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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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341.  映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 《ネタバレ》 
リニューアルされてからのドラえもん映画は何本か見ているが、過去作のリメイクではない作品を見たのはこれが初めて。ジブリ出身という高橋敦史監督自ら担当した脚本はよくできていて、いつもならタイムマシンで10万年前にタイムスリップするところをタイムベルトというその場で時間だけ移動する道具を用いることで、今回の冒険の重要な要素であるタイムトラベルを活かすことに成功していて、この手の展開にありがちな時間軸に関する矛盾も極力回避されていて、純粋にタイムトラベルSFとしてなかなかよくできていて面白い。また、演出にもいつもより躍動感が感じられていたのも良かった。氷漬けにされたドラえもんが出てきて「魔界大冒険」のようなパターンかと思わせておいて、ミスリードだったりするところはひねりが効いているし、擬態能力を持つ敵の登場も今まであまりなかったことで、新鮮味があるし、その敵がドラえもんに擬態する展開はけっこうスリリングで、思わず見入ってしまった。クライマックスに出てくるブリザーガが「もののけ姫」のダイダラボッチのようであるなど、ところどころにジブリっぽさが出ている部分もあるが、そこはやはりジブリにいた人が監督なのでということで気にはならなかった。むしろこのクライマックスのブリザーガとの対決もなかなか見ごたえがあり、スペクタクルとしての見せ方もうまく、このあたりがきっかけで高橋監督が今月から始まったゴジラのテレビアニメシリーズの監督に抜擢されたのかなとも思う。南極を映画の舞台にという構想は生前の藤子・F・不二雄の構想にもあったらしく、今回、それをオリジナル作品で実現した形になるのだが、南極の描き方が美しく、壮大さやロマンも感じられるものになっていて、それをうまく「ドラえもん」に落とし込んでいて、オリジナルでもじゅうぶんに面白い映画が作れることへの証明になっている。もちろん、藤子・F・不二雄の描く「ドラえもん」とは少し違うかもしれないけど、確実に意思は受け継がれていると感じることができた。そう感じられただけでも、初めて見る今のドラえもん映画のオリジナル作品に本作を選んだ価値はあったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2021-04-11 15:36:54)
342.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 
見る前は正直もっと退屈するかもと思っていたが、意外に最初からすんなりと入ることができ、最後まで退屈することなく見ることができた。学校を舞台にした生徒たちの群像劇ということもあってか、見ていて「櫻の園」(1990年)を思い出したが、本作で描かれる高校生の日常はよりリアルで切実に感じる部分がありながらも、一方でどこかまったりとした青春映画という感じがあり、そのバランスも良い。このタイトルだとバレー部を辞める桐島を中心に話が進むのが普通だと思うのだが、当の桐島が一度も登場せず、退部の理由も結局明らかにされないまま終わるのはかなり斬新なプロットで、もうこれだけで本作は後世に残りそうな感じがする映画になっていると思う。もちろんそれだけではなく、登場する生徒たちが本当にどこにでもいそうな感じがするので、生徒たちそれぞれにさっきも書いたようにリアルさや切実さが感じられるのが本作の魅力になっているのではないだろうか。(生徒たちのなにかダラダラした感じも逆にリアリティを感じさせる。)同じ出来事を視点を変えて何度も描くという手法も映画ではよくある手法だが、やはり効果的に使われているし、やはりこういうのを映画というのだとあらためて思う。クライマックス、屋上でゾンビ映画の撮影をしている映画部の前に桐島を探しにきたバレー部が現れ、ひと悶着起こるところでバックに吹奏楽部が演奏するワーグナー「ローエングリン」が被さるのがとても印象的で、その後のラスト近くの菊池(東出昌大)と前田(神木隆之介)のやりとりがすごく良く、思わず、自分がこのくらいの年齢の頃は前田のような現実を見た考え方はできてなかったよなと妙に懐かしくなってウルっときてしまった。確かに見る人を選ぶ万人受けは難しい評価も分かれる映画だと思うが、見る前の不安が嘘のように面白かったし、見てよかったと思える映画だった。それに見終わって「鉄男」やロメロの「ゾンビ」に少し興味がわいた。
[DVD(邦画)] 7点(2021-01-25 00:21:52)
343.  クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!! 《ネタバレ》 
