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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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641.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
【予備知識一切なしで見るべき映画なので、未見の方がレビューを読まれる際にはご注意を】ブラッカイマー&トニー・スコット&デンゼル・ワシントンとくれば「いつもの無難なアクション大作だろ」と思いきや、史上空前のとんでもない仕掛けがぶち込まれた異様な映画となっていました。タイムスリップを題材としたSF映画は数あれど、アクション映画のメインアイテムとして大真面目にタイムマシンを登場させる大胆不敵さには驚きました。誰も思いつかなかったこの一発芸は、実に巧みな脚本と卓越した演出センスによって、映画として十分成立するレベルにまで到達しています。多くのヒット作の脚本を手がけてきたテリー・ロッシオは、このすさまじい題材がどうすれば観客に受け入れられるかを見事に計算してきます。いきなり「これはタイムマシンです」と言うのではなく、デンゼル・ワシントンが謎のマシンの正体を暴くという展開を入れることで説得力をぐっと増しているのです。また、トニー・スコットのハイテク描写の巧みさにも舌を巻きます。「好きな場所に入り込んで過去を覗き見ることができるが、膨大な情報処理には4日を要するため常に4日前の映像しか見ることができず、しかも一度に見られるのは一つのアングルだけで巻き戻しはできない」という煩雑な基本設定を観客に受け入れさせるというウルトラCに挑み、言葉と視覚を交えることで見事それに成功しているのです。装置がタイムマシンであることが暴かれる一連の描写も、脚本レベルの驚きのみに留まらず映像的な面白みも十分。右目で現在を、左目で過去を見ながらのカーチェイスという荒唐無稽な見せ場では、知的な面白さと映像的な興奮でテンション上がりっぱなし。ここまで煩雑な設定を映像で饒舌に語れる監督は他にいないでしょう。確かに細かいアラはいくつか目に入ります。タイムパラドックスの処理に矛盾があったり(爆発した救急車や血のタオルのくだりは時系列上明らかに矛盾が…)、犯人の扱いがやたら適当だったり(目的が最後まで不明、人物像も適当、爆弾魔なのになんでマシンガン持ってんだ…)、ヒロインがデンゼルを受け入れる過程の葛藤が単純だったり。こうした細部の甘さにより傑作となる詰めを外しているような気もしますが、このとんでもないアイデアを実行し、成功させたこと自体を評価しようではありませんか。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-03 12:49:42)(良:1票)
642.  トータル・リコール(2012)
濃厚コッテリだった『トータル・リコール』が薄味のラーメン屋みたいな味に。バーホーベン版を神格化するつもりはありませんが、それでもこのリメイクは失敗だったと思います。CGがほとんど使い物にならない時代に製作されたバーホーベン版には驚くような見せ場がいくつもあったのに、一方で技術的な制約のなくなった時代に作られたはずの本作にはインパクトのある場面がひとつもありません。コロニーは『ブレードランナー』、UFCは『マイノリティ・リポート』の世界そのままだし、劇中に登場するテクノロジーは『アイ、ロボット』で見たようなものばかり。レン・ワイズマンは『アンダーワールド』でも『クロウ/飛翔伝説』のパクリをやってアレックス・プロヤスから苦言を呈されていましたが、本作においてはより露骨な形でこの人のオリジナリティのなさが現れています。さらに罪深いのは、これだけ他作品のパクリをやらかしながら、肝心のバーホーベン版からの影響は皆無に等しいということ。小ネタで義理立てはしているものの芸術面でのリスペクトはまったくなく、そこまで『トータル・リコール』に関心がないのであれば、別の映画を作るべきだったと思います。。。 以上のようなSF映画としての欠点に加え、本作はアクション映画としても面白みに欠けています。見せ場の連続なのに手に汗握らないという娯楽映画の末期症状に陥っており、2時間の連続活劇としてうまく機能していないのです。