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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2392
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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41.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
ゲイリー・オールドマンがまさかジョージ・スマイリー役に抜擢されるとは夢にも思っていなっかったんですけど、これが実際に演らせてみると実に素晴らしい演技です。ル‣カレのいわゆる“スマイリー五部作”で本格的に映画化されたのは本作が初めてで、そう言えば『寒い国から帰ってきたスパイ』にはチラッとスマイリーが登場していた記憶があります。TV版のアレック・ギネスが今まで最高評価だったみたいですけど、これは残念ながら観たことがありません。 確かに難解とまでは言わなくても非常に判りづらいストーリーであることは確かです。でもこれがル‣カレの原作が持つ雰囲気を見事に再現しているんじゃないでしょうか。彼のスパイ小説は、英国情報部のメンバーたちのバックボーンであるオックス・ブリッジとパブリック・スクールの狭い世界を理解していないと、読み通すのはしんどい作業になります。また派手なアクションはほぼ皆無と言って良く、スマイリーたちも拳銃を手にするシーンはありますが、発砲するわけでもない。ソ連側のスパイ・マスターであるカーラも最後まで画面に姿を見せることもなく、下手にラスボスみたいに暴れさせる安易なストーリーじゃないことにしびれますね。また70年代が時代設定とは言っても、まるで倉庫の中にオフィスがあるようなサーカス(英国情報部)の質素ぶりが英国の落ちぶれぶりが感じられていい雰囲気です。そして観てて判ってくるのがサーカスというか英国エスタブリッシュメント層のホモ率の高さじゃないでしょうか。さすがにスマイリーにはそういう趣味がないみたいな描き方ですけど、彼以外のメンバーはみんな“お友達”なんじゃないかと疑いたくなります。本作では真逆な性癖みたいなキャラになっていますけど、べネディクト・カンバーバッチが演じるピーター・ギラムも原作ではゲイだったと思います。 とても万人にはお薦めできませんが、ル‣カレのファンには必見の映画だと思います。そして世界はゲイリー・オールドマンの価値に気づいていなさ過ぎる!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-22 01:34:35)
42.  帰ってきたヒトラー
このヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優は、わかる人にはわかるんだけど生前のヒトラーの所作をよく研究していると感心しました。『最期の12日間』のブルーノ・ガンツよりもはるかにリアルだと思います。でもこれほど可笑しいけどだんだん笑えなくなってくる風刺映画には久しぶりに出会った気がします。『博士の異常な愛情』を初めて観たとき以来の衝撃かもしれません。あの女性局長は、ゲッベルスとレニ・リーフェンシュタールを合体させたようなキャラですね。こういうわき役たちもけっこう面白いけど、実はこの映画で最もキャラが立っているのは、ドキュメンタリー風に画面に登場してくる現代ドイツの大衆たちなんですよ。ヒトラーの「私を選んだのはお前たちだ」というセリフがこの映画の究極のテーマを判りやすく説明しているんじゃないでしょうか。この史実こそがドイツ人には耳が痛く、そして都合よく忘れようとしてきたことなんです。そういう視点で観ると、ヒトラー後のドイツ人の偽善をこれほど赤裸々に揶揄した映画はなかったんじゃないでしょうか。そう考えると、冷戦があったとはいえ戦後のドイツは狡猾に国際社会で立ち回ってきたものだと思います。組織の末端だったとは言っても東独の共産党政府の一員だった女性が、今や宰相として君臨して欧州の女帝とまで言われているんですからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-13 23:15:44)(良:2票)
43.  スターリングラード(1993) 《ネタバレ》 
