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Сакурай Тосиоさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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201.  悪魔の墓場
確かにジョージ・A・ロメロのナイト・オブ・ザ・リビング・デッドの焼き直しでしかないんですが、あくまで放射線をただゾンビ発生の原因として採用したに過ぎなかった元ネタよりも超音波による公害を明確にテーマに据えた点は評価できます。ラストの展開も死者が蘇るという設定をより生かしていると思います。それにゾンビ映画に似つかわしくなく結構おしゃれな雰囲気があっていいんですよねー。主演のレイ・ラブロックをはじめ、登場人物がみんなファッショナブルです。滝の前で点滅し続けるフラッシュと警察のカメラのフラッシュを繋げる、ホテルの看板と本物のフクロウを繋げる、編集と場面転換もセンスがあります。冒頭の有害な煙が漂う都会と緑豊かな田舎の自然のコントラスト、環境問題テーマを視覚イメージとしても昇華できています。なんだかゾンビの出てくる場面が一番ダサくてがっかりしちゃうぐらいです(笑)。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-19 23:36:09)
202.  悪魔のいけにえ
私も中高生の頃に見た時はすごい映画だ芸術だ!と感動すら覚えたのですが、まあまともに内容も理解していないがゆえの評価ですね。撮影と音響はいいのですが、娯楽性が希薄な上に真剣に考察するようなテーマ性もないです。ナチスとかベトナムの暗喩ですらありません。今見直して見ると純然たる食肉産業従事者への差別煽動映画、というよりは差別意識を悪用したような映画ですかね。肉食批判ですらないですよね、不快感・嫌悪感を催すための演出に利用されているだけですから。日本では絶対に作るのが許される作品ではありません。車椅子の身体障害者もあからさまに笑いものにしている、影響という意味ではこっちの方がヤバいかもです。不快なものを描くことではなく不快に感じさせようとしていること自体が不快です。昔は絶叫や眼球アップのしつこい演出が良い…と思ってましたが、しつこいものはやっぱりしつこいだけでそれ以上の価値はないです。13日の金曜日って実はすごくまともな作品だったのかもと思えてきました。少なくともあの映画にはある程度ジェイソンへの同情心があります。
[インターネット(字幕)] 1点(2023-04-18 23:43:18)
203.  黄金(1948)
よれよれでボロボロの服、ボサボサの髪や髭の小汚さ、ロケ中心でナイトシーンも明るすぎず自然です。1940年代のハリウッドでここまでリアリティを追及している作品は貴重だと思います。ハンフリー・ボガードほどのスターが文字通りの汚れ役を演じているのも珍しいですが、無名時代は悪役での出演が多かったのであまり抵抗はなかったのかもしれませんね、逆にそれが彼の強みになったのでしょう。この作品に限ったことでもないですが、ハリウッドでも隣国のメキシコ人だと安易に英語を喋らせずにちゃんと現地の言葉を喋らせる傾向がありその点も違和感を感じさせにくいです。ドン底にいる男たちが人生の逆転をかけて人間のエゴを剥き出しにするような営みに参加する、この映画のプロットはいわば現代のデスゲームものに似ているんですよね。そのため現代人でも共感しやすい内容だと思います。デスゲームが現実の競争社会の寓話であるように、黄金探しも良心と欲望の狭間で揺れ動く人間の弱さを描く寓話なわけです。今見ると素朴すぎるきらいもなくはないですがやはり人間の強さではなく弱さを描く物語にはいつの時代にも通じる普遍性があると思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-17 23:45:53)
204.  ストライキ
