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K&Kさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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201.  踊る大紐育(ニューヨーク) 《ネタバレ》 
~On The Town~町で・・・(アレやって、コレやって、ソレもやって、あと当然恋もして)…みたいな意味かと。 当時も今も最先端の大都会ニューヨーク。24時間という限られた時間で目いっぱい楽しもうって映画。 かなりツボにはまった。-24-みたいな時間表記も新鮮。 朝6時から元気いっぱいに街に飛び出す3人組。あっちこっちの観光地を駆け抜けるように見て回る。 ミス地下鉄。NY市交通局の、たぶん暇つぶし企画の、毎月入れ替わる、ミス。 アイビー・スミスを有名人だと思ったゲイビーたちの純粋さ、田舎者っぷりが良い。 クラブでの、女性陣のアイビーに対する気の使いようが、粋でとっても気持ちいい。 サービスは文句ないけど、あそこまでの上げ底ビールにも驚き。  クラブ・サンバカバーナ   これにて終幕 おやすみなさい お気に召したら うれしいわ~♪ クラブ・ディキシーランド  これにて閉幕 おやすみなさい お気に召したら うれしいわ~♪ シャンハイ・フロア・ショウ これにて終幕 おやすみなさい お気に召したら うれしいわ~♪ 3か所とも同じかい!おんなじ歌と内容なのかい!…いやまぁ、どこに行っても同じように満足できるショウなんだろうな。  アイビーがルーシーに代わって、一人落ち込むゲイビーに吹き出した。 でも決して美人とは言えないルーシーへの優しさもとても良かった。 のどかだけど思いのほか迫力のあるカーチェイス。あんな深夜ににぎやかな遊園地。1949年なんだよな?ニューヨーク信じられない… 6時になって別な水兵さんたちが元気に飛び出してくるのもエンドレスな感じで良い。 東西冷戦が始まるころで、緊張感も高まっている傍らで、こんなに楽しく、思いやりがある町があるアメリカのデカさが感じられる。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-04-10 17:45:29)(良:1票)
202.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
~Double Indemnity~倍額保障。 条件が整えば死亡保険金が倍になる制度で、パッと調べたらかんぽ生命くらいしか出てこない。時代遅れだからか、レアなのか。 フィリスがネフを誘導して保険金殺人に導くんだけど、この倍額保障に拘らなければ、キーズにここまで執拗に調べられることもなかっかもしれない。もちろん、保険加入から死亡までの期間が短いとか怪しいところは多々ありだけど。 事故ではなく殺人の疑いが出た際、ネフの関与は疑わしいのに、キーズが無罪・無関係を信じたのが意外というか、ネフの考えるような人ではなかったところが面白かった。証拠とか関係なく、長年の同僚に対する無償の信頼とでも言うのか。私がネフだったらあのボイスメッセージを聞いたら泣いてしまうな。 登場人物が少ないためにとても関係が濃い話になっていて、振り返って考えるほど、フィリスの悪女っぷりがとんでもない。死刑は免れないだろうけど、ネフが彼女を撃ち殺したのは、フィリス本人とローラへの優しさかもしれない。 名前があるだけの脇役と思ってたザケッティが、あそこまで事件にかかわってくるのも意外。そして入り口でザケッティを帰すネフがカッコいい。 1944年のクライム・サスペンスで、ここまでの完成度とか、恐ろしいセンス。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-04-10 17:07:18)
203.  新幹線大爆破 《ネタバレ》 
これは凄い。今なら『スカイツリー大倒壊』みたいな感覚か。 東京オリンピックから約10年。 世の中の役目を終えた工場の社長。目的を無くした活動家。集団就職で上京した失業者が、高度経済成長の象徴、新幹線に爆弾を仕掛ける。 とてもテンポが良く、故障車の回避や妊婦の出産、徐々に不安が広がる乗客のパニックと、現実に起きそうなトラブルが、観ていて手に汗握る。 爆弾を探すための写真撮影を2回やるのがリアル。 新幹線のミニチュアもよく出来ていて、東京から来た汚れたひかり109号と、ピカピカの救援車の並走なんて胸熱だ。…そのあと運転士の青木君がバーナー使うのはどうかと思ったけど。 指令室で提案された『後続車両に乗客を移して』…は出来ないにしても面白いアイディア。 並走させて乗客を移す作戦だったら上手く行くかも?と思った。実際この作品の影響を受けたといわれる『スピード』でやったんだよな。 引っ掛かったのは現金受け渡し、最初から高速道路で良かったんじゃないかな。 川からロープで引き上げるのはかなり体力使うし、そのあとバイクの運転は腕が辛いし。 警察の描き方がかなり雑。 大学の柔道部の件は冗談みたいなシナリオだし、逃げるだけの犯人をやたらと銃で撃つのは何故だ?…まぁ撃たれた健さんがカッコいいけど。 あの太鼓叩く宗教団体が頭から離れない。彼らが無事停車した時に喜ぶ姿が、なんか可愛くて良い。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-04-08 20:12:47)(良:1票)
204.  天気の子 《ネタバレ》 
