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81.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
原作は数十年前に既読だけど、ほとんど覚えていません。長尺でなかなか手が出なかったのですが、年末年始ということで鑑賞。前評判どおりの素晴らしい作品でした。何よりも「異国」の風景とそこに住まう(ふつうの)人々の描写が秀逸。そこに溶け込んでしまった塚本晋也、窪塚洋介、小松菜奈、加瀬亮などの俳優陣は素晴らしい。そのなかに、明らかに「異質」な存在として現れる2人の若手ハリウッド・スターもよくがんばりました。アンドリュー・ガーフィールドもアダム・ドライバーも「スター」のオーラをまといつつも、いい意味での「異物感」を感じる好演です。やや、残念だったのは、リーアム・ニーソンがどうしてもクワイ・ガン・ジンやらラーズ・アル・グールに見えてしまうこと。彼が語る比較文化論も、そういう人たちの言葉に聞こえてしまったのがノイズでした。映画としては、「試練」を通して信仰が試されるという、キリスト教的には定番の題材ながら、それをストレートに問い続けることで、「信仰」や「魂」なるものについての物語になっているのが見事です。近世の物語ではありますが、最後には、神を思い続け、それを棄てても残っている、この「私」とは何か、という「近代的個人」というものをめぐる根源的な考察になっていて、遠藤周作の原作も、それをこうして映像化したスコセッシも、あらためてその素晴らしさを実感できました。
[インターネット(字幕)] 8点(2019-01-06 11:22:12)
82.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
観たかったけど、いろいろ忙しくて映画公開時を逃し、DVD化されやっと見れる・・・ということで平日休みの日に意気込んで自宅でプレーヤーへ。予備知識はほとんどなし。前半・・・。うー、これはツラい。変な間とか、なぜ趣味の話とか・・なんか実験的作品だったのか。それが斬新ポイント? そして最初のエンドロール・・・からの「お、これは面白いヤツかも知れない」。やばい、楽しくなってきた。そして撮影開始・・のところで、突然自宅の電話が!!? え、娘の学校? ケガした? 後ろ髪引かれながらプレーヤーをストップ。娘を学校に迎えに行き、病院に連れて行って、その後一緒に帰宅・・・。大事なくてよかった。ただ、普段からサスペンスドラマでさえも「怖いから消して」という娘のため、続きを見ることを断念。そのまま夜に。夜、家族が就寝後、やっとプレーヤーをオン。続きを見る。ヤバい、本当に楽しい。うわー、これは途中で止めたらいけないヤツだ。続けて見なくてはいけなかったヤツだ〜。なんでこんな日に限って、うちの娘は・・・。と思いかけたところで、ラストシーン。大号泣。今作の教訓。観たい映画はやっぱり映画館で観よう。そして、すべての父にとって娘とは、どんなことがあってもそれを力に変えてくれる存在だ。
[DVD(邦画)] 8点(2018-12-13 22:02:56)(笑:2票) (良:2票)
83.  クレイジー・リッチ! 《ネタバレ》 
サンフランシスコ都心の映画館に公開3週目の週末に見に行きました。予想外の大ヒットで各所で話題になっていたこともあり、座席は予約でほぼ満席。在米中国人向けなのか、中国語字幕付きの上映館もあったようでした。アジア系住民が多い土地柄でしたが、観客の6〜7割は非アジア系の方々でした。映画はいたってありがちな古典的な「彼氏の家族に会いに行く」モノの範疇を出るものではないし、バチェラー・パーティあたりのセレブ文化描写はあまりにベタでクドいなあと思いつつも、終わってみれば、心からこの映画を楽しんでいました。たぶん理由は3つ。1つは、シンガポールの大富豪の派手な金持ちぶりが話題ではあるのですが、物語の中心は、主人公レイチェルが自分自身のルーツを発見する典型的な移民家族物語になっていて、そこがぶれておらず、映画としての芯がしっかりしていたこと。2つは、映画の軸がはっきりしているがゆえに、オークワフィナやケン・チョンのコメディ部分を物語のもう一つの華として心から笑えて楽しめる作りになってること。そして、3つめは、何よりも満員の観客の反応が素晴らしかったこと。人種や民族関係なく、みんなゲラゲラ笑い、ときには突っ込みも入れ、口笛を鳴らし、ラストの飛行機の機内のシーンでは、みんなで「オオーーーー」と声をあげて驚き、そして終幕後は大拍手。