“『Uボート』を凌ぐ製作費をかけた戦争大作”と公開当時に喧伝されていましたが、このスターリングラードという題材自体が冷戦が終わってドイツが再統一されてようやく取り組むことができたんじゃないでしょうか。ドイツ人に聞いたことがありますけど、スターリングラード戦は第二次大戦を知らない現代のドイツ人にもトラウマになっている悲劇なんだそうです、第二次大戦ではほかにも悲惨な敗戦があるにも関わらずです。 この完敗劇をひたすら前線のドイツ軍一小隊の目線で描いています。その部隊は酷暑のアフリカ戦線で活躍して休養の後に極寒のスターリングラードに送られるという劇的な設定ですけど、史実ではそんな部隊はありませんでした。でもそれはラストの凍死してゆく兵士の重いセリフにつながるところなので良いフィクションだと思います。徹底的に前線目線の脚本なので戦役全体の動きは観ている方にもさっぱり実感できず、気が付いたら包囲されているという感じですが、それもある意味リアルなんじゃないでしょうか。若きトーマス・クレッチマンが小隊長役で、この後にもたびたび演じることになる育ちが良いけどちょっと気弱なドイツ将校を好演しています。この将校がまた全編で勇猛な活躍などはいっさい見せず、途中からは軍装がボロボロになったうえに部下からもため口を訊かれるようになるのでどこにいるのかも判別不能になってしまいます。 彼らは物語半ばで懲罰部隊おくりとなってしまいますが、防衛戦に成功して原隊に復帰してからラストまでの展開がエピソードを詰め込み過ぎてちょっと緊張感を削いでいる感が強すぎです。とくに悪逆な中隊長の隠れ家でのエピソードなんかは、果たして必要だったんだろうかと思ってしまいます。そこでまたもやドイツ軍に捕まってベッドに縛り付けられた女兵士を一同が発見、「ここは階級順で行きましょう、少尉殿からお先に」という兵士のセリフには苦笑させられました。大真面目なんでしょうけど、こんな状況で軍規を持ち出すところがいかにもドイツ人らしいです。
[ビデオ(字幕)] 6点(2017-05-07 02:38:38)
44.  スティック・イット! 《ネタバレ》 
スポ根ものもついに女子体操まで題材にするとはいよいよネタ切れかと思いきや、これがなかなか面白い掘り出し物だったんです。まずカメラと編集のキレがイイです。体操演技する女優たちをバスビー・バークレー風に捉えるショットにはミュージカル・ファンはニヤリとさせられるのは必定です。鉄棒や平均台などのガチな種目ではスタントダブルを使っているのは当然としても、女優たちとのつなぎが巧妙なので違和感は少ないです。もっとも、そのために体操演技のクライマックスになると引きの映像になってしまうのは致し方ないでしょう。何よりも体操やフィギュアスケートのような採点競技に対するアンチテーゼを前面に押し出した脚本は、かなり目新しいんじゃないでしょうか。コーチや審判員にガチガチに型にはめ込まれる選手たちを観ていると、旧共産圏のような全体主義国家が体操に強かったのは納得させられます。ジェフ・ブリッジスも、この手の映画ではお約束のダメコーチを単純に演じるのではなく、口八丁の商魂たくましい男を彼らしい巧みさで演じています。 ラストの選手たちのはっちゃけぶりを観ていると、「これは『スラップショット』の体操ヴァージョンなんだな」と気が付きました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-06 21:45:36)
45.  ヒトラー暗殺、13分の誤算 《ネタバレ》 
『ヒトラー最期の12日間』を撮ったオリヴァー・ヒルシュビーゲルが、ヒトラー暗殺未遂事件である“ビュルガーブロイケラー爆破事件”にスポットをあてて再びヒトラーものに挑戦です、もっともヒトラー自身はほんの一瞬しか登場しませんけど。 田舎の工員だったゲオルク・エルザ―という男がヒトラーが毎年演説するミュンヘンのビヤホールに爆弾を仕掛けますが、見事爆破には成功したが13分早くヒトラーが退出してしまったために暗殺には失敗した事件です。冒頭でエルザ―はあっさり逮捕されてしまい事件をクライマックスにしての緊迫感をあおるようなストーリーテリングではなく、ゲシュタポがエルザーを取り調べる過程がこの映画のメイン・プロットということになります。エルザ―は割とあっさり自白してどうやって事件を仕組んだかを回想するわけですが、実は彼の単独犯行でした。史実通りなんですけど、確かにヒトラーまでもが背後の陰謀組織の存在を疑ったのは納得できるほど、この男の行動は不思議です。共産党シンパなのに敬虔なクリスチャンというだけでも矛盾していますが、人間の心の中なんてそう簡単に割り切れるものじゃないのも確かでしょう。その辺りは余り突っ込んだ描き方をしていないところがあり、自分としてはちょっと不満です。