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プロフィール
コメント数 2396
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  市民ケーン 《ネタバレ》 
古い映画だと侮って長年じっくり観たことがなかったけど、今更ながら観直してみるとトンデモない映画だと改めて気づかされました。これが弱冠25歳の演劇青年の初監督作だとは、恐るべしオーソン・ウェルズ! 狂言回し役の新聞記者がチャールズ・フォスター・ケーンの関係者たちを回って彼が発した最期の言葉「ローズバッド…」の意味を探ってゆくというストーリーテリングは、37年のフランス映画『舞踏会の手帖』とよく似ているというか参考にしたに違いないと思います。たしかに舞台演出家だったウェルズらしくセリフには拘っている感はありますが、根本的に本作はあくまで映像でストーリーを繋ぐ映画です。その映像がまた凄いの一語に尽きるのです。ローアングル・パンフォーカス・長回しと目くるめく映像テクニックの玉手箱状態、撮影監督グレッグ・トーランドの力量もあるでしょうが実現させたウェルズのイマジネーションの成せる技であるのは間違いないです。またウェルズやジョセフ・コットンおよびエヴェレット・スローンなどの老け演技がまた見事で、メイクアップ賞をあげたいぐらい(そのころのアカデミー賞にはメイクアップ賞はなかったけど)。チャールズ・フォスター・ケーンは映画史に残る複雑なキャラ、でもこれが数奇な映画人生を歩むことになるオーソン・ウェルズの未来を予言しているような感すらあります。とにもかくにも、一生に一度は観て損はない映画だと思います。 モデルとされた新聞王ランドルフ・ハーストが激怒して潰しにかかったというのは有名なお話し。でも“ローズバッド(バラのつぼみ)”が愛人のマリオン・デイヴィスのアレにハーストがつけた愛称だったとは、そりゃハーストも怒りますよね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-02-16 22:33:00)(良:1票)
2.  二郎は鮨の夢を見る 《ネタバレ》 
十数年前ですが、ボスのお供で一度だけ数寄屋橋の次郎に行ったことがありました。もう衝撃でしたね、今まで自分が食べてきたお寿司はいったい何だったんだろうか?まだミシュラン東京版が出る前でしたが、このお爺さんのどこからこんな味を創作するパワーがあるんだろう、としげしげと次郎さんの顔を見つめてしまいました。 お寿司って考えれば不思議な食べ物ですよね。子供のころは、寿司は酸っぱいご飯の上に刺身をのっけたものだと思っていました。寿司をトコトン因数分解してゆけばあながち間違っている定義ではないかもしれません。でもそれがあの芳醇な料理にまで昇華するんだから、ほんとに不思議なことです。 もちろん世界一有名な日本人料理人である小野次郎がこの映画の主人公ですけど、実はともに店を切り盛りしている長男氏がダブル・センターとして重要な役割を果たしていることを見事に喝破しています。彼は次郎さん亡きあとに店を継がないといけない、いわば日本で最もきつい重圧を背負った一人なんじゃないでしょうか。その彼が店のいわばコンサート・マスターであると見抜いた監督の眼力は素晴らしいし、背後に流れるクラシック音楽がこの視点とよく調和していました。そして登場する築地の仲買人や米屋さんなどの取引先が、みんなほれぼれするようなプロぞろいなことにも感銘を受けます。次郎さんも、とても80歳を越えているとは思えない滑舌と豊かな表情なのが観ていて愉しいです。 米国人監督の日本料理と職人に対する深いリスペクトが伝わる一編でした。きっとホワイトハウスのスタッフも、オバマ大統領が来日する前にこの映画を観て研究したんだろうな。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 9点(2017-08-17 01:05:21)
3.  終身犯 《ネタバレ》 
