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しったか偽善者さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 75
性別 男性
自己紹介 かなりゆっくりですが、気まぐれにぼちぼちレビューしていきます。文章がヘタクソで背伸びして書いてますが大目に見てください。ストレス発散のため感情の捌け口として、ささやかな自己満足でレビューしておりますが、結果的に皆様を楽しませ、映画鑑賞のお役に立てれば幸いです。安っぽい正義感をふりかざしたような偽善的自己陶酔レビューが多いです。
「すべての作品を尊敬する謙虚な姿勢を失うことなく」、楽しみながら、かなり感情的なレビューをしております。クソ映画の弾劾は覚悟と労力を要し、めんどくさいので、あまりする気がありません(すべきなんでしょうけど)。基本的にお薦め作品の賞賛です。

大島渚「悦楽」、オリヴェイラ「神曲」、若松孝二「処女ゲバゲバ」など自分が新規登録要望した作品をレビューしてません。申し訳ありません。内容あるレビューをしたいと思ってたら腰が引けて時間がたってしまいました。とりあえず形だけでもこれからレビューしていきます。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  シークレット・サンシャイン 《ネタバレ》 
自ら神に赦されたとする犯人の言葉は傲慢な神への冒涜。その言葉を聞いた主人公の神への逆恨みもお門違い。主人公は自分が最初に犯人を赦して優越感をもって犯人を見下すことにより癒しを得ようとしており、それは神の立場に立とうとする行為。こう考えればキリスト教自体が悪いわけでは全くないでしょう。この映画は宗教批判だとは言い切れません。最終的にはむしろ密かに宗教の中に希望を見出している作品かもしれません。しかし、単に不幸に陥った者の絶望と狂気や世の不条理を描いただけとも言えず、やはり一見罰当たり(?)でキワどい作品でしょうから、キリスト教徒が多い韓国でこれ作った監督の勇気は相当なものだと思います。それにしても、かなり精神的にキツい映画です。本作の「信仰」とか「赦し」とかいったものの本質に真剣に直接迫ろうとする迫力、その切実さは村上春樹「1Q84」など比べ物になりません。近頃では新興宗教なんかの勧誘をしつこくしてくる隣人を想像して他人事とは思えない人も多いんじゃないでしょうか?。狂気と紙一重の妄信の恐ろしさを身に染みて知っている人はこの映画をかなり切実に感じるのではないでしょうか?。静謐でゆったりした画面にただごとではない緊張感が漲っています。チョン・ドヨンの演技の迫力は尋常じゃありません。ストーカー的なソン・ガンホですら、これが普通だよといった感じで笑いになっており、彼の可笑しさや俗っぽい平凡さがちょっとした救いになっています。ラスト、ほんの少しだけ地面に降り注ぐ密かな陽光。私はどうしてもその光の存在自体を、そしてそこに表現された救いと希望を感じ取ろうとしてしまいます。「ベルイマンと比較すなボケッ!」と怒る映画通も多いでしょうけど、この映画はたぶん敬意をもってベルイマンを意識しています。そしてアジア映画である本作は信仰の表現にベルイマンにはない非西洋特有のリアリティがあり、日本人にもそこが切実に感じられると思うのです。結構お気に入りの場面は広場の集会で主人公が音楽を取り替えるところ。あのわけのわからん一見陳腐で可笑しなカオスには不思議な昂揚感があります。「オアシス」からさらにスケールアップしたこの監督、そこらへんの日本の監督とはちょっとレベル違うのでは?。日本の映画人は危機感持ってもいいんじゃないですか?。 
[DVD(字幕)] 10点(2010-07-05 01:17:18)(良:1票)
2.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
