1. 告白(2010)
《ネタバレ》 内容的にかなりハードな映画で、テレビCMみたいに気軽な感じで「なんてね」なんて絶対にいう事の出来ない内容だと思います。手法としては数幕ものの舞台を見ている感覚ですね。それはそれで悪くないと思います。原作を上手く映像に出来たんじゃないかと思えましたからね。 但し、若干の難点を言わせていただければ、かなり設定に内容に無理や甘さがあるのは否めません。あんな古典的な、おもちゃで賞なんて取れねぇよ!(あのくらいのおもちゃは、簡単な知識さえあれば、小学生にだって出来てしまう)とか、一度解除してしまった爆弾を再度利用するとか、あの規模の爆弾で建物があんなにはならないとか、ツッコミどころが非常に多かったりしてね。結構重要な部分であるだけにあれは無いよなぁ、と映画を観ているテンションを下げてしまうシーンでした。 あと、あのCGの使い方、あれは無いよなぁ。終盤のシーンで爆発のシーンを叙情的に表現したかったのかもしれないけど、あそこだけ、間延びしてるんだよね。時間の長さと感情がイコールであるというのを表現したかったのかもしれないけど、見てるあたしが"長い"と感じてしまったので、あれはもうちょっと抑えるべきだったかな、と。 [映画館(邦画)] 10点(2010-07-12 01:51:48) |
2. ヒーローショー
《ネタバレ》 井筒監督がアメリカン・ニューシネマが好きなのは良く知ってたけど、これはその意味でよく出来た和製”アメリカン・ニューシネマ”ですね。 変な話なんだけど、見終わったときに「俺たちに明日はない」と「ダーティー・メリー・クレイジー・ラリー」を思い出したんですよ、なるほど、井筒監督作品に無くてはならないバイオレンス、セックス、アンチヒーロー、反社会性というのはアメリカン・ニューシネマが原点なんだな、と。そう考えると、井筒監督が興したと云われる、ヤンキーを扱った映画というのは昨今のヤンキー映画とは全く意趣が違うんです。単純に暴力を描いた映画ってのが昨今ではポンポンと出てくるけど、明らかに性質の違う映画であるというのを実感させられた想いがあります。 それと、いつも思うのだけど、井筒監督っていうのは、若い役者の使い方が本当に上手いです。多少オーバーアクトになってる所もあって、それがなんでもないシーンだと現実に引き戻されてしまうのですが、バイオレンスシーンで起きていることが多くて、その場合、狂気との相乗効果を生み出しているんだよね。あたしがバイオレンスシーンを苦手としているのはやたらと血が飛び散るとか、痛そうとかそういう部分にあるのだけど、この映画に関しては痛そうとかいうのもあるけど、それ以上に本当に怖いんだよね。絶対にあんな目には遭いたくないと思わせる部分が強いんです。観ていてそういう気持ちになれば多分、監督の思惑通りの反応なんだと思います。 起承転結がきっちりと決まっている映画に慣れていると、この映画っていうのは表情に衝撃が走る(というか、辛い)かもしれないです。とにかく最後の最後まで救いの無い映画だから、ジャルジャルが主演という理由だけでこの映画を観に来たジャルジャルのファンは、多分、とんでもない映画を見せられた(騙された)と思うだろうね(笑)。 色々な意味で物凄く好き嫌いが分かれる映画だと思います。でも、この映画に関して言えば、それでいい映画ではないでしょうか? あたしはバイオレンスものは苦手としてるのだけど、それでも見てよかったと思える様な映画でした。 アメリカン・ニューシネマファンなら絶対にオススメします。 [映画館(邦画)] 10点(2010-07-12 01:48:12)(良:1票) |
3. ゲロッパ!