今まで自分が観た中で最良の刑務所映画、『ショーシャンクの空に』なんてこの映画の足元にも及びません。また、主人公が脱獄しようとしない唯一の囚人映画でもあります。だからこの映画では一生を刑務所暮らしする人間とはどういう存在なのか、また更生とはいったい何なのかということを鋭く問題提起しています。 囚人が苦労してその道の達人にまでなったというのは日本人好みのいわゆるイイ話になっちゃいそうですが、そんな単純な撮り方をしてないところが監督フランケンハイマーの凄いところです。バート・ランカスターの演じるストラウドからしても、映画の前半では狂信的なまでに反抗精神が強いあまり共感を呼ばないキャラです。そんなランカスターが「お前には人に感謝する気持ちがない」と看守に指摘されてハッと気づき、「今まですまなかった」と謝り生まれ変わった様になるシーンには心を打たれました。ほんと人間には感謝の気持ちを他者に持つことが大事なんですね。彼は『真昼の暴動』でも囚人暴動のリーダー格でしたが、本作では非常に抑えた演技が光ってました。 このランカスターを取り巻く刑務所の人間たちがいい味出してます。初めは嫌っていたが生涯の友となる看守のネヴィル・ブランドや、粗暴ながらもカナリヤ飼育によって人間味が増してゆく囚人テリー・サヴァラスがいい演技を見せてくれます。主人公ストラウドにしても常に突き放した様な客観的な演出で通しており、決してハッピーエンドではない終わり方にも納得させられます。 「更生とは尊厳を取り戻すことだ」というランカスターのセリフは、キリスト教的な意味合いもあるんでしょうけど考えさせられます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-29 22:12:23)
4.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
白人男性ばっかりで女性はいない陪審員の構成を見ていると時代を感じます。こんな制度なら黒人の被告にとってはもう悪夢ですよね。それが現在では女性や有色人種をどれだけ陪審員に入れるかで検察と弁護側が争い、それが裁判の行方に影響を与えているそうですから皮肉なことです。 さてこの映画を観るたびに感じることなんですが、原作者や監督シドニー・ルメットは陪審員制度について肯定しているんでしょうか? 日本でも裁判員制度が行われていますが、この映画を観たら陪審制みたいなかたちで裁判されるのは勘弁して欲しいと誰もが思うんじゃないでしょうか(日本では多数決で評決が決まることがあるというから恐ろしい)。早く切り上げて遊びに行きたくてしょうがない陪審員がいたりして、さすがシドニー・ルメット、各人の人間性を浮き彫りにする描写は見事です。この物語は誰が犯人であるかを決めて裁きを下すのではなく、被告が何をした(もしくはしなかった)のかだけが重要だと言いたいんじゃないでしょうか。陪審員8番の言葉を借りると「これが民主主義の良いところだ」というわけなんですね、欠点もありますが。 暑苦しい一室で普通の人たちが繰り広げる白熱の議論をリアルタイムで描いた、密室劇ムービーの最高峰です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-10 21:21:15)
5.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
ジャンゴとDr.シュルツがキャンディ・ランドに着いてストーリーの本筋が始まるまで1時間超、でも全然尺の長さが気にならないというのはたいしたものです。実際のところ自分が今までに観たことのある上映時間3時間前後の映画で、これほど一瞬たりとも退屈させられることがなかったのは初めてです。緊張感のない会話で笑いを獲ろうとするタランティーノの得意技もビッグ・ダディ一味が覆面のことでウダウダするシーンだけで、全篇堂々たる撮りっぷりでもはや巨匠の貫禄すら感じられます。 クリストフ・ヴァルツのために書かれた脚本の様なものなので、もうこのおっさんのダンディズムと言うかカッコよさには痺れちゃいまいした。タランティーノは前作でナチスというかドイツ人をさんざんコケにして痛ぶったので、Dr.シュルツでヴァルツにはその罪滅ぼしをしてあげたのかな。何と言っても異様な迫力があったのはサミュエル・L・ジャクソンで、あの目つきでガンつけられたら間違いなくちびっちゃいます。“Mother Fucker !”なんて卑語が19世紀に有ったとは思えないけど、やっぱ“Mother Fucker !”と叫ばないサミュエルなんてクリープのないコーヒーみたい(古くてすみません)であり得ません。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-19 21:59:41)
6.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
