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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  スタング 《ネタバレ》 
やっぱB級はこうじゃなくっちゃねえ、何も考えさせない・突っ込ませない絶叫マシーン映画です。“なんで巨大蜂モンスターが出現したの?”という問いに“庭に散布する肥料にホルモンを混ぜたからかな”というアンサー、“この映画は50年代モンスター映画のリメイクか?”という疑問が湧くぐらいのいい加減な理屈、もうサイコーです。いわばこのモンスター蜂の産みの親であるボンクラ息子シドニー君、どうしても懐かしの宅八郎にしか見えず気色が悪いことこの上なし。B級モンスター映画と言えばこの人、ランス・ヘンリクセンご老体もしっかり顔を見せていますが、近年では珍しい暴れっぷりです(結局はお約束通りの途中退場でしたがね)。ケータリング屋のカップルのポール君、チャラい奴かと思いきや危機モードになると突然に頼れるファイターに変貌するのが面白い。でも満身創痍になって収容された救急車の中でヒロインとエッチし始めるのは、さすがチャラ男でした(笑)。ヒロイン娘のツンデレぶりも良かったです。モンスター蜂はもちろんCGですけど、造形や動きにはあまり安っぽさは感じませんでした。刺された獲物から成虫が飛び出してくるのは、寄生バチのモンスターというわけなんですね。 期待しないで観ていたからこれぐらい愉しませていただけたら、まあ満足です。屋敷内の攻防あたりの脚本にもたつきが無ければ、もっと加点してあげたのにね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-27 20:50:03)
42.  ハンターキラー 潜航せよ 《ネタバレ》 
ロシアで好戦的な国防大臣の陰謀でクーデターが発生、穏健な大統領を拘束してなんと米国と一戦を交えるつもり!四年前に製作された映画だけど、事実は映画よりも奇なり、まさか現実の大統領プーチンが核兵器使用をちらつかせながらウクライナに侵攻するとは誰も予想すらできなかった現実です、しかも予想外にロシア軍が弱いとはね。 いちおう元潜水艦の艦長が原作者の小説が元ネタですから、原潜の内部や潜水艦戦の進行などはリアルです。主役ともいえる原潜USSアーカンソーは最新型の攻撃型原潜ヴァージニア級ということになっていますが、実はこの艦は建造中で架空艦みたいな感じかな。道理で艦橋と船体が繋がる部分が実在のヴァージニア級とは微妙に違っているわけです。冒頭で撃沈されるUSSタンパベイはロサンジェルス級原潜ということになっているけど、すでに全艦就役中の同級にはタンパベイという艦はなく、そりゃあ実在の原潜だったら海軍に激怒されちゃいますよ。 前半はスリリングで「おっ、これはいけるかな」と期待するも、中盤以降はご都合主義だらけのメタメタな展開です。だいたいからして、国防相のクーデターの目的が「アメリカと戦争がしたい」としか思えないのがヘンでしょう。現実のプーチンだって、彼なりにいちおう損得を計算して戦争をおっぱじめているわけですからね。そして大統領を始めは殺そうとしなかったというのはあまりに不自然、こりゃクーデター成功の鉄則からはあり得ない。まあそんなことは、アーカンソーに撃ち込まれる対艦ミサイルをロシアの駆逐艦が全弾撃ち落とすマンガみたいなオチを見せられれば、大したことじゃないって思えてきますけど(笑)。 ジェラルド・バトラーは豪胆な叩き上げの潜水艦乗りという雰囲気は良く出ていました、兵学校出じゃなくて原潜の艦長になれたというのはリアルなのかは別にしてね。統合参謀本部議長役はゲイリー・オールドマン、久々に十八番のキレ芸を見せてくれて嬉しかったです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-24 22:16:10)
43.  ロック・オブ・エイジズ 《ネタバレ》 
ブロードウェイのヒット・ミュージカルの映像化ですけど、80~90年代のアメリカンロックのヒット・ナンバーを並べただけでミュージカルになっちゃうというのは驚きとは言えなくもないです。その分、ストーリー展開は予測がすぐついて実際その通りのお話しになるというのは、ちょっとベタ過ぎるかな。使われるナンバーは、ガンズ・アンド・ローゼス、ボン・ジョヴィ、ジョーン・ジェット、そしてジャーニーと来れば私らの世代には懐かしい懐メロ・ロックのオンパレードですけど、若い世代にはこれがかえって新鮮に聴こえるんでしょうね。主人公ドリューがスカウトされてヒップ・ホップ・アイドルとして売り出されるというところは、音楽シーンの移り変わりを揶揄しているようで面白いところです。ギンギンのメタルが流行っているので設定は80年代かと思いきや特に触れられていないけど現代のお話しみたいで、なんか時空を超越した不思議な世界観みたいな感じもします。 私も観るまではすっかり勘違いしてましたが(騙されたというほうが適切か)、トム・クルーズはわき役的なキャラなんですね。ところが演じるステイシー・ジャックスなるロック・スター、もう「もしトム・クルーズが俳優じゃなくてロックの道に進んでいたら、きっとこういうスーパースターになっていたろうな」と素直に感じてしまう違和感のなさ。劇中の歌唱もすべてトムの生歌、相当な猛練習を重ねたみたいですけど、やっぱハリウッドの大スターですからそのポテンシャルは底知れないものがあります。まあかなりの怪演であることも確かですけどね(笑)。そして出番が少なかったがキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、年齢を重ねたとはいえそのダンスのキレは半端ない。せめてトムぐらいの見せ場を造ってあげて欲しかったところです、実に勿体ない…