浦沢義雄が脚本に参加した今回はかすかべ防衛隊がメインで、彼らがソースの健の作る焼きそばを食べるためにB級グルメカーニバルに行く途中で出会った女性・しょうがの紅子から秘伝の焼きそばソースが入ったつぼを託されたことで思いがけない大冒険が始まるというストーリーで、泣かせようとかテーマを深く掘り下げようといったものがほとんどなく、ひたすら笑いに徹しているのがこの脚本家らしくて潔く、純粋に何も考えずに笑えて楽しめる映画になっているのが良いし、それにかすかべ防衛隊の面々の個性もよく出ていて、とくにマサオくんが今回はフィーチャーされていて、自分がビスケットを持っていることを言い出せずにウジウジしている姿などは見ていてつい笑ってしまう。でも、そんなマサオくんでもそのビスケットをみんなに出すところや、ネネちゃんを助けようとするシーンなどカッコいいところを見せるという部分もちゃんと描かれていてただの泣き虫おにぎりではないマサオくんの魅力というものもしっかり伝わってきて、そのあたりはいかにも「クレヨンしんちゃん」らしいところだと思う。しんのすけたちを追う刺客の一人である力士・横綱フォアグラ錦からリュックの中身を聞かれてしんのすけが答えた言葉はそういう気持ちをいつまでも持ちづづけることが大事ということを教えてくれている気がするし、今回のテーマになっている食・料理にしても、食事を楽しくすればどんな料理でもおいしく食べられるということを説いていて、たとえ笑いに徹していても作品としてのメッセージはちゃんと持っている、やはり「クレヨンしんちゃん」は一筋縄では行かない魅力があると感じるし、やはりそんな「クレヨンしんちゃん」が自分は好きだとあらためて思うことができた。それにしてもかすかべ防衛隊は今回、最後までソースの健の焼きそばが食べたい一心で行動しているわけだが、登場するそのソースの健の焼きそばが本当にすごくおいしそうで、見終わった後思わず焼きそばが食べたくなってしまった。挿入歌の「焼きそばの歌」も食欲をそそる。
[DVD(邦画)] 7点(2020-09-12 23:37:03)
344.  クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃 《ネタバレ》 
「翔んで埼玉」を見たら「クレヨンしんちゃん」が見たくなって本作を見た。劇団ひとりが脚本に参加していて夢をテーマにしているが、野原一家だけでなく、本作に登場するレギュラーの登場人物全員が同じ夢を見るという出だしがもう不気味で、悪夢を見始めてからはホラー度も思ったより高く、子供が見たら確かにトラウマものかもと思ってしまった。もちろんそんな怖いだけではなく、軸となるのは幼稚園に転入してきた今回のヒロイン サキとしんのすけたちかすかべ防衛隊の友情物語で、最初は横暴で不愛想だったサキが彼らとかかわることによって変わっていく様子が王道的にオーソドックスに描かれていて、本作のドラマ的な見どころのひとつとなっているが、その中でもネネちゃんとの関係が丁寧に描かれているのが良い。もちろん、友情だけでなく、家族愛も描かれていてサキのトラウマの原因が母親の研究中の事故死にあると分かってからのクライマックスでみさえがサキの夢の中に入り、説得を試みる展開もみさえが子供のことを本当に思っているのが分かるし、親はそうあるべきだというみさえの思いもよく伝わってきて、このシーンのみさえに本当に感情移入してしまった。だからこそそういった自分の思いをサキに必死に伝えようとするみさえの姿はやっぱり感動的だ。この友情の絆と家族の絆を両立してきちんと描けるところが「クレヨンしんちゃん」の良さで、好きなところでもある。バカバカしいけど、それだけではない良さがある、それが「クレヨンしんちゃん」の最大の魅力ではないかとあらためて思った。そしてこれが劇場版では最後の出演になったひろし役の藤原啓治さん、テレビアニメが始まった小学生の頃からひろしの声といえば藤原啓治さんだったので今年若くして亡くなられてしまったのは本当に残念で惜しい。こうやって見ていても亡くなったという気がしないし、今も信じられない。それから、大和田獏の登場シーンで第一声が「久美子ー!どこ行った!」というのも本当は笑えるところなのだが、今になって見るとすごく切なく感じてしまってとても笑えなかった。あらためて藤原啓治さんと岡江久美子さんのご冥福をお祈りします。
[DVD(邦画)] 7点(2020-09-05 19:21:04)(良:1票)
345.  翔んで埼玉 《ネタバレ》 
かなり話題になった映画でちょっと気にもなっていたが、舞台になった地域以外の人は楽しめない云々の評価もあり、見るか否かを迷っていたが、実際見てみるとそこは気にすることなく、思っていた以上に楽しめた。最初から最後までテンションが高く、見ていて非常にバカバカしいのだが、大筋のつくりや出演している俳優たちの演技は総じて真面目であり、それが面白さにつながっているし、バカバカしさの中にも差別や偏見といった社会的なテーマも含んでいると感じる部分もあるように思う。それはともかく、いちばん盛り上がったのはやはり埼玉と千葉の川をはさんだにらみ合い。時代劇の合戦シーンを思わせる雰囲気になっているが、やっていることはそれぞれの出身有名人の写真を出し合うというバカバカしさでそのギャップが面白い。麗(ガクト)が草加せんべいの踏み絵をさせられるシーンも純粋にパロディとして面白く、つい笑ってしまう。ガクトが学生役というのは普通に考えたら違和感があるのだが、これだけぶっ飛んだ設定だからかまったく気にならずに見れたし、逆に見ているうちにだんだんとはまり役のように思えてくる。麗と生徒会長である男子生徒・百美の同性愛も描かれているのだが、百美を演じているのが二階堂ふみというのはさすがに同性愛として見るのは違和感があるのではと思っていたが、原作が昔再放送のアニメをよく見ていた「パタリロ!」と同じ人ということで、マライヒとバンコランを思い出したが、そのおかげかとくに違和感もなく見ることができた。