この映画には真に尊敬できる人生の先輩が命がけで何かを後輩に伝え残そうとする姿が描かれている。本作のウォルトとタオの関係は、もはや生ける伝説であるスターが、ひよっ子のような新人俳優に本気で何かを伝えているスクリーンの外の姿と重なって見える。それだけでも感動的だ。差別用語連発の偏屈な主人公だが、この映画を観て、彼が「理屈抜きに」尊敬すべき素晴らしい人間だということに異論を唱える人はいないはずだ。ハリー・キャラハン刑事が「理屈抜きに」強烈に強く正しくカッコイイのと同じように。人権大好きでサヨ的心情の持ち主である軟弱な自分にとっては、イーストウッドは偽善に対して鋭い何かを突きつけてくる巨大すぎる憧れの強者だ。ラストの主人公の行動は、微塵も暴力反対的なものなどではない。理屈じゃないのだ。あれほど崇高な自己犠牲であると同時にあれほど完璧な復讐でもある行為なんてあり得るだろうか?。イーストウッドは評論家などにやたら好かれているように思えるし、彼をけなす文章など自分は読んだことないが、それも仕方ない。理屈じゃ太刀打ちできないんだから(と理屈をこねている自分・・・)。自分は「ミスティック・リバー」がこれまで最高かな?(まだ観てない彼の作品多いんですけど・・・)と勝手に思っていたが本作の方が上だと思う。圧倒的に感情を揺さぶられボロ泣きだったのだから。/・・・・などと、興奮したままの勢いで、みなさんの高得点にも便乗して恥ずかしい賞賛をしてしまいましたが・・・最近映画館で泣いてばっかり。気に入った映画はパンフ買うんですけど最近買ってばっかり。どうしたんだろう?・・・・。残念だったのは休日で結構客多かったのにほとんど年輩の方(みんな泣いてた)ばかりだったこと。中高生こそこの映画を観るべきです。自分がタオくらいの年齢のときにこれを観てたら、たぶん今より少しは良い方に人生変わってたと思います。
[映画館(字幕)] 10点(2009-05-02 01:01:43)(良:2票)
3.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
・・・意外に点数低いなぁ。私は世間の絶賛とアカデミー8部門受賞という本作の権威を笠に着て、大激賞のイヤらしいレビューをしますけど・・・みなさん泣きませんでしたか?。私はボロ泣きでしたよ。単純だからでしょうか?。/途中主人公が示唆するように、あの4択のクイズ番組って出題範囲などなく問題内容に出題者の恣意が許されてるので、解るわけない問題出すことなど簡単なわけで(極端なこと言えばみのもんたのプライベートな事柄出せばいい)、欺瞞に満ちたものです。最終的には出題者も左右できない「運」に結果が左右されるいいかげんなものです。安全な高みからうろたえる無知で貧乏な金目当ての解答者を小バカにする醜悪なものです。でも、それってこの世界そのものみたいじゃないですか!。だからこそ、少なからず冷酷な現実に拒絶され続ける我々はインドの視聴者たちと同様、身勝手に主人公を応援し、豊かなくせに彼に自らを重ね、世界を変えたいと願うのです。ムンバイのビル群を見下ろしながら今「世界の中心」にいるという兄のセリフは自己肥大の傲慢さから出たのかもしれませんが、あのシーンには妙な説得力とスケール感がありました。この映画には世界の核心、世界の全てが描かれているという錯覚(そんなわけないけど)を抱きました。本作は最高のエンタメであると同時に突き抜けた崇高さがあると私は勝手に思ってます。/前半のスラムの場面に顕著な全編に渡る疾走感と溢れる生命力は絶妙の音楽とポップな映像に支えられています。もはや風格漂う王道の派手さ、悪趣味さ、カッコ良さじゃないでしょうか?。オペラでも恥ずかしいような純愛は、当初より示される「運命」的な(作られた)全体の構成からすれば当然のこと!。所詮戯れの作り事であることを忘れさせる壮絶な展開をファンタスティックに染め上げるラスト。その快感の余韻は極上!。鑑賞後、なんかこう生きる気力みたいなもんが湧いて元気が出ました。映画ってそれが最高で、それだけでもいいんじゃないですか?。自己満足でもいいです。なんか今後0点もつけられそうな映画ですけどね・・・。 
[映画館(字幕)] 10点(2009-04-24 20:53:47)(良:5票)
4.  ダンサー・イン・ザ・ダーク
暗すぎる。あざとい。ビョークが美人じゃない・・などなど様々な不満の声(私の知人の意見。ミュージカル嫌いという人多数)。そのとおりでしょう。内容的に賛否別れ、おそらく否が多い作品かもしれません。カンヌでパルムドールを獲り、褒めないといけないという圧力に逆に反発したくなるような作品でもあります。しかし、万人受けの娯楽作でない重苦しい内容で、この驚くほどのレビュー数は無視できないのではないでしょうか?。あんなに実験的で挑発的で悪趣味で悪意に満ちた変態的作品なのに・・・。まぎれもなく既に映画の歴史に残ってしまっている作品じゃないでしょうか?。我らの時代の傑作の一つであり、リアルタイムで観たことを将来誇れる映画じゃないかとさえ私は思ってます(おおげさ?)