この映画の脚本の肝は、取り調べるゲシュタポ高官のアルトゥール・ネーベとエルザ―のやり取りにあるのは間違いないでしょう。このネーベという人は、映画のラストでもふれられている様になんと1944年のヒトラー暗殺未遂事件に関与して処刑されているんです。もっと驚くことはエルザ―自身も終戦1か月前までざっと6年近く処刑されなかったということでしょう。こうなるとヒトラーの考えることですから謎としか言いようがありません、「俺を殺そうとしたエルザ―が死ぬときは、自分も死ぬときだ」とでも思っていたのかな? 最近ドイツではエルザ―の記念切手が発行されたりして英雄扱いなんだそうですが、なんか「ドイツ人よ、ちょっとおかしくないか?」って気がします。結局彼が仕掛けた爆弾ではナチ党員とはいえ普通の人が死んだだけなんですから、こうなるとテロリストと英雄の違いとはいったいなんなんだろうと悩んでしまいます。彼を英雄視するのは、民主的な選挙でナチスに政権を取らせてヒトラーを国民投票で総統にしてしまったドイツ人の後ろめたさの現れかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-01-24 21:57:13)
46.  マイ・ファニー・レディ 《ネタバレ》 
『ラスト・ショー』や『ペーパー・ムーン』などの映画史に残る名作を70年代撮ったピーター・ボククダノヴィッチ、いつの間にか名前を聞くことがなくなりましたが、あの頃の勢いを考えるとウディ・アレンと並んで現代アメリカ映画界を代表する名匠になっていてもおかしく無かったんですけどね。彼が失速し始めるのと同時期にアレンの快進撃が始まったという事実も、なんか皮肉なことですけど。 久しぶりに観たボクダノヴィッチ映画はオープニングの雰囲気やスートーリーテリングはウディ・アレンにそっくり、おまけに主役がオーウェン・ウィルソンですから、「なんかどっかで観たような…」とデジャヴ感が満開です。お話しはブロードウェイの舞台製作をめぐるいわゆるシットコムです。演出家のウィルソンが遊んだコール・ガールが女優の卵で舞台のオーディションにやって来て…という展開なんですけど、まずこのコール・ガール役のイモージェン・プーツがなかなかのキュートでよろしい。この娘と演出家を巡って、「おいおい、いくら何でもそこまで世間は狭くないだろ」というほとんどドタバタコメディと言っていいぐらいのお話なんです。冷静に考えると実にくだらないストーリーとも言えますが、ストーリーテリングの軽妙洒脱さと役者たちのそれぞれのツボにはまった演技のおかげで、これはけっこう愉しめました。かつてのボクダノヴィッチ作品のミューズ、シビル・シェパードとテイタム・オニールがちょい役で顔を見せてるのも見逃せません。シビル・シェパードは予想通りの劣化ぶり(演技の方じゃありません)でしたが、ウェイトレス役でちらっと出てくるテイタムちゃんにはびっくりさせられました。そりゃおばさんなのはしょうがないですけど、あんなムッチリでしかも巨乳になっていたとは、ほんと我が眼を疑いました。まさか特殊メイクじゃないでしょうけど(笑)。でも最後の最後で登場するタランティーノの方がやっぱサプライズ度が高いでしょう、こんな使い方ってアリ? 最後にネタバレされますけど、劇中でオーウェン・ウィルソンが使う口説き文句が実はエルンスト・ルビッチの『小間使い』でのシャルル・ボワイエのセリフだったというオチ、こんな洒落はシネフィルであるボクダノヴィッチらしくてほっこりさせてくれる終わり方です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-11-28 20:21:34)(良:2票)
47.  ピーター・グリーナウェイ 81/2の女たち 《ネタバレ》 
この監督は、自分の撮っている映画の前には観客というお客様がいるんだぞ、ということを微塵も考えないタイプの映画作家なんです。まあそういうところは画家に似ていると言えなくもないです。そういえば映画の前半で主人公のフィリップがモンドリアンのただの幾何学模様にしか見えない有名な絵に講釈を垂れるシーンもありまして、グリナウエイもそこらへんは自覚しているのじゃないですか(笑)。 大富豪が妻の死を忘れるために世界の美女を集めてはハレムを作る話と予備知識を持って観てしまうと、ものの見事にノック・アウトされてしまいます。そのために集めた女優も中にはそこそこにネーム・ヴァリューがある人もいますが、ほとんど脱ぎもないというのはちょっと致命的。お話はもちろんわけが分からない代物なんですから、せめてそれぐらいのサービスはして欲しかったな。あとこの監督は日本びいきだということでやたら日本文化(というかなぜかパチンコ屋)がモチーフにされてますけど、けっきょくは日本という国は雨が降るみたいにしょっちゅう地震がおきるところだということに落ち着きそうです。これってもちろんジョークですよね…
