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1.  用心棒
三船敏郎の魅力、個性的な脇役たち、電光石火の殺陣、効果的な音楽。ストーリー的には王道の娯楽映画ですが、個人的には、人物の立ち振る舞いから宿場町のセットまで、すべてが「美しい」映画という印象が残っています。余談ですが、60年代アメリカの学生運動のパンフレットに、『用心棒』の三船敏郎風のイラストが使われていたのを見たことがあります。この映画の美しさと力強さが世界共通であることを実感して、なんだかうれしくなりました。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2009-02-13 23:30:50)
2.  夜は短し歩けよ乙女 《ネタバレ》 
京都を舞台にした青春映画には独特の雰囲気があるが、その雰囲気が世界観に昇華されているのが本当にスバラシイ。よく知っている風景が続出するだけに、そこで展開される奇想天外な物語とのギャップに完全にやられた。原作未読だが湯浅監督の『四畳半神話体系』は完走済。同じ世界観ではあるけれど、ハチャメチャだった『四畳半』と比べると、非リア充な「先輩」の恋というモチーフが一貫しているぶん、この映画のほうが感情移入もしやすい。とくに、先輩と黒髪の乙女の、さわやかでシンプルなラストは心から「美しい」と思って涙してしまった。こんなところからもわかるように、私もけっこう「先輩」に近い青春を送ってきたわけだが、一緒に飲み会にいるのに結局話しかけられない感じだとか、人知れず彼女との共通項を求めて奮闘してしまう感じとか、イベントにかこつけて近づいてみようとする感じとか、いざ接近してみたらいろいろ恐ろしくなって結局挙動不審になるところとか、いちいちグサグサと来る。結局、本作で一番のスペクタクル場面が、もう一度心を閉ざすか、一歩踏み出すかの先輩の心の葛藤である点も象徴的だ。ある意味、『桐島部活やめるってよ』とは全く正反対のアプローチで、見事に自分を(あんまり戻りたくもないと思っていた)青春時代へと連れ戻し、そして、その「愛おしさ」を再発見させてくれるという意味で、自分にとって大事な作品になった。あと秀逸なのが、時間の設定。一夜で一年という矛盾も、一人一人が生きる時間の相対性を見事に表現している。そう、ある時代の一夜は、1年に相当するだけの濃度と長さをもって経験されるのだ。そして、人の緩いつながりを可視化して「社会」を描いた映画に僕は弱いのだが、そんな僕にストライクな展開も待っていた。細かいことを言えば、序盤のはしご酒や演劇シーンの描写は(わざとだったとしても)面白みに欠ける平板さで、ちょっと退屈だなと感じたし、登場人物ももう少し絞ったほうが90分の物語の「濃度」がもっと凝縮されたようにも思う。でも、かつての(今もか)「四畳半主義者」に捧げるストレートな青春賛歌として、幸福な90分間をありがとー!と叫びたくなる作品である。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-06-08 21:50:17)
3.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
世代的には1980年代ゴジラ世代なんだが、なぜか縁がなくて、ほとんどの作品をちゃんと見た記憶がない。というわけで思い入れも何もなく、何となく見てしまった第一作。正直おどろいた。ゴジラが恐ろしい。怪獣映画をちゃんと見てこなかった人間にとっては、ゴジラなんて、TDLのミッキーマウスばりに、宣伝のためにあちこちで愛想を振りまく着ぐるみのイメージのほうが先行してた。そのゴジラが、人間を「狙って」殺しまくる。女性も子どもも関係なく放射能をまき散らす。そして、そのゴジラを葬れるのは、ゴジラを生んだものと同じ「大量殺戮兵器」しかないというジレンマ。演技や演出には時代を感じる稚拙な点もある。けれど、無差別爆撃と原爆が「記憶」ではなく「体験」として残っていた時代に、こんな映画を作った製作陣はすごい。戦争を「体験」として知っている多くの日本人がこの映画を見て、大ヒットさせたという事実もすごい。僕は、この映画をリアルタイムで見ることはできなかったけど、震災と原発事故を「体験」した2011年のいま初めてみることができたのは、とても意味があることだったと思う。これぞ、真の意味での国民的映画と呼ぶべき作品だ。