戦艦ポチョムキンのオデッサの階段がどーのこーの、モンタージュ理論がどーのこーの、セルゲイ・エイゼンシュテインの映画というとそういうお勉強のために見る映画って感じじゃないですか。ソ連共産党の体制下で監督自身も公的なお仕事のために作品を作ってるんだろうなとどうしても堅苦しいイメージを逃れられないんですよね。でも、この長編監督デビュー作には何か違うものを感じるんです。もちろんこの映画が作られた目的が共産主義のプロパガンダであることは事実でしょう。しかしこの映画を見て連想するのはチャールズ・チャップリンのような風刺コメディだったり、バスター・キートンのような体を張ったアクションだったりするのです。とにかくすごいイメージを見せてやろう、あれこれの技法を試してみよう。そういう若き天才監督の熱意と情熱がこの映画には迸っていると思うのです。この映画では具体的な時代や場所が特定された事件が描かれているわけではなく、普遍的な寓話のようでもあります。理論的な編集を志向したがゆえに作為と不自然さが感じられ、史実をベースにしているがゆえに時代に束縛されている印象を受けてしまう後の作品よりも現代において見返す価値がある作品かもしれません。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-04-16 21:41:49)
205.  未来のミライ
この映画の価値は細田守監督が初めてポストジブリ・宮崎駿だのデジモンの細田守だのという呪縛から解放されて自由に創作することができた作品だということです。新海誠監督の君の名はがヒットした後に作られたということも大きいのでしょうね。だけどこの映画が不評に終わった以上やっぱり彼には今後も宮崎駿の代わりの役割が求められ続けるのでしょう、それがちょっと残念です。延々と繰り返す羽目に陥ったぼくらのウォーゲームのリメイクではなく、その前作のデジモン劇場版第一作に近い子供の目から見た世界を描くアプローチです。田舎もインターネットも描く必要なんてないんです、そうした妄想を具現化するような空間よりも実人生で得た経験をベースにする方が正しい創作の姿勢です。私も年下の兄弟が生まれた時にくんちゃんと似たような行動を取ったと母からお話を伺ったことがあります。現実の子供ってこれぐらいはわがままなものでしょう?親から離れた時の不安感、駅が迷路のように見えた頃、私にも確かにそんな記憶があります。この映画はその感覚と経験をイメージとして見事に表現できていると思います。ミライちゃんの出番が少ないのにこのタイトルはおかしいという意見もわかります。しかしこの映画ではミライちゃん以外の登場人物はみな愛称で呼ばれています。ミライちゃんはくんちゃんが初めて認識する名前を持った個人です。名前を持った個人の存在を認めることから人生の第一歩が始まるのです。だからやっぱりタイトルはこれでいいんだと思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-15 22:54:07)(良:1票)
206.  バンビ
動物たちのアニメーションにはデフォルメされながらも実際の動きを再現したような圧倒的なリアリティがあります。しかしこの映画の魅力は単に技術的な達成だけではありません。この映画は生き物が生まれ成長し死んでいく様を美しい四季の光景と共に描き切っています。温かいまなざしと容赦のない厳しさ、両方の目線がここにはあります。ディズニークラシック作品の中でその物語内容が最も古びてない作品と言えます。近年ディズニーは過去悪役を割り当てられたキャラクターを別視点から語り直す作品を何本も作っていますが、この作品にはその必要がありません。なぜなら悪役は人間そのものであり、その時点でこの映画は既存の価値観を揺さぶるものであり続けるからです。実はディズニーの作品の中で最も大人向けの作品なのかもしれません。
[DVD(字幕)] 9点(2023-04-14 22:40:45)(良:2票)
207.  生きる LIVING
この映画は朝の通勤風景から始まります。何せ役所勤めの男が主人公の映画ですから通勤風景を描くのは普通の発想です。そういえば1953年のオリジナル版には不思議と通勤風景が描かれていません、代わりに山積みの書類を背に志村喬が仕事をしている場面から始まっていました。これがまさに2本の映画の違いを象徴していると思います。このリメイク版はきわめて普通の感性で丁寧に作られています。しかし黒澤明版は感動の名作というよりはどこか歪な映画なのです。志村喬はビル・ナイとは違い清潔な紳士などではありませんでした、脂ぎって不潔ですらあります。ビル・ナイは若い娘との交流の時にも志村喬のような危うさを感じさせません、だから安心して見られ不快・不安な気持ちにはなりません。1953年という過去を舞台に設定しているために社会風刺的な側面も現実の我々と直接関係ないものとして距離を取って見ることができてしまいます。リメイク版は撮影も演技も卒がなく、今の観客には受け入れにくいであろう部分を原作から削り取っていかにも名作然として作られています。でもそれは毒も刺激もなくとてもつまらない保守的なアプローチだと思います。整然とした通勤風景などより、あの山積みの書類のようにいつ崩れ落ちるかわからないような異様な迫力がゆえにオリジナル版は現代人の心にも訴えかける作品になっていると思うのです。