大好きな女の子一人のために国家権力や自然の神秘と戦う事を全肯定。新海監督版、天空の城ラピュタかな。 ラピュタが観てる自分をワクワクさせる冒険活劇だったのに対し、この作品はパズーみたいな行動力が無かった過去の自分を思い出させる。 バカみたいなオカルト話が信じられて、また会いたい気持ちだけで、常識的に万に一つの可能性もないことに突っ走れる帆高。 ファンタジックな現象は大抵科学的に説明がつくし、そもそもそんな話に真面目に耳を貸さず、ハナから信じない自分。 この映画を見る自分はもう若くなく、帆高ではなく圭介の気分。老刑事が言う「大丈夫ですか、あなた今、泣いてますよ」が刺さる。 女の子一人の為に東京が水没したのには驚いた。バルス!自己犠牲の真逆。でもこれが悪いとは思えない。 おととしまで、今の日本のほぼ全ての人が、24時間マスクをしないと外出できない世の中が来るなんて、誰が想像したろうか? こんなとんでもない世の中になっても、アッケラカンと映画見てるんだから、きっと東京が水没しても何とかなってるんだよきっと。 スマホで何でも解る時代、世界情勢とかリアルタイムに分かるようになってきたけど、 そんな世の中のこと心配するより、自分が大切に思う人をもっと大事にしよう。と思えたりしました。 はい、自分で書いていて全然作品レビューじゃないなと思います。
[地上波(邦画)] 8点(2021-03-27 01:59:34)
205.  チャップリンの黄金狂時代 《ネタバレ》 
現時点で私が見た一番古い映画作品。タイトルの『◯◯狂時代』って何だろう??当時の流行りかな。ゴールドラッシュのままか、訳すにしてもそのまま『一獲千金』でも良いような… 最初から最後までドタバタする作品で、内容の可笑しさは2021年の今でも通用する。 主人公に名前はないようだ。字幕では「小さな探検家」「小さな英雄」、ウィキの動画では「Stranger(よそ者)」、単に「小男」とか。何で名無しなんだろ?じゃあジョージア・ヘイルも名無しで、単に美女とか踊り子かと思えば、モトから“ジョージア”って役名のようだ。  この映画で一番驚いたのは雪山を沢山の人が登っていく最初のシーン。どうやったんだろう? ビッグ・ジムの飢えた表情が凄い。本当に人でも食べてしまいそうな顔。熊を仕留めたあとのチャップリン、皿を並べてナイフを研ぐ時の真剣な表情が素晴らしい。 パントマイムや特撮を使った山小屋の撮影が凄い。劇では出来ない、映画だから出来る技術をふんだんに取り入れている。 最後の船での再会~結末は、取って付けの感があるが、これくらいオーバーなハッピーエンドで気分良く終わったほうが正解だろう。 大金と美女(と友達も)を手に入れる“一獲千金”だけど、ジョージアが決して大金に目が眩んだ訳じゃないのが良い。  今と当時の違い、無理矢理ケチを付けるとしたなら、大人しい犬を蹴るところは、今だと入れられないかもしれない。逆に言えば、それくらいしかケチのつけようのない上品なドタバタコメディに仕上がっている。 …差別、蔑視、ハラスメントで大騒ぎのいま、映画という当時の文化を物語る貴重な財産が、あと付けのルールで汚されること無く、そのまま楽しめる世の中であってほしいと思う。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-21 15:44:15)
206.  Uターン 《ネタバレ》 
~U Turn~進行方向の完全な逆行…良かれと思ってやること成すこと、全部悪い方へ行ってしまう。そして“引き返”せない。って意味かな。 ペギー・リーの陽気な歌『イッツ・ア・グッド・デイ』で始まるが、すでに指がないボビー。盲目の男に呼び止められてソーダを買ってやったり、ダイナーで変な女の会話に付き合ってやるなど、案外人が良い。でも要領の悪い小悪人らしい。 ラジエータートラブルでスペリアの町(実在する)へ。ここがまた、いかにもって感じの田舎町。田舎のメインストリートの、らしさが丁寧に描かれていて、ジワジワとした暑さと居心地の悪さを感じる。 住人たちと絡むたびに体力や精神や財産を削られて弱っていくボビーが気の毒で笑える。 真面目な映画監督って印象のオリバー・ストーン。まさか彼の映画で吹き出してしまうなんて、思っても見なかった。 最後はちょい重たいけど、ラジエータートラブルでスペリアを抜けられなくなるのもシャレが効いてる。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-20 18:35:15)
207.  リオ・ブラボー 《ネタバレ》 
~Rio Bravo~メキシコ国境の大河リオ・グランデ川を3つに分けた時の、中流部の別名。スペイン語で意味は怒りの川。テキサス州の漠然とした川沿いの町。 「西部劇全盛期のオススメ作品は?」と聞かれたら、この映画は入れたい。シンプルでテンポが良く、西部劇の魅力が詰まっている。 スーパーヒーローのジョン・ウェインが颯爽と登場して、すぐ一言もしゃべる事なく殴り倒されるのに驚いた。しかも助けた相手に。 チャンスの仲間3人(ホテルのカルロスも仲間か)が、それぞれ魅力的で見せ場があるのも良い。 特にスタンピーがいい味出していて、セリフの一言一言がなんかツボにはまった。あんなヨボヨボで足が悪いのに、機転も利くし頼りになるし、何より一緒に居て退屈しない。最後に助けに来てダイナマイトを華麗に投げるさまは『そうそう、こういうのでイイんだよ』って思ったわ。 デュードとコロラドが歌いながら、4人でくつろいでいる場面がなんかいい。 最後にチャンスがフェザーズに告白してストッキングを投げる。それを拾い上げるスタンピー。平和になった町の表現が、ベタだけど良い。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-20 17:30:53)
