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あにやん‍🌈さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2517
性別
ホームページ http://coco.to/author/aniyan_otakoji
自己紹介 レビューを相当サボってしまってるの、単に面倒になっちゃってるからなんですよね。トシのせいか、色々とメンド臭くなっちゃって。
映画自体、コロナ禍以降そんなに見に行かなくなったのだけど、それでも年に70~80本は見てるワケで(でも今年は50本行かないかな?)、レビュー書けよ自分、って思ってる、でもなんか書かない、みたいな。
これからは今までよりも短文でレビューを上げてゆきたいな、と思う次第であります・・・微妙だけど。.

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1.  花とアリス殺人事件 《ネタバレ》 
 アリスと花がそこにいる、そこに生きてます。  走って、笑って、踊って、泣いて。   彼女達の時間は無駄だらけ。目的はあっても遠回り、脇道に逸れて、後戻りして、結局は自分達の力でなんとかなった訳でもなくて。それでも、大切でかけがえのないその時間。  その「無駄」を拾ってゆくのがロトスコープによるアニメーション。仕草、動作に生まれる「無駄な動き」は記号化、様式化を拒絶してキャラクターに命を与えます。  もちろん、蒼井優、鈴木杏の「声の存在感」も重要で。これもまたアニメ的記号化、様式化された声優的表現とは全く別の在り方。   アニメーションになる事で『花とアリス』のガチャガチャした印象に比べるとかなりすっきり純化されています。大勢のカメオ出演によってお祭り映画と化していた前作の賑やかさは消え、花とアリスの物語としての純度がぐっと向上して。そして岩井俊二的味わいも幾分スポイルされている気もしますが、私としてはそれは肯定的に捉えてます。  一方で人や場所、エピソードなど『花とアリス』と繋がっている部分はちゃんと存在していて楽しめます。ちょっとアリスも花もキャラが違う感じもしますけど。   真っ白な無から全ての世界を創造してゆくアニメーションは本来、自由なものです。こういう自由なアニメ映画がもっともっと作られていいと思うんです。そして海外の色々なアニメ作品ももっともっと公開されていいと。今の日本のアニメ事情はどうも狭苦しく息苦しくて。
[映画館(邦画)] 10点(2015-03-15 23:39:25)
2.  告白(2010) 《ネタバレ》 
限りなく美しき中二病映画。およそ陰惨で鬱にしかならないような物語を、さすがの中島監督、とても魅力的な人々の映画として彩ってしまいます。互いに人を見下す人間達が織り成す、復讐心、偏見、いじめ、悪意の物語。いろんな負の感情を持った、人として成長できていない人々(数少ない大人の登場人物も含めて)を憎悪すべき対象とはせず、弱く儚い者として繊細な映像で表現してゆきます。連鎖してゆく悲劇が、流される血が、不気味な風景が、人の弱さをポジティブに見つめたアートのように組みあがって、むしろ私にとっては心地良いものにすら感じられました。それは個人的に、今年は父を亡くし、愛猫を亡くし、遺産相続で肉親といがみ合いという、負のただ中に生きているがゆえなのかもしれませんが。でも、この映画にそんな心地良さを誰でも、たとえ少しでもどこかしらに感じてしまうんじゃないかと思います。負の快感が全編に散りばめてありますから。受け手に負の感情を気付かせ、そこを肯定的に捉えるこの映画、タッチはとても冷たいのに人には暖かいという不思議な感じ。映像表現1つでモノの価値観をガラリと変えてしまえるんだよ、って中島監督の術中に見事にハマってしまったのでした。【追記】お知り合いや映画にうるさい人達から「これは映画じゃない」という批判をよく聞きましたが、mixiやtwitter、ブログでのお兄ちゃんおねえちゃん達の理屈じゃないウケ方、受け止め方を見ると、もう「映画」が終わって「映画じゃない何か」の時代になってもいいんじゃない?「映画」ってカテゴライズに拘るのはいいとして、それを声高に人に押し付ける意味はないんじゃない?って気もしてきます。好事家向けの美術館保存型な「映画」はどっかに残っていく事でしょうしね。
[映画館(邦画)] 10点(2010-06-05 14:31:51)(良:1票)
3.  パコと魔法の絵本 《ネタバレ》 
