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プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  東海道四谷怪談 《ネタバレ》 
怪談映画のマエストロ中川信夫の最高傑作、クズ映画を量産して消えていった新東宝も本作を残せたことで映画史に名を残すことが出来ました。 とにかく役者・スタッフたちの気合いが映像の端々にまで行き渡っている感じです。冒頭の伊右衛門がお岩との婚儀を断れたため義父を斬り殺すところからワンカットで押し通してしまうぐらいで、歌舞伎の様式美に拘りながらも斬新なカメラの動きは時代劇の枠を超えています。要所で見せる赤色の使い方が鮮やかで、低予算ながらも色彩設計は凝ってます。怪談と言えば音響が重要なのは当然熟知しているうえでの効果音の使い方がまた巧緻で、お岩・宅悦殺しのシーンにかぶさる花火の音やカエルの鳴き声が印象深い。 天地茂の伊右衛門は、三島由紀夫が絶賛したのも納得の名演です。こういう極悪非道ながらも人間的な苦悩を見せる伊右衛門像は、それまでの四谷怪談にはなかった演出なんだそうです。お岩さんの若杉嘉津子は言うまでもなく彼女の女優人生で最高の演技、ラストの我が子を抱いて昇天してゆく姿は涙を誘います。 四谷怪談の映画化作品でおそらく本作の上映時間が最短だと思いますが、実に濃密な70分余りです。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2015-07-26 22:43:37)(良:2票)
2.  勝手にしやがれ 《ネタバレ》 
わたくし、はっきり言ってゴダールは嫌いですけど、本作だけは別。50年代にこんな映画を撮るなんて、もう間違いなく映画に革命を起こした様なものだったんでしょうね。映画で出来るなら、って現実世界でも革命を起こせるとと勘違いしちゃったのがゴダールの間違いだったわけです。 ジャンプ・カットを考案したいきさつやら脚本がなくてほとんど即興撮影だったことなどはすっかり知れ渡っていますが、やはりベルモンドとセバーグの即興会話に注目です。意味のない駄ばなしみたいに聞こえますが良く聞くとちゃんと詩的な対話になっていると思うんです、もっともベルモンドの方はただひたすら「やりたい」を繰り返している様にも感じますが(笑)。これはこの二人の俳優としての素質の高さがなせる業だと感じます。 そしてジーン・セバーグ、彼女の顔の整った美しさはオードリー・ヘプバーンをも凌駕してます。セシル・カットの絶妙さといい、現代でも十分通用する美女だと思います。若くしてこの世を去ってしまったのは実に残念です。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2014-05-08 20:42:30)
3.  お熱いのがお好き
こんな有名な作品に対して、今さらいったい何を言えばよいんでしょう。 それでも一言、「完璧な人間はいないけど、これぞまさしく完璧なコメディ映画だ!」
[CS・衛星(字幕)] 10点(2012-01-23 22:57:01)
4.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
日本特撮怪獣映画の原点にして頂点。おそらく本作を超える怪獣映画はどんなに頑張っても製作出来ないだろう。自分が生まれて初めて観た怪獣映画がNHKで放映された『ゴジラ』だったのは感慨深いものがあります(たしか日曜日の夕方だったことまで40年以上たっても記憶に残っています)。 円谷英二の特撮は単なる技術の成果ではなく、ゴジラの「見せ方」へのこだわりがリアルな恐怖を生んでいる。当時のハリウッド映画では主流ではなかったゴジラのスーツアクションも、技術的に未熟だったためにあまりに重くなり過ぎたことが却って“巨大な生物”としての生態を感じさせることに成功しています。 そして海外の人には決して理解されそうもないのが、日本人にとってゴジラは“戦争の災禍”と“核の恐怖”の表象として恐怖心理を刺激することでしょう。シリーズを重ねるごとにゴジラの恐怖が薄れてゆくのは、戦後の復興と経済成長が重ね合わされて興味深いところです。しかし21世紀の今日、日本人は再び“原発が吐き出す放射能の恐怖”に直面させられることになったわけで、『ゴジラ』が持つテーマ性はこれからも色あせることはないでしょう。
[地上波(邦画)] 10点(2011-04-07 00:16:48)(良:1票)
5.  七人の侍 《ネタバレ》 