いや、これだけ評価の分かれる映画は久々ですね。あたしは全面的に○。テレビであれだけの毒を吐く人の映画と言う事でかなり斜に構えて見てる人も多いでしょうね。でもこの映画って絶対的なエンターティメントですよ、ハリウッドスタイルでは無いけど。邦画流にいえば”喜劇映画”ですよね。コメディでは無くて、喜劇映画。まぁ、確かに傍から見ると亜流にも見えるかもしれないけど、これってアメリカ映画で言うところのアメリカン・ニューシネマの線に近い映画じゃないですかね? そんなこと思いつつ、映画を見ていてちょっと感覚をダブらせた映画があってそれが「ブルース・ブラザース」なんですけど、そう思うと結構この映画に惹かれる理由がわかるんですよね。ただ、決して万人受けする映画でない事も確かです。特に日本人には地方の特異性を毛嫌いする人がいますから尚の事でしょう。あと、間違ってもJBフリークはこの映画に期待しちゃ駄目ですよ。そういう映画では無いですから(でも、あの初来日の話を知ってる人ってどのくらいいるんだ・・あたしは知らなかった・・笑・・)、後、この映画に本物が出てこない意味はやはり理解してる人は少ないのかな?あえて全然似ていないJB出したのも十分に意味があったと思いますけどね。あ、そうそう、JBでてるんですよ、ホンモノもね。しかしあれだけとは言えよく出てくれたモンだ。 10点(2004-05-03 20:01:33)(良:1票) |
4. 壬生義士伝
《ネタバレ》 何から見たか、自分がどんな気持ちで見るかで劇場版とTV版の評価が分かれるかもしれないですね。あたしは実は劇場版見て間に原作を挟んでTV版でした。結果から言うとあたしは劇場版に軍配を上げます。TV版は実は物凄く期待してたんですよ。原作の長さをきっちりカバーできると思ったから。でも残念ながらカバーされてなかった。それに比べれば劇場版は物凄く端折ってますよね。でも編集の妙というかな、話自体がキッチリ出来上がっていて2時間ちょっとの中で誰もが わかる様な出来になってる。これがいつもなら原作と違う所を嫌がるあたしが評価するする所以です。中井貴一のあの線の細さからは想像もつかない程の剣を持った時の構えにはゾクッとしました。佐藤浩一もさすがですね。斉藤一なんていう癖のある役を見事に演じてます。あと、評価が分かれるけどあたしは三宅裕二の演技を大きく評価してます。どーも嫌がる人もいるみたいですけど、決して奇を衒っている訳ではないですね。三宅の素朴さがにじみ出てこそあの役が生きたし泣かせのシーンで生きたんじゃないかと思ってます。貫一郎の自害までが長くてだれると言う人が多いみたいですけど、あたしはあの長さが心地よかったですね。みんなテンポの良い映画見すぎですって(笑)。 10点(2004-05-03 15:34:15)(良:1票) |
5. まあだだよ
実はあたしはこの映画が黒澤のカラー作品としては「どですかでん」と肩を並べる傑作だと思ってる。内田百 10点(2002-06-19 18:15:30) |
6. 太陽の王子 ホルスの大冒険
当時としては出来が良すぎるんだよ。あたしがこれ見たのは学生になってからなんだけど、この当時の東映動画・東京ムービーの社員の力は本当に凄いというしかない。 10点(2001-09-18 19:47:14) |
7. タンポポ
日本人に身近な食べ物を中心に、食にこだわった傑作とあたしは思ってます。でもって映画のベースになっているのがマカロニ・ウエスタンでしょ。山崎努と安岡力也の殴り合いなんて日活テイスト入りまくっているし、ラストのタンクローリーで颯爽と去っていくのなんか「シェーン」でしょ。ここまで他の映画のテイストを自分の映画に盛り込むというのは凄いことですよ。関係ないかもしれないけど、あの映画で浮浪者(あのシーンで私はノッポさん(高見映)の声を聞きました)が作るオムライスは食べてみたかったです。(笑) 10点(2001-09-17 21:18:02) |
8. 私は貝になりたい(1959)
これ見たとき、”戦犯”ってなんだろう、と涙しながら考えました。フランキー堺という人柄の良い顔と柔らかい声、鋭い演技を備えていた人が居た事と、当時の撮影技術が発展途上であったことがかえってこのドラマに引き込まれる要因になっているように思います。これがカラーなら・・・と思った事が何度もありましたが、所ジョージ主演でリメイクされたのを見て面白かったけど興ざめした感じがありました。それは所ジョージの責任ではなくて、当時の撮影スタッフ見たいな思いを感じながら仕事をする人が減った為だと思います。 10点(2001-08-20 20:49:45) |
