261. ディファイアンス
《ネタバレ》 さしずめインテリが肉体労働しながら「戦う力は必要だ。だが、他にも考える事が・・・”共同体”」と主人公を諭すあたりから話が面白くなってくる。インテリと武闘派の板ばさみ。その他強者と弱者の扱い等々、共同体を維持していくためにリーダーとして只管苦悩し続ける。で、戦争映画の体裁を取った、政治というか共同体の話に転換していく。様々な苦渋の決断を下しながらも追い詰められていく主人公。次男の方もソ連軍に加担するものの、人はイデオロギーではなく感情で動く事を思い知らされる。そして終盤ギブアップ寸前になった主人公はもはや混乱状態で決断ができなくなる程の機能不全に陥る。この辺は映画にありがちな強力なリーダーや英雄ではない人間らしさがあってよいです。が、エンディングに向けて成長した3男の励ましやら、仲違いした次男の助けによって困難を切り抜けて終了。「奇跡は起きない、起こすんだ!」とやっておきながら、結局奇跡的に助かってしまうのかよ!とツッコミを入れたくなります。制作上仕方ないのかもしれませんが、この辺はかなりご都合主義で、「やっぱ兄弟愛!」みたいになってしまって、これまでの緊張感を台無しにするくらいラストで脱力してしまうのですが、よく解釈すれば不完全ながらも弟たちから信頼され、愛され続けた兄だからこそ、救世主たりえたわけであり、これはこれでよいのではないのかとも思えてきます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-05-18 22:10:38) |
262. 幸せのちから
《ネタバレ》 数字に強いという事でトレーダーとして成功するのかと思ったら、営業なんですね。医療機器が売れない人に金融商品が売れるとは思えないのですが、ホンキ出したら医療機器も売れたようだし、要するにそれまでいかにいい加減に生きてきたかという事でしょう。結果、子供が迷惑していた。チマチマと値段が決まっている形あるもの売るよりも、金融商品売るほうが儲かるわけで、ただそれだけの話。それすら説明はなく、ひたすら苦労話が続くし、それって自業自得だろ?と。貧困には個人の怠惰と社会の責任の両面があるのですが、本作品は前者の要素が強いので、どうも共感できませんね。でも親の怠惰で子供が苦労する社会というのはなんとかしないとイケナイのだろうとは思います。そもそも結婚する・子供を持つ資格もない人が勢いや偶然でそうなってしまう事をなんとかしないといけないのでしょうけど。 [地上波(字幕)] 4点(2015-05-17 10:59:29) |
263. 嫌われ松子の一生
《ネタバレ》 『嫌われる勇気』という本が流行っている。松子は勇気をもって嫌われたわけではなく、結果的に嫌われた。それは何故か?幸不幸には主観と客観があって、客観的には不幸な話を当事者の松子はあまり不幸だと思っていない。逆に前向きに明るく生きていく(単に他人に依存しないと生きていけないだけなのかもしれないが)。その様をミュージカル風に楽しく描き、主観と客観のGAPを観客に問いたいのだろう。そもそも、本人が満足しているのに他人が不幸だ・哀れだなどというのは大きなお世話でしかない。 ただし、前向きな人生には学習能力が欠如しがちであり、結果失敗を繰り返す。本人が失敗と思っていなければそれでもよいのだが、松子は50前半で人生を終える事になる(普通は金属バット持って暴れてる中学生に注意などしない。まず警察を呼ぶ)。松子は自分の人生に満足したのか?悔いなく生きたのか?人を信じれば裏切られる。裏切らないのは神だけだ(教え子ヤクザは神を信じて生きながらえている)。それでも人を信じるのか?人を信じる事・信じない事の幸不幸。どちらを取るのか?羹に懲りて膾を吹いたり、石橋を叩いて壊すのもどうかとは思うが、ポジティブシンキングによる失敗・不幸にも注意したい。と示唆に富む作品ではあるのだが、テイスト的には好きになれないかな。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-05-14 15:57:57) |