[DVD(邦画)] 9点(2011-06-21 14:21:49)
4.  天国と地獄 《ネタバレ》 
冒頭の勘違い誘拐から物語にぐいぐい引き込まれました。緊迫したシーンが続いた前半と比べると、後半は主役の三船敏郎の出番は激減しテンポもダウンしますが、そのぶん「天国」に対する犯人の歪んだ感情がずっしりと重くのしかかります。今見ても、黄金町のシーンは衝撃的です。高度経済成長に取り残された人々の怨念が若い医師を狂わせたのかなと勝手に解釈しています。一級の娯楽作でありながら、日本が「豊かさ」を知り始めた時代の「天国と地獄」を見事に切り取った傑作だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-02-13 23:49:10)(良:1票)
5.  ルパン三世 カリオストロの城
思えば、この映画をはじめて見た時「宮崎駿」なんて名前は知らなかった。ついでだけど、『スター・ウォーズ』をはじめて見た時だって、「ジョージ・ルーカス」なんて名前も知らなかった。そういう先入観というか周辺知識なしに、ただ映画を楽しむことができた幸せ。DVDで改めて鑑賞すれば、「クラリスありえねえ」「あ~顔の造形が・・・」とか「銭形はあんなこと言わないだろ」とか、あれこれ考えちゃったけど、初見の時(たぶん「金曜ロードショー」だった)、夢中になって幸福な2時間を過ごしたことも思い出した。自分にとって、そういう時代と、そういう作品があることが、いまとなっては何だかうれしい。
[DVD(字幕)] 9点(2005-09-01 00:43:17)(良:3票)
6.  誰も知らない(2004)
やられた。自然光や日常会話的な台詞まわしなどの手法が、『ワンダフル・ライフ』のようなファンタジーにはハマっていたけど、この映画のストーリーにはちょっとリアルすぎて前半辛かった。けれども、後半は一気に印象が変わった。これは、単なる子どもを題材にした感傷的な話ではなかった。あの子どもたちの生活のように、この大人の世界の論理の隙間に「子どもの世界」が存在しているということが普遍性を帯びて見えてくる。自分の子ども時代の、些細な喜びとか、残酷さとかの「感覚」を久々に思い出した。それを可能にさせた是枝監督の演出も子どもたちの演技もすごい。前半は、ちょっと「あざといかな」と思った演出も、後半には見事なまでに映画の世界と一体化していた。これはたぶん、演出というよりは、子役たちのリアルな成長なんだろうなあ。あと、YOUのキャスティングもすばらしい。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2005-05-16 01:44:01)(良:1票)
7.  A2
これぞドキュメンタリー映画の醍醐味! 特に、群馬での地域住民とオウム信者の交流を映像として見る事ができたことはすばらしいことだと思います。また、「答え」を提示するのではなく、矛盾しまくりなオウム信者や地域住民の行動や発言をそのまま見せることで、わかりやすい解答に安心するんじゃなくて、考え続けること、試行錯誤することの大事さ、そして想像力を鍛えることの大事さが伝わってきます。その一方で、「A」の主役だった荒木さんが、どこか虚ろなイメージだったのが気がかりです。小さな希望の光のようなものが見える反面、どんどん彼らを追いつめている大状況が恐ろしく感じました。
9点(2004-03-07 13:59:00)(良:1票)
8.  悪は存在しない 《ネタバレ》 
