121. ぼくは怖くない
《ネタバレ》 ストーリーはシンプルで、特に珍しくはない子供の誘拐もの。 でも、子役の演技や演出がいいので一味違ってくる。 最初は普通の両親かと思えば、誘拐犯だったという子供目線の意外な展開はおもしろい。 金のために子供を誘拐して最後は殺そうとしたのだから、人としては最低のクズ。 そんな汚れきって身勝手な親とまだ純真な子供にも親子の愛情があり、そのやりとりが何ともいえない哀感を醸し出す。 子供に見せられない親の姿というのは、どんな事情があろうとも情けない。 兄には見えない犬の見える妹、仲間内での意地悪や裏切り、そのフォローや仲直りなど、子供たちの世界が生き生きと描かれ、どんよりと重たいオーラの大人たちと対比的。 肥溜めのような大人の世界に、二人の少年の友情が救いとなって、悲劇ではあるものの後味はそれほど悪くない。 [DVD(吹替)] 6点(2015-01-28 23:59:05) |
122. ハート・アタッカー
《ネタバレ》 製作年を見ると、同じくイラク戦争が舞台の『ハートロッカー』よりも先にできたようだ。 米海兵隊がイラク民間人を大量に殺戮した「ハディサの虐殺」事件が題材。 ドキュメンタリータッチで、イラク戦争の一部が生々しく描かれている。 イギリス製作なのでハリウッドのような一方的なアメリカ万歳には終わっていない。 米軍、イラクのテロリスト、イラクの一般市民という三つの視点から、それぞれの立場、状況、葛藤がうかがえる。 仲間を殺された憎悪と、自分もいつ誰にやられるかわからない恐怖で、攻撃性が異様に増している。 その異常な心理状態から、女や子供までも虐殺してしまった。 それを肯定するつもりはサラサラないが、戦時下ではいつでも起こりえることなのだろう。 これも氷山の一角か。 ごく普通の人間が殺戮に走ることにため息が出る。 そこに明確な犯罪意識はなく、あるのは一眼的な正義とやらねばならないという義務感なので、救いが見えてこない。 映画ではハディサ事件の裁判の行方は描かれていないが、実際には殺人罪では裁かれずに軽い処分で済んでいる。 それを知ったイラク市民は、また憎悪を深めたことだろう。 [DVD(字幕)] 6点(2014-12-31 22:01:25) |
123. パラサイト・バイティング 食人草
《ネタバレ》 特別ハッとするようなものはなくシンプルな話だったけれど、B級ホラーとしては悪くない出来栄え。 役者もなかなか粒ぞろい。この手の作品は襲われる側に魅力がないと興ざめ極まりないことになるが、その点はクリアされている。 特にローラ・ラムジーがエロかわいくて、一瞬だけど全裸シーンもある。 そのラムジーが、侵入した食人草を取り出そうと自分の体を切り裂くさまは狂気を感じる。 魅力的だし演技もいいのに作品に恵まれていないのか、これといった代表作もなく活躍してないようなのがもったいない。 井戸に落ちた男は、運ばれる際に損傷した骨がボキボキ折れるは、敗血症の治療で骨を砕かれ足を切断されるは、呪われたかのように散々の目に。 かなりグロくて痛さが伝わってくる映画。後に何か残るかといえばなさそうだけど、退屈せずに暇つぶしには十分。 [DVD(吹替)] 6点(2014-12-31 21:56:05)(良:1票) |
124. A2
《ネタバレ》 マスコミが報道しないところも映し出しているので、そうした意味では貴重。 教団を囲む近隣住民、マスコミ、右翼団体などの知られざる実状もある程度伝わってくる。 オウム追放運動を続ける地域住民と信者との意外に和やかな交流などは、こうしたドキュメンタリーでないと知りえない。 談笑しているのを見ると、どこにでもいる温和で善良な若者たちに見える。 ところが、インタビューの中でゾッとする本音が垣間見える。 自分の感性でそれがどんなに変だと思っていても、グルからの言葉であれば従うべき。 信者がそう思っている時点で、今も危険な集団だということがわかる。 麻原を今も尊士とあがめているから、辞めることなくまだあの集団にいられるのだ。 宗教の持つ危険性を自覚している信者もいた。 考えたくもないことだが、もし麻原の指示があれば、また同じことを繰り返すに違いない。 この作品を見終えて、そう確信した。 麻原を信奉している限り、一般社会との真の融和はありえない。 被害者である河野氏が指摘した信者の甘さは、まさにその通り。 