こちらについても、泥臭くとも訳の分からん勢いだけはあったバーホーベン版とは正反対の仕上がりであり、スタジオは監督の人選を間違えたように思います。。。 役者についてですが、芸達者なコリン・ファレルは無難に主人公を演じており、このグダグダの映画をうまく乗り切っています。ジェシカ・ビールは個性に欠け、いてもいなくても大差のない存在感。ただ一人ネジの飛びまくった熱演を披露しているのがケイト・ベッキンセールで、かつてシャロン・ストーンとマイケル・アイアンサイドが演じた役柄を一人で引き受けたという気負いから過剰な演技に走っているのですが、これが笑ってしまうほどおかしくなことになっていてラジー賞ノミネートは確実ではないかと思います。これを撮っているのはこの人の旦那なんだなぁと思うと何ともカックンな気持ちになり、他人の家のホームビデオを見せられているような居心地の悪さを感じました。
[映画館(字幕)] 4点(2012-08-11 01:20:58)(良:1票)
643.  エリザベス 《ネタバレ》 
父・ヘンリー8世と母・アン・ブーリンの愛憎劇を描いた『ブーリン家の姉妹』がなかなかの面白さだったので、その子・エリザベス1世の初期統治を扱った本作も連続で鑑賞しました。 いつ殺されてもおかしくない状況からの女王就任に、宗教問題で分断された国家の統合、王位簒奪を狙う周辺国家との駆け引き、国内最有力貴族による反逆未遂など、映画として面白いイベントてんこ盛りのエリザベス治世なのですが、これが実に盛り上がりに欠けるという残念な内容となっています。どうやら本作は当然に英国史を知っている人たちを対象として作られているようであり、各イベントについては観客の側で脳内補完してもらえることが前提となっているため、英語文化圏以外の観客にとっては各登場人物の行動原理が分かりづらい、大した煽りもなく大事がさらっと流されていくという不親切な仕上がりとなっています。 また、エリザベスのメロドラマが作品の横軸となっているものの、物語開始時点ですでにエリザベスとロバートとの関係性が出来上がってしまっているため、こちらも感情移入が難しくなっています。 美術や演技など見どころは多いものの、アカデミー作品賞ノミネートの割にはドラマ部分に力がなく、「名物に旨い物なし」を地でいくような仕上がりとなっています。
[DVD(吹替)] 5点(2016-12-05 15:29:18)(良:1票)
644.  ザ・ファーム/法律事務所
飛ぶ鳥を落とす勢いだった若きトム・クルーズを中心とし、その周りをジーン・ハックマンやエド・ハリスといったベテラン勢で固め、さらにその外側にはゲイリー・ビジーやトビン・ベルといった個性派を配置するという層の厚いキャスティングは魅力的でした。本作はパラマウントにとって相当気合いの入った企画だったようで、スタッフ、キャスト共に最高のメンバーが名を連ねています。しかし、そんなパラマウントからの期待とは裏腹に、映画の内容は平凡の域を脱していません。不吉な前兆の積み重ねでイヤな汗をかかされる前半部分はそれなりの面白さだったものの、後半部分で映画は完全に息切れしてしまうのです。監督も脚本家も複雑な話をまとめあげることでいっぱいいっぱいになってしまい、この膨大な情報量が観客に伝わるかどうかとか、クライマックスで観客はカタルシスを味わえるかどうかということは二の次にされています。直し屋として有名なロバート・タウンが脚本家に名を連ねている時点で察するべきだったのですが、それにしても、思いの外低い完成度には驚かされました。トム・クルーズ以外のキャストを完全に持て余すという名優の無駄遣いぶりもかなりのもので、本作よりも2ランクも3ランクも劣るメンバーで製作された『逃亡者』に批評面でも興行面でも及ばなかったことにも納得がいきます。
[DVD(吹替)] 5点(2012-10-17 01:53:35)(良:1票)
645.  戦火の馬
 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』以降四半世紀に渡り、いかにして悪趣味描写を娯楽作に持ち込むかという難題に勝手に挑戦し続けてきたスピルバーグですが、本作ではついに悪趣味を卒業し、かつての健全な娯楽映画に回帰した内容としています。同時に製作した『タンタンの冒険』も同様の趣旨でしたが、そちらは初のアニメ作品ということもあってやや失敗した感がありました。しかしスペクタクルの巨匠スピルバーグ、実写では外しません。90年代以降のスピルバーグ監督作品としては間違いなくNo.1の面白さであり、この人は映画を撮るのが世界一うまい人であることを再認識させられました。。。 