序盤のゆったりした生活描写は正直退屈で睡魔に襲われ「これはハズレだったか」と思ったのですが、グランピング開発の説明会の場面から俄然面白くなりました。「開発者対ジモト」をそれぞれの視点から描くのかな、と思っていたら終盤に物語も表現も一気に抽象度がアップ。「バランスを取ること」や「自然との共生」みたいな語りにビシャッと冷や水を浴びせるような展開にポカーンとするしかない。終幕して場内が明るくなると、ほぼ満席だった観客のみなさんもみんな「え、いま私たち、何を見せられた?!」という表情。その表情を共有できただけでも、映画館でみてよかった〜と思った経験でした。  終わってから振り返ってみれば、序盤からずーーーっと劇中を満たしていた不穏な空気や破綻の予感。濱口作品に共通する登場人物の「作り物」感。素朴で信頼おけるジモトの便利屋が抱える決定的な欠落。東京から来た2人、そしてその2人の立場を相対化する社長とコンサルという凡庸と煩悩の塊のほうに気が取られているあいだに、「自然と共生してる」風の地元民たちが背負ってしまった原罪の数々が浮かび上がる。その結果、村落そのものが侵略者であったことが象徴的に示されたのだと思うけれど、映画タイトルとラスト数分の解釈はいまもぐるぐると頭のなかを回ってる。ただ、その不可解さは決して不愉快なものではなく、日々を生きることを違った角度から考えるような知的なエンタメという感じでした。
[映画館(邦画)] 8点(2024-05-18 08:17:38)
9.  すばらしき世界 《ネタバレ》 
これぞ西川映画と呼べるような、ソリッドだけども多面的な描写が続く。序盤は、役所広司さん演じる三上の社会復帰への奮闘をコメディタッチの描写も含めて描く。下の階のチンピラとの喧嘩やら自動車教習所での悪戦苦闘にはブラックユーモアもたっぷりで苦笑いしながら見てきたのだけれど、後半のあの暴力沙汰から物語がピリリと引き締まり、そもそも「社会復帰とは何か」「まっとうに生きるとは何か」という深みに達していく構成は本当に見事。そのなかで、出てくる登場人物もくせ者ぞろい。身元引き受け人の弁護士夫婦、取材するテレビ局ディレクター、市役所のケースワーカー、スーパーの店主、そして元暴力団の兄貴分まで、みんな「いい人」ではあるんだけれど、でもそれぞれが必死で「まっとうに」生きるためにどこかで三上を突き放している部分を持ってる。「善良」であっても、それぞれの自分勝手な言い分やら事情のうえのことなので、タイミングが悪ければ容易に三上の「敵」にもなるだろうという、そういう危うさを常に感じるのはいい。「無償の善意」などありえないのだ。このあたりの突き放した世界観があるからこそ、一瞬心が通ったと思える瞬間が美しく「すばらしい」。ただ、本作が凄いのは、その「善意の助言」が最後は三村を追い詰めてしまうことだ。その先にあった死は、悲劇というべきなのかどうかはわからないけれど、この「すばらしき世界」の苦みを十分に描いてくれたことは間違いないと思います。余計な部分をそぎ落とした久々の西川節を堪能しました。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-06 09:36:13)
10.  台風クラブ 《ネタバレ》 
今だったら「コンプライアンス」的にはヤバい描写が満載で、正直「引いて」しまう部分もあるのだけれど、1980年代に中学生だった自分としては、その時代・年代の「危うさ」の表現に唸るしかない。冒頭のプールでの「イジメ」にしか見えないシーンやら職員室で女子生徒が襲撃されるシーンは今の感覚ではかなり見るのが辛いし、あれを「ノスタルジック」に「あんな無茶なことしたよな」と見る人とは、たとえ同世代でもたぶん友達にはなれないと思う。ただそんな嫌悪感を抱きながらも、この映画からはどうにも目を離せない。  どっちかというと、自分としては、できたらもう二度と戻りたいとは思わない中学生の感覚を、ここまで生々しく詰め込んだ映画はなかったように思う。人間として自分がどうなってしまうのかわからない、明日になったら「普通」でいられるかどうかわからない(だからベタ歌謡曲の「もしも明日が」の選曲には恐ろしさすら感じる)、そういう危うい感覚に満ち満ちている。なのに、周囲の「大人」はなんの助けにもならないどころか、問題の根っこになるような存在。そんな状況を、一人「真面目に」観察していた三上君の最期。長尺での椅子を積み上げるシーンから中二病爆発の台詞の後の「アレ」は、「個だ、種だ」なんて大きなことを言ってみたり、大人たちに「お前のようにはならない」と宣言してみたところで、その顛末は喜劇にしかならない、という大人なメッセージにも見える。自分の思い出したくない部分をえぐられるような2時間。嫌いだけど目が離せない。やっぱり傑作なんだと思う。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-11-02 07:10:59)