208.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
~Rear Window~文字通り裏窓になるが、一般には使わない言葉だと思う。車用語しか出てこない。映画のために造られた言葉かもしれない。 数あるヒッチコック映画の中で、中学生当時観た中で一番好きだった作品。 自分とは直接関係を持たない人にも、それぞれ生活やドラマがあり、勝手に生きている。そんな当たり前の事実を切り取って(のぞき)見る事が出来る作品。 透明なゼリーでアリを飼う“アリの巣監察キット”や、街を作って発展を見るゲーム“シムシティ”を映画でやったやつ。 ジェフリーズのアパートと向かいのアパートの距離を考えると、随分とみんなオープンな生活をしている。当時は今ほど、そんなに隠すものもなかったろうし、ストーカーなんて言葉は無かったおおらかな時代。新婚カップルがいつもカーテンを閉めていて、逆にソッチの方が怪しい雰囲気。今ではそれが普通。 そんな裏窓観察の中、突然現れなくなる登場人物を、一方的な決めつけと妄想で殺人事件として観察する話。そもそも殺人か、単なる不在なのかがメインのため、ほぼジェフリーズの推理通りの殺人事件で、更なるドンデン返しなど無い。 殺人事件は重要だけど、裏窓から見える住人の日常だけでも充分に面白い映画になりそうだ。もっとも、下着姿で踊る娘ばっかり観てしまいそうだけど。 子犬が死んでから、暗がりでのタバコの灯りなんて、想像力を掻き立てられて素晴らしい。 そして手紙を届けるリザが小さく手を振るのが可愛い。さすが公妃。
[地上波(吹替)] 8点(2021-03-13 22:23:50)(良:1票)
209.  シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 《ネタバレ》 
新劇場版3作のレビューをすっ飛ばして、忘れる前に先に書いておこう。 前作Qからかなり年数が経っているので、おさらいをしての鑑賞が望ましいけど、9年は長すぎたと思う。Qがモヤモヤする内容だったために、少なくとも第三村の存在、ミサトの想い、戦艦の経緯は、Qの段階で知っておきたかった。それかもっと矢継早に、この:|| を観たかった。  第三村で何にでも好奇心を示すそっくりさんが可愛い。色々学んで人間らしさを身に着けたところでのお別れは悲しいが、それを乗り越えるシンジ。無気力状態から自分のやるべきことを見つけたからだろう。 ネルフとヴィレの最終決戦へと向かうが、正直ついて行けてない。置いてけぼりだ。ヴンダーを新しい槍に変えるなんてアイデア、マニアックな人は「おぉ、その手があったか!!」って思うかもしれないが、観ててサッパリだ。 真っ赤な決戦場、人型の何かがたくさん浮かんでる。エヴァ2機とエヴァモドキのものすごいスピードの戦闘。今回の巨大アヤナミは、顔だけが写実的で、髪や体はアニメと前にも増して気持ち悪い。 ゲンドウが出てきて13号機に乗って初号機と戦う。けど、どっちも同じ色で何してるかイマイチよく分からない。目が追いつかない。戦場が第3新東京市になる。エヴァが転んで建物がズレるが、なんか特撮の模型みたいだ。戦場がミサトのマンションや教室に…いや確かに、こんな親子の関係に勝った負けたはどうでもいい。 あと、エヴァのカッコイイ戦闘シーンも宗教っぽい謎もどうでもいい。そんなの女の子のサービスシーンくらいどうでもいいのが:||の本題のようだ。   ゲンドウは庵野監督であり、成長したシンジでもあり、アニメにどっぷりの成長してない大人のエヴァマニアでもある。 そして子供=シンジ=庵野監督のエヴァだろうか。エヴァの最後はこれで3回目。TV版では視聴者に伝わらず、旧劇場版でも上手く伝わらず金返せと反感を買い、自分も病んで、そして今回。劇中も失敗とリセットを繰り返しての今回だ。しかし26年も向き合って、大失敗した『まごころを、君に』と同じアプローチで、よく完結させたものだと思う。 アスカが怒っている理由。シンジに説明されないと解らなかった。好きだった。と、大人だから言える告白。こういうの、同窓会なんかであるよね。旧劇の首絞め→「気持ち悪い」から、なんて余韻のある最後だろう。 マリ。何でこのキャラが出てきたか解らなかった。当時アスカが二人に別れたとか聴いた気がする。アスカは庵野監督の憧れの女の子。旧劇では憧れの対象と、最後に自分が選んだ女性も全部アスカだったから、話の流れから「気持ち悪い」も、わかる気がする。うん気持ち悪いわ。  マリはレイやアスカのような突出したカリスマ性(キャラ人気)は持たされていない。レイもアスカもアニメらしいキャラで、クラスのアイドルや憧れの対象だけど、自分が付き合うとかは現実的じゃない。もっと近くにいる、頑張れば付き合える、自分にとって等身大のリアルな女性がマリ。語尾に『ニャッ』って付けたり、アスカを姫と呼んだり、現実のアニメ好きな女の子っぽい。リアルシンジくんの近くにもこういう子は居るはずだ。 アスカのように大人にはなれないレイ。髪だけ伸びた姿は、精神的に大人になったシンジには、もう憧れより見守りの対象に思える。カヲルは子供だった当時のシンジの憧れ、理想の自分だったのか。ホームの向こう側に、アニメのままのカヲルとレイ。 シンジとマリはアニメから現実社会へ。やっと、庵野監督が伝えたかったことが伝わる、意味のわかる終わりを観ることが出来た。  おめでとう!!