264. メゾン・ド・ヒミコ
《ネタバレ》 老い・介護、親子の確執に性的マイノリティーという要素を加えた設定は面白いと思うが、最終的にはうまく料理しきれなかったような。が、現実問題簡単な話ではないし、関係性に変化はあるものの各々が壁を乗り越えて和解してるようなしてないような中途半端さがリアルであるとも言えるのだろうけど。最後はちょっと強引にキレイにまとめ過ぎたような気もするが、まずは世代や性別や趣味嗜好にとらわれず、人間と人間としてのコミュニケーションが大事という事なのかと。が、それが難しいから様々なコンフリクトが起こり、諸々の映画の題材になるわけで。それにしてもオダギリに引きずり込まれたあの中学生のその後が気になるが・・・。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-05-11 12:11:24) |
265. なくもんか
阿部サダヲは面白いんだけど、コントでしかないかな。 [ビデオ(邦画)] 5点(2015-05-10 14:17:33) |
266. 待合室 -Notebook of Life-
《ネタバレ》 「命のノート」というのは舞台となったIGRいわて銀河鉄道小繋駅に実際にあるらしい。ノートですよ。電話でもなく、ましてやネットでもない。この超アナログ的なのがいい。2006年製作だが、現代日本とは思えぬ風景。ケータイ電話は1回しか出てこない。ストーリーも殆どなく、ただ待合室に集まる人々とのノートの交流だけ。内容的にも「ザ・邦画」という感じでかなりウェットなんですが、東北の田舎町に生きる普通の人々が東京人から見るとある種のファンタジーにすら思えてくる。東京で傷ついて自殺した女性の話の後に東京に出たがる田舎育ちの少女が「傷ついてみたいんです。傷つかないと自分がどんな人間かわからないような気がして」の台詞を持ってくる展開には、「生きる(死ぬ)」とは何かを考えさせられる。 同一人物を親子で演じているので当然絡みはないのですが、この親子キャスティングはよかった。311の5年前の製作ですが、震災後に見ると家族を失った人々には重く響くものがあるのかなと。 [地上波(邦画)] 8点(2015-05-09 11:06:27) |
267. 母べえ
《ネタバレ》 実話がベースのようで、淡々と話が進んでいくので、テンポは悪くなかった。監督の内心には戦前日本への批判はもちろんあるだろうが、今から見れば大変な時代でも、その時代に生きた人々の日常や生き様のようなものが人間ドラマとして感じられ、批判色は結構抑え気味だったように思う。多少の皮肉はあったが、見ていて嫌味がなかったし。そりゃこの時代描けば展開は誰にでもわかるし、ストーリーはありきたりになるし、そんな事言ったら朝ドラなんて毎回1208と0815のラジオ放送やってるし、戦前戦後を生き抜くってのはそれだけ大変な事なんだろうし、だからドラマになるんだろうし、激動の時代をどう生きたか?というのを見たいわけで。実際には父べえは獄死せずに戦後も活躍したらしいので、原作者としてこのフィクション部分はどうだったのだろうなという疑問は残るが。吉永小百合のキャストにはそんなに違和感はなかったな。だって吉永小百合ってそういうもんだし、60歳って事は知ってるけど、言われなければわからない人もいるだろうし。三津五郎は10歳年下だから、全体のバランスとしては許容範囲ではないのかと。見てる中年がマヒしてるだけで、若い人には違和感あるのは仕方ないという気もするが。三津五郎が最近亡くなったので、その点でちょっとセンチな気分で見てしまったな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-05-09 10:59:25) |
268. ブロウ
ダメな人間を反面教師とするのはよいのだが、犯罪者の自伝を親子愛で中途半端に美化しちゃうとこうなってしまうよなあ。ジョニーデップの中年太りもちょっと無理があったし。 最近出所し、続編としての書籍も刊行されたようですが、犯罪を繰り返して人生の半分ぐらいを刑務所暮らしする事について、何か書かれているのでしょうか?老年になってからの人生観の方が気になりますが。 [CS・衛星(吹替)] 4点(2015-05-08 16:04:14) |