11.  はりぼて 《ネタバレ》 
ドキュメンタリーって面白い、というのを堪能できる100分。地方議会のフツーのおじさん議員たちのキャラ立ちの見事さ。みんな「巨悪」というよりはちょっとした「小悪党」で、政務活動費の不正使用も「そうやって回ってきた」市議会や市役所のなかで「そういうもの」として享受してきたのだろう。その矛盾を突然突かれて動揺してうろたえる様には、人間喜劇のすべてが詰まってる。しかし、物語が「小さな悪」への一方的な追及で終わらない点も本作の優れたところ。長く追及する側だった地方テレビ局自体もまたその一部であったことがほのめかされ、追及側の中心だったキャスターと記者の2人は結局その現場を去る事になってしまう。その経緯をもう少し詳しく知りたいとは思うものの、本作が描いていたのは「誰が悪いのか」という話ではなく、「そういうもの」で流して放置されてきて行き詰まったシステムにあるのだろうから、それでいいのだろう。もちろん、そのシステムの延長にあるのが「モリカケ」やら「桜」なのは明らかだけれど(だからあれもやっぱり「巨悪」の問題ではなく「小悪党」と「小市民」が作ってきたシステムの問題なのだ)。そんな意味での日本社会の縮図としての地方政治には、まだまだ面白いネタがいっぱい詰まってるように思う。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-05-21 08:34:59)
12.  淵に立つ 《ネタバレ》 
ドスンと魂に来る映画。冒頭の全く会話のない鈴岡夫婦の様子から不穏な空気が立ちこめ、淺野忠信演じる八坂の登場による不穏さのなかの異物感が居心地の悪さを増幅させる。正直、このまま2時間は辛いなと思わせた渓谷のシーンあたりから物語が急加速し、なんと映画の中盤でいきなりのクライマックス。え、その後どうなるの?と思った後半、思いも寄らない方向に二転三転・・・。いやー、久々に予測できない、スリリングな映画体験でした。この映画、実質的な「主役」は鈴岡夫婦で、中盤以降に俊雄が言うように「はじめて夫婦になった」と言える。その媒介になったのが八坂の登場と退場であり、娘の変貌なのでしょう。過去に何があったか?とか大賀演じる息子の真意は?などサスペンス部分は放置しつつも、とにかく意味深なメタファーに溢れているので、いろいろな「読み方」ができる作品なのは間違いない。個人的には、アクロバティックな素材をもとに「夫婦」という他者がつくりだす関係性を描いた作品なんだと思ったら、なんとも示唆に富んだ作品に見えてきました。血のつながりも(本作でいえば信仰という)思想のつながりもない二人が共同生活を行うことの不気味さ、そのなかで八坂を媒介に一瞬つくられた連帯、でもその連帯のバランスを崩す新たな他者の登場・・・夫婦って怖くて、不気味で、不思議なもの。あのラスト、明らかに息を吹き返したのは章江、最後まで俊雄が助けようとしたのは蛍だった。ここに、夫婦という関係性の闇の奥を見たような気がしました。
[インターネット(邦画)] 8点(2021-03-27 10:08:13)
13.  恋は雨上がりのように 《ネタバレ》 