。「正しい」映画の観方じゃないかもしれませんが、本作に関しては、ドグマ95がどうの、撮影がどうの、アメリカがどうのといったことは鑑賞後何年も経った今でさえ私にとってはどうでもいいことです。映画館、ただ真っ黒の画面、静寂の中に闇の底から流れてくる旋律、妙に不安な幕開け。その後の体験は唯一無二の激しくも神秘的と言っていいようなものでした。別の世界から響いてくる叫びのようなビョークの歌声。めくるめく鮮烈な脳内妄想ミュージカルシーンの開放的でありながら危うげな現実逃避。時を忘れました。映画館であんなにとめどなく涙が流れたことはありませんでした。どれだけ現実世界に拒絶されようが、あえて生きていく意味が人生にはある。そう感じました。この映画は強烈に人の心をかき乱すからこそ嫌われるんだと思います。勝手な思い込みの勘違いな自己陶酔と言われても全然かまいません。私はこの映画を陳腐だと評価することはとてもできません。
[映画館(字幕)] 10点(2003-11-29 19:38:26)(良:1票)
5.  ムーラン・ルージュ(2001) 《ネタバレ》 
私はあんまり見てないけどミュージカル超OKです(ちなみにオペラはかなり好き。俗物だな・・)。ビートルズ、マリリン・モンロー、エルトン・ジョン、愛と青春の旅立ち、オッフェンバックのオペレッタ・・・などなど(全体としてヴェルディの椿姫を本歌取りしてますよね、これ。娼婦に札ビラ投げつけてるし・・)いろんなところからいろんな要素を借りまくり、ゴチャゴチャに混ぜて、美しく華麗に派手に悪趣味に仕上げた監督の手腕、その映像に脱帽。悪趣味な自分にピッタリの映画です。「シカゴ」同様、昔のミュージカル映画の名作よりも今を生きる我々にはこの映画の音楽の方がカラダで感じることができると思います。個人的には「シカゴ」よりもこっちの方が好きです。Come what mayは名曲だと思います。二コール・キッドマンの歌が巧いと思えないけど、美貌と演技で十分カバーしてます。こんなに楽しめた映画はあんまりないです。ストーリーにあんまり期待しちゃあミュージカルやオペラは敬遠せざるを得ないものが多いので、そのへんは薄目を開けて(?)見ないと楽しむためには損だと思います。
10点(2003-11-27 22:09:45)(良:1票)
6.  それでもボクはやってない
日本の刑事司法制度には代用監獄(最近では代用刑事施設って言うそうですが)というのがあり、自白の強要などが行われ易く、取調べの可視化が必要だと外国からも注文つけられています。それから判検交流といって、裁判所と検察には人事交流があり、そのことに多くの批判があります。また、裁判官の数が少なすぎて裁判官一人が抱える負担が大きすぎるということが問題とされています(映画の中で判事が居眠りしてましたが、私も実際に傍聴で何度もあんな光景見たことあります。)。そして、起訴された場合無罪になるのは奇跡的であり、ほとんど検察が被疑者を裁いているに等しいという現状があります。かように日本は司法制度全般に他の先進国と比べ特異な歪みがあります。そうした状況が何十年も変わらず続いているわけです。・・・・以上のようなことを大学で法学を勉強すると教わります。たぶん世の中の学生は皆こうしたことを知り、腹を立てると思うのです。しかし、俺がこんなことに腹立てても仕方ないし、俺なんかには何もできるわけないし・・・と思ってそこで終わりです。みんなおかしいと思ってるのになぜか何も変わりません。本作はその挫折して行き場のない青臭い憤りをそのまま映画にしたような作品です。その憤りをみんなに共有してもらおうとした作品です。そうすることにより本気でクソ真面目に諦めの先に突き抜けようとした努力と熱意の表れです。昔のサヨの学生運動の気取った勘違いの「正義」ではなく、漱石の唱える素朴な「道理」の実現を目指しているような愚直な映画です。映像や技術にいちゃもんつけるのは野暮に思えるような真っ直ぐな映画です(それがイヤな人も多いんでしょうけど・・・)。これには偽善者の私は心から拍手とエールを送らざるを得ません。この直球はど真ん中ストライクです。まあ、私の場合は自己満足の正義感に酔っているのかもしれませんけど・・・・。
[映画館(邦画)] 9点(2009-04-07 00:45:08)(良:1票)
7.  嫌われ松子の一生