描かれる話をラジオで聞いている狂言回しの家族(ブラザー・トム、麻生久美子、島崎遥香)のやりとりも面白く、またこのパートがあることによってこの話をこの家族と一緒に客観視できるつくりになっているが、この三人のなかでぱるる演じる娘が最後のほうまで結納に間に合うことだけを考えているのは製作側も映画で描かれる話がどうでもいいようなことだと分かっていたんだろうと思う。その家族の最後の会話を見ていて、自分自身にとって春日部、いや埼玉といえば「クレヨンしんちゃん」のイメージがあまりにも強いことに気づかされた。テレビドラマチックな映画で、とくに映画的な何かがあるわけではないが、最初にも書いたようにじゅうぶん楽しめたし、純粋に面白かったと思える映画だった。それからエンドロールのはなわの歌も映画の内容にストレートに合わせた曲になっていて、そこまできっちり楽しめる仕様なのも良い。なにか久しぶりに「映画はエンドロールまでが本編」というのを実感した気がする。
[DVD(邦画)] 7点(2020-08-29 23:54:29)(良:1票)
346.  映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊 《ネタバレ》 
「のび太の大魔境」のリメイク版。オリジナルはとにかくジャイアンがかっこよかった映画なのだが、今作でもジャイアンの良さがよく描かれていて、あらためてジャイアン、普段はガキ大将だけどやっぱ良い奴だよなあと思わずにはいられないし、やっぱりそんなジャイアンが好きだ。今まで見た旧作のリメイク版の中ではメインの新キャラの投入や脚本独自の新解釈などはなく、かなり忠実なリメイク作品となっているが、旧作で忘れている部分も多くそういった部分でも楽しめた。終盤でピンチに陥った時、ペコ(クンタック王子)が5人を残して一人で敵に立ち向かっていってそれをジャイアンがいてもたってもいられなくなり後を追い、ほかのメンバーもペコのところへ集まるまでのシーンを挿入歌(ジャイアン役の木村昴が歌っているが、声がキレイ。)のもと台詞なしで描いているのがまさに映画を意識した演出になっていて良いし、子供が主に見る映画だからといって子供だましにはしないという八鍬新之助監督(自分と同い年の人が手がけていることに時代の流れを感じてしまう。)の熱意を感じられた。10人の外国人の真相とその結末は今見ると無限ループに陥ってしまうような展開で、ちょっと怖さも感じてしまうが、むしろそういうことをあえて描いているのも藤子・F・不二雄らしいところかもしれない。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-04-24 22:17:10)
347.  黒部の太陽 《ネタバレ》 
長年見たい映画の一本だった本作をようやく見れたのがまず嬉しい。黒部ダムのトンネル工事を描いた三船と裕次郎の共同プロデュース、初共演の大作映画で、二人の本作にかける思いはじゅうぶん伝わってくるし、上映時間の長さ(3時間超え)やキャストの多さからしてもこれぞ超大作という映画になっている。内容的には正直あまり期待していなかったのだけど、(リアルタイムで映画館で見たという母親は「画面が暗いだけだった。」と言っていた。)見る前の予想よりははるかに面白かったし、時間の長さもあまり気にならずに引き込まれることができたのは良かったと思う。裕次郎が映画館だけで見てもらいたいと言っていた映画なのだけど、確かに工事現場の天井が崩れて大水がくるシーンなどはすごい迫力だし、メインとなる破水帯との戦いもサスペンスフルに描かれていて見ごたえじゅうぶんで、まさに映画館で見る映画とはこういうのを言うのだという感じで、その言葉にも納得。工事と並行して描かれるドラマとしては裕次郎演じる岩岡と父親(辰巳柳太郎)の確執や、三船演じる北川の娘(日色ともゑ)が白血病にかかってしまうエピソードが描かれていて、二つともこの手の映画にはありがちなサブエピソードだと思うものの、岩岡と父親のエピソードは、辰巳柳太郎の味わい深い演技も相まって印象に残り、これがいいアクセントになって厚みを加えていて良かったし、終盤、工事終了直後に娘の訃報を知らされた北川が悲しみを押し殺して工事関係者に感謝のスピーチをするのは素直にカッコイイと思えた。寺尾聰の俳優デビュー作とのことだが、デビュー作にしていきなり早くも実の父である宇野重吉と親子役で共演しているのがなんだか微笑ましい。熊井啓監督と言えばメッセージ性の強い社会派監督で、こういうスター同士の共演を売りにした大作映画とは縁遠い印象だが、どちらかと言えば本作では職人監督に徹している感じが強く、(社会派の側面がまったくないわけじゃないと思うけど。)監督としての器用さを感じられたことが新鮮だった。
[DVD(邦画)] 7点(2020-01-03 00:39:34)
348.  戦艦大和 《ネタバレ》 