初めて観たときは、いい歳した大人だったのに本当に怖かった。本作が世に出たことで『モダン・ホラー』というジャンルが確立したと思います。もう製作されてから30年経とうとしていますが、『洪水のように血が噴き出すエレベーター』や『廊下の奥にたたずむ双子姉妹』といった衝撃シーンは全然色あせていません。この映画を観てシメントリーが人間の本能的な恐怖心を刺激することを初めて実感しました。超自然現象などこれっぽちも信じていないキューブリックがキング原作を映画化すれば、こういう映画になることは当然でしょう。伝説の『100回テイク』は一説では本作でシェリー・デュバルが体験したそうですが、インタビューで彼女は『キューブリックの映画にはもう出たくない』と真顔で語っているので笑ってしまいます。
[ビデオ(字幕)] 9点(2009-11-22 00:00:01)
7.  シカゴ(2002)
ボブ・フォッシー原作のミュージカルだけあって、フォッシー調の鋭角的な動作が見事なダンスが素晴らしい。ゼタ・ジョーンズを始め、どうしてこんな風に身体表現ができるのかと感嘆してしまいました。歌曲もまた切れがあって、中でもレネー・ゼルウィガーがここまで歌えるとはこれまたびっくり。個人的には今まで観た中で最高のミュージカル映画でした。できれば、ボブ・フォッシー監督の「シカゴ」を観てみたかったです。それは彼が亡くなってしまった今では詮無いことですが。
[DVD(字幕)] 9点(2009-06-17 20:13:59)
8.  ジュリア 《ネタバレ》 
ドイツへ行く列車内のシークエンスは、結末が何となく解っていても緊張感に圧倒されてしまいました。結局この映画で何か動きがあるところはこの部分だけで、それなのに全編に漲るサスペンスは見事です。ダシール・ハメットを演じるジェイソン・ロバーツが実にカッコよかったです。「フレッド・ジンネマン監督作品にはずれなし」です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2009-02-02 21:23:38)
9.  ジョン・ウィック:コンセクエンス 《ネタバレ》 
相変わらずぶっ飛んだ世界線の本シリーズもついに最終章(なのかな?)に突入です。冒頭で主席連合の上位に立つとされる首長がジョンにあっさりと射殺されてしまいますが、このジョンの行動にはちょっと説明がつかない感じがありました。代わって主席連合のトップに立つのがグラモン侯爵なる若造、彼が本作での最凶ラスボスという位置づけなのですが、貴族ぶった言動をするだけで最後まで銃を一発も撃つこともなくて悪役としては拍子抜けさせられます。そしてジョン・ウィックに絡む旧友二人がどちらもアジア人のドニー・イェンと我らが真田広之となります。盲目の暗殺者イェンの能力は超人と言うよりも超能力者というレベルですが、この人の動作やアクションには華というか男の色気の様なものすら感じさせられます。できればこのケインというキャラは真田に演じて欲しかった気もしますが、イェンの方がハリウッドではまだ格上ということなんでしょうね。まあ真田が演じたコウジというキャラも十分にカッコイイんですけど、彼に割り当てられるキャラはパターンが決まっているような気がするのは、自分だけでしょうか? 凱旋門のロータリーでの銃撃戦や200段の階段落ちなど、今作では体を張った見せ場が多かったかなと思います。キアヌ・リーヴスも、ローレンス・フィッシュバーンがプレゼントしてくれた完全にスーツスタイルの防弾着のおかげで、車にはねられても弾を喰らってもダメージが少ないという設定でしたが、いくら何でもこのスーツ無敵でしょ(笑)。キアヌは基本(?)に忠実で必ず相手の頭や顔に何度も弾をぶち込むのに、なんで敵の弾は頭部や顔面に当たらないのかな?すいません、野暮でした(笑)。 最近は『ミッション・インポッシブル』シリーズやジェイソン・ボーン作品群などシリーズになったアクションものが多いけど、その独特な世界線も含めてこの『ジョン・ウィック』シリーズが私には一番のツボでした。ジョン・ウィックよ安らかに眠れ!と哀悼の意を示すところですが、まさかの第五作目製作の噂が…それじゃあ『アウトレイジ』になっちゃうじゃん!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-04-03 22:52:45)
10.  死霊のはらわた(1981) 《ネタバレ》 