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-21 22:46:42)
44.  キューブリックに愛された男 《ネタバレ》 
カーク・ダグラスに「才能はあるけど君はクソったれ野郎だ!」とこき下ろされたスタンリー・キューブリック、人嫌いで狷介なエピソードには事欠かない天才監督。天才のもとで働くことは大変な重圧が襲いかかってくるものですが、『キューブリックに魅せられた男』のレオン・ヴィタリと同じように三十年もキューブリックに仕えた人がいたとは驚きです。このエミリオ・ダレッサンドロはレオン・ヴィタリと違って映画製作には全く関わらずにキューブリックの運転手兼雑用係として仕えて、終いには主従と言うよりも完全に友人関係になっています。イタリアから60年代に英国に渡ってきてレーサーを目指しながらタクシー運転手をしていたエミリオが、最初にキューブリックと関わったのが、『時計仕掛けのオレンジ』で使われたあの有名な巨根はり型をタクシーに載せて運搬することだったというのは興味深い。彼はヴィタリと同じようにキューブリックと関わった資料を大量に保存しており、“S”の署名で終わる自筆の指示書というか走り書きが続々登場します。それが“ペットに餌をやってくれ”とか“ホームセンターに行ってこれこれを買ってきてくれ”などといいった完全に小間使い扱い。それでも元から誠実な人柄なエミリオは忠実に仕えて、キューブリックとは信頼以上の関係になります。そして遺作『アイズ・ワイド・シャット』ではキューブリックに乞われて出演までしています。トム・クルーズが秘密パーティに参加する前に立ち寄る店の主人役で、“エミリオの店”とネオンで店名が輝くのが泣かせてくれます。彼はキューブリックが死去する前夜も会っていて、キューブリックが生前最後に会った家族以外の人物でもあります。ヴィタリが俳優のキャリアを捨てたように、エミリオもレーサーの夢を諦めてキューブリックに人生を捧げたわけで、自分勝手な人間だけど自分にとことん尽くす者には彼なりの愛情を示す天才なりの人間性が見られたと思います。 エンドロールが終わってのラスト・カットのエミリオの回想、キューブリックに「自分の映画でどれがいちばん良かった?」と尋ねられて『スパルタカス』と答えたそうです。すると渋い顔したキューブリックは「アレはたいした映画じゃないよ」と答えたそうです、やっぱりね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-15 22:44:31)
45.  カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 《ネタバレ》 
ラヴクラフトの『宇宙からの色』を現代に舞台を移して、宇宙から飛来した隕石(?)が敷地に落下したばかりにクトゥルー神話的な怪異に翻弄されて全滅してゆく一家の視点で描いています。自分は原作未読ですけど『宇宙からの色』の翻訳者が絶賛しているぐらいですし、借金を返すためにB・C級の駄作に出まくっていた時期のニコラス・ケイジ映画にしては出色の出来なんじゃないかと思います。 ラヴクラフト作品映画ではその神話的なクリーチャーがいかに人間にはどうしようもない存在なのかをどう表現するかがキモですけど、本作はその点でも十分に合格点が与えられるんじゃないでしょうか。この生命体は本質が“色”なんだそうで、この常人では思いつかない奇抜な設定は巧みに映像化してると思います。そして家長がニコジーである一家がまともな連中であるはずはないですよね。なぜかアルパカの飼育に情熱を燃やすニコジーを筆頭に、オカルトに嵌って『ネクロノミコン』を読みふける娘とか、「絶対におかしい」とは言い切れないけどなんか違和感が拭えない面々なんです。まあお話しが進んで『遊星からの物体X』を彷彿させるようなグチャグチャ・クリーチャーが登場し始めると、もうそんなことはどうでも良くなってくるんですけどね。母親と息子が合体してグチャグチャになるのは本当に観ていてキツいです、なんせ母親役が美形のジョエリー・リチャードソンですからねえ。ニコジーが最後まで怪物化せずに普通に最期を迎えたのは意外だったかも、でも怪異現象にズタボロにされながら静かに狂ってゆく演技はやはり彼ならではの妙技です。 オチが唐突だとかと怒ってはいけません、この“投げやり感”が人知を超越した怪異の前では無力な存在である人間の存在をテーマにしてきたラヴクラフトの真髄なんですから。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-05-06 22:07:12)
46.  アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ 《ネタバレ》 
上映禁止とまではいかなかったけど、日本ではポルノ映画なみの扱いで公開された伝説のクソ映画『発情アニマル』のリメイク。オリジナル版の監督メイル・ザルチが製作総指揮だけど、30年たって『ソウ』シリーズがヒットして悪趣味なゴア描写に対する世間の寛容度が緩くなってきたので、「現代のエグさでリメイクしたら受けるんじゃね?」とビジネスチャンスを発見したってのが製作経緯だと思う、たぶん。たしかに本作はシリーズ化されたぐらいだからそこそこヒットしたみたいで、ザルチの思惑は見事に的中したみたいですね。 自分は未見ですけど、『発情アニマル』とは逆でレイプ・シーンよりも殺害・拷問シーンの方に比重が明らかに置かれています。というか、やはり『ソウ』シリーズの影響が強いみたいです。極悪非道なシェリフはオリジナルにはいないキャラみたいで、犯人5人の中で唯一の家族持ちで失うものが大きい存在だからストーリーの盛り上げには一役買っていたと思います。そして彼の衝撃の最期、『ソウ』でも滅多に観れないエグさです。シェリフのシークエンス以外はほぼオリジナル通りみたいですけど、一応普通レベルの監督・スタッフが関与しているのでそこそこの水準には達しているかな。と言っても真面目に撮れば撮るほど陰湿なカタルシスしか残らず、これは元ネタがあれだけに致し方ないって感じでしょうか。主演女優に、いろんな面で魅力が乏しかったのも難点でした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-03-16 22:05:52)