何度かアメリカの映画館で映画を見てますが、そのなかでも最良の体験でした。そして、何よりもそうやってみんなが喝采した映画が、いわゆるハリウッド映画スターは誰も出てこない(ミッシェル・ヨーぐらい)、俳優も主要なスタッフもアジアにルーツも持つ人々で作り上げた映画であるということが、その感動を何倍にもしてくれた。はっきり言えば、映画としての出来は6点くらいだと思うが、何よりもすばらしい観客によって忘れられない経験になりました。あと、難を言えば、なぜ邦題で「Asians」が消えてしまったのか・・・。語呂が難しいのは理解できるけれど、これはCrazyやらRichなだけではなく、何よりもアジアにルーツを持つ人々の映画なのに。その映画を、人種や民族関係なくみんなが楽しんだことが重要なのに。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2018-09-27 22:54:20)(良:1票)
84.  ウインド・リバー 《ネタバレ》 
『ファーゴ』を思わせる雪のなかの死体という絵からはじまるものの、描かれるのは冷徹で苛酷な先住民居留地の現実。ジェレミー・レナー演じるハンターを導きの糸として、FBI捜査官のエリザベス・オルセンと一緒に観客も少しずつ先住民の苦しみや哀しみを学ぶことができる構成が見事。殺された少女の父親役のギル・バーミンガムや少女の不良少年の兄たちの「よそ者」への不信と、その影に隠れた「本音」の見せ方など、一気に感情移入させる。そして、最後の最後にエリザベス・オルセンが見せる涙とその言葉で、失った命がなんと大きなものであったのかを観客も真に実感することができる。テイラー・シェリダン監督が脚本家として名をあげた『ボーダーライン』と比べると絵的な新しさには乏しいし、主人公の父子関係あたりが置き去りになってしまうあたりなど脚本にも疑問が残る。けれど、最底辺で生きている人たちが見せる「人間性」を丁寧に描いたという意味で、より厳しく、そして優しい作品でした。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2018-08-31 11:56:05)
85.  ファーゴ 《ネタバレ》 
些末な動機で始まった犯罪があれよあれよという間に大惨劇に。これは仕事がうまくいってないときに見てはいけないヤツだったかもしれない(笑)。状況の悪化は底なしなのだ。ウィリアム・H・メイシーが演じきってみせるつまらない男の「器」の小ささ、プロっぽいのにいつも最悪の方向に向かってしまう悪人2人組+同僚、そんな狂った歯車を一人で飄々と解いてみせるフランシス・マクドーマンド、みんな素晴らしい。コーエン兄弟の作風は好みが分かれるとは思うが、90分という時間に悲劇と喜劇を圧縮して見せたという点ではやっぱり最高傑作だと思う。ラストにマクドーマンドがどうやって「あいつ」をパトカーに乗せたのか、ってことだけは謎だったのだけれど、案外マクドーマンドのあのペースには悪人たちもかなわないということなのかもしれない。あと、今年見た『ブレードランナー2049』を思わせるロジャー・ディーキンスの雪の遠景や、同じくド田舎を舞台にした『スリー・ビルボード』でマクドーマンドが見せた本作とは全く違ったアプローチなど、20年後の現代映画につながるあれこれを再発見できるのも楽しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-05-18 17:20:27)(良:1票)
86.  永い言い訳 《ネタバレ》 
主人公のサチオはなかなかのダメ男で、基本はそのダメっぷりを軽く苦笑しながら観る感じなのに、終わってみたら久々に心の奥にズドンと来ました。自分は子どももいるし浮気もしてないけど、なんだか主人公の境遇というか心情には妙にシンクロしてしまう部分があり、笑いながら背筋が寒いというか、ブラックだけどじんわり染みわたるというか、まさに泣き笑って怖がるという、最高の映画体験でした。今回はモチーフ的には是枝裕和監督の作品に近くて、『そして父になる』あたりとは共通部分も多いし、子役が登場するシーンはまるで是枝作品のよう(とくに妹ちゃんは、いかにも是枝映画に出てきそうな感じでした)。個人的には、主人公とお兄ちゃんのちょっとした言葉やしぐさは、本当に自分のなかの「何か」を見ているようでいたたまれない気持ちになるし、2人の「交流」に安易な救いを見出さない突き放した感じも、西川さんらしくていい。ただ、唯一残念だったのは、終わり方かなあ。『ゆれる』のスパっとした切れ味を知っている身としては、終幕が少しダラダラしてしまったのは残念。あの二度目の散髪シーンで終わってもよかったかな。まあ、最後の受賞パーティのシーンのおかげで、いろんな本編中の伏線も回収した上に大宮家のその後をちゃんと見ることができて「安心」して映画を終われたというのはあるし、あそこがなかったら確実に個人的トラウマ映画の仲間入りだったけど(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-04 14:17:56)