初見のときはすでに成人後だったけど、予備知識もなくレンタルしたビデオを深夜に同僚と観て、自分も含めて全員が震え上がった記憶が鮮明に残っています。私は「こんな気色悪い映画二度と観るもんか!」と固く心に誓ったもんでしたが、『死ぬまでに観たい映画1001本』に選出されるぐらい評価が高いらしくて、再見してみました。ところが『死霊の…』まで記憶していましたがその先の単語が思い出せない、たしかひらがなだったはず。そりゃ無理もないかもしれませんよ、『死霊の…』と邦題が付いた映画は検索すると『…いけにえ』『…たたり』『…したたり』と山ほどあるんですから、まあ『…盆踊り』は別格ですけどね(笑)。 弱冠21歳でこれを撮ったサム・ライミは、やはり天才じゃないでしょうか。それなりに苦労して資金集めの果てに完成にまでこぎつけたんでしょうけど、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』などの後年の自主製作映画と比べてその完成度は段違いです。この時代にラブクラフトからネクロノミコンを引用してきたのも、新しい発想だったと思います。ステディカムで撮った映像も斬新と思っていたら、なんとカメラを二本の棒で挟んで全力疾走するという原始的な手法だったそうで、やっぱ低予算ですし苦労してたんですね。登場人物も男女五人だけ、余計な描写は一切なくてひたすら憑りつかれた姉や恋人たちと血まみれ粘液まみれになったアッシュの死闘を見せるだけに徹する潔さ。何故か地下室にあったチェンソーを一度は手にするも結局は使わないところなんかもあの映画へのオマージュというかネタで、こういうコメディすれすれのところは後のサム・ライミが撮るホラーでも見られる特徴なんです。クレジットを見ると、アイヴァンやテッドのサムの兄弟たちなどもゾンビ役で出演しているんですね、さすがにほとんど素人の出演者にあんなグチャグチャのメイクをして演技させるのはムリだったということでしょう。つまり三人の女ゾンビは実は男だったというわけです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-12 21:56:04)
11.  情婦 《ネタバレ》 
どんなジャンルを手掛けても傑作をモノにしちゃうビリー・ワイルダーがアガサ・クリスティーのミステリーに挑戦。まるでヒッチコックが撮った様な極上の英国法廷劇になったわけですが、意外にもヒッチコック自身はアガサ・クリスティー原作を映画化したことはありません。チャールズ・ロートンを始め英国俳優が顔を揃え、おまけにマレーネ・ディートリッヒまで出てくるととてもハリウッドで製作された作品だとは思えません。唯一のハリウッド・スターと言えるのはタイロン・パワーですが、彼は次作の『ソロモンとシバの女王』を撮影中に急死していますから、本作が実質的に遺作なわけです。しかも死因が心臓発作だったというところは、本作からの因縁を感じてしまいます。彼は単なるイケメン・アクション俳優としてしか認知されていなかったけど、本作で見せた演技は演技開眼と呼べる好演だったので惜しまれるところです。因みに、ヴォールがフレンチ夫人と二度目に邂逅する映画館で上映されていた映画は、タイロン・パワーがジェシー・ジェームズを演じた『地獄への道(39年)』で、いかにもワイルダーらしい楽屋オチです。 そりゃあワイルダー映画ですから脚本は完璧で、チャールズ・ロートンと看護婦エルザ・マンチェスターの掛け合いは実生活でも夫婦だけあって傑作です。マレーネ・ディートリッヒもさすがの貫禄、例のシーンでの彼女の演技は完璧ですっかり騙されてしまいました。まああんまり詳しくは書けませんけど、50年代の作品としてはかなり強烈などんでん返しだったんじゃないでしょうか。 この映画の唯一最大の欠点はやはり『情婦』という邦題で、どこからこのワードを思いついたのか謎でしかありません。自分はこの邦題のおかげで長いこと敬遠してしまいましたが、同じような経験の人も多いんじゃないでしょうか。“内容が伝わらない悪センス邦題ランキング”があるのなら、間違いなくベスト3以内にランクインするでしょう。
[ビデオ(字幕)] 8点(2021-09-30 23:32:03)
12.  ジョン・ウィック:パラベラム 《ネタバレ》 