従来の映画的概念を徹底的に壊しまくるところから結果的にこれが映画だってところまで持ってゆくという、実はもうヒネりまくってある映画。全部が作り物の映像、舞台演技にカメラ目線、あからさまにここぞとばかりに存在を主張する照明、作り物の中に作り物が入れ子細工状態になっていて、ひたすら見立てで描きながら、いちばん肝心な見立ての部分はCGで実映像化。メーテルの星空、惣流・アスカ・ラングレーの青空、アニメのフィールドから続いてゆく世界・・・。真っ当な映画としての機能はしていないように見えながら、フェイクな映像が作り出すドラマに結局は虜になって、でも、それこそが映画でしょ?って。劇映画の起源はオペラを撮影した事だという説がありますが、この映画はそこから遠く離れたようでもありつつ、原点回帰してもいるようで。映画の定義にうるさく拘れば、これはとても遠いところにある異端だけれど、でも、そんな拘りが本当に意味を、価値を成すものなの?みたいに考えたり。・・・なんてワザとややこしい話に持ってゆかなくても、ココロ、キモチで見られる映画です。出だしこそ、コレで最後まで見られるんかいな、と不安になりますが、毒気を放ちまくるキャラクター達にキモチをシンクロさせてゆき、終わってみれば最初の不安なんて何処かへすっ飛んでしまいます。子供にはちょいとその毒気がキツ過ぎかなぁ、ってカンジもしますが、ファンタジーなんぞは、元々毒気が強いモンだったりしますからね。元の役者のイメージがぶっ飛んでいる状態だったりしますけど、だからこそ、彼ら、彼女らのスゴ味を楽しめるって点でもこれは凄い映画。脱帽。
[映画館(邦画)] 10点(2008-09-13 19:45:57)(良:2票)
4.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
『クレしん』が、親の名を呼び捨てにするという理由でPTAから子供に見せたくないアニメにされた過去がありますが(今のしんのすけは「とーちゃん」「かーちゃん」と呼びます)、この、親にとって安心ブランドなハズの宮崎アニメが親を呼び捨てにする状態を、PTAはどう捉えるでしょうねぇ。さて、最近の宮崎アニメ、ジブリアニメはどうも何がしたいのか判らず、鈴木プロデューサーが前面に出てくるようになってから質的にかなり問題があるんでないの?と思っておりました。今回にしても、最初はいつ『ハウル』的混乱設定とグロに走るかとヒヤヒヤしておりましたが、いやいや、これはいいです。『ゲド』の、いい加減なアニメートばっかりで腕がナマっていたであろう作画スタッフに対して親として責任を取ったような?全編細かく丁寧で、そして気持ちいいアニメの運動に溢れた作画に魅了されました。雄大な海の世界の、生命の営みと荒々しさを、CGではなくひたすら手描きでアニメートさせ、日本製アニメ、ここにあり!と誇らしく宣言しているような。物語でなく世界で作品を語ること、その模索がどうもこれまで迷走していた感があったのですが、今回、とてもシンプルな構造になる事で綺麗に成立したように思います。子供が見て楽しい、それこそが宮崎アニメにとっての最大の栄養だったのではないでしょうか。アタマで考えるのでなくて、目で体験してナンボの映画なので、こんな文章を読むよりも先にご家族で映画館へどうぞ。【追記】さて、公開最初の三連休も終わりということで、ここからは見た人以外は読むべからずな追加。正直なところ、この映画にも大人目線から見える暗喩に溢れている気がします。ネット上では死後の世界説があったりしますが、私の解釈は真逆。誕生までの物語。舞台世界=母胎。海=羊水。ポニョとポニョの妹達=精子。宗介=大人、母になるもの、卵子、親。両親=子供、童心、未熟。血を舐める=受精。ポニョのメタモルフォース=胎内での成長。トンネル=産道。ラストシーン=誕生。ただ、大人の理屈でごちゃごちゃと作品を穢すのは、やっぱりよろしくないと思うんですよね。勝手な解釈とか批判とかするな、って訳ではなくて、だけど、この映画を子供から取り上げるのでなく、子供にあげてください、って。
[映画館(邦画)] 10点(2008-07-19 15:09:24)(良:2票)
5.  アフタースクール 《ネタバレ》 
人のココロのウラオモテ。そんなモノに弄ばれ続けて、だけど見終わって心地よく騙されたぁ!といい気分。いや、正直なところ、激しく騙されてはいないんですよね。自分の中で「この人、そんなに悪くない、あれって絶対○してない」みたいなのがいちいち働いてるんで、どういう動機から動いてるのだろう?ってパズルを、見えて来るそばからアタマの中にどんどん組み立ててゆくようなカンジで、そう来たか!だけどやっぱりそうか!みたいな・・・判りづらいレビューだな、どうも。かなり巧妙に組み立ててあって、インチキくさい、そりゃないでしょ!ってミスリードもなく、だから各キャラクターの辿る道も筋が通っていて、終わってみれば「ああ、ステキな物語だねぇ」ってじんわり感動すらできちゃう。なかなか気持ちいい騙され方ってないのですが、これは秀逸。「なぜにスクール? 学校あんまり物語に絡んでこないじゃん?」ってカンジですが、先生が探偵に投げかけた言葉を思うと、実は学校は小さな社会であるように、社会は大きな学校なのかもしれませんね。
[映画館(邦画)] 10点(2008-06-13 15:47:25)(良:3票)
6.  ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ 《ネタバレ》 