主人公は馬。ディズニー映画のように人間の言葉を喋ることも、誰かがその気持ちを代弁することもなく、本当にただの馬を主人公とした映画なのですが、この馬のキャラがきちんと立っていることに驚かされます。擬人化の名人スピルバーグが久しぶりにその腕前を披露したわけですが、演技部門でオスカーにノミネートされてもよかったんじゃないかと思うほど馬が素晴らしすぎます。そんな馬を囲む人々も基本的には良い人ばかりで、良いドラマを観たなぁという気持ちを存分に味わわせてくれます。。。 最近仲良くしているピーター・ジャクソン(第一次大戦オタク)に影響されてか、本作の舞台は第一次世界大戦。これが実に独特な戦争で、初期には職業軍人による伝統的な騎馬戦が主流だったものの、後期には大量破壊兵器と大人数の素人兵士がその主役となり、開戦時と終戦時とではまるで違った様相を示すこととなった戦争でした。大量破壊兵器の登場とともに、かつての戦場には確かに存在していた「戦いの美学」というものが失われ、戦争はただの殺し合いとなったわけですが、本作はそんな時代背景をきっちりと内容に反映させています。当初は軍馬として大事に扱われていたジョーイが、後には交換可能な運搬手段としてこき使われることとなるのですが、戦場における人道のあり方と主人公の扱いを丁寧にリンクさせている脚本には感心しました。。。 不満点を挙げるならば、ヨーロッパ人が当然の如く英語を喋る点と、ドイツ帝国が一方的に悪者にされている点でしょうか。ユダヤ人弾圧のあった第二次大戦ならともかく、三国同盟と三国協商のどちらに正義があったのかについて議論の割れている第一次大戦においてこの扱いは無神経であると感じました。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-08-10 17:43:31)(良:1票)
646.  サイコ(1998)
公開当時は散々な評価を受けた本作ですが、DVDに収録されているメイキングドキュメンタリーを観て納得がいきました。各文化には、シェイクスピアや忠臣蔵のように時代を越えて演じられ続ける”古典”というものが存在します。まだまだ歴史の浅い映画という文化においても将来的にはシェイクスピアに匹敵するような古典が登場し、それは同じ形を保ったまま何度も何度も演じられ続けることとなるに違いありません。本作の監督はその古典の第一号として「サイコ」を選び出し、他の文化では当然に繰り返されている”再演”という行為を映画にも持ち込んだのです。公開当時、本作は「完璧なものをなぜ作り直すのだ?」という批判に晒されましたが、その疑問は見当違い。完璧だからこそ「サイコ」を再映画化したのですから。。。 本作の製作にあたっての監督のこだわり方は異常で、脚本・装置プランどころか撮影スケジュールまでをオリジナルに合わせるという只事ではない執着を見せています。安易な改変を加えないことこそがオリジナルに対する最大の敬意であると考えたわけです。一方で必要性を感じる部分に対しては適度な修正が加えられています。例えば、オリジナルでは曖昧にされていたノーマンの性的倒錯が本作でははっきりと説明されていて、これによって話の通りが良くなっています。ノーマンのキャスティングに至っては大幅な修正が加えられていますが、これについてはリメイクならではの事情が反映されたようです。オリジナルのキャスティングは、好青年のイメージの強かったアンソニー・パーキンスにノーマンを演じさせることで後に明らかになるその正体の衝撃度を高めるというサプライズ的な意味合いが大きかったのですが、話のネタがとっくに割れているリメイク版ではそうした狙いは不要。そこで異常者っぽい風貌のヴィンス・ヴォーンにノーマンを演じさせることで、早い段階から彼の心の闇にフォーカスするという作りに変更したのです。この変更は”あり”だったと思います。。。 カラーになったことで画面は見やすくなったし、サラウンド化されたことでテーマ曲はシャープに蘇りました。こういった点でも再映画化のメリットは発揮されていて、今の中高生がサイコを見ると言い出したなら、私はオリジナルではなくリメイク版の観賞を薦めると思います。。。 とはいえ、本作のどこに6,000万ドルもの製作費が使われたのかは謎ですが。
[DVD(吹替)] 6点(2012-05-19 04:55:38)(良:1票)
647.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