[映画館(邦画)] 8点(2021-03-12 23:57:23)
210.  鉄道員(ぽっぽや)(1999) 《ネタバレ》 
あぁ、これは高倉健さんの遺言。とても私的なメッセージの映画だったんだな。 国鉄からJRになり、赤字合理化と人員削減、廃線に追い込まれる炭鉱時代の花形路線は、当時の日本映画業界の弱体化のようだ。 この作品で映画界から引退を考えていたかは解らないけど、まだ自分も業界も元気なうちに撮っておきたかった映画なんだろう。 健さんのセリフの「ぽっぽや」は全部「映画俳優」や「役者」に置き換えても通じそう。 雪子の作った鍋を食べながら、膝を正しての告白は、健さんから自分の周りの人たちへの、感謝の言葉に思えてならない。 健さんは江利チエミさんと結婚し、子供を授かるが中絶、離婚ののちチエミさんも亡くしている。 実の妻と子供への思いを、映画人らしく佐藤乙松を演じながら、泣きながらの懺悔をしたんじゃないだろうか。 当時まだ若い頃に見ていたら、また違った感想だったかもしれないが、自分も歳を重ねたのと、健さんが亡くなった今だからそう思える。 後出しジャンケン。後半は涙が止まらなかった。  当時売れっ子の広末涼子との共演は、健さんの希望より監督らの希望=若い観客にも高倉健の映画を見てもらいたい、ヒロスエ目当てでも良いから…じゃないかな。 最後の小林稔侍の「聴いて泣かせるうちは、ぽっぽやも、まだまだ」は、「まだまだ映画でやれるよ」という健さんへのエールだろう。 この映画が1999年という区切りの年に公開されたのも、本作以降主演作は数本あっても大きな映画賞は辞退されているのも、健さんの色々な決意の現れに思える。 しかし、ぽっぽやが健さん主演のファンタジー映画だったとは思わなかったなぁ。 そして当時の広末涼子の美しさと透明感はハンパない。昭和の映像にいきなり現代人が出てきたみたい。 あとエンディングの歌と電車の画は、まるでジブリ映画の実写版ようだった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-02-16 00:41:10)(良:1票)
211.  許されざる者(1992) 《ネタバレ》 
~Unforgiven~許されていない。 実際に顔を傷付けられたのはデライラだが、償いの馬を受け取るのは主人のスキニーだ。もちろんデライラが声高に復讐を望んだわけではない。無関係のデイビーは罪滅ぼしに名馬を渡そうとしていたし、デライラもそこまで怨んではいなかったと思う。だけど復讐の対象は2人共だ。罪を償ったのに、なぜこの2人は、特にデイビーまで許されなかったのか。 実際の事件から尾ひれがついて、娼婦はアチコチ切り刻まれたことになっていて、悪逆非道のカウボーイに怒りを覚えるマニー。 子供のために金が必要なマニーは、実際の(そこまで重症ではない)デライラを見ても疑問をぶつけない。もう金のためにカウボーイを殺すことに決めている。 過去の罪の許しを請うマニー。死を怖がり、死の国と妻の悪夢にうなされていることをネッドに告白する。非道の限りを尽くしてきたマニーは、妻との生活で改心したが、その妻とは死別、酒も女もやらず、人里離れて真面目な農夫をしているが、悪夢は彼を許していない。 マニーは一見無関係の酒場の主人スキニーを撃ち殺す。 友人の死体を店先で見世物にすることは許されることではない。例えスキニーが銃を持っていなくても。 何が罪なのか、誰が罰を与えるのか、どんな罰を受ければ罪は許されるのか。色々と考えさせられる映画だ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-02-13 21:08:00)(良:1票)
212.  ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 
初見はテレビの吹替版。30年ぶりくらいの視聴。 (Upper) West Sideはマンハッタンの地域名。あまり治安が良くない貧しい街として描かれてる。日本だと…西成? これは多感な時期の少年・少女目線の作品だから、ミュージカルパートに大人は入ってこない。先に住んでいたヨーロッパ系移民と、来たばかりのプエルトリコ移民。彼らは同郷の仲間でグループを作り、どうでもいい縄張り争いに一生懸命だ。 ジェッツもシャークスも若者たちは鮮やかな色の服を着ている。対する大人は白、グレー、茶に制服。 街並みは、ウエストサイドだけに西日が当たるのか、カラフルだけど色褪せている。対して夜の灯りや濡れた路面はどこか輝いて見える。 ミュージカルパートは素晴らしいものばかりだが、特に『クインテット』の疾走感が物凄い。 夜の闘いを前に昂るジェッツとシャークスのコーラス、普段と変わらずベルナルドの帰りを待つアニタ、トニーとマリアのお互いを求め合う歌声は伴奏を飲み込むように溢れ出る。5組の歌の混ざり合いは息を呑む美しさだ。 全てを染める真っ赤な夕焼け。大人たちには普通の夕焼けも、若者たちには燃えるような赤に見えているんだろう。 トニーが死に、抗争も愛も終わり、一人、また一人と運動場から立ち去る薄汚れた服装の若者たち。あれほどみんなが待ち望んだ『トゥナイト』。夜はただ暗く、街灯は虚しく地面を照らす。街が真っ赤に染まった『クインテット』とは対照的に、暗いモノトーンの運動場を赤色灯の赤い光だけが無機質に点滅するラスト。60年経っても学べるものが多い作品。