9. じゃりン子チエ
劇場版はTV版の”ええとこどり”なんでシナリオが繋がるかな、なんて変な心配しましたが、文句ありませんでした。劇場版は基本的に殆ど吉本の芸人さん達なんだけど、それが大阪の下町の話にピッタリあっているんで驚きました。小鉄とジュニアが”やすきよ”、鉄の親に”歌啓”なんて、吉本の豪華キャストが実にはまっているんだ、これが。原作をきちんとシナリオに起こしているから、チエちゃん(子供)から見る大人の世界とかそのまま生かしてたと思います。 10点(2001-08-20 17:45:57) |
10. マルサの女
今までの日本映画に無いシュールなレイアウトとかコマ割りはよかったです。山崎努、大地康雄、桜金造、益岡徹、みんな個性が強いのに他が打ち消されないで映像に出てくるってのは凄いよね。 10点(2001-07-18 20:35:09) |
11. 七人の侍
東野英治郎がいい!、あの方の悪役人生の中でも最上では無かったろうか。この映画にはいたる所に生活感がある。だからこそ、この映画の迫力は出たように思う。 10点(2001-06-27 19:15:36) |
12. シコふんじゃった。
こういう映画がもっと評価されないから、日本映画の人気がなくなるんだよなぁ。ある意味、黒澤映画の対極に居ながら、同じ道を進んでいる映画かもしれない。 10点(2001-06-27 18:47:44) |
13. 火垂るの墓(1988)
原作者の野坂昭如が「わたしはこの映画を二度と見たくない」と試写会で言ったのが印象的でした。あの人、この映画見て号泣したんですよね。それぐらい出来が良かった作品です。あたしも見るたび涙腺が緩んでしまいます。ほら、これかいてるだけでもう目頭が・・・ 10点(2001-06-27 18:38:31) |
14. さびしんぼう
日本ではファンタジーはなかなか難しいと思っていた小生を「こういうやり方もあるか、」と素直に関心させた作品。少年が1人の少女と母親に見るギャップを「さびしんぼう」によって埋めていく感じは実に面白いと思った。 母親がやった(と思われる)「さびしんぼう」の舞台劇を見てみたいものだと思うのは私だけだろうか。 10点(2001-04-23 22:00:40)(良:1票) |
15. 耳をすませば(1995)
近藤喜文の良さは日常の少年少女を豊かに表現できる所なんだよなぁ。これ見てると本当にそう思う。監督としてはこれ1作しかないし、その1作がこれだけの素敵な映画になっているので、最高点つけます。彼が原画やっていたら、「もののけ姫」はもっと良いものが出来ていたかもしれない。 10点(2000-12-28 16:07:16) |
16. 天空の城ラピュタ
宮崎駿のアニメとしては「となりのトトロ」と並んで最高だと思います。大人が見ても、子供の頃の冒険心をくすぐられるし、子供が見ても純粋に楽しい冒険活劇になっています。 10点(2000-12-28 15:22:29) |
17. 映画大好きポンポさん
してやられた。 原作を読んでいるから、原作通りなら、面白くなるのは分かってたのですが、それを超えてきちゃったんだよね。映画製作の過程を分かりやすく、面白おかしく見せるのは出来て当然だと思っていたけど、まさか主人公の内面を抉ってさらけ出してくるとは思いもしなかっった。しかもそれが失敗と挫折経験した人には痛く心に突き刺さるので、あたしなんか泣けて泣けて(笑)。そうした仕掛けを上手く演出したのが、原作に無かった部分なんだろうね。この原作に無かった部分を主人公の内面と制作している映画の主人公を上手く重ねて演出したところに重ねて、物語を丁寧に描写している、そしてそれはこの映画に出てくる銀行の頭取の台詞で答え合わせをしてくれている所が、救いになってますね。 役者もある意味面白いと思います。主人公と主人公の撮る映画のヒロイン役がお世辞にも上手くない(正直言って、素人に毛が生えた程度(笑)、これが変な話、役としては良い感じに素人っぽさというか新人監督&新人女優って感じが出てる。それに引き換え、主人公の撮る映画の主人公役が大塚明夫で、ヒロイン付き人になる相手が加隈亜衣なんて、キャリア十分の声優を使っている所に、ある意味悪意まで感じたね(笑)。 