『シックス・センス』以来の蜜月状態にあったディズニーから出資を断られただの、賛否は割れても興行成績はピカ一だったシャマラン作品史上初の赤字映画になっただの、ラジー賞で最低監督賞と助演男優賞をダブル受賞だのと、とにかく悪評ばかりの本作。確かに、目の覚めるようなオチはないし、笑いやスリルの量も減っており、従来のシャマラン作品と比較すると落ちる出来だと言わざるをえません。ただし、物語にはオリジナリティがあるし、主題に関わる部分もきちんと作りこまれているので、シャマランの意図を理解しながら見てあげれば、十分に楽しめる映画だったと思います。。。 作品の着想は『アンブレイカブル』に近く、おとぎ話を解体してその構成要素をすくい取り、現実社会を舞台にして再構築するという内容となっています。アパートの住人達が自分の果たすべき役割を探すという展開はまさに私たちの人生の縮図であり、悩み、時に間違いを犯し、時には自分の能力に自信を持てなくなりながら、それでも必死にもがいて目的の達成を目指す彼らの姿には、大変に心を打たれるものがありました。各キャラクターが正しい役割を認識した瞬間にすべてがうまく進み始めるという展開にもシャマランなりの人生哲学が反映されているようで(クライマックスがアッサリしすぎていることも批判の対象となっているようですが…)、見ていてすごく楽しめました。。。 また、「つまんねぇなぁ」と思いながらボンヤリと眺めていた前半のドラマが、主題が姿を現す後半パートの伏線になっているという脚本は素晴らしくよく計算されていて、シャマランの構成力の高さにも唸らされました。パンチには欠けるものの、全体としては丁寧に作られた良作だと思います。世界的な思想の指導者となる男をシャマラン自身が演じたり、作品中で映画評論家をブチ殺したりと、あまりに幼稚な点も目に付きましたが、それはそれとして、もうちょっと評価されてもいい映画だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-09-27 01:33:09)(良:1票)
648.  完全なるチェックメイト
チェス映画という前代未聞のジャンルを切り拓いた作品ではあるのですが、何が凄いんだか観客には伝わりづらい上に、そもそも画が地味という映画としては致命的な欠点を孕んだこの題材を真正面から取り扱うことは避けており、特殊な環境に置かれた天才が精神を病んでいく物語として全体が構築されています。チェスをまったく知らなくても何ら問題がないというレベルにまでこの題材を落とし込んでみせた監督と脚本家の工夫には恐れ入りました。 ただし、映画としてはまったく面白くありませんでした。頭のおかしい人が暴言や妄言で周囲をひっかき回すだけの内容で、誰にも感情移入ができないのです。フィッシャー以上のストレス下に置かれながらも紳士的な態度を維持できていたスパスキーとの違いなどの考察があれば面白かったのですが、二人の天才の関係性もやたら淡泊で描写が不十分だったので、盛り上げるべきポイントを逃してしまっています。トビー・マグワイアが狂気の天才役を演じる自分の姿を撮らせたくて、自分で製作費を集めて作った映画なのだから仕方ないのかもしれませんが、狂人だけを描いても映画は面白くなりません。むしろ、レクター博士の如く狂人は脇役にしてしまい、狂人に振り回される人達を表面上の主役にしてしまった方が、その存在は立ったのかもしれません。
[インターネット(吹替)] 4点(2017-10-14 01:41:35)(良:1票)
649.  ドライヴ(2011) 《ネタバレ》 
勢い任せに逃げる鬼ごっこタイプではなく、追手の死角を突きながら徐々に距離を離していくかくれんぼタイプのユニークなカーチェイスには引き込まれました。音響への異様なこだわりも映画のテンションに大きく貢献しており(本作は音響の整った環境で観るべき映画)、絶好調のスタートを見せる本作。ライアン・ゴズリング演じるドライバーのキャラ設定も良く、質素な一人暮らしならば修理屋の給料のみで食べていけるにも関わらず、逃がし屋やスタントマンといった危険な仕事を定期的に引き受けることで己の破壊衝動を充たしているアブナイ男という、バイオレンス一直線な設定には燃えましたとも。究極の危険愛好家にして、度を越した暴力性を胸に秘めたドライバーは、ポジティブに描かれたアントン・シガー。ライアン・ゴズリングの幽霊のような存在感も主人公のキャラ描写に大きく貢献しており、この主人公を見ているだけで2時間は余裕で楽しめます。