81. マイ・バック・ページ
《ネタバレ》 非常に見応えのある作品でした。60年代後半から70年代前半の社会の空気を山下監督が上手く作り出しています。自分を、社会を変革しなければならないという思いと、世の中の真実を伝えていきたいという思い、そして己の使命に忠実であろうという思い・・・様々な思いが上手く重なっていくように見えて少しずつズレていく展開は、まさに若者が「大人の世界」の前に挫折していく姿を映し出したアメリカン・ニューシネマの世界観に相通じるものがありましたね。 まあ、マスコミのあり方というものについても考えさせられる作品でしたね。 [映画館(邦画)] 8点(2011-06-12 21:29:29) |
82. 悪人
《ネタバレ》 なんと言うか、淡々とした展開なんですが、じわじわと胸の奥からいろいろな感情がこみ上げてきましたね。まあ、人間誰しも悪人であり善人であり普通の人であることを痛感します。 この作品に出てくる人間たちはわかりあっているようでも、誰一人わかりあっていないし、皆探りあいながら他人にレッテルを貼って識別しその共通認識で連帯しようとしているような孤独な人たちなんですよね。 このどうにもならない孤独感を、妻夫木聡や深津絵里が演じ切れていたかというと正直微妙ではありますが、まあメジャー作品なのでそれは仕方ないところでしょうね(二人の演技はとても良かったですが綺麗すぎるんですよね)。これで、どこにでもいるような冴えないあんちゃん、ねえちゃんをキャスティングしていたら多分号泣していたと思います。 しかし、李相日という人は本当にヒリヒリするような映画作りをするのが上手いですね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-05-31 00:43:33)(良:2票) |
83. ANPO
《ネタバレ》 戦後の日本が、実質的にはアメリカの支配下にあり、日米安保による米軍庇護の下で高度成長を成し遂げていったことが良くわかるドキュメンタリーでした。 何というか、闘うアートの数々がその複雑な事実を我々に訴えかけてくるようで非常に興味深かったです。 アーティストの一人が「日本は戦争責任の追求を連合国に任せてしまい、日本人自身が行わなかった」と語っていましたが、このような複雑な状況に陥った一端は確かにこういうことなのかなと感じましたね。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-25 23:02:46) |
84. わたしを離さないで
《ネタバレ》 哀しく切ないラブストーリーであると同時に、臓器移植やクローン技術の問題の倫理のあり方について考えさせる映画でした。内容的には差別問題にもつながるテーマですので非常に興味深く観賞しました。ある生命を犠牲にして他の生命を守る行為は自発的ならともかく、制度や慣習にしてはならないと個人的には思います。 まあ豪華キャストが揃っているのでエンターテイメントとしてもしっかりとした作品でした。 「私たちと私たちが助ける人たちとではいったい何が違うのだろうか・・・・」という主人公のモノローグがとても印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-17 15:53:13)(良:1票) |
85. キック・アス
《ネタバレ》 エグいし、イカれてるし、病んでるけれども何故か爽快なヒーロー映画でした。特にヒット・ガールのアクションシーンは凄いです、衝撃的です。 [映画館(字幕)] 8点(2011-02-06 11:56:44) |
86. さんかく
《ネタバレ》 正直あまり期待せずに軽い気持ちで観ていたのですが、すっかり吉田恵輔ワールドにハマってしまいました。初めは登場人物のリアルなバカっぷりに苛立ちさえ感じていたのですが、妹が実家に戻ってからの展開の凄まじさに惹き込まれ、最後にはそのバカッぷりに笑わせられ、泣かされましたね。 まあ、子どもの領域と大人の領域の間は相互不可侵が一番ということですかね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-01-16 17:08:50) |
87. ソラニン