噂通りの快作! 小松菜奈さんという女優の2018年現在の姿をきっちりと画面のなかに収めた、正しいアイドル映画であり、かつオヤジ目線のファンタジー炸裂の「美少女」映画であるのは間違いない。あと、少し引いた遠景と接写の使い方が絶妙。「雨」と「雨上がり」の対照的な風景、学校のなかを動きまわるカメラで小松さんを追う絵、ファミレスの裏口まわりの外からの絵、このあたりはテレビドラマではできない映画ならではの風景の美しさ、「学校」や「バイト先」が持つちょっとしたノスタルジーを見事に描いてる。引いた絵が続いた後に、グッと小松さんに寄るカメラ。見てるほうもドギマギしてしまう。それでも、この映画が単なるティーン向け量産型恋愛映画ではないことは、序盤に大泉洋の店長が小松菜奈の「若さ」を見つめる視線を見ればわかる。結局映画は最後まであの視線に同化したまま進んでいき、最後まで見たところで、この映画が描いていたのは女子高生の青春というよりも、まっすぐな「若さ」に対して、かつて若者であった「大人」はどうあるべきかを描く作品であったことがよくわかる。若者ぶるのでもなく、相手の言うことをただ聞くだけでもなく、自分の思う若者像を相手に勝手に期待するわけでもなく、そして自分の「古い」価値観をただ押しつけるのでもなく、若者と関わるとはどういうことかということを、大泉洋演じる店長はさりげなく見せてくれる。ノスタルジックに「美少女」に期待して見ていたら、「大人」としての自分のあり方をグッと突きつけられる、いい作品でした。
[インターネット(邦画)] 8点(2020-04-29 09:26:19)
14.  万引き家族 《ネタバレ》 
疑似家族は「家族とは何か」を問うには格好の題材だし、個人的にもこの手の作品にはとにかく弱い。その設定だけで傑作認定したくなる本作でしたが、出来は期待以上でした。社会の見えない隅っこで、ギリギリのバランスで成立している疑似家族。この家族を成り立たせているのは嘘と打算とカネ。一見ノスタルジックな家族関係を描いているようで、実は互いを利用し合う疑似家族の怖い側面。でも、そのなかに一片だけれども存在する人間らしさ。だからこそ、一つ一つの場面で交わされる気持ちの交流が美しく心地よい。孫につい「慰謝料」と言ってしまう樹木希林とか、年金を持って帰ってきたおばあちゃんに嘘くさい優しい言葉を投げかけるリリー・フランキーとか、水着を買うシーンから安藤サクラの顔が変わるところとか、フランキーと安藤の情事のシーンとか、一つ一つのシーンに多義的で複雑なメッセージが込められていて見ていて全く飽きることがない(・・・というか、最近の是枝作品は情報過多で少し疲れるくらい)。工事現場でのリリーの大ケガやクリーニング店の「ワークシェア」など、この家族が生きていく基盤がいかに弱く脆いかが丁寧に描かれ、おばあちゃんの死(そして駄菓子やの店主の死)によって、そんなギリギリのバランスは脆く崩れ去る。それは、このような家族が生きることができる社会の「隙間」が、どんどん失われていることの象徴でもあり、終盤の警察官たちが繰り返す「正論」は、社会が完全に「余裕」を失ってしまったことを示しているのだ。でも、父親や母親はともかく、ショータやユリはその社会を生きていかなくてはいけない。そんな彼らの成長と危うさと強さとほんのちいさな希望を、この物語はきっちりと描いて幕を閉じた。そんな映画が、「余裕」のない人たちによって、わけのわからない論争に巻き込まれてしまったのは、本当に皮肉としか言いようがない。唯一、ちょっと残念だったのが、米国上映版を英語字幕付きで見たため、登場人物たちの言ってるか言ってないかわからないような台詞(浜辺のおばあちゃんとか、バスでのショータ君とか・・)にタイミング悪く「字幕」が出てしまって趣を台無しにしてしまったこと。両方とも名場面だっただけに・・・。
[映画館(字幕)] 8点(2019-03-20 09:35:46)(良:2票)
15.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