[地上波(吹替)] 8点(2021-02-04 22:32:58)
213.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
半地下の家に驚いた。生活スペースより上にトイレがあるなんて…たぶんあの高さでないと汚水が逆流するとかなのかな。と思ったら洪水で逆流してた。 家族公認で上の住人のWi-Fi盗んだり、食事もジャンクで、バイトのピザの箱組みも雑。ピザ箱は4個に1個失敗してるから、家族の誰かが雑なんだけど、他の三人が修正したりしない。アレでは家族揃って不景気の波をモロに浴びても仕方ないと思える。 奥様の家庭教師審査をあっさりクリアするギウ。芸術に関してもっともらしいこと言って奥様の共感を得られたギジョン。彼女は嘘の演技も証明書の偽造もうまい。メルセデスをスムーズに運転する寡黙なギテク。何でこの才能溢れる家族が揃って失業してるんだろう?ピザ箱くらいきちんと折れよ。 チュンスクの家事料理の腕前まで合格となると、ちょっと話がうますぎる。この奥様(ヨンギョ)はギウ達の話を鵜呑みにしてばかりで、自分で調べたり友人から紹介受けたりしないのか?まぁ、テンポよくサクサク進む小気味よさもあるけど。逆に、韓国の金持ち家族は他人とコミュニケーションを取らないのかもしれない。主にダヘだが弟や家政婦の秘密をべらべら話してしまう。最後のパーティで急に友人たちがたくさん出てきたけど、きっと上っ面の付き合いばかりなんだろう。 地下室が出てきたときは驚いた。北朝鮮との戦争対策か、なるほど納得そういうモンかもな、説得力がある。元家政婦さんの北朝鮮ギャグ面白い。 洪水で避難したときの、ギテクの『計画とは?体育館で泊まる』の話。これは災害とかで日常生活を突然に奪われた経験のある人は、そうだよなって思ったんじゃないかな。 そんな災害なんて他人事、誕生パーティの準備が楽しそうな奥様。これも仕方ないよな、住んでる世界が違うんだから。 妻を殺された地下男の復讐。家庭教師なんて良いから鍵をよこせというご主人。これも、仕方ない。と思う。この子の親だからな。 出来れば、地下夫婦も半地下夫婦もそこそこ幸せな最後になればと思っていたけど、この悲しい結末も納得できた。 父のモールス信号から、将来金持ちになって父を助けるなんて、また計画を建ててるギウ。無計画という父の最後の晩の言葉はどこへ。  結構、国民性を自虐的に(開き直って?)表現してるのに好感が持てた。 のっぺり顔の主人公キム一家と、俳優やアイドルみたいに整った顔立ちのパク一家。整形が普通の国なので、お金のある人は良い顔も手に入れられるんだろう。血まみれ展開は想像できたが、金持ち夫婦の結構生々しい性描写、万人ウケを狙って保守的になってないのが良い。見といて良かった。
[地上波(吹替)] 8点(2021-01-29 14:05:01)(良:1票)
214.  恐怖の報酬【オリジナル完全版】 《ネタバレ》 
~Sorcerer~『魔術師』。ドラクエとかでお馴染みの魔法使い(Wizard)は、教本とかで魔法を勉強する。対して自然に魔法が使えるのが魔術師…だそうで、作中魔術の描写は出てこないけど、南米の大自然の恐ろしさと、登場人物の因果が、俯瞰視点からだと魔術のように見える。 パレスチナ過激派の爆弾犯、金融犯罪者、強盗犯、そして問題は殺されたナチ残党と、殺し屋・・・この辺どう解釈すれば良いだろう?ニーロはたぶんマフィアのリッチーに雇われた殺し屋だろう。機会を伺ってスキャンロンを殺そうと企んでいるから、爆弾運搬に参加するため、一つ空席を作るためマルケスを殺したのか?ちょっとリスクが高い。実際マルティネスにシオニストだと疑われてるし。じゃあ、たまたま他のナチハンターが殺したのか?それも考えにくいから、やはりニーロがマルケスを殺したんだろうな。 先進国の法律が届かない街に潜む犯罪者たち。多くは大金を手にして故郷に帰るため、この危険な任務に応募する。 自分の命を預けるトラックを選び、みんなで黙々と直す描写に引き込まれる。今のコンピュータ制御の車と違い、自分で直せる機械は楽しい。でもそのトラックが怖い。特にセレーノ達のトラックの顔。鉄で出来た怪物みたいで、原住民が作ったらしき石碑とオーバーラップする。 語られない人物も興味深い。殴られた痕がある花嫁。何があった?ドミンゲスの行く手を阻むインディオ、何が目的なんだ?老人の「ポサ・リカは死んだ」どういう意味?犬のような動物の死骸(上半身)を背負って運ぶ男。食べるの?血垂れてますけど? ハイライトのグラグラの吊橋、怪物のようなトラック、汚れきった街。人が作ったものなのに、これら全てのものも恐ろしい自然の産物のように見える。この映画を見て南米旅行に行きたいと思う人は少ないだろう。 最後はマフィアの仲間が直接スキャンロンを殺しにくる。魔術に引き寄せられるように自ら逃げ込んだこの街。ここから出ようとした者は、結局誰一人抜け出すことは出来なかった。  上映時間が短い公開版は未見。このオリジナル完全版は出だしからイスラエル、フランス、アメリカとあちこちに飛ぶため、初見時は戸惑ってしまう。もしかしたら公開版のほうがスッキリ観られる仕様で、こちらは二回目以降の鑑賞に適しているかもしれない。 1953年版とともに公開版も見てみたい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-09 23:08:22)(良:1票)
215.  フラガール 《ネタバレ》 