[ビデオ(字幕)] 3点(2016-11-06 22:50:46)
48.  ピエロがお前を嘲笑う 《ネタバレ》 
この程度で“驚愕のラスト”なんてコピーはほんと使ってほしくないですよ。誰が観たってこれは『ファイトクラブ』のハッカー版で、とくに終盤の第一の落ちまでの持って行き方は『ファイトクラブ』臭がとっても濃厚です。あそこで終わらせちゃったら“驚愕のラスト”にならないので無理やりに第二の落ちを付けましたって感じがプンプンします。でも観てる方としては「へー、そうなんだ」程度の感想しかわいてこないという現実を真摯に受け止めるべきでしょう。 主役の坊や以外の三人がまたちっともハッカーらしくないというのは困りますねえ。地下鉄の車輌内にたむろする仮面の連中でサイバー空間を表現するというのはこの映画で唯一の褒めどころかもしれませんが、別に彼らがハッカー集団じゃなくても良くね?、という疑問は消えないんですよね。ストーリー構成もけっこう雑というか無理があり、落ちていた入館証を使ってユーロポールに侵入というところは思わず絶句させられました。 ハリウッドでリメイクということらしいですが、よっぽど彼の地もネタ切れみたいですね。でも腕の良い脚本家と監督が組めば、ひょっとしたら傑作になる素質はあるのかもしれません(そんなわけないか)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2016-10-04 21:54:19)
49.  ミケランジェロ・プロジェクト 《ネタバレ》 
「ナチスから名画を奪還せよ!」とくればどうしても自分には『大列車作戦』ということになるんですが、実話の映画化だそうで、なるほどこういうことも米軍はやっていたんだな、と納得しました。監督はジョージ・クルーニーですけど、『グッドナイト&グッドラック』なんかもそうでしたけど非常に淡々とした撮り方で、これはもう映画作家としての彼の持ち味でしょうね。でも心なしか監督としての力量はついてきているみたいです。ちなみにラストに登場する30年後のクルーニーを演じているのは彼の父親ニック・クルーニーです。これはちょっとしたシャレですよね。 現代美術を全く理解できないヒトラーやゲーリングの命でピカソの作品なんかが火炎放射器で燃やされるシーンはショッキングで心が痛みます。またソ連もスターリンの指令で美術品を略奪していたとは初めて知りました。スターリンに美術趣味があったわけがなく、これはきっと倍賞金代わりのつもりだったんでしょう。 第二次大戦のお話ですけど、直接の戦闘シーンはほぼ皆無です。それなのに軍事考証はかなりのハイレベルなのでびっくりしました。クルーニーたち“モニュメンツ・メン”が鹵獲したキューベルワーゲンをずっと乗り回しているところは楽しいですし、背景を走っているだけの車輌や飛行場に置かれた航空機までも憎いぐらいの凝りようです。ジョージ・クルーニーにこんな拘りがあったとは意外でしたが、“神は細部に宿る”と言いますし、戦争映画ではここ大事なんですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-08-24 20:45:57)
50.  プラーグの大学生(1913) 《ネタバレ》 
本作は、世界初のドッペルゲンガー映画ということになるのでしょうか。金貨10万枚で自分の分身を悪魔に売り渡してしまった貧乏大学生の悲劇です。100年以上前のサイレント映画だと侮ってはいけません、技術的に暗いシーンが撮れなかった頃ですけど、ドイツ映画のお家芸になる表現主義の萌芽は確実に見て取れます。同じ俳優が同映像にふたりともきちんと撮られているのは今では誰も感心する様な事ではないですけど、当時の人はさぞや驚かされたことでしょうね。分身が勝手に行動し始めて主人公を苦しめるわけなんですが、悪魔や分身の目的がなんだか判らないと言うのもなんか不条理で気味が悪いです。難点と言うことになると、主人公のパウル・ヴェゲナーがあまりにごつくていかついところと、伯爵令嬢の容姿があまりに…なことでしょうね。セリフが無いサイレント時代ですから、見た目は大事ですよね(笑)。 このお話しは1930年代までほぼ10年ごとに三回も映像化されたそうで、その頃のドイツ人はドッペルゲンガーが大好きだったみたいです。逆に第二次大戦後はまったくリメイクされなくなったのはどうしてなんでしょうか。ワイマール共和国時代の不安定だったドイツ人の精神状態が反映されていたのかもしれません。