「ええ~?こんな映画に10点~?」という人がほとんどでしょうけれど、見終わってマジで10年に1本あるかないかの大傑作!って思ってしまったんだから仕方ないです(笑)。予告編を見た限りではB級ボンクラアクション映画?って思ってましたが、これがもうど真ん中ストレート真っ当な青春映画だったりして。チェーンソー男は誰にでもいる存在。そこにぶち当たってゆくか、逃げ出すか。実感のない生と甘美な死の二極に囚われた主人公が、人生に折り合いを付けてゆく物語は、誰にでもある苦悩を判りやすく象徴していて、主人公の迷いとは逆に映画の視点には全くブレがありません(絵理は本来死ななければならない筈だったのを必死に死から逃れている状態という事で、主人公とはチェーンソー男の意味するところが違ってきますが)。日本映画には珍しい、きっちり手をかけたカット割りや綺麗な画。メインタイトル部分のカッコいいこと! シネスコ画面いっぱいに飾られた映像の快楽運動が、やがて一編のシンプルで爽やかな青春映画へと昇華されてゆく、この幸福感。登場人物ひとりひとりがみんな愛すべき存在で(特に主人公と寮で同室の、何をやっても中途半端な芸術志向の同級生に強いシンパシーを感じたりして)、見ている間ずっと幸せな気分になれた最高の映画でした。生きてる限り、雪は降るのですなぁ。
[映画館(邦画)] 10点(2008-01-30 01:12:22)(良:3票)
7.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
原作タイトル「時をかける少女」の「かける」は「翔ける」のか「駆ける」のかはたまた「架ける」のか?って解釈は色々できそうですが、今回は見事に「駆けて、翔ける」で勝負に出ました。巻き込まれるように受動的に時をかけていた芳山和子さんと違い、今度のヒロイン真琴は積極的に時を翔けてゆきます。最初はひたすらいたずらに浪費しますが(プリンのために何度も、なんて・・・)、やがて大切なものを守るため、貴重な時間を守るため・・・。若さ、青春、恋、そういう気恥ずかしさを覚えるキーワードが、もう真っ直ぐに突っ走ってスクリーンに叩きつけられ、一度だけの若い日々の時間を大切にしようね、ってメッセージがなんの抵抗もなくストレートに素直に爽やかに、こちらに入ってきます。作画、声、美術、音楽、そして演出の、なんて見事なハーモニー。アニメならではのスピード感と表現の豊かさに溢れ、コミカルで弾んでてパワフルで、そして別離のあとのラストシーンすらもキーワードになっている無限の空を見上げてあくまで前向き。大林監督版のしっとりとした切ない物語とは、同じ原作を起点にしながら全く違った世界になっているのですが(唯一、実験室に入る1カットだけが、大林監督版とそっくりだったりして、オマージュ?って思いました)、私の中で「安易に他を認めてたまるか」くらいに神格化された大林監督版を凌駕してしまうくらいに大好きな映画になりました。最近不幸な生い立ちのアニメ映画を何本か見たので、見事に幸福な成立の仕方をしているこの作品を見て、心が浄化されるようですらありました。
[映画館(邦画)] 10点(2006-08-07 00:05:10)(良:4票)
8.  秋日和 《ネタバレ》 
見ていてこれは小津版のキャンディーズの『微笑がえし』と言うかレベッカの『スーパーガール』なのだぁ!と思いました。ああ、判りづらい喩え・・・。『晩秋』の設定を父娘から母娘に変えて、小津映画オールスターキャストで贈る(杉村春子が登場しないのが残念)セルフパロディ映画状態。トリスバー、LUNA、BAR ARROW等のお馴染みの店、修善寺のホテルの鯉の話、天気の会話等、これまでの小津作品へのリンクがいっぱい。『東京物語』のその後のような設定もあり、これまで脇役として登場していた人々の、それぞれの家庭が描かれたりもして、一応他の映画とは別のキャラクターだけれども、同じキャラクターとして見て下さって結構ですよ、みたいな感じ。なので一つ一つのエピソード、キャラクターのリアクション、台詞が楽しくて嬉しくて、『小津祭り』映画を存分に楽しみました。これまで時代の流れによる家庭の変容を、かなりシビアにシニカルに描いてきた小津監督(カラー時代になってからは少し傾向が変わってきた感じもしますが)が、自作のキャラクター達みんなに優しく平和を与えた、みたいな映画でした。ラストの原節子ひとりぼっちはやっぱり淋しい終わりになってますけど、『晩秋』の笠智衆ほどの重さが感じられないのは、母娘を心配してるんですよ、って人々がいっぱい描かれているからでしょうね。特に岡田茉莉子の存在が大きくて。この映画の彼女は本当に魅力的で、ゆったりと時の流れる小津ワールドに現われた旋風のようなインパクトがありました。それにしても見る順番って大切。諸作を見た上でこの映画を見たからこそ、こんなにもウキウキ楽しめて、だからこの点数を付けちゃうワケで。
[DVD(邦画)] 10点(2006-07-15 01:27:11)
9.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 《ネタバレ》 