監督が中谷美紀を下手クソと罵倒してたそうですが、この監督そんなに偉かったの?と思ったのは私だけでしょうか?。「下妻物語」で少し売れたけど、世間的には彼女の方が知名度あるだろうし、CM作ってるようなギョーカイ人が自分はゲージツもできますと映画作ってるようでヤな感じです。しかし・・・これは面白いです。不覚にもここ最近では一番涙出ました。私はある程度以上涙こぼれたら、人を泣かせることだけでも凄いと思うので基本的に低い評価しません。こんなもんで泣くのかと軽蔑されても全然かまいません。たしかに一瞬のインパクトが全てのCMの連続のようだし、語り手の重複やストーリーの不満など違和感を感じることも多かったですけど、思いっきり自分の土俵で相撲をノビノビと取っているようで好印象です。ミュージカルシーンはミュージッククリップみたいでケバケバしく稚拙で悪趣味かもしれないけど、それが魅力的じゃないですか。「ムーラン・ルージュ」的悪趣味さですね。とくに刑務所でのシーンが昂揚感あって好きです。丁寧な作りこみと観客に刺激を与えることに対する熱意をこそ評価すべきと思います。おそらく本作はオヅやミゾグチやヤマナカやナルセなどといった偉大な先人の映画の延長線上にはないかもしれません。いや、映画じゃないって言う人も多いんでしょう。でも、私にとっちゃそんなのどうでもいいことです(そんなこと言えるほど「映画」とは?なんて判っちゃいないので)。最後に内容について少し。人殺してる主人公を簡単には肯定できませんが、結果的に彼女の存在により救われた人(龍やめぐみ)がいるわけで、それを外から眺めて知ってる観客の我々から見れば彼女の人生に価値がないなんて全然思えないし、波乱万丈の人生を過ごせたことだけでも十分彼女は幸せじゃないでしょうか?。若くして職を失ったとか、人殺して刑務所に入ったとかで「人生終わった」と言いますが、実際は本人全然そんなこと考えちゃいません。勝ち組や負け組みなどという言葉が流行る現在において彼女の強さは羨ましいです。私は松子の一生が嫌いどころか愛おしいです。キャプラの某作品より本作の方が素晴らしき哉人生って私は思えますね。褒めすぎかな?。
[映画館(字幕)] 9点(2006-07-10 22:51:08)(良:2票)
8.  砂と霧の家
911以後やたらアメリカの病理を描く映画が多いです。本作もその範疇に入るでしょう。自分がちょっと前に映画館で観たヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」、ワインの世界をを描いた「モンドヴィーノ」なんかでもそうです。なにも「華氏911」とかいうあからさまなのじゃなくてもそんなのが多いです。創作をする人々は時代の空気を表現したいものだそうです。それは単に英雄気取りでアメリカを悪者にしているわけでもないし、サヨってわけでもないでしょう。アメリカ人監督なら相当な危機感をもって自己反省しているのだし、他国の監督ならアメリカに将来の自国の姿を見ているのです。そりゃ自己満足はあるでしょうけどね。私のレビューよりはないでしょうが・・・。国家のあり方や時代の空気なんて我々個人に関係ねえよ、いや、あんまり関係あって欲しくねえ・・・と思っている私ですが、そういうものが実際に個人をどうしようもなく不幸に陥れることもあるし、人々の精神に影響を与えているのは間違いないでしょう。こういう政治的な観方は本来嫌いなんですけど、近年の一連の同じ系譜の映画の連続がそんな観方を強要しているかのようですし、そういう観方をすれば本作も結構すんなり納得いくところが多いです。ヘタレ警察官はあまりに見事なアメリカぶり?でちょっとやりすぎかもしれませんが・・・。でも、本作はそういうことがメインの作品では全然ないと思いますけどね。人それぞれの不幸の度合いは比較不能で、誰が特に悪いわけでもなかったり、みんなが悪かったりで解決不能な問題が世の中にはあります。比較不能な価値の対立があります。本作はそんな表現し難い泥沼の世界のあり様を傍から見ればどうでもいい醜い小さな争いに凝縮し、悲劇的に美しく描いています。私ごときには言葉で本作の感動をうまく表現できないのが残念です。自分の文章力と脳ミソではこの作品の不思議な感動と憂鬱を表現できないのです。そこで上っ面をなぞったレビューもありかな・・・とアメリカ嫌い的な文章になっちゃいました。ごめんなさい。こういう観るからに出来の良さげなのは好きです。映像についてはカメラワークとか知りませんけどキレイでしょ?。玄人受けしそうで高尚だからって私は嫌うことはありません。鼻についてもそれはそれで讃えてやればいいじゃないですか。監督の次作期待してます。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-17 23:20:04)(良:1票)