[ビデオ(字幕)] 7点(2016-06-08 22:37:21)
51.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
スパイというか対テロ活動がテーマなのに劇中で銃の発砲は一回もない、登場人物が誰も死なないし殺されないというある意味変わった作品です。それでいて緊張感が溢れるストーリーテリングは、監督は無名ながらけっこういい腕してるとお見受けいたします。最近ジョン・ル・カレ原作小説の映画化で秀作が続いていますが、あの超地味なル・カレのスパイ小説が欧米では再評価されてきているのでしょうか、いまやすっかり忘れられた存在となったハッタリ屋フレデリック・フォーサイスとは好対照です。とくに映画の前半はこの先どういう展開になるんだろうとハラハラさせられどおしで、これもフィリップ・シーモア・ホフマンの好演のなせる業でしょう。これが彼の遺作とは、ハリウッド映画界にとっても実に痛い損失です。ラストの彼がタクシーの運ちゃんに化けるシークエンスでは、彼の見せる怒りと憔悴が入り交じった表情は70年代のマーロン・ブランドを思い起こさせてくれました。もし長生きしていたら、きっとマーロン・ブランドを超える名優にまで進化していたんじゃないかと思うと、残念でなりません。 最後まで判らなかったのは、“誰よりも狙われた男”とは誰のことだったのかということで、シーモア・ホフマンが演じるギュンターのことなんでしょうか?なんか違う気がしますけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-02 21:29:54)
52.  グランド・ブダペスト・ホテル
造りこまれた画面と箱庭のようなセット、そしてまるで人形劇の様なストーリーテリングはいつも通りのウエス・アンダーソン節ですが、たぶん本作が彼の映画スタイルの完成形なんでしょうね。けっこう単純なストーリー展開と思いきやセリフや引用される詩は凝りまくっていて、もうテイストはヨーロッパ映画です。アンダーソン映画と言えば主演はビル・マーレイというのが今までの相場でしたが、こうやって観るとレイフ・ファインズも彼の独特の作風にはピッタリな役者ですねえ。 まあこの映画は細かいことは言わずに豪華出演俳優たちのアンサンブルを愉しむのが正解でしょう。ジェフ・ゴールドブラムやハーヴェイ・カイテルなんて観ている間は彼らとは全然気がつきませんでした。そして女優陣、間違いなくアンダーソンはハリウッドいちの鳥ガラ女優マニアだと確信いたしました(笑)
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-17 23:39:30)
53.  未来は今 《ネタバレ》 
コーエン兄弟のフィルモグラフィの中でおそらく1・2を争う低評価なおかつ最高の製作費をかけて大コケした作品ですけど、再見してみるとそんなに悪くない映画だと改めて思いました。悪徳経営者が無能なように見える人物をトップに据えてわざと企業価値を下げて私欲を肥やすというお話し自体は『メジャー・リーグ』そのまんまなんですが、まるでテリー・ギリアムが撮ったかの様な造りこまれた世界観はなかなかのものです。ティム・ロビンスが最初に配属させれる地下の郵便室は、たしかに『未来世紀ブラジル』を彷彿させてくれました。でも、あの“ブルー・レター”の伏線でラストの落とし所がだいたい想像つきましたが、そのオチがあまりにも強引過ぎるのでいくらファンタジーとはいえ鼻白んでしまいます。だいたいコーエン兄弟がハート・ウォーミングな映画を撮ったことがもう驚天動地なわけで、ちょっと彼らも血迷ってたとしか言いようがありません(笑) この映画のネタはもちろんフラフープですが、ラストにはフリスビーも出てきます(フラフープを開発した会社が後年フリスビーを初めて世に出したというのは事実だそうです)。『ビッグ・リボウスキ』でもタンブル・ウィードが出てきますが、コーエン兄弟ってほんと丸くて回転するものが好きですねえ、この性癖を精神分析してみたら面白いでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2016-01-09 22:53:17)(良:1票)
54.  おとなのけんか 《ネタバレ》 