私の様な凡人が、シネマの神が降臨した大傑作を論じるのは実におこがましい次第です。何度も観ているのですが、それにしても最近のデジタルリマスター版はセリフが実に鮮明に聞き取れるようになっているので嬉しい。この映画は名セリフ・名言の宝庫なので、じっくり味わいたいところです。母国語で本作を鑑賞できるのは、日本人の特権ですよ。 侍の中では私は名参謀役の五郎兵衛が好きで、勘兵衛にスカウトされるシーンは屈指の名場面だと思います。「おぬしの人柄に惚れたからじゃ」、微笑みを返す勘兵衛、こんなカッコ良い出会いは他にあるでしょうか! 最近黒澤映画のリメイクと言う愚行がブームですが、頼むから『七人の侍』だけは手を出さないでください、森田芳光さん、角川春樹さん。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2010-10-31 20:07:39)
6.  悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 
有名な作品だけどほとんど題名だけしか知らず予備知識なしで観ましたが、これがなんと驚愕レベルの大傑作であることに気づかされました。 小規模なブルジョワ家庭の男児だけを預かる全寮制の私立学校(小学校か)。教師は四人しかいなくて女性教師は二人、そのうち一人(ヴェラ・クルーゾー)は実質学校のオーナーで、そのいけ好かない夫が校長だが彼は実業家タイプで教師ではない。もう一人の有能な女教師(シモーヌ・シニョレ)はなんと校長の愛人、つまり妻妾同居というわけです。生徒はともかく他の男性教師や使用人はその関係を知っているという、実に不思議な空間というか学校なんです。横暴極まりない校長は二人の女性を日常的に虐待していて、二人は共謀して校長殺害を計画して実行する。首尾よく彼を溺死させて水死を装うべく学校のプールに沈めますが、自然に発見されるはずの死体はプールの底から消えてしまった… 心臓病を患っていて終始弱気なヴェラ・クルーゾーと、颯爽とした金髪ボブカットで沈着冷静なシモーヌ・シニョレのキャラ造形の対比が見事です。この映画は死体が消えてしまった後半からの展開は、まさに息も尽かさぬという表現がドンピシャリなんです。「これはサスペンス映画のはずだ」と判っているはずなのに、クリーニング屋や集合写真の背景の窓に映る影の件などが続くと「まさかオカルトもの?」と劇中のヴェラ・クルーゾーと同様に観てるこっちまで疑心が湧いてきてしまいます。このストーリーテリングの特徴は、絶対にこれは伏線だと思うようなシークエンスを散りばめているのに、それがみな観客を惑わす地雷になっているところでしょう。こうなると、騙すテクニックに関してはヒッチコックをクルーゾーが凌駕していると考えざるを得ません。 ラストのどんでん返しの展開も、近頃の映画で観られるしつこい説明過多が無くて余韻が強烈です。それにしてもヴェラ・クルーゾーの死にざまは、実際に自分は見たことはないけど、心臓麻痺で死ぬ人はこんな感じなんだろうな、というリアルさでした。そしてラストシーンの子供の言葉、これはホントにゾッとしますね。このテイストはやっぱヒッチコックには無いものなんだよなあ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-04-19 22:44:53)
7.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54)
8.  眼には眼を 《ネタバレ》 
設定は地名や通貨名からレバノンあたりみたいですね。とある町の病院に勤務する外科医バルテル=クルト・ユルゲンス、有能だけどいかにも傲岸不遜という感じです。このフランス人医師を、どこから見ても典型的なドイツ人のクルト・ユルゲンスが演じているというのがミソです。この人物の背景説明はいっさい無いんですけど、最近赴任してきたばかりなのか現地の言語や地理を皆目理解していなく、これが後ほど彼を地獄に落とす上手い設定なんです。この物語には圧倒的に多数派である現地人と少数派のフランス人およびイタリア人が登場しますけど、民族間の交流や良好な人間関係は存在しない異様に冷たいコミュニティであるのが特徴です。 前半は短いシークエンスを繋いでゆくストーリーテリングになっていますが、劇伴音楽をいっさい使わず徐々に高まってゆく緊張感は息詰まるほど。西洋文明とアラブ社会の対立・反目という視点を持って撮っている感じが濃厚ですけど、ボルタクの妻の死は不幸な偶然が重なった不可抗力としか言いようがなく、こういうアクシデントは人種・宗教とは関係なく誰にも降りかかる可能性があるものです。この映画の様にアラブと西欧の対立に持ってゆかなくても成り立つお話しですが、遠隔の村でのエピソードなんかには監督・製作者の西欧人らしい視点というか偏見すら感じてしまいます。