原作は数十年前に既読だけど、ほとんど覚えていません。長尺でなかなか手が出なかったのですが、年末年始ということで鑑賞。前評判どおりの素晴らしい作品でした。何よりも「異国」の風景とそこに住まう(ふつうの)人々の描写が秀逸。そこに溶け込んでしまった塚本晋也、窪塚洋介、小松菜奈、加瀬亮などの俳優陣は素晴らしい。そのなかに、明らかに「異質」な存在として現れる2人の若手ハリウッド・スターもよくがんばりました。アンドリュー・ガーフィールドもアダム・ドライバーも「スター」のオーラをまといつつも、いい意味での「異物感」を感じる好演です。やや、残念だったのは、リーアム・ニーソンがどうしてもクワイ・ガン・ジンやらラーズ・アル・グールに見えてしまうこと。彼が語る比較文化論も、そういう人たちの言葉に聞こえてしまったのがノイズでした。映画としては、「試練」を通して信仰が試されるという、キリスト教的には定番の題材ながら、それをストレートに問い続けることで、「信仰」や「魂」なるものについての物語になっているのが見事です。近世の物語ではありますが、最後には、神を思い続け、それを棄てても残っている、この「私」とは何か、という「近代的個人」というものをめぐる根源的な考察になっていて、遠藤周作の原作も、それをこうして映像化したスコセッシも、あらためてその素晴らしさを実感できました。
[インターネット(字幕)] 8点(2019-01-06 11:22:12)
16.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
観たかったけど、いろいろ忙しくて映画公開時を逃し、DVD化されやっと見れる・・・ということで平日休みの日に意気込んで自宅でプレーヤーへ。予備知識はほとんどなし。前半・・・。うー、これはツラい。変な間とか、なぜ趣味の話とか・・なんか実験的作品だったのか。それが斬新ポイント? そして最初のエンドロール・・・からの「お、これは面白いヤツかも知れない」。やばい、楽しくなってきた。そして撮影開始・・のところで、突然自宅の電話が!!? え、娘の学校? ケガした? 後ろ髪引かれながらプレーヤーをストップ。娘を学校に迎えに行き、病院に連れて行って、その後一緒に帰宅・・・。大事なくてよかった。ただ、普段からサスペンスドラマでさえも「怖いから消して」という娘のため、続きを見ることを断念。そのまま夜に。夜、家族が就寝後、やっとプレーヤーをオン。続きを見る。ヤバい、本当に楽しい。うわー、これは途中で止めたらいけないヤツだ。続けて見なくてはいけなかったヤツだ〜。なんでこんな日に限って、うちの娘は・・・。と思いかけたところで、ラストシーン。大号泣。今作の教訓。観たい映画はやっぱり映画館で観よう。そして、すべての父にとって娘とは、どんなことがあってもそれを力に変えてくれる存在だ。
[DVD(邦画)] 8点(2018-12-13 22:02:56)(笑:2票) (良:2票)
17.  永い言い訳 《ネタバレ》 
主人公のサチオはなかなかのダメ男で、基本はそのダメっぷりを軽く苦笑しながら観る感じなのに、終わってみたら久々に心の奥にズドンと来ました。自分は子どももいるし浮気もしてないけど、なんだか主人公の境遇というか心情には妙にシンクロしてしまう部分があり、笑いながら背筋が寒いというか、ブラックだけどじんわり染みわたるというか、まさに泣き笑って怖がるという、最高の映画体験でした。今回はモチーフ的には是枝裕和監督の作品に近くて、『そして父になる』あたりとは共通部分も多いし、子役が登場するシーンはまるで是枝作品のよう(とくに妹ちゃんは、いかにも是枝映画に出てきそうな感じでした)。個人的には、主人公とお兄ちゃんのちょっとした言葉やしぐさは、本当に自分のなかの「何か」を見ているようでいたたまれない気持ちになるし、2人の「交流」に安易な救いを見出さない突き放した感じも、西川さんらしくていい。ただ、唯一残念だったのは、終わり方かなあ。『ゆれる』のスパっとした切れ味を知っている身としては、終幕が少しダラダラしてしまったのは残念。あの二度目の散髪シーンで終わってもよかったかな。まあ、最後の受賞パーティのシーンのおかげで、いろんな本編中の伏線も回収した上に大宮家のその後をちゃんと見ることができて「安心」して映画を終われたというのはあるし、あそこがなかったら確実に個人的トラウマ映画の仲間入りだったけど(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-04 14:17:56)
18.  海街diary