269. ジョンQ-最後の決断-
米国の保険制度にはあまり詳しくないのですが、金が無くて、がん等の高度医療が受けられないという例は日本でも多いと思います。それが心配だったら民間のがん保険とかにはいればいい。それに日本は健康保険料が高い。国民健康保険だと普通のサラリーマンレベルの年収で年間50万の負担です。サラリーマンは半額会社負担ですが、結局は給料からひかれているのと同じ。これならはっきり行って10割負担で治療受けた方が全然安いです。今後はもっと負担が増えていくでしょう。私はもう払うのをやめたい気持ちです。このまま病歴に関係の無い年収ベースの共産主義的な徴収制度をいつまで続ける気なのか?まあ健康な時は保険料は払いたくないし、病気の時は格安で治療を受けたいという人間のワガママと献金等で問題になった医師会の思惑とかが複雑に絡み合って今後の制度改革がなされていくんでしょう。(この映画では生体間移植で2000-3000万だったけど、普通は払えない。日本ではどうなってんだろう???誰か教えてください) [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-04-28 00:25:09) |
270. ナポレオン・ダイナマイト
関西人にオモシロクない人がいるように、米人にもオタクはいるわけで。という事をあらためて気づかせてくれるんだが、内容的には退屈で。 [CS・衛星(吹替)] 4点(2015-04-24 09:30:03) |
271. M:i:III
こういう中身のないアクション映画を見ると、時間を浪費したようにも思うが、時間の浪費こそが最高の贅沢とも言えるわけで。ただし、拷問シーンが多いのはちょっとキツイな。昨今のリアルな残忍事件を想起させるし。 [地上波(吹替)] 6点(2015-04-23 12:54:35) |
272. しあわせの隠れ場所
《ネタバレ》 単純ないい話かと思ったら、疑惑が浮上して(ここはスルーできなかったのだろう)、何か裏もありそうでそこそこ面白い作品に仕上がったなと感じ、どの程度脚色されているのか?と思い調べてみた。マイケル・オアーは元々有名な選手で、途中からテューイ夫妻に引き取られたそうだ。であるなら作中に出てくる疑惑もかなりグレーではある。そもそも出会いから引き取るまでの展開が唐突で違和感があったし、アメフトを一から覚えて、婦人が指導したなだというのは全くのデタラメで、原作はマイケル・オアー中心なのに、映画はテューイ夫妻中心に描かれているという点でもこの作品の製作自体に怪しさがつきまとう。美談にはそういういろんな表と裏がある事を思い知らせてくれたという点では、印象に残る作品ではある。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2015-04-20 10:13:34) |
273. もしも昨日が選べたら
《ネタバレ》 寿命を縮めている事に気がつかない主人公が時間をドンドン早送りしていく所はスリリングで見応えがあった。時間を早送りするって事は、まさに自殺行為なわけで、自分は全くしたいと思わないが、そういう風にできればと日常を過ごしている人もいるのかなと。 ブラックコメディー的な展開を最後まで貫いて欲しかったが、最終的には「家族が一番」みたいな説教クサイオチになってしまったのは残念。地位も名誉もカネもないが、家族が居て幸せ。なんて人生もファンタジー的なわけで、別バージョンで正反対の展開も製作して欲しいところ。 未来は予測できないが、刻々と時間が過ぎ去って、死に向かって歩んでいる事は間違いないし、日々の決断によって未来は形成されていく事も間違いはない。そういう当たり前の事にあらためて気づかされる。日本人をバカにしたシーンは米人の本音が垣間見える意味では貴重なシーン。 [地上波(吹替)] 7点(2015-04-18 10:17:59)(良:1票) |
274. 築城せよ!