9.  父、帰る
いや、ほんとこれいいんじゃないでしょうか・・・。父をソ連に見たてる政治的解釈やキリストに見たてる宗教的解釈をしたり、「イワン」=イワン・カラマーゾフと論じたり、水のイメージなどからタルコフスキーの影響を論じたり・・と、学者や評論家や映画通はすでに様々な視点からこの映画を語り尽くしていることでしょう。本作はそういうことが可能な豊かな表現の作品である反面、少々「あざとい」とか否定的な意味で「高尚」だとか正直私は思います。それはそれで魅力であると知ったかで勘違い野郎の私なんかは感じるのですが・・。しかし、本作はそうした隠喩にまみれた高尚な作品であっても、ストーリーは意外とシンプル(寓話化された単純さ)で結構強烈に心を揺り動かされます。シニカルでぺダンチックな評論家的視点などやっぱりどうでもいいと思える非常に真摯な作品です。自己満足かもしれませんが鑑賞後の余韻がたまりませんでした。どういう余韻かはうまく説明できないのですがボ~ッとなってしまいました(どういう余韻が残るか?というのが私の映画評価で大きな比重を占める基準です)。静かでゆったりしていますが決して退屈ではありません。ハリウッドのけたたましさに慣れきっていてもそれほど不満を感じないでしょう。あえて謎だらけのまま放り出すやり方が成功しているかどうかというのがやはり大問題だと思いますが私個人はこの映画に関してはあれで良いと思います。ソ連やキリストや父親などというのは得体が知れない謎だらけの存在だというのを表現しているのではないでしょうか?。すっきりしないのがこの作品の魅力的な味だと思います。映画館で観てからかなり時間経っちゃったけど、気まぐれに今になって思い出しながらレビューしました。でも、あのなんともいえない薄暗い美しくわびしい映像は大きなスクリーンで観て良かったなぁ・・と自己満足してます。
9点(2005-03-12 22:22:04)(良:3票)
10.  誰も知らない(2004)
実在の事件の「真実」が我々にとって意味するものとはなんでしょうか?。裁判の判決理由の事実認定さえも一義的には「真実」を明らかにしません。また、事件に利害関係のない私など大多数の人間は恣意的に、いいかげんに、無責任に事件を解釈評価します。つまり、乱暴を承知で言えば、こういう新聞に載った事件なんてのは「真実」など人の数だけあり、なおかつ所詮他人事なのです。誰もがあの兄弟たちのアパートの他の住人と同じです。この映画のヒューマニズムも傍観者は加害者というような説教的な意味では所詮無責任だと思うのです。極端な例えですが、我々があの子供たちを見る目とアフリカの餓死する子供たちを見る目はどう違うのでしょう?。本作には当事者を傷つけるという問題もあります。人物を美化したこの映画でさえも実在の当事者に対する私刑のような面を持つことは否定できないでしょう。罪を犯せば法や社会の公正なルールに則って罰せられるべきなのは当然ですが、あの母親も我々他人の無責任な正義感や義憤によって被害を受ける理由はないでしょう。この映画だって無責任な傍観者なのです。しかし、にもかかわらずこの映画のヒューマニズムにはワイドショー的義憤とは全く違う特別な何か、心に訴えかけるものを感じます。私は映画に引き込まれ、痛みを感じ、感動する他ありませんでした。本作は事件の裏に優しく居心地の良い美しい世界を見出しました。限りなく無条件に互いが信頼し愛し合う共同体はまるで一個の人格のように外部がズカズカ入り込むことで傷つき、外部を自ら拒絶します。あまりに危うく脆く痛々しいユートピア。見たことのない美しく同時に醜い不自然に閉塞した世界。無慈悲な仕打ちによって突き落とされたひどい生活の中にしかこんな世界は現れないという皮肉な逆説でしょうか?。事件について私はほとんど知りませんし、私のこの文章も無知のまま匿名で書く全く無責任なものです。私は他人事として、映画として、あの不思議な世界に感動するのみです。
9点(2004-12-15 00:02:40)(良:3票)
11.  ドッグヴィル 《ネタバレ》 