シリーズも三作目となると大抵は息切れが目立ってくるものですが、さすが『ジョン・ウィック』、予想を裏切るパワー・アップぶりでした。前作のエンド・シーンからほぼ繋がる形で物語がスタート、第一作でジョンが暴れ出してから本作が始まるまでが実は一週間の出来事だったということが明示されますが、いくら何でも一週間で人殺し過ぎでしょ、ジョン・ウィックさん!追われる身の辛さで、アンジェリカ・ヒューストンのもとにたどり着くまでひたすら戦いながら逃げるばかり、でも馬に乗ってバイクとチェイスするなんてこれは斬新すぎます。今回新たに登場するキャラはそれぞれにキャラ立ちが凄くて、その中でもゼロさんが率いる寿司職人軍団がやっぱ最高でした。ホテルでいきなりジョンのわきに座ってきて「ファンです」と告るところなんて、思わずのけ反ってしまいました。ラストの鏡の間みたいなところでの寿司職人軍団との決戦は、やはり『燃えよドラゴン』のオマージュなんでしょうね。ゼロと決着つける前の一番弟子・二番弟子との闘いですが、二番弟子はあのヤヤン・ルヒアンなんですよ、なんと贅沢なことか!この二人もやっとこさでねじ伏せますが、止めを刺さずに「また会おう」と爽やかに去ってゆくジョン・ウィック、シリーズ中で敵を殺さなかった珍しいケースです(一作目のロシアン・マフィアのボス以来かな)。 今回で主席連合なるものの実態がまた明確になってきましたが、この組織のトップはあのベドウィン族の首長みたいな人物でいいのかな?でも「主席のうえにいる人」というジョンのセリフもあるし、謎が深まるばかりです。ジョンがエンコ詰めまでして再び主席連合への忠誠を誓うという展開には「へ?」となりましたが、ウィンストンに迫られて誓いを反故にしちゃう展開にもびっくり。そしてそのウィンストンまでもが最後に主席連合に寝返ってジョンを裏切るとは、これぞ二転三転のジェット・コースター状態です。こうなってくると、主席連合に最後まで突っ張ってなめし斬りにされてもへこたれなかったバワリー・キング=ローレンス・フィッシュバーンがじつはいちばんカッコいいキャラだったってことになりますね(笑)。 一目瞭然ですが、このシリーズはまだまだ続くみたいです。次回作は、あの中途半端な退場からするとハル・ベリーの大暴れが期待できそうです、ジョン・ウィックと愛犬を殺された同志でね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-12 22:28:06)
13.  ジョン・ウィック:チャプター2 《ネタバレ》 
前作の異世界の出来事のような不思議な世界観は後退してNYやローマと言った具体的な舞台設定が明確にされてますけど、ジョン・ウィックが属する世界的な犯罪ネットワークについてはさらにスケールアップした描かれ方になりました。どうもこのネットワークは“コンチネンタル”と呼ばれているみたいで、NYにある不思議なホテルはローマやたぶん世界各国に存在して、そこには銃のコンシェルジュや防弾スーツのテーラーなどが稼業のお手伝いをしてくれるみたいです。ジョンはそのネットワークの有力者と誓印という恐ろしい誓いを交わしてとりあえず引退することができた。まあだいたい以上のような事が判ってきました。 今作の敵はマフィアより凶暴なカモッラでございます。今回のジョン・ウィックはいきなり愛車をスクラップにされ(まあ自分でやったんですけどね)家は焼かれてホームレス状態。でも、あいかわらず殺しにかけてはブギーマンで、前作で語られていた伝説の“鉛筆殺法”まで披露してくれます。キアヌ・リーヴスのガンアクションにはマーシャル・アーツ的なスタイルが盛り込まれていて、監督がスタント・コーディネーター出身ということが活かされています。随所でセリフのキーワードだけがテロップで表示されるスタイルは面白かったですね。キアヌのアクションは相変わらず満身創痍になるガメラ・スタイルで、だいたい上映時間の三分の二は血糊が付いた顔で通したってのは、ある意味で凄い。キーパーソンとなるキャラはみなあっさりとした最期でしたが、ジアナやカシアンの死にざまにはちょっと意表を突かれてしまいました。でも唖者の女性ボディガードのキャラだけは、『ザ・レイド GOKUDO』のハンマー・ガールをパクったんじゃないの(笑)。 いい意味で型にはまらず予想を外してくるストーリー展開は、次作『パラベラム』にも期待が持てちゃいます、私このシリーズに嵌ってしまったみたいです。やっぱジョン・ウィックは21世紀最強のガンファイターですね(今のところは)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-21 22:44:56)
14.  地獄の英雄(1951) 《ネタバレ》 
ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24)(良:1票)
15.  正午から3時まで 《ネタバレ》 
とてもヘンな西部劇、という評価もある映画ですけど、実際に観てみるとなかなか知的なコメディでした。「人間は自分に都合の良いように記憶を書き換える」と言われていますが、まさにそこを逆手に取ったような無法者グラハム・ドーシーの数奇な生涯をご覧あれ、というストーリーです。冒頭のブロンソンが見る夢のシークエンスからして「なんかヘンだな?」と心ざわつきますが、その後の筋書きは(特に後半)意表を突かれること間違いなしのぶっ飛び振りです。そして随所にぶち込まれる下ネタの嵐。ブロンソンがインポをジル・アイアランドに直してもらう展開というのも目を白黒させられますが、ジルと再会したブロンソンが本人確認のためにイチモツを見せて納得させるところなんか、もう唖然です。ここまでくればイタリア艶笑コメディの西部劇版じゃないですか。でも恥ずかしげもなくこんな痴態を見せちゃうなんて、この夫婦はほんとにラブラブだったんでしょうね。 こんなカルト映画ですが主題歌の"Hello and Goodbye"はそのメロディを聞けば「あっ、この曲聞いたことがる」と反応する人がきっといるんじゃないかと思う名曲です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-02-27 21:47:41)(良:1票)
16.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
冒頭から俳優がいきなり画面に語りかけ、「うわぁ、イーストウッドが大林宣彦をパクってる!」と驚愕しましたが、これは原作のミュージカル舞台に忠実な撮り方みたいですね。イーストウッドにしては肩の力が抜けた様な軽い撮り方も珍しいところです。随所に彼の遊び心が感じられ、TVで流れるのは『ローハイド』の若き日の御大の登場シーンというのは笑うツボです。だいたいからして、クリストファー・ウォーケンを起用していること自体が、“Can't Take My Eyes Off You”をフューチャーした名シーンがある『ディア・ハンター』を想起させてくれて面白いところです。ラストのカーテン・コールよろしく登場人物総出で繰り広げられるミュージカル・シーンには、もう鳥肌が立ちました。 フォー・シーズンズとなるとビートルズ世代の自分よりひとつ前の時代の音楽という認識でしたが、さすがに使われている楽曲はほとんど全て聞いたことがあるものばかりというのにはちょっと驚きました。なんせ『タモリ倶楽部』のあの有名なオープニング・テーマまで出てくるんですからね。 それにしてもオリジナル舞台と同じジョン・ロイド・ヤングの歌唱力は驚愕ものです。てっきりフランキー・ヴァリのオリジナル音源を使っていると思ってましたから、わたくし。また知られざるフォー・シーズンズの秘話も知ることが出来て面白かったです。ボブ・ゴーディオをメンバーに紹介したのが若き日のジョー・ペシだったというのはびっくりです。そう言えばペシは歌手としてアルバムをリリースしているほどですから、音楽の世界との関わりは深かったみたいです。 ここまで来るとイーストウッドには、ぜひ本格的なミュージカル映画を撮って欲しいものです。でも監督したわけじゃないけどその昔『ペンチャー・ワゴン』で痛い目に遭っているから、ちょっと無理かな(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-10-29 22:09:44)
17.  ジュラシック・パーク 《ネタバレ》 
思えば90年代はスピルバーグがもっとも油が乗っていた黄金時代だったですよね。本作に『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』と映画史を変える業績を残し、この10年間でオスカー監督賞を2度も受賞するという偉業を成し遂げたんですから。またこの頃の彼は映画表現の革新にどん欲にチャレンジしていて、現在のCG全盛は『ジュラシック・パーク』の成功が扉を開けたのは間違いないところでしょう。やりたいことをやり尽くしたのかもしれませんが、21世紀になってからのスピルバーグはどうも保守的になってきた感じがするのは気になるところです。 「男の子はみんな恐竜ファン」というのが私の勝手な持論ですが、この映画を初めて観たときには30年ぶりに眠っていた恐竜熱が甦りましたよ。