87.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
公開終了間近に映画館で見られてよかった。ドゥニ・ヴィルヌーヴは『ボーダーライン』での絵作りがとても印象的だったので、期待通りのオリジナルな(でも前作ファンを怒らせない程度の共通項を持った)絵が満載で、定番の混沌とした都市だけでなく、冒頭の「農場」から、ラスヴェガスの廃墟、廃棄場、ラストの海から雪までどのシーンも美しい。この点では、2D字幕だったのが悔やまれる。本当はIMAXで見たかった。そして、この絵のなかで展開されるストーリーが本当に切ない。ライアン・ゴズリングはあまり好きな俳優ではないけど、彼にここまでどっぷり感情移入できるとは驚き。自身の存在を否定しながら生きてきた彼が、「自分は実は何者かであるんじゃないか」という思いを抱くことで生まれる残酷な物語。でも、その物語の顛末で「特別ではない生」を受け入れる姿は本当に美しい。遅いテンポもシーンへの没入感づくりという意味では正解。正直『ブレードランナー』1回目でこんなにエモーショナルな体験をするとは思ってもみなかった(前作で、「感動」できたのって何回目だったろう)。一方で、会話シーンなどの描き方にはやや不満あり。ウォレスの登場シーンは恥ずかしいくらいの過剰演出だし、デッカードとKの対話シーンは退屈。ただ、ジョイとラヴの登場シーンはテンポも演出もよかったので、単にヴィルヌーヴ監督(あるいは私)の趣味の問題かもしれない。いずれにせよ、失敗する姿しか浮かばなかったクレイジーなプロジェクトでここまでできればOKでしょう。十分に新しい映像体験だったと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2018-01-05 15:48:53)
88.  新感染 ファイナル・エクスプレス 《ネタバレ》 
父娘ものとゾンビ映画の組み合わせというのは、個人的には最悪で最高だ。しかも、ハリウッド映画だったらなんだかんだで娘は大丈夫だろうと思えても、韓国映画なだけに全く予断を許さず、最後の最後までサスペンスは続く。秀逸なのは、そこに織り交ぜるドラマのバランス。過剰にベタつかないけれど、泣かせるところはとことん泣かせる。娘が最後まで歌を歌わない理由からラストへの流れは、もう父娘ものとしても完璧だ。キャラのそれぞれの顛末もよく考えられている。ある意味、最期に初めて「カップル」になれた高校生の2人(この2人の捕食シーンだけはなぜか美しく見えた)とか、葉加瀬太郎みたいなのに男気の塊のおっちゃん、ゲスなのに憎めない社長、最初から最後まで職務に忠実な車掌さん、そして何よりも主人公の父親の最期まで、それぞれにドラマと見所が用意されている。サスペンス・アクション映画としても、序盤の不穏な状況の見せ方、列車を舞台にしたバリエーション、そして駅という場所の描き方まで、たぶん予算は抑え気味でも、アクションやゾンビ描写自体にまったく不足はない。意外とバイオレンスや残虐描写が控えめなのも個人的にはよかった。万人におすすめできる秀作!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-12 20:29:23)(良:1票)
89.  ムーンライト 《ネタバレ》 
オスカー作品賞!というタイプではないと思うけど、素直によくできた良作。アメリカの観客にとって説明過多にならない程度の省略なのだけれど、日本ではちょっと文脈がわからない部分が多いかも。でも、この省略のおかげで、スラムに住むゲイの黒人少年の半生といういかにもドラマティックな内容が、パーソナルで内省的な作品にうまく昇華したと思う。何より印象的なのは色彩感覚。ほぼ全員が黒人キャストだからこそ際立つ肌の色の描き方(そのトーンの多様性も含む)や、太陽や月の光の美しさ。『それでも夜は明ける』でも思ったけれど、最近の「黒人映画」は、各シーンの構図や配色がいちいち絵画的で、残酷な物語なのに(だからこそ)本当にうっとりするくらい美しい。その「絵」を見るだけでも見る価値あります。ストーリーは、主人公とそれを取り巻く人々(母親、父親代わりになるフアン、「初恋」の相手ケヴィン)のあいだの関係性の変化を丁寧に描いていて、これも好印象。オスカー脚色賞は納得。派手でドラマティックな展開ではないけれど大切にしたい一作です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2017-04-21 16:51:10)