『クレヨンしんちゃん』というと元々は青年誌の連載、子供視点から大人の世界をシニカルに捉えた大人向けなマンガだった訳ですが、テレビアニメ化の際に思いっきり子供向けにされてしまったという経緯があって、ヘンなファンタジー路線の初期はひたすら違和感との戦いでした(『クレしん』も『あたしンち』も安易に『ドラえもん』理論で作られてしまったような)。原監督になってからは全くの子供向けからの軌道修正が図られたようで、大人も楽しめる『クレしん』路線は原作に対する回帰を感じさせました。さて、本作は廉ちゃんとおマタのおじさんの美しくて悲しい物語。しんちゃんは脇役気味だし、ひまわりなんか、もう「いたっけ?」くらいに目立たなかったけれど、しんちゃんがいたからこそ、廉ちゃんとおマタのおじさんの物語が輝いた訳で。子供で、今の時代に生きるしんちゃんの、正直な発言が、廉ちゃんの心を開き、おマタのおじさんの本音を引き出してゆくのですから。アニメ、しかも『クレしん』の世界で描かれた、真っ直ぐな「男と女」の物語は、日本映画史に刻まれるべき名画でした。でも、大人も楽しめる路線は結局この作品が極で、その後は原監督が降りて迷走気味、遂にはまた完全子供向けに戻ってしまって、原監督が『タマタマ』から『戦国』まで重ねた努力を無にするつもりか?みたいな感じがしておりますが。
[映画館(邦画)] 10点(2003-12-03 11:10:56)(良:1票)
10.  THE FIRST SLAM DUNK 《ネタバレ》 
 『スラムダンク』ミリしらだったのだけど(『ジャンプ』卒業して49年経つし)とても楽しめた、面白かったわ。   何が良かったって、巧いのよ、原作の人が脚本書いて監督したこの映像作品が。映画の言語よりはマンガの言語、アニメの言語で描かれているのだけれど(多重モノローグたっぷりだし)、時系列を崩した上で再構築して、説明し過ぎずに行間を読ませ、要所要所に情景描写を挟み込んで。映画らしいかどうかなんてどうでもいいくらいには見事な映像作品になってると思うわ。ロン毛の番長風のカレが仲間になってゆく過程はさすがに行間空きすぎてて読み切れなかったけれど。   核になっているリョータのエピソード(原作は彼が主人公ではないのよね?多分あの赤い短髪のガラ悪い兄ちゃんが主人公よね?)が静かに情感豊かに描かれ、交互に進行してゆく試合シーンのダイナミックな映像との差で生まれるコントラストが上手いわ。実のところほぼリョータのお母さんの物語で、それは『スラムダンク』って大きな核からしたらかなりな脇道なのかもしれないけれど。でも多くを語らないあのお母さんの存在感がこの映画を深い、味わいのあるものにしていたわ。   原作ミリしらだったので試合の進行もワクワクと楽しめたし、相手校のあのずーっと表情に変化のないカレが最後に突然号泣するところなんかも上手いわぁ、ってカンジで、つまりこれって井上雄彦って人の才能よね。それだけの才能を持った人が、その才能を発揮した作品っていう。マンガ家さんって凄い才能の人が多いのだけれど(自らの個性と絵と物語で世界を創造するっていう)多くの人の共同作業となる映像製作にまで長けてゆくとなると、もうひれ伏すしかないわ。
[映画館(邦画)] 9点(2022-12-20 15:43:17)(良:2票)
11.  今夜、世界からこの恋が消えても 《ネタバレ》 
 三木孝浩監督3作品連続公開状態なのだけど、同時に3作品それぞれジャンルは全く異なりながら「記録と記憶の三部作」とも言える共通したテーマを持っているのね。   1本目のこの映画は事故の後遺症で眠ると記憶を無くしてしまう女子高生が毎日日記を付けて毎朝読み返すことで過去を知り日々を更新してゆく物語。失われてしまう記憶を記録で補ってゆくの。  そんな彼女に偽りの彼氏ができて、もちろん毎日知らない人からのスタートになるのだけれど、その日々の積み重ねがやがてかけがえのない記録になっていって、だけど・・・。彼の遺志に従って、彼女の親友と彼の姉は日記を改ざんして彼の存在を彼女の記録から全て消して。だけど彼女の中に残る記憶があって・・・。   原作は『50回目のファースト・キス』の設定から発展させた感は否めないの。絵を描くことで事故後の記憶が潜在的に存在しているってあたりなんか特に。毎日記憶を失ってしまうのにそれを教師と親友以外の周囲に秘密にして高校に通えてしまうという無理っぷり、毎朝記録を読む事で現実を受け入れリセット状態から毎日の生活を更新してゆく無茶っぷり、その辺は冒頭からタネ明かしをして物語上の秘密を彼氏の方だけに置く脚本でねじ伏せてる感じもあるわ。   彼女に楽しい記録だけを残すために死にゆく自分の存在の削除を依頼する、親友のために事実を偽る、弟の存在を消す、そして真実を知らされ記憶の中に存在していない彼氏の死に向き合う。それぞれの辛さが切なく胸に迫ってくる物語、でも監督お馴染みのテクニックによって魅力的なロケーションを背景に(江ノ島!湘南!水族館!花火!みたいな)光と影を駆使した、美しくキラキラしたイメージに包まれた、見終って意外なことに爽やかなラブストーリーって印象が残るの。描かれる悲劇すらも甘美なカンジね。これぞザ・三木孝浩!って映画。   福本莉子さんは『映像研には手を出すな!』みたいなぶっ飛んだ役がいい味出してるのだけど『思い、思われ、ふり、ふられ』やこの作品みたいな正統派ヒロインももちろん良いわよね。  でも今回の大きなカナメだったのは親友・泉役の古川琴音さん。二人の恋をずっと支え続けた彼女が実質的な主役みたいな感じで、泉が抱えた重圧、苦しみや痛みを見事に表現していたわ。彼女は脚本に書かれていた以上のものを表現していたと思うの。『十二人の死にたい子どもたち』でも注目したけれどこれからも期待できる役者さんね。   三木孝浩監督の青春映画が好きで毎回期待してしまうのだけど、この映画も三木監督のキラキラを堪能できる、純度の高い作品だったわ。