謝罪の一言もなく面談に臨んだ姿勢には呆れるしかない。 つまりは本当の意味での反省などしていないのだから。 反省のフリをしているのは、あくまでも教団生き残りのための「方便」でしかない。 表層的な融和で乗り切ろうとしているのが伝わってくるし、生真面目な荒木広報部長が森監督の言葉に反論できなかったのも印象的。 マスコミが必ずしも事実を伝えるものではないのは今では周知のことだろうが、事件を起こした教団が被害者面するのもそれは違うだろうと思ってしまう。 ああ言えば上佑氏の姿も久々に拝見。 この後、教団は麻原からの脱却を目指した上佑派と、それに反発する主流派に分裂したようだが、『A3』でその実態を伝えてほしい。 [DVD(邦画)] 6点(2014-12-08 19:52:18) |
125. きっと、うまくいく
《ネタバレ》 ザ・良い話。 王道のウェルメイドで、ベタ中のベタな展開。 意外性があったのはランチョーを訪ねたら別人だったところで、それ以外は先がある程度読めてしまう。 雑魚キャラのチャトゥルが交渉する予定だった発明家ワングルの正体もすぐに察しがつく。 「きっとうまくいく」ことが約束されているような雰囲気があるので、途中で親友が死にかけたり、緊急出産の赤ちゃんが息をしてなかったり、愛する人が別の男と結婚しそうな危機があっても、それほどハラハラはしない。 それでもいいキャラクターが揃ってるので楽しめる。 行き過ぎた競争社会での理不尽さに反旗を翻すランチョーは、人としてこうありたいと思わせる理想像。 そのランチョーと同タイプだった発明に情熱を注ぐ学生が、インド映画特有の集団での楽しい歌とダンスの後に、首を吊った姿で映し出された演出はインパクトがあった。 理不尽な権威の象徴である学長、下級生いじめをする先輩たち、教科書通りに丸暗記するだけの点取り優等生チャトゥル、金にしか価値基準のない値札人間スハース。 社会の歪みを代表する俗物が、みなランチョーにギャフンと言わされるのがカタルシスとなる。 ただし、ウェルメイド作品にありがちな都合がよすぎる部分はある。 ランチョーがピアを愛しているのに放置して行方をくらませたのは不可解。 ラストでの劇的な再会を演出したかったという都合だろうけど、不自然さが引っかかる。 笑いのセンスでは、強姦を連呼しているのが気になった。 そこはおもしろくも何ともなくただ下品に感じたが、一般インド市民の感性、倫理観が日本とはまた微妙に違うのかもしれない。 インドで多発するレイプ犯罪のニュースもあって、ふとそう思った。 [DVD(字幕)] 6点(2014-09-28 16:33:34)(良:2票) |
126. 蛇イチゴ
《ネタバレ》 西川美和は女性監督では一番気になる存在。 この監督、宙ぶらりんに放り投げてきっちりと収拾しないところがある。 本作も詐欺師の長男の真意と両親がどうなったかは最後まで描かれておらず、ご想像におまかせします状態でモヤモヤが残る。 そういうところに不満はあるのだが、人物描写は抜群に上手い。 こんなヤツいるよなぁ、こんな状況ってあるよなぁとリアルな臭いまで伴ってきそうなイメージ。 一番常識的でまともに見える主人公の弱い部分をシニカルに描き出す目がクールで鋭い。 [DVD(邦画)] 6点(2014-09-03 19:17:45)(良:2票) |
127. マイ・サマー・オブ・ラブ
《ネタバレ》 タムジンとモナの微笑ましいような同性愛が描かれるが、ひと夏の友情物語として爽やかに終わらない。 かわいそうな自分を演じる残酷な遊びが印象的。 ところどころに毒気が感じられる映画で、神を語るフィルがタムジンの誘惑に嵌って偽善を暴き出されるシーンもおもしろい。 ただ、ストーリーを締めくくるラストが物足りないないような。 もっと気の効いた仕返しをしてくれればスッキリ終われたかも。 主演の女優二人は魅力的。 イギリスにもコックリさんのようなものがあるんだなと思って見てたら、もともと西洋のテーブルターニングが起源とか。 思春期の少女のひと夏の体験が、ほろ苦くリアルに感じられた。 [地上波(字幕)] 6点(2014-07-27 20:21:37) |
128. 月に囚われた男