90.  お嬢さん(2016) 《ネタバレ》 
これは凄い。官能映画ばりのシーンを織り交ぜながらの超一級のサスペンス・エンターテインメント。日本統治下の朝鮮半島で、日本語と朝鮮語が入り交じって展開する物語。ちなみに英語圏で観たので英語字幕付きでした。日本語ネイティヴではない俳優たちの日本語セリフの危なっかしさは、母語ではない支配言語を身につけることを強制された(そして、それを倒錯的に求めた)植民地状況の表現であると思えば、それもまた一つの技法として観られる。キム・ミニ演じる秀子お嬢様の美しさ、キム・テリのスッキの真っ直ぐなところ、詐欺師の狡猾さとタフさ、そして「植民地」を象徴・体現する上月の倒錯ぶり。これらを、まさに力業でエンタメに仕立て上げてしまうパク・チャヌク監督の底力を堪能できる2時間半です。第1部と第2部の描き込み(とくに第2部の密度は凄い)と比べると、第3部がちょっとうまく行きすぎかなと思う部分もあったけれど(とくに精神病棟からの脱出や船の切符購入のあたり)、久々に韓国映画らしい濃密な映画体験を楽しむことができました。エロなシーンも倒錯の描写も手抜き無しで、R18指定も含めてそっちが話題になるのはしょうがないかもしれないけど、それが気になって観ないのなら本当にもったいない本格的な「娯楽映画」です。
[映画館(字幕)] 8点(2017-03-22 15:00:16)
91.  ラ・ラ・ランド 《ネタバレ》 
3月の全日空国際線のシートモニターで観られるようだったけど、これはモニターで見てはいけないとぐっと我慢して、映画館へ。その甲斐はありました。私は冒頭のシークエンス大好きです。LAに住んでたこともあるので、ああやってフリーウェイの分岐路がドラマティックに使われたり、その向こうにダウンタウンが見えたり、(実はたいしたことがない)夜景をバックにダンスとか、もうそれだけで大満足です。ただ、この映画の本領は実はラスト15分にありました。あれでこの映画が描こうとしていたことが、単に夢を追うこととか、ラブロマンスとかだけではなく、もっと大きな「人生」そのものだったことが浮かび上がります。「ありえたかもしれない自分」「自分の隣にいたのは違う人だったかも知れない」という夢想の甘美さ、美しさ。「いま、ここに、この人といること」の偶発性。その儚さと、そうであればこその「いま」のかけがえなさの肯定。だから、ラストの2人の表情は本当に美しい。このラストで、それまでの90分とは完全に別の映画に化けてしまいました。まあ、ジョン・レジェンドの(楽曲も含めて)失礼過ぎる使い方も含め、ちょっと監督の(若さ故の?)「意地悪さ」が鼻につくところではありますが、ちゃんと現代だからこそのミュージカル映画になってるところはやっぱり魅力的です。
[映画館(字幕)] 8点(2017-03-17 23:11:19)
92.  マネー・ショート 華麗なる大逆転 《ネタバレ》 
面白かった。サブプライム・ローン問題についての最低限の知識と関心があれば、ついて行ける作りにはなってる。これをみれば、そもそもリーマンショックに結びついた金融バブル自体が、「今日ある繁栄は明日も続くはずだ」「みんなで言ってるんだから、そうに違いない」という非科学的な思い込みが、「事実」から目を反らして問題を先送りする制度をつくり出した結果であるというのが、本当によくわかる。そして、その「事実」に気づくのは、どこか現実世界になじめない人びとだったというのも面白い。とくに、スティーヴ・カレル演じる、善悪の判断にはこだわるのに空気を読まない偏執狂的モラリスト、マークのキャラ造形はお見事で、初登場シーンでは「絶対友達にはなれない」と思ったのに、最後にはその人間らしい表情に心を打たれてしまうのだから、映画って面白い(クリスチャン・ベイルのマイケルは僕には現実離れしすぎていたけど)。あと、金髪美女や国際的スター(笑)に金融問題を解説させるなどの面白い仕掛けも、重く難しくなりすぎない工夫として評価できる。