忍従を重ねた末に、いよいよドライバーがブチ切れる瞬間には飛び上がるくらいに興奮しましたとも。。。 問題に感じたのは、ドライバーのキャラがあまりに完璧すぎて、その敵となる犯罪組織が完璧に見劣りしていること。アルバート・ブルックス演じる古株のヤクザなどはかなりいい味出しているのですが、人間凶器とも言えるドライバーと戦って勝てるタマではありません。そのため、冒頭のカーチェイスに匹敵するような緊張感ある見せ場を後半に準備できておらず、映画全体としては尻すぼみな印象を受けました。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-25 00:53:48)(良:1票)
650.  U・ボート ディレクターズ・カット版
元はテレビシリーズとして製作された作品のようなのですが、1981年にまず149分の劇場版が製作され、それから遅れて1985年に全6話、合計313分のテレビ版、1997年に208分のディレクターズカット版リリースと、やたらバージョン違いの多い本作。ただし、劇場版とテレビ版についてはDVDの単品発売なし、ブルーレイ化もなされていないため鑑賞困難な状況となっており、現状における商品展開の主流であるディレクターズカット版を鑑賞しました。 ドイツの映像作品としては1927年の『メトロポリス』以来の規模で製作された作品だけあって、一目見ただけで金のかかり方が違うということが分かります。冒頭における出航前のどんちゃん騒ぎをとっても、だだっ広い宴会場にきちんとバックバンドを入れ、小道具ひとつにも手抜きなしで観客を作品の世界へと引き込みます。主人公であるUボートに至っては外観・内装ともに非常によくできており、本物にしか見えないほどの驚異的な再現度を誇っています。クライマックスの空襲は空前絶後の大迫力であり、ロケを行ったフランスでは「ドイツ人は昔も今も狂っている」と言われたほどの大規模な撮影を敢行(この場面だけで2トンもの火薬が使われたとか)。うまく金を使うことは映画監督の才能のひとつだと言われますが、この点でウォルフガング・ペーターゼンは金の使いどころの取捨選択が優れており、後に多くのハリウッド大作を手掛けることとなる巨匠の片鱗を窺わせています。 他方、内容は後のペーターゼンの作風からはかけ離れたソリッドなものとなっています。冒頭に登場する歌手を除いて女性は一切登場せず、むさい男達が画面を席巻。フランスに婚約者を残してきた若い航海士を除いて登場人物の背景が説明されることはなく、それどころかほとんどの人物は名前すら与えられておらず、Uボート内がどのような状況であったのかを描写することのみに映画全体が特化しています。このストイックな作風、作り手の志の高さには感銘を受けました。 ただし、そんな硬派な作風がたたってか前半部分はかなりダレます。意気揚々と出航したもののなかなか敵と出会うことができず、毎日毎日、ひたすら飯を食って寝るだけという日々が繰り返されるのですが、無名の潜水艦乗り達が狭い艦内でダラダラやってる様を長時間に渡って見せられるのは少々キツかったです。連合国にとっては神出鬼没の悪魔であったUボートも、その内情はこんなトホホぶりでしたという演出意図は理解できるのですが、最初の戦果を挙げるのが上映開始後90分を過ぎてからというのは、あまりに間を取りすぎているような気がします。
[DVD(吹替)] 7点(2016-06-21 18:04:39)(良:1票)
651.  スーパーバッド 童貞ウォーズ 《ネタバレ》 
プロデュース&脚本を担当したジャド・アパトーの手腕によってコメディとしては上々の仕上がりで、かなり笑えます(特にバカ警官コンビは最高)。しかしこの内容で113分は長すぎるように感じました。前半は最高に楽しめたのですが、後半では飽きてしまいます。この手のバカ映画は90分ほどでサクっと終わるのが理想だと思います(「オースティン・パワーズ」は95分、「裸の銃を持つ男」に至ってはたったの85分)。モテないバカ男子の情けない青春物語を売りにしている割には、意中の女子から勝手に惚れられたり、粘り勝ちで良い感じになったりと意外にも恋愛がうまく進んでしまうことも違和感で、本当にモテない奴の青春はそんなに恵まれてないわけです(涙)。悪戦苦闘したものの結局女子からは相手にされず、とぼとぼと家に帰りながら「何だかんだで今日の冒険は楽しかったし、友情っていいもんだ」と実感するようなオチの方が、このテーマにはしっくりきたのでは?