[映画館(邦画)] 9点(2022-09-08 16:13:56)
12.  フラ・フラダンス 《ネタバレ》 
 主人公の日羽が主体性のない、なかなか「自分」を見せないコなので始まってしばらくの間、映画自体につかみどころのない感じがしたのね。映画との距離がちょっと離れてる感じ。もちろん、そこに意図があるであろう事は判りはしたのだけど。物語が進んで群像劇となる事で映画に芯が生まれて段々と距離が縮まってゆく、加速してゆくようで、やっぱり吉田玲子氏の脚本は巧みなのだわ。  スパリゾートハワイアンズという現実の存在と、そこで架空の少女達がフラガールとなる創作と、そしてちょっとした(でも重要な)ファンタジーとが巧みなバランスで組み上げられた、いい映画だったわ。   5人の新人メンバー1人1人のパーソナルなドラマがあって、一方で震災によって傷ついた世界という現実が反映されていて、そこから一歩前へ踏み出すことの希望が優しく描かれているのね。単なる萌えアニメではなくて、今の日本を生きる人のための、ちょっと前を向いた作品。  直接的な震災被害の描写は極小だし、福島第一原発事故についての言及は全く無かったりもするのだけれど、そこは作品としてのバランス、という事なのでしょうね。  ネットでチラリと読んだ感想の中にお姉さんの死因が判らなかったっていうのがあってアタマ痛くなったケド。いやさすがにそこまでフォローするのも・・・ねぇ。脚本家さんも大変。   『フラガール』『がんばっぺ フラガール!~フクシマに生きる。彼女たちのいま~』と公開時に見てきて、更に今この作品を見た事で、1つの人びとの歴史を見ることが出来た感じがして、単体としての作品以上に時代時代に刻まれてゆく映画というジャンルの存在意義を実感したわ。   一方で5人組の物語ってことでプリキュアに喩えると5人それぞれ何色かしら?って思いながら見てたらクライマックスで映画側がきっちりと答えを出してくれたわ。主人公は当然ピンクでしょ、って思ってたけど、そうね、そうよね、あざとイエローだわ。ちなみにアタシがスキなコはポンコツ紫ね。
[映画館(邦画)] 9点(2021-12-12 22:33:55)
13.  クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 《ネタバレ》 
 今年の『クレしん』映画は今までの中でもベスト級の作品だったと思うわ。   学園ミステリーっていう「らしくない」設定であるにも関わらず『クレしん』映画として、そして娯楽エンターテインメントとして、とても純度の高い作品になっているの。   『クレしん』映画が陥りやすい難点、結局は毎度の「野原一家ファイヤー!」な家族の物語か「かすかべ防衛隊ファイヤー!」な友情の物語に帰結して終わりになるパターンと、最近の作品に顕著だったしんのすけを始めとするレギュラーメンバーがゲストキャラクターの引き立て役に終始しまうパターン。でも今回の映画は両方の要素を拾いつつもそのマンネリなパターンに陥る事を回避しているのね。  今作ではかすかべ防衛隊の5人がメインで、だけど学園に乗り込む事で大量のゲストキャラクターが登場するわ。バリエーション豊かな個性的な面々。脚本はかすかべ防衛隊の個々のメンバーと学園の生徒たちとの繋がりのドラマを多層的に紡いでゆくのね。カスカベ防衛隊で固まってしまう事なくレギュラーの面々とゲストの面々とが有機的に映画を構成してゆくの。それぞれみんなが魅力を持っていて。   ミステリー展開はおふざけでいい加減な作りではなくて「吸ケツ鬼は一体誰なのか」っていう謎と推理とをちゃんと見せてくれるのね(『クレしん』的飛躍の設定が絡む部分はあるにしても)。  そして事件が解決したかと思われた後に続く、最初は蛇足にも思えたかすかべ防衛隊の5人と生徒達が紡いだドラマが開花する感動的なクライマックスの盛り上がりと感動。ミステリー部分が物語の核ではなくて、あの2人こそが、永遠ではないこの一瞬の時が大切だと語る2人こそが今回の映画の核だと判る、『クレヨンしんちゃん』の大切な物語として昇華されるラストシーン。とても巧く美しく書けた脚本だと思うわ。  みさえとひろし(そしてひまわりとシロ)は出番こそ少ないけれど(いつもからすれば極端に少ない、ってレベルね)見事に「起・承・転・結」の要所を締めてみせてるの。   『オトナ帝国』とか『アッパレ戦国』、近作だと『新婚旅行ハリケーン』みたいな「名作だけどコレ子供楽しめてるのかいな?」っていうものとも違って、今回は子供から大人まで『クレヨンしんちゃん』が好きな全ての世代に対応した名作だったわ。
[映画館(邦画)] 9点(2021-08-31 22:15:50)
14.  JUNK HEAD 《ネタバレ》 