でも、この映画の本当にすばらしいところは、現実問題に直接対峙しない、癒着と腐敗で凝り固まった金融業界を批判しながらも、主人公たちの「成功」が数百万単位の人たちの「破滅」を意味するという「大不況」の恐ろしさをしっかりと描いているところ。ブラピにそれを指摘されて思わず固まる若者投資家や、自分の予測があたったのに沈痛なマークやマイケルの表情、そして何よりも家を追われる人びとの映像などが、この映画が描いたのは「華麗なる大逆転」なんかじゃなくて、責任をとるべき人たちが取らない(取れない)金融業界の仕組みと、なぜこんなことが起きてしまったのか、という社会派ど真ん中のテーマだってことを物語ってる。いや、単にサブプライム問題だけじゃなく、根拠のないまま希望的観測だけで問題を見過ごしてしまう、いまの時代が背負ってる雰囲気(日本の少子高齢化とか、原発問題とかもそうだ)を描ききった映画だったと思う。だから、コンゲーム的なものを連想させる邦題は本当に最悪です。配給会社は猛省してほしい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-01-22 18:19:44)(良:3票)
93.  マネーボール 《ネタバレ》 
本作自体が、劇中で実践されるマネーボール理論の産物のようにも見える。チームの絆とか、精神力とか、スター性とかではなく、「データ」で野球を変えた弱小チームの物語。だから映画としても、徹底したアンチドラマ、アンチクライマックスの作りで、主人公が自分の気持ちを叫んだり、誰かと熱く抱擁したり、チームが一致団結して困難に立ち向かう、的な描写は皆無です。主人公は、野球をちゃんと見ることはできないし、もう大丈夫かと思って球場にいったら11点差を追いつかれるという「もう、野球と関わるのやめたら?」と思ってしまう経験もして、チームと団結することもないし、監督(フィリップ・シーモア・ホフマン!)とも和解しないし、結局はチームの誰からも(さらにファンからも)感謝されない。唯一評価したのは、金満球団の1つレッドソックスという皮肉。ラストの「パパはおバカ」「本当に自分は野球を楽しんでるのか?」と娘の歌ににじむ涙は、GMという仕事の本質にこだわった男の誇り(だからレッドソックスのオファーは断るわけだし)と、それでも感じてしまう虚しさの両方を描いた名シーンだと思います。そのあたりは、人間の二面性・両義性を描く名人監督ベネット・ミラー&脚本アーロン・ソーキンだからこそできた名人芸でした。そして、本作最大のパラドクスは、この映画の主演・プロデュースが大スター俳優ブラッド・ピットであること。その矛盾をブラピ自身も理解していて、だからこその抑えた名演技だったと思います。この作品で注目されたジョナ・ヒルやクリス・プラットのその後の活躍を見れば、この作品が、ブラピという巨大な矛盾を抱えながらも、出塁率の高い才能あふれる俳優たちで作られた優れたアンサンブルであったこともわかります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-09-19 12:20:17)(良:2票)
94.  ファインディング・ドリー
夏休みということで子どもと鑑賞。ストーリーはほぼ言うことなし。相変わらずのピクサー印で、ドタバタを楽しく見せつつも、一つ一つのアクションにちゃんと意味がある。とくに、ニモとマーリンが「ドリーならどうするか」を考えるところが素敵。たとえ記憶障害を抱えていてついつい「うっとおしい」と思ってしまう相手であっても、相手の目線で物事をみることが、自分との「ちがい」を知り、相手に「共感」して「理解」することへの第一歩だという素敵なメッセージだったと思います。でも押しつけがましくなく、新登場のキャラクターも個性豊かで魅力的。ハラハラしたり、笑ったり、驚いたりしながら、気がついたらピクサーらしい世界観にどっぷり浸かり、ちょっと優しい気持ちで映画館から出ることができました。欲をいえば、中盤から後半はアクションの連続で、位置関係がよくわからなくなったりしても立ち止まって考えるする余裕がなく、ヤマの盛り上がりにつながるようなメリハリがもう少しあってもよかったかな、と思うくらい。
[映画館(字幕)] 8点(2016-07-25 17:02:36)(良:1票)
95.  ズートピア 《ネタバレ》 
