客にツッコませてくれるの込みで、楽しかったですね。 この映画には、こういった「親戚の子供達が、お婆ちゃんの家に集まってワイワイ騒ぎながら素敵な夏休みを過ごしている」という空気が、確かに存在しており、そこは大いに評価したいところ。 また、家に泊まる事になったクラークさんが「片言の日本語」で、それを歓迎する子供達が「片言の英語」でと、それぞれ異なる言語で会話する場面なんかも、とても良かったと思います。 黒澤監督としては、反核というメッセージ性の強い作品を撮りたかったのかも知れませんが、自分としては、そんなメッセージとは関係ない部分の方が楽しめたという…… 何だか擦れ違いを感じてしまう映画でありました。 [DVD(邦画)] 5点(2016-09-26 21:54:42) |
40. ハッピー・フライト(2003)
《ネタバレ》 答案の摩り替えが「ハートマーク」によって判明するシーンに吃驚。 (いやいや、そんな訳ない。これは彼女に濡れ衣を着せる為に第三者が行った事だろう? だって、摩り替えた答案にわざわざ特徴的なハートマークなんて書いてある訳ないじゃん!) と思っていたら、本当に彼女が犯人というオチだったのだから恐れ入ります。 突発的な思い付きによる犯行だったとしても、これだけ両者の筆跡に明確な違いがあるならば、普通は「摩り替えよう」なんて思わないだろうと、盛大にツッコんでしまいましたね。 一応は主人公の親友という立場であったのだし、別れのシーンでは謝罪と反省の言葉を述べさせて、それなりに綺麗にまとめてみせるか……という予想も裏切られ、互いに口汚く罵りながらのキャットファイトに発展した時には、もう唯々呆然。 ここのシーンって、作中では善玉として扱われている主人公も、親友の窃盗癖を黙認していた時点で同罪じゃないかという気がするし、何だか喧嘩している二人とも「嫌な女」に思えてしまって、観ているのが辛かったです。 主演のグウィネス・パルトロウは好きな女優さんだし、映画全体としては演出のテンポも良く、音楽の使い方も的確で、退屈する事無く観賞出来ただけに、脚本が肌に合わなかった事が、残念で仕方ない。 それでも、最後はハッピーエンドで〆てくれましたし、スタッフロールと共に流れるNG集では、上述の女優さん二人が仲良く喧嘩の演技をしている姿にホッとさせられたしで、不思議と後味は爽やか。 大きな欠点があるかも知れないけれど、小さな愛嬌を幾つも感じられて、どうにも憎めない映画でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2016-09-08 15:13:02) |