「男たちの大和」などで参考文献としてクレジットされている吉田満の「戦艦大和ノ最期」を映画化した新東宝の映画。戦後八年という時期に製作されていて、大和を扱った映画としてはおそらくこれが最初の作品になるのだろう。実際に大和の副長だった人物が関わっていて、それだけで重みを感じるし、艦内の様子や雰囲気などもリアルに再現できているのではと想像できる。前半は出撃前の乗組員たちの人間模様を描いた群像劇になっているが、やはりそれも大和を扱った後年のほかの作品では意外とあまり見ないような感じで、少し違う印象を残している。それぞれのエピソードを深く掘り下げているわけではないのだが、やはり胸に迫るものがある。とくに、アメリカ出身の乗組員がいたことには驚かされた。彼の境遇を考えるとなにかやりきれない気持ちになってしまうのだが、彼にかけられる「たまたま生まれた場所がそうだっただけ」という言葉に救いを感じる。出航シーンなどの乗組員たちの落ち着いてどこか達観したような様子も実際はこうだったのかもと思えるもので、かえってリアルだ。大和のセットなどは明らかに書割と分かる部分もあって、今から見るとしょぼいの一言なのだが、後半の沈没に至るまでの特撮はけっこうがんばっているように感じた。この後半では、前半で乗組員たちの人間模様をたっぷりと見ていたおかげで、彼ら(とくに学徒兵を中心に。)がいかに死んでいったかが丹念に描写されている分、やはり悲壮感を感じずにはいられない。全体としてはドキュメンタリータッチの印象が強いものの、やはり、ドラマとしてよく出来ているからこそこの後半の壮絶さが活きているのだと感じることができる。製作当時(同時期には「原爆の子」なども作られていた。)は、大和の資料も少なかったと聞くが、その中で作られた本作はそれだけで意味がある作品だと思うし、やはり、原作者である吉田満(実際に大和に乗っていた人で、本作に登場する吉村少尉のモデル。)はじめ、本作に関わった全員に大和の悲劇を後世に伝えようという気持ちがあったことがひしひしと伝わってくる。今から見れば地味な映画かもしれないが、やはり、歴史的に考えると貴重な一本だ。
[DVD(邦画)] 7点(2019-11-23 17:58:29)(良:1票)
349.  木枯し紋次郎 関わりござんせん 《ネタバレ》 
中島貞夫監督による菅原文太主演の映画「木枯し紋次郎」シリーズ第2作。中村敦夫のテレビシリーズで映像化していなかったエピソードを描いていた前作に対し、オリジナル脚本となっているらしい本作では、紋次郎(菅原文太)と生き別れの姉(市原悦子)の再会を軸にしたストーリーとなっている。この市原悦子扮する姉なのだが、これがいかにも市原悦子という感じのキャラクターになっていてすごくハマっていて、とても印象に残るし、また、そんな市原悦子が演じるからこそ、逆にこの姉の悲しみや哀れみが演じる市原悦子の演技から感じ取れるのがよかった。紋次郎と知り合ったもう一人の男(田中邦衛)とのエピソードもうまく絡めてあって、ドラマとして面白く、個人的には前作より良かったと思う。冒頭からなにか虚無的な雰囲気が漂っていて、それだけで紋次郎の孤独さが伝わってくるのだが、最後に紋次郎が斬った敵の一言が、それをさらに強調してそのまま終わるというのがなんともいえない余韻を残していて、良い。文太紋次郎はこれで終わりなのだが、後年、菅原文太がテレビシリーズを手掛けていた市川崑監督の映画に何本か出ているのは偶然かもしれないが興味深く、市川監督の映画で菅原文太と中村敦夫の共演見たかったとつい思ってしまった。それから、実現しなかった菅原文太と市原悦子の「東京家族」も本作を見たらどんな映画になっていただろうとも考えてしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2019-09-08 23:40:00)
350.  人生劇場 飛車角 《ネタバレ》 
以前に永島敏行主演の同じ原作の映画は見ているが、やはり飛車角を主人公にしている本作のほうが面白いし、東映がその後、任侠映画で一世を風靡することになるその原点の映画であることにも感慨深さを感じる。沢島忠監督は錦之助や美空ひばり主演の明るい時代劇の印象が強いので、見る前はどうかなと思う部分もあったが、こういう題材でもそつなくこなしていて安心して見ていられる。本作から既にのちのパターンは出来上がっている感じだが、東映最初の任侠映画であることもあってか、まだその色は全面には出ず、どちらかと言えば文芸メロドラマのような感じ(沢島監督もメロドラマのつもりでやっていたと語っている。)で、東映任侠映画を見慣れていると、物足りなさも多少あるかもしれないが、その分、見やすさもあり、また格調の高い作品に仕上がっている。飛車角を演じる鶴田浩二はもちろんカッコイイのだが、月形龍之助演じる吉良常がそれを上回る存在感を放っており、カッコよさも飛車角以上で、この前見た「組織暴力」での悪役も印象的だったが、一線を退いた老客という設定が晩年の月形龍之助本人と被るところもあるのか、この映画の吉良常に月形龍之助というのはピッタリな気がした。宮川(高倉健)がおとよ(佐久間良子)に無理やり抱き着くシーンでは宮川を演じるのが、まだ本格的にブレイクする前の高倉健というので、その後の高倉健のイメージからすると少し違和感を感じてしまうのは仕方のないところ。その宮川が単身殴り込んで殺されるという展開だが、高倉健が任侠映画でこういう役回りなのは逆に新鮮だった。で、この映画の一番の見どころは既に書かれている方もおられる通り、ラストシーン、思わず、ええ、ここで終わり・・・と思ってしまったが、止めるおとよを振り切って宮川の仇討に向かう飛車角をラストシーンにすることで、余韻がすごく残るし、沢島監督の言葉どおりに、ああ、なるほど、これはメロドラマだなと改めて感じることができる。一応、続編も見るつもりだが、あまりに素晴らしいラストだっただけに、果たしてどうか。いずれにせよ本作はこれから始まる東映の新しい時代の到来を告げるのにふさわしい傑作と言える一本だったことは間違いない。
[DVD(邦画)] 7点(2019-06-28 00:54:22)(良:1票)
351.  森と湖のまつり 《ネタバレ》 