最近のディズニーの「社会派」ぶりにちょっと驚いてます。警察、差別と偏見、犯罪者と見なされること、犯罪者になること、これはいまのアメリカ社会に置き換えて考えれば、やっぱり警察と黒人の問題でしょう。そして、これは、2016年のアメリカで、この偏見や差別を煽ることによって支持を集めている政治家の問題でもある。そんなテーマに正面から挑みながらも、子どももちゃんと楽しめる(そして、そのメッセージもちゃんと伝わる)作品に仕上げた制作陣は本当に素晴らしいと思います。この映画の最も「社会派」なところは、主人公をこのような偏見や差別のサイクルから自由で超越した存在として描かなかったこと。もっとも偏見から遠いところにいる(と思われていた)ジュディが、その善良さゆえに、警察という立場から自ら偏見を持ち込むような発言をしてしまい、社会に分断を招いてしまうシーンは、大人の自分でも冷や汗が出るような恐ろしさでした。そして、そこからジュディが立ち直る過程こそ、この映画の本当のメッセージであり、テーマであったのだと思います。ただ、ここも最近のディズニーに共通するところですが、物語が複雑でガチャガチャしてしまい、落ち着きがないところ。出てくるキャラクターがそれぞれ魅力的ではあるのだけれど、個人的には種類が多すぎで、それぞれの見せ場が短い。もう少し展開やキャラを絞ってシンプルな成長物語としたうえで、この映画の重くて真摯なテーマを絡ませることは、たぶんできたと思う。あと音楽と映像(とくにズートピアの多彩なエリア)は、もちろん2016年の平均以上レベルだけど、でも、もっと出来たんじゃないかなとも思いました。とかグチグチ言っても、一緒に観た娘たちがケラケラ笑って楽しんで、帰りに「もう1回みたい!」と言ったことがすべて。小さな娘のなかに、現代という時代に向けた本作の大切なメッセージが、じわ〜っと伝わっていることを願っています。
[映画館(字幕)] 8点(2016-04-29 22:26:56)(良:1票)
96.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 
明るいノリの火星サバイバル&救出作戦。危機的状況のなかで、人類の知性の結晶としての「科学」、人間文化としての「音楽」、人間らしさが集約される「笑い」と「チームワーク」のすばらしさをこれでもかとポジティブに描いた快作。マット・デイモン扮する主人公ワトリーはたびたび窮地に立たされるけれど、そこを科学と音楽と何よりもユーモア(とくにポテト畑壊滅の絶望的状況から立ち直らせるクルーとのブラックジョークのやりとりは感動的ですらあります)によって乗り越えていく。人種・宗教・国境による分断が強調され、分断を煽る人間が「指導者」面をする今の社会に対する強烈なメッセージであったと思います。ただ、一方で、あのリドリー・スコットが、なぜ、いかにもハリウッド映画という感じのラストの群衆シーンをわざわざこの映画に挿入したのか。あれ、なくても十分に話は作れるはずなのに。わざと皮肉でやってるとしか思えない。ただ、これが「群衆の醜悪さ」を描いた皮肉であったとすれば、映画自体のメッセージとも矛盾する。それから、ワトリーの家族が一切登場しない件。彼は孤独な人間であるからこそ、火星の孤独にも耐えたことができたのかもしれないけれど、裏を返せば、本作は、ふつう人間の可能性を根源とされる「家族」や「愛情」を敢えて描かなかった「人間賛歌」であり、その意味するところは実は深くて重いようにも思える。というわけで、鑑賞中はふつうに楽しく前向きになれるのに、見終わって考えると、実はこの映画のメッセージはもっと恐ろしいものだったのではないのかと思えてくる。そういう意味でのリドリー・スコット印。健在です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-03-15 10:17:52)
97.  ランボー/最後の戦場 《ネタバレ》 
正直もういいだろうと思ってたし、残虐描写もすごいっていうので、未見でしたが、『クリード』見て以来、またスタローンが気になりだしたので、思い切って見てみました。前評判どおりのシリアスで残酷。グロ描写は苦手なので、拷問のような90分。そして、一時期ジャンル映画化していたアフリカ紛争ものにも通じる「ビルマ人の残虐性」をステレオタイプに強調してるところなど、素直に「よかった」と受け入れられない。軍が、白人だけをなぜ生かしていたのかなど(物語を進めるには必要でも)不可解な部分もある。ただ、この映画が凄いと思うのは、「キレイ事」と「暴力」との複雑な関係を丁寧に描いている点。この映画は善意あふれるNGOをある意味、嫌みたっぷりに描いていて、キレイごとを繰り返すマイケルが最後に人を殺すシーンは、ある種のカタルシスすらもたらします。