47.  キング・オブ・シーヴズ 《ネタバレ》 
最近は世界各国で後期高齢者がつるんで悪さをするというプロットの映画が多いけど、本作はその英国名優版でちなみに実話の映画化。 引退して穏やかに暮らしていたマイケル・ケイン、かつては“キング・オブ・シーヴズ(泥棒王)”と闇社会では有名だった男。妻の死で落ち込んでいたところに、孫ほど歳が離れた若いセキュリティエンジニアからロンドンの宝石街ハットンガーデンにある貸金庫ある宝石・金塊・現金などのお宝を強奪する計画を持ちかけられる。「もう犯罪には関わらない」と亡き妻に誓わされていたが、眠っていた血が騒ぎ同年代の年老いた泥棒仲間を誘って人生最後の大勝負に乗り出すことに。集まったかつての仲間は、ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、レイ・スウィントンなど名優ばかり、おまけにちょっとわけが判らないキャラでしたがマイケル・ガンボンまで顔を出します。言ってみれば『バンク・ジョブ』や『オーシャンズ11』の後期高齢者ヴァージョンという感じです。2015年に起こった事件ですが、実は『ハットンガーデンの金庫破り』という題名でTVミニ・シリーズも本作の後に製作されており、割と最近の事件だけにインパクトが強いみたいです。 金庫室の壁に開けられた穴なんかは実際の犯行現場と同じで、割と忠実に事件を再現しているみたいです。ところがその忠実さが仇となって『オーシャンズ11』などと違ってすっきりした物語にはならず、強奪自体は上映開始から半分ぐらいの尺で成功しますが、その後グループの仲間割れが酷くなってゆくところを見せつけられることになります。観ている方のテンションが下がってしまうのは、犯行計画を立てた首謀者であるマイケル・ケインが犯行成功前に脱落してしまうところでしょう。だって『オーシャンズ11』でジョージ・クルーニーが途中から降りてしまうなんて想像つかないじゃないですか。後を継いでリーダー格となるのがジム・ブロードベントですが、普段の穏やかなキャラではなく疑心暗鬼の強いけっこう凶暴な爺さんというのが面白い。他の二人も互いに疑いあって分け前で揉めるし、『グッドフェローズ』のデ・ニーロみたいにブロードベントが仲間を口封じするんじゃないかとひやひやしました。さすがにマイケル・ケインもそのままフェイド・アウトするのじゃなくてストーリーには絡んできますが、実話なんだからと言ってしまえばそれまでですけど、いまいちキレがないキャラでした。それでもぶち込まれる糖尿病やら他尿症やらといった老人ネタにはブラックなペーソスがあり、それを披露する各人はさすが芸達者です。 似たようなお話しですが『バンク・ジョブ』みたいなカタルシスは期待しない方が無難です。でもラストで、捕まったマイケル・ケインはじめご老人たちが法廷の廊下を歩くシーン、各人のアップの後にそれぞれが若き日に演じたギャング姿をカットバックで挿入する見せ方は、なかなか洒落ていました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-02-25 23:01:13)
48.  どん底作家の人生に幸あれ! 《ネタバレ》 
文豪チャールズ・ディケンズの自伝的小説『デイヴィッド・コパーフィールド』の五十年ぶりの劇場映画化です。それにしても『どん底作家の人生に幸あれ!』とはずいぶん大胆な邦題ですね、でも意外と内容を上手く要約した良いセンスだと思います。 原作はサマセット・モームが選んだ“世界十大小説”にランクインするほどの名作、英文学をかじった人なら知らない者がいないほどの有名小説です。文庫本にしても4分冊にもなる長編ですが、それを二時間にまとめるというのはなかなか骨の折れる仕事だったと思います。この映画化でユニークなところは、主役のコパーフィールドをインド系のデヴ・パテルが演じており、また一部の主要登場人物がインド系・黒人・東洋系の俳優が起用されているところです。なので、コパーフィールドの白人の親友スティアーフォースの母親が黒人女優、なんて不思議な映像を見せられます。このキャスティングの意図は私には?ですが、推測するにデヴ・パテルを主演に使いたいというアイデアから始まった企画なのかもしれません。でも観ているうちにどんどん違和感がなくなるのが不思議、それだけパテルの演技が素晴らしかったということでしょう。この人の映画は初めてでしたが、彼は近い将来オスカー男優賞をゲットするような大物俳優になることは間違いなしです。コパーフィールドの伯母役はティルダ・スウィントンですが、珍妙なキャラを飄々と演じています。『デッド・ドント・ダイ』もありますが、彼女って最近はヘンなキャラで怪演を見せてくれることが多いんじゃないかな(笑)。 メタ・フィクション的なストーリーテリングは現代的な印象を与えますが、実はこれは原作の語り口の再現でもあります。開始から約三分の二までは原作に忠実な展開ですけど、ラストにかけてはかなり監督の独自解釈になっています。世間知らずの妻ドーラやウィックフィールド弁護士の死はなかったことにして、作家として成功したコパーフィールドのもとにほとんどの登場キャラが楽しそうに集まる大ハッピーエンドで幕が下りるのです。ディケンズ自身もこの自伝的小説で失恋や失敗だった結婚生活などを幸福な体験に作り替えており、尺の都合で端折らなくてはいけない事情を逆手にとって、ディケンズの夢想した幸福を見せようとしたんじゃないかな。波乱万丈なストーリーだけど、多幸感に満ち溢れたラストはこれで良かったんじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-04 22:37:08)(良:1票)