かなり久しぶりに見る内田吐夢監督の映画で、しかも現代劇は初めてだったのだが、アイヌ民族の理想と現実、そして運命というものを真っ向から描いた社会派映画の力作になっていて、かなり見ごたえのある映画だった。自分が純血のアイヌであることに誇りを持っている主人公の青年 一太郎(高倉健)と、アイヌであることを隠して生きてきた家の息子 猛(三国連太郎)という二人の男が登場するが、それぞれの立場や考え方もよく分かり、見ていてつらいものがあるし、テーマとしてはやっぱり重みがあるのだが、同時にやはり考えさせられるものがある。東京からやってきた女流画家(香川京子)に一太郎の姉(藤里まゆみ)が過去を打ち明ける回想シーンも、アイヌの人々の宿命や悲しみといったものが丁寧に描かれていて、ここにも内田監督の本作に込めたメッセージ性の高さを感じることができた。純血のアイヌと信じていた一太郎が先生(加藤嘉)から実は混血だと聞かされるのは衝撃的だし、その時の先生がアイヌは滅びゆく運命だと言うのもアイヌの宿命の重さを感じずにはいられなかった。クライマックスは一太郎と猛の対決が描かれているが、祭りの歌と踊りをカットバックに描いたこのクライマックスの対決はアイヌの誇りや葛藤といった本作で描かれたドラマが集約されていると感じると同時にどこかもの悲しく映った。先生に真実を告げられても信じようとしなかった一太郎が猛にも同じことを言われ、すべてを悟ったように舟を漕ぎ出すラストシーンの余韻がものすごく、思わず一太郎はこのあとどうなってしまったのだろうと考えてしまった。一太郎を演じる高倉健はまだデビュー間もない頃で、見ていてすごく若々しく、初々しく見えるのがちょっと新鮮だった。また、高倉健といえば北海道など北国を舞台にした映画に出ているイメージが世間一般にも強いと思うのだが、ひょっとしたら本作が高倉健が出演した最初の北海道が舞台の映画なのかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2019-06-22 17:55:48)
352.  青天の霹靂 《ネタバレ》 
劇団ひとりが自らの小説を原作に共同脚本と初監督を手掛けて映画化した作品と聞いてまた話題作りの映画なのだろうなあとタカをくくってまったく期待しないで見たのだが、これが予想を裏切る良い映画でビックリ。ストーリー的には人生に絶望した男が自分が生まれる前の過去にタイムスリップし、そこで自分の両親となる男女と出会い、今まで自分の知らなかった秘密を知っていくというシンプルでオーソドックスなものだが、あまり大きな話にせず、欲張らずにあくまでシンプルにまとめているのは好感が持てるし、お笑いタレントの初監督作らしからぬ安定感があり、やや唐突に感じる部分もあるのだが、とくに違和感を感じることもなく安心して見ることができた。主人公のマジシャン・晴夫は大泉洋が演じているが、やはりはまり役だったと思う。晴夫が胎盤剥離で入院した自分の母親となる悦子(柴咲コウ)に生まれてくる子供の未来を語るシーンは思わず泣かされてしまった。それに、子供を産めば命を失うリスクがある中で、それでも子供を産みたいという悦子のわが子を思う気持ちや母としての強さにもすごく感動してしまった。監督である劇団ひとり自身も晴夫の父親となるマジシャン役で出演しているが、主演ではないことにより、一歩引いた感があって前に出すぎていないのが良い。この父親である正太郎が、息子であることを隠し、ペペと名乗る晴夫とコンビを組むという展開が面白く、この二人のコンビぶりも良かった。それにしても、お笑いタレントが初監督作品で良作といえるものを作るのはまれだと思うのだが、間違いなく本作は良作で、言い過ぎになるかもしれないが、劇団ひとりには才能がじゅうぶんあると感じた。もともと嫌いというわけではない芸能人なのだが、監督としての次回作があればまた見たいと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2019-04-13 15:34:00)
353.  木更津キャッツアイ ワールドシリーズ 《ネタバレ》 
劇場版第2作にして完結編となる本作。前作「日本シリーズ」が、テレビドラマの劇場版にありがちなお祭り的な内容だったのに対して、今回はそういった部分はあまりなく、ストーリー的にはこのころの邦画でよく作られていた「黄泉がえり」系で、ついに死んでしまったぶっさん(岡田准一)が現世に帰ってきて、という筋立てだが、やはりぶっさんがただ死んで物語が完結するよりはこういうほうがこのシリーズらしいし、バンビ(櫻井翔)がぶっさんの「それを作れば彼が来る」という声を聞いたところから始まる「フィールド・オブ・ドリームス」そのまんまのような展開もこのシリーズらしく、(元ネタもちゃんと明かしている。)見ていて思わず笑ってしまう。本作は連ドラシリーズや「日本シリーズ」に比べればゆっくりとした普通のペースで進行し、むしろぶっさんが本格的に登場するまでが長いとさえ感じるのだが、見終わって考えてみれば、クライマックスのキャッツとぶっさんの別れをより印象的に見せるためだったのかもと思えてくる。回想で描かれるいまわの際のぶっさんと周囲の人々の中でただ一人彼を看取った父親(小日向文世)のやりとり、連ドラシリーズからずっとこの二人の微妙な関係を見てきたからこそここのシーンは来るものがあり、感動的だ。そしてそれはよみがえったぶっさんが父親にだけ見えない理由にもなっているというのが切ない。ぶっさん死んで三年がたち、バンビらほかのキャッツのメンバーも少し大人になっている。