でも、最後の大銃撃シーンの後の死体の山は、同時に暴力とか戦場とか「戦争」とは何なのかを雄弁に語っています。そして、最後に生き残ったサラがマイケルのもとにかけより、それをランボーが眺めるシーンが私たちに伝えるものは、AかBかという単純な選択ではない現実というものの重みです。「世界の現実」を描いたこの複雑な作品を、たった90分の「戦争映画」の傑作として、スタローンが自身の監督作品として作るなんて、2作目や3作目の頃には考えもしなかったこと。やっぱりスタローンという人は本当に面白いのだと認識を新たにしました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-02-24 12:17:16)(良:1票)
98.  海街diary
まず鑑賞後の印象。これは、映画館で見るべき映画だった! 女優としても旬の4姉妹の姿、美しい鎌倉の四季、そして何気ない日常の一コマこそ、映画館のスクリーンでこそ堪能すべきだったと思います。最近、自分が年取ったせいか女優さんを目当てに映画を見ることがめっきり減ってましたが、これはまさに「スター映画」。こういう映画は、もっとも環境のよいところで見てこそ、そのすばらしさが何倍増しにもなると思います。ただ、自宅で見たときの利点は何回でも見れること。すぐに2回目鑑賞しました。今度は、細やかなこの映画の構成が鮮やかに見えてくる。鎌倉の四季の日常のなかで積み重ねられていく四女すずの苦しみや3姉妹のそれぞれの生き方の微細な象徴が、物語に緊張感をもたらしていく。だからこそ、最後に「家族になる」ことの重みが、じわーーんと響く。スターが出ててもあいかわらず是枝作品風の会話表現、少しクラシックな(そしてややベタな)音楽、是枝作品のよい部分と華やかな日本映画の奇跡的な融合。原作を読んでいたので、原作での重要キャラ(とくに次女の彼氏)の雑魚キャラ化で逆に戸惑う部分もありますが、原作とはまた違った「海街diary」として、おすすめしたいです。
[DVD(邦画)] 8点(2016-02-24 11:50:10)
99.  ウルフ・オブ・ウォールストリート
この内容このテーマで、3時間ちゃんと魅せてしまうこと自体が凄い。スコセッシの演出も、ディカプリオの演技もキレキレです。口八丁手八丁で莫大な金を稼いでも、その使い途が結局はあの乱痴気騒ぎ。実は、少し前に、失業者や最下層の人々がドラッグで転落するドキュメンタリーを見たのだけれど、金はあってもやってることは結局一緒・・・。こんなに虚しいことのために割かれる膨大なエネルギーの不毛さ。あの「レモン」からのランボルギーニと電話のくだりは、もうディカプリオの演技力の壮大な無駄遣い(誉めています)。そして、映画全体のドラッグのような編集と音楽(胸を叩いて「んーっんっぽー」の中毒性・・・)。才気爆発とはこのことを言うのでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-09 10:34:19)
100.  駆込み女と駆出し男 《ネタバレ》 
昔の言葉と現代言葉が入り交じった台詞まわしの独特のリズムが印象的。ぶつ切り気味の編集は最初ちょっと戸惑ったけど、冒頭の40分くらいで慣れてくると、こちらもリズムがあってだんだん心地よくなってきました。ただ、このテンポは、主演の大泉洋があってこそという感じ。「すばらしい」とか「すてき」という言葉を時代劇のなかに持ち込んで、変な感じにならないのは彼のキャラがあってこそだと思います。逆に言えば、彼じゃなかったら、この映画全然ちがったものになってたかも、と思える好演です。その成長が物語の重要な柱になってたじょごを演じていた戸田恵梨香もよかったし、満島ひかりもあいかわらずの安定感でした。そして、ラストのオチは「そうきたか〜」とニヤリとさせるもので、さわやかな後味を残してくれました。個人的には、壮大な感動作系の音楽と、そのテンポや編集がちょっとあってなかったような。いかにも感動させる系のシーンで音楽がなっても、ブツッと切れちゃうので、そこだけはどうも乗り切れない部分もありました。全体としては、この映画は素直に見てよかったなと思える佳作だったと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2015-08-30 05:51:29)(良:1票)
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