“恐竜は温血動物だった”なんていう学説は耳にしてましたが、こうやってリアルに動き回る映像を見ると説得力があります。あのピンと張った尻尾こそが私たちの教えられていた恐竜像を粉々に打ち砕いてくれました。島で初めて恐竜に出会ったときのサム・ニールとローラ・ダーンの子供に帰った様な表情はもう最高です。映画を観ているかつての男の子たちも、きっと同じ様な眼をしてたんだろうなと思います。 この映画のちょっと残念なところは、科学者三人の描き方が類型的でちょっと薄っぺらなところですかな。サム・ニールの子供嫌いなんかもいかにも作りものですっていう感じのキャラで、彼らのバックボーンなどをもっと掘り下げて欲しかったところです。もっともこの子供嫌いというのは、スピルバーグの本性を投影させているのじゃないかと思いますが(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-04-04 20:56:14)(良:2票)
18.  料理長(シェフ)殿、ご用心 《ネタバレ》 
料理がテーマの映画は出てくる皿が美味しそうに見えるかどうかが大きく映画の印象を左右しますが、この映画では偉大なるシェフであるポール・ボキューズが腕をふるった実物が撮影に使われており、どの料理も実に美味そうです。パリのマキシムなど超一流のレストランを使って撮影しているのもゴージャスです。ジャクリーン・ビセットが創る“爆弾ケーキ”はクリームを盛り上げて創ってゆくところはもう涎が出そうなほどですけど、オッパイの片割れみたいな完成形はちょっとねぇ(苦笑)。 スクリュー・ボール・コメディとしてはセリフ・音楽・テンポのバランスが絶妙で、文句なしに楽しめます。ジャクリーン・ビセットはうっとりさせられるほど美しいし、ドンフェルドの衣装がまた素晴らしいんですよ。ジョージ・シーガルはあまり好きな役者じゃないけど、コメディを演らせたらやっぱピカイチであるのは確かです。 シェフたちの殺されかたが、「料理とは食材を切り刻み火あぶりにすることである」と言うアイロニックなブラック・ユーモアとシンクロしていて、往年のイーリング・コメディに通じるところもある秀作だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-26 23:50:26)
19.  ジャッキー・ブラウン
近年になって評価が上がってきた様な気がしますが、タラ映画の中でも最も不評な一篇みたいですね。初見の時から気にいった自分としては、どうしてそんなに評判悪いか判りませーん。 ムダ噺や時系列をいじくった演出がほとんど見られないなど、世間がタランティーノに期待しているところを見事に裏切ってくれたせいでしょうか。でもP・グリアやR・フォスターの絶妙な演技を観ていると、タランティーノは普通に映画を撮っても超絶的な技巧を持っていることは良く判ります。この映画ではとくに長回しが多くて、そうなると俳優の演技力の優劣が観客に良く判り、監督にとっても腕に自信がなくちゃチャレンジしたくないものです。 タランティーノはこの映画では真横からP・グリアを撮ったショットがやたら多いんです。確かに横から見ると彼女の黒人離れした堀の深い顔がとても美しく、タランティーの彼女に対するリスペクトが窺えます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-04 22:32:50)
20.  JAWS/ジョーズ 《ネタバレ》 
初っ端に女性が犠牲になって喰われる、町はイベントやお祭りの真最中で責任者が危険を無視する、最後は爆発によって退治される、とまあ数えてみれば同種の映画でこれほど模倣されている映画もちょっと珍しい。 “動物パニック映画は駄作だらけ”という定説を唯一くつがえしただけでも大したものです。原作小説もベスト・セラーなんだけど、フーバーとブロディの奥さんが不倫してたりなどけっこう緩い部分が多く、スピルバーグが書きなおさせた脚本の方がはるかにイイです、無駄がひとつもありません。 しかしけっこうjawsという英単語がサメという意味だと思っている人が多いんですよね、これもこの映画の偉大な影響ですか(jawは“あご”です)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-07 00:45:12)(良:1票)
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