《ネタバレ》 SFの佳作。 クローンを奴隷化するシステムが残酷。 それを是認したオリジナルが、地球で幸せに暮らしているだろうことを考えるとさらに残酷。 自分のクローンならどう扱ってもかまわないということか。 ガーティが主人公を裏切らなかったのが人間味を感じて意外な展開だった。 [DVD(吹替)] 6点(2014-05-21 00:13:53) |
129. ビッグ・フィッシュ
《ネタバレ》 ホラ吹き親父が多くの人に慕われたというのがピンと来ない。 そんな親父は普通はバカにされる対象だと思うので、いらつく息子のほうには共感できる。 父子の確執が解消されることになる、病室で息子が親父のためにしてあげる作り話は感動的。 親父のホラ話も全部がウソというわけではなかったことがわかるラストは心地よい余韻が残る。 ファンタジックな要素もあり、親父のホラ話と同じでどこからどこまでが真実かわからない大人向け童話のような物語。 [地上波(吹替)] 6点(2014-04-12 00:31:56) |
130. ショコラ(2000)
《ネタバレ》 ファンタジーのような要素もあって、温かみのある映画。 ヴィアンヌの存在が周りに変化をもたらしていく。 チョコレートのように甘くマイルドな話かと思えば、排他的な守旧派との戦いは船に火を放たれたりして西部劇のような激しさも。 ついに古い因習から解放されるところにカタルシスがある。 それにしても、チョコレートを料理にかけるのはとても美味しそうには見えないんだけど。 [ビデオ(吹替)] 6点(2014-04-07 21:41:30) |
131. 3時10分、決断のとき
《ネタバレ》 強盗団のボスが不敵で魅力的。 破綻の崖っぷちにある牧場主との交流も引き込まれる。 3時10分に向かってどうなることかと思えば、ラストがいただけない。 ボスを助けようと駆けつけた手下たちに対してありえない行為。 忠誠を尽くすチャーリーよりダンとのにわかな友情が優先されるのか。 そういうストーリーにするなら、もっと説得力のある前フリが必要。 序盤にヘマをした手下をあっさり殺す場面はあったけれど、チャーリーらはボスに忠実だったのに。 ダンにそこまで肩入れする理由もベンの持つ過去と重ね合わせてくれたら良かったが、そこも弱かった。 やむをえないと思わせるだけの描写はなかったので腑に落ちない。 あれでは気に入らないものは何でも後先考えずに消してしまうということで、それまで器の大きさを感じさせたボスに対する好感が吹き飛んでしまった。 もともと一人だけ捕まったのも酒場の女と情事に耽っていたというヘマからなんだし、ボスとして筋が通っていないような。 また、クリスチャン・ベールはイケメンすぎて最初からダメ男には見えないのが惜しい。 [DVD(吹替)] 6点(2014-02-09 15:20:00) |
132. ブラックブック
《ネタバレ》 残虐なナチスの非道を強調して描く映画はたくさんあるが、本作はそこにだけ焦点を当てているわけではない。 レジスタンス側もステレオタイプの正義としてではなく、裏切りや終戦後の復讐など汚い部分も含めて人間臭く描かれている。 戦争映画によくあるどこか陰気な重さは感じず、それよりもサスペンスの要素が強い。 少し盛り込みすぎの感はあるものの、思わぬ黒幕の存在や二転三転するストーリーの意外性を楽しめる。 エロティックな描写も幾つかあるが、主人公の熱演は感じるもののあまり惹かれるものはなかった。 [DVD(吹替)] 6点(2014-01-25 09:06:01) |
133. ボーン・スプレマシー
《ネタバレ》 三部作の1と3を見たので、せっかくだから残った2も見ることに。 雰囲気は好きなんだけど、ストーリーにハッとするようなものがない。 登場人物の関係が1より少し複雑で、頭の中で整理しておかないとストーリーに乗り遅れる。 カーチェイスはド迫力だったが、全編通してのハンディカメラの多用は映画館で観たら酔って気持ち悪くなりそう。 両親を殺されたロシア娘の可憐さに、一生かけて贖罪してもまだ足りないとボーンを責める思いへと一気に転化。 真実の告白だけで済まされることじゃなく、カッコつけて去ってるんじゃないよと。 ---------- 久しぶりに三部作を時系列通りに見直してみると、以前より単純にアクションを楽しめた。 恋人を殺されて復讐に燃えるボーンと、ボーン抹殺に動くCIAの中で真実を求めるうちに次第にボーンに理解を示し始めるパメラ。 この二人のやりとりはなかなか良かった。 が、やっぱり両親を殺された娘への同情で主人公に引っかかってしまう。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-06 00:02:28) |