 「アニメ」大国日本だけど「アニメーション」全般となると色々と弱いのよね。CGアニメーションにしてもそうだし、ストップモーションアニメーションとなると、最早不毛の地みたいな感じ。日本の長編ストップモーションアニメーション映画って一体どこまで遡るのかしら? サンリオの『くるみ割り人形』(1979年)?  これはそんな日本の、そして世界のアニメーション界に革命をもたらすかもしれない作品ね。何しろライカやアードマンのようなストップモーションアニメーションの大手の作品、何百というスタッフの手と何十億という資金によって創られたモノと比べても、ちっとも遜色のない作品、しっかりと娯楽エンターテインメント作品になっているのだから。最初1人、長編化が決まってからも4人ほどで創られていながら。   グロいのは得意じゃないし、ここに描かれた世界はまるで悪夢のようね。夢に見そうよ。でも、その独特な個性を放ちまくる作品世界にすっかり魅了されたわ。広がる地下世界に棲む、起源を同じにしつつ色々と株わかれしたキモチ悪い生き物たちに触れてゆくうち、段々と親しみを抱いて、最後には愛着も湧いちゃうって、主人公が辿る道と観客が映画に抱く感覚の流れがシンクロしてるカンジね。   世界の造形が凄いの。完全にアタマの中のイメージの映像化をコントロールしきってるように思えるわ。大スケールな画から細部に至るまで独自のセンスで支配されてるの。  そして大切なのは、そこだけに集中してないってコト。パンフ読むと判るのだけど、作品世界はかなりコマゴマと設定されているのね。歴史がどうこう、その世界の成り立ちがどうこう、って。で、日本のアニメってそれを延々と説明しがちなのが大きな欠点だと思うのだけど(それに終始しちゃってるモノも多いわ)、コレはそこにあまり留まらずに物語をちゃんと転がしてゆくのね。物語が面白いの。説明やアクションのために物語が停滞する部分が無いコトはないのだけど、ちゃんと娯楽映画としてのバランス感覚を持ってるわ。   ティム・バートンやヘンリー・セリック、ニック・パーク、ウェス・アンダーソンといったストップモーションアニメーションにプンプンと匂い立つような独自の個性を発揮する作家たち、この堀貴秀という人は彼らに比肩し得る存在だと思うの。凄いモノ見たわ。
[映画館(邦画)] 9点(2021-04-14 22:33:17)(良:2票)
15.  風の電話 《ネタバレ》 
 モトーラちゃんの演技は最初「きついわー」と思ったのね。東日本大震災を題材に、一家でただ一人生き延びてしまった少女を演じるには、ちょっと荷が重すぎるんじゃない?って。  現実としてあの震災はまだまだ生々しい傷をのこしていて、1つの閉じた作品としてパッケージングして昇華してしまうことが正しいとは到底思えないし、モトーラちゃん以外にもお馴染みな顔の役者さん達の作り物なカンジがリアルの重さに対してあまりに無力なんじゃない?とも。   でも、その作り物、創作の中にどんどん沁みこんで侵食してくる現実が境界を曖昧にして創作が現実に対して抗いきれなくなってゆく、そしてカメラはその過程を捉えてゆく感じでとても不思議なモノを見ている感覚になったのね。  入管に囚われたクルド人難民のエピソードなどは、もうその殆どがリアルで、その前で役者はただ与えられた役だけが形骸化されて残っているような状態。その状況を前に創作は果たしてどんな希望を与えられるっていうの?   一人の少女の旅は、今の日本にこびりついたリアルを背景とすることで虚実の狭間を彷徨うの。その世界ではモトーラちゃんの特異な存在感は演技力云々で量ることなど意味がなくなって、こちらはただただ不安定な彼女という存在と時間を共有し、寄り添ってゆくのね。  そして旅の末に辿り着く風の電話は何かを具体的に救済する訳でも、この物語自体に救済をもたらす訳でもないけれど、そこに少しでも思うところ、感じるものがあるとしたら、今はそれだけでも十分なのかもしれないわ。   今のこのニッポンに生きる意味を考える、癒しとか救いとかいう判りやすいコトバとは違うモノを探る、そんな時間をくれる映画だと思うの。
[映画館(邦画)] 9点(2021-04-08 16:28:03)(良:1票)
16.  ラストレター(2020) 《ネタバレ》 
 福山雅治がトヨエツに語りかける疑問「あんたは一体何者なんだ?」。  アタシ、トヨエツは「時の悪魔」みたいな存在だと思ったのね。   「この瞬間が永遠に続けばいい」って想い、それを容赦なく奪い、破壊する時の流れ、その残酷さ。トヨエツは変化をもたらすこと=時間を動かすことで総てを変えてしまって。  それに抗えるのは書くこと。時の流れは止められなくても、この世界に記憶を残し、心を残すことで、その瞬間を留めることはできて。  写真も同じ。そして映画も同じ。   映画に永遠の一瞬を刻む岩井俊二ならでは、なのだと思うわ。ビニール傘を差して立つ二人の夏の少女の写真、あそこに岩井俊二という作家と、広瀬すずと森七菜という女優と、この映画の描くテーマと、この映画の在り様そのものと、そして過去と現在と未来を結ぶ「永遠の一瞬」が収まっているのね。
[映画館(邦画)] 9点(2020-01-20 21:34:03)(良:1票)
17.  さよならくちびる 《ネタバレ》 