[映画館(字幕)] 4点(2023-04-13 23:53:51)
208.  ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
あまり期待してないのに観てみたら面白かった枠であって普通に期待して観た場合だと正直微妙な作品ですね。めちゃくちゃ金曜ロードショー向きの作品です。王道ともハリウッドのテンプレ展開しか出てこないとも言えます。映画のA級B級は予算の違いもありますが登場人物の心理描写が丁寧か単純かという観点でも判断できると思います。そういう意味ではやっぱりB級です。まあ私も好きなジャンルの映画がこの出来だったらベタ褒めしてるかもしれませんので、あんまり悪くは言えません。ソフィア・リリスは確かにかわいい、しかし活躍する場面では別の姿に変身してるのでなんかもったいない(笑)。自分自身の弱さと向き合うエピソードが用意されてる他の主要キャスト3人に比べるとエメラルド居留地のエピソードがあまりピックアップされないので物語上の存在感もないです、初登場シーンが一番わくわくしてそれっきりです。それと、泣かせ演出のために適当に登場人物を殺す作劇はやっちゃダメですよ。
[映画館(吹替)] 5点(2023-04-13 00:30:13)
209.  わんぱく王子の大蛇退治
この日本アニメーション映画史に残る古典的名作が2023年に至るまで登録されていなかったとは……いくらアニメが一般化したと言ってもやっぱりマイナーな表現なんだと感じざるを得ません。ちょっと大袈裟な表現かもしれませんが、日本神話や日本美術のようなこれまでの日本の文化の集大成にして後の日本の文化へ大きな影響を与えた作品でもあります。特にゲーム業界への影響が大きいのは観ればわかります。とはいえディズニー作品からの影響も大きいでしょうね、アカハナは因幡の白兎というよりはバンビのとんすけです。平面的なデザインが動きによって立体感を得るアニメーションの原初的な美しさがここにあります。ヤマタノオロチとの空中戦なんか現代のアニメーション作品でもなかなかお目にかかれない迫力だと思います。ストーリー的には神話なので特筆すべきところはないのですが、この時代のアニメや漫画ってマザコン要素が強いとは感じます。伊福部昭の音楽は他の作品からのメロディの使いまわしが目立ってちょっとマイナスです、まあ他の映画でも言えることではあるんですが(笑)。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-04-12 12:45:00)
210.  禁じられた遊び(1952)
ポーレットがひとりぼっちになり川に犬の亡骸が投げ捨てられて始まるこの映画は、ミシェルが川に十字架を投げ捨てポーレットがまたひとりぼっちになって終わります。しかし冒頭の犬の痙攣はすごい、この時代のことですから危険な薬でも飲ませちゃったりしたのでしょうか。描かれるのはとにかく死が尊重されない世界です。十字架の扱いはまさにその象徴です。感動の名作というよりルイス・ブニュエルに近いほとんどブラックコメディですらあります。墓場での殴り合いはもう笑わせに来てるとしか思えません。もうほとんど忘れられたような監督ですが、良質なフランス映画の伝統ともヌーヴェルヴァーグとも微妙にずれた立ち位置にいるのがルネ・クレマンの面白さです。現代だとミシェル・アザナヴィシウスが似たような立場にいるのかもしれません。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-10 23:58:30)
211.  グラン・トリノ