金物屋の店主、いわゆる“意識が高い”系のその妻、シニカルなエリート弁護士、投資コンサルタントをしているその妻、といういかにもニューヨーカーといった風情の登場人物たち、数いる芸達者の中からそれぞれにピッタリの俳優たちをキャスティング出来たのが大成功でしょう。プロットを見ただけでお話しの展開はだいたい読めるわけですけど、劇中の彼らの“人生最悪の時間”と上映時間をピッタリとシンクロさせているのも舞台劇の映像化としてはシンプルですが効果的、もっともこのケンカを見せられる方としてはこの上映時間が正直限界でしょう。ケイト・ウィンスレットのゲロ吐きとスコッチの酒盛りがストーリー展開上のターニング・ポイントになっていますが、四人が夫婦関係を離れてバラバラの口論になってゆくのは良く練られた演出ですね。面白いのは、ジョン・C・ライリー以外の三人が大事にしているもの(スマホ・画集・バッグ)がそれぞれ非常事態に陥るところで、そこで彼女らの人間的本性がむき出しになってしまいます。でもライリーだけにはそんな執着するモノがなく、逆に秘蔵のスコッチやら葉巻を皆に分け与えるところが面白い。まあもっとも、それによってさらに事態が悪化しちゃうんですけどね。ラストでカメラが屋外に出ると、地面では死んだと思われていたハムスターが動き回り、遠景では息子たちが仲直りしているというのは実にシャレてました。 昔の淫行事件のせいで逮捕されちゃうので合衆国に入国できないポランスキーがNYが舞台の映画を撮るとは予想外でいたけど、なるほどこういう小品なら十分可能なわけですね、わずかな屋外シーンだけはカメラマンを派遣して撮影すればよいわけですし。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-11 23:51:46)(良:1票)
55.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
ドタバタ・コメディー+謎解きミステリーというプロットはなかなか斬新だったと思います。きわどい下ネタと人種ネタは拒否反応がある人も多いでしょうが、すいません私“黒いダグ”には心底大笑いしてしまいました。フィル・スチュ・アランのキャラもキレまくってます。いちばん悪そうなフィルが教師と言うのは強烈な皮肉ですよね。マイク・タイソンが出てきたのはびっくりでしたが、このネタでⅡまで引っ張るとは思いもよりませんでした。可笑しかったのはMr.チャウで、だってグラサンを外したら不祥事でバッシングを受けてすっかり干されてしまったあのお笑いタレントにそっくりなんですもの。でもこいつが実はシリーズ最重要のキー・パーソンだったとは、Part.1では想像できませんでしたね。ネタがヤリ過ぎ状態になったりタッチがちょっと変わってくる『国境を越える』や『最後の反省会』と比べると、やはりこの第一作が笑いのバランスが取れていていちばん愉しめるんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-05-28 20:56:46)
56.  ラッキーナンバー7 《ネタバレ》 
『ラッキーナンバー7』という邦題をつけた配給会社のセンスはある意味で凄い、普通なら『ラッキーナンバー11』じゃないかな? 冗談はさておき、本作はゼロ年代を代表する“キャストがムダに豪華”な一篇じゃないでしょうか。監督はともかく、プロデューサーの腕はかなりのもんだったということでしょう。でも脚本が酷すぎでしょう。冒頭のブルース・ウィリスのムダなおしゃべりでグッドキャットとスレヴンが何者なのかはもろバレで、これでは後半盛り上がる訳がありません。敵対する組織のボス同士が通りをはさんで向かい合ったビルの最上階に立てこもっているというプロットにしても、これは何かの伏線かと思えば全然違って、これはギャグのつもりだったのかと脚本家の意図に首を捻らされます。「カンサス・シティー・シャッフル」にしても何が言いたいんだか不明でしたし、単なる脚本家の独りよがりみたいでした。 まあとにかく、出演俳優陣の皆さまご苦労様でした(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2015-04-03 20:01:36)
57.  ボーン・アイデンティティー 《ネタバレ》 