 門脇麦と小松菜奈の百合映画なんて、それだけで満点じゃなくて?  なんていう汚れた心にパンチ食らわせながらじんわり癒してくれるような映画だったわ。   険悪なムードで解散へと至るインディーズデュオのハルレオと付き人シマ。ロードムービーのカタチを取りつつ、過去に戻ったり、ファンの姿、ローカルテレビのインタビュー、書きかけの詞なんかをコラージュして、出会いからそこに至るまでのハルレオの姿を浮かび上がらせてゆくのだけれど、この映画、幾つもの矛盾をぶつけてくるの。  全く違うようでよく似ているハルとレオ。儚げだけど強くて、だけどやっぱり弱い二人。頼りないけど頼れるシマ。それぞれがそれぞれを大好きなのに、だからって上手くはいかない、好きなのにどんどん壊れていっちゃう。キビシいようでいて優しい映画。切なくつらいのに、何故か幸せな気持ちになれる映画。   この映画、色々と物語るワリに物語になろうとしないのよね。ハルとレオが出会って間もない頃にハルの家でカレーを食べるシーンでの長回し、その1カットで色んな事が語られるのね。カレーを食べながら泣き出すレオ、頭をハルの肩にもたげ、そのレオの頭にそっと口付けるハル。そこにはふたりのいろんな背景が描かれているわ。でも、それを物語として結実させようとはしないの。3人の最後の晩餐もカレー、そして出発点に戻る、行きて帰りし展開が、だけどそれがきっちり物語として閉じているとは言えないのよね。  ※ここからラストについてのネタバレ※   その、閉じなかったラストシーンについては結構否定的な評価を見かけるのね。台無しって。でも、アタシ的にはアレ、つまり物語としての区切りを付けてないだけだと思うわけ。見た人それぞれに想像するでしょうけれど、アタシはあの後やっぱり解散すると思うのね。でも、少しだけ先送り、もう少しだけ3人の時間があってもいいかな?みたいなキモチ、って。まだ3人にはそうしてもいいだけの時間があるんだもの。何かをハッキリ決めなくちゃならないようなトシになるには、まだもう少し時間がある、そういうコトよね。それが青春、青春映画。
[映画館(邦画)] 9点(2019-06-03 22:17:28)(良:1票)
18.  クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし 《ネタバレ》 
 ひたすらみさえがカッコいいの。カッコいいオンナが出てくる映画が大好きなアタシだけど、この映画はみさえのオンナとしての魅力を再認識させてくれたわ。それは『クレしん』っていうより『百円の恋』の安藤サクラのようなカッコよさ。   予告編見た限りじゃ、パターン化された『クレしん』の毎度の一編のように思えたわ。野原一家ファイヤー!パターンとカスカベ防衛隊ファイヤー!パターンでは今回は前者、海外モノで、誘拐モノで、ジャングルで、列車アクションで、アクティブなゲストヒロインが出てきて、はいはい、みたいな。  でも、そんな毎度の要素を散りばめつつ、今回はみさえの映画として振り切ってみせたことで、これまでになかった魅力に溢れた映画になったと思うのね。   これまでみさえはひたすら母親としての強さを求められてるキャラだったと思うの。そういう描写は過去作にもう沢山あったし、今作にも溢れてるわ。でも、今回は母親である以前に、また妻である以前に、オンナであるコトが描かれてるのね。いつもはネタである嫉妬ネタを、今回はキッチリ真面目に描いてたりして。しんのすけとひまわりの耳を塞がせつつ怒りを爆発させるシーンでの、お尻が破れてパンツ見えてる状態の見た目のカッコ悪さと内面のカッコ良さの対比なんか、味わい深いドラマを感じさせて涙が出たわ。   クライマックスなんか、もう、反則ね。作品情報時点でネタバレしちゃってるので書いちゃうけど、緊迫感を煽るBGMじゃなくてみさえが歌うMISIAの『Everything』が静かに流れる中で、ひろしを救いに爆走するみさえが描かれるのよ。大好きな曲の、その歌詞の内容にぴったり合っているみさえの心情に、もう号泣レベルね(あくまで「レベル」ね。実際にトシ喰ったオカマが映画館で号泣してたら犯罪レベルだわね)。もしかしたら、この映画、『Everything』の歌詞を元に映画作られてない?ってくらいにぴったり。その昇華っぷりったら『雪の華』なんかよりよっぽど見事よ?   しんのすけもひろしもゲストキャラも、今回はみさえを引き立てる存在で(木南晴夏が魅力的に演じていたインディ・ジュンコは安易にいい人にしなかった点が良かったけど)、だけどその割り切りっぷりが『アッパレ!戦国大合戦』以来の号泣名画(※個人の感想です)にしていたと思うわ。  ギャグも散りばめられて子供たちにもウケてたし、これまでのシリーズに存在してた、もはや時代錯誤の昭和ネタ(もうすぐ平成も終わって令和だわよ)とか、謎のミュージカルタイムとか、設定やテーマばかりを重くしちゃったオタク臭いパターンとかが無かった点も良かったわね。   今回は、みさえがいいオンナ、これに尽きるの。
[映画館(邦画)] 9点(2019-04-25 21:00:57)
19.  映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ 《ネタバレ》 