まあまるでエイリアンのように通じあえないバルテルとアラブ人という図式が、サスペンスを究極まで高めているのは確かですけどね。 そしてあの“世界一怖いロープウェイ”を二人が降り立ってから、ガラリと雰囲気が変わり、そして“映画史上最凶のロードムービー”が始まります。この延々と続く荒涼とした砂漠というか荒地の風景には戦慄させられますが、実はこれはスペインでロケされたそうです。60年代にさまざまなマカロニ・ウエスタンや『アラビアのロレンス』のロケ地になりますが、スペインにこんな土地があるとはサプライズでした。バルテルが颯爽と着こなしていたライト・ブルーのスーツがどんどんズタボロになってゆくのがリアルです。そして鳥瞰で見せられる永遠に続くかのような荒地、 “絶望というものを画にしたらこうなる”という映画史に残る残酷なラストシーンです。 ここまで徹底的に人間不信というものを見せてくれる映画は、滅多にあるもんじゃないです。私の中では、本作はサスペンスじゃなくホラーです。
[DVD(字幕)] 9点(2021-12-03 21:25:55)(良:1票)
9.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 
確かにニトロを積んだトラックが動き出すまでが長い長い、でもそれだけの尺を使って決死行に挑む四人と酒場にたむろする食い詰め男たちのキャラをじっくりと見せていると考えることもできます。イブ・モンタンほか四人のドライバーたちの出自も仏・独・伊と別れ、中でも独・伊のコンビはこの映画でだんだんと感情移入できるようになる唯一のキャラなんじゃないでしょうか。半面モンタン・バネルの仏コンビは、どっちもパリの裏社会で飯を喰っていたという連帯感と兄弟分感覚があったのにバネルの本性がむき出しになって関係がどんどん崩れてゆき、最後には立場が逆転してしまいます。モンタンだって単純なヒーロー像とはほど遠く、重油の池でバネルを轢くところなんかはどう観たって冷酷な男で、当時のハリウッド映画では決してお目にかかれないキャラでしょう。 まあとにかくも緊張感だけはそりゃ半端なく、50年代と言わずオールタイム仏映画の中でも三本の指に入るサスペンス度だと思います。撮影もトリックを一切使われていなく、あの落石の爆破や張り出し足場の崩落などはもうそのまんまを見せていますって感じ、油田火災のシーンだってどこかで本当の火災現場を見つけてフィルムに収めたとしか思えない迫力です。そして酒場で踊る人々と蛇行するトラックがオーバーラップするラスト、『美しき青きドナウ』の使い方としては『2001年宇宙の旅』と双璧をなす強烈さだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-02-18 20:02:47)
10.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
この映画のヴェネツィア映画祭グランプリ受賞は、今はどうなっているのか知らないけど私らの世代では中学校社会の教科書に湯川秀樹のノーベル賞受賞とともに戦後の文化の欄に必ず記載されているトピックスだった記憶があります。映画の内容はとても文部省が中学生に推奨するものような代物じゃないし、実際観ても中学生ぐらいじゃ理解できないでしょうけど、ちゃんとスチール写真付きで載ってました。教科書を執筆するお偉い大学教授なんかも実はこの映画を観てないなかった、なんてところが真相なのかもしれません。 とはいっても世界の映画作家に与えた衝撃とその影響は、『七人の侍』以上のものであることは確かです。これほど知的に撮られた時代劇は前代未聞で、そのシンプル極まりないストーリーテリングと相まって現代でもまったく色あせてないと思います。多襄丸・侍・妻の三者の言い分が全く違って、その再現劇が三人ともまるで違う人格みたいなところが面白いし、中でも京マチ子の三変化が凄まじいレベルに達しています。昨今の“me too”運動に熱心な意識の高い方々には「実にけしからん映画だ!」と上映禁止運動が起きそうな内容とも言えますが、悪いけど自分には三人の中では京マチ子がもっとも女性というか人間の本質を出している気がします。「門を造るだけだから安く上がります」と会社をだまして凝りまくった羅生門のセットは見事の一語に尽きます。そして受賞したときのドタバタというか大騒ぎのエピソードの中でやはりいちばん強烈なのは、授賞式に日本から関係者は誰も出席してなかったので、急遽街中で見つけたヴェトナム人を引っ張って来てトロフィーを渡すセレモニーを強行したことでしょう。もちろんトロフィーはすぐ回収して日本に贈られたそうですが。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-09-17 23:16:09)