黒澤明監督の生きるを見てこの映画を思い出したのでこちらも再見したのですが、今見直すと欠点が目立つ映画ですね。主人公ウォルト・コワルスキーは偏屈ジジイとしてある程度客観的な目線を持ち込んで描かれてはいますが、彼のアメリカ人としてのプライドは最後まで尊重されておりそのために物語が都合良く展開しているように見えてしまいます。物語上警察の介入が排除されているのは西部劇的シチュエーションをやりたいんでしょうけどやっぱり不自然です。モン族との交流もアメリカ人の自尊心を満たすために都合よく使われてるだけのような感じがします、ウォルトが彼らの文化から何かを学ぶのではなくあくまでアメリカの精神が受け継がれるわけですから。ウォルトの家族はいかにも嫌な連中で彼らの立場に理解を示すわけでもなく平等な描き方とは言えません。この映画で直接悪さをするのは同じモン族や黒人だけで白人側の差別発言は軽いジョーク扱い、イタリア系やポーランド系というマイノリティを選んではいますがここでも危うい線引きをしているように見えます。しかしながらこうやって現代の目線から重箱の隅をつつくような真似をしても不公平ではありますね、こういう映画の積み重ねがあってこそ現代の多様性尊重の風潮もあるのです。一番この映画の価値を下げてるのはこの映画が結局クリント・イーストウッドの遺作にはならなかったという歴史的事実かもしれません。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-04-09 22:12:00)
212.  生きる
現代では風俗こそすっかり様変わりしてしまいましたが、根本的な人間の姿はほとんど古びていないのには驚きました。無意味で空虚な仕事がもたらす精神の荒廃、お役所仕事の弊害(序盤はシン・ゴジラにもそっくり)、肉親の間ですらどこかよそよそしさが付きまとう人間関係、うちの中もおもてもおんなじ寒さという日本の住宅事情への愚痴まで現代と変わらない(笑)。日本社会の本質がこの時代から大して変化していないというだけかもしれませんが、これは人間への真摯な観察の賜物でしょう。しかし細部の描写はいいのですが演出や脚本がそれほどうまいとは思えません。志村喬が病院待合室で診察を受ける前の会話では他の患者が胃がんなのに胃潰瘍と言われたと語られ、後の場面で医者に同じことを言われるんだろうなと簡単に推測できてしまいます。酒場での小説家との会話では胃がんが人生に対する目を開かせたなんて作品のプロットを全部台詞で説明しちゃってます。小田切みきとの交流は今見るとパパ活みたいで真面目に見るべきなのか笑えばいいのか…。有名なハッピーバースデーのシーンも分かり易すぎていかにも演出の作為が見えてしまいます。葬式のシーン以降はやっぱり長すぎますし、社会批判というよりは主人公をひたすら賞賛しているだけのように見えてしまいます。本来は社会風刺喜劇になるべきところにヒューマニズムドラマまでつぎ込んでいるのでどうにもバランスが悪いです。しかしバランスが悪かろうと語り方が下手だろうと伝えたいテーマを何としてでも伝えようとする姿勢は立派だと思います。「わしは人を憎んでなんかいられない、わしにはそんな暇はない」こういう心を揺さぶる台詞が出てくるのはやはり小手先の技術ではないと思います。ダメなところもたくさんあるとは思いますが、黒澤明はやっぱり偉大な監督です。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-08 22:21:27)(良:2票)
213.  オール・ザット・ブリーズ
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画MEMORIA メモリアの中で科学と詩を両立させるのは難しいという旨の台詞があったと記憶してますが、この映画はそれを成立させた一つの成功例だと思います。映像はアンドレイ・タルコフスキーの作品を思わせ、ナレーションは解説というより詩的であることを志向しています。印象的なショットがたくさんあります。冒頭暗闇の中ネズミが蠢くゴミ捨て場をローアングルで捉えたショット、街の風景に波紋が重なりそれが水面に反射した像だと徐々にわかるショット、ムカデが水たまりの中から這いあげると上空の旅客機が飛ぶ姿が映し出されるショット。カメラは動物の目線から人間の社会を見つめるよう促し、これほど多くの生き物が同じ世界を生きていることに気づかせます。また動物への愛情や淡々としながらも見え隠れする死や暴力のイメージ・巨視的な文明観といった要素に私は志賀直哉の小説も連想しました。総じてこの映画は今描くべきことと今まで描かれなかった新しさを感じました。この映画はインドだから描けるテーマに留まらず、まさに全人類的な問題を扱えているからこそ傑作だと思います。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-04-08 00:34:10)