 『プリキュア』の映画。映画をいっぱい見てきてる中でも最も敷居もハードルも高くて、これまで手が出せなかったわ。想像してみてよ、トシ食ったオカマが女児達に囲まれて一体どんな顔して見てられる?  テレビの『プリキュア』は(ニチアサ総じて)これまでなんとなく映ってた的な、見てるってほど見てはいない状態ね。『プリアラ』のあきゆかにはヅカみが感じられて、あきゆか回はわりとしっかと見てたけど。  『HUGプリ』も最初はキャラがキラキラ綺麗な、あとは毎度のプリキュア程度の印象だったのだけど、えみるとルールーが出てきて、その二人がアンバランスなコンビを形成してゆくあたりから注目し始めたのね。抑圧されたプリキュアファンの小学生と敵が送り込んだスパイのアンドロイド。その二人がプリキュアになるに至って、もうのめり込むようになって。   『HUGプリ』は徹底的な自己肯定の物語。その攻めの姿勢は大人が見てびっくり。いじめや差別や固定概念を否定し、ジェンダーフリーを高らかに謳うのね。「女の子だってヒーローになれる!」がキーワードの作品の中で、主人公が言った「男の子だってお姫様になれる!」というセリフ、世の中のどれだけの男の子が救われたことか。今日の放送では遂に男の子のプリキュアが誕生して、その姿勢を更に確固たるモノにしたわ。   映画版は『HUGプリ』と初代の『ふたりはプリキュア』をメインにした作り。歴代プリキュア55人が登場!とは言っても全員が物語に絡んで大混乱、みたいなコトにはなってなくて。過去作のファンには物足りないかもしれないけれど。  オリジナルな物語にはちゃんとドラマがあってメッセージがあって、1つの作品として完結してるのね。テレビシリーズにあるような攻めの姿勢は抑え気味だけれど、新旧プリキュアの競演は感動的。  クライマックス、怒涛の55人プリキュア大競演の盛り上がりは『レディ・プレイヤー1』のクライマックスをも凌駕するわね。心で応援して(応援グッズ、大きいお友達は貰えないのよね)リアルで涙ダダ漏れ。  マシェリ(えみる)とアムール(ルールー)の出番は少なかったけど、あの美しい変身シーンを大きなスクリーンで見られて感激。ルールーのネジネタ笑えたし。  ミデンの世界の間、フルCGになるのだけれど、そこはキャラをゆらゆらと動かし過ぎな気がしたわね。リミテッドな手描きシーンに合わせちゃダメなのかな?   でも、テレビシリーズと併せて、この眩しく煌びやかな世界が東映動画の魔女っ娘モノから変身ヒロインモノに連なる大きな歴史の到達点だと思うと感動もひとしお。『魔法使いサリー』から『HUGっと!プリキュア』までその歴史に立ち会えてる自分って、もしかして幸せなのかも。『プリキュア』のある世界に生まれて良かったわ。   ちなみに平日の昼間に見たので、女児より大きいお友達の方が多くて身の置きどころ無し!ってコトはなかったけど、映画終わって涙目で「プリキュアのパンフレットください」って言うのは最大のチャレンジだったわね・・・
[映画館(邦画)] 9点(2018-12-02 20:27:04)(笑:1票) (良:1票)
20.  若おかみは小学生! 《ネタバレ》 
 交通事故で両親を亡くしたおっこ、でもずっと涙を見せないの。  その気持ちを抑え込んでるのがわかるので泣けて、それが絶対どこかで破裂しちゃうのでしょう、ってわかるので泣けて。そして・・・  おっこが泣かないのは、泣いてしまったら両親の死を認めてしまうことになっちゃうから。でも、そのクライマックスが、あまりに過酷な運命の巡り合わせで、もう。   でも、そんなおっこを包む世界の優しさに癒されて。  おっこが暮らすことになる温泉旅館の人々とお客さんたち、温泉街の人々、学校の友達、そして、おっこにしか見えない幽霊と子鬼。  様々なふれあいを通しておっこが両親の死を受け入れ、乗り越え、成長してゆく姿が描かれるのね。   2人の幽霊は劇中では実際に存在しているのだけれど、おっこのイマジナリーフレンドの象徴で、その姿が見えづらくなる、別れがやってくるというのが、おっこの成長を示していて。それはとても切ないのだけれど・・・   最初はイヤなクラスメイトに思えた大ホテルの令嬢なピンふりも、真面目で精いっぱいに生きていて、おっこに真剣に接してくれる良いコだし、ここに出てくる人々みんなが本当に魅力的。   『のんのんびより ばけーしょん』に続いて脚本はさすがの吉田玲子。  群像の中で人と人との繋がりを、甘いだけでなく、時に厳しく、時に切なく描いてみせるのは彼女の真骨頂と言えるのかも。   蛇足だけど水領がソフトトップを走行中に開けちゃって「!」ってなったのだけど、最近のポルシェって時速50km以下ならオープンできるのね。私が乗ってたクルマとは時代(と価格)が違うわ。    ジブリ的という評価もあるけれど、少なくともおっこはジブリのヒロインよりももう少し現代的でおバカなカンジなのが良いわ。絵柄もエンドロールのイメージボードにはまだジブリ臭があるけれど、実際の映像はジブリとは違った魅力があるし。中盤のショッピングモールなんかはジブリ映画には出て来ない要素でしょうねぇ。ジブリ的なるモノをトレースせず、独自性があるからこそいいの。  色々と模索されている「ジブリの後継」の中ではこの映画のスタッフはかなりいい線を行ってる気がするわ。  ここ数年公開された様々な家族向けのアニメ映画の中でも抜きんでた良質な作品ね。
[映画館(邦画)] 9点(2018-09-28 16:36:27)(良:1票)
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