でも、死んでしまったぶっさんはあの時の仲間とワイワイやっていたころのままというズレが結果的に別れにつながるというのがリアルで、大切な人が死んでしまっても生きてる者はそれを乗り越えて今を一生懸命に生きなければならない、前に進んでいかなければならない、若い頃の仲間とのどんな楽しい日々でもいつかは必ず終わるという、ありきたりだが重要で道徳的なメッセージが心に残る。そして、これこそがクドカンがシリーズの最後に言いたかったことではないだろうかと感じるし、これを以って本当に「木更津キャッツアイ」の物語はキレイに完結したと思う。最初に連ドラ第1話を見た時にはとっつきにくい印象が強かったのだが、最後まで見て本当に良い作品に出会えたと思えたことが素直に嬉しい。それともう一つ、今まではメインの登場人物たちが草野球チームに所属している設定ながら、野球自体にはそれほどスポットが当たってなかった気がするのだが、本作では野球にもしっかりスポットがあてられていて、そのあたりにも最後であることを感じさせている。
[DVD(邦画)] 7点(2019-03-02 18:33:14)
354.  二百三高地 《ネタバレ》 
日露戦争の旅順攻略を描いた東映の大作映画。どちらかと言えば再現ドラマに終始している印象が強いが、これがすごくよくできていて、日本が最後に勝った戦争がけっして圧勝ではなく、多大な犠牲を払ってようやく勝てたというのがよく分かる内容で、戦争の全体像もつかみやすい。戦闘シーンも迫力じゅうぶんで、中野照慶監督率いる東宝のチームが担当した特撮(中野監督の特撮、かなり久しぶりに見るけど、やっぱこの人は派手な爆発シーンがよく似合う。)も含めて見ごたえがあった。そのひたすら続く戦闘シーンは決して娯楽的に描かれているわけではなく、戦場の惨状や悲惨さをこれでもかと言わんばかりに描写し、戦争の意味を問いかけてくる構成はさすがにこのころの戦争映画らしいつくり。ドラマ部分はやっぱり深みが足らない感じなのだが、狂言回し的存在のあおい輝彦演じる親ロシアの教師が従軍して戦っているうちにロシアを完全に敵視し始めるのはけっこうリアリティがあるし、二人の息子をこの戦争で失った乃木希典(仲代達矢)の悲しみを静かに表現する演出も良かった。それになんといっても新沼謙治演じる豆腐屋の息子の逞しさが印象的。終結後、明治天皇(三船敏郎)に報告をしていた乃木がこの戦争で散った兵士たちのことを思って、次第に抑えきれなくなって号泣するのはさすがに違和感がすごいのだが、このラストシーンが三船と仲代という60年代の黒澤明監督の映画ではおなじみの二人の共演シーンだったのは嬉しく、その意味でこのラストシーンはとても印象に残る。三時間と長尺な作品だが、多少の中だるみ感はあるものの、それほど長さは感じずに見ることができた。ただ、やはり、前半部分終了時に主題歌である「防人の詩」を画面を暗転させて延々歌詞テロップ付きで流しているのは意味が分からず、ひいてしまった。さだまさしもこの歌も嫌いではないが、普通にすべて終わったあとエンディングで初めて流すだけで良かったのではないかと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2019-01-04 16:19:35)
355.  風雲児たち 蘭学革命(れぼりゅうし)篇<TVM> 《ネタバレ》 
みなもと太郎の歴史ギャグ漫画(未読)をドラマ化した三谷幸喜脚本による今年のNHK正月時代劇。前野良沢と杉田玄白による解体新書執筆のエピソードを描いていて、「黒井戸殺し」同様に「真田丸」の出演者が多い(遠藤憲一に至っては「真田丸」の出演者の中で唯一「黒井戸殺し」にも本作にも出てる。)のだが、原作がギャグ漫画ということもあってか、三谷幸喜らしさは「真田丸」よりも出ていたと思う。冒頭のテロップを読み上げる有働由美子のナレーションからして「真田丸」のセルフパロディっぽいのだが、そこで「これは大河ドラマではない。よって時代考証は大雑把である。」と断りを入れた上で「真田丸」とは違った軽めのテイストを強めた作風になっているのが面白い(フルヘッヘンドのくだりなんて大河でやったら暴動が起きそうなレベル。)し、それでいて、志は同じながらも翻訳に対する考え方の違いから良沢と玄白が対立、決裂し、約20年後に和解するまでが丁寧に描かれており、そのあたりドラマとしての見ごたえもしっかりあったのは良かった。のちに歴史に名を遺すことになる人物たちがチラリと登場しているのも、本作が長大な原作のほんの一部分を描いただけであるというのを実感できる。ただ、そういう人物が登場するたびにわざわざナレーションによる解説入るのはちょっとうざったく感じなくもないが。「真田丸」も「黒井戸殺し」も面白かったのだが、やはり三谷幸喜作品はこういう軽めでサクッと見られる作品のほうが好きかもしれない。
[地上波(邦画)] 7点(2018-12-31 17:58:12)(良:1票)
356.  今度は愛妻家 《ネタバレ》 