49.  また、あなたとブッククラブで 《ネタバレ》 
大学時代の友人四人は40年間毎月一冊の本を一緒に読む読書会を続けている。四人は大学卒業後にそれなりに成功して、ホテル・オーナー、連邦判事、レストランのオーナー・シェフ、一人は卒業後すぐに会計士とできちゃった婚して一年前に夫が病死するまで幸せな結婚生活を送る。それなりに優雅な人生を送ってきた四人だが、ブッククラブのテーマとして『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を読んだら眠っていた女の性欲が蘇ってきました。 この四人が、ジェーン・フォンダ、キャンディス・バーゲン、メアリー・スティーンバージェン、そしてダイアン・キートンというのがこの映画のウリです。この組み合わせは確かに今まで観たことない貴重さはあります、監督はロバート・レッドフォードの片腕として数々の作品でプロデューサーを務めた人、そういう人脈があってのこの豪華な顔ぶれとなったんじゃないでしょうか。お話し自体は『セックス・アンド・ザ・シティ』の超熟女バージョン、そして既視感バリバリの今まで散々観てきたラブコメの熟女版としか言いようがないですね。そりゃ芸達者な四人ですから、それぞれのラブ・アフェアーではみないい演技を見せてくれるんですが、四人が集まるシークエンスになるとなんかつまらなくなるんです。これは四人の個性を生かしきれなかった脚本のせいかと思いますが、だいたい半分も観るとオチが完全に判ってしまうというありきたりなストーリーテリングも良くなかったんじゃないかな。各人の恋のお相手もアンディ・ガルシア、ドン・ジョンソン、リチャード・ドレイファスとこれまた豪華な顔ぶれ、なかでもドン・ジョンソンのカッコよさには惚れ惚れさせられました。まあ身も蓋もない言い方すると、熟女が盛りの付いたJKみたいにはしゃぎまわるラブコメというところですが、甘いかもしれないけどギリギリ合格点を進呈いたします。 女優としてのキャンディス・バーゲンを久しぶりに観た気がするけど、それにしても貫禄付いたよなぁ…
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-01-16 22:32:10)(良:1票)
50.  アップグレード 《ネタバレ》 
よく考えたらツッコミどころに事欠きませんが、才人リー・ワネル手にかかるとそんなことは気にならず観る者をグイグイ引き込むお話しになっちゃうんだからさすがです。言ってみれば人間とAIのバディムービーみたいな要素が濃厚なんですね、その主人公がジェラルド・バトラーみたいな髭面の一見マッチョ・キャラですが、意外と真面目な常識人で敵を殺すと激しく動揺するのは捻った設定です。妻を殺されたことに対する割と単純な復讐劇思いきや、ラストは予想を超えるダークな展開、イイ脚本じゃないですか。あの一瞬夢オチかと思わせるバッド・エンドは、『エンジェル・ウォーズ』を思い出してしまいました。そしてまるで『オーメン』を彷彿させるようなラストでもあり、これからは悪魔に代わってAIがオカルト・ホラーの悪役になってくるような予感がします。 考えると、ここ10年は豪州出身の映画人が絡むSFやホラーの秀作が目立ちますね。これからは韓流じゃなくてオージー流なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-04 22:35:31)(良:1票)
51.  1917 命をかけた伝令 《ネタバレ》 
第一次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーは西部戦線で四年間伝令兵として従軍して最終階級は伍長でした。戦闘能力や指揮能力が認められれば一兵卒でも将校以上に昇進することが珍しくなかった当時、ずっと伝令兵で伍長どまりだったというのはヒトラーの生涯の謎の一つとして歴史研究者を悩ませています。大戦最終年の西部戦線ではドイツ軍は攻勢につぐ攻勢で、歴戦の古兵は攻撃の要として重宝されたはず、まあヒトラーは自分が語るほど有能な兵士じゃなかったってことでしょう。でも本作を観る限り、最前線で突撃するわけじゃないけど伝令はかなり危険な任務だったことは理解できます。ヒトラーの伝令兵仲間も、ほとんどが戦死したそうです。 “全編ワンカット撮影!”というのがウリの映画ですが、十数キロ離れた地点まで伝令が行くというお話しが二時間程度のワンカットで撮れるはずがない、と訝しんで観始めました。やはりちゃんとトリックというか編集点がありまして、スコフィールドが橋を渡って建物内で独狙撃兵と相撃ちになるシークエンス、それは白昼の出来事でしたが夜明けの一時間前までその後ほぼ半日も失神しているんですね。他の映像も複数の長回し映像を巧みに繋げたいわばワンカット風映画なわけですが(でもその撮影技術は驚異としか言いようがない)、この場面では完全にネタばらししたようなもんでしょう。今まで撮られたワンカット(風)映画は室内劇や限られた空間でのロケ撮影で製作されていますが、これほど大規模な戦場風景がまるで個人の観ているような視点で見せられると、まさに「コール・オブ・デューティー」のようなRPGゲームの映画版という感じです。