一見バカげた設定・ストーリーのようにも思えるが、過疎化に悩む地方都市の問題や、封建主義と民主主義の対比、過去と現在の主従関係の違い等々、意味深で風刺も効いてる。カネをかければもっと面白い作品になったであろう。 [地上波(邦画)] 7点(2015-04-15 11:34:23) |
275. ブレードランナー/ファイナル・カット
《ネタバレ》 ロボットが感情を持つ系に初めて触れた作品。中学時代に劇場で見たときはわけがわからず、それ以降敬遠していたのだが、30年ぶりに再見。映像も暗いしテンポも悪くちょっと退屈なのは相変わらずではあったが、年を重ねると見方も変わる。通常ロボットに寿命はないハズなんだが、そのロボットが死の恐怖に怯えるというパラドクス。人間もいつかは死ぬ事は確実なのだが、普段はそれを意識しない。意識するのは大災害に遭遇するとか、大病するとか、70歳過ぎてからだろう。若い時には難しいが、中年ぐらいからは、人生は短い、人間いつかは死ぬ、それを常に意識しながら生きるべきなんだろう。「惜しいですな。彼女も。短い命とは。」の台詞が響く。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2015-04-13 23:09:47) |
276. シャーロット・グレイ
田舎町でこんなに美人でスタイルがよかったら目立ちすぎてスパイは勤まらないだろ!とツッコミたくなるが。いつの時代も権力によって人は翻弄される。保身から権力に擦り寄る者、権力と戦う者。中立的に生き延びようとする者。各々の心理描写もよく出来ていて、派手な戦闘シーンはないものの、戦争の恐ろしさや人間の醜さ等は十分に伝わってきた。吹き替えだったのでわからなかったが、オリジナルは英語なんですね。フランスで英語しゃべるのは違和感あって、それはちょっとシラケルかな。 [地上波(吹替)] 7点(2015-04-10 13:04:15) |
277. ラブファイト
ボクシングを軸として、若者と中年の恋愛を描いている点は興味深いし、各々の役者にも魅力はあるのだが、作品としてはどうも消化不良というか、盛り上りに欠けるというか。 誰が主役なのかわからなくなって焦点ボケしたというか。 古臭いという見方もわからないでもないが、こういうテイストはキライではない。でも若い人にはあんまりウケないのかも。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-04-10 11:07:58) |
278. 帰郷(2004)
《ネタバレ》 千葉の田舎漁港から東京に出た独身30男が何も変わらず純朴なまま帰郷する。で、離婚して子連れで戻ってきた女に騙される。30過ぎると人生もいろいろ分かれてきて、人生がうまくいかない自分を肯定できなかったり、変わらぬ同級生に嫉妬したり。 ちょっと安易に騙されてしまったような気もするし、後味もよくはないのだが、南房の風景が荒涼としててなんとも言えない雰囲気がある。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-09 12:34:55) |
279. アイランド(2005)
《ネタバレ》 アクション逃亡劇と割り切ればそれなりの面白さ。気になったのは記憶の刷り込み。そんな事したら感情が芽生えるに決まってる。臓器目当てなら家畜のように餌だけ与えて育てりゃいいのに。でもよく考えると、脳障害が起きた場合はクローンとの交換は不可能なんだな。記憶の違いによって肉体は同じでも別人になる。認知症や記憶喪失がそれに近いのだろうけど。そういう事をテーマにしたら面白かったのに。 [地上波(吹替)] 6点(2015-03-26 10:03:13) |
280. ガチ☆ボーイ
頭脳と肉体。繰り返し練習により体は覚えるのだろうか。障害を乗り越えるという悲壮感はなく、学生サークルの押し付けがましくない、仲間をユルく支える雰囲気が爽やかでよかった。全体的にちょっと古臭い感じが自分の学生時代を思いださせるのも何とも言えない趣がある。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-03-24 10:22:36) |