「世界の中心で、愛をさけぶ」など若者が主役の恋愛映画を手掛けることの多い行定勲監督が一転して結婚10年を迎えた中年夫婦(豊川悦司、薬師丸ひろ子)を描いた作品。行定監督は成瀬巳喜男監督のファンということで、トヨエツ演じる夫のダメ男ぶりはどことなく森雅之あたりが演じていそうな感じはあるし、妻が旅行に出かけると言い出して真っ先に自分の食事の心配をするあたりもなんとなく「めし」を思い出してしまった。ほかにも成瀬作品から影響を受けた部分があるのかもしれない。序盤はコメディタッチで描かれていて、この夫婦の会話も見ていて笑えるのだが、登場人物たちのそんな会話の中にのちの伏線を張っているのもうまいし、最初からよく見ていればこれはたぶんこういうオチなんだろうなと分かるような構成で、妻の死に関する説明も早い段階で成されるのだが、だからこそ切なく、妻に先立たれた夫にがんばれと声をかけたくなってしまう。だから映画としては倦怠期の夫婦の話というよりも、妻に先立たれた男の再生までの話なんだが、それをしっかりドラマとして魅せる脚本、そしてなにより主演のトヨエツと薬師丸ひろ子の演技のおかげですっかり引き込まれ、最後まで見入ってしまい、思わずジーンときてしまった。中でも写真家である夫が庭先で妻の写真を撮るシーンがとくに切なく、そこでのやりとりが一年前の沖縄旅行の時の夫婦の最期のやりとりとまったく同じというのも泣ける。行定監督の映画は何本か見ているが、自分的にはとくにこれという映画はなかったように思うけど、この映画は今まで見た行定監督の映画とは違うものが感じられるものになっているような気がした。劇中で二人が口ずさむ「夢の中へ」の使い方もすごく良かった。さっきも書いたように主演の二人ははまり役なのだが、妻を演じている薬師丸ひろ子はとても可愛らしく、魅力的に撮られていて、アイドル時代の彼女のファンだったという行定監督だが、そんな自分も薬師丸ひろ子の代表作になるような映画を撮ってみたいというのがよく分かり、そしてそれはじゅうぶん果たせていると思う。
[DVD(邦画)] 7点(2018-12-29 18:27:15)(良:1票)
357.  黒井戸殺し<TVM> 《ネタバレ》 
「名探偵ポワロ」シリーズを三谷幸喜の脚色、野村萬斎の主演で舞台を日本に置き換えてドラマ化したシリーズの第2作。前作の「オリエント急行殺人事件」は見ていない(本放送録画してたのに見る前にうっかり消してしまった。こういうのけっこう多い。泣。)ので、2作目となる本作がシリーズ初見だったのだが、ポワロに相当する探偵 勝呂武尊を演じる野村萬斎が吹き替え版でデビッド・スーシェ演じるポワロの声を担当する熊倉一雄のようなしゃべり方だったりするのは三谷幸喜の吹き替えマニアぶりがうかがえるし、癖の強いうざめのキャラクターが野村萬斎に合っていると思う。(でも、人を選ぶようなキャラクターで、好き嫌いは分かれそうなのは確か。ちなみに僕はこれで良かったと思う。)殺人事件の捜査を依頼された勝呂の相棒となる柴を演じる大泉洋をはじめ、「真田丸」の出演者が多く登場しているのも三谷幸喜らしく、中でも柴と袴田(藤井隆)が、事件の被害者である禄助(遠藤憲一)のいる部屋の扉をけ破るシーンのやりとりは「真田丸」でもこんなシーンを見た覚えがあるのでつい笑ってしまった。原作の「アクロイド殺し」は小説を読んだこともなければ、ほかの映像化作品も見たことがない状態だったせいか、ストーリー自体もなかなか面白かったし、三谷幸喜の推理ものというと「古畑任三郎」なのだが、それとは違って、倒叙ものではないと思い込んでいただけに、事件の語り部にもなっている柴が犯人で、結局倒叙ものに近かったわけだが、途中で薄々そう思いながらも、見事にしてやられた感じ。また、勝呂が犯人である柴に対してとる行動も彼に対する温情からなのだろうが、この手の推理ものとしては珍しいというか、初めて見た感じで驚かされた。(エンドロール直前の勝呂の苦悩に満ちた表情が印象的。)原作ものミステリーのためか、三谷作品としては笑いの部分はいつもより控えめに感じるが、柴と少々すっとぼけた感じの彼の姉(斉藤由貴)のやりとりなど微笑ましく、とくに味噌で作ったカレーのシーンは、ほかの三谷作品にもあるようなネタで笑いをこらえきれなかった。でも、よく見ていくと、この何気ないカレーのシーンがこの姉に関する重大な伏線になっているのは巧さを感じる。原作の映像化の権利があるので大変かもしれないが、このシリーズの3作目も見てみたい。1作目の「オリエント急行殺人事件」も機会があれば見てみよう。
[地上波(邦画)] 7点(2018-11-26 01:10:04)(良:1票)
358.  Love Letter(1995) 《ネタバレ》 
岩井俊二監督の劇場映画デビュー作とのことだが、冒頭の小樽の雪景色から既に美しく、この時点で映像的にはかなり引き込まれた。ほかにもカーテンから漏れる光など思わず息をのむ美しさで、かなり久しぶりに見た岩井監督の映画だったのだが、やはりこの監督の映画はその圧倒的な映像の美しさだけでも魅せるものがあると感じる。脚本的にも面白く、タイトルからストレートな恋愛ものを想像していたのだが、そうではなく、ヒロイン 渡辺博子(中山美穂)が死んだ恋人に宛てて出した手紙の返事が来るというミステリアスな展開で、そこから博子と彼女の死んだ恋人と同姓同名のもう一人のヒロインである藤井樹(中山美穂の二役)の文通が始まるというのが面白い。実は博子の恋人だった藤井樹(男)(柏原崇司)は中学時代に藤井樹(女)(酒井美紀)と三年間クラスメイトだったことが分かったあたりから始まる二人の中学時代の回想シーンからようやくラブストーリーらしくなるが、そこまでベタベタした感じはせずに見れたのは良かったし、むしろこの中学時代のエピソードのほうが現代のパートよりも話としては印象に残ってしまったくらい。藤井樹(男)が図書カードに自分の名前を我先にと書くのはちょっと「耳をすませば」を思い出してしまうが、でもそれがラストシーンにつながっているのも巧い。それにもとはと言えば博子が死んだ恋人に出した手紙から始まっているが、それは博子と藤井樹(女)の文通を経てここにつながるんだと思うとなんと巧いタイトルだろう。