[DVD(吹替)] 5点(2010-08-15 15:49:06)(良:1票)
652.  キングスマン
古典へのリスペクトと現代風のオリジナリティー、そしてユーモアとスリルの完全なる調和。 普段はダラダラと長文レビューを書く私ですが、本作についてはコネる理屈も思い浮かばないほど夢中になって鑑賞しました。 最高!!以上!
[映画館(字幕)] 10点(2015-09-11 21:06:03)(良:1票)
653.  デイライト
せっかく助けにきてくれたスタさんにワガママばかりを言う生存者達が非常に不愉快でした。感情移入など絶対に不可能、ドラマとして完全に赤点です。しかし、娯楽に長けたロブ・コーエンによるアクション演出は絶好調で、矢継ぎ早に繰り出される危機の連続には思わず見入ってしまいました。VFXや音響等、テクノロジーの扱いも非常に素晴らしく、製作から15年以上経過した現在の目で見ても見応えのある娯楽作に仕上がっています。いろいろ文句はありますが、まぁ面白かったので及第点は与えられます。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-12-03 01:03:20)(良:1票)
654.  パニッシャー(2004) 《ネタバレ》 
ジュマンジ、ダイハード3、アルマゲドンと偏差値の低い脚本を書き続けてきたジョナサン・ヘンズリーという人物の初監督作だそうですが、今まで以上に適当でぬるい腰砕け映画でした。私がここ数年見た映画の中でもっとも変な映画かもしれません。大手スタジオ&一流プロデューサーが作った大作とは到底思えない出来で、低予算だったドルフ・ラングレン版の方がずっと筋が通っており、完成度も高いです。復讐アクションというこれ以上わかりやすいものもないってくらい単刀直入な話なのに、主人公への共感がほとんどできないという奇跡をこの映画は成し遂げています。目の前で一族郎党皆殺しにされ怒りに燃える主人公ですが、その復讐は夜な夜な尾行とイタ電を繰り返し、浮気をでっち上げるというすさまじい手口。ボロアパートを勝手にパニッシャー基地にリフォームし、車もパニッシャー仕様にわざわざ改造したにも関わらず、復讐の基本が「嫌がらせ」というのはあんまりでは・・・。その間にはビルからトラボルタの金をまいたり、アパートの隣人とのほのぼのエピソードがあったり、コントとしか思えない味のある刺客が現れたりで、この映画が一体何をしたいのかがわからなくなってきます。家族を殺された者同士の復讐というハードな設定にも関わらず、バイオレンスをせずにヘンテコなエピソードばかり盛り込んでくるので、作り手の意図がまったく見えてこないんですね。「これはコメディをやってんのか?」と錯覚してしまったほどです。前半で寝返らせたチンピラがほとんど話に絡んで来ないという謎もあるし。しかし、クライマックスは突然凄惨なムードに突入してまたビックリ。パニッシャーによってでっちあげられた事実無根の浮気疑惑で殺されてしまう部下&奥さんがかわいそうでした。トラボルタの最期も悲惨なもので、無力なトラボルタを車で引きずって爆破という実に陰惨な殺し方をします(ちょっとお笑いウルトラクイズ入ってますが)。こういうのって、パニッシャーとトラボルタがさしで対決して、お互いに怒りをぶちまけながら最後は正義が勝つというのが普通のパターンだと思うんですが、これほど後味の悪い仕置きってのも珍しいと思います。そうやって汚い手口ばかり使うパニッシャーですが、ラストでは「世の中の悪いやつは俺が成敗するからな」とひとりで決意します。こんなアブナイ人に好き放題振る舞われたら世の中が迷惑しますから。
[DVD(吹替)] 3点(2006-09-30 19:01:39)(笑:1票)
655.  スーパーマン リターンズ 《ネタバレ》 