まず鑑賞後の印象。これは、映画館で見るべき映画だった! 女優としても旬の4姉妹の姿、美しい鎌倉の四季、そして何気ない日常の一コマこそ、映画館のスクリーンでこそ堪能すべきだったと思います。最近、自分が年取ったせいか女優さんを目当てに映画を見ることがめっきり減ってましたが、これはまさに「スター映画」。こういう映画は、もっとも環境のよいところで見てこそ、そのすばらしさが何倍増しにもなると思います。ただ、自宅で見たときの利点は何回でも見れること。すぐに2回目鑑賞しました。今度は、細やかなこの映画の構成が鮮やかに見えてくる。鎌倉の四季の日常のなかで積み重ねられていく四女すずの苦しみや3姉妹のそれぞれの生き方の微細な象徴が、物語に緊張感をもたらしていく。だからこそ、最後に「家族になる」ことの重みが、じわーーんと響く。スターが出ててもあいかわらず是枝作品風の会話表現、少しクラシックな(そしてややベタな)音楽、是枝作品のよい部分と華やかな日本映画の奇跡的な融合。原作を読んでいたので、原作での重要キャラ(とくに次女の彼氏)の雑魚キャラ化で逆に戸惑う部分もありますが、原作とはまた違った「海街diary」として、おすすめしたいです。
[DVD(邦画)] 8点(2016-02-24 11:50:10)
19.  駆込み女と駆出し男 《ネタバレ》 
昔の言葉と現代言葉が入り交じった台詞まわしの独特のリズムが印象的。ぶつ切り気味の編集は最初ちょっと戸惑ったけど、冒頭の40分くらいで慣れてくると、こちらもリズムがあってだんだん心地よくなってきました。ただ、このテンポは、主演の大泉洋があってこそという感じ。「すばらしい」とか「すてき」という言葉を時代劇のなかに持ち込んで、変な感じにならないのは彼のキャラがあってこそだと思います。逆に言えば、彼じゃなかったら、この映画全然ちがったものになってたかも、と思える好演です。その成長が物語の重要な柱になってたじょごを演じていた戸田恵梨香もよかったし、満島ひかりもあいかわらずの安定感でした。そして、ラストのオチは「そうきたか〜」とニヤリとさせるもので、さわやかな後味を残してくれました。個人的には、壮大な感動作系の音楽と、そのテンポや編集がちょっとあってなかったような。いかにも感動させる系のシーンで音楽がなっても、ブツッと切れちゃうので、そこだけはどうも乗り切れない部分もありました。全体としては、この映画は素直に見てよかったなと思える佳作だったと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2015-08-30 05:51:29)(良:1票)
20.  そこのみにて光輝く
とても丁寧に作られた作品。演技、演出、脚本、撮影、音楽などすべてレベルが高い。暗い話なんだけど、ただジメジメするのではなく、少し渇いた映像のおかげか陰湿な印象はあまりなく、むしろ美しく深遠な絵画を見たという印象。この独特な感覚は日本というかアジアの映画ならではのように思う。また、この印象は、菅田将暉演じる拓児のキャラに引っぱられた部分も大きい。最初の登場時は、思いっきり引いてしまったけれど、だんだん憎めないなあと思い、最後には幸せになってほしいと心から願ってしまう。池脇千鶴演じる千夏もそう。最初は擦れた部分が目についたのに、最後には神々しさすら感じるようになった。綾野剛は2人と比べるともうひとつだが、瞬間の表情などには引きつけられるものはあった。舞台を現代にしたのも僕は正解だったと思う。この映画が描く悲惨はある意味、経済成長した日本の暗部として、ずっと存在し続けたものだと思う。でも、2013年の現代、それは、単なる「貧困」としてだけでなく、前科者の社会復帰の困難やビジネス化された介護からの排除など、ある種の人びとが「階級」として社会から「排除」されてしまう現実として、顕在化している。そういう世界を丁寧に描きながらも、そこを主題化するのではなく、そこにある「希望」を家族や人間関係をめぐる普遍的な物語として描いたところに、この映画の魅力はあるのだと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2015-03-25 14:37:50)
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