11.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
落語調の演出ばかりに目が行きがちですけど、数編の落語噺をくっつけながらそれを幕末動乱期の事件に見事にシンクロさせたストーリーテリングが絶妙で、歴代邦画の脚本ベストテンを作ったら間違いなくベスト3には選ばれると思います。舞台の品川宿を文字通り歴史の通り道として見せていて、遊郭の前の街道を通り過ぎるのは異人の軍楽隊や幕府の早馬、焼き討ちされた異人館に駆け付ける火消しなどまさしく尊王攘夷に激動する歴史そのものだと言えます。遊郭に上がり込んで攘夷をたくらむ高杉晋作たち長州藩士たちは妙に軽い乗りの若侍という印象で、これはきっと製作当時の学生運動に対するイメージを投影しているんじゃないかな。60年安保は三年先ですけど尊王攘夷は反米闘争のメタファーで、脚本陣に今村昌平が名を連ねているので十分あり得ることだと思います。高杉晋作と佐平治は同じ像の裏表、佐平治は高杉晋作のブライト・ハーフなんですよ。二人とも結核患者ですし、佐平治も晋作と同様に明治という新しい時代を見ることはなかったと思います。 そして凄まじいのはフランキー堺の伝説的な演技で、もう神がかりとしか言いようがない。特に私が好きなのは放り投げるようにして羽織に腕を通す仕草で、カッコよすぎです。驚異的な滑舌でまくしたてる演技をたっぷり見せた後で、一人になった瞬間にふと見せる迫りくる死に怯える表情、こんな演技は彼以外には誰もできません。ラストのシークエンスで佐平治と絡む東北なまりのおっさんが現れるとなぜか佐平治は滑舌も悪くなりおどおどしてしまうのが不思議ですが、これは佐平治にはおっさんが冥途の使者のように感じてしまったからなんでしょうね。そうなんです、佐平治は自分の余生があまり残さないれていないことを自覚していた川島雄三の分身でもあるんですよ。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-09-20 23:57:47)
12.  祇園囃子 《ネタバレ》 
みんな若尾さまを目当てに観始めるでしょうけど、すぐ判りますけどこの映画は小暮実千代を愛でるのが正解です。もう何と言いますか、彼女をギュッと絞ったら色気の汁が滴り落ちそうな感じなんです。彼女が冒頭でなじみ客にぶつける捨てゼリフが、現代のキャバクラ嬢の言う本音と大して変わらないところはとても面白い、時代に関係なくこの世界は変わらないものなんだなとしみじみ思いました。若尾文子も時代にあった自我を持った舞妓を好演していて、初めてお座敷に上がる時の初々しさは胸キュンものです。 80分余りと尺は短い映画ですが、実に濃厚な80分間の溝口ワールドです。「女を撮らせたら溝口」と言われただけあって、小暮実千代の演技を観てると、どうしてここまで繊細な演出が出来るんだろうと感嘆してしまいました。また出てくる男と言う男が、だらしなく狡猾で卑怯で女優陣を引きたててくれます。状況が変わる場面になると必ず電話が鳴るという作劇術もなかなか興味深かったです。そして忘れてはならないのが置屋の女将の浪花千栄子で、男も女も操る手腕はまるで老練な政治家みたいで怖くなってきます。 こうなると同じ溝口の『祇園の姉妹』もぜひ観たくなってきました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-06-25 21:54:37)(良:1票)
13.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
白人男性ばっかりで女性はいない陪審員の構成を見ていると時代を感じます。こんな制度なら黒人の被告にとってはもう悪夢ですよね。それが現在では女性や有色人種をどれだけ陪審員に入れるかで検察と弁護側が争い、それが裁判の行方に影響を与えているそうですから皮肉なことです。 さてこの映画を観るたびに感じることなんですが、原作者や監督シドニー・ルメットは陪審員制度について肯定しているんでしょうか? 日本でも裁判員制度が行われていますが、この映画を観たら陪審制みたいなかたちで裁判されるのは勘弁して欲しいと誰もが思うんじゃないでしょうか(日本では多数決で評決が決まることがあるというから恐ろしい)。早く切り上げて遊びに行きたくてしょうがない陪審員がいたりして、さすがシドニー・ルメット、各人の人間性を浮き彫りにする描写は見事です。この物語は誰が犯人であるかを決めて裁きを下すのではなく、被告が何をした(もしくはしなかった)のかだけが重要だと言いたいんじゃないでしょうか。陪審員8番の言葉を借りると「これが民主主義の良いところだ」というわけなんですね、欠点もありますが。 暑苦しい一室で普通の人たちが繰り広げる白熱の議論をリアルタイムで描いた、密室劇ムービーの最高峰です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-10 21:21:15)