紀美子がフラに出会い、1人前のトップダンサーに成長するまでを描いた、スウィングガールズやウォーターボーイズのような作品として観ていた。それも間違いじゃないけど、あんまり残らない映画だったなぁ。 今回二回目の鑑賞。落ちるとこまで落ちたダンサー平山まどかの自分探しと成長の作品として観ると、これがよく出来た作品だと思えたから、不思議だ。 町の風景や居酒屋、フラ教室、登場人物の服装まで、60年代の炭鉱町をよく再現できていると思う。一部東北の方言がオーバーに思える人もいるが。 イチからフラダンスを習うのに集まったド素人の炭鉱娘たち4人と、ある程度基礎は出来ている人に本場のダンスを伝授するんだと思って呼ばれたであろう平山。話が違うと初っ端からハレーションが起きる。プロを呼べばいいじゃない。とか、来てしまったあのタイミングで言うところから、平山の状況の理解してなさが伝わる。山を何とかしたいと思う吉本の努力が裏目に出てしまったんだな。ド素人の集まりだといえば平山は呼べなかったろうし、基礎が出来てないと駄目だと言えば、炭鉱娘は集まらなかっただろうし。 紀美子達は平山の教え方に誰もついて行けない。それはそうだ、平山はきちんとしたゼロからの教え方なんて専門外なんだから。それでも親の借金で先がない平山は、プライドを捨てて炭鉱町に残り、ド素人にどうやって教えたら良いかを、一生懸命工夫する。 平山にとって早苗の事件はかなりショックだった、早苗の父を風呂場まで殴りに行く。彼女のまっすぐな性格が出てしまった。翌朝「父ちゃんを殴った東京もん」として、早苗との別れの日に顔を合わせられなくなる。これは洋二郎にバケツの水を掛けた後に居酒屋で会ってしまった時も同様。突っ走って後から後悔する性格のようだ。フラを教える条件に『どんなに辛くても絶対に泣かない』と言っておきながら、早苗との別れに泣いてしまう平山。 炭鉱の映画で落盤事故は付きものだけど、平山はフラ決行の決断を一人で背負う。罵声を浴びせられながらも、借金を返す手段(仕事)と引き換えにフラガールたちを守り切る。東京から逃げてきたと言われ続けた彼女だが、彼女は親の借金も生徒たちも、自分を犠牲にして受け止めた、不器用な女なんだ。  松雪泰子と蒼井優のソロパートは圧巻。だけど最初観たとき、練習(特訓)風景があまり無いのに、みんないつの間にかフラが上手くなっているのが、なんか都合よく見えた。だけど、他のダンサーはプロかと思ったら、全員ダンス経験の無い女優さんたちなんだそうな。凄い猛特訓、猛練習をしたんだろうな。そこをもっと映画のなかで描いても良かったかも。 最後に早苗の再会とか作ってほしかった気もするが、当時の常盤と夕張の距離を考えると、それは無理。もし最後に早苗が登場して、ステージで一緒に踊ったりしたら、単なるお気楽な青春映画に成り下がっていただろう。 そしてこの映画は平山先生、紀美子、紀美子の母の三人の女性の生き様、成長を5:4:1くらいの割合で描いたため、それぞれが描き切れてないように思う。紀美子がどうしてセンターになったのか、才能なのか努力なのか。そして母の心情の変化をもうちょっと丁寧に描いた、3時間バージョンなんかもあると良かったな。
[地上波(邦画)] 8点(2020-12-20 11:06:32)(良:1票)
216.  グリーン・カード 《ネタバレ》 
そうか、あの温室付きマンションに住むには、会ったこともない移民男性と偽装結婚すれば良いんだ! …誰かに相談すれば100%止められるアイデアを実行してしまったブロンティ。90年代は時間と金と人生を自己満足の為に使う人が多かったようだ。彼女の場合はグリーンゲリラとかって自然保護団体に所属し、自分の時間を植物に費やしてる。本当に植物が好きというより、そこまで植物が好きな自分が好き。なのかもしれない。 ベジタリアンのフィル(これ本当に彼氏か?)も、本当に好きで付き合っているのでなく、植物好きが好きになる彼氏像だから、置いておきたいだけに思える。フィルに対する気持ちが見えてこないし、フィルにとってのブロンディも、簡単に落とせる範囲の女なんだろう。 ジョージは生きるために色んなことをやってきた。ピアノの演奏を迫られて、普通は弾けないか弾けるかの2択だけど、あの結果は予想してなかった。 生活のために必死なジョージは、見ていて応援したくなる。一方そこまで追い詰められていないブロンディには、もっと相手への思いやりとか、自分をしっかり見てみろよ。って思ってしまう。面接での別れ際でも、指輪を返すブロンディの気持ちの無さが鼻につく。 ポラロイドで撮った写真で作ったスクラップは、面接の準備以上の愛情が感じられて、本番で言葉を滑らせるジョージは、見ててあーっ…てなった。 緑の生い茂る公園を二人で駆け抜けるシーンが印象的。 音楽が自分の好みなようで、更にエンヤの曲が流れると、なんか懐かしくて得した気分になる。世代です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-12-17 01:27:26)
217.  キューポラのある街 《ネタバレ》 