考証は行き届いていて、とくに英軍に比べて異様に豪華で立派な造りの独軍塹壕などは良く調べているなと感心しました。コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングといった大物俳優をそれぞれワン・シーンだけ登場させるというのも贅沢過ぎです。強いて難をつけるとすれば、大量消耗戦に麻痺してしまっていた西部戦線の実情から、将軍や大佐などの幹部の対応がかけ離れているところです。史実を観ると当時の将軍たちの自軍の人的損害に対する無神経さは驚愕レベルで、実際のところ1,600人の戦死者なんて彼らにとってはかすり傷みたいなもの、まさに“西部戦線異状なし”って感じでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-27 21:49:59)(良:1票)
52.  鬼談百景 《ネタバレ》 
『残穢 -住んではいけない部屋-』のことは全然知らずに観ましたが、まったく独立したホラー・アンソロジーとして予備知識が無くても愉しめるんじゃないでしょうか。十話も盛り込んだオムニバスだけど、一話あたり十分もない尺なのでサクサクと観れます。学校ネタ・JKネタが目立っているような気もしますが、なんと言っても怖いのはナレーターがあの竹内結子だということでしょうか。このナレーションは、彼女の演技力もさることながら五年後に訪れる悲劇が予感されてしまいます。 不条理怪談噺が好物な自分としては、ラスト三話がとくにツボでした。何かに憑りつかれたように墓場を駆けまわる子供たちが強烈な印象の『続きをしよう』、何も語らせないような幕の閉じ方が良かったです。そしてある意味で何も起こらなかったのにとてつもなくぶっ飛んでいる『どろぼう』、つぶされる路上に転がっている果実や水が流れる側溝、これらが何を暗喩しているのか、考えてみたけど腑に落ちる答えは得られませんでした。まあ第十話はオチからすれば完全にブラックジョークでしたけどね、あの元カレじゃ粗大ごみとして処理するのは正解でしょ(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-12-06 22:11:13)
53.  ゴースト・イン・ザ・シェル 《ネタバレ》 
原作は未読なんですけど、これは明らかに押井版アニメ・第一作の実写バージョンというのが正解ですね。草薙素子をスカヨハが演じるというのはある意味サプライズでしたが、ハリウッド製作なんでしょうがないし、彼女の肉襦袢ヌード(?)を堪能できたのでお得感はあります。ファーストショットから序盤の展開はもろ押井版の実写化という感じ、舞台となる無国籍風都市の造りこみはお決まりの『ブレードランナー』風でなんか能がないんですけど拘りは伝わります。スカヨハ以外の荒巻やバトーのキャラは原作にかなり寄せてますけど、やはり問題はたけしの起用でしょう。たけしだけが喋る日本語がなぜか全員に通じているのがヘンを通り越してシュールな領域に達していますし、日本人向けに日本語字幕を付けて欲しいほどの相変わらずの滑舌の悪さです。荒巻の髪形もなんかヘンですけど、原作の荒巻のお茶の水博士スタイルの髪形にしちゃうと『ひょうきん族』なんかで演じていたマッド・サイエンティストの再現になってしまうので、たけし本人からNGが出た結果なのかもしれませんね(笑)。 賛否が分かれるオリジナルの実存的テーマの追及はエンタティメントにはならないと判断されたのか、スカヨハと『ブレードランナー』的なブラック企業との闘いと自分探しの苦悩という判りやすそうな方向に流れてしまったのは止むを得ないのかな。単なるハッピーエンドに終わってしまったところは、『攻殻機動隊』の持つ世界観とはかけ離れてしまった感じがして残念です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-28 21:41:06)
54.  メカニック:ワールドミッション 《ネタバレ》 
どう観ても、今まで散々見せられてきた“無精ひげハゲ”=ジェイソン・ステイサムの単なる肉体アクション映画です。彼の出る映画はけっこう観ているので、最近はどの映画も同じような記憶しか残らないので困ったものです。ゴマ塩頭に濃密な無精ひげと“喋る筋肉”と呼ぶに相応しい肉体、どの映画でも同じキャラの様で、少しは役造りしてくれよ(笑)。 正直言ってこれが『メカニック』の続編だと主張されても、「ああ、そうなんですか」としか返しようがないぐらいです。ストーリーも全然捻りが無いし、“メカニック“と称されるぐらい冷徹な殺し屋だったはずなのに、相手がジェシカ・アルバとはいえあんなに簡単に人助けするならただのイイ人じゃん。観てる方としては、ここでテンションが急降下してしまいました。いくらガードが固い商売敵とはいっても、あれだけ苦労してジェイソンを働かせるのは割があうものなんでしょうかね。さすが有能なジェイソンですけど、ターゲットを教えられてから36時間とか24時間であんな周到な準備ができるもんだろうか。でも二人目のターゲットにはさすがに笑わしていただきました。高層ビルの最上階からせり出していてしかもガラス張りのプール、こんなバカバカしい設定を考えついたスタッフは褒めてあげたいぐらいです。三人目のターゲットがトミー・リー・ジョーンズとなると、その後の展開はもう予想がつくというもんです。トミー・リー、出番は少なかったけどなかなか味のあるキャラでした。 ラスト・カットを見る限りでは今度はトミー・リーを絡めて続編を製作する気は満々という感じでしたが、真剣にアドバイスさせていただきます、ほんと止めた方がイイって!