9.11やアフガン・イラク攻撃などアメリカにとって波乱の21世紀においてなんでも解決してくれる無敵のヒーローは成立するのだろうかという難題に挑み、そこに突破口を作ってみせたブライアン・シンガーの手腕は相変わらず見事でした。かつての恋人に「スーパーマンはなぜ不要なのか?」という論文を書かれ、それがピュリッツァー賞まで受賞するほど変わってしまった世の中。町の人助けやちんけな犯罪者の成敗はやってくれても、テロや戦争など人類が抱える本当の困難には立ち会ってくれないじゃないかという大きな矛盾を前提としてこの作品は作られていますが、それに対する答案をきちんと準備しているのが立派なところ。スーパーマンは神のごとき力を持って世界を救うヒーローというよりも、目の前で困ってる人をほっておけない気の良い超人というスタンスを明確に出してきているのです。最初から最後まで基本的に彼は知り合いを助けるために戦っていることからも、彼の戦いの目的が個人的な方向へシフトしていることがよくわかります。また、スーパーマンに救われた人たちが感謝と尊敬を示すリアクションが丁寧に描いているあたりからも同様の意味が感じられます。墜落する飛行機を救う大スペクタクルの後に、スーパーマンの華々しい帰還を大歓声で迎える観衆が映し出される場面はまさに象徴的で、彼が観衆に支えられる市井のヒーローである(だから難しい世界情勢ではなく目の前の事件に立ち会うのみ)ことがよく描かれています。スーパーマンが病院に運ばれるというヒーローものとしてはありえない展開も、21世紀のスーパーマン像を確立する大博打だったと思います。徹底的なリアル路線にシフトしたバットマンよりも、ヒーローへのロマンと現実のうまい折衷をやってのけたスーパーマンの試みの方を私は評価します。そういえば劇中スーパーマンの活躍を報じるテレビの中から「ゴッサムでも目撃されており」という発言がチラっと聞こえるのですが(字幕では未訳)、バットマンの町にまで人助けに行っちゃダメでしょ。映画全体は恐ろしいまでに丁寧に作りこまれており、テンポも遅いのでやたら冗長に感じますが、それはスーパーマンに対する思い入れの違いだと思います。ガンダムが普通のアクション映画になっていたら日本人としては許せないのと同じ感覚で、アメリカ人にとってのスーパーマンはこのボリュームがふさわしいのでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2007-02-11 17:28:21)(良:1票)
656.  ホワイトアウト(2000)
日本映画においては珍しい本格的なアクション大作ということで応援したくなる作品だったのですが、残念ながらまったく面白くありませんでした。日本映画特有のモッサリ感が作品全体を席巻し、アクション大作らしからぬ鈍重な空気が見せ場の迫力だとか展開の面白さだとかをすべて殺してしまっています。さらには、目ん玉ひんむいて大声で叫ぶことが「熱演」とされる日本映画特有の過剰演技も作品の足を引っ張っていて、予算とか技術以前の部分において、日本映画にはアクション大作をやる土壌がないということを再認識させられました。数日に渡って雪山を走り回っているにも関わらずキレイな顔の織田裕二、スノーモービルで全力疾走しようが、銃で撃たれて失神しようが化粧も髪型も乱れない松嶋菜々子の顔を見るにつけ、ガッカリ感はさらに増幅するのでした。日本映画界は、作品のために役者の顔を汚すということすら出来ないのかと。
[DVD(邦画)] 3点(2011-02-27 21:07:32)(良:1票)
657.  スティーブ・ジョブズ(2015)
私は新規事業立ち上げに当事者の一人として携わった経験があるのですが、人の話を聞いていると事業はまったく前に進みません。特に、今まで世になかった商品やサービスを開発し、供給により需要を生み出すというタイプのビジネスではあらゆる人からリスクばかりを指摘され、できない理由を朝から晩まで聞かされることとなるため、人の意見は聞かない、聞いても自分に都合よく解釈し、「成功するはずだ」と信じて一度決めた道をひた走るという資質が経営者には求められます。 本作で描かれるスティーブ・ジョブズは完璧なクソ野郎です。脚本を書いたアーロン・ソーキンは『ソーシャル・ネットワーク』と同様にカリスマ経営者の悪しき一面を描くことに関心を持っており、間違いなくジョブズに対する悪意をもった作品であると言えます。そのクソ野郎ぶりを眺めることが本作の一義的な楽しみ方だと思うのですが、それと同時に、ビジネスの世界で成功するためにはこれくらい極端な人格を持つ必要があるという勉強にもなります。自身のビジョンに絶対の自信を持ち他人の意見に左右されないこと、部下の事情など考えずにビジョンの実現のみにこだわること。