私が生まれる前のお話で、今回が初見。 色々メッセージ性が強い映画だが、当時と今(というか私)の見方・捉え方は違うような気がしつつの鑑賞。 働く場を失う職人の父(黄門様だったのか)。せっかく紹介された新しい働き口も、自分の我儘で辞めてしまうダメなオヤジ。そんな夫に強く言い返せず、ずぶずぶと貧乏暮らしを受け入れ、居酒屋でホステスのような仕事をする母。 この二人は敗戦後の日本人の象徴だろうか?朝鮮戦争で鋳物職人は相当稼いだと思うけど、新しいこと(工場の機械化や労働組合の参加)を受け入れられず、飲み代とギャンブルに金を使い、無計画に子供を作ってしまったんだろうな。 最後はタナボタで労働組合に助けられ、何の努力もせず旨い酒を飲む。古い日本人ってダメだな。ってことかな? 自分の進学費用を稼ごうとパチンコ屋で働くジュン。貧しい家の事情を考えると、高校進学どころか修学旅行すら行って良いのか悩める中学三年生。同調圧力か見栄か、修学旅行のお小遣い増額希望に弱々しく手を挙げる姿が痛ましい。 先生の力添えで修学旅行に行けるとなった時の笑顔。その笑顔のまま在日朝鮮人の友達ヨシエが北朝鮮に行く話を聞く時の「あら!そう!良かったわね!じゃ!」みたいケロッと関心なさそうな態度が、悲しそうなヨシエと対照的に見えた。壮行会での涙より、こっちが気になったけど… 当時の北朝鮮帰国運動は、希望に輝く開拓地、未来の楽園へのチケットのように書かれている。でも現実は過酷な労働と同胞差別への片道切符だったようだ。ヨシエもサンキチもとっても良い子たち。希望と祖国愛を持った前向きな朝鮮人は、率先して北朝鮮に行ってしまったのかな。なんて? 母(一目でわかった菅井きんさん)は北朝鮮に行かないばかりか、とっとと再婚してどこかに行ってしまう。ホント最低だな古い日本人。でも結果論、行かないで良かった。 タカユキは貧乏に負けずたくましく生きる当時の現代っ子。サンキチが差別されるとトコトン庇ったり、仕事を辞めた父親に「俺高校行くから学費頼むぜ」とプレッシャー掛けたり、男気がある。 牛乳配達の少年のエピソードは見てるこちらもシュンとしてしまう。タカユキはこうやって善悪を実体験で学んでいく。 ジュンは全日制高校を諦め、就職と定時制学校への道を歩みだす。古くて貧しくてどんよりしたキューポラの街・川口に住むジュンやタカユキ、隣りの面倒見の良い労働組合のお兄さんら、みんなの若い力がこれからの日本を作っていくのだ!! 当時は今以上に手探りで進む時代だったと思う。この映画に共感して、進んで社会の歯車になった若者も多かったろうか?手探りながら前を向いた結果、高度経済成長、バブル経済と繋がっていく。凄いパワー。 続編があるとのことで見てみたいが、これほどの有名作の続編が、キャストも引き継いでいるのに無名なのが不思議。余程の出来栄えなのか? 余談だけどこの時代の邦画は声が聞き取りにくい。一部字幕が欲しいと思った。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-11-29 11:59:46)
218.  男はつらいよ 寅次郎紅の花 《ネタバレ》 
シリーズ48作目。1月半ばに神戸からクッキーを送って以来、音沙汰のない寅と、心配して尋ね人の新聞広告を出すおばちゃん。本作は“昭和の忘れ物”のようなくるまや一家が、阪神淡路大震災のドキュメンタリーを観るところから始まります。思えば平成初期って、ショッキングなニュースが多かった気がします。 46作目の就職氷河期以来の、現実世界と寅さん世界のリンク。“この大変な時代に、寅さんだったらどうするか?”を観せてくれました。フォレスト・ガンプみたいに、当時のニュース映像にチョロチョロ顔を出す寅。過去作でボランティアとかしたことあったっけ?なんて思う反面、被災者を励ます姿は不思議と馴染んでましたね。  もう一方で、渥美さんの体調から『これが最後かも』という想いで創られた本作では、今後の寅の行き着く先が垣間見えます。過去作で出てきたテキ屋仲間の晩年が、決して幸せなものじゃなかったことを考えると、南国奄美の島でリリーと二人でのんびり暮らし。庭にバナナが成っていて、近所の人が魚を分けてくれる。ここならきっと寅も幸せに生きていける。そう思える終の住まいでした。 一方で満男の恋にも決着がつきます。この時、野田さん他、複数の女性と関係を持っていた(らしい)満男なので、決して泉にずっと一途だったわけじゃないんだけど、収まる所に収まった感があります。長年の腐れ縁になってしまった寅とリリーの前で、きちんと「愛してるからだよ!」って告白できたのは、良かった。肩を抱けずに宙ぶらりんになった寅の左腕もまた、良かった。  「男が女を送るっていう場合にはなぁ、その女の家の玄関まで送るっていうことよ」観るからに痩せて弱々しくなった寅から発せられた、細い声ながらも精一杯の告白。寅さんの最後の恋は、こうあってほしかったって、そんな最後でした。 あの四角いカバンは、寅は敢えて置いていったのかと思いました。テキ屋から足を洗ってカタギとしてリリーと一緒に生きていく。そんな寅の決意だったのかなぁ?って。…三平ちゃんのダッシュで手元に戻ってきてしまったけど。 その後僅か一週間で、口喧嘩して出ていってしまう寅も、なんとも寅らしい。今後寅は、柴又のくるまやでなく、加計呂麻島のリリーの家に帰るんだなって、そう思える結末でした。 そして諏訪家の正月。「餅食ったら映画、観てくるか」やっと二人きりになるさくらと博。日本のお正月映画と言えば『男はつらいよ』だけど、二人はこれから何を観てくるのかなぁ?  とうとう最後になってしまった。私はもっとボンヤリした終わり方を想像していたけど、そして山田監督はあと2作品って考えていたそうだけど、そんな商売っ気や作品数の体裁ではなく、本作からはきちんと肌感覚で最後が伝わってきました。 「本当に皆さん、ご苦労様でした。」 そして当初の予定とは違う残りの2作品。きちんとお供します。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-04-24 00:09:37)