決して万人受けするとは思わない作品だけど、それがこの作品の主題にもなっている所も良い点だと思います。映画の中でカット割りについての話が出てくるけど、そんな事を説明しながら、映画そのもののカット割りがかなりうまく出来ているのも注目点でしょう。 折角ここまで出来ていて、ラストのオチまで完全に出来てるのに、惜しむらくはこの映画の上映時間で画竜点睛を欠いてるんだよね。これがもったいなかった。 勿論、この映画自体が完全なるフィクションになっているから、現実と合わせる必要は無いのかもしれない。でも折角この映画の完成度がここまで高くなっているのであれば、やっぱりこうした細かい所で洒落てないとこの映画の醍醐味が薄れる気がします。 [映画館(邦画)] 9点(2021-06-15 03:43:48) |
18. 日本のいちばん長い日(1967)
岡八の傑作のひとつだと思います。玉音放送の直前直後の混乱を非常にクールな視点で描きながらも、登場人物全員の思惑や信条といったものが伝わってきます。だから嫌でも観ている側が冷静で居られなくなり、物語に注視してしまいます。 [DVD(邦画)] 9点(2010-11-22 12:36:28) |
19. おにいちゃんのハナビ
《ネタバレ》 あたしにとって、この年の邦画では「ヒーローショー」と並ぶ秀作だと思います。 最初は良くある感動モノの映画だと思ったんですよ。ハイ、ここが泣きのシーンですよ、みんな泣いてください、みたいなね。そういうのって分かってしまうと泣けないなんて事があるのだけど、この映画は泣けるんです。泣きのシーンまでの過程が丁寧なんだよね。泣ける場面は都合3(いや、3.5かな?)回ありますが、そのどれもがその過程が丁寧で、予備動作としてその時点で目が潤んでしまうという感じでした。 役者陣も非常に良かった。特に主役である太郎役の高良健吾は良かったです。最初、無表情だったのが徐々に表情が豊かになっていく感じというのを、実に上手く表現していて、彼の泣きのシーンにしてもすべて表情を変えているんだよね。これって観ている側に自然と伝わる形でちゃんと表現されているんです。反対に谷村美月の演じる華は徐々にエネルギーを奪われていく感じを隠そうとするのが良く表現されていて、多分、その相乗効果もあって泣けるのだと思います。 大杉蓮にしても統一感を出すことに注力していて、例えば太郎と似た表情や仕種をみせたり、太郎以上に不器用な姿を演じる事によって家族としての一体感がそこには確かに垣間見えるんです。それは母親役の宮崎美子についても同じで、彼女は華と同じ様な表情を見せたりしています。 で、この家族を丁寧に撮る為にフレームワークやレイアウトも非常にしっかりとした撮り方をしています。 惜しいな、と思ったのが、一部のシーン。例えば、翠翔会の中心的な役割をしている金髪のあんちゃん。田舎の閉鎖的な部分を見せる為の役回りだと思うのだけど、そういう役回りの恰好が、いかにもヤンキー風の金髪やあごひげってベタな方向性にするのは辞めて欲しかったですね。実際の田舎って、そういう人こそ協調性あったりするのでね。 [映画館(邦画)] 9点(2010-11-08 12:26:26)(良:4票) |
20. 孤高のメス
《ネタバレ》 最近の医療系ドラマってどうもドラマ性を強くしてるきらいがあって、あたしには少々抵抗感があったのだけど、この映画に関しては、かなりドラマ性をそぎ落としているという感じがしました。勿論、最小限のドラマ性を組み込んではいるのだけど、かなり淡々としていて、実録モノに近い雰囲気を出しているので、かなり引き込まれて観る事が出来たと思います。手術シーンの撮り方が面白かったですね。普通のドラマなんかだと、役者のアップが多く入るのだけど、この映画は全体的に引き気味で撮ってたり、手先を撮っていたりするので、その部分でも、目新しかったのかもしれません。残念なのは市長役の柄本明が前半ちょっとオーバーアクト気味だったかな?全体が結構重厚な作りになっているのに、彼の演技でちょっと作り自体が勿体無いことになった気がします。多分、ギャップを感じさせたいという製作の思惑で、意図的にさせた演技なんだろうけど、柄本ぐらいの役者であれば、もうちょっと自然な演技をさせても、ギャップを演じさせることが出来たんじゃないかと思うんですよね。 [映画館(邦画)] 9点(2010-07-12 01:55:22) |