凡人にとってここまで自分を貫き通すことは難しく、どこかで心が折れたり、目標や方法がブレたりするのですが、ベンチャーを成功させる経営者はメンタル面での圧倒的な強靭さを持っています。そして、経営者を間近で見ていると、そのような人物像は一種の才能であるかのように感じられます。 英語では才能をgiftと言い、神からの贈り物という含みがあります。劇中で相棒のウォズニアックから指摘される通り、ジョブズにはハードウェアを作る技術も、プログラムを書く技術もなく、後天的な努力をしてスキルを磨いてきた人物ではないのですが、他方で自身のビジョンを信じて突き進むという人格面での強靭さと、10年先20年先の社会を読んだ上で当たる商品コンセプトを思いつくという先天的な能力には恵まれており、まさに神からの授かりもので生きてきた人物だと言えます。人格面では最悪で多くの人から嫌われているものの、凡人がどれだけ努力しても身につけることができない才能を持っていることから、部下達は彼の元を離れることができません。努力で自分の価値を高めている秀才にとって天才とはズルくて憎たらしい存在なのですが、ジョブズとウォズニアックの関係はまさにそれを象徴しています。 作品は3部構成であり、それぞれ重要なプレゼン前のバックステージを舞台としており、膨大な量のセリフのみによって物語は進められていきます。そのような特殊な構成をとっているために視覚的にはやや単調なのですが、ジョブズという人物像がそもそも強烈である上にマイケル・ファスベンダーの熱演もあって、彼の最悪な発言を聞いているだけで2時間はもってしまいます。ただし、状況や人物に係る説明的な描写はなく、ジョブズの人生を知っていることが鑑賞の前提条件となることから、間口の狭い作品となっていることは残念でした。また、天才を突き放した視点で眺めた作品であるためか、鑑賞後に特に心に残るものがありませんでした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-08-18 18:21:36)(良:1票)
658.  デス・レース(2008) 《ネタバレ》 
なぜか一部で神格化する動きもありますが、オリジナルの『デス・レース2000年』は紛れもない駄作です。ポール・W・S・アンダーソンが素晴らしいのは、往年の名作のリメイクで勝ち目のない戦いを挑むのではなく、知名度ある駄作のリメイクを思いついたということ。どうやってもオリジナルより良くなるしかないのですから、企画を思いついた時点で勝ったようなものです。案の定、この企画にはハリウッドの目利きトム・クルーズが飛びつき、2001年頃にはトム主演で『デス・レース3000年』として企画が進んでいました。しかし、現場をコントロールしたがるトムに監督が手を焼いたのか、『デス・レース2000年』のリメイクに出演することはリスキーであるとトム側が判断したのか、いつの間にか『3000年』の企画は消え去っていたのでした。。。 ジェイソン・ステイサムを新たな主演に迎えて仕切り直した本作を観ると、この企画からトムが降りたのは正解だったように思います。本作は世界観の脆弱性という大きな弱点を抱えているのですが、B級番長ステイサムの偉大なB級オーラが観客の疑問をすべて掻き消してしまい、とてもピュアな気持ちで映画を鑑賞することが出来るのです。トム・クルーズでは、こんな特殊な芸当は不可能でした。内容は力押し一辺倒でツッコミどころも大量にあるのですが、ともかく勢いあるB級アクションとしては満足できる仕上がりとなっています。中盤で登場する武装トレーラーのバカバカしさなどは一見の価値ありで、マシンガンや火炎放射器が車体の至るところに取り付けられ、ケツには戦車をくっつけられているという小学生の落書き並みのデザインには頭が下がる思いがしました。主人公とライバルが共闘してこれを迎え撃つという週刊少年ジャンプな展開もバチっと決まっており、王道のB級ぶりが心地よくて仕方ありませんでした。これに巨乳美女というオマケも付くのですから、男子必見の映画だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2012-09-29 23:51:00)(笑:1票)

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