この映画の鑑賞は人間や世界の「観察」といった趣があります。そう考えると箱庭的なけったいなセットも違和感ありません。壁がないのは、これはまともな家など必要ない動物実験(人間=犬)みたいなもの、ということでしょうか?。エゴや打算や悪意や偽善にまみれた人間の生々しい姿が現実よりも浮き彫りにされるのが「観察」できます。小説のネタのために人間観察の「実例」として主人公の女性を扱うあのヘタレ男は監督自身の戯画化ではないでしょうか?。監督はたしかに悪趣味で女優イジメのサディストかもしれませんが、私はこの人メチャクチャ真摯という印象が強いですね。写実的で外見リアルなくせに世界が狭い映画が多い中、なんと豊かな象徴的フィクション表現、なんという世界の広がりでしょう。観察」の結果の解釈は観察者によって大きく異なるでしょう。ラストの言葉のように、「ここには答えはない」のです。まあ、以上のようなことは後から考えたことで、とにかく映画が感覚的に面白かったんです。好みなんです。動くカメラの画面酔いも、暗く鬱陶しい展開を見る苦痛も、高尚ぶったセリフや雰囲気も、私(ナルシー)にとっては全てが快感です。エグい。痛い。ど~せわかったつもりの自己陶酔でしょうけど。ラストの「傲慢」な復讐に溜飲が下がるように持っていくやり方はやはり悪趣味とは思いますが、悪魔的快感に凄げぇ・・と震えました。アメリカという国や死刑制度抜きには語れない映画(意図的なのかやっぱり「ダンサー・イン・ザ・ダーク」との共通点多いなぁ・・。)かもしれませんが、あまり語る能力がないので無理するのはやめときます。
[映画館(字幕)] 9点(2004-09-10 23:30:45)
12.  華氏911
このえげつない映画がプロパガンダなのも、独善的なのも、露骨な個人攻撃なのも、一目瞭然だ。しかし、それがいったい何だというのだろう?。ドキュメンタリー映画だからといって冷静に多角的に物事の深層部分を抉り出さないと価値が低いと決めつける必要はないと思う。無批判にメッセージを受容するメディア・リテラシー無縁の観客(それは私かもしれないけど・・)が出るにしてもそれは監督の罪じゃない。これは金払って好きで観に行く商業映画であり強制的洗脳じゃないんだから。たしかに本作の思い込み激しい憎しみにも似た怒りの発露は胡散臭く危うい。ブッシュ個人に対する徹底的非難は品性下劣にも見える。その怒りのエネルギーの出所は愛国心だ。アメリカを正義の国にしたいという願望と、そのために自分が何かしなければという使命感が作品に満ちている。愛国心(悪党の最後の逃げ場所)という奴は、特にアメリカ人のは厄介だ。しかし、結局私にとって重要なのは、私が(実際世界中のたくさんの人も)映画を観る前から、戦争は悪い、イラク戦争は間違ってる、ブッシュ嫌い、と単純に思っているということだ。こういうプロパガンダなら私はOKだ。ブッシュ万歳映画だったら私は細かいことまで持ち出してクソみたいにけなすだろう。それだけのことだ。監督はとにかく真剣だ。溢れる熱意が伝わってくる。その表面的でない熱意こそ、この映画のパワーであり、魅力だ。底が浅いくせにメタな視点からモノを見たがる知ったかの私だが、胸が熱くなった。愛国者法の人権抑圧はいつか他人事ではなくなる気がするが、そうなったときムーアのような熱い人間を公平でないなどと非難するのが賢明か想像してほしい。バランスに欠ける監督かもしれないが、彼は壊れたバランスを過激に取り戻しているのだ。華氏911が涼しいくらいの高温で本(自由な言論)どころか国土や生命が簡単に焼き払われる現実はSFを超えている。私が感動したのは権力にたてつくことに陶酔する無意味な偽善の自己満足かもしれないし、本作は深部から眼をそらさせ「敵を利する」映画かもしれない。でも、私はこの映画は好きだ。
9点(2004-09-10 22:51:54)(良:1票)
13.  シティ・オブ・ゴッド
殺戮の狂気をスタイリッシュに描く作品はいくらでもある。しかし、現在進行形でもある洒落にならない現実をこんなにカッコイイ映像にした作品は稀有なのではないか?。こんなの稚拙だ、ダサいよ、という映画通の人はカッコイイ作品を是非教えて欲しい。観たい。私はカメラワークなど技術的なことには疎いが、カッコイイと思った。こんなのは感覚的ななもので、人それぞれと思うので、玄人に私のセンスがどうのこうの言われても知ったこっちゃないが、深作欣二やタランティーノをカッコイイというような文脈からすれば最上級のカッコよさではないかと勝手に思っている。どこまでも深刻な現実を描いた作品をカッコイイというのは不謹慎かもしれない。でも、この作品を前にしては、生半可な道徳的な物言いは、偽善だよ、と笑いとばされかねない。このカッコよさは、偽善を蹴散らすのが目的の、もしかしたら最強に道徳的なアイロニーかもしれない。監督は、ポップコーン食いながらのほほ~んと平和に映画館に座っている日本やアメリカなどの観客を画面の向こう側から嘲笑っている。道徳って何?。善て何?。これを目にして何か人生に不満ある?・・・と。