このシリーズは始めから三部作で撮る計画だったので、一作ごとに過不足なくアクションが詰め込まれているから私は好きです。ジェイソン・ボーンのアイデンティティに拘った本作では、殺し屋とボーンの対決に的を絞って謎はほとんど残してるので次作も観たいという観客の欲求を狩りたてるような上手い終わり方でした。 マット・デイモンにアクションさせるというキャスティングも絶妙です。セガールのようなプロもどきの格闘達人じゃないので絶妙なカメラワークとカット割りで大胆に肉弾アクションを構成していて、実にこれが説得力ある画になっているんです。ボーンがあまり銃を使わないところも渋い。でも送り込まれる殺し屋は意外と弱くて、クライヴ・オーウェンの呆気ない最期にはちょっと唖然でした。カーアクションも他の二作に比べるとおとなしめでしたが、ミニという車の特性を最大限に活かした撮り方ですね。 それにしてもCIAという組織の悪辣ぶり、自分たちはラングレーの本部から動かず、スイスやフランスの警察をまるで岡っ引きみたいにこき使うって、どこまで実態を反映してるのか判りませんが凄いですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-03-01 20:02:31)(良:1票)
58.  ブラック・ダリア 《ネタバレ》 
これはデ・パルマとジェームズ・エルロイ両方のファンを失望させたとしか言いようがないですね。聞くところによると、予算の関係かルーマニアでロケした映像にCGで厚化粧して撮ったのがこの映画のLAなんだそうですが、そこまで苦労というか手間暇かけた結果がこれではちょっと悲しくなっちゃいます。 そもそも、デ・パルマがこの映画を撮る意義が私には理解できない(もちろん生活のためでしょうが、それを言っちゃあ身も蓋もない)。彼らしい映像美はどこにもなくただやけに煙った様な黄色っぽい色調の映像が続くだけ、唯一デ・パルマらしさが感じられたのは懐かしのウィリアム・フィンレイにアーロン・エッカートが襲われるシーンしかありませんでした。 ヒラリー・スワンクはまさかCGは使ってないでしょうがコテコテメイクで彼女としては精一杯の妖艶さを出してますが、ストーリー上の事とはいえあのスカ・ヨハから男を奪うなんて観ていて白けてしまいます。それにせっかくスカ・ヨハ使ってんだから思い切って脱がせるぐらいしてみろよ、デ・パルマさん!(それにしても、ほんとに脱ぎそうで脱がない女優だ、スカ・ヨハは)
[CS・衛星(字幕)] 4点(2014-06-04 20:50:29)
59.  16ブロック 《ネタバレ》 
別にそれが悪いとは言わないけれど、もうどこから観ても『ガントレット』への現代版オマージュです。『ガントレット』では長距離移送だったのを眼と鼻の先までの護送に置き換え、セクシー美女な証人をちょっとおかしな黒人に変更するなどけっこう捻りを効かせているのは上手な脚本です。くたびれきった刑事のB・ウィリスはなかなか味がありますが、考えてみると彼が演じてきた刑事のキャラはJ・マクレーンをはじめエリートでもキレ者でもない場合が多いので、あまり新鮮味は感じませんでした。『ダイ・ハード』も4まで来ちゃったし、そろそろ刑事役は打ち止めにした方がいいんじゃないでしょうか。 展開はまあスピィーディーでよろしいのですが、なんというか眼と鼻の先なのに目的地にたどり着けないというサスペンス感が乏しいのは残念です。もちろん私にはNYに土地勘などありませんけど、映像を観てる限りではとても遠回りしている様な感じでした。この距離は、東京で言うと新宿警察署から新宿御苑までという感じでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-08 20:48:36)(良:1票)
60.  愛についてのキンゼイ・レポート 《ネタバレ》 
近親者がまだ生存している人の伝記映画は撮るのが難しいですね。キンゼイ研究所はまるで乱交クラブみたいで、やっぱ相当な変人だったことは確かです。『ビューティフル・マインド』ほどじゃないけど、この映画のキンゼイ博士はこれでもかなり美化されていると言う指摘もあるそうです。でも、ドキュメンタリーや記録映画とは違って、伝記ものは本質的には実在人物をテーマにしたフィクションなのであり、俳優の演技とドラマの内容で評価すべきものでしょう。その観点からはあまり成功したとは言い難いですね。 しかし史実通りなんでしょうけど、キンゼイ博士の調査手法は統計学的には意義があったんでしょうか?支援していた大学の学長が「彼のレポートは大学の宣伝になった」と図らずも言うシーンもありましたが、結局マスコミを騒がせたけど実は学問的にはあまり価値がなかったとほのめかしている様に感じました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2012-11-21 18:31:26)
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