[CS・衛星(字幕)] 4点(2021-11-25 22:49:36)
55.  アルキメデスの大戦 《ネタバレ》 
これは誰もが認めるところでしょうが、冒頭の大和撃沈のシークエンスはまさに“和製プライベート・ライアン”的な壮絶な映像。攻撃する米軍機もとうぜんCGながらもそのマーキングや機動などは実感あふれています。大和自体や後に登場する長門も含めて緻密な再現は山崎貴の本領発揮、まさに“神は細部に宿る”です。 この大和沈没が鮮烈過ぎて出落ち感すらあるストーリー展開ですが、まあこれはフィクションですから良いでしょう。櫂直などフィクショナルなキャラはともかくとして、実在の人物やモデルにされた人物が明らかに判るキャラにはちょっと?となる部分が無きにしも非ずです。舘ひろしの山本五十六は、自分としては歴代五十六の中でもっともイメージが合った良いキャスティングだったと思います。平山造船中将は平賀譲、藤岡造船少将は藤本喜久雄という有名な造船官がモデルなのは明白です。でも実際の大和建造計画策定時には藤本は死去していたのですが、まあここはフィクションなので五月蠅く言わないことにします。でも違和感がどうしても拭えなかったのは(これを言っちゃうと原作コミック自体の否定に成りかねないですが)、超秘密主義だった帝国海軍にいくら山本五十六の後押しがあったといっても、帝大を中退したばかりの民間人を少佐として迎え入れるという設定自体が絶対あり得ない。あと、天才的な数学才能がどうして一晩で造艦設計図面を書き上げる能力に繋がるのかが、理解しにくい。使用鉄量から造艦経費を導き出す方程式を創出するのは確かに数学的才能ですが、設計自体はデザイン的な能力だと思うんですけどねえ、まったく“数学万能”かよ(笑)。 冒頭で大和が建造されることはいわばネタバレしているのでこの広げた大風呂敷をどういう風に閉じるのかと楽しみにしてましたが、櫂と平山のラストの対決はなかなか見応えがありました。けっきょく櫂は平山造船中将に負けたというか説き伏せられた感じですけど、演じているのが田中泯ですからその結末も納得です。やっぱ本作では彼がいちばん光ってましたね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-13 22:34:19)
56.  メリエスの素晴らしき映画魔術 《ネタバレ》 
ジョルジュ・メリエス、彼こそが世界初の映画作家と呼ばれる資格があるんじゃないでしょうか。映画を撮っていたのはわずか16年間だったそうですが、そんな偉大だけど不遇だった彼の人生をたどったドキュメンタリーです。とはいえ、実質半分は『月世界旅行』彩色版の修復の記録でしたけどね。 『月世界旅行』前史といえる彼の初期作品を多々観ることができたのは感涙ものです。なかでも『一人オーケストラ』はやっぱ傑作、こりゃ現代でも通じるセンスじゃないでしょうか。メリエスが建てた温室みたいなガラス張り撮影所を復元して、『月世界旅行』の撮影風景を再現しているのも愉しいところです。コメンタリーとしてトム・ハンクスが出演していますが、この再現シークエンスでメリエスを演じているのが、ノン・クレジットでどこにも証拠はないけどどうもトム・ハンクスみたいな気がします、声もそっくりなんですよ。メリエスは映画製作を止めたときに自作700本のネガフィルムを燃やしてしまったそうですが、コメントにもありましたがまさに「形を変えた自殺」というのが相応しく、時代に取り残された彼の絶望感がひしひしと伝わってきます。発見されて修復に使われた『月世界旅行』の彩色版のフィルムもほとんど固まった状態でしたから、燃やされず現在まで残ったしても痛みは相当ひどいことになっていただろうと思います。 この映画ではほとんど腐ってるんじゃないかと思うような状態になった他作品のフィルムも映りましたが、映画フィルムの保存の困難さを改めて教えられました。日本なんか戦災もあって戦前の映画はかなりの数が永久に失われてしまったそうで、これは悲しいことです。フィルムがどんなに傷ついていても、そもそも存在しなければデジタル修復なんてできませんからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-14 21:08:20)
57.  ディレイルド 脱線 《ネタバレ》 