214.  ヴァレリアン 千の惑星の救世主
色彩豊かな画面で繰り広げられる少年少女の冒険活劇、こんなコテコテのものを一切手を抜かず本気で作っただけでも大したものだと思います。リュック・ベッソンの仕事で一番感心したかもしれません。アバターに真っ向から勝負を挑んだような作品って他にないでしょう?ハリウッドほどの予算や技術がないからってみんな諦めちゃっている。出来不出来はひとまず置いといて各国でアバターを目指したような作品が生まれてもいいはずなんですよ。アバターと比べるとこっちはコミックの感覚をそのまま映像化したような作風を試みていると思います。まあ原作は読んだことがないので憶測でしかないんですけど、アメリカ映画や日本のコミックへの影響を通して間接的には摂取していると思いますのでなんとなくは理解できると思います。テーマは本当に人を愛するとはどういうことなのか?それもほとんど台詞で説明しちゃってるから映画の構成・演出としてはダメダメなんですけどね。でも大事なことはわかりやすく言葉でちゃんと伝える意義もあると思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-06 23:30:29)
215.  ブレードランナー 2049
ドゥニ・ヴィルヌーブがどういう人間かというと、とにかく時代遅れの作家です。キリスト教のモチーフを散りばめ、女性の出産を賛美する、っていつの時代の気分なんでしょう?もう21世紀ですよ。20世紀の時点で宗教なんて散々批判された過去の遺物ではないですか。女性も出産という役割からある程度解放されて自由を手にしていますよ。この映画もまた時代遅れです。とにかくスローテンポでダラダラ展開、眠くなります。いまさらブレードランナーかよと、しょーもない。しかも話が主人公のアイデンティティー探しかよ、しょーもない。レプリカントが買春かよ、しょーもない。しかしこのしょーもなさこそが人間の姿そのものではないでしょうか。レプリカントのしょーもなさはまさに人間のコピーであるからこそなのです。そしてこの時代錯誤感こそまさに現代という時代そのものではないでしょうか。いまだに20世紀の作品のリメイクや続編が多作される映画界を象徴してはいないでしょうか。時代遅れであることがもはや今という時代そのものである、奇跡的にこの映画は現代を切り取った作品になっていると思います。20世紀の人間の行為を模倣し反復し続ける我々現代人のしょーもなさとその悲哀、この映画は切実な茶番劇なのです。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-04-06 22:56:24)
216.  ワイルドバンチ
西部劇というジャンルが廃れた後に生まれた人間だとこの映画が最初に見た西部劇になることも多そうですね、最後の西部劇と謳われる作品なのに皮肉な感じです。サム・ペキンパーの映画って社会の中で組織や規範に縛られている人間がアウトローに夢やロマンを託すみたいな内容ですが、それって別に本物の男の姿を描いてるとかじゃなくただのサラリーマンの現実逃避程度の意味しかないと思います。アウトローはアウトローで生きづらさや繊細さを抱えているというのが現代人が持つべき認識ではないでしょうか(その点ではジョン・ウーの方がよっぽど優れているとすら言えます)。そういう視点を持って今見直すとアーネスト・ボーグナインの役が同性愛者なのでは?という疑問が生じました。まあこういうジャンルだと同性愛に見える男同士の関係は珍しくもないのですが、ラストで売春婦を抱かないのも実はそれが原因ではないかと思います。凶悪な面構えのせいで気づかれにくいのですが、この映画では結構思慮深い繊細なキャラを演じています。
[インターネット(字幕)] 3点(2023-04-04 23:31:44)
217.  ロスト・バケーション
サメがほとんど姿を見せないので他の動物の方が印象に残ります。カモメがかわいいって意見が多いですがむしろ恐ろしさを感じましたね。ふだんは大人しいのに弱った時に牙を剥きそうな感じで、ヒッチコックの鳥を思い出させます。でも別にそういう展開にはならなくてちょっとがっかりです。こういう漂流ものって結局役者の一人芝居になりがちでつまんないですね。長編映画ならある程度人間同士の対話や衝突がやっぱり欲しいです。50年代〜70年代の頃が舞台の映画を見ていると若者のレジャーとして海がよく出てくるんですが、サメ映画もそういう時代背景の元でこそ成立したんでしょうね。海遊びの人気の衰えと共に鮫に対する身に迫った恐怖も薄くなり、パロディの対象として以外の需要が無くなったんだと思います。今更真面目に作っても何だかなあという感じです。