9点(2004-02-04 20:52:16)
14.  マジェスティック(2001)
自分の中では、「マジェスティック」>「ショーシャンク」>>>「グリーンマイル」です。何十年も過ぎて近年の映画が古典と呼ばれる頃にもダラボン監督の三部作って呼ばれるこれらの作品はなんだかんだ言って生き残ってるのでは?と勝手に思ってます。もはや「ベタ」とも言える作品になってて、評論家や映画通の人はけなすにしろ褒めるにしろコメントしにくいでしょうね。まあ、技術的なことを言われても私にゃ関係ありませんが。この作品はたしかにアメリカ万歳的で荒唐無稽なおとぎ話でしょう。しかし、アメリカを創った合衆国憲法の理念や、差別や偏見を排してきた先人(アカ狩りに屈しなかった映画人)の努力を讃える 夢のあるおとぎ話です。私はアメリカ人ではないですがリベラル・デモクラシーの信者です。こういう人間はポストモダン云々を語る人や現実的な大人からすれば視野の狭いアホでしょうし、そんなのどうでもいいと思う人からすれば自分だけ正義の高みにおいて陳腐な優越感を持つカッコツケの偽善者でしょう。この映画を観て流した涙は自己満足の涙かもしれません。こういう人間にとっては「ショーシャンク」よりも、本作品の方が心に響くんです。娯楽性はあると思うし、そんなに退屈はしないと思うので未見の人には勧める映画です。
9点(2003-12-22 21:09:35)(良:1票)
15.  シェフと素顔と、おいしい時間
ジャン・レノとジュリエット・ビノシュのロマンチック・コメディ。これが見ずにおれましょうか。空港で出会った見ず知らずのシェフとエステシャンがいつの間にか一緒にホテルに・・そして・・というお話。メグ・ライアンやジュリア・ロバーツなどのロマンチック・コメディとはまた違った面白さ。おふらんすの香りがプンプン。ちょっぴりダークな雰囲気。「素顔は裸と同じ」とのたまうローズ(ローザ・ルクセンブルクだよ・・本名・・)のセリフはジュリエット・ビノシュのすっぴん開帳(ほんとにすっぴんかは謎)で大納得。ビノシュはいかに年をとっても好みの容姿なので大好き。ジャン・レノは「レオン」などよりこっちが本職なのかな?。ついニヤケてしまう楽しい映画でした。この映画も嫌いな人は嫌いでしょうけど、個人的には9点。
9点(2003-12-01 09:34:24)(良:1票)
16.  オアシス
「ペパーミント・キャンディー」のイ・チャンドン監督作品。主演ソル・ギョング、ヒロインのムン・ソリも「ペパーミント」と同じ。「ペパーミント」を見たときは、この監督は巧いし、心に突き刺さる映画も作れるだろうけど、お涙頂戴の面白いのを作るような監督じゃないな・・と思ってましたが、これは泣けました。泣ける上に、全編に漂う狂気につながるような危うい雰囲気がなんともいえない。身障者を演じるムン・ソリの演技が気に入らない人はたくさんいるでしょうけど、これは寓話的なラブストーリーだからあれでいいと思います。一番問題なのはレイプまがいの行為だと思いますが、あえて危ない表現に踏み込んだ監督は確信犯でしょう。許せない人がいても仕方ないと思います。こんなけなげでちっぽけな恋人たちを見せられちゃ哀しくてしょうがない。韓国特有のメロドラマとは一線を画してると思いますが、どんなメロドラマよりも甘く切ない。駅のホームでのミュージカル的シーンはこれぞ映画!といった最高の場面だと思います。主人公のダメダメぶりが自分に重なってつらかったです・・・・。僕が見た韓国映画の中では最も好きなものとなりました。ただ身障者が身近にいないので実際はどうなのかがわからない。他人事ではない人の現実的な見地からの批判がありそうな気がしますね。そういう方の気分を害するようでは高得点はまずいですけどね。どうなんでしょう?。怒涛のこきおろし悪評レビューが続くこと必至の作品。
9点(2003-11-27 11:25:21)
17.  鬼が来た! 《ネタバレ》 