《ネタバレ》 青臭いしグダグダだし決して完璧な映画ではないのですが、そこに「ロック」があることで凄く引き込まれましたし心を打たれました。刺激の無い平穏な人生を退屈と感じるか安らぎを感じるかが若者と大人の境目であり、その中で揺れ動く登場人物たちの姿が非常に共感できました(かつての若者として)。 それと、宮崎あおいが本当に役にはまっていて良かったですね。多摩川沿いの風景も非常に印象的でした。 [DVD(邦画)] 8点(2011-01-11 00:40:41) |
88. 月あかりの下で ある定時制高校の記憶
《ネタバレ》 いろいろな事情により傷つき疎外感を感じている生徒たちを不適合者として切り捨てることなく、まずは居場所を作ってあげるところからスタートしている点、そして、「見捨てない」姿勢(当然限界はあるとは思いますが)に非常に感銘を受けました。 どんな学園ドラマよりもずっとリアルに心に響いてくるドキュメンタリーでした。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-31 10:27:55) |
89. 酔いがさめたら、うちに帰ろう。
《ネタバレ》 良い映画でした。酒を嗜む人間として、アルコール依存症の問題についていろいろと考えさせられました。アルコール依存症は、「だらしない人間が酒をやめられないだけ」ではなくれっきとした心の病気(しかも誰にも同情されることがない)であることを教えていただきました。 ユーモラスな雰囲気の中で物語は進んでいきますが、その奥底にはドス黒い心の闇が隠れていることに気づかされます。でも、そんな中で「どんなに悲惨な人生であっても、生きていたほうがいい」というセリフは印象的でしたね。 しかし、「風花」の時にも感じたのですが、浅野忠信の酔っ払いの演技は本当に上手いですね。本当に、酔っ払いの姿、心理、言動を的確に演じています。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-31 00:55:33) |
90. 告白(2010)
《ネタバレ》 隙が殆ど見当たらない緻密に練り込まれたプロットと映像は本当に見事でした。ちょっと、クライマックスの爆発シーンが無駄に凄すぎたのと、エンドロールに流れる雲の映像が「エレファント」のパクりみたいでちょっと気になりましたけど。それでもエンターテインメントとしては文句なしの作品でした。2時間弱の上映時間が本当に短く感じました。 しかし、どうしても内容が今の日本社会が抱えている嫌な面をこれでもかとばかりにぶつけてくるので少し辟易してしまったのが正直なところです。なんと言うか、豊かで平和で自由で公平でなおかつモノや情報が溢れている(ように見える?)社会の中で人々が幼稚化してしまっている現実が露骨に描かれていて複雑な心境でした(まともな「大人」が全く出てきませんし)。 [映画館(邦画)] 8点(2010-08-01 23:05:46) |
91. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
《ネタバレ》 クエンティン・タランティーノの映画、そしてそれに関わる人たちへの愛情の深さがわかる作品でした。 観る前は、あの「シャロンテート事件」をどう描くのか興味深く、そして事件が事件だけに恐ろしさも感じていたのですが、観終わった後は、タランティーノ監督の、ハリウッドという夢の世界の陰で不遇な状況に陥り、そのまま消えてしまった人たちへの鎮魂歌的な作品であると感じ、「映画って素晴らしいな」と思いました。 [DVD(吹替)] 7点(2021-05-22 22:54:42)(良:1票) |
92. 白い暴動
《ネタバレ》 ザ・クラッシュは出演していますが、メインテーマは不況の中レイシズムの波がイギリスで広がる中、ロックを通じてレイシズムに立ち向かおうとしていった人たちのドキュメンタリーです。 「白い暴動」の歌詞の真の意味を今さらながら知ることができ、ザ・クラッシュの姿勢に改めて感銘を受けました。 [映画館(字幕)] 7点(2021-04-10 09:29:39) |
93. 未来を花束にして