[インターネット(字幕)] 3点(2023-04-03 22:54:09)
218.  キングコング2
フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラが評価されてこの映画が評価されないのも奇妙な話です。CGが本格的に導入される前の時代において巨大な生物を現実にいるかのように表現するという点では最高峰の出来栄えではないでしょうか。まず冒頭のコングの手術シーン、コングほどの巨大な生き物の手術にはあれだけ大掛かりな装置が必要だという説得力のある美術が素晴らしいです。ほかにも鎖やブルドーザーのようなコングと絡む器具には実物大の大道具を用意しミニチュアと自然に連続性のあるように見せています。コングが谷底の川に流される場面では画面に虹がかかっている、これがミニチュア特撮の良さです。キングコングとレディコングがお互いを思い空を見上げるとき、必ず月がそこにある。愛してるを月が綺麗ですねと言い換える精神は普遍的なのです。美女と野獣の恋はまともに鑑賞する価値があると見なされシェイプ・オブ・ザ・ウォーターのような映画がアカデミー賞を受賞する時代でも、野獣と野獣の恋を描く作品に世間はまだまだ冷たいです。ピーター・ジャクソンやギレルモ・デル・トロのようなアプローチだけではなくギャレス・エドワーズやアリ・アッバシのような作家も存在しているのですから、劇中のリンダ・ハミルトンが言うように人間も猿も同じようなものという境地を理解していく必要もあると思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-02 22:00:37)
219.  マイスモールランド
この映画は何ひとつ特別なことを描いているわけではありません。クルド難民という設定を抜きにすれば社会派映画というよりは日本映画では珍しいとも言えない思春期の女性の繊細な感情を丁寧に描いた青春映画です。親と子のすれ違い・愛情、他人に話せない悩み、日々の生活で味わう息苦しさ、そして恋。新しい物語を模索というよりは、既にあるフォーマットに沿って問題を処理しているとも言えます。それはこの映画の欠点であり長所でもあると思います。親しみやすい内容ですので、もし広く宣伝されていたならば今よりも多くの観客の共感を得られそこそこのヒットも狙えたのではないかと思います。そうなることがこの映画が作られた目的にも沿うと思います。もっと言うならば商業映画はこの程度のレベルが普通であってほしいのです。(コインランドリーと移民という要素がエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスと被っていますが、偶然なのかそれとも何か共通の要因があったりするのでしょうか?)
[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-02 21:30:39)(良:1票)
220.  お引越し
相米慎二監督の作品は長回しという技巧ばかりが突出しておりあまり好きになれないのですが、この映画は比較的人間ドラマと技巧のバランスが取れているので好きな方です。しかしそれも脚本に参加された奥寺佐渡子の功績に依るところが大きいのではないでしょうか。相米慎二は離婚という現実に直面した家族の心情を描くことよりも、スペクタクルなシーンを構成することに注力しているように見えます。祭りのシーンが挿入されるのもそれがいかにもスペクタクルな描写だからでしかなく、具体的な何かの象徴として提示されているわけではないと思います。あるいは海外の映画祭に出品されておりますので海外受けを狙った計算なのかもしれません。ドラマとしても今見直すと離婚しない夫婦が多数派であることが前提とされており、現代の多様な家族像の前では古びてしまっています。
[インターネット(邦画)] 6点(2023-04-01 18:50:55)
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