凄い映画だと思いました。例の壮絶な殺戮シーンが凄いのはもちろん、日本軍兵士が「敦盛(だったかな?)」を舞う中国映画なんて・・。外国映画で日本の美とその狂気をあんなシーンで見せられるなんて・・。僕はあの舞の雰囲気が日本を戦争に突っ込ませた推進力のようなものだと思いますし、それを嫌悪しますが、それは確かに美しいのです。日本軍がひたすらインベーダーのように鬼、悪魔となっている「紅いコーリャン」で主演のチアン・ウェンがこういった作品を作っているのに感心しました。剣の達人のじいさんのとぼけたギャグも個人的にグッド。エンタメとしても十分な作品。えらく気にいってます。 。(追記、10点インフレ化調整のため減点)
9点(2003-11-27 01:14:46)
18.  蛇イチゴ
面白さにおいて最近の邦画でこのレベルってそんなにないんじゃないですか?。映画通からいろいろいちゃもんつけられそうですけど・・逆に褒められもしそう・・。日本のどんな家庭でも転落しそうな、すぐそこに覗くことができるような深淵をわかりやすく見せてくれました。この映画は日本人ならそう落ち着いては見られないと思いますよ。かなり幸せな人は別でしょうけど。つみきみほが昔から好きだし、監督が美人だし(映画の中身とは関係ないけど・・・)、個人的に話が他人事とは思えずグサッときたので10点。追記:自分の他のレビューの点数との兼ね合いからしてやっぱ9点。
9点(2003-11-26 23:58:02)
19.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦― 《ネタバレ》 
正直、この映画より「演義」に沿ってたNHK人形劇での赤壁の戦いの方が複雑で深くて演技も細かくて(人形なのに・・・)全然面白かったと思うんです。けれども、本作の紅蓮の炎に包まれる大船団の映像は、This is 赤壁といった感じで、子供の頃から頭の中で描いてきた光景を見事にビジュアル化してくれたように思えて感激です(1800年前あんなゴージャスな戦闘やってたとはとても思えないんですけど・・・)。/本作は無理矢理反戦の主張が入り、女性が活躍し、現代に引きつけた「ハリウッド的スーパーアクションラブロマンス」もどきの三国志といったところでしょうか?。したがって「義」や「侠」の世界にラブ&ピースが混じり、ややヘンテコな泣かせ方とオチになってるような気がします。でも、なぜか自分は結構ジ~ンとしちゃったり満足したんですよ。これ、映画的には脚本も演出も技術も通の人からけなされまくるダサい作品だろうし、三国志マニアからは叩かれるに違いないと思うんですけど、お祭りイベント的な性質もあると思うし、私はただ楽しみたいです。正史では赤壁の戦いは簡単な記述しかなく、伝承などを基に千数百年に渡り人々が想像の翼を広げ続け、その一つの到達点として明代の「三国志演義」の権謀術数渦巻く大決戦が存在します。つまり、三国志とは勝手にイメージを膨らませてみんなが集い楽しむ広場のようなものだと思います。思いっきり楽しめる場所を提供してくれただけで本作には感謝したいです。私はただ小学生の頃から好きなだけで、ゲームはしてないし全然マニアじゃないですけど(値の張る正史の邦訳を買うくらいのことはしてますけど)、やっぱ三国志っていいですね。なんでこんなにいつまでたっても面白いんだろ?。三国志の超豪華な映像化というだけで本作好きです。きっとこれを自己満足と言うのでしょうけど・・・。ところで、中村獅童が元海賊(倭寇を連想?)で特攻する役割なのは、やっぱり日本人俳優だからでしょうか?・・・。    
[映画館(邦画)] 8点(2009-04-11 21:55:04)
20.  花とアリス〈劇場版〉
なにやら「こっぱずかしい」感覚や「痛い」感覚があり、それが現実逃避の自己陶酔としても心地よいです。自分は全然ロリコンではないと思ってるんですけど・・・・この蒼井優はカワイイ。本作は、荒唐無稽なストーリーでいい年した大人がはまるのは恥ずかしいような世界を魅力的に構築し、不条理な現実の中から純粋で誠実で輝かしいものをつかみ出そうとする「こっぱずかしい」試みです。この監督じゃなければこんな試みはできないし、サマにならないでしょう。たぶんこの映画(監督)嫌いな人は軟弱で甘えた精神性みたいなのが感じられてイヤなんでしょう。でも、偽善だとしても優しいですよ。人を見る目が温かいですよ。すごく。俗世の我々にこんな優しい世界を見せるのは逆にかなり残酷とも思います。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-07 01:33:06)
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