14.  雨に唄えば
これぞまさしく“ザッツ・エンターテイメント”、やっぱ本作が史上最高のミュージカル映画と言うことになるんでしょうかね(個人的には『キャバレー』がトップなんですが)。“Singin’in the Rain”という曲は、『ザッツ・エンターテイメント』のオープニングを観ればMGMのミュージカルで何度も使われてきたことが判ります。でももちろんジーン・ケリーの躍動感あふれるダンスに勝るものはないし、本作以降のミュージカル映画でも彼のパフォーマンスは越え難い壁となって挑戦を跳ね返している気がします。コメディとしても秀逸ですし、「ミュージカル映画は苦手だ」とおっしゃるあなたも一度は観ておくべきですよ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-12-01 21:44:22)
15.  第七の封印 《ネタバレ》 
世評高いこの映画を恥ずかしながらこの歳になって初めて観ましたが、何と言っても衝撃を受けたのが冒頭の死神の登場シーンでした。黒ずくめの装束に能面のように白い異相、そして空には雲が渦巻き背景は海で波が打ち寄せている。これほど完璧に硬質なショットは滅多に拝めるものじゃありません、もう身震いしちゃいました。観るまではこの映画は死神と騎士がチェスをしながら神学論争をするお話しだと勝手に想像してましたが、予想外にも2・3手指すたびにチェスは中断してしまい、その間は騎士と従者が旅芸人たちと居城を目指すロード・ムービーのような展開で有ります。この旅芸人夫婦たちのエピソードがけっこう面白くて、中でも座長はウディ・アレンに演じさせたらピッタリだろうなという可笑しさでした。そう言えばアレンは、『愛と死』で本作のラストの“死の舞踏”をきっちりパロって再現していますが、オリジナルの方だってシュールではあるがなんか笑いを誘うところもあり、改めてアレンのベルイマン解釈の深さに感心しました。 難解で暗い映画だという評判もありますが、私には思った以上にユーモアと生への希望が感じられました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-22 21:18:54)(良:1票)
16.  灰とダイヤモンド 《ネタバレ》 
第二次世界大戦での連合国戦勝日である1945年5月8日の出来事。NYやロンドンでは大群衆が繰り出してのお祭り騒ぎだったのに、このポーランドでの異様なまでの冷静さと静けさはいったい何なんだろう。まだ正式に共産主義政権が成立したわけではないが、人々が自分たちの国の運命になんの希望も持てなくなっているのが痛々しい。 刹那的に生きてきたマチェクが、恋に落ちて未来を考えようとした途端に悲惨な死を迎えることになるのはなんという皮肉なことか。廃墟の教会でマチェクとクリスチナが教会で話すシーン、カメラの前景にアンチ・クライストの象徴でもある逆さまになった十字架のキリスト像を映すことで、もうポーランドには神はいないんだというA・ワイダの叫びが聞こえる様な気がします。 厳しい検閲制度があった当時ですから、いろいろと意味深なメタファーが散りばめられているけど、そこには詩的なセンスを感じさせられるシーンが多々あります。夜が明けて朝日が室内に差し込んできますが、そのあまりに白っぽい光線は屋外の風景をまったく見えなくしています。ラスト・ダンスを終えてその光の中に入ってゆくカップルたちの虚ろな表情、これぞ戦後のポーランドがたどった歴史のカリカチュアです。 Z・チブルスキー、若死にしちゃったけれど素晴らしい俳優でまさにポーランドのJ・ディーンです。それにしても、J・ディーンをはじめJ・P・ベルモンドや石原裕次郎などこの当時各国にチブルスキーと同じ様なタイプのスターがいたというのは面白いですね。ベルモンド以外はみんな早死にしちゃいましたけど。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-04 22:23:37)
17.  追いつめられて…(1959) 《ネタバレ》 