ハロウィンの夜に運航されるイベント列車がありました。乗客とともに役者が乗り込み、列車内で起こるアガサ・クリスティーばりの殺人劇を見せて推理を愉しませるというミステリー・トレインです。ところがなぜか車内には列車強盗が乗客に紛れ込んでいて、本物の殺人が起こってしまいます。強盗犯に機関士が射殺されて列車はカーブで減速できずに脱線・転落、そしてここから映画自体のストーリーも脱線・暴走してゆくのでした… 掴みというか導入部はいかにもミステリーっぽくて雰囲気が良いんですよ、ところが前述のように列車脱線してからは唐突にモンスター・ホラーに様変わりしてしまい、こちとらとしてはもう何の映画を観ているのか訳が判らなくなっちゃいます。ネタばれはしたくないので深くは掘りませんが、お話しが進行するに連れて「オチはあれか、もしくはあれだろうな」としか解釈できなくなってきます。因みに予想したうちの片方が正解でしたが、別に嬉しくも何ともない(笑)。しかしそのオチからすると、モンスター・パニック的な要素を入れる必然性はどこにもなく、脚本と観客を混乱させた効果しかなかったと思います。出演している俳優陣は無名ばかりなのはB級映画なので仕方ないですけど、唯一ランス・ヘンリクセンが顔を出しているのが華なのかな。でも彼は冒頭に一瞬顔を見せてその後は音沙汰なし、あとはラストでオチを解説する役目で登場するだけで5分にも満たない登場シーンでした、それにしても老けたようなこの人。 序盤の良さげな雰囲気からして、考え込んだ脚本ならもっと観れる映画になっていたかもしれません。観終わってみての感想は「この監督、けっきょく何がしたかったの?」ということに尽き、観客にそれを言われたら堂々たる失敗作ということになるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2021-09-24 21:07:35)
58.  キャノンフィルムズ爆走風雲録 《ネタバレ》 
キャノンフィルムズといえば80年代にハリウッドと世界に旋風を巻き起こし、ジャン=クロード・ヴァン・ダムやチャック・ノリスを世に送り出したB級プログラム・ピクチャーの雄。その創業者であるメナハム・ゴ―ランと従兄弟のヨーラン・グローバス、人呼んで“ゴーゴー・ボーイズ”の波乱万丈の映画バカ人生を描くドキュメンタリー、とくとご堪能あれ! ゼロからイスラエルで映画製作を始めてイスラエルでは名の知れたヒットメーカーになっていたゴ―ランのもとに映画好きの従兄弟グローバスが転がり込んできたのが、キャノンフィルムズのそもそもの始まり。二人はさらなる飛躍を夢見てハリウッドに進出、でも当たり前ですがそう簡単に成功が掴めるはずはありません。『グローイングアップ』シリーズなどでヒットのコツが判ると、70年代後半から80年代にかけて低予算B級映画で市場を席捲してゆきます。二人は、根っからの映画監督で年に何十本も映画を平気で撮っちゃうゴ―ランに、資金集めの天才グローバスがプロデューサーと裏方担当と役割分担がきっちりしていますが、どちらも根っからの映画バカだというのは共通点。キャノンが編み出した画期的な資金調達法は、キャスト・スタッフはおろか脚本すら存在しないただの企画を華々しいポスターに何十本も仕立て、それをカンヌなどの映画祭で大量に売り捌くという詐欺スレスレの際どいもの。とうぜん少なからぬトラブルも発生しますがイケイケの80年代でしたから面白いように儲かって、最盛期はハリウッドの映画興収の20%はキャノンが稼ぎ出し、インタビューでも語っているように本気でハリウッド六番目のメジャーになるつもりだったみたいです。ヴァン・ダムやチャック・ノリスのB級アクションのイメージが強いキャノンですが、意外なことに『ゴダールのリア王』やジョン・カサヴェテスの『ラブ・ストリームス』などの文芸作にも出資しています。もっともゴダールは「ゴ―ランは映画を撮っていなければただのマフィアの親分だ」なんて、出資してもらったのに罰当たりなこと言っていますけどね(笑)。 知っての通りキャノンは二人の野望にもかかわらず消滅してしまったのですが、EMI買収の頓挫とやはり『スーパーマン4/最強の敵』の大失敗がきっかけだったとこの映画では分析しています。どんなにカネがかかろうともただ映画が撮りたいだけのゴ―ランとさすがに資金繰りがもう限界だと悟ったグローバスはついに喧嘩別れ、ゴ―ランはまた映画製作会社を立ち上げ、グローバスはパテ社にキャノンを買収してもらいそのパテがMGMを買収したので彼がMGMの社長に就任という巡りあわせに。この買収は後に大金融スキャンダルになってMGM社長は短期で降りる羽目になったのですが、これはまた別の話し。 その後はゴ―ランの会社は破綻してこの映画が製作された2014年にはもう映画なんか撮れない状況になっていましたが、グローバスはイスラエルで撮影スタジオを運営したりしてそれなりに活躍しているみたいです。しょうじきキャノンに関しては悪い話しとイメージしかなかったですが、こうやって丹念に二人の足跡を見せられると、映画製作に人生のすべてを注ぎ込んだ愛すべき映画バカに共感してしまうほどです。ラスト、20年間絶交状態だった二人が本作をきっかけに和解し、仲良くポップコーンを食べながらスクリーンに流れるイスラエル時代の作品を嬉々として観ている光景は、もう泣いてしまいます。ゴ―ランは本作製作と同年に亡くなったそうです、合掌。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-18 21:35:46)