219.  禁じられた遊び(1952) 《ネタバレ》 
“Jeux Interdits(Forbidden Games)”邦題ままですが、英題の通り『禁断のゲーム』って意味合いでした。 両親が機銃掃射で殺され、子犬のジョックも死に、一人ぼっちになったポレット。親切なおじさんの荷車を降りてまで拾いに行った子犬の死骸。でもミシェルに「新しい犬をあげる」と言われればそれで納得してしまう幼いポレット。まだ自分の状況と、死について理解出来てない年齢です。 ポレットは警察の手で戦災孤児院行きとなり、駅で「ミシェル」の名を聞き、涙を流して駆け出す。ポレットはここでようやく、自分が一人ぼっちになったことを理解したんじゃないでしょうか。  となり同士なのにいつも喧嘩しているドレ家とグアール家。「十字架を盗んだのはグアールかもしれない」なんて根拠のない言い掛かりを真に受けて更に悪化する反グアール感情。冷静に話し合えば解決するものもあるだろうに、ついには墓場での殴り合いに発展する。そんな親同士のことは関係なく、両家の子たちは結婚を誓い合う。この両家の争いを国家間の縮図、戦争に至った些細な原因と考えると、日本と近隣国の関係も他人事とは思えないですね。  墓から十字架を盗む。この子たちがやってることを大人が見つけたら、そりゃ怒るでしょうね。だけど怒るべき立場の大人は、もっと酷い戦争をしてる。戦争の結果、無差別に人が殺され、身寄りのない子供が作られ、道徳を学ぶ以前に死と向かい合い、見様見真似でお墓を作り、犬一匹じゃ可愛そうだからと、必要のない殺生をしてまでも墓に収める。この子たちは大人を困らせようとしていたのではなく、ただ子犬のお墓を綺麗にしたかっただけ。 タイトルの『禁断のゲーム』とは、恐らくこの子たちのお墓作りというより、大人たちがしている戦争の方でしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2024-03-17 23:08:03)
220.  クレイマー、クレイマー 《ネタバレ》 
“Kramer vs. Kramer”『原告クレイマー氏と被告クレイマー氏の裁判』。むかーし観た時は、夫婦の離婚ばかりに目が行っていたけど、その根底に女性の社会進出があったのね。夫サイドで話が進むから、いきなり離婚を切り出されたテッドが、今までやったことのなかったフレンチトースト作るのに悪戦苦闘する様子が、なんともコミカルに観えたっけ。自宅に連れ込んだ会社の同僚が素っ裸でビリーに挨拶するとこなんて、笑えるような、困ってしまうような…軽快なテーマソングも相まって、重いテーマだけどスルスル観られます。 今風に言うと、仕事と育児の両立がどれだけ大変かをシュミレートして観せる映画なんだけど、当時は“女の仕事(家事)を男がするのがどれだけ大変か”に重きを置いているように思えます。『女性が社会進出するっていうことは、男性が女性の仕事をすることですよ。』と。新規事業を任されるくらい、会社に期待されていたテッドが、育児が原因で結果を出せず、あっさりクビになるところも怖い。  映画を見る限り、ジョアンナが耐えられなかった部分、夫婦生活におけるテッドの落ち度が描かれません。突然、ビリーを置き去りに出ていって、ずっと音沙汰もなかったのに、今度は一方的にビリーの親権を取り戻そうと裁判を起こす。何とも身勝手に観えますが、テッド視点だからというのと、これほどの行動を起こさないと、女性からの離婚は難しい時代だったのかもしれません。 別居から離婚中の1年半ほどの間に、ジョアンナがどういう生活をしているかの描写はありませんが、彼氏が出来て、かなりの高収入で働いています。裁判の結果も『そうなるよな…』って思えます。 最後のフレンチトーストの手際の良さが印象的でした。私は本作を30年くらい前に観てたんですが、結末を思い違いしていました。判決通りジョアンナがビリーを引き取ったものとばかり… なので今回、ビリーの気持ちも理解できて『母親を失って、今度は父親と家を失うのか』と可哀想に思っていたところ、ジョアンナの選択。勝負に勝って試合に負ける。結末こうなってたんだと納得すると共に、自分の記憶のあやふやさに苦笑い。  この映画の主題は、離婚のゴタゴタより、当時の女性の社会進出が進んだ結果のシミュレートを、女性に観せるのが目的の映画なんじゃないか?と思いました。男の方が出て行き、残された女が子供を抱えて苦労する話は、いつの時代もあったと思います。今回は逆で、女が出て行きます。 結果的にジョアンナ・クレイマーは、自由を手にする代わり、クレイマー姓で積み重ねた数年間の全てを失います。突然育児を押し付けられたテッドは、最初は悪戦苦闘するものの、最後は手際よくフレンチトーストを焼きます。つまり『大変だけど男にも育児は出来るんだよ』と。乱暴な言い方をすると『離婚したら女は全部を失うよ?それでも良いの?』と。当時のフェミニストは、この映画をどう観たんでしょうか?
[ビデオ(字幕)] 7点(2024-03-11 16:59:17)
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