《ネタバレ》 サフラジェットの活動、そしてその背景を知ることができ大変興味深かったです。そして、人類全体の問題である性差別の根深さを改めて感じましたね。 [DVD(字幕)] 7点(2020-08-01 12:18:57) |
94. トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男
《ネタバレ》 山本おさむの「赤狩り」を読んでいて、ハリウッドにおける「赤狩り」の問題に興味があったので鑑賞しました。2時間の映画なので、内容的には駆け足のような感じで、赤狩りの対象者の悲惨な顛末はそこまででてきませんが、トランボがいかに己の才能を信じ、信念を貫き、困難に打ち勝っていったかを的確に伝えていて興味深かったです。 人間がつかさどる社会ですから、独裁でない限り、どうしても「本音とたてまえ」の戦いというのは起こってしまうものだなと考えさせられました。 [DVD(吹替)] 7点(2020-05-10 19:48:38) |
95. 恋は雨上がりのように
《ネタバレ》 原作を読んでから映画を観ましたが、小松菜奈は「橘あきら」そのものになっていましたね。 ラストも、原作版よりも爽やかで、これはこれで良いなと思いました。ただ、原作を読み終わった後の「あああああ」という何とも言えない感情は湧きあがらなかったですが。 [DVD(邦画)] 7点(2019-12-15 22:51:55) |
96. 翔んで埼玉
《ネタバレ》 関東人としては、鉄板の地域ネタが織り込まれてとても楽しめました。また、「差別」の構造もコメディの形をとりながら、分かりやすく伝えてくれる作品でした。まあ、東京と埼玉・千葉というのが相対するものとして扱われているので すが、実際、すべてにおいて東京が勝っているということは実はなくて、本来はお互い補完しあっていくべきなのですが、権力側の都合で「差別」を作り出す、また黙認している実態があるということを伝えています。 [インターネット(邦画)] 7点(2019-09-16 08:47:33) |
97. きみの鳥はうたえる
《ネタバレ》 登場人物全員の目が死んでいる青春映画。見ていて奇妙な心地よさを感じました。 [DVD(邦画)] 7点(2019-09-08 10:58:49) |
98. ラビット・ホール
《ネタバレ》 深い闇の中からの再生を静かにそして繊細に描いています。内容的にはドロドロで決してきれいごとだけではない物語なのですが、不思議と癒される作品でした。 [地上波(字幕)] 7点(2019-02-06 01:24:57) |
99. 探偵はBARにいる3
《ネタバレ》 もう平成も終わりに近づいている今、往年の東映セントラルフィルム作品を彷彿とさせるガチなプログラムピクチャーを観ることができる喜び。冬の札幌もかつての東京を思い出させ、味わいを感じます。 何よりも、このシリーズに流れる乾いた虚無感が、「やはり日本映画はこうだよな・・・」と思わせてくれます。 あとは、北川景子の存在感が素晴らしかったです。 [DVD(邦画)] 7点(2018-11-17 23:17:27) |
100. サンドラの週末
《ネタバレ》 ただただ、会社のクソっぷりに腹が立ちました。と言っても主人公に一方的に肩入れしているわけでもありません・・・。 では、何に腹が立っているのかというと、経営者の覚悟のなさ加減です。会社経営はきれいごとだけでは出来るものではありませんから、利益が出ない厳しい状況であれば倒産を避けるために人員整理や給与削減はやむを得ないと思います。 ただ、それをなぜ経営者が決断せず、社員の投票で決めさせるのか。これは民主的で社員の意思を尊重しているようで、実は、自らが描いたシナリオに社員をのせて、さも社員たちが自らの意思でその結果を決めたと思わせる卑劣極まりないやり方でしかなく、しかもそのシナリオが投票結果がどちらに転んでも良いときており、怒りを感じます。 おまけに最後のやり取りも最低極まりなく、心の病から立ち直ったばかりの主人公を再び奈落に落とし込むような仕打ちは目もあてられません。 しかしながら、その最低ぶりが主人公を逆に前向きにさせる一因でもあって皮肉なものだなとも思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-08-30 22:10:36) |