59.  ようこそ映画音響の世界へ
映画音響の歴史と役割を判りやすく解説してくれる貴重なドキュメンタリーです。「トーキー映画は音を芸術に変えた」、そう、忘れちゃいかんのは映画というものはそもそも音が無かった単なる映像だったということでしょう。トーキー映画が誕生してまず観客が喜んだのはスクリーンの役者たちの声が聞こえることで、それが映画音響のすべてだった。日陰者扱いだった音響効果でしたが、オーソン・ウェルズ、ヒッチコック、キューブリックといった天才たちが映画音響を革新してゆくことになります。本作には様々な音響技術者や映画監督が出演して語りますが、やはり“映画音響のゴッドファーザー”ウォルター・マーチの存在と業績が偉大だったんだなと改めて認識させられます。70年代以降はスピルバーグやルーカスといった面々の活躍で映画音響もデジタル化が飛躍的に進んでいまやすべての作業がミキシング・ルームのデジタル機器で済んでしまっているような印象を受けますが、効果音やフォーリー音の作成には昔ながらのアナログ音集めが健在なのも面白いところです。本作に登場する音響スタッフたちの活動を見ていると、本当にみな映画を愛する真の職人集団だなと感じます。いろいろと言われますけど、ハリウッドというところは各分野のプロフェッショナルが造り上げる職人文化が他国に追随を許さない強みを持っているんじゃないでしょうか。「職人気質は日本人の強み」と言われたりもしますが、情けないことに現在の日本映画界で消え失せてしまったのがこの職人気質だと思います。古い話しですが、東宝の円谷特撮なんかはその歴史だけでも一本の映画になる職人芸の極致です。たとえば現在の邦画界での映画音響のドキュメンタリーを撮ろうとしても、とうてい映画として成立しないでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-09 21:35:25)
60.  ミッドウェイ(2019) 《ネタバレ》 
ローランド・エメリッヒが監督なので最低線の期待しかしていませんでしたが、ギリギリの線で予想通りというのが感想です。ぶっちゃけて言えば、『パールハーバー』と『ミッドウェイ(76)』を足して二で割ったような映画ってとこでしょうか。 前半はお約束通り真珠湾攻撃から始まってB-25による東京初空襲までを流す、ここら辺はまるで『パールハーバー』のダイジェスト版リメイクを見せられている感じ。いちおう日本側には豊川悦司・浅野忠信・國村隼といった第一線俳優を使っているけど、あとは無名の日系俳優ばかり、それでも日本語だけはちゃんとしていたのは褒めておきましょう。でも、山本五十六が真珠湾奇襲に成功したことを知るシーン、京都の先斗町みたいなところに居て和服姿でしかも芸妓とくつろいでいるというのは、「そんなバカな!」と叫びたくなりました。三船敏郎なら絶対に撮らせなかったでしょうね。海戦に至る経緯はアメリカ側からの視点が主なんだけど、有名な暗号解読の経緯などはかなり飛ばし気味のあっさり風味、76年版もそうだったけどこの部分を上手く織り込んだ脚本じゃないとミッドウェイ海戦の本質が伝わらないと思います。アメリカじゃ「日本海軍の暗号を解いて待ち伏せして勝った」ということは、ちょっときまりが悪いところもあるのかな? 戦闘シーンはCG全盛時代ですから良くできていて当たり前、そうなると考証やディティールにどれだけ拘っているかが勝負なるでしょうが、ここはレベルがかなり低い。日米ともに艦船の再現度は高いといえますが、海戦シークエンスになるとツッコミどころ満載です。SBDドーントレスの爆撃シーンは臨場感あふれているけど爆弾をリリースする高度があまりに低すぎ、当たり前ですけど高度が高いほど爆弾の位置エネルギーが増すわけで、飛龍に着弾するシーンではいくら甲板が非装甲の日本空母でも甲板が貫けるわけがない、もし専門アドヴァイザーがいたら絶句すること間違いなしの珍シーンです。南雲機動部隊の艦隊陣形もあまりに各艦の距離が近すぎ、だいいちあんな近くに戦艦(金剛型?)がいるわけがない。などなど突っ込みだしたらキリがないんですけど、要は監督以下製作陣がミッドウェイ海戦というものを真剣に調査していないってことなんでしょう。まあ監督がエメリッヒでチャイナ・マネーがたっぷり注ぎ込まれた時点で、もう何を期待してもムダだってことです。 劇中で海戦当日にミッドウェイ島で記録映画を撮影していたジョン・フォードのエピソードが一瞬だけ挿入されていましたね。もし日本が海戦を制してミッドウェイ島を占領したら、戦死していなければフォードが捕虜になっていたかもしれないって、不謹慎かもしれませんがなんか面白くないですか?
[CS・衛星(字幕)] 3点(2021-08-18 23:17:22)(良:1票)
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