『追いつめられて』と87年製作のケビン・コスナー主演のやつをすぐ思いうかべてしまいすが、本作とは原題も違うしまったく関係ありません。まあ邦題だけの問題で、日本だけのことです(それにしても、87年版の邦題を考えた配給会社の人は本作のことを知らなかったのではないでしょうか)。主人公のポーランド人船員をホルスト・ブッフホルツが演じていますが、彼が主演している映画は初めて観た様な気がします。船員が恋人を殺害する現場をヘイリー・ミルズが目撃して、船員は次の外国船に乗り込んで海外脱出するまでミルズを連れて警察の捜索をかいくぐって逃げ回ります。ヘイリー・ミルズはジョン・ミルズの娘で本作が映画デビュー、まだ12歳です。とてもボーイッシュなので最初は男の子かと思ったぐらいでしたが、とても12歳とは思えないレベルの高い演技力をもっているのはさすが名優の子です。警部役のジョン・ミルズに殺人犯の容貌を尋問されるのですが、ブッフホルツをかばうためにウソをつきまくるシーンはなかなか見応えがありました。陸地から3マイル以上離れた外国船には警察権が及ばないという法律が英国にはあるそうで、この3マイルをめぐるラストのサスペンスの盛り上げは、監督J・リー・トンプソンの演出が冴え渡ります。トンプソンは、一時期「ヒッチコックの後継者」と英国映画界で目されていただけのことはあります。ラストの単純なハッピーエンドとはならないほろ苦さも英国映画らしいところです。今やすっかり忘れられた様なものですが、再評価されるべき良作だと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-20 22:39:09)(良:1票)
18.  キッスで殺せ! 《ネタバレ》 
もうこの映画は狂ってますね。ほとんどトンデモ映画と言って良いほど。探偵マイク・ハマーものという形式にはなっていますが、そんなこと全然関係なしで突っ走る暴走振りです。ハリウッド産のハードボイルド探偵ものにはやたら登場人物が複雑な関係でセリフでストーリー進行させる傾向がありますが、アルドリッチはそこを逆手にとって極端な省略と暴力描写に驚かされます。そして時代を感じさせないB級ならではの扇情的な描写のエグさで、拷問される女のもがく膝から下だけを映したり、バレエを練習するハマーの女助手の汗にまみれた肢体を強調したり(そもそもバレエをする必然性がないのですが)、ある意味シュールなショットが満載されています。そしてグチャグチャでさっぱりわけの判らないストーリーを吹っ飛ばす、あの驚愕のラスト! はっきり言って公開時に酷評されたのも当然かもしれませんが、ゴダールやリンチに多大な影響を与えたパワーは本作の非凡さを証明しているでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-10-24 09:57:09)
19.  突撃(1957) 《ネタバレ》 
初期(雇われ監督時代)キューブリックの最高作です。塹壕の中をカメラが主観視点で進むシーンは、その後作られた第一次世界大戦を扱った映画で良く模倣されています。あの長回しで撮られた悪夢のような突撃シーンでは、カーク・ダグラスが前進するのと共にカメラも彼の姿を追って移動するのですが、ピントがあった映像(パン・フォーカス?)で映し出された周囲の惨状が余りにすごくて、非現実的な感覚すら陥ってしまいます。処刑シーンではキューブリックらしいシメントリーな画面構成が観られますが、その中でも意識不明の兵士を担架に縛り付けてまでして立たせるシーンなどは、軍隊組織の官僚性と非人間性に驚かされますが、かえって滑稽に見える感じもします。ラストの場面で歌うドイツ娘役はこの作品完成後にキューブリックと結婚するスザンヌ・クリスチャンですが、さすがのキューブリックも彼女の撮り方には愛情が感じられます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-07-11 21:08:49)
20.  狩人の夜 《ネタバレ》 
スタンリー・コルテスのカメラが素晴らしい。表現主義を取り入れたような室内の光と影の描写は息を飲みます。全編今まで観たこと無い様な美しいモノクロ映像で、特に水中の死体が映るシーンは実に不気味で美しかったです。1955年という製作年度にしては際どい題材で、偽物とは言え連続殺人鬼の牧師が主人公という映画はそれまでなかったでしょう。大根役者のイメージがあるロバート・ミッチャムに、こんなに怖い演技ができたというのも驚きです。確かにロバート・ミッチャムが逮捕されてからの展開には疑問符をつけざるを得ません。ヒッチコックが撮っていたら、どういうラストになっていたかなと想像してしまいました。
[ビデオ(字幕)] 9点(2009-04-13 21:13:22)
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