博子が死んだ恋人の友人(豊川悦司)に誘われて行った慰霊登山で恋人の死んだ山に向かって叫ぶシーンも一見引いてしまうようなシーンだが、恋人のことを一生懸命吹っ切れようとする博子の気持ちが伝わってきて切なかった。文通の中にも登場し、ここでも博子が叫ぶ「お元気ですか。私は元気です。」という言葉は何度も出てくるせいかとても印象に残った。流行語になっていてもおかしくないが、本作は日本よりも韓国でヒットしたとのことで、韓国ではだれでも知ってる日本語なのだとか。見る前に思ったよりも笑えるシーンが多かったのも良かった。突っ込みどころも多い映画ではあるが、岩井監督らしい独特の雰囲気も良く、間違いなくこの時代を代表するような佳作だと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2018-11-04 17:29:55)
359.  トラック野郎 度胸一番星 《ネタバレ》 
シリーズ第5作。相変わらず無茶苦茶なストーリーながらも、原発建設によって故郷の村を追われたジョーズ(千葉真一)があらくれ者になって仲間(ジョーズ軍団)を引き連れて帰ってくるシーンは今になって見ると考えさせられるものがあるし、桃さん(菅原文太)の故郷もダムに沈んでいることを思うとこのシリーズはただ無茶苦茶でバカな笑いだけでなくこういうシリアスな部分にも毎回ではないが触れるところにも魅力があるのだと思う。今回もいつものごとく分教場の教師であるマドンナ(この設定にどうしても「二十四の瞳」を思い浮べずにはいられない。) 水名子(片平なぎさ)に惚れ、振られてしまう桃さんだが、それは桃さんの勘違いで水名子も桃さんに魅かれていて、桃さんが水名子にプロポーズされるというのが新鮮で、5作目にしてようやく恋が実って本当に良かったねと思っていると水名子が豪雨の中、土石流に飲み込まれて命を落とすというまさかの結末があまりにも悲しくて切なくてつらい。これは失恋ではなく完全に悲恋だ。「先生、なんで死んじゃったんだよ。」という教え子たちの悲痛な言葉も胸を打つ。桃さんが今回、逮捕されてしまったジョナサン(愛川欽也)の代わりに魚をクライマックスで運ぶことになるのだが、その助手席に水名子が子供たちと学芸会のために準備した狸の焼き物を乗せているのは、一見何の意味もないように思えるのだが、桃さんがまだ水名子への思いを断ち切れていないというのが分かってまた切ない。今回ばかりは本当に桃さんに結婚してほしかった。それでも、ジョーズらトラック仲間の協力を得ながら警察の追跡をかわしつつ、ジョナサンのためにトラックを猛スピードで走らせる桃さんはやっぱりカッコよく、この悲恋もすぐに乗り越えられるだろうと思えてくる。「爆走一番星」の太宰治(「生まれてすいません」)に続いて室生犀星の「故郷は遠くにありて思うもの」という言葉が出てくるが、非常に美しい言葉だ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-10-27 23:55:55)
360.  トラック野郎 突撃一番星 《ネタバレ》 
シリーズ第7作。マンネリ化を避けるためか第三のトラック野郎としてせんだみつお演じる三番星が新レギュラーとして登場したり、桃さん(菅原文太)の今回のライバル(川谷拓三)がトラック運転手でなかったり、桃さんがマドンナ(原田美枝子)の上司(樹木希林)に惚れられたり、ジョナサン(愛川欽也)がストリッパーに恋をしたりといろいろもりだくさんな今回。途中から少しダレ気味ではあるものの、相変わらず桃さんはバカだけど熱くて男気があり、それを補う魅力がじゅうぶん。丸一日捜しても見つからなかったイルカをライバルと一緒に探しにいき、発見するのもそうだが、台風で遭難し重傷を負ったマドンナの恋人であるライバルを自分のトラックに乗せて病院へ向かうクライマックスにはたとえ相手が惚れた女の恋人であろうともなんとか彼を助けたいという桃さんの当たり前の優しさを感じられる。病院のたらい回し問題がコミカルさを交えて描かれているが、現実はもちろんこんなものじゃないよなという気になってしまった。以前にも桃さんとジョナサンにこけにされる役柄で出演していた金子信雄が山守を思わせる医者役で再び出演しているが、桃さんとのやりとりが広能と山守のそれを思わせていて思わず笑ってしまった。でも、そんな中でも騒ぐ医者に対して桃さんが放つ患者はもっと苦しんでいるんだみたいな言葉はちょっと重みも感じることができたのが良かった。やはりここぞというときにびしっと決めてくれる桃さんは良いなあ。そのほか、三番星が社長になったと父親(辰巳柳太郎)にウソの手紙を送り、それを信じた父親が会社にやってくるというエピソードの結末もなかなか良かった。今回はシリーズの中でもあまり評判のよくない回みたいなんだけど、確かに散漫な部分や、もう少し掘り下げても良かったと思う部分もあって物足りなさがないといえばうそになるが、それでもいわれているほど面白くないという感じはしなかった。最後にもう少し書かせてもらうと、ライバルを演じる川谷拓三は「望郷一番星」のチョイ役からかなりの出世。樹木希林はつい四日ほど前にも「あん」で見たばかりだったので登場したときにあまりの若さに驚いた。(すぐに慣れたけど。)晩年の味のある演技も良いが、やっぱりこういうコミカルな樹木希林も好きだなぁ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-10-13 15:43:57)
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