134. ボーン・アイデンティティー
《ネタバレ》 記憶喪失になった男の謎でストーリーに引きこまれるが、目新しい展開はなくありがちな結末。 アクションは迫力があるし、演出はスタイリッシュでいいんだけど。 彼女に危害が及ばないように別れたのに、彼女を探して会いにいくラストはそれでいいの?と引っかかってしまう。 久しぶりにボーンシリーズ三部作を見直してみたら、アクションはカッコイイ。 「アイデンティティー」ではまだ謎に包まれたままの部分が多いが、そのスーパーエージェントぶりは爽快。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-05 00:29:01) |
135. ボーン・アルティメイタム
3部作のラストとは知らずに見始めたが、途中でやめるのもなんなので最後まで見てしまう。 案の定、ストーリーに乗り損ねて全体像を把握するのに手間取った。 テンポのいい展開とアクションは印象に残るが、やっぱり1・2作目を見ていないとピンと来ず。 この後1と2も見たが、シリーズものは順番に見るべきだと当たり前のことながら再認識。 久しぶりにこの三作を順番通りに見直してみたら、なかなか面白かった。 アクション映画のカッコ良さに徹していて、ボーンの超人的な仕事ぶりに惚れる。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-02 23:00:16) |
136. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 「私のための本だ」といったヴィースラーのラストの表情がすごくいい。 あれが救いとなって報われた明るい余韻となっている。 ただ、劇作家を助けるに至った心の動きが描ききれていないような…。 シュタージによる徹底監視のもとで、権力者が抵抗分子を弾圧する構造は嫌悪感と恐ろしさを覚える。 地味だけれどじんわりとくるいい映画で、丁寧にしっかり作りこまれている印象。 [DVD(吹替)] 6点(2013-09-28 21:00:07)(良:1票) |
137. アメリ
《ネタバレ》 現実から逃避していた空想癖の不思議ちゃん。 他人と関係を適切な関係を結べなかったアメリが世界と調和していく様子が微笑ましい。 オシャレでウィットに富んでいて、特に女性に人気のある作品だというのもわかる気がする。 出てくるのがどこか変な人ばかりだが、その不器用で変なところに愛を感じる描き方。 八百屋へのボディブローのような地味に効く嫌がらせが笑える。 [DVD(吹替)] 6点(2013-09-24 22:10:29) |
138. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 前半のゆるい感じが続くのかと思えば、後半からの展開は予備知識がなかったので意表をつかれた。 ネタばらしに入ってからがおもしろい。 ドルジの日本語にまったくなまりのないのが突っ込みどころではあるけれど、うまく騙されてしまう。 もう一度見直してみると、いたるところに伏線が張ってあるのに感心する。 [DVD(邦画)] 6点(2013-08-29 22:49:42) |
139. ぼくたちと駐在さんの700日戦争
バカバカしいけどギャグタッチの軽い笑いでくすぐられる。 警官との子供のケンカのような戦いも漫画的かつ牧歌的でほのぼの。 笑いのツボから外れると後は何も残らない映画だが、意外とおもしろかった。 市原隼人の演技は他の作品では鼻につくこともあったけど、この役は合っていて良かった。 映画館で観るより深夜テレビでゆるく観るのがふさわしい内容。 [DVD(邦画)] 6点(2013-08-27 20:36:39) |
140. おくりびと
《ネタバレ》 いわゆる良い話なんだけど、パターン通りで意外性はない。 石文のエピソードで、亡くなった父が我が子への思いのこもった石を握っていたのもベタすぎる。 広末のいい嫁っぷりは癒されるけど、こちらもちょっと理想主義。 納棺師の仕事ぶりは興味深かった